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特許7258895タンク内の流体を移動するためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】タンク内の流体を移動するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/50 20220101AFI20230410BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20230410BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20230410BHJP
【FI】
B01F25/50
B01F23/50
B01F25/21
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020537060
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 GB2018052636
(87)【国際公開番号】W WO2019053461
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】102017019628-3
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】520089897
【氏名又は名称】ペトロブラス トランスポルテス エス/エー.-トランスペトロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ピーニョ アルホ,アレキサンドル テイシェイラ
(72)【発明者】
【氏名】レイエス,マルタ セシリア タピア
(72)【発明者】
【氏名】カレフ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロペス アウヴェス,ルイス フェリペ フンテス
(72)【発明者】
【氏名】ワラック,ホルヘ アラム
(72)【発明者】
【氏名】マセッティ,イサイアス クアレスマ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314896(JP,A)
【文献】特開昭54-091864(JP,A)
【文献】特開昭55-134077(JP,A)
【文献】特開昭59-187575(JP,A)
【文献】特開昭49-039269(JP,A)
【文献】米国特許第06217207(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の流体を移動するためのシステムであって、
タンクと、
4つのポンピングセットとを備え、
前記ポンピングセットが前記タンクの周りにペアで配置され、各ペアが他のペアとは反対側に配置され
各前記ポンピングセットは、
タンクの外部にあり、両端を介して前記タンクの2つの異なる点で前記タンクの内部と流体的に連通しているポンピングラインと、前記ポンピングラインを通して流体を循環させるように構成されたポンプとを有し、
各ポンピングセットは、それぞれのポンピングラインの一端でタンクから流体を収集し、それぞれのポンピングラインを通して流体を循環させ、それぞれのポンピングラインの他端を通して前記タンク内に流体を排出するように構成されており、
各ポンピングセットは、それぞれのポンピングライン内の流体の流れが反転可能であり、前記タンクの周りの対向する方向にそれらのポンピングライン内の流体の流れを持つように構成されている、システム。
【請求項2】
各ポンピングラインの少なくとも一端がタンクの内部に向かって延伸している、請求項1のシステム。
【請求項3】
各ポンピングラインの少なくとも一端が流体力学的ノズルの形状を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
各ペアのポンピングセットが、タンクの周りの流体の流れの方向が、反対側のペアの流体の流れの方向をミラーリングするように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
各ペアのポンピングセットが、タンクの周りの流体の流れの方向が、反対側のペアの流体の流れの方向と比較して反転するように構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ポンピングラインの端部が、互いに平行にタンクの内部に向かって延伸している、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
