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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】結び目送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020533619
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018066210
(87)【国際公開番号】W WO2019126152
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】62/607,218
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502156504
【氏名又は名称】テルモ メディカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ファン・チュン-チア
(72)【発明者】
【氏名】アルドリッチ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウェン・ユ-シー
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0183937(US,A1)
【文献】特開2016-086980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236188(US,A1)
【文献】国際公開第2017/070312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合材料を固定するための結び目送達装置において、
近位端部および遠位端部を有する細長い本体と、
前記結び目送達装置が患者内に送達される前に、患者の外部の位置にて、前記細長い本体の前記遠位端部より遠位に配された予め構成された結び目と、
前記縫合材料を捕捉するように構成されたスネアを有する縫合糸スネアであって、前記スネアが可撓性材料のループを含み、かつ前記結び目送達装置が患者内に送達される前に、患者の外部の位置にて、前記予め構成された結び目を通って延びる、縫合糸スネアと、
前記予め構成された結び目を形成する糸状の材料の一端部に固定された縫合糸ロッカーと、
を含み、
前記縫合糸ロッカーに加えられた張力が、前記予め構成された結び目を締め付ける、結び目送達装置。
【請求項2】
前記縫合糸スネアは、前記細長い本体に取り外し可能に固定されている、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項3】
前記縫合糸ロッカーは、前記細長い本体に取り外し可能に固定されている、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項4】
前記スネア、および前記予め構成された結び目を形成する前記糸状の材料は、前記細長い本体の前記遠位端部に開口部を有する少なくとも1つの内腔を通って延びる、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項5】
前記スネア、および前記予め構成された結び目を形成する前記糸状の材料は、それぞれ、前記細長い本体の前記遠位端部に開口部を有する別々の内腔を延びる、請求項4に記載の結び目送達装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記予め構成された結び目を形成する前記糸状の材料の通過を可能にするが、前記予め構成された結び目の巻きのパターンの通過を可能にしないようなサイズである、請求項4に記載の結び目送達装置。
【請求項7】
前記縫合糸スネアの近位への動きは、前記予め構成された結び目を通して前記スネアを引っ張るように構成されている、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項8】
前記縫合糸ロッカーの近位への動きは、前記予め構成された結び目を締め付けるように構成されている、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項9】
前記縫合糸ロッカーは、力インジケータを含む、請求項1に記載の結び目送達装置。
【請求項10】
前記力インジケータは、付勢力を有するばねを含み、前記予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力が、前記付勢力に打ち勝つように構成されている、請求項9に記載の結び目送達装置。
【請求項11】
前記力インジケータは、前記予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力がいつ前記縫合糸ロッカーに加えられたかを示すように構成された視覚的マーキングを含む、請求項9に記載の結び目送達装置。
【請求項12】
