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特許7258940情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法
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  • 特許-情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20230410BHJP
【FI】
G16H50/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021068165
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163305
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504217812
【氏名又は名称】ジェネシスヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィラウィット チャオチャイシット
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 バラン 伊里
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507205(JP,A)
【文献】特開2002-355222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化する評価部と、
前記対象者の前記個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御する表示制御部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記評価部が、前記対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する前記個別ハザード比に基づいて、ハザードリスクスコアを算出し、
前記表示制御部が、前記ハザードリスクスコアを表示制御する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記参照ハザード比のうち、BMI及び併存症に関する前記参照ハザード比が、前記対象者の年齢を考慮したモデルに基づいて算出される、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
情報処理装置が、
対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化するステップと、
前記対象者の前記個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御するステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項5】
情報処理装置に、
対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化するステップと、
前記対象者の前記個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御するステップと、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウィルス(以下、「SARS-CoV-2」ともいう)による感染症(以下、「COVID-19」ともいう。)が世界的に蔓延している。COVID-19の患者数の増加にともない、公衆衛生の観点から重症化する可能性がある者を早期に発見することのできるツールが望まれており、例えば英国では、分析プラットフォームOpenSAFELYによりCOVID-19のリスク要因についての研究がなされている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】E. J. Williamson et al., "Factors associated with COVID-19-related death using OpenSAFELY," Nature, vol. 584, no. 7821, pp. 430-436, Aug. 2020, doi: 10.1038/s41586-020-2521-4.
【文献】D. Coggon, P. Croft, P. Cullinan, and A. Williams, "Assessment of workers' personal vulnerability to covid-19 using 'covid-age,'" 2020, Accessed: Mar. 26, 2021. [Online]. Available: https://academic.oup.com/occmed/article-abstract/70/7/461/5881715.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、英国で行われた分析結果をそのまま日本人に適用して、COVID-19の重症化度を評価することは難しい。これは、人種の違いの他に、異なる集団間においては、公衆衛生政策、マスクのような個人用防護具の着用に関する人口比率、さらには挨拶方法による暴露レベルなどの文化的側面に違いがあるため、ある国における統計データをそのまま他国へと直接適用することは難しいからである。
【0005】
また、公衆衛生に役立てるという観点からは、誰でも特別な知識や検査を必要とすることなくCOVID-19の重症化リスクを調べることができるツールが望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、COVID-19に罹患した場合の死亡リスク及び重症化度(以下、まとめて「重症化度」という。)を多角的かつ客観的に把握することを可能とする情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化する評価部と、対象者の個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御する表示制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症の観点において、対象者の個別ハザード比と参照ハザード比との対比から、COVID-19に罹患した場合の重症化度を多角的かつ客観的に把握することが可能となる。
【0009】
また、評価部は、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する個別ハザード比に基づいて、ハザードリスクスコアを算出し、表示制御部は、ハザードリスクスコアを表示制御するようにしてもよい。
【0010】
これにより、年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症の観点を総合して包括的な重症化度をハザードリスクスコアとして表示することが可能となる。
【0011】