ポンピングラインの少なくとも1つの端部が2以上の出口/入口を備える、請求項1からのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
各ポンピングセットがさらに、ポンプの各側のポンピングラインに配置された少なくとも1つの閉塞弁を含む、請求項1からのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
各ポンピングセットは、ポンピングラインの端部の各入口/出口に配置された閉塞弁を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記タンクが貯蔵タンクである、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
タンクの外部にあり、両端を介して前記タンクの2つの異なる点で前記タンクの内部と流体的に連通しているポンピングラインと、前記ポンピングラインを通して流体を循環させるように構成されたポンプとを有するポンピングセットを4つ使用してタンク内の流体を移動させる方法であって、
前記ポンピングセットは、前記タンクの周りにペアで配置され、各ペアが他のペアとは反対側に配置され、
各ポンピングセットは、それぞれのポンピングラインの一端でタンクから流体を収集し、それぞれのポンピングラインを通して流体を循環させ、それぞれのポンピングラインの他端を通して前記タンク内に流体を排出するとともに、それぞれのポンピングライン内の流体の流れが反転可能であり、前記タンクの周りの対向する方向にそれらのポンピングライン内の流体の流れを持つように構成されており、
各ポンピングセットで、タンクからポンピングラインを介して流体を収集し、前記ポンピングラインの他方の端部を介して前記タンク内に流体を排出し、
少なくとも1つのポンピングセットについて、ポンピングラインを通る流れの方向を反転させる、方法。
【請求項12】
前記各ポンピングラインの流体の流れが、0.5ないし5m/sである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポンピングラインの各々における流体の流れが1ないし3m/sである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各ポンピングラインの流体の速度が実質的に同じである、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
流体の流速が全てのポンピングラインにおいて実質的に同じではない、請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
混合ルーチンの一部として、少なくとも1つのポンピングセットのポンピングラインを通る流体の流れの方向を反転させるステップ、又は少なくとも1つのポンピングセットを通る流体の流速を変更するステップをさらに含む、請求項11から15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク等のタンク内で液体を移動するための技術に関する。より具体的には、本発明は、堆積物の生成を防止するために、貯蔵タンク内の炭化水素を移動するのに用いることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石油探査サイトで生産された炭化水素は、その処理の様々なステップの間、タンク内に貯蔵される。貯蔵の段階では、主にタンクの底部のいくつかの領域に油性の堆積物が生成されることがある。
【0003】
堆積物は、微生物のコロニーとタンクの腐食生成物とで構成されており、炭化水素の汚染以外の何物でもない。この汚染は、タンクの可用容積を徐々に減少させるだけでなく、タンクの空出し、清掃、及びメンテナンスのプロセスに関連した時間とコストの増加をもたらす。
【0004】
したがって、堆積物生成要素を懸濁状態に維持することは、炭化水素貯蔵タンクにおける堆積物の生成を減少させるための有効な戦略である。このシナリオでは、堆積物生成を低減するために石油産業で最も使用される戦略の1つは、臨界速度を超える速度での炭化水素の循環である。通常採用される方法は、側方の所定の位置に設置されたプロペラ型の混合機(サイドプロペラ混合機)に基づいている。
【0005】
典型的な配置を考えると、プロペラ型混合機の作用によるタンク内の流れのダイナミクスは、インペラの吐出口に近い位置に運動エネルギーが集中した領域が形成されることと、主に低い流速が観測される再循環領域とが形成されることとが観察されることを特徴としている。これらの特徴は、特にタンクの中央部における堆積物の生成を減少させるという点に関して、移動のためのシステムの効率を低下させる。
【0006】
