IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特許-振動発電素子 図1
  • 特許-振動発電素子 図2
  • 特許-振動発電素子 図3
  • 特許-振動発電素子 図4
  • 特許-振動発電素子 図5
  • 特許-振動発電素子 図6
  • 特許-振動発電素子 図7
  • 特許-振動発電素子 図8
  • 特許-振動発電素子 図9
  • 特許-振動発電素子 図10
  • 特許-振動発電素子 図11
  • 特許-振動発電素子 図12
  • 特許-振動発電素子 図13
  • 特許-振動発電素子 図14A
  • 特許-振動発電素子 図14B
  • 特許-振動発電素子 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】振動発電素子
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
H02N1/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020020830
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021129336
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 將裕
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088780(JP,A)
【文献】特開2013-198314(JP,A)
【文献】特開2002-320369(JP,A)
【文献】特開2016-025762(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/019919(JP,A1)
【文献】特開2019-213296(JP,A)
【文献】特表平06-509642(JP,A)
【文献】特開2014-050249(JP,A)
【文献】特開2019-213294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、
前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、
前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、
前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、
前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、
前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、
前記第2可動電極の先端と、前記第2可動電極の前記先端が対向する前記第2固定電極の対向面との間の隙間距離が、前記第1可動電極の先端と、前記第1可動電極の前記先端が対向する前記第1固定電極の対向面との間の隙間距離と異な
前記第1可動電極が前記第2可動電極よりグラウンド側に配置された状態において、前記第1可動電極の先端と、前記第1可動電極の前記先端が対向する前記第1固定電極の前記対向面との間の隙間距離が、前記第2可動電極の先端と、前記第2可動電極の前記先端が対向する前記第2固定電極の前記対向面との間の隙間距離と同じか、それより大きく、前記可動体の振動中心が、グラウンド側にずれた状態で振動する、振動発電素子
【請求項2】
請求項1記載の振動発電素子において、
前記弾性支持部の前記固定端と、前記第1可動電極の前記先端が対向する前記第1固定電極の前記対向面との間の距離が、前記弾性支持部の前記固定端と、前記第2可動電極の前記先端が対向する前記第2固定電極の前記対向面との間の距離より大きい、振動発電素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動発電素子において、
前記第1固定電極および前記第2固定電極は、それぞれ、複数の櫛歯を有し、
前記第1固定電極の前記各櫛歯の長さは、前記第2固定電極の前記各櫛歯の長さより大きい、振動発電素子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の振動発電素子において、
前記第1可動電極および前記第2可動電極は、それぞれ、複数の櫛歯を有し、
前記第1可動電極の前記各櫛歯の長さは、前記第2可動電極の前記各櫛歯の長さより大きい、振動発電素子。
【請求項5】
ベースと、
複数の櫛歯を有する第1可動電極および複数の櫛歯を有する第2可動電極を有する可動体と、
前記第1可動電極に対向して設けられ、複数の櫛歯を有する第1固定電極と、
前記第2可動電極に対向して設けられ、複数の櫛歯を有する第2固定電極と、
前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、
前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、
前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、
前記第1可動電極の前記櫛歯と、前記第1固定電極の前記櫛歯とが対向する第1対向領域長さが、前記第2可動電極の前記櫛歯と、前記第2固定電極の前記櫛歯とが対向する第2対向領域長さと異な
前記第1可動電極が前記第2可動電極よりグラウンド側に配置された状態において、前記第1対向領域長さが、前記第2対向領域長さと同じか、それより小さく、前記可動体の振動中心が、グラウンド側にずれた状態で振動する、振動発電素子。
【請求項6】
請求項に記載の振動発電素子において、
前記第1可動電極の先端と、前記第1可動電極の前記先端が対向する前記第1固定電極の対向面との間の隙間距離が、前記第2可動電極の先端と、前記第2可動電極の前記先端が対向する前記第2固定電極の対向面との間の隙間距離と同じか、それより大きい、振動発電素子
【請求項7】
請求項に記載の振動発電素子において、
前記弾性支持部の前記固定端と、前記第1可動電極の前記櫛歯の先端が対向する前記第1固定電極の対向面との間の距離が、前記弾性支持部の前記固定端と、前記第2可動電極の前記櫛歯の先端が対向する前記第2固定電極の対向面との間の距離より小さい、振動発電素子。
【請求項8】
請求項からまでのいずれか一項に記載の振動発電素子において、
前記第1固定電極の前記櫛歯の長さは、前記第2固定電極の前記櫛歯の長さより小さい、振動発電素子。
【請求項9】
ベースと、
第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、
前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、
前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、
前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、
前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、
前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、
前記可動体の振幅を規制するため、前記可動体の前記第1固定電極側に配置された一端に対向して設けられた第1ストッパ、および前記可動体の前記第2固定電極側に配置された他端に対向して設けられた第2ストッパと、を備え、
前記可動体の前記他端と前記第2ストッパとの間の隙間距離と、前記可動体の前記一端と前記第1ストッパとの間の隙間距離が異なり、
前記可動体の前記一端と前記第1ストッパとの間の隙間距離が、前記可動体の前記他端と前記第2ストッパとの間の隙間距離より大きく、
前記第1可動電極が前記第2可動電極よりグラウンド側に配置された状態において、前記可動体の前記一端と前記第1ストッパとの間の隙間距離が、前記可動体の前記他端と前記第2ストッパとの間の隙間距離とほぼ同じか、それより大きく、前記可動体の振動中心が、グラウンド側にずれた状態で振動する、振動発電素子
【請求項10】
第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、
前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、
前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、
前記可動体を支持する弾性支持部と、
前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、
前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、
前記第2可動電極と前記第2固定電極との間に作用する静電力と、前記第1可動電極と前記第1固定電極との間に作用する静電力とが異なる、振動発電素子。
【請求項11】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第1可動電極が前記第2可動電極よりグラウンド側に配置された状態において、前記第2可動電極と前記第2固定電極との間に作用する静電力が、前記第1可動電極と前記第1固定電極との間に作用する静電力より大きい、振動発電素子。
【請求項12】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第2エレクトレットの帯電電圧が、前記第1エレクトレットの帯電電圧より大きい、振動発電素子。
【請求項13】
請求項1または1に記載の振動発電素子において、
前記第1固定電極と前記第2固定電極は、それぞれ、複数の櫛歯を有し、
前記第1可動電極と前記第2可動電極は、それぞれ、前記第1固定電極または前記第2固定電極に挿入される複数の櫛歯を有する、振動発電素子。
【請求項14】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第2可動電極の前記櫛歯の数は、前記第1可動電極の前記櫛歯の数より多く、
前記第2固定電極の前記櫛歯の数は、前記第1固定電極の前記櫛歯の数より多い、振動発電素子。
【請求項15】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第2可動電極の前記各櫛歯の厚さは、前記第1可動電極の前記各櫛歯の厚さより厚く、
前記第2固定電極の前記各櫛歯の厚さは、前記第1固定電極の前記各櫛歯の厚さより厚い、振動発電素子。
【請求項16】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第2固定電極の前記櫛歯と前記第2可動電極の前記櫛歯との隙間は、前記第1固定電極の前記櫛歯と前記第1可動電極の前記櫛歯との隙間より小さい、振動発電素子。
【請求項17】
請求項1から1までのいずれか一項に記載の振動発電素子において、
前記可動体は、前記弾性支持部に支持される可動部と、前記可動部に固定された錘を含む、振動発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境振動を用いて発電する振動発電素子が知られている。振動発電素子は、弾性支持部により支持された可動部に設けられた一対の可動櫛歯電極を、各可動櫛歯電極に対向して固定部に設けられた各固定櫛歯電極に挿脱可能に設ける構造を有している。外部からの衝撃が振動発電素子に加わると、弾性支持された可動櫛歯電極が固定櫛歯電極に対して振動し、可動櫛歯電極が固定櫛歯電極に対して挿脱され、その結果、発電が行われる。