さらに、参照ハザード比のうち、BMI及び併存症に関する参照ハザード比は、対象者の年齢を考慮したモデルに基づいて算出されるようにしてもよい。
【0012】
これにより、対象者の年齢相応の参照ハザード比を表示制御することが可能となり、対象者は自己の年齢に応じたCOVID-19に罹患した場合の重症化度をより適切に把握することが可能となる。
【0013】
また、本発明の実施形態に係る情報処理方法では、情報処理装置が、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化するステップと、対象者の個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御するステップと、を実行する。
【0014】
さらに、本発明の実施形態に係るプログラムは、情報処理装置に、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化するステップと、対象者の個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、COVID-19に罹患した場合の重症化度を多角的かつ客観的に把握することを可能とする情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るシステムの概要を説明するための図である。
図2】本実施形態に係るサーバの構成の一例を示す図である。
図3】年齢に関する重症化度のデータの一例を示す図である。
図4】性別に関する重症化度のデータの一例を示す図である。
図5】BMIに関する重症化度のデータの一例を示す図である。
図6】民族性に関する重症化度のデータの一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る端末の構成の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係る端末の表示装置に表示される画像構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係るシステムの処理シーケンスの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。またさらに、必要に応じて示す上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図示の表示に基づくものとする。さらにまた、図面における各種の寸法比率は、その図示の比率に限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<システム概要>
図1は、本実施形態のシステムの概要を説明するための図である。図1に例示されるように、本実施形態の重症化度スコアリングシステム1では、サーバ100と、端末200とが、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。本実施形態の重症化度スコアリングシステム1において、ネットワークNに接続されるサーバ100は複数あってもよく、またサーバ100は外付けのデータベースに通信可能に接続されてもよい。また、端末200は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの処理可能な装置であり、そのいずれであってもよい。
【0020】
この重症化度スコアリングシステム1では、例えば、対象者は端末200を操作して、自己の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報をサーバ100に送信し、サーバ100はその情報に基づいてCOVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比を算出する。そして、サーバ100は、個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比とを端末200に表示制御する。
【0021】
ネットワークNは、複数種の通信回線や通信網及び種々のネットワーク機器を含んで構成され得るものであり、サーバ100及び端末200の間で各種情報の送受信可能に構成されていればよい。例えば、ネットワークNは、サーバ100に無線接続される基地局や、無線LANのアクセスポイント(WiFiルータ等)、基地局に接続された移動体通信網、アクセスポイントからルータやモデムを介して接続された電話回線、ケーブルテレビ回線又は光通信回線などの公衆回線、サーバ100に接続されたインターネット、移動体通信網や、公衆回線とインターネットを接続するゲートウェイ装置などを含む。
【0022】
以下、サーバ100、端末200の構成についてそれぞれ説明する。
【0023】
<サーバ>
図2は、本実施形態に係るサーバ100のハードウェア構成と機能構成の一例を示す図である。図2に示すようにサーバ100は、典型的には、1つ又は複数のプロセッサ110、有線又は無線の通信を制御する通信インターフェース120、入出力インターフェース130、メモリ140、ストレージ150及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス160を含み、これらの協働により、本実施形態に記載される処理、機能、または、方法を実現する。
【0024】
プロセッサ110は、メモリ140に記憶されるプログラムに含まれるコード、または、命令によって実現する処理、機能、または、方法を実行する。プロセッサ110は、限定でなく例として、1又は複数の中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)を含む。
【0025】
通信インターフェース120は、ネットワークNを介して端末200等の他の情報処理装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。例えば、通信インターフェース120は、ネットワークアダプタ等のハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、又はこれらの組み合わせとして実装される。
【0026】
入出力インターフェース130は、サーバ100に対する各種操作を入力する入力装置、および、サーバ100で処理された処理結果を出力する出力装置を含む。例えば、入出力インターフェース130は、キーボード、マウス、及びタッチパネル等の情報入力装置、及びディスプレイ等の画像出力装置を含む。
【0027】
メモリ140は、ストレージ150からロードしたプログラムを一時的に記憶し、プロセッサ110に対して作業領域を提供する。メモリ140には、プロセッサ110がプログラムを実行している間に生成される各種データも一時的に格納される。メモリ140は、限定でなく例として、ROM、DRAM、SRAM、DDR RAM又は他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。
【0028】