これに関連して、これらの混合機は、タンク内に可動部を導入することにより、運転上の欠点をもたらすことになる。インペラに関連した浸透や漏れの修正・防止の間、運転の継続性が損なわれるためである。
【0007】
前述の問題を解決する試みとして、いくつかの企業は「ジェットミキサー」型のタンク混合システムを開発してきた。一般的にこのようなシステムは、流体を集めるためのポイントと、流体を循環させるためのタンク内の噴射ノズルとを設ける。
【0008】
Xylem社は、Flygt Jet Mixer(商標)として知られているシステムを開発した。これは、タンク内からの液体を所定の場所に集め、別の場所で再噴射するポンプを有する外部ジェット混合システムからなる。混合効率を高めるために、タンク内にノズルとエゼクタとを有する噴射装置が設けられている。
【0009】
Mixrite社も、タンク内の液体を所定の位置にてポンプで回収し、別の場所で再噴射する「ジェット混合機」型の類似システムを開発した。噴射システムはノズルとディフューザーとを有する。流体がノズルを通過してタンク内に加圧注入されると、ベルヌーイの原理によりディフューザーの入口に真空が発生する。この効果により、タンク内の流体を移動させるシステムが開発される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のシステムは、先行技術の主要な問題点の一つを解決するために、タンク内に可動部を備えていないが、タンク内での高効率の混合を達成することはできず、タンク内には、常に、インジェクタノズルの近くの、速度の速い領域と、速度の低い他の領域とが存在することになる。また、速度の低い領域で効率的な混合を達成するためには、ポンプの出力をかなり大きくする必要があり、エネルギー消費量が大きいという問題がある。さらに、貯蔵タンクの大きさや形状によっては、このようなシステムでは流体の移動効率が低い場合がある。
【0011】
最後に、タンク内の液体を混合する過程でより効率的になるようなインジェクタノズルの設計は、閉塞の影響を受けやすくし、最終的にはノズルのメンテナンス又は交換のためにタンクを空にすることを必要とする。以下に詳述するように、本発明は、上述した先行技術の問題点を実用的かつ効率的に、かつ低コストで少なくとも部分的に解決することを目的とする。
【0012】
本開示は、タンク内に故障しやすい構成要素をタンク内に配置する必要がなく、タンク外の構成要素についてメンテナンスを行う必要がない、貯蔵タンクなどのタンク内の流体を移動させるための外部システムを提供する。
【0013】
本開示はまた、貯蔵タンクのサイズ及び形状とは無関係に、移動効率が高くエネルギー消費量が低い、貯蔵タンク内の流体の移動のための外部システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、タンク内の流体を移動するためのシステムであって、タンクと、少なくとも2つのポンピングセットとを備え、各前記ポンピングセットは、タンクの外部にあり、前記ポンピングラインの両端を介して前記タンクの2つの異なる点で前記タンクの内部と流体的に連通しているポンピングラインと、前記ポンピングラインを通して流体を循環させるように構成されたポンプとを有し、各ポンピングセットは、それぞれのポンピングラインの一端でタンクから流体を収集し、それぞれのポンピングラインを通して流体を循環させ、それぞれのポンピングラインの他端を通して前記タンク内に流体を排出するように構成されており、各ポンピングセットは、それぞれのポンピングライン内の流体の流れが反転可能であるように構成されているシステムが提供される。
【0015】
この配置によれば、異なるポンピングラインにおける流れの方向を制御することにより、流体を異なるパターンでタンクから取り出し、また注入することができる。混合パターンを変更することにより、固定された混合パターンに起因して静止スポットが形成されるのを回避することができ、したがって、堆積物の蓄積に対する改善された保護を提供することができる。
【0016】
各ポンピングラインの少なくとも一端がタンクの内部に向かって延伸しているようにしてもよい。各ポンピングラインの少なくとも一端が流体力学的ノズルの形状を有するようにしてもよい。
【0017】
システムは4つのポンピングセットを有するものとしてよい。ポンピングセットは、タンクの周りにペアをなすように配置することができ、各ペアは、他のペアの反対側に位置する。特定のペアのポンピングセットが、そのポンピングライン内の流体の流れがタンクの周りの同じ方向であるように構成することができる。あるいは、特定のペアのポンピングセットが、前記タンクの周りの対向する方向にそれらのポンピングライン内の流体の流れを持つように構成することができる。あるいは、各ペアのポンピングセットが、タンクの周りの流体の流れの方向が、反対側のペアの流体の流れの方向をミラーリングするように構成することができる。あるいは、各ペアのポンピングセットが、タンクの周りの流体の流れの方向が、反対側のペアの流体の流れの方向と比較して反転するように構成することができる。このように、ポンピングセットの配置は、タンク内の流れパターンを変化させるための多くの選択肢を提供する。