【0003】
振動発電素子は、可動部の振動方向の相対向する側面それぞれに、第1固定櫛歯電極に対して挿脱される第1可動櫛歯電極と、第2固定櫛歯電極に対して挿脱される第2可動櫛歯電極を有する。第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極との少なくとも一方および第2可動櫛歯電極と第2固定櫛歯電極との少なくとも一方には、それぞれ、エレクトレットが形成されている。可動部の振幅を規制するため、可動部の第1固定櫛歯電極側に配置された第1ストッパ、および可動部の第2固定櫛歯電極側に配置された第2ストッパと、を備えた構造を有する振動発電素子もある。
【0004】
可動部が振動すると、第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極との対向面積が変化する。例えば、第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極との対向面積が増加すると第2可動櫛歯電極と第2固定櫛歯電極との対向面積が、減少する。逆に、第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極との対向面積が減少すると第2可動櫛歯電極と第2固定櫛歯電極との対向面積が、増大する。このような、対向面積の変化によって、エレクトレットの誘導電荷が変化する。これにより、第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極との間の電圧および第2可動櫛歯電極と第2固定櫛歯電極との間の電圧が変化して発電が行なわれる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-88780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の振動発電素子は、可動部の振動方向をグラウンドに鉛直方向に設置すると、可動部が、自重によりグラウンド側に移動する。例えば、第1可動櫛歯電極を第2可動櫛歯電極よりグラウンド側に配置した鉛直状態では、第1可動櫛歯電極がグラウンド側に移動する。このため、第1可動櫛歯電極の先端と、第1可動櫛歯電極の先端に対向する第1固定櫛歯電極の対向面との間の隙間距離が、振動発電素子が水平に配置された場合より小さくなる。あるいは、第1可動櫛歯電極の一端と第1ストッパとの間の隙間距離が、振動発電素子が水平に配置された場合より小さくなる。このため、可動部が僅かに振動しただけで、第1可動櫛歯電極の先端が上記第1固定櫛歯電極の対向面に当接する。あるいは、第1可動櫛歯電極の一端が第1ストッパに当接する。これにより、可動部の振動の振幅が小さくなり、振動発電素子の発電効率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による振動発電素子は、ベースと、第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、前記第2可動電極の先端と、前記第2可動電極の前記先端が対向する前記第2固定電極の対向面との間の隙間距離が、前記第1可動電極の先端と、前記第1可動電極の前記先端が対向する前記第1固定電極の対向面との間の隙間距離と異なる。
本発明の第2の態様による振動発電素子は、ベースと、複数の櫛歯を有する第1可動電極および複数の櫛歯を有する第2可動電極を有する可動体と、前記第1可動電極に対向して設けられ、複数の櫛歯を有する第1固定電極と、前記第2可動電極に対向して設けられ、複数の櫛歯を有する第2固定電極と、前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、前記第1可動電極の前記櫛歯と、前記第1固定電極の前記櫛歯とが対向する第1対向領域長さが、前記第2可動電極の前記櫛歯と、前記第2固定電極の前記櫛歯とが対向する第2対向領域長さと異なる。
本発明の第3の態様による振動発電素子は、ベースと、第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、前記ベースに固定される固定端を有し、前記可動体を支持する弾性支持部と、前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、前記可動体の振幅を規制するため、前記可動体の前記第1固定電極側に配置された一端に対向して設けられた第1ストッパ、および前記可動体の前記第2固定電極側に配置された他端に対向して設けられた第2ストッパと、を備え、前記可動体の前記他端と前記第2ストッパとの間の隙間距離と、前記可動体の前記一端と前記第1ストッパとの間の隙間距離が異なる。
本発明の第4の態様による振動発電素子は、第1可動電極および第2可動電極を有する可動体と、前記第1可動電極に対向して設けられた第1固定電極と、前記第2可動電極に対向して設けられた第2固定電極と、前記可動体を支持する弾性支持部と、前記第1可動電極および前記第1固定電極の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、前記第2可動電極および前記第2固定電極の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備え、前記第2可動電極と前記第2固定電極との間に作用する静電力と、前記第1可動電極と前記第1固定電極との間に作用する静電力とが異なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動部に作用する重力に起因する発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図2図2は、図1に図示された振動発電素子が、グラウンドに対して鉛直に配置された状態を示す。
図3図3は、本発明の第2の実施形態を示す振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図4図4は、図3に図示された振動発電素子が、グラウンドに対して鉛直に配置された状態を示す。
図5図5は、本発明の第3の実施形態による振動発電素子を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図6図6は、図5に図示された振動発電素子のVI-VI線断面図である。
図7図7は、図5に図示された振動発電素子が、グラウンドに対して鉛直に配置された状態を示す。
図8図8は、本発明の第4の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図である。
図9図9は、図8に図示された振動発電素子のエレクトレット形成方法を示す模式図である。
図10図10は、図9に続く振動発電素子のエレクトレット形成方法を示す模式図である。
図11図11は、本発明の第5の実施形態による振動発電素子の平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図12図12は、本発明の第6の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図13図13は、本発明の第7の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図14A図14Aは、図13のXIVA-XIVA線断面である。
図14B図14Bは、図13のXIVB-XIVBA線断面である。
図15図15は、本発明の第8の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
-第1の実施形態-
図1および図2を参照して第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
以下の説明において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、図面に示された方向とする。なお、図1および図2において、Z軸方向は、紙面の裏側から紙面の表側に向かう方向である。
振動発電素子10は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、一般的なMEMS加工技術により形成される。振動発電素子10は、ベース2と、可動部3と、可動部3に接続された第1可動櫛歯電極31と、可動部3に接続された第2可動櫛歯電極32と、可動部3をベース2に弾性的に接続する一対の弾性支持部33a、33bと、第1可動櫛歯電極31と噛合する第1固定櫛歯電極41と、第2可動櫛歯電極32と噛合する第2固定櫛歯電極42とを備えている。
なお、以下の説明において、可動櫛歯電極および固定櫛歯電極を単に可動電極、固定電極と呼ぶ。
【0011】
ベース2は、例えば、シリコンにより形成されている。可動部3、第1可動電極31、第2可動電極32、一対の弾性支持部33a、33b、第1固定電極41、第2固定電極42は、シリコン活性層により形成されている。図示はしないが、ベース2と可動部3との間には、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機絶縁材料が介在している。一対の弾性支持部33a、33bは、それぞれ、ベース2に固定された固定端36を有しており、各固定端36も、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機材料を介してベース2に固定されている。
【0012】
可動部3には、錘34が、接着剤などにより固定されており、可動部3と錘34は可動体35を構成している。可動部3に錘34を固定するのは、可動部3の質量を増大させて小さな環境振動でも効率よく発電するためである。但し、可動体35を、錘34を有してない可動部3のみにより構成してもよい。
【0013】
第1可動電極31はY軸方向に配列された複数の櫛歯31aを有し、第2可動電極32はY軸方向に配列された複数の櫛歯32aを有する。可動部3、第1可動電極31、第2可動電極32および一対の弾性支持部33a、33bは、上述したように、MEMS加工により一体的に形成されている。
【0014】
第1固定電極41は、第1可動電極31の+X側に配置されている。第1固定電極41は、第1可動電極31の各櫛歯31aが挿入される複数の櫛歯41aを有する。第2固定電極42は、第2可動電極32の-X側に配置されている。第2固定電極42は、第2可動電極32の各櫛歯32aが挿入される複数の櫛歯42aを有する。
第1固定電極41および第2固定電極42は、接続リード71により負荷70に電気的に接続されている。
【0015】
ベース2には、開口2aが形成されており、可動部3、第1可動電極31、第2可動電極32、および弾性支持部33a、33bの固定端36を除く部分は、ベース2の開口2a上に配置されている。また、第1固定電極41および第2固定電極42それぞれのベース2に接合された部分以外の部分、すなわち、複数の櫛歯41a、42aおよび櫛歯41a同士、または櫛歯42a同士を連結する部分の一部は、それぞれ、開口2a上に配置されている。換言すると、可動電極31、32の櫛歯31a、32aが対面して相対的に移動する櫛歯41a、42aの部分は、開口2a上に配置されている。
【0016】
第1可動電極31および第1固定電極41の一方、または両方には、第1エレクトレットが形成されている。また、第2可動電極32および第2固定電極42の一方、または両方には、第2エレクトレットが形成されている。
【0017】