前記力インジケータは、前記予め構成された結び目を形成する前記糸状の材料に固定された脆弱要素を含む、請求項9に記載の結び目送達装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2017年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/607,218号の優先権および利益を主張するものであり、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔本開示の分野〕
本開示は、一般に、予め配備された縫合材料を引き締めるかまたは締め付けるために、予め構成された結び目を送達するための装置および方法に関する。特に、創傷を閉鎖するのを助けるために縫合糸を固定するなどのため、予め構成された結び目を外部位置から経皮的位置に送達するための技術が開示される。
【0003】
〔背景〕
従来の「開腹」手術に代わる低侵襲の代替法として、ますます多くのさまざまな処置が経皮的に実施されることを可能にするために、術後疼痛の軽減、入院期間と障害期間の短縮、および病院と患者の両方のコスト削減という利益をもたらす技術が開発されてきた。一般に、これらの処置は、処置を実施する際に使用されるよう患者の皮膚を通して導入される1つ以上の細長い器具を利用する。例えば、患者の脈管構造へのアクセスは、適切な動脈または静脈に開口部を形成することによって得ることができる。
【0004】
しかしながら、経皮的処置中に使用される器具を収容するために、開口部は比較的大きな直径を有する場合がある。種々の方法を使用して、アクセス開口部を閉鎖することができる。従来、止血は、開口部を通る血液の流れを実質的に減少させ、血栓形成を可能にするために、手で圧迫することによって達成され得る。一般的には成功しているが、圧迫にはかなりの時間がかかる場合があり、また、かなりの患者の不快感を伴うことがある。さらに、虚血または血栓症をもたらす可能性のある、管腔の意図しない完全閉塞などの合併症が起こりうる。これらの態様は、経皮的装置を導入するために必要な開口部のサイズ、抗凝固剤が使用されるか否か、および患者の状態に応じて悪化し得る。
【0005】
これに対応して、術後治癒過程の間に周囲組織の修復を試みるか、または別様に支持を提供することが望ましい。経皮的処置を実施するために形成された開口部を縫合糸で閉鎖することは、回復時間を短縮するか、感染のリスクを最小化するか、または他の利点を提供し得る。ステープルおよびクリップを使用するなど、創傷を閉鎖する他の方法が開発されているが、縫合は、依然として、これらの代替法よりも利点を提供する信頼性の高い技術である。従来、縫合糸のスライディングノット(sliding suture knot)は、縫合糸ループ内に形成され、患者の身体にアクセスするために使用されるポートの外側で、処置オペレータによって手で結ばれていた。次いで、この結び目は、血管の開口部を閉鎖するのを助けるように、適切な装置、すなわち、ノットプッシャーによって、血管に隣接するまで遠位に前進させることができる。しかしながら、結び目を作ることは、典型的には、止血の効率および安全性を確実にするために必要な、信頼性および再現性のある結び目を縫合糸ループに生成するために、高度の外科的技術を必要とする。したがって、止血を達成するために結び目を作る効率と再現性を改善する技術に対するニーズがある。以下の材料で説明されるように、本開示の装置および方法は、これらおよび他のニーズを満たす。
【0006】
〔概要〕
本開示は、縫合糸を固定するための結び目送達装置を含み、これは、近位端部および遠位端部を有する細長い本体と、細長い本体の遠位端部に配された予め構成された結び目と、縫合材料を捕捉するように構成されたスネアを有する縫合糸スネアであって、スネアが予め構成された結び目を通って延びる、縫合糸スネアと、予め構成された結び目を形成する材料の一端部に固定された縫合糸ロッカーと、を有し、縫合糸ロッカーに加えられた張力が、予め構成された結び目を締め付ける。
【0007】
一態様では、縫合糸スネアは、細長い本体に取り外し可能に固定され得る。
【0008】
一態様では、縫合糸ロッカーは、細長い本体に取り外し可能に固定され得る。
【0009】
一態様では、スネア、および予め構成された結び目を形成する材料は、細長い部材の遠位端部に開口部を有する少なくとも1つの内腔を通って延び得る。さらに、スネア、および予め構成された結び目を形成する材料は、それぞれ、細長い部材の遠位端部に開口部を有する別々の内腔を延び得る。開口部は、予め構成された結び目を形成する材料の通過を可能にするが、予め構成された結び目の巻き(turns)のパターンの通過を可能にしないようなサイズにすることができる。
【0010】
一態様では、縫合糸スネアの近位への動きは、予め構成された結び目を通してスネアを引っ張るように構成され得る。
【0011】
一態様では、縫合糸ロッカーの近位への動きは、予め構成された結び目を締め付けるように構成され得る。
【0012】