【0018】
ポンピングラインの端部が、互いに平行にタンクの内部に向かって延伸するようにすることもできる。これは、円筒形のタンクでは有利であり、あるいは、全てのポンピングラインが径方向にタンク内に延伸するようにすることも可能である。
【0019】
システムは3つのポンピングセットを有するとしてもよい。
【0020】
ポンピングラインの少なくとも1つの端部が2以上の出口/入口を備えるようにすることもできる。ポンピングライン内の流れの反転可能性を考慮すると、各出口は入口としても機能し、その逆も同様に機能する。
【0021】
各ポンピングセットがさらに、ポンプの各側のポンピングラインに配置された少なくとも1つの閉塞弁を含むとしてもよい。すなわち、1つの弁は、上流側(所定のポンピング方向に対して)にあり、1つの弁は、ポンプの下流側にある。弁は、例えば、ポンピングラインの端部に設けることができる。各ポンピングセットは、ポンピングラインの端部にある各入口/出口に配置された閉塞弁を備えることができる。
【0022】
前記タンクは貯蔵タンクであってもよい。
【0023】
本発明の別の側面によれば、タンク内の流体を移動させる方法であって、タンクの外部にある少なくとも2つのポンピングセットを使用し、各ポンピングセットで、タンクからポンピングラインを介して流体を収集し、前記ポンピングラインの他方の端部を介して前記タンク内に流体を排出し、少なくとも1つのポンピングセットについて、ポンピングラインを通る流れの方向を反転させる方法が提供される。流体の流れの方向を反転させることにより、タンク内の混合パターンが変更される。この方法は、混合ルーチンの一部として、少なくとも1つのポンピングセットのポンピングラインを通る流体の流れの方向を反転させるステップ、又は少なくとも1つのポンピングセットを通る流体の流れの速度を変更するステップ、あるいはその両方をさらに含むことができる。
【0024】
前記各ポンピングラインの流体の流れは、0.5ないし5m/sとすることができる。あるいはポンピングラインの各々における流体の流れが1ないし3m/sであるとしてもよい。
【0025】
いくつかの方法では、ポンピングラインの各々における流体の流速は実質的に同じである。他の方法では、流体の流速は、すべてのポンピングラインにおいて実質的に同じではない。更なる方法では、混合パターンが変更されると、流速は、ある時点ではポンピングラインにおいて実質的に同じであり、他の時点では異なっていてもよい。
【0026】
また、貯蔵タンク内の流体を移動させるための外部システムが開示されており、少なくとも2つのポンピングセットを有し、各ポンピングセットは、(i)前記ポンピングラインの両端を介して貯蔵タンクの少なくとも2つの別個の点で貯蔵タンクの内部と流体的に連通している貯蔵タンクの外部のポンピングラインと、(ii)前記ポンピングラインを介して流体を循環させるのに適したポンプと、を備える。ここで、ポンピングラインを介して循環される流体は、ポンピングラインの一端で貯蔵タンクから回収され、ポンピングラインの他端を介して前記貯蔵タンク内に排出され、ポンピングライン内の流体の流れが反転可能である。
【0027】
また、貯蔵タンク(10)内の流体を移動させるための外部システムも開示されており、これは、少なくとも2つのポンピングセット(20、20a、20b、20c、20d)を有し、各ポンピングセット(20、20a、20b、20c、20d)は、前記ポンピングライン(32、34)の両端を介して、前記貯蔵タンク(10)の少なくとも2箇所において、前記貯蔵タンク(10)の内部と流体的に連通している、貯蔵タンク(10)の外部のポンピングライン(30)と、前記ポンピングライン(30)を介して流体を循環させるのに適したポンプ(40)とを備え、ポンピングライン(30)を介して循環される流体が、ポンピングライン(30)の一端(32、34)で貯蔵タンク(10)から回収され、ポンピングライン(30)の他端(32、34)を介して前記貯蔵タンク(10)内に排出され、ポンピングライン(30)内の流体の流れが反転可能であることを特徴とする。
【0028】
前記ポンピングライン(30)の少なくとも一方の端部(32、34)は、前記貯蔵タンク(10)の内部に向かって延伸しているとすることができる。
【0029】
ポンピングライン(30)の少なくとも1つの端部(32、34)は、流体力学的ノズルの形状を有するとすることができる。
【0030】