振動発電素子10を振動源に設置することにより、可動部3は、X軸方向に振動する。可動部3の一対の弾性支持部33a、33bは、Y軸方向およびZ軸方向の剛性が大きく形成され、可動部3は、主として、X軸方向に振動するように設定されている。例えば、可動部3が+X軸方向に変位すると、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32の櫛歯32aの対向面積が減少し、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aの対向面積が増大する。対向面積が変化すると、エレクトレットの誘導電荷が変化する。このように、第1固定電極41、第2固定電極42と、第1可動電極31、第2可動電極32との間の誘導電荷が変化することにより発電が行なわれる。
【0018】
振動発電素子10が発生した電力は、例えば、温度センサ、音圧センサ、鉄道保安装置等の負荷70を駆動する。
【0019】
図1は、振動発電素子10が水平に配置された状態で可動部3が振動していない静止状態を示している。
この状態では、弾性支持部33a、33bは、変形しておらず、一直線状に延在されている。弾性支持部33a、33bの固定端36の中心C-Cと、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間には距離La1が設けられている。弾性支持部33a、33の固定端36の中心C-Cと、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間には距離La2が設けられている。距離La1は距離La2より大きく設定されている。また、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Ca1より小さく設定されている。
【0020】
図1に図示されるように振動発電素子10が水平に配置される場合、第1固定電極41の各櫛歯41aのX軸方向(可動部3の振動方向)の先端から対向面61までの長さは、第2固定電極42の各櫛歯42aのX軸方向の先端から対向面62までの長さより大きい。また、第1可動電極31の各櫛歯31aのX軸方向の長さは、第2可動電極32の各櫛歯32aのX軸方向の長さより大きい。さらに、この状態では、第2固定電極42の櫛歯42aと、第2可動電極32の櫛歯32aとが対向する対向領域(重なり合う領域)のX軸方向の長さ(第2対向領域長さDa2)は、第1固定電極41の櫛歯41aと、第1可動電極31の櫛歯31aとが対向する対向領域のX軸方向の長さ(第1対向領域長さDa1)より大きい。
【0021】
図2は、図1に図示された振動発電素子が、グラウンド(地面、大地)に対して鉛直に配置されている状態、換言すると、振動発電素子が鉛直に配置されている状態を示す。すなわち、図2の振動発電素子10は、図1に比べて、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド(下方)側に接近する姿勢(鉛直姿勢)となっている。実施の形態では、グラウンドに鉛直に配置された振動発電素子の取付姿勢を垂直姿勢、あるいは鉛直姿勢と呼ぶ。
なお、グラウンドに90度以外の角度で傾斜して配置される場合も同様に、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド(下方)側に接近する姿勢となる。この状態では、図1に比べて、重力の作用により、可動体35が、弾性支持部33a、33bを撓ませてグラウンド側に下降する。可動体35のグラウンド側への下降と共に、第1可動電極31と第2可動電極32が下方へ移動する。
【0022】
このため、この状態における、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Cag1は、振動発電素子10が水平状態に配置された図1における、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Ca1より小さくなる。一方、図2の状態における、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cag2は、振動発電素子10が水平状態に配置された図1における、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との隙間距離Ca2より大きくなる。
【0023】
ここで、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Cag1が、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cag2と同じか、それより大きくなるように設定されている。
【0024】
従って、振動源に設置された可動体35が振動した場合、第2可動電極32の先端52が第2固定電極42の対向面62に当接するまでは、第1可動電極31の先端51が第1固定電極41の対向面61に当接することはない。このため、図2に図示されるように、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド側に配置した状態において、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0025】
振動発電素子10を、図1に示す水平配置状態から図2に示す鉛直配置状態にすると、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が増大し、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Ca1が減少する。
【0026】
上述したように、振動発電素子10が、図1に示す水平状態において、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Ca1より小さく設定されている。
つまり、第1可動電極31の櫛歯31aと第1固定電極41の櫛歯41aが対向する領域の長さ(第1対向領域長さDa1)が増大し、第2可動電極32の櫛歯32aと第2固定電極42の櫛歯42aが対向する領域の長さ(第2対向領域長さDa2)が減少する。このため、図2に示すように、振動発電素子10を鉛直状態にしたとき、第1対向領域長さDag1と対向領域長さDag2とが等しくなる方向に近付く。これにより、第1可動電極31の櫛歯31aと第1固定電極41の櫛歯41aの間のエレクトレットの誘電電圧と、第2可動電極32の櫛歯32aと第2固定電極42の櫛歯42aの間のエレクトレットの誘電電圧を等しくなる方向に近付けることができる。振動発電素子10を鉛直状態で、第1対向領域長さDag1と第2対向領域長さDag2が等しくなるようにすることもできる。但し、第1対向領域長さDag1と第2対向領域長さDag2とは、等しくする必要はない。
【0027】
上記では、水平状態で、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Ca1より小さく設定された構造として例示した。しかし、隙間距離Ca2と隙間距離Ca1とのうち、隙間距離が大きい方をグラウンド側に配置すれば、振動発電素子10を鉛直状態にしたとき、第1対向領域長さDag1と対向領域長さDag2とが等しくなる方向に近付く。このため、水平状態で、第1可動電極31の櫛歯31aと、第1固定電極1の櫛歯31aとが対向する第1対向領域長さDa1が、第2可動電極32の櫛歯32aと、第2固定電極32の櫛歯32aとが対向する第2対向領域長さDa2と異なる構造とすればよい。
【0028】
上記第1の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)振動発電素子10は、ベース2と、第1可動電極31および第2可動電極32を有する可動体35と、第1可動電極31に対向して設けられた第1固定電極41と、第2可動電極32に対向して設けられた第2固定電極42と、ベース2に固定される固定端36を有し、可動体35を弾性的に支持する弾性支持部と33a、33bとを備え、第1可動電極31および第1固定電極41の少なくとも一方には第1エレクトレットが、第2可動電極32および第2固定電極42の少なくとも一方には第2エレクトレットが設けられている。
このような振動発電素子10において、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Ca1と異なっている。このため、隙間距離Ca1と隙間距離Ca2のうち、隙間距離が大きい側の櫛歯電極構造を、隙間距離が小さい側の櫛歯電極構造よりグラウンド側に接近して振動源に設置することにより、隙間距離Ca1と隙間距離Ca2を同一に設定した振動発電素子に比べて、可動体35が振動する際の振幅を大きくすることができる。これにより、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0029】
(2)上記振動発電素子10において、第1可動電極31が第2可動電極32よりグラウンド側に配置された状態において、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Cag1が、第2可動電極32の先端と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cag2と同じか、それより大きい。このため、振動発電素子10が第1固定電極41側を第2固定電極42よりグラウンド側に配置した状態で、可動体35が振動した場合、第2可動電極32の先端52が第2固定電極42の対向面62に当接するまでは、これにより、振動発電素子10をグラウンドに対しては鉛直状態にした場合において、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0030】
(3)上記振動発電素子10は、弾性支持部33a、33bの固定端36と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の距離La1が、弾性支持部33a、33bの固定端36と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の距離La2より大きい構成を有する。このように、距離La2を距離La1と同じにせず、距離La1より小さくしたので、振動発電素子10の振動方向の長さを小さくすることができ、振動発電素子10の小型化を図ることができる。換言すると、一対の可動電極と固定電極を有する振動発電素子において、鉛直配置を加味して、双方の櫛歯構造を同一にすると、図1図2では、第2可動電極および第2固定電極の寸法を、第1可動電極および第1固定電極の寸法に合わせる必要があり、大型化してしまうが、実施の形態のように、双方の櫛歯構造を非対称にすることで小型化を図ることができる。
【0031】
-第2の実施形態-
図3図4を参照して第2の実施形態を説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態を示す振動発電素子の概略構成を示す平面図であり、振動発電素子が水平に配置された状態を示す。
図3に示す振動発電素子10Aが、図1に示す第1の実施形態と相違する点は、弾性支持部33a、33bの固定端36と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の距離Lb1が、弾性支持部33a、33の固定端36と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の距離Lb2より小さく設定されている点である。また、第2の実施形態では、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cb2と、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Cb1とは、ほぼ同じ長さである点でも、第1の実施形態とは相違する。
以下の説明では、第1の実施形態と相違する点を主に説明し、第1の実施形態と同様な構造についての説明は、適宜、省略する。
【0032】
第2の実施形態の振動発電素子10Aにおいては、上述したように、弾性支持部33a、33bの固定端36の中心C-Cと、第1固定電極41の対向面61との間の距離Lb1は、弾性支持部33a、33の固定端36の中心C-Cと、第2固定電極42の対向面62との間の距離Lb2より小さく設定されている。また、隙間距離Cb2と、隙間距離Cb1とは、ほぼ同じ長さである。
【0033】
図3に示す振動発電素子10においても、第2固定電極42の櫛歯42aと、第2可動電極32の櫛歯32aとが対向する対向領域のX軸方向の長さ(第2対向領域長さDb2)は、第1固定電極41の櫛歯41aと、第1可動電極31の櫛歯31aとが対向する対向領域のX軸方向の長さ(第1対向領域長さDb1)より大きい。但し、第1固定電極41の櫛歯41aの長さ(Db1+Cb1)は、第2固定電極42の櫛歯42aの長さ(Db2+C
b2)より小さい。
【0034】
図4は、図3に図示された振動発電素子が、可動部の振動方向がグラウンドに対して鉛直に配置された状態を示す。すなわち、振動発電素子10Aは、図3に比べて、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド側に配置した状態となっている。
この状態では,重力の作用により、図1に比べて、可動体35が、弾性支持部33a、33bを撓ませてグラウンド側に下降する。可動体35のグラウンド側への下降と共に、第1可動電極31と第2可動電極32が下方へ移動する。このため、図4に示す振動発電素子10Aは、第1の実施形態の図2に示す構造と同様、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Cbg1は、振動発電素子10Aが水平状態における、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Cb1より小さくなる。
【0035】
一方、図4の状態における第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cbg2は、振動発電素子10が水平状態における、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との隙間距離Cb2より大きくなる。
【0036】
そして、図4に示す状態において、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32の櫛歯32aとが対向する対向領域のX軸方向の長さ(第2対向領域長さDbg2)と、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aとが対向する対向領域のX軸方向の長さ(第1対向領域長さDbg1)とが、ほぼ同じ長さとなる。従って、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との隙間距離Cbg1は、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cbg2より小さくなる。但し、第1可動電極31の先端51は、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61に当接しないように、つまり、隙間距離Cbg1がゼロ以下にならないように設定されている。
【0037】
従って、変形例の振動発電素子においても、環境振動に伴って、可動体35が振動した場合、第1可動電極31の先端51が、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61に当接したり、第2可動電極32の先端52が、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62に当接したりすることはない。このため、振動発電素子10Aから発電される電力の発電効率は、図4に図示されるような、振動発電素子10の第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド側に配置されても、振動発電素子10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0038】
第2の実施形態では、弾性支持部33a、33bの固定端36の中心C-Cと、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の距離Lb1が、弾性支持部33a、33の固定端36の中心C-Cと、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の距離Lb2より小さく設定されている。このため、第2の実施形態では、第1の実施形態に比し、振動発電素子10Aの振動方向の長さを小さくすることができ、振動発電素子10Aの小型化を図ることができる。
【0039】
なお、上記では、第2固定電極42の櫛歯42aと、第2可動電極32の櫛歯32aとが対向する第2対向領域長さDb2が、第1固定電極41の櫛歯41aと、第1可動電極31の櫛歯31aとが対向する第1対向領域長さDb1より大きい構造として例示した。しかし、第2対向領域長さDb2と第1対向領域長さDb1とのうち、対向領域長さが小さい方をグラウンド側に配置すれば、振動発電素子10Aを垂直状態に配置したとき、第2対向領域長さDb2と第1対向領域長さDb1とが等しくなる方向に近付く。このため、水平状態で、第1固定電極41の櫛歯41aと、第1可動電極31の櫛歯31aとが対向する第1対向領域長さDb1が、第2固定電極42の櫛歯42aと、第2可動電極32の櫛歯32aとが対向する第2対向領域長さDb2が異なる構造とすればよい。
【0040】
また、上記第2の実施形態では、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cb2と、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Cb1とは、ほぼ同じ長さである構造として例示した。しかし、隙間距離Cb1を隙間距離Cb2より大きくしてもよい。但し、振動発電素子10Aの振動方向の長さを小さくするには、換言すれば、振動発電素子10Aの小型化を図るには、隙間距離Cb1が隙間距離Cb2と、ほぼ同じである構造とする方が有利である。
【0041】
本発明の第2の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)振動発電素子10Aは、ベース2と、複数の櫛歯31aを有する第1可動電極31および複数の櫛歯32aを有する第2可動電極32を有する可動体35と、第1可動電極31に対向して設けられ、複数の櫛歯41aを有する第1固定電極41と、第2可動電極32に対向して設けられ、複数の櫛歯42aを有する第2固定電極42と、ベース2に固定される固定端36を有し、可動体35を支持する弾性支持部33a、33bと、第1可動電極31および第1固定電極41の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、第2可動電極32および第2固定電極42の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、を備える。第1可動電極31の櫛歯31aと、第1固定電極41の櫛歯41aとが対向する第1対向領域長さDb1が、第2可動電極32の櫛歯32aと、第2固定電極42の櫛歯42aとが対向する第2対向領域長さDb2と異なる。このため、第1対向領域長さDb1と第2対向領域長さDb2とのうち、対向領域長さが小さい側を、対向領域長さが大きい側よりグラウンドに接近して振動源に設置することにより、第1対向領域長さDbg1と第2対向領域長さDbg2が同じ長さになる方向に近付けることができる。これにより、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10Aの発電効率の低下を抑制することができる。
【0042】
(2)上記振動発電素子10Aにおいて、前記第1可動電極31の先端51と、前記第1可動電極31の前記先端51が対向する前記第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Cb1が、前記第2可動電極32の先端52と、前記第2可動電極32の前記先端52が対向する前記第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cb2と同じか、それより大きい。このようにすると、隙間距離Cb1が大きいので、第1対向領域長さDbg1側を、第2対向領域長さDbg2側よりグラウンド側に配置した状態で、第1対向領域長さDbg1の隙間距離Cbg1が増大し、可動部3のグラウンド側への移動量が無用に制限されず、振動の振幅を大きくすることができる。
【0043】
(3)上記振動発電素子10Aにおいて、第1可動電極31が前記第2可動電極32よりグラウンド側に配置されて使用する場合、水平配置状態では、第1対向領域長さDb1が、第2対向領域の長さDb2より小さい。これにより、振動発電素子10Aを、グラウンドに対して鉛直状態に配置した場合、第1対向領域長さDb1が第2対向領域の長さDb2に近づく。好ましくは、略同一になる。その結果、可動体35が振動する際の振幅を大きくすることができ、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10Aの発電効率の低下を抑制することができる。
【0044】
(4)上記振動発電素子10Aにおいて、弾性支持部33a、33bの固定端36と、第1可動電極31の櫛歯31aの先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の距離Lb1が、弾性支持部33a,33bの固定端36と、第2可動電極32の櫛歯32aの先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の距離Lb2より小さい。このため、可動部3が振動する方向の振動発電素子10Aの長さを小さくすることができ、振動発電素子10Aの小型化を図ることができる。
【0045】
(5)上記振動発電素子10Aにおいて、第1固定電極41の櫛歯41aの長さは、第2固定電極42の櫛歯42aの長さより小さい。このため、可動部3が振動する方向の振動発電素子10Aの長さを小さくすることができ、振動発電素子10Aの小型化を図ることができる。
【0046】
-第3の実施形態-
図5図7を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態による振動発電素子を示す平面図であり振動発電素子が水平に配置された状態を示す。図6は、図5に図示された振動発電素子のVI-VI線断面図である。
第3の実施形態は、振動発電素子100が、可動部103の振幅を制限するための第1ストッパ15a、第2ストッパ15bを備える構造を有する点で、第1の実施形態とは相違する。
なお、第3の実施形態においても、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、各図に示す方向とする。
【0047】
振動発電素子100は、ケース101内に収容されている。ケース101は、例えば、電気絶縁性の材料(例えば、セラミックス)で形成されている。ケース101の上端には、不図示の上蓋が、例えば、シーム溶接され、ケース101および上蓋により内部が真空封入される。