一態様では、縫合糸ロッカーは、力インジケータを含み得る。力インジケータは、付勢力を有するばねを使用することができ、予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力が、付勢力に打ち勝つように構成される。力インジケータは、予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力がいつ縫合糸ロッカーに加えられたかを示すように構成された視覚的マーキングを有し得る。あるいは、力インジケータは、予め構成された結び目を形成する材料に固定された脆弱要素を有してもよい。
【0013】
一態様では、予め構成された結び目を形成する材料は、レールリムおよび非レールリムを含み、レールリムは縫合糸ロッカーに固定され得る。したがって、スネアは、レールリムの周囲の非レールリムの少なくとも1つの螺旋状の巻きを通って延び得る。
【0014】
本開示はまた、縫合糸を固定するために予め構成された結び目を送達する方法を含む。この方法は、結び目送達装置を提供することであって、結び目送達装置は、近位端部および遠位端部を有する細長い本体であって、予め構成された結び目が、細長い本体の遠位端部に配される、細長い本体、縫合糸スネアであって、スネアが予め構成された結び目を通って延びる、縫合糸スネア、ならびに、予め構成された結び目を形成する材料の一端部に固定された縫合糸ロッカー、を有する、ことと、スネアで縫合材料を捕捉することと、予め構成された結び目を通して捕捉された縫合材料を引っ張るためにスネアを引き抜くことと、予め構成された結び目を縫合材料の周囲で締め付けることと、予め構成された結び目を縫合材料の上で所望の位置まで前進させることと、を含み得る。
【0015】
一態様では、スネアを引き抜くことは、細長い本体から縫合スネアを取り外すことを含み得る。
【0016】
一態様では、予め構成された結び目を締め付けることは、縫合糸ロッカーを細長い本体から取り外すことを含み得る。
【0017】
一態様では、予め構成された結び目を締め付けることは、十分な力が表示されるまで縫合糸ロッカーに張力を加えることを含み得る。十分な力の表示は視覚的とすることができる。あるいは、十分な力の表示は、縫合糸ロッカーの構成要素の破損を含み得る。
【0018】
添付図面に示されるような、本開示の好ましい実施形態に関する以下のより具体的な説明から、さらなる特徴および利点が明らかになるであろう。添付図面では、同様の参照符号は、概して、図面全体にわたって同じ部分または要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本開示の一実施形態による結び目送達装置の一実施形態の概略図を描く。
図1B図1Aの結び目送達装置のスネアおよび予め構成された結び目の概略拡大図を描く。
図2図1Aの結び目送達装置のスネアを通過した縫合材料の2本のストランドの概略図を描く。
図3A】本開示の一実施形態による、結び目送達装置の一実施形態を用いて、縫合材料上に付加するために外部の予め構成された結び目を送達する際の一連の動作を概略的に描く。
図3B】本開示の一実施形態による、結び目送達装置の一実施形態を用いて、縫合材料上に付加するために外部の予め構成された結び目を送達する際の一連の動作を概略的に描く。
図4】本開示の一実施形態による、予め構成された結び目の構成の概略図を描く。
図5】本開示の一実施形態による、予め構成された結び目の構成の概略図を描く。
図6A】本開示の一実施形態による力インジケータの概略図を描く。
図6B】本開示の一実施形態による力インジケータの概略図を描く。
図7】本開示の一実施形態による、脆弱要素を有する力インジケータの概略図を描く。
【0020】
〔詳細な説明〕
最初に、本開示は、特に例示された材料、構成、ルーチン、方法、または構造に限定されず、よって変化し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に記載されるものと類似または同等のいくつかのそのようなオプションを、本開示の実施または実施形態において使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載される。
【0021】
本明細書で使用される用語は、本開示の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0022】
添付図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態の説明とすることが意図されており、本開示が実施され得る単に例示的な実施形態を表すことを意図していない。この説明全体を通して使用される用語「例示的」は、「例、実例、または例証として役立つこと」を意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好適または有利であると解釈されるべきではない。詳細な説明は、明細書の例示的な実施形態の完全な理解を提供する目的で具体的な詳細を含む。本明細書の例示的な実施形態が、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることは、当業者には明らかであろう。いくつかの例では、本明細書に提示される例示的な実施形態の新規性を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造および装置がブロック図の形態で示される。