システムは、4つのポンピングセット(20a、20b、20c、20d)を備えることができる。
【0031】
ポンピングセット(20a、20b、20c、20d)は、ペアをなして貯蔵タンク(10)内に配置され、各ペアは他のペアの反対側に配置されるとしてもよい。
【0032】
特定のペアのポンピングセット(20a、20b、20c、20d)は、それらのポンピングライン(30)内の流体の流れが、時計回り又は反時計回りのいずれかの同じ一方向及とすることもできる。
【0033】
特定のペアのポンピングセット(20a、20b、20c、20d)は、それらのポンピングライン(10)内の流体の流れが反対方向であるとすることができる。
【0034】
ポンピングライン(30)の端部(32、34)が貯蔵タンク(10)の内部に向かって延びる方向は、互いに平行であってもよい。
【0035】
システムは、3つのポンピングセット(20a、20b、20c、20d)を有するものとすることもできる。
【0036】
ポンピングライン(30)の端部(32、34)の少なくとも1つは、2つ以上の出口/入口を有するとしてもよい。
【0037】
システムは、少なくとも2つのポンピングセット(20)のポンピングライン(30)の各端部(32、34)に配置された少なくとも1つの閉塞弁(50)を有するとしてもよい。
【0038】
システムは、少なくとも2つのポンピングセット(20)にあるポンピングライン(30)の端部(32、34)のそれぞれの入口/出口に配置された閉塞弁(50)を備えるとすることもできる。
【0039】
ポンピングライン(30)の各々における流体の速度は、0.5ないし5m/sとすることもできる。
【0040】
ポンピングライン(30)の各々における流体の速度は、1ないし3m/sとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、4つのポンピングセットが設けられる実施形態における、流体の移動のための外部システムを備える貯蔵タンクの概略上面図である。
図2図2は、図1のポンピングセットのうちの1つの概略上面図である。
図3図3は、図2のポンピングセットの左側の詳細な上面図である。
図4図4は、流体力学的フォーマットを有するポンピングラインの一端を示す等角図である。
図5図5は、4つのポンピングセットが複合流で動作する実施形態における流体の移動のための外部システムを有する貯蔵タンクの概略的な等角図である。
図6図6は、第1の流れの構成における図5の複合流での動作について、CFD数値シミュレーションにより得られた結果を示す。
図7図7は、第2の流れの構成における図5の複合流での動作について、CFD数値シミュレーションにより得られた結果を示す。
図8図8は、4つのポンピングセットが対向流で動作する実施形態における流体移動のための外部システムを有する貯蔵タンクの模式的な等角図である。
図9図9は、図8の対向流運転のCFD数値シミュレーションで得られた結果を示す。
図10図10は、3つのポンピングセットが設けられている実施形態における流体移動のための外部システムを有する貯蔵タンクの概略上面図である。
図11図11は、図10の2つのポンピングセットの側面のうちの1つの側面の詳細な上面図である。
図12図12は、図10のポンピングセットの2つの側面のうちの1つの側面の詳細な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年9月14日に出願されたブラジル特許出願BR 10 2017 019628-3に基づく優先権を主張し、その内容全部を参照により援用する。
【0043】
以下に示す詳細な説明は、添付の図及びそれぞれの参照番号を参照している。
【0044】
まず、以下の説明は、本発明の好ましい実施形態に基づくものであることを強調しておく。しかしながら、当業者には明らかであろうように、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
本開示は、貯蔵タンク10のようなタンク内の流体を移動させるための外部システムを提供する。そのシステムは、少なくとも2つのポンピングセット20を備える。一例として、図1は、円筒形の側壁12を備えた円筒形の貯蔵タンク10の概略上面図を示している。しかしながら、貯蔵タンク10のようなタンクは一般的に円筒形であるが、本発明は、任意の形状のタンクで利用することができる。いずれにしても、図1に戻ると、4つのポンピングセット20が設けられている実施形態では、タンク10は、本発明の流体を移動させるための外部システムを備えている。すなわち、このシステムは、流体を除去し、タンク10の周囲で外部にポンピングし、その後、別のポイントでタンク10内に再注入することによって移動が達成されるという意味で「外部」である(これは、例えば、タンク内に配置された内部ミキサープロペラ又は同等物とは対照的である)。このように、定期的なメンテナンスを必要とすると予想される部品は、タンク10の外部にある。