【0048】
振動発電素子100は、Siからなるベース102と、Si活性層からなるデバイス層109と、ベース102とデバイス層109を接合する酸化シリコン、窒化シリコン等の等の無機絶縁材料により形成された接合層108とから構成されている。つまり、振動発電素子100は、図6に図示されるように、ベース102、接合層108およびSi活性層からなるデバイス層109がZ軸方向に積層された3層構造により構成されている。このような構成の振動発電素子100は、通常、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、一般的なMEMS加工技術により形成される。
【0049】
デバイス層109には、可動部103と、第1可動電極131と、第2可動電極132と、一対の弾性支持部133a、133bと、2つの第1固定電極141と、2つの第2固定電極142と、第1ストッパ15aと、第2ストッパ15bとが形成されている。可動部103には、錘134が接着材などにより固定されており、可動部103と錘134は可動体135を構成している。可動部103に錘134を固定するのは、可動部103の質量を増大させて小さな環境振動でも効率よく発電するためである。
【0050】
第1可動電極131は、Y軸方向に配列された複数の櫛歯131aを有し、第2可動電極132はY軸方向に配列された複数の櫛歯132aを有する。第1可動電極131と第2可動電極132は、複数の櫛歯131aと複数の櫛歯132aを連結する連結部138を共通にしており、複数の櫛歯131aは連結部138から+X軸方向に延在され、複数の櫛歯132aは連結部138から-X軸方向に延在されている。第1可動電極131の櫛歯131aのX軸方向の長さと第2可動電極132の櫛歯132aのX軸方向の長さとは、ほぼ同じである。但し、櫛歯131aと櫛歯132aのX軸方向の長さは異なっていてもよい。
可動部103、第1可動電極131、第2可動電極132および一対の弾性支持部133a、133bは、上述したように、MEMS加工により一体的に形成されている。
【0051】
第1固定電極141には、第1可動電極131の各櫛歯131aが挿入される複数の櫛歯141aが、Y軸方向に配列されている。また、第2固定電極142には、第2可動電極132の各櫛歯132aが挿入される複数の櫛歯142aが、Y軸方向に配列されている。第1固定電極141の櫛歯141aのX軸方向の長さと、第2固定電極142の櫛歯142aのX軸方向の長さとは、ほぼ同じである。但し、櫛歯141aと櫛歯142aのX軸方向の長さは異なっていてもよい。
【0052】
弾性支持部133aおよび弾性支持部133bは、それぞれ、3つの支持梁181~183および3つの支持梁181~183を両端で連結する一対の支持梁連結部184を有する。第1固定電極141の可動部103から最も離間した位置に設けられた支持梁183は、第1ストッパ15aに連結されている。第1ストッパ15aには、可動部103のX軸方向の一端103aに対向する突起16aが設けられている。第1ストッパ15aの突起16aと反対側の側縁は、接合層108を介して、ベース102に固定されている。可動部103に最も接近した位置に設けられた支持梁181の支持梁連結部184と反対側の両端には固定端136aが設けられており、各固定端136aは、接合層108を介して、ベース102に固定されている。支持梁181と支持梁183との間に設けられた支持梁182は、可動部103の一端103aに連結されている。弾性支持部133aおよび第1ストッパ15aは、上述したように、MEMS加工により一体的に形成されている。
【0053】
第2固定電極142の可動部103から最も離間した位置に設けられた支持梁183は、第2ストッパ15bに連結されている。第2ストッパ15bには、可動部103のX軸方向の他端103bに対向する突起16bが設けられている。第2ストッパ15bの突起16bと反対側の側縁は、接合層108を介して、ベース102に固定されている。可動部103に最も接近した位置に設けられた支持梁181の両端には固定端136bが設けられており、各固定端136bは、接合層108を介して、ベース102に固定されている。支持梁181と支持梁183との間に設けられた支持梁182は、可動部103の他端103bに連結されている。弾性支持部133bおよび第2ストッパ15bは、上述したように、MEMS加工により一体的に形成されている。
【0054】
ベース102には、開口102aが形成されている。可動部103、第1可動電極131、第2可動電極132は、ベース102の開口102a上に配置されている。固定端136aおよび第1ストッパ15aのベース102に固定された部分を除き、第1ストッパ15aと弾性支持部133aは、ベース102の開口102a上に配置されている。また、固定端136bおよび第2ストッパ15bのベース102に固定された部分を除き、第2ストッパ15bと弾性支持部133bは、ベース102の開口102a上に配置されている。
【0055】
第1固定電極141およひ第2固定電極142のそれぞれには、リード端子が設けられており、このリード端子上には、アルミニウム等の導電性金属により電極パッド114が設けられている。また、第1ストッパ15aおよび第2ストッパ15bそれぞれには、リード端子が設けられており、このリード端子上には、アルミニウム等の導電性金属により電極パッド113が設けられている。電極パッド113、114は、ワイヤ115により、ケース101に設けられた電極116a、116bに接続されている。
【0056】
第1可動電極131および第1固定電極141の少なくとも一方には、第1エレクトレットが形成されている。また、第2可動電極132および第2固定電極142の少なくとも一方には、第2エレクトレットが形成されている。
【0057】
振動発電素子100を振動源に設置することにより、可動部103は、X軸方向に振動する。一対の弾性支持部133a、133bは、Y軸方向およびZ軸方向の剛性が大きく形成され、可動部3は、主として、X軸方向に振動するように設定されている。例えば、可動部103が+X軸方向に変位すると、第2固定電極42の櫛歯142aと第2可動電極132の櫛歯132aの対向面積が減少し、第1固定電極141の櫛歯141aと第1可動電極131の櫛歯131aの対向面積が増大する。対向面積が変化すると、エレクトレットの誘導電荷が変化する。このように、第1固定電極141、第2固定電極142と、第1可動電極131、第2可動電極132との間の誘導電荷が変動することにより発電が行なわれる。
【0058】
振動源の大きな振幅、振動発電素子設置時の落下等により、可動部103が所定より大きく+X軸方向に移動すると、可動部103の一端103aが第1ストッパ15aの突起16aに当接する。また、可動部103が所定より大きく-X軸方向に移動すると、可動部103の他端103bが第2ストッパ15bの突起16bに当接する。このように、可動部103が振動する際の振幅は、第1ストッパ15aおよび第2ストッパ15bにより制限される。
【0059】
図5は、可動部103が振動しておらず、振動発電素子100が水平に配置された状態を示す。
この状態では、弾性支持部133a、133bそれぞれの支持梁181~183は、変形しておらず、それぞれ、一直線状に延在されている。この状態における可動部103の一端103aと、第1ストッパ15aの突起16aの間の隙間距離Cs1は、可動部103の他端103bと、第2ストッパ15bの突起16bの間の隙間距離Cs2より大きく設定されている。
【0060】
また、第2可動電極132の櫛歯132aと、第2固定電極142の櫛歯142aが対向する対向領域の長さ(第2対向領域長さDc2)は、第1可動電極131の櫛歯131aと、第1固定電極141の櫛歯141aが対向する対向領域の長さ(第1対向領域長さDc1)より大きい。さらに、第1可動電極131の櫛歯131aの先端151と、第1可動電極131の櫛歯131aの先端151が対向する第1固定電極141の対向面161との隙間距離Cc1は、第2可動電極132の櫛歯132aの先端152と、第2可動電極132の櫛歯132aの先端152が対向する第2固定電極142の対向面162との隙間距離Cc2より大きい。
【0061】
また、図5に図示された状態では、第1可動電極131と第2可動電極132の共通電極である連結部138のX軸方向の中心C-Cと、第1ストッパ15aの突起16aとの間の距離Ls1は、連結部138のX軸方向の中心C-Cと第2ストッパ15bの突起16bとの間の距離Ls2より大きい。
【0062】
なお、第3の実施形態においては、弾性支持部133aの固定端136aと第1ストッパ15aの突起16aとの距離Lt1と、弾性支持部133bの固定端136bと第2ストッパ15bに突起16bとの距離Lt2は、ほぼ同じである。但し、弾性支持部133aの固定端136aと第1ストッパ15aの突起16aとの距離Lt1を、弾性支持部133bの固定端136bと第2ストッパ15bの突起16bとの距離Lt2より大きくしてもよい。
【0063】
図7は、図5に図示された状態の振動発電素子100を、グラウンド(地面、大地)に対して垂直に配置した鉛直姿勢を示す。振動発電素子100の第1固定電極141は、第2固定電極142よりグラウンド側に位置している。となっている。
【0064】
この状態では、重力の作用により、可動体135が、弾性支持部133a、133bを撓ませてグラウンドに下降する。このため、可動部103の一端103aと第1ストッパ15aの突起16aとの隙間距離Csg1は、振動発電素子100が水平状態における、可動部103の一端103aと第1ストッパ15aの突起16aとの隙間距離Cs1より小さくなる。一方、可動部103の他端103bと第2ストッパ15bの突起16bとの隙間距離Csg2は、振動発電素子100が水平状態における、可動部103の他端103bと第2ストッパ15bの突起16bとの隙間距離Cs2より大きくなる。
【0065】
なお、図7では、弾性支持部133a、133bの支持梁181~183のうち、可動部103に連結された支持梁182のみを変形させた図として例示しており、支持梁181、183の変形は、無視している。
【0066】
ここで、可動部103の一端103aと第1ストッパ15aの突起16aとの隙間距離Csg1が、可動部103の他端103bと第2ストッパ15bの突起16bとの隙間距離Csg2と同じか、それより大きくなるように設定されている。
【0067】
図7に示す状態で、第1可動電極131と第2可動電極132の共通電極である連結部138のX軸方向の中心C-Cと第1ストッパ15aの突起16aとの間の距離Lsg1と、連結部138のX軸方向の中心C-Cと第2ストッパ15bの突起16bとの間の距離Lsg2とが等しくなる構成であれば、隙間距離Csg1と隙間距離Csg2とが同じになる。また、連結部138のX軸方向の中心C-Cと第1ストッパ15aの突起16aの間の距離Lsg1が、連結部138のX軸方向の中心C-Cと第2ストッパ15bの突起16bの間の距離Lsg2より大きい構成であれば、隙間距離Csg1が隙間距離Csg22より大きくなる。
【0068】
図7に示す状態では、可動体135の下方への移動と共に、第1可動電極131と第2可動電極132が下方へ移動する。これにより、第1可動電極131の櫛歯131aと、第1固定電極141の櫛歯141aが対向する対向領域の長さ(第2対向領域長さDcg2)と、第1可動電極131の櫛歯131aと、第1固定電極141の櫛歯141aが対向する対向領域の長さ(第1対向領域長さDcg1)とは、ほほ同じとなる。さらに、第1可動電極131の櫛歯131aの先端151と、第1可動電極131の櫛歯131aの先端151が対向する第1固定電極141の対向面161との隙間距離Ccg1と、第2可動電極132の櫛歯132aの先端152と、第2可動電極132の櫛歯132aの先端151が対向する第2固定電極142の対向面162との隙間距離Ccg2とは、ほぼ同じとなる。