【0023】
便宜上および明確にするためにのみ、上部、下部、左、右、上、下、上方、上位、下方、下側、後部、後方、および前方などの、方向を示す用語を添付図面に関して使用することができる。これらのおよび同様の方向を示す用語は、決して開示の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。特に、本開示の態様は、心血管処置に関連して記載される。
【0025】
最後に、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
図1A、および図1Bの詳細図を参照すると、一実施形態による結び目送達装置10が示されている。結び目送達装置10は、縫合材料を固定して創傷閉鎖を容易にするため、予め構成された結び目12を外部位置から患者内の所望の位置に、(この図には示されていない)縫合材料上で経皮的に送達するように構成される。図示のように、縫合糸閉鎖部(suture closure)を固定またはロックするための結び目送達装置10は、細長い本体14と、縫合糸スネア16と、縫合糸ロッカー18と、を含み、縫合糸スネア16および縫合糸ロッカー18は、それぞれ、細長い本体14に取り外し可能に連結または固定され得る。細長い本体14は、近位端部20および遠位端部22を有する。縫合糸スネア16は、縫合材料の上に配され、縫合材料を捕捉するように構成された、可撓性材料のループによって形成されるスネア24を有し、対向する端部が、細長い本体14の遠位端部22の内腔26を通って送られ、縫合糸スネア16に固定されている。縫合糸ロッカー18は、細長い本体14の遠位端部22に配された予め構成された結び目12を有し、少なくとも一端部、例えばレールリム28が、細長い本体14の遠位端部22の内腔30を通って送られ、縫合糸ロッカー18に固定されている。以下でさらに詳細に説明するように、予め構成された結び目12は、レールリム28の周囲の非レールリム32の複数の巻きのパターンによって形成されてもよい。予め構成された結び目12およびスネア24、ならびに縫合材料自体は、それぞれ合成または天然であり、例えばポリマー、腸線(gut)、金属ワイヤ、もしくは他の適切な同等物であってよい。材料はそれぞれ、実質的に同じであってもよく、または1つ以上が、それぞれの機能に合わせた特性を示すために異なっていてもよい。例えば、予め構成された結び目12のための材料は、比較的大きな表面摩擦を有して、縫合材料の周りで結び目を引き締めて固定するのを容易にすることができる。別の非限定的な例として、縫合糸および予め構成された結び目12に使用される材料のいずれかまたは両方は、生分解性または生体吸収性であってよい。同様に、それぞれの材料は、実質的に同じゲージもしくは厚さのものであってよく、または所望により異なっていてもよい。縫合糸スネア16のスネア24は、予め構成された結び目12を通って延び、その結果、いったん縫合材料がスネア24によって捕捉されると、縫合糸スネア16を引き抜くことによって、縫合材料は、予め構成された結び目12を通って引っ張られる。次に、予め構成された結び目12を縫合材料の上で前進させ、固く引き締めて、縫合材料を固定し、以下の材料で説明するように創傷閉鎖を容易にすることができる。
【0027】
本実施形態では、内腔26および内腔30は、別々であり、細長い本体14の遠位端部22と、縫合糸スネア16および縫合糸ロッカー18が取り外し可能に固定されたところより遠位の横方向位置との間で連通して、スネア24および予め構成された結び目12それぞれの材料のための経路を形成し得る。例えば、スネア24の両端部は、細長い本体14の遠位端部22の開口部34と横方向ポート36との間を連絡する内腔26を通って延びるものとして図1Bに示されている。同様に、レールリム28のような、予め構成された結び目12を形成する材料の少なくとも1つの端部は、細長い本体14の遠位端部22の開口部38と横方向ポート40との間を連絡する内腔30を通って延びる。特に、開口部38は、レールリム28の通過を可能にするが、非レールリム32の巻きによって形成される予め構成された結び目12のパターンの通過を可能にしないようなサイズにすることができる。したがって、レールリム28を引き抜くと、非レールリム32の螺旋状の巻きが遠位端部22に当接し、それらは開口部38に進入できないので、非レールリム32の巻きは、レールリム28の周囲で収縮し、摩擦によって結び目を引き締め、締め付ける。他の実施形態では、単一の内腔を使用することができ、予め構成された結び目12およびスネア24の材料が同じ経路を通って延びることが理解されよう。しかしながら、構成要素間のもつれの可能性を低減するために、図示のように2つの内腔を使用することが望ましい場合がある。
【0028】