【0046】
図2及び図3に詳細に図示されているように、各ポンピングセット20は、ポンピングライン30を構成する。ポンピングライン30は、貯蔵タンク10の外部にある。このポンピングライン30は、前記ポンピングライン30の2つの端部32,34を介して、前記貯蔵タンク10の少なくとも2つの別個の点で前記貯蔵タンク10の内部と流体的に連通している。すなわち、各ポンピングライン30の端部32,34は、互いに間隔をあけて、貯蔵タンク10の内部と接続している。ポンピングライン30の少なくとも1つの端部32,34は、貯蔵タンク10の内部に向かって延伸可能である。貯蔵タンクが円筒形である実施形態では、図1に図示されているように、ポンピングライン30のすべての端部32、34は、実質的にタンクの中心に向かって延伸可能である。貯蔵タンクが円筒形である他の実施形態では、図5に示されるように、ポンピングライン30のすべての端部32、34は、実質的に互いに平行にタンク内に向けられることができる。より詳細には後述する。
【0047】
各ポンピングセット20のポンピングライン30の端部32,34は、ノズルであり得る。ノズルは、図4に図示されているような流体力学的ノズルの形状を有することができる。この特定の形状は、タンクの底部付近の流体の層における流れに対し効果的な移動を促進するために開発されたものである。この形状は、(第1の方向に)テーパーが付けられるとともに、(第1の方向に垂直な方向に)実質的に長方形のスロットに拡開される円筒管の形状である。ノズルの入口/出口(流体の流れの方向に応じて)は、端部から見たときにわずかに凸になっている、すなわち、長方形のスロットは、スロットの狭い端部が中心部の後ろにあるように後方にカーブしている。流体力学の数値モデリング(CFD:Computational Fluid Dynamics(流体解析))の実験と結果から、問題となっている応用についての流体力学ノズルの設計はかなり高い効率となることが示された。
【0048】
特定の形状にかかわらず、各ポンピングセット20のポンピングライン30の端部32、34は、ポンピングライン30の出口及び入口の両方として機能する。以下にさらに詳細に説明するように、流れは、ポンピングライン30を通っていずれかの方向に行くことができ、したがって、当業者は、用語「出口」及び「入口」が交換可能に使用され得ることを理解するであろう。このことを考慮して、本明細書では、以下の説明及び特許請求の範囲において、「出口/入口」と称する。
【0049】
さらに、図1から図3に示すように、本発明のシステムの各ポンピングセット20は、ポンピングライン30を介して流体を循環させるのに適したポンプ40を構成する。したがって、貯蔵タンク10内の流体は、一方の端部32、34によって集められ、ポンピングライン30を通って循環され、反対側の端部32、34で排出される。
【0050】
各ポンプは、速度制御システムを備えることができる。これは、例えば、周波数インバータによるものであってもよい。このことは、各ポンピングセット20の流れの方向及び動作流量の値を、他のポンプとは独立して調整することができることを意味する。したがって、各ポンピングセット20のポンピングライン30における流体の流れの強さを制御することができる。これは、各ポンピングライン30内の流体の流れを反転可能にするための一つの方法でもある。
【0051】
このシステムは、特定の貯蔵タンク10に対して、流れの方向及び速度が交代するルーチンを設定することを可能にし、これは、先行技術のシステムにおいて観察されるような、永続的に低速度である領域を最大限排除することを意味する。すなわち、ポンピングセット20を通る流体の流れの方向を設定及び変更するルーチンを設定することができ、それによってタンク10内の速度プロファイルを変化させることができる。
【0052】
図5及び図8は、4つのポンピングセット20a、20b、20c、20dを有する本発明のシステムの一実施形態を示す。この4つのポンピングセット20a、20b、20c、20dは、貯蔵タンク10内にペアをなして配置されている。各ペアは、他のペアと反対の位置に配置されている。すなわち、2つのポンピングセット20a,20b(第1のペアを形成する)が貯蔵タンク10の一方の側に配置され、2つのポンピングセット20c,20d(第2のペアを形成する)が反対側に配置されている(実質的に円筒形の貯蔵タンク10を用いた本実施例では、互いに対向するように放射状に配置されている)。言い換えれば、一方のペアのセット20の配置は、タンク10の中心を横切って他方のペアの配置を反映する。図示の実施形態では、全てのポンピングライン30の端部32、34が貯蔵タンク10内に向けられている方向は、互いに平行である。描かれた実施形態では、すべてのポンピングライン30の端部32、34は、タンク内で実質的に同じ高さにある。
【0053】
まだ図5及び図8を参照すると、可能である多数の流れの組み合わせから2つの流れの組み合わせが図示されている。理解を容易にするために、図中の例として使用される貯蔵タンク10は円筒形であるので、特定のポンピングライン30におけるタンクの周りの流れの方向が、描かれた貯蔵タンク10の上方から見た場合(すなわち、図5の端部32から端部34まで)に関して時計回りである場合には、「時計回りの流れ」という呼称を使用するものとする。及びまた、特定のポンピングライン30におけるタンクの周りの流れの方向が、描写された貯蔵タンク10の上から見て反時計回りである場合(すなわち、図5の端部34から端部32まで)には、「反時計回りの流れ」という呼称が付けられている。
【0054】
前述したことを踏まえて、図5は、「複合流による運転」と呼ばれる流れの構成の一例を示している。これは、各ペアのポンピングセット20の各ペア内で最も近いポンピングラインの端部を通る流れが同一方向になるように、また、互いに対向する(すなわち、対向するペアで)ポンピングラインの端部を通る流れがタンクに対して同一方向になるように(したがって、ポンピングセットのペアの流れが互いに逆方向になるように)運転されるため、いわゆる「合流運転」と呼ばれているものである。このようにして、ポンピングセット20は、協働してタンク10内に大きな複合循環セルを形成していると見ることができる。
【0055】
より詳細には、この構成では、第1のポンピングセット20aは、そのポンピングライン内で時計回りの流れを有する。第2のポンピングセット20bのポンピングライン内の流れ(セット20aとの第1のペアを形成する)は、反時計回りである。これにより、図5に示すように、流体は、タンクの2つの端部から引き出され、より効果的に中央部に注入されることになる。対照的に、第3のポンピングセット20c及び第4のポンピングセット20d(第2のペアを形成する)は、それぞれ反時計回り及び時計回りの流れを有し、したがって、第1のペアと比較して、タンクの中央から流体が引き出され、側面から注入される。このように、上述の実施例の複合流れを伴う動作では、より速い流れが、ポンピングライン30の端部32、34が向いている方向に平行な中央ライン及び横方向のラインに形成される。
【0056】
図6及び図7は、複合流を用いた2つの運転形態についてのCFD数値シミュレーションによって得られた結果を示す。色勾配の凡例は,貯蔵タンクの底面から0.7m上での流速をメートル毎秒(m/s)の単位で表したものである.より具体的には、図6は、各ポンピングラインの流量が2.0m/sである場合の複合流れでの運転の結果を示している。順番に、図7は、第1の組20a及び第3の組20cのポンピングラインの流量が2.0m/sであり、第2の組20b及び第4の組20dのポンピングラインの流量が1.0m/sである複合流れで運転する構成の結果を示している。
【0057】
図8は、「逆流運転」と呼ばれる流れの構成例を示している。これは、いわゆる、各ペアのポンピングセット20の各ペア内で最も近いポンピングラインの端部を通る流れが同一方向になるように、また、互いに対向する(すなわち、対向するペアで)ポンピングラインの端部を通る流れがタンクに対して逆方向になるように(したがって、ポンピングセットのペアの流れが互いに鏡面対称とされるように)運転されるためである。このようにして、ポンピングセット20は、互いに反対に動作していると考えることができる(反対の位置から流体を引き出し、反対の位置で流体を注入する)。
【0058】
より詳細には、この構成では、第1のポンピングセット20aは、そのポンピングライン内の流れを時計回りに有する。第2のポンピングセット20b(セット20aと第1のペアを形成する)のポンピングライン内の流れは、反時計回りである。図8に示すように、これは、流体がタンクの2つの端部から引き出され、より中央に注入されることを効果的にもたらす。同様に、第3のポンピングセット20c及び第4のポンピングセット20d(第2のペアを形成する)は、それぞれ時計回りの流れ及び反時計回りの流れを有し、したがって、第1のペアの流れを鏡面対称とし、タンクの側面から流体が引き出され、より中央に注入される。このように、上記の実施例の反対の流れを有する操作では、一般に、より多くの乱流が貯蔵タンクの底部付近に生じる。
【0059】
図9は,図6,7と同じ条件で,2つの逆流運転の構成について,CFD数値シミュレーションを行った結果を示している.このシミュレーションでは,各ポンピングラインの流れは2.0m/sである.
このように、既に上述したように、本システムは、特定の貯蔵タンクのための所定の移動サイクルにおいて、流れの方向と流速が交代するルーチン(例えば、対向流と複合流)を確立することができることを意味している。すなわち、高流速及び低流速の領域は、サイクルの変動に伴ってタンク内の位置を変化させる。さらに、指定されたサイクルにおけるこれらの交代は、貯蔵タンクの任意の形状及びサイズに適応するように、流体の速度をより良く調整することを可能にする。
【0060】
強調すべきは、「対向」及び「複合」流れパターンが詳細に議論されているが、他のパターンも可能であり、流れパターンの変化するルーチンで使用され得ることである。例えば、各ペア内のポンピングセット20は、「対向」及び「複合」流れパターンにおいてタンクの周りで反対の流れ方向(すなわち、1つは時計回り、1つは反時計回り)を有するが、他のパターンにおいてタンクの周りで同じ流れ方向を有してもよい。
【0061】
図10の上面図によって図示されるいくつかの実施形態では、3つのポンピングセット30を採用することができる。タンクに注入される流れの角振幅を増大させるために、この実施形態で例示される別の特徴は、図11に詳細に例示されるように、ポンピングラインの各端部が、異なる方向に向けられた2つ以上の別々の出口及び入口(例えば、2つの流体力学的ノズル)を構成していることである。ポンピングライン30の各端部における2つの出口/入口のこの構成は、ポンピングセット20の数に関係なく、任意の可能な実施形態で採用され得ることが強調されるべきである。
【0062】
自動又は手動で駆動される閉塞弁50を、ポンプ40の下流側及び上流側(すなわち、ポンプの各側)に、あるいは、各ポンピングライン30の各端部32,34に設けることができる。これにより、ポンプ40のメンテナンスのために、又は運転中のポンピングセット20の数を減らすために(例えば、一定期間のエネルギー消費量を減らすために)、各ポンピングセット20を他のポンピングセットとは独立して分離又は切り離すことが可能になる。
【0063】
図10、11及び12に図示された実施形態では、2つの流出口/流入口がポンピングライン30の各端部に設けられており、2つの流出口/流入口の各々は、閉塞弁50を備えてもよい。上述したように、ポンピングセット20全体の閉鎖を可能にすることに加えて、この配置により、ポンピングライン30の各端部の1つの流出口/流入口だけを閉鎖することが可能になり、これは、特定の状況では、ポンピングセット30が1つの流入口及び1つの流出口だけで動作することが可能であることを意味し、それにより、利用可能な異なる流れパターンに対してより大きな構成可能性を与えることになる。
【0064】
オプションとして、図12に図示されているように、ポンピングライン30の中央部分(すなわち、図12の端部の部分)は、埋設されていてもよく、すなわち、地表面よりも下に配置されていてもよい。これにより、貯蔵タンク10の周囲に部品やコンポーネントが集中し、パイプラインが損傷する可能性を回避することができる。
【0065】
したがって、上記の説明に基づいて、本開示は、貯蔵タンク内の流体の移動のための外部システムを提供する。このシステムは、タンク内に配置された故障しやすい構成要素を必要とせず、タンク外の構成要素でサービス及びメンテナンスが行われる。このシステムは、依然として、高い移動効率及び低いエネルギー消費量を有しており、貯蔵タンクの最も多様なタイプの設計に適合させることができる。
【0066】
さらに、ポンピングセット20のそれぞれで流れの方向と強度を変化させたルーチンの実施の可能性によって、システムはタンク内の混合を非常に高い効率で行うことができ、そのため、使用される電力は従来技術のシステムよりもかなり少なくて済む。一例として、本説明の背景にあるジェットミキサータイプのシステムと比較すると、運転電力の差は非常に大きい。722.2m/h,7.0barの最大条件で運転するミックスライト(Mixrite)社製J200型を参考にして,この条件での運転動力値を26hp程度と推定した(ポンプ効率の代表値を70%相当と仮定)。最適なコスト/ベネフィットの条件が達成されたと仮定した場合、本開示のシステムの消費電力は、2190m/hのオーダーの流量で約9hpとなる。したがって、現在の比較例では、本開示のシステムは、消費電力が実質的に3倍小さい一方で、約3倍の流量を達成する。このようにして、先行技術のシステムと比較して、本開示のシステムの有意に高い効率が確認された。
【0067】
本出願の保護範囲内に収まる多数のバリエーションが許容される。このことは、本発明が上記の特定の構成/実施形態に限定されないという事実を補強する。このように、上述した装置及び方法の改変、実施可能な異なるバリエーション間の組み合わせ、及び当技術分野の当業者には明らかな本発明の態様のバリエーションは、特許請求の範囲の精神及び範囲内にあることが意図されている。
図1
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図7
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図10
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図12