【0069】
そして、図7に示す状態において、可動体135の一端103aと第1ストッパ15aとの間の隙間距離Csg1および可動体135の他端103bと第2ストッパ15bとの間の隙間距離Csg2は、共に、第2可動電極132の櫛歯132aの先端152と、櫛歯132aが対向する第2固定電極142の対向面との隙間距離Ccg2より小さい。同様に、隙間距離Csg1および隙間距離Csg2は、共に、第1可動電極131の櫛歯131aの先端151と、櫛歯131aが対向する第1固定電極141の対向面161との隙間距離Ccg1より小さい。従って、可動部103が振動した場合、櫛歯132aの先端152が第2固定電極142の対向面162に当接したり、櫛歯131aの先端151が第1固定電極141の対向面161に当接したりする前に、可動部103の一端103aが第1ストッパ15aの突起16aに当接するか、可動部103の他端103bが第2ストッパ15bの突起16bに当接する。
【0070】
従って、振動源に設置された可動体135が振動した場合、可動部103の他端103bが第2ストッパ15bの突起16bに当接するまでは、可動部103の一端103aが第1ストッパ15aの突起16aに当接することはない。
このため、図7に図示されるように、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド側に配置する鉛直配置状態において、可動体135に作用する重力に起因する振動発電素子100の発電効率の低下を抑制することができる。
【0071】
第3の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)振動発電素子100は、ベース102と、第1可動電極131および第2可動電極132を有する可動体135と、第1可動電極131に対向して設けられた第1固定電極141と、第2可動電極132に対向して設けられた第2固定電極142と、ベース102に固定される固定端136a、136bを有し、可動体135を支持する弾性支持部133a、133bと、第1可動電極131および第1固定電極141の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、第2可動電極132および第2固定電極142の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットと、可動体135の振幅を規制するため、可動体135の第1固定電極141側に配置された一端103aに対向して設けられた第1ストッパ15a、および可動体135の第2固定電極142側に配置された他端103bに対向して設けられた第2ストッパ15bとを備えている。このような振動発電素子100において、可動体135の他端103bと第2ストッパ15bとの間の隙間距離Cs2と、可動体135の一端103aと第1ストッパ15aとの間の隙間距離Cs1が異なる。このため、隙間距離Cs1と隙間距離Cs2のうち、隙間距離が大きい側を、隙間距離が小さい側よりグラウンドに接近して振動源に設置することにより、第2可動電極132と第1可動電極131の最大移動量を略等しくできる。したがって、第1可動電極の移動量が第2可動電極の移動量より小さくなり発電効が低下する問題が解消され、発電効率が向上する。
【0072】
(2)上記振動発電素子100において、第1可動電極131が第2可動電極132よりグラウンド側に配置された鉛直状態において、可動体135の一端103aと第1ストッパ15aとの間の隙間距離Csg1が、可動体135の他端103bと第2ストッパ15bとの間の隙間距離Csg2とほぼ同じか、それより大きい。これにより、第2可動電極132と第1可動電極131の最大移動量を略等しくできる。したがって、第1可動電極の移動量が第2可動電極の移動量より小さくなり発電効が低下する問題が解消され、発電効率が向上する。
【0073】
-第4の実施形態-
図8図10を参照して第4の実施形態を説明する。
図8は、本発明の第4の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図である。
第4の実施形態は、第2可動電極32と第2固定電極42との間に作用する静電力を、第1可動電極31と第1固定電極41との間に作用する静電力とは異なる大きさにしたものである。
以下の説明では、第4の実施形態が第1の実施形態と相違する点を主に説明し、第1の実施形態と同じ構造についての説明は、適宜、省略する。
図8に示された振動発電素子10Bは、第2可動電極32と第2固定電極42の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットの帯電電圧が、第1可動電極31と第1固定電極41の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットの帯電電圧より大きくなっている。
【0074】
このため、振動発電素子10Bを、可動部3の第1固定電極41を第2固定電極42よりグラウンド側に配置しても、重力の作用により可動体35がグラウンド側へ下降するのを抑制することができる。
【0075】
第1~第3の実施形態の振動発電素子は、ベース102と、弾性支持部133a、133bでベース102に振動可能に支持されている可動体135と、可動体135に接続された第1可動電極131と、ベース102に固定された第1固定電極141とを含む第1櫛歯電極構造、および、第1櫛歯電極構造と対をなし可動体135に接続された第2可動電極132と、ベース102に固定された第2固定電極142とを含む第2櫛歯電極構造が、可動体135の中央を通過する中心線に対して非対称の形状を有している。このような形状の非対称性は、振動発電素子を、例えば、グラウンドに鉛直に配置して使用することを想定し、発電効率の向上を企図している。
これに対して、第4の実施形態の振動発電素子は、上記第1櫛歯電極構造と第2櫛歯電極構造が、可動体135の中央を通過する中心線に対して対称の形状を有するが、第2固定電極142と第2可動電極132との間のエレクトレットによる静電力を、第1固定電極141と第1可動電極131との間のエレクトレットによる静電力より大きくし、振動発電素子をたとえばグラウンドに鉛直に配置したときに、可動体135が重力でグラウンド側に変位しないようにし、もって、発電効率の向上を企図している。
【0076】
図8は、第1固定電極41が第2固定電極42よりグラウンド側となるように振動発電素子10Bを配置して使用するときの図である。すなわち、振動発電素子10Bをグラウンドに対して鉛直に配置した状態を示す。振動発電素子10Bでは、第1櫛歯電極構造と第2櫛歯電極構造が、可動体135の中央を通過する中心線に対して対称の形状性を有している。すなわち、弾性支持部33a、33bの固定端36と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の距離Lc1が、弾性支持部33a、33の固定端36と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の距離Lc2とを等しくなるように設計されている。また、第1固定電極141の櫛歯形状と第1可動電極131の各櫛歯形状、および第2固定電極142の櫛歯形状と第2可動電極132の各櫛歯形状は、等しく設定されている。第1櫛歯電極構造と第2櫛歯電極構造の形状には対称性がある。
なお、図8は、距離Lc1が距離Lc2と同じか、それより大きい場合を例示している。
【0077】
第4の実施の形態の振動発電素子10Bでは、第2櫛歯電極構造の第2可動電極132と第2固定電極142との間の静電力を、第1櫛歯電極構造の第1可動電極131と第2固定電極141との間の静電力より大きくし、振動発電素子10Bの振動方向を鉛直方向として使用する場合の弾性支持部133a,133bの撓みを防止する。以下、詳細に説明する。
第4の実施の形態における振動発電素子10Bでは、第2エレクトレットによる帯電電圧と第1エレクトレットによる帯電電圧を調整して、振動発電素子10Bを水平設置する場合と、第1固定電極41を第2固定電極42よりグラウンド側として鉛直配置する場合、すなわち鉛直方向に配置された鉛直状態の場合とで、距離Lc1と距離Lc2が殆ど変化しないようにすることができる。換言すれば、振動発電素子10Bを、鉛直状態にしても、可動体35は、振動発電素子を水平配置した場合の位置に保持され、殆ど下降しないようにすることができる。
【0078】
このようにすれば、第1可動電極31の先端51と、第1可動電極31の先端51が対向する第1固定電極41の対向面61との間の隙間距離Cd1は、振動発電素子10Bを水平に配置して使用しても、鉛直に配置して使用しても、殆ど変化しない。理想的には水平配置と鉛直配置において、全く変化しないのが望ましい。同様に、第2可動電極32の先端52と、第2可動電極32の先端52が対向する第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Cd2は、水平に配置して使用しても、鉛直に配置して使用しても、殆ど変化しない。
【0079】
このため、第1可動電極31の櫛歯31aと第1固定電極41の櫛歯41aが対向する領域の長さ(第1対向領域長さDd1)と、第2可動電極32の櫛歯32aと第2固定電極42の櫛歯42aが対向する領域の長さ(第2対向領域長さDd2)とは、鉛直に配置して使用するときも、水平に配置して使用するときもほぼ同じにすることができる。従って、水平設置における第1対向領域長さDd1と第2対向領域長さDd2とを同じ長さにしておけば、鉛直設置においても、第1対向領域長さDd1と第1対向領域長さDd2とを同じ長さにすることができる。
【0080】
図9は、図8に図示された振動発電素子のエレクトレット形成方法を示す模式図であり、図10は、図9に続く振動発電素子のエレクトレット形成方法を示す模式図である。
酸化シリコン層201をシリコン層202、203で挟んだ構造の基板(例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板)200を準備する。基板200を酸化シリコン層201が半導体化する高温(500~700℃)に加熱する。この状態で、図9に示すように電圧V1を印加すると、Si/SiO2界面204を挟んで電気二重層が形成される。通常、シリコン層には不純物がドープされたものが使用されるが、その場合、p型およびn型のどちらも使用することができる。また、不純物を含まないSi層であっても良い。
【0081】
高温状態においてはSi/SiO2界面204は、整流効果を有する。そのため、上側のSi/SiO2界面204を挟んでシリコン層202側に正電荷が蓄積され、酸化シリコン層201側に負電荷が蓄積される。一方、下側のSi/SiO2界面204に関しては電流が流れる方向に電圧が印加されるので、電気二重層は形成されない。
【0082】
次に、電圧を印加した状態で基板200の温度を常温に戻す。すなわち、酸化シリコン層201の絶縁性が復帰する温度まで低下させる。これにより、Si/SiO2界面204を挟んだ酸化シリコン層201側に蓄積された負電荷はその領域にトラップされたまま移動できなくなる。
【0083】
この後、図10に示すように、電圧V1の印加を止めてシリコン層202とシリコン層203とを接続する。これにより、シリコン層202からシリコン層203へ正電荷の一部が移動する。