図1Aに示す結び目送達装置10の全体図に戻ると、縫合糸スネア16は、細長い本体14に固定され得る。いくつかの実施形態では、縫合糸スネア16は、例えば細長い本体14の周りに部分的に延びる(図1Aには示されていない)クリップ42によって、取り外し可能に固定される。上述のように、スネア24を形成する材料の対向する端部は、次に、縫合糸スネア16に固定される。対応して、縫合材料がスネア24のループを通って延びることによって捕捉された後、縫合糸スネア16は、予め構成された結び目12を通じて捕捉された縫合材料を引っ張るためにスネア24の材料を引き抜くのを容易にするために、細長い本体14から取り外され得る。代替的に、縫合糸スネア16は取り外し可能である必要はなく、オペレータはスネア24の材料を直接把持して引き抜きに作用することができる。同様に、縫合糸ロッカー18も、(図1Aには示されていない)クリップ44などによって細長い本体14から取り外し可能とし得ることも分かる。予め構成された結び目12を形成する材料の少なくとも1つの端部は、縫合糸ロッカー18に固定されているので、縫合糸ロッカー18を取り外すと、都合よく、レールリム28が近位方向に引っ張られ、予め構成された結び目12が細長い本体14の遠位端部22に当接し、上述のようにきつく引き締められる。さらに、縫合糸ロッカー18は、内腔30を通って延びる予め構成された結び目12の材料の端部に連結されたプルタブ46を含むこともできる。以下でさらに詳細に説明するように、プルタブ46と予め構成された結び目12との間の取り付けは、予め構成された結び目12を、過剰に締め付けることなく、適切にきつく引き締めるために十分な張力を加えることを容易にするように設計され得る。他の実施形態では、必要に応じて、縫合糸ロッカー18は取り外し可能である必要はなく、オペレータは、結び目を引き締める際にレールリム28を直接把持することができる。
【0029】
上述のように、予め構成された結び目12は、図1Bに示されるように、レールリム28の周りに非レールリム32の螺旋状の巻きの適切なパターンを作ることによって形成され得る。本開示によれば、予め構成された結び目12は、てぐす結び、クリンチノットまたは改良型クリンチノットなどの任意のスライディングノット、ならびに臨床現場で知られている任意の他の結び目であってよい。一態様では、予め構成された結び目12が、スネア24の周囲に形成されてもよく、または、結び目が、最初に形成され、次いで、スネア24が適切な場所を通過してもよい。例えば、スネア24は、非レールリム32の巻きの少なくとも1つを通って延びる。レールリム28などの、予め構成された結び目12を形成する材料の一端部は、細長い本体14の遠位端部22の開口部38を通って内腔30に入り、次いで横方向ポート40を通って出て、上述のように縫合糸ロッカー18に連結される。
【0030】
結び目送達装置10の例示的な使用が、図2図3に概略的に描かれる。例えば、図2から始めると、組織トラック50が、患者内の経皮的位置へのアクセスを提供するために作成されている。1つの一般的な位置は、大腿動脈のような血管など、患者の脈管構造の一部である。しかしながら、本開示の技術は、任意の特定の位置に限定されず、任意の適切な適用において縫合材料上で結び目を送達するために使用され得る。組織トラック50の作成、および経皮的位置にアクセスする1つ以上の医療装置を伴う処置の実行に続いて、装置は引き抜かれ、上述のように、創傷を閉鎖および支持するのを助けることが望ましい。したがって、縫合材料52は、組織トラック50の中を通され、創傷部位54で組織と係合することができる。縫合材料52を配置するための任意の適切な技術を、手動または縫合糸送達装置の使用によるものを含めて使用することができ、これには、同時係属中の共有の米国特許出願第14/726,963号および第14/726,996号に開示されているものが含まれ、これらは両方ともその全体が参照により組み込まれる。図2に示すように、縫合材料52は、縫合糸が患者の組織と係合する場所に隣接して結び目を引き締めることによって縫合糸が固定されるように、2つの自由端部を含むことができる。しかしながら、本開示の技術は、所望に応じて任意の数の縫合材料のストランドを固定するために適用することができる。図2に示すように、スネア24を使用して、縫合材料52の自由端部をスネア24のループに通すことにより、それらを捕捉することができる。次に、図3Aに概略的に示すように、縫合糸スネア16を細長い本体14から取り外し、近位に引き抜いて、予め構成された結び目12を通じて、次いで内腔26を通じてスネア24を引っ張ることができる。スネア24は、縫合材料52の自由端部を捕捉しているので、縫合材料も、予め構成された結び目12および内腔26を通って引っ張られる。縫合材料52が予め構成された結び目12を通って引っ張られると、縫合糸ロッカー18を細長い本体14から取り外すことができ、プルタブ46を操作することによって、近位の予張力を(例えばレールリム28を介して)予め構成された結び目12に加えて、圧縮することができる。縫合材料52の周りで予め構成された結び目12を引き締めるために十分な予張力が加えられた後、細長い本体14は、次いで、組織トラック50を通って前進させられ、予め構成された結び目12を縫合材料52に沿ってスライドさせることができ、図3Bに概略的に示すように、縫合糸を固定し、創傷を閉鎖するのを助けるために縫合材料が患者の組織と係合する位置54に隣接させる。実施形態に応じて、予め構成された結び目12の引き締めは、予張力を加えられた結び目が縫合糸を固定するその最終位置まで前進される前に、1つの動作で実行されてもよく、すなわち、結び目を前進させる前に初期張力を加え、次に、結び目がその所望の位置に来ると最終張力を加える。
【0031】
上述のように、予め構成された結び目12は、その結び目が、縫合糸を固定するために縫合材料に沿ってスライドされ、縫合材料の周囲で締め付けられることを可能にする、任意の適切なパターンを用いて作られ得る。1つの非限定的な例として、予め構成された結び目12は、図4に示すようなてぐす結びパターン56を使用することができる。あるいは、予め構成された結び目12は、図5に示されるように、てぐす結びパターン60に隣接する少なくとも1つの縫合糸ループ58をさらに含み得る。縫合糸ループ58は、縫合材料52を引き締めて固定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、予め構成された結び目12における、てぐす結びパターン60に隣接する縫合糸ループ58の追加は、縫合材料52に加えられる係止力を増加させることができる。図示のように、縫合糸ループ58は逆のループとすることができるが、他の構成を所望に応じて採用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、プルタブ46と予め構成された結び目12との間の取り付けは、上述のように、予め構成された結び目12を、過度に締め付けることなく、適切にきつく引き締めるのに十分な張力を加えることを容易にするように設計され得る。例えば、図6Aおよび図6Bは、予め構成された結び目12を締め付ける際に所与の量の張力の印加を容易にするための力インジケータ62を特徴とするプルタブ46を概略的に描いている。レールリム28は、プルタブ46に固定されたハウジング66内に配されたピストン64に固定することができる。圧縮ばね68が、ピストン64上に同軸に配され、ピストンを近位方向に付勢し、本来の構成が図6Aに示されている。これに対応して、ばね68の付勢力に打ち勝つために十分な近位張力がプルタブ46に加えられると、ピストン64は、図6Bに示されるように、ハウジング66に対して遠位方向に移動する。一実施形態では、所望の張力がいつ加えられたかを示すために、この移動範囲に沿って視覚的マーキング70を設けることができる。この実施形態では、マーキング70は、十分な張力が加えられると、ハウジング66から出てきて見えるようになるが、任意の他のタイプの視覚的表示を使用することもできる。これに代えて、またはこれに加えて、力インジケータ62は、ばね68がいつ圧縮し始めるか、またはピストン64がハウジング66内のその移動範囲の終わりにいつ到達するかなどの、触覚表示を提供してもよい。これらの実施形態は例示的とすることを意図しており、限定的であると考えるべきではないことが理解されよう。予め構成された結び目12に加えられる張力を示すための任意の適切な機構を、当技術分野で既知のように使用することができる。ここでも、例示の目的で、別の実施形態を図7に示す。力インジケータ72は、脆弱要素74を介してプルタブ46にレールリム28を固定する。脆弱要素74は、所望の張力が加えられたときに破損する、較正された強度を有するポリマーまたは他の材料から形成されてもよい。
【0033】
上記の材料から理解されるように、結び目送達装置10は、予め構成された結び目12を使用し、それを外部位置から経皮的位置に前進させて縫合材料を固定し、創傷または医療処置アクセス部位の閉鎖を容易にする。これに対応して、本開示の技術は、所望の位置において手で縫合糸の結び目を作ることに関連する合併症および困難を回避する。さらに、予め構成された結び目を使用することにより、それらを、再現可能な方法で、例えば製造中に自動的に、形成することができ、従来の結び目作りの実施を使用する場合に存在し得る可変性を克服する。さらに、予め構成された結び目12を送達するための結び目送達装置10の使用は、創傷を閉鎖するためまたは他の目的のために使用される縫合糸を適切に固定するために必要な時間を実質的に減少させることができる。
【0034】
特定の例示的な実施形態を本明細書に記載する。しかしながら、本実施形態に関連する分野の当業者であれば、本開示の原理は、適切な修正を加えることによって他の適用に容易に拡張できることを理解するであろう。
【0035】
〔実施の態様〕
(1) 縫合糸を固定するための結び目送達装置において、
近位端部および遠位端部を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記遠位端部に配された予め構成された結び目と、
縫合材料を捕捉するように構成されたスネアを有する縫合糸スネアであって、前記スネアが、前記予め構成された結び目を通って延びる、縫合糸スネアと、