ストレージ150は、プログラム、各種機能部、及び各種データを記憶する。ストレージ150は、限定でなく例として、磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。ストレージ150の他の例としては、プロセッサ110から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置を挙げることができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、ストレージ150はプログラム、機能部及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。サーバ100は、ストレージ150に記憶されているプログラムに含まれる命令をプロセッサ110が実行することによって、図2に示すように、評価部154及び表示制御部155として機能するように構成されている。
【0030】
オペレーティングシステム151は、例えば、様々な基本的なシステムサービスを処理するとともにハードウェアを用いてタスクを実行するためのプロシージャを含む。
【0031】
ネットワーク通信部152は、例えば、サーバ100を端末200等の他のコンピュータに、通信インターフェース120、及びネットワークNを介して接続するために使用され、各種情報の送受信部として機能する。
【0032】
例えば、ネットワーク通信部152は、端末200から対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を受信し、また、後述する表示制御部155の指示に従い、評価部が出力した個別ハザード比と参照ハザード比に関する情報を、端末200に対して送信する。
【0033】
基礎データ153は、例えば、年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化するためのデータを含む。また、基礎データ153は、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比に関するデータを含んでいてもよい。
【0034】
以下、例示として、年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症のそれぞれについて、正規化して6段階の個別ハザード比とする方法について記載するが、本実施形態の正規化方法は以下に限定されるものではない。年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症のそれぞれの正規化に用いるハザード比の各関数は、例えば、日本国内のCOVID-19に罹患した患者数と、死者数を年齢別に集計したデータに基づいて、算出してもよい。より具体的には、上記データを用いてハザード比と年齢との関係を指数関数にフィッティングすることで、年齢に関するハザード比の関数(age_hr)などを特定してもよい。
【0035】
また、これに代えて、他国において行われたCOVID-19の重症化リスクの研究結果を日本においても適用するために、他国におけるCOVID-19の重症化リスクと日本におけるCOVID-19の重症化リスクの相対的な違いを特定し、その相対的な違いを用いて他国において行われたCOVID-19の重症化リスクの研究モデルを日本において適用してもよい。より具体的には、コックス比例ハザード回帰により得られる、英国と日本の間の重層化リスクの相対関係を示すexp(coef)を用いることができる。本発明者らが鋭意検討したところ、コックス比例ハザード回帰により得られる、英国と日本のexp(coef)は0.49であった。このexp(coef)を用いて英国におけるCOVID-19の重症化リスクの研究結果を日本に適用することができる。例えば、対象者のハザードスコア(Covid 19 Health Hazard Score)は、下記式により、対象者の真の年齢に基づくハザード比(True Age Hazard)と、すべてのリスク要因の累積ハザード比(cumulative hazard)と、exp(coef); 0.49に基づいて算出することができる。
【数1】
【0036】
基礎データ153は、年齢に関する個別ハザード比の算出式として、下記式に関するデータを含んでいてもよい。年齢に関する正規化された個別ハザード比は、下記式によりNormalized Age HRとして算出することができる。年齢に関する重症化度は指数関数的に増加するため(図3参照)、下記式では若齢のハザード比を最小ハザード比(AGE_HR_MIN)とし、高齢のハザード比を最大ハザード比(AGE_HR_MAX)としてスケーリングし、その自然対数から、年齢に関する重症化度を1~6に正規化する。
【数2】
【0037】
ここで、例えば、最小ハザード比は20歳のハザード比とし、最大ハザード比は75歳のハザード比としてもよいが、特にこれに限定されるものではない。以下に、20歳から換算される最小ハザード比(AGE_HR_MAX)と、75歳から換算される最大ハザード比(AGE_HR_MAX)を示す。
【数3】
【0038】
なお、年齢に関する参照ハザード比は、例えば、下記式のCritical Age HRのように、60歳のハザード比に設定することができる。
【数4】
【0039】
また、基礎データ153は、性別に関する個別ハザード比の算出式として、下記式に関するデータを含んでいてもよい。性別に関する正規化された個別ハザード比は、下記式によりNormalized Gender HRとして算出することができる。COVID-19の場合、女性よりも男性の方が重症化するリスクが高く、この性別に関する相対的な重症化度の差は男性が1.0(GENDER_HR_MAX)に対して女性が0.6(GENDER_HR_MIN)であり、その比は0.6となる(図4参照)。性別に関する個別ハザード比の正規化では、この関係を3,5のスケールに正規化する。
【数5】
【0040】
なお、性別に関する参照ハザード比は、例えば、下記式のCritical Gender HRのように、GENDER_HR_MINとGENDER_HR_MAXの平均値に設定することができる。
【数6】
【0041】
さらに、基礎データ153は、BMIに関する個別ハザード比の算出式として、下記式に関するデータを含んでいてもよい。BMIに関する正規化された個別ハザード比は、下記式によりNormalized BMI HRとして算出することができる。
【数7】
【0042】
肥満度が大きい場合の重症化リスクは肥満度が小さい場合の重症化リスクよりも大きくなるため(図5参照)、自然対数により肥満度が大きい場合の重症化リスクを強調して、BMIに関する個別ハザード比を算出してもよい。
【0043】
また、BMI(=体重[kg]/身長[m2])による肥満度分類は、18.5kg/m2未満(Underweight)、18.5kg/m2以上25kg/m2未満(Normal weight)、25kg/m2以上30kg/m2未満(Pre-obesity)、30kg/m2以上35kg/m2未満(Obesity class I)、35kg/m2以上40kg/m2未満(Obesity class II)、40kg/m2以上(Obesity class III)といったように階層化されている(WHO基準)。そのため、BMