(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】ミルク泡立て装置および方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/44 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A47J31/44 410
(21)【出願番号】P 2019563177
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2018062883
(87)【国際公開番号】W WO2018211003
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】102017000054448
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519402281
【氏名又は名称】コーヒー イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】COFFEE INNOVATIONS PTY LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】512102391
【氏名又は名称】ラ マルゾッコ エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】LA MARZOCCO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジブ シャレブ
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ウーム
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079468(US,A1)
【文献】国際公開第2016/079680(WO,A1)
【文献】特表2017-500091(JP,A)
【文献】特開2013-165814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を調製するためにある量のミルクを泡立てるための装置(AMF)であって、前記装置は、泡立てるべきある量のミルクを含むジャグ(50)を支持するプラットフォーム(1)と、蒸気および/または加熱空気を放出するように構成された蒸気ワンド(10)とを備え、
前記プラットフォーム(1)と蒸気ワンド(10)の少なくとも一方が水平軸(X、Y)の周りを時計回り-反時計回りに反復して傾動可能であり、且つ
前記蒸気ワンド(10)と前記プラットフォーム(1)が、一方が他方に対して往復運動可能であり、蒸気および/または加熱空気は、前記プラットフォーム(1)と蒸気ワンド(10)の少なくとも一方を傾動させながら、前記蒸気ワンド(10)から放出される、
装置(AMF)。
【請求項2】
前記蒸気ワンド(10)と前記プラットフォーム(1)は、ジャグ(50)に対して蒸気ワンド(10)が並進垂直運動するように及び/又は蒸気ワンド(10)に対してジャグ(50)が並進垂直運動するように、一方が他方に対して移動可能である、請求項1に記載の装置(AMF)。
【請求項3】
水平シャフト(2)と、前記シャフト(2)に接続されたモータ(3)とをさらに備え、前記シャフト(2)は、前記シャフト(2)が傾くと前記プラットフォーム(1)が傾くように前記プラットフォーム(1)にも接続されている、請求項1または2に記載の装置(AMF)。
【請求項4】
前記プラットフォーム(1)は、第1の直径のジャグ(50)または第1の直径よりも大きい第2の直径のジャグ(50)を前記プラットフォーム(1)上に中心に収容するように設計されたセンタリング機構(1a、1b、1c)をさらに備える、請求項1~3の
いずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項5】
並進キャリッジ(151)を備え、該並進キャリッジに接続された前記蒸気ワンド(10)を垂直に並進させる線形アクチュエータ(15)をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項6】
前記ジャグ(50)の側壁の温度を検知するように配置されたIR温度センサ(30)および前記ジャグ(50)内のミルクの温度を検知するように配置されたIRミルク温度センサ(31)のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記ジャグ内のミルクレベルを測定するための近接センサ(32)をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項8】
前記ジャグ(50)のサイズを識別するために無線周波数識別(RFID)タグ(36)を読み取るように構成された無線周波数識別(RFID)リーダ(35)をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項9】
前記ジャグのサイズを識別するために、近接センサ(40)をさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項10】
蒸気源(11、11a、12)に接続された三方弁(11b)をさらに備える、請求項1~9のいずれかに記載の装置(AMF)。
【請求項11】
ディスプレイ(21)と、複数のパラメータのうちの1つを選択するための手段(22、23、24、25、26)とをさらに備える、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
飲料を調製するためにある量のミルクを泡立てる方法であって、該方法は、
ジャグ(50)にある量のミルクを供給するステップと、
支持プラットフォーム(1)を準備し、前記ジャグ(50)を前記支持プラットフォーム(1)に置くステップと、
蒸気および/または加熱空気を放出する蒸気ワンド(10)を準備するステップであって、前記蒸気ワンド(10)と前記支持プラットフォーム(1)が、前記ワンドの先端部が前記ジャグ(50)内にない第1の位置から前記ワンドの先端部が前記ジャグ(50)内の前記ある量のミルクに少なくとも部分的に沈められる第2の位置まで相対的に往復運動可能である、ステップと、
前記支持プラットフォーム(1)と蒸気ワンド(10)の少なくとも一方を時計回り-反時計回りに反復して傾動させながら、前記ワンド(10)の先端部から蒸気および/または加熱空気を放出させるステップと、
を備える、方法。
【請求項13】
前記ジャグ(50)に対する前記蒸気ワンドの並進垂直運動によっておよび/または前記蒸気ワンド(10)に対する前記ジャグ(50)の並進垂直運動によって、前記蒸気ワンド(10)を前記ジャグ(50)に対し移動させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ジャグ(50)の側壁の温度をIR感知するステップ、および/または前記ジャグ(50)のミルクの温度をIR感知するステップをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
近接センサ(32)によって前記ジャグ内のミルクレベルを測定するステップをさらに含む、請求項12、13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ジャグ(50)のサイズを識別するための手段をさらに含む、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
泡立てサイクルを開始する前に、蒸気管(11)内で形成された蒸気凝縮液を排出するステップをさらに含む、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を調製する機械の分野に関する。より詳細には、本発明は、コーヒーショップ、レストランなどや家庭環境で使用されるエスプレッソコーヒーマシンなどの温かい飲料を作るマシンの分野に関する。さらにより詳細には、本発明は、カプチーノなどの温かい飲料、またはある量の泡立てたミルクを含むエスプレッソコーヒーのあらゆるバリエーションを調製するためにある量のミルクまたは他の液体食品を加熱および/または泡立てるための装置に関する。最後に、本発明は、上記の飲料のいずれかを調製するためにある量のミルクを泡立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、エスプレッソコーヒーマシンは、エスプレッソまたはエスプレッソコーヒーと呼ばれる濃厚で濃いコーヒー飲料を作るために、沸点近くの加圧された水を挽いたコーヒーのパックとフィルターに通すことによってコーヒーを抽出する。いくつかのエスプレッソコーヒーマシンには、ある量の水、ミルクなどを加熱および/または泡立てるための蒸気を生成する手段が装備されている。そのような蒸気生成手段は、通常、蒸気ボイラーなどの蒸気リザーバ、蒸気回路、蒸気弁、および蒸気を放出する開口部で終わる蒸気ワンドを備える。
【0003】
通常、エスプレッソコーヒーマシンオペレータ(「バリスタ」とも呼ばれます)は、加熱して泡立てるべき分量の液体を含むポットまたは同様の容器に蒸気ワンドを挿入する。次に、バリスタは蒸気回路を開いてワンドの先端の開口部から蒸気を流出させる。蒸気が流出している間、バリスタは適切な温度で適切な泡立ちおよびテクスチャー(質感)を有するミルク(または同様のもの)を得るためにジャグを適切に移動、および/または平行移動、および/または回転させる。
【0004】
得られた熱い泡立てたミルクは、通常、カプチーノ、「カフェマキアート」(コーヒーカップに入れた少量の熱い泡立てミルクを加えたシングルショットエスプレッソコーヒー)、またはエスプレッソコーヒーの周知の複数のバリエーションのいずれかを調製するために使用される。熱い泡立てミルクは、必ずしもコーヒーをベースとしない他の飲料、例えばホットチョコレートなど、の調製にも使用される。
【0005】
WO2016/079680 A1は、液体を含む容器を置くためのプラットフォーム、容器に蒸気を供給するように構成された開放端を有するパイプ、パイプの先端とプラットフォームとの相対運動を作動させるように構成された駆動装置、容器内の液体の液体レベルを決定する手段、および制御ユニットを含む装置を開示している。制御ユニットは、液体レベルに基づいてパイプの先端とプラットフォームの間の相対的な初期位置を推測して駆動装置を作動させるように構成されている。液体レベルを決定する手段は計量装置を含む。制御ユニットは重量から液体レベルを決定するように構成されている。
【0006】
EP2433527A1は、自動ミルク泡立てワンドを開示している。
【0007】
US2014/264972AIは、泡立てアセンブリおよびそれを操作する方法を開示している。
【0008】
US2004/0009281は、温かい飲料用の泡立てたスチームミルクを製造するシステムおよび方法を開示している。
【0009】
EP2389848A1は、ミルクを加熱して泡立てるための装置および関連する方法を開示している。
【0010】
US2013/064941AIは、装置を使ってカプチーノ用のマイクロフォームホイップミルクを調製する方法またはタンパク質を含む他の液体をホイップする方法を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「ミルク」は、動物由来のミルク、植物性ミルク(すなわち植物から抽出されたミルク)および化学プロセスから得られたミルクを含む任意の液体食品を含む。動物由来のミルクには、牛乳、山羊乳、羊乳が含まれる。植物性ミルクには、いわゆる豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルク、およびライズミルクが含まれる。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲について、用語「エスプレッソコーヒーマシン」、「コーヒーマシン」または「マシン」は、エスプレッソコーヒー、カプチーノなどのような温かい飲料を作るためのマシンを指す。通常、このような機械は飲料を作るためにコーヒー粉末を使用するが、大麦などの他の穀物の粉末も使用できる。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「ジャグ」は、ピッチャー、および加熱および/または泡立てるミルクを収容するのに適した他の容器または器を含む。
【0014】
特に明記しない限り、「泡立てミルク」という表現は、ミルクが体積を膨張して微小気泡構造になるように蒸気および/または加熱空気を使用してミルクを加熱し、特定の適切なテクスチャーを提供することも含む。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において、「傾ける」という動詞は、中心位置を中心とする時計回りと反時計回りの反復運動を意味することを意図している。その一つの例は、
i 基準点から、基準点から+δ度の第1の最大回転点までの時計回り(または反時計回り)の運動;
ii 第1の最大回転点から、基準点から-δ度の第2の最大回転点までの反時計回り(または時計回り)の運動;
iii 第2の最大回転点から、基準点から+δ度までの第1の最大回転点までの時計回り(または反時計回り)の運動;
を含む。
【0016】
典型的には、傾斜運動は、iiおよびiiiに従った多数の振動を含み、基準点を中心とした回転角度で規定される。たとえば、「±15°」という用語は、基準点を中心とした15°の振動回転運動を示す。これは、レジームで、30°の時計回り-反時計周りの回転が提供されることを意味する。
【0017】
好ましくは、時計回りおよび反時計回りの回転は同じ角速度で実行される。
【0018】
回転運動は、反対方向に回転を開始する前に一時停止することなく連続的であっても、反対方向に回転を開始する前に一時停止してもよい。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲において、特に明記しない限り、すべての数字および値は、その前に「約」という語が付くものとして意図されている。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲において、「水平」という表現は、完全に水平およびほぼ水平、すなわち水平方向に対して10°未満、好ましくは5°未満の角度で傾いているものも含む。同様に、「垂直」という表現は、完全に垂直およびほぼ垂直、すなわち垂直方向に対して10°未満、好ましくは5°未満の角度で傾いているものを含む。
【0021】
エスプレッソベースの飲料用の泡立てミルクは、長時間のトレーニングとその製法の理解を必要とする一つの芸術形式である。経験豊富なコーヒーメーカーのオペレータの手の動きによって泡立てたミルクのコンシステンシー(粘性)とテクスチャーが決まる。
【0022】
本出願人は、国際公開第2016/079680号の装置はバリスタがある量のミルクを泡立てるのに役立つが、経験豊富なバリスタが作ったようにミルクが泡立たないことに気付いた。
【0023】
本出願人は、経験豊富なバリスタのようにミルクを泡立てる装置を提供するという問題に取り組んできた。
【0024】
特に、出願人は、経験豊富なコーヒーメーカーのオペレータの手の動きを模倣し、コーヒー業界の基準に従って最高品質の泡立てミルクを自動で再現する装置を提供するという問題に取り組んできた。
【0025】
出願人は、ミルクへの蒸気の供給中に、ミルクの量を入れたジャグを傾けると、より良い結果が得られることに気付いた。
【0026】
本発明の装置は、コーヒーショップおよびレストランで使用して、コーヒーマシンのオペレータの生産性を高めるとともに、ミルクのテクスチャーおよび温度に関して高いコンシステンシーの泡立てたミルクを提供することができる。しかし、本発明による装置は、家庭環境(すなわち、家庭内)で使用して、家庭でプロのコーヒーを体験することができる。
【0027】
本発明の装置は、熟練したコーヒーメーカーのオペレータの動きを模倣することにより、最高等級の泡立ちミルクを自動的に生成する。
【0028】
本発明の装置は、ジャグ(および/または蒸気ワンド)の傾動と、ジャグ対する蒸気ワンド(および/または蒸気ワンドに対するジャグ)の並進上下動とを組み合わせる。出願人は、ジャグを枢動で傾けることにより、重力がミルクを回転させることを認識した。ミルクは乱流を生成し、蒸気によって導入されたミルク内の気泡を滑らかにする。これにより、マイクロバブルのコンシステンシーが得られる。
【0029】
好ましい実施形態によれば、装置は温度および/またはレベルセンサを含む。
【0030】
ジャグに対するワンドの往復上下動、ジャグおよび/または蒸気ワンドの枢動、ミルクの温度検知およびレベル検知の組み合わせは、高品質で、高コンシステンシーで、滑らかで光沢のある泡立てミルクを最高級の形で生成する高度に熟練したコーヒーマシンオペレータの技能を自動的に模倣している。
【0031】
このマシンは、忙しいカフェ環境のコーヒーマシンオペレータと未熟なコーヒーオペレータが常に完璧なカップコーヒーやミルクベースドリンクを作るのを支援することができる。
【0032】
また、この装置は、豊富なトレーニングや事前の知識がなくても、コーヒー愛好家が自宅で完璧なコーヒー/ミルクベースの飲み物を作るのに役立つように設計されている。
【0033】
一態様によれば、本発明は、ある量のミルクを泡立てる装置を提供する。この装置は、泡立てるミルクを含むジャグを支持するプラットフォームと、蒸気および/または加熱空気を放出するように構成された蒸気ワンドとを備え、前記プラットフォームが水平軸の周りに傾動可能であるか、または前記蒸気ワンドが水平軸の周りに傾動可能であり、前記蒸気ワンドと前記プラットフォームが往復運動可能である。好ましくは、それらは、一方が他方に対して垂直方向に並進運動することが可能である。より正確には、ジャグに対する蒸気ワンドのおよび/または蒸気ワンドに対するジャグの並進垂直運動が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記装置は、水平シャフトと、該シャフトに接続されたモータとをさらに備え、該シャフトはプラットフォームにも接続され、該シャフトの傾斜がプラットフォームの傾斜をもたらす。
【0035】
プラットフォームは、第1の直径のジャグまたは第1の直径よりも大きい第2の直径のジャグをプラットフォームの上に中心に収容できるように設計されたセンタリング機構を備えることができる。
【0036】
前記装置は、並進キャリッジを備え、該並進キャリッジに接続された前記蒸気ワンドを垂直に並進させるリニアアクチュエータを備えることができる。
【0037】
前記装置は、ジャグの側壁の温度を検知するように配置されたIR温度センサおよびジャグ内のミルクの温度を検知するように配置されたIRミルク温度センサの少なくとも1つをさらに備えることができる。
【0038】
前記装置は、ジャグ内のミルクレベルを測定するための近接センサをさらに備えることができる。
【0039】
前記装置は、ジャグのサイズを識別するために、無線周波数識別(RFID)タグを読み取るように構成された無線周波数識別(RFID)リーダをさらに備えることができる。
【0040】
前記装置は、ジャグのサイズを識別するために近接センサをさらに備えることができる。
【0041】
前記装置は、蒸気源に接続された三方弁をさらに備えることができる。
【0042】
前記装置は、ディスプレイと、複数のパラメータのうちの1つを選択する手段をさらに備えることができる。
【0043】
第2の態様によれば、本発明は、飲料を調製するためにある量のミルクを泡立てる方法を提供し、該方法は、
ジャグにある量のミルクを供給するステップと、
支持プラットフォームを準備し、前記ジャグを前記支持プラットフォームに置くステップと、
蒸気および/または加熱空気を放出する蒸気ワンドを準備するステップであって、前記蒸気ワンドと前記支持プラットフォームが、前記ワンドの先端部が前記ジャグ内にない第1の位置から前記ワンドの先端部が前記ジャグ内の前記ある量のミルクに少なくとも部分的に沈められる第2の位置まで相対的に往復運動可能である、ステップと、
前記支持プラットフォームと蒸気ワンドの少なくとも一方を傾動させながら、前記ワンドの先端部から蒸気および/または加熱空気を放出させるステップと、
を備える。
【0044】
前記方法は、前記ジャグの側壁の温度をIR感知するステップ、および/または前記ジャグのミルクの温度をIR感知するステップをさらに含むことができる。
【0045】
前記方法は、近接センサによって前記ジャグ内のミルクレベルを測定するステップをさらに含むことができる。
【0046】
前記方法は、前記ジャグのサイズを識別するための手段をさらに含むことができる。
【0047】
前記方法は、泡立てサイクルを開始する前に、蒸気管内で形成された蒸気凝縮液を排出するステップをさらに含むことができる。
【0048】
一実施形態によれば、前記装置はコーヒーマシンに組み込むことができる。
【0049】
別の実施形態によれば、前記装置はコーヒーマシンとは別個の装置としてもよい。可能なら、蒸気発生回路は少なくとも部分的にコーヒーマシンに組み込んでもよい。
【0050】
さらに別の実施形態によれば、蒸気発生回路の少なくとも一部分は前記装置に対して離れた位置に配置してもよい。例えば、前記装置はカウンターまたは他の任意の支持表面上に配置し、蒸気回路(または少なくともスチームボイラ)はカウンター上のスペースを確保するためにカウンターの下に配置することができる。スチームボイラは取り外し可能なモジュール内に配置してもよい。例えば、このモジュールは引き出しのように平行移動可能にしてよい。
【0051】
本発明は、非限定例として与えられる以下の詳細な説明を添付図面を参照しながら読むことによってよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の一実施形態による泡立て装置の等角図であり、蒸気ワンドは最高位置にあり、液体容器支持部は水平位置にある。
【
図5】
図1の泡立て装置の別の等角図であり、蒸気ワンドは最低位置にあり、液体容器支持部は水平位置にある。
【
図6】
図5と同様の等角図であり、液体容器支持部は傾いた位置にある。
【
図7】
図7a,7bおよび7cは本発明の一実施形態による泡立て装置のユーザインターフェースを示す。
【
図8】本発明の泡立て装置とコーヒーマシンとの間の接続を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の一実施形態による泡立て装置が、添付図面のいくつかに異なる構成で示されている。本発明を理解するのに重要な本装置のいくつかの部分のみが図示されていることに留意されたい。最後に、本装置は異なる形状をとることができ、適切な形状のハウジングを備えることができる。
【0054】
図1は本発明による泡立て装置の一実施形態を示す。この装置は全体を参照番号AMFで示されている。
【0055】
泡立て装置AMFは、ジャグ50を支持するためのプラットフォーム1を備える。好ましくは、プラットフォーム1は円形またはほぼ円形である。プラットフォーム1の直径は、ジャグ50の底部を収容するように適合されている。
【0056】
しかし、本発明の好ましい実施形態によれば、プラットフォーム1は、それぞれが異なる容積および対応する異なる底部直径を有する複数のジャグを収容するように構成される。好ましくは、プラットフォーム1は、ジャグを中央に配置するためのセンタリング機構を備える。一実施形態によれば、センタリング機構は、3つの同心の円形段部1a、1b、および1cを含む。円形段部1aは、小サイズのジャグ(例えば、400mlのジャグ)に対応するように設計されている。円形段部1bは、中サイズのジャグ(例えば、600mlのジャグ)に対応するように設計されている。円形段部1cは、大サイズのジャグ(例えば、1000mlのジャグ)に対応するように設計されている。図では、例示のために小サイズのジャグが示されている。段部1cは、段部1bよりも上方に突出している。次に、段部1bは段部1aよりも大きく上方に突出している。
【0057】
同心の円形段部に加えて、または代りに、センタリング機構は磁気デバイスまたは円錐プラットフォームを含むことができる。
【0058】
好ましくは、プラットフォーム1は断熱される。一実施形態によれば、プラットフォーム1は、100℃以上の高温に耐えることができる高摩擦ポリマーで被覆される。適合ポリマーは、ポリオキシメチレン(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド-ナイロン(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フルオロカーボン(例えば、Viton)FKM、またはそれらの任意の組み合わせとし得る。
【0059】
支持プラットフォーム1は、傾動軸Xの周りに傾動可能である。好ましくは、傾動軸Xは実質的に水平である。傾動軸Xは、
図1および4に示すように向けることができる。ただし、傾動は、他の配置に対して、または他の配置において、90°に向けられた軸Yの周りに等しく行うこともできる。
【0060】
図4を参照すると、好ましくは、支持プラットフォーム1の傾動は、支持プラットフォーム1の中心を通るシャフト2を介して実行される。好ましくは、シャフト2の一端は、ステッピングモータ3に接続され、シャフトの他端はベアリングブロック4などによって支持される。
【0061】
好ましい一実施形態によれば、支持プラットフォーム1は、メンテナンスおよび/または洗浄のために少なくとも部分的に分解することができる。例えば、
図4に示されるように、プラットフォーム1をシャフト2に接続するためのネジ5が提供され得る。ネジ5の代わりに、磁気装置が提供され得る。磁気装置により、プラットフォーム1の取り付け/取り外しをすばやく簡単に行うことができる。
【0062】
好ましくは、支持プラットフォーム1の最大傾斜角は±15度である。好ましくは、傾斜角は±12度である。
【0063】
好ましくは、支持プラットフォーム1の回転速度は1rpmとし得る。
【0064】
好ましくは、ステッピングモータ3とベアリングブロック4は、図に部分的に示されているプレート6に取り付けられる。
【0065】
好ましい実施形態によれば、プラットフォーム1は、使用中にジャグから偶発的にこぼれ得る液体を収集するための排水容器7内に少なくとも部分的に封入される。図には示されていないが、排水容器7の上部開口部は、(線形または湾曲した)スロットを備えたグリッドまたは蓋によって閉じることができる。
【0066】
本発明による装置は、ステンレス鋼または他の金属材料で作られた蒸気ワンド10をさらに備える。一実施形態によれば、蒸気ワンドは、2つの同心管よりなり、その内管を蒸気が流れる「パフォーマンスタッチ」タイプである。2つの管の間のスペースに断熱材を設けることができる。このようにすると、外管の外表面はより低い温度に保たれ、バリスタはやけどを傷をする恐れなしにワンドをつかむことができる。好ましくは、蒸気ワンド10は、管11(
図8)によってコーヒーマシン12の蒸気発生器または蒸気ボイラー(図示せず)に接続される。場合によっては、管11は、
図8に示すように柔軟なタイプである。いくつかの実施形態によれば、管11は、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の合成フルオロポリマーで少なくとも部分的に作られる。
【0067】
リニアアクチュエータ15がプレート6に垂直に取り付けられる。リニアアクチュエータ15は、例えば蒸気管11などのケーブルおよび/または管を収容するために中空にすることができる。
【0068】
リニアアクチュエータは、任意の既知のタイプのものであってよい。例えば、PMI KM単段アクチュエータが本発明の装置に適切であると考えられる。このアクチュエータはリニアガイドとボールねじユニットで製造されている。その設計は、リニアガイドウェイのキャリッジとボールねじのナットを完全なキャリッジナットに組み合わせることで、スペースを節約することができる。
【0069】
キャリッジ151は、プレート6にほぼ垂直の垂直運動のために構成されている。二重矢印Zを参照されたい。蒸気ワンド10は、スライドキャリッジ151に接続されている。リニアアクチュエータ15は電気式または油圧式または空気圧式としてよい。
【0070】
上記の構成のおかげで、蒸気ワンド10はジャグ50の底部に向かって、または底部から離れるように動くことができるとともに、ジャグは蒸気がワンドから放出される間軸Xの周りに適切に傾けることができる。この平行運動と傾斜運動はともに、バリスタがジャグ50でミルクを泡立てている間にバリスタによって一般に行われる手の動きを再現するものである。傾斜運動は、重力による液体容器50内の液体循環を増加させる。
【0071】
望ましい動きはジャグに対する蒸気ワンドの動きであるが、本発明によれば、このような動きは、ジャグを蒸気ワンドに向けて平行移動させることによって置き換えることができる。
【0072】
本発明の装置は、高度に熟練したコーヒーメーカーのオペレータの手の動きを模倣する。その結果、本装置は2つの基本的な自動動的運動、すなわちZ軸上の蒸気ワンドの垂直運動(上下動)とX軸上のミルク容器のピボット運動、に対応するように設計される。望ましくは、Y軸上の動きは不要にする。
【0073】
蒸気ワンドの垂直運動とミルク容器のピボット運動(傾動)との組み合わせによって、
1.最高品質のマイクロフォームミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
2.120-600mlの量のミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
3.40-80°Cの温度範囲にミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
4.0-100%の体積増加でミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
5.種々のミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
6.さまざまなサイズの容器を用いてミルクを泡立て/テクスチャー付与する、
ために必要なダイナミックレンジが提供される。
【0074】
好ましくは、本発明の装置AMFは、動作パラメータを表示および/または設定および/または呼び出すためのユーザインターフェース20を備える。ユーザインターフェース20は、ディスプレイと、パラメータを選択および/または入力するための任意の既知の手段を備えることができる。そのような手段は、キーワード、(LCD)タッチスクリーン、選択キー、選択ノブ、音声認識装置などを含み得る。このような手段により、ユーザは場合によりメモリに格納された特定の設定を選択することができる。一実施形態によれば、エンドユーザは、専用のボタンに理想的なミルクプリセットを保存することができる。ディスプレイは、装置のどの部分にあっても、装置から離れていてもよい。たとえば、別のコーヒーマシンに配置してもよい。接続は有線でも無線でもよい。
【0075】
図に示す実施形態では、ユーザインターフェースは、ディスプレイ21、選択ノブ22、および3つのプリセットボタン23、24、および25を備える。表示および/または設定できる情報は以下に開示される。
【0076】
好ましい実施形態によれば、泡立て中のミルクの温度を直接的または間接的に検出するための1つ以上の温度センサを設けることができる。
【0077】
一実施形態によれば、第1の温度センサ30は、液体容器の外部温度を検出および/または監視するように構成される。他の実施形態では、この温度センサはジャグに埋め込むことができる。第1の温度センサ30は、ジャグに向かってほぼ水平に向けられた赤外線センサとしてもよい。好ましくは、第1の温度センサ30は、ミルクが確実に存在するジャグの下部を検知するように配置される。
【0078】
上記の第1の温度センサ30に加えて、またはその代わりに、第2のセンサ31を設けることができる。第2のセンサ31は、ジャグ内のミルクの温度を検知するように構成されている。第2の温度センサ31は、ジャグのミルク表面に向かってほぼ垂直に向けられた赤外線センサとしてよい。好ましくは、第2の温度センサ31は、ジャグの上に突出する上部ハウジング内に保護され、閉じ込められる。
【0079】
一実施形態によれば、装置AMFは、ジャグ内のミルクレベルを測定するための近接センサ(おそらく超音波)32をさらに備える。
図2に示すように、ミルクレベル近接センサは上記の上部ハウジング内に配置することができる。この位置はコンポーネントを保護した状態に保つ。
【0080】
上記のように、好ましい実施形態によれば、装置AMFは、異なるサイズのジャグ50を収容するように構成される。好ましくは、使用するジャグのサイズは、ジャグ上の無線周波数識別(RFID)タグ36を読み取るRFIDリーダ35、または支持プラットフォーム1上のジャグのサイズを決定する超音波センサによって検出される。既知のように、RFIDは、電磁場を使って、物体に添付された電子的に格納された情報を含むタグを自動的に識別し追跡する。代替実施形態(図示せず)は、バーコードリーダ、QRコードリーダ、または他の任意のコードリーダ(ジャグの外壁にバー/QRコードが添付されている場合)に基づいてよい。
【0081】
RFIDリーダ35に加えて(または代わりに)、本発明によれば、ジャグのサイズを検出するための近接センサ(場合により超音波センサ)40が設けられる。場合により、近接センサ40はジャグの下部を検出するために装置の下部に配置される。
【0082】
本発明の装置AMFの蒸気は、任意の既知の方法で生成することができる。一実施形態では、蒸気は装置AMFで生成される。他の実施形態では、蒸気はそこから離れた所で生成される。好ましくは、
図8の概略図に示されるように、蒸気はコーヒーマシンで生成され、蒸気管11により装置に送られる。好ましくは、二方電磁弁11aまたは二方機械弁が蒸気発生点に設けられ、三方電磁弁11bが装置AMFに設けられる。
【0083】
三方電磁弁11bを設けることは、バリスタが蒸気管11内に形成された蒸気凝縮液を放出したいとき(おそらく各新しいサイクルの開始時)に第3の弁を使用できるという点で有利である。有利なことに、蒸気凝縮液はドレン容器に排出できる。
【0084】
三方電磁弁11bを設けることは、バリスタが蒸気ワンドに存在する可能性のある過剰圧力を除去したいとき(おそらく各新しいサイクルの終了時)に、第3の弁を使用できるという点で有利である。
【0085】
好ましくは、本発明による装置は、マイクロプロセッサ60を備える。マイクロプロセッサ60は、蒸気ワンドの垂直位置、蒸気供給の持続時間、蒸気圧、ジャグの旋回角度および傾動速度のうちの1つ以上を制御するように構成されたプリセットプログラムを含むメモリに接続することができる。
【0086】
好ましくは、泡立てプロセスはバリスタによって開始され、特定の状態に達すると終了する。例えば、ジャグ表面の必要な温度が満たされ且つ所望のミルク体積の増加が満たされると、プロセスは終了する。好ましくは、泡立てプロセスが終了すると、蒸気ワンドはホームポジション(最上位置)に戻り、プラットフォームの傾きは水平位置に戻る。
【0087】
本発明による装置においてミルクをテクスチュリングするとともにその温度を上げるために使用される蒸気は、既存のコーヒーマシン及び/又は特定の装置用に独自に設計された独立した圧力容器に組み込むことができる。
【0088】
本発明の泡立て装置AMFは、別個の装置であってもよいし、ミルク容器を満たす自動ミルクディスペンサーと組み合わせて使用してもできる。
【0089】
図1~
図4は、ホームポジションにある装置の実施形態を示しており、プラットフォームは水平で傾動しておらず、蒸気ワンドはジャグ内のミルクに向かって蒸気を放出していない。ホームポジションは、ミルクの泡立ちを開始する前の位置、または泡立ちが完了した位置のいずれかである。
【0090】
図5は、ジャグ内に蒸気ワンドがあるがプラットフォームが水平である状態を示している。最後に、
図6は、ジャグ内に蒸気ワンドがあり、プラットフォームが水平配置に対して傾いている状態を示している。
【0091】
ワンドの垂直移動の最大経路は約300mmである。
【0092】
図7は、本発明による装置のインターフェースのいくつかの例を示す。図示されているように、ディスプレイ21は、上述した様々なセンサによって感知および検出された情報のうちの1つまたは複数の情報を表示することができる。
【0093】
たとえば(
図7a)、ディスプレイはプラットフォーム上にあるジャグのサイズは、小サイズのジャグ、中サイズのジャグ、および大サイズのジャグのうちのどれかを示すことができる。
図7aでは、中サイズの水差しが検出され、ディスプレイに表示されている。表示されるその他の情報は、ジャグ内のミルクの量(
図7aの例では220ml)とミルクの温度(
図7aの例では4°C)である。
【0094】
図7bは、ディスプレイ21、選択ノブ22、3つのプリセットボタン23、24および25、およびスタートボタン26を示す。
図7bのディスプレイ21は、
図7aのディスプレイ21と同じ情報を示す。また、泡立ち終了時のミルクの望ましい温度(62°C)と希望の泡の割合(30%)を示す。また、泡のタイプ(スキニー)も表示される。選択したミルクの価額とタイプは、メニュー(図示せず)から、おそらく選択ノブから選択できる。事前選択も、ボタン23、24、25のいずれかで呼び出すことができる。
【0095】
本発明の装置は、いくつかの条件が満たされない場合には作動しないように設計することもできる。
図7cは、一例として、アラーム状態を示している。例えば、ミルクの量が不十分な場合、装置は動作を開始しない。別のアラームは、ミルクの温度が高すぎることに関連するものとし得る。
【0096】
上記の(LCD)タッチスクリーンは、キーパッドと組み合わせて使用することができる。制御装置およびスクリーンは、好ましくは、装置の上または下のユーザに容易に見える角度の付いたパネル上に配置される。
【0097】
リセットボタンは、デバイスの前面の手の届きやすい場所に配置することができる。このボタンを押すと、二方電磁弁がオフになり、ワンドにより分注される蒸気がすぐに停止する。また、ワンドはホームポジションに戻り(
図1)、プラットフォームは傾動してホームポジションに戻る(
図1)。
【0098】
図9は、本発明による飲料を調製するためにある量のミルクを泡立てる方法のフローチャート100である。この方法は以下のステップ、
101:ジャグ50にある量のミルクを供給するステップ、
102:支持プラットフォーム1を準備するステップ、
103:ジャグ50を前記支持プラットフォーム1に置くステップ、
104:蒸気を放出する蒸気ワンド10を準備するステップであって、前記蒸気ワンド10と前記支持プラットフォーム1は、前記ワンドの先端部が前記ジャグ50内にない第1の位置から前記ワンドの先端部が前記ジャグ内の前記ある量のミルクに少なくとも部分的に沈められる第2の位置まで相対的に往復運動可能であるステップ、および
105:前記支持プラットフォーム1および蒸気ワンド10の少なくとも一方を傾動させながら、前記ワンド10の先端部から蒸気および/または加熱空気を放出させるステップ、
を備える。