前記予め構成された結び目を形成する材料の一端部に固定された縫合糸ロッカーと、
を含み、
前記縫合糸ロッカーに加えられた張力が、前記予め構成された結び目を締め付ける、結び目送達装置。
(2) 前記縫合糸スネアは、前記細長い本体に取り外し可能に固定されている、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(3) 前記縫合糸ロッカーは、前記細長い本体に取り外し可能に固定されている、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(4) 前記スネア、および前記予め構成された結び目を形成する前記材料は、前記細長い本体の前記遠位端部に開口部を有する少なくとも1つの内腔を通って延びる、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(5) 前記スネア、および前記予め構成された結び目を形成する前記材料は、それぞれ、前記細長い本体の前記遠位端部に開口部を有する別々の内腔を延びる、実施態様4に記載の結び目送達装置。
【0036】
(6) 前記開口部は、前記予め構成された結び目を形成する前記材料の通過を可能にするが、前記予め構成された結び目の巻きのパターンの通過を可能にしないようなサイズである、実施態様4に記載の結び目送達装置。
(7) 前記縫合糸スネアの近位への動きは、前記予め構成された結び目を通して前記スネアを引っ張るように構成されている、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(8) 前記縫合糸ロッカーの近位への動きは、前記予め構成された結び目を締め付けるように構成されている、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(9) 前記縫合糸ロッカーは、力インジケータを含む、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(10) 前記力インジケータは、付勢力を有するばねを含み、前記予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力が、前記付勢力に打ち勝つように構成されている、実施態様9に記載の結び目送達装置。
【0037】
(11) 前記力インジケータは、前記予め構成された結び目を締め付けるのに十分な張力がいつ前記縫合糸ロッカーに加えられたかを示すように構成された視覚的マーキングを含む、実施態様9に記載の結び目送達装置。
(12) 前記力インジケータは、前記予め構成された結び目を形成する前記材料に固定された脆弱要素を含む、実施態様9に記載の結び目送達装置。
(13) 前記予め構成された結び目を形成する前記材料は、レールリムおよび非レールリムを含み、前記レールリムは前記縫合糸ロッカーに固定されている、実施態様1に記載の結び目送達装置。
(14) 前記スネアは、前記レールリムの周囲の前記非レールリムの少なくとも1つの螺旋状の巻きを通って延びる、実施態様13に記載の結び目送達装置。
(15) 縫合糸を固定するために予め構成された結び目を送達する方法であって、
結び目送達装置を提供することであって、前記結び目送達装置は、近位端部および遠位端部を有する細長い本体であって、前記予め構成された結び目が、前記細長い本体の前記遠位端部に配される、細長い本体、縫合糸スネアであって、スネアが前記予め構成された結び目を通って延びる、縫合糸スネア、ならびに、前記予め構成された結び目を形成する材料の一端部に固定された縫合糸ロッカー、を有する、ことと、
前記スネアで縫合材料を捕捉することと、
前記予め構成された結び目を通して捕捉された前記縫合材料を引っ張るために前記スネアを引き抜くことと、
前記予め構成された結び目を前記縫合材料の上で所望の位置まで前進させることと、
前記予め構成された結び目を前記縫合材料の周囲で締め付けることと、
を含む、方法。
【0038】
(16) 前記スネアを引き抜くことは、前記細長い本体から前記縫合糸スネアを取り外すことを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記予め構成された結び目を締め付けることは、前記縫合糸ロッカーを前記細長い本体から取り外すことを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記予め構成された結び目を締め付けることは、十分な力が表示されるまで前記縫合糸ロッカーに張力を加えることを含む、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記十分な力の表示は視覚的である、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記十分な力の表示は、前記縫合糸ロッカーの構成要素の破損を含む、実施態様18に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7