【0084】
一方、酸化シリコン層201内の負電荷は、酸化シリコン層201が絶縁性であるため、印加電圧V1が解除された後もSi/SiO2界面204の近傍にトラップされたままとなる。その結果、図10に示すように電場Eが酸化シリコン層201内に形成される。この電場Eがエレクトレットによる電場であり、Si/SiO2界面204とSi/SiO2界面205との間の電位差はV1である。すなわち電圧V1のエレクトレットが形成されたことになる。
【0085】
加熱状態の基板200に印加する電圧V1を調整することにより、Si/SiO2界面204とSi/SiO2界面205との間の電位差が異なる基板200を形成することができる。
【0086】
なお、上記第4の実施形態では、第2エレクトレットの帯電電圧と第1エレクトレットの帯電電圧とが、振動発電素子10Bが、水平配置と、鉛直配置とにおいて、距離Lc1が殆ど変化しないように調整されている構成として例示した。しかし、振動発電素子10Bが鉛直配置されたときの距離Lc1が、振動発電素子10Bが水平配置されたときの距離Lc1より小さくなるように、第2エレクトレットの帯電電圧と第1エレクトレットの帯電電圧とが調整された構成としてもよい。すなわち、鉛直配置されたときの振動発電素子10Bの可動体35のグラウンド側への下降を抑制するように、第2エレクトレットの帯電電圧と第1エレクトレットの帯電電圧とが調整された構成であればよい。
【0087】
第4の実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
第4の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)振動発電素子10Bは、第1可動電極31および第2可動電極32を有する可動体35と、第1可動電極31に対向して設けられた第1固定電極41と、第2可動電極32に対向して設けられた第2固定電極42と、可動体35を支持する弾性支持部33a、33bと、第1可動電極31および第1固定電極41の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットと、第2可動電極32および第2固定電極42の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットとを備えている。このような振動発電素子10Bにおいて、第2可動電極32と第2固定電極42との間に作用する静電力と、第1可動電極31と第1固定電極41との間に作用する静電力とが異なる。このため、静電力が小さい櫛歯電極構造を、静電力が大きい櫛歯電極構造よりグラウンド側として振動源に設置することにより、可動体35が振動する際の振幅を大きくすることができる。これにより、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10Bの発電効率の低下を抑制することができる。
【0089】
(2)上記振動発電素子10Bにおいて、第1可動電極31が第2可動電極32よりグラウンド側に配置された状態において、第2可動電極32と第2固定電極42との間に作用する静電力が、第1可動電極31と第1固定電極41との間に作用する静電力より大きい。このため、振動発電素子10Bが第1固定電極41を第2固定電極42よりグラウンド側に配置した場合、重力の作用により、可動体35がグラウンド側に下降するのを抑制することができる。これにより、可動体35に作用する重力に起因する振動発電素子10Bの発電効率の低下を抑制することができる。
【0090】
-第5の実施形態-
図11は、本発明の第5の実施形態による振動発電素子の平面図である。
第5の実施形態は、第4の実施形態と同様、第2可動電極32と第2固定電極42との間に作用する静電力を、第1可動電極31と第1固定電極41との間に作用する静電力とは異なる大きさにしたものであり、この構造を、可動部103の振幅を制限する第1、第2ストッパ15a、15bを備える第3の実施形態に示す振動発電素子100に適用したものである。
以下の説明では、第5の実施形態が第3の実施形態と相違する点を主に説明し、第3の実施形態と同じ構造についての説明は、適宜、省略する。
図11に示された振動発電素子100Aは、第2可動電極132と第2固定電極142の少なくとも一方に形成された第2エレクトレットの帯電電圧が、第1可動電極131と第1固定電極141の少なくとも一方に形成された第1エレクトレットの帯電電圧より大きくなっている。
【0091】
このため、振動発電素子100Aを、可動部103の第1固定電極141を第2固定電極142よりグラウンド側として、例えば、鉛直配置しても、重力の作用により可動体135がグラウンド側へ下降するのを抑制することができる。
【0092】
図11は、第1固定電極141を第2固定電極142よりグラウンド側として振動発電素子100Aを鉛直配置して使用する鉛直姿勢を示す。鉛直姿勢で振動発電素子を使用する時は、第1可動電極131と第2可動電極132の共通電極である連結部138のX軸方向の中心C-Cと第1ストッパ15aの突起16aの間の距離Ls3は、連結部138のX軸方向の中心C-Cと第2ストッパ15bの突起16bの間の距離Ls4とほぼ同じとなる。また、鉛直姿勢での使用時には、可動部103の一端103aと、第1ストッパ15aの突起16aの間の隙間距離Cs3は、可動部103の他端103bと、第2ストッパ15bの突起16bの間の隙間距離Cs4とほぼ同じか、またはそれより大きい。
【0093】
第2エレクトレットによる帯電電圧と第1エレクトレットによる帯電電圧を調整して、振動発電素子100Aを水平配置して使用する場合と、第1固定電極41を第2固定電極42よりグラウンド側として鉛直配置して使用する場合とで、距離Ls3と距離Ls4が、殆ど変化しないようにすることができる。換言すれば、可動部103の連結部138のX軸方向の中心C-CのX軸方向の位置が、振動発電素子100Aが、水平配置されたときと、鉛直配置されときとで、殆ど変化しないようにすることができる。
【0094】
このようにすると、隙間距離Cs3および隙間距離Cs4は、それぞれ、振動発電素子100Aを水平配置して使用する場合と、鉛直配置して使用する場合とで、殆ど変化しない。
【0095】
従って、可動部103が振動した場合の振幅を、振動発電素子100Aを水平配置して使用する場合と、鉛直配置して使用する場合とで、殆ど同じにすることができ、鉛直配置で使用するときの振動発電素子100Aの発電効率の低下を抑制することができる。
【0096】
第5の実施形態の他の構成は、第3の実施形態と同様であり、対応する構成に同一の符号を付し、説明を省略する。
従って、第5の実施形態の振動発電素子100Aは、第4の実施形態の振動発電素子10Bの効果(1)、(2)と同様な効果を奏する。
【0097】
なお、第4および第5の実施形態では、第2可動電極32、132と第2固定電極42、142との間に形成される第2エレクトレットと、第1可動電極31、131と第1固定電極41、141との間に形成される第1エレクトレットとを異なる帯電電圧とすることにより、第2可動電極32、132と第2固定電極42、142との間に作用する静電力と、第1可動電極31、131と第1固定電極41、141との間に作用する静電力とを異なるものとするものであった。しかし、他の構成によっても、第2可動電極32、132と第2固定電極42、142との間に作用する静電力と、第1可動電極31、131と第1固定電極41、141との間に作用する静電力とを異なる大きさとすることが可能である。以下に、それらの振動発電素子について記載する。
【0098】
-第6の実施形態-
図12は、本発明の第6の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図である。
第6の実施形態は、第2固定電極42および第2可動電極32に設ける櫛歯42a、32aの数を、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31に設ける櫛歯41a.31aの数とを異なるようにしたものである。
以下の説明では、第6の実施形態が第4の実施形態と相違する点を主に説明し、第4の実施形態と同じ構造についての説明は、適宜、省略する。
図12に示す振動発電素子10Cでは、第2固定電極42には、4つの櫛歯42aが、第2可動電極32には、3つの櫛歯32aが設けられている。一方、第1固定電極41には、3つの櫛歯41aが、第1可動電極31には、2つの櫛歯31aが設けられている。
【0099】
つまり、第2固定電極42および第2可動電極32それぞれに設けられた櫛歯42a、32aの数は、第1固定電極41および第1可動電極31それぞれに設けられた櫛歯41a、31aの数より多い。従って、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32の櫛歯32aとが対向するの全面積(面積の総和)は、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aが対向するの全面積(面積の総和)より大きい。
【0100】
このため、第2固定電極42と第2可動電極32との間に形成する第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧と、第1固定電極41と第1可動電極31との間に形成する第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧とが同じ場合には、第2固定電極42と第2可動電極32との間に作用する静電力が、第1固定電極41と第1可動電極31との間に作用する静電力より大きくなる。
【0101】
なお、上記では、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧と、第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧とを同じとした場合で例示した。しかし、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧を第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧より大きくしてもよい。また、第2固定電極42と第2可動電極32との間に作用する静電力が、第1固定電極41と第1可動電極31との間に作用する静電力より大きくなる条件が満たされる限り、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧を第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧より小さくすることもできる。
【0102】
第6の実施形態の他の構成は第4の実施形態と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して、説明を省略する。
従って、第6の実施形態においても、第4の実施形態と同様な効果を奏する。
【0103】
なお、第6の実施形態の、第2固定電極42の櫛歯42aおよび第2可動電極32の櫛歯32aの数を、第1固定電極41の櫛歯41aおよび第1可動電極31の櫛歯31aの数より多くする構成を、可動部103の振幅を制限する第1、第2ストッパ15a、15bを備える第5の実施形態に示す振動発電素子に適用することもできる。
【0104】
-第7の実施形態-
図13図14(A)、(B)を参照して、本発明の第7の実施形態を説明する。
図13は、本発明の第7の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図である。
第7の実施形態は、第2固定電極42および第2可動電極32に設ける櫛歯42a、32aの厚さを、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31に設ける櫛歯41a、31aの厚さと異なるようにしたものである。
以下の説明では、第7の実施形態が第4の実施形態と相違する点を主に説明し、第4の実施形態と同じ構造についての説明は、適宜、省略する。
図13に示す振動発電素子10Dでは、第2固定電極42および第2可動電極32に設けられた櫛歯42a、32aの厚さ(Z方向の長さ)が、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31に設けられた櫛歯41a、31aの厚さ(Z方向の長さ)より厚い構造を有する。
振動発電素子10Dにおける、第2固定電極42および第2可動電極32の櫛歯42a、32aの数は、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31の櫛歯41a、31aの数と同じである。
【0105】
図14Aは、図13のXIVA-XIVA線断面であり、図14Bは、図13のXIVB-XIVBA線断面である。
図14Aに示されるように、第2固定電極42に設けられた櫛歯42aと第2可動電極32に設けられた櫛歯32aとは、同一の厚さt2を有する。図14Bに示されるように、第1固定電極41に設けられた櫛歯41aと第1可動電極31に設けられた櫛歯31aとは、同一の厚さt1を有する。櫛歯42aと櫛歯32aの厚さt2は、それぞれ、櫛歯41aと櫛歯31aの厚さt1より大きい(厚い)。従って、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32の櫛歯32aとが対向するの全面積(面積の総和)、は、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aが対向するの全面積(面積の総和)より大きい。
【0106】
このため、第2固定電極42と第2可動電極32との間に形成する第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧と、第1固定電極41と第1可動電極31との間に形成する第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧とが同じ場合には、第2固定電極42と第2可動電極32との間に作用する静電力が、第1固定電極41と第1可動電極31との間に作用する静電力より大きくなる。
【0107】
なお、上記では、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧と、第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧とを同じとした場合で例示した。しかし、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧を第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧より大きくしてもよい。また、第2固定電極42と第2可動電極32との間に作用する静電力が、第1固定電極41と第1可動電極31との間に作用する静電力より大きくなる条件が満たされる限り、第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧を第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧より小さくすることもできる。
【0108】
第7の実施形態の他の構成は第4の実施形態と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して、説明を省略する。
従って、第7の実施形態においても、第4の実施形態と同様な効果を奏する。
【0109】
なお、第7の実施形態の、第2固定電極42および第2可動電極32に設けられた櫛歯42a、32aの厚さt2を、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31に設けられた櫛歯31a、41aの厚さt1より厚くする構造を、可動部103の振幅を制限する第1、第2ストッパ15a、15bを備える第5の実施形態に示す振動発電素子に適用することもできる。
【0110】
-第8の実施形態-
図15は、本発明の第8の実施形態による振動発電素子の概略構成を示す平面図である。
第8の実施形態は、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32の櫛歯32aとの隙間g1と、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aとの隙間g2とを異なるようにしたものである。
以下の説明では、第8の実施形態が第4の実施形態と相違する点を主に説明し、第4の実施形態と同じ構造についての説明は、適宜、省略する。
【0111】
図15に示す振動発電素子10Eでは、第2固定電極42の櫛歯42aと第2可動電極32aの隙間g2が、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aの隙間g1より小さい構造を有する。
振動発電素子10Eにおける、第2固定電極42および第2可動電極32の櫛歯42a、32aの数は、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31の櫛歯41a、31aの数と同じである。また、振動発電素子10Eにおける、第2固定電極42および第2可動電極32に設けられた櫛歯42a、32aの厚さ(Z方向の長さ)は、それぞれ、第1固定電極41および第1可動電極31に設けられた櫛歯41a、31aの厚さ(Z方向の長さ)と同じである。
【0112】
異なる極性の電荷を有する一対の櫛歯間に作用する吸引力は、櫛歯間の隙間gが小さい程、大きい。従って、第2固定電極42と第2可動電極32との間に形成する第2エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧と、第1固定電極41と第1可動電極31との間に形成する第1エレクトレットの単位面積当たりの帯電電圧とが同じ場合には、第2固定電極42と第2可動電極32との間に作用する静電力が、第1固定電極41と第1可動電極31との間に作用する静電力より大きくなる。
【0113】
第8の実施形態の他の構成は第4の実施形態と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して、説明を省略する。
従って、第8の実施形態においても、第4の実施形態と同様な効果を奏する。
【0114】
なお、第8の実施形態の、第2固定電極42の櫛歯42aの隙間g2が、第1固定電極41の櫛歯41aと第1可動電極31の櫛歯31aの隙間g1より小さい構造を、第5の実施形態に示す、可動部103の振幅を制限する第1、第2ストッパ15a、15bを備える第5の実施形態に示す振動発電素子100Aに適用することもできる。
【0115】
上記第4、第6~第8の実施形態の構成を、適宜、組み合わせることもできる。
つまり、第2固定電極42と第2可動電極32とに形成する第2エレクトレットの帯電電圧、第1固定電極41と第1可動電極31とに形成する第1エレクトレットの帯電電圧、第2固定電極42および第2可動電極32の櫛歯42a、32aの数、または厚さ、櫛歯42a-32a間の隙間と櫛歯41a-31a間の隙間、のいずれかが異なる構造の2つ以上を組み合わせて、第1固定電極41と第1可動電極31間に作用する静電力と第2固定電極42と第2可動電極32間に作用する静電力とが異なる構成の振動発電素子とすることもできる。
さらに、そのような第1固定電極41と第1可動電極31間に作用する静電力と第2固定電極42と第2可動電極32間に作用する静電力とが異なる構成と、第1の実施形態に示す、第2可動電極32の先端52と、第2固定電極42の対向面62との間の隙間距離Ca2が、第1可動電極31の先端51と、第1固定電極の41対向面61との間の隙間距離Ca1と異なる構成を組み合わせてもよい。あるいは、第1固定電極41と第1可動電極31間に作用する静電力と、第2固定電極42と第2可動電極32間に作用する静電力とが異なる構成と、第2の実施形態に示す、第1可動電極31の櫛歯31aと、第1固定電極41の櫛歯41aとが対向する第1対向領域長さDb1が、第2可動電極32の櫛歯32aと、第2固定電極42の櫛歯42aとが対向する第2対向領域長さDb2と異なる構成と組み合わせてもよい。
【0116】
同様に、第3の実施形態に、第4、第6~第8の実施形態の構成を組み合わせることもできる。
つまり、第4、第6~第8の実施形態に示す、第1固定電極41-第1可動電極31間に作用する静電力と、第2固定電極42-第2可動電極32間に作用する静電力とが異なる構成と、第3の実施形態に示す、可動体135の他端103bと第2ストッパ15bとの間の隙間距離Cs4と、可動体35の一端103aと第1ストッパ15aとの間の隙間距離Cs3が異なる構成とを組み合わせてもよい。
【0117】
上記実施形態では、SOI基板により振動発電素子10、10A~10E、100、100Aを形成するとして例示したが、SOI基板に替えてシリコン基板を用いても良い。また、シリコン基板に替えて、ガラス、金属、アルミナ等を用いてもよい。
【0118】
上記各実施形態では、第1、第2の可動電極31、32、131、132、および第1、第2固定電極41、42、141、142を櫛歯電極として例示した。しかし、本発明は、櫛歯電極以外の電極に適用することができる。
【0119】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。上述した種々の実施の形態および変形例を組み合わせたり、適宜、変更を加えたりしてもよく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
2 ベース
3 可動部
10、10A~10E 振動発電素子
15a 第1ストッパ
15b 第2ストッパ
31 第1可動櫛歯電極(第1可動電極)
31a 櫛歯
32 第2可動櫛歯電極(第2可動電極)
32a 櫛歯
33a、33b 弾性支持部
33b 弾性支持部
34 錘
35 可動体
36 固定端
41 第1固定電極
41a 櫛歯
42 第2固定電極
42a 櫛歯
51、52 先端
61、62 対向面
100、100A 振動発電素子
102 ベース
103 可動部
103a 一端
103b 他端
131 第1可動電極
131a 櫛歯
132 第2可動電極
132a 櫛歯
133a、133b 弾性支持部
134 錘
135 可動体
136a、136b 固定端
136b 固定端
138 連結部
141 第1固定電極
141a 櫛歯
142 第2固定電極
142a 櫛歯
151,152 先端
161、162 対向面
Ca1、Ca2、Cag1、Cag2、Cb1、Cb2、Cbg1、Cbg2、Cc1、Cc2、Ccg1、Ccg2、Cd1、Cd2、Cs1~Cs4、Csg1、Csg2、 隙間距離
Da1、Dag1、Db1、Dbg1、Dc1、Dcg1、Dd1 第1対向領域長さ
Da2、Dag2、Db2、Dbg2、Dc2、Dcg2、Dd2 第2対向領域長さ
La1、La2、Lb1、Lb2、Lc1、Lc2、Ls1~Ls4、Lsg1、Lsg2、Lt1、Lt2 距離
t1、t2 厚さ
g1、g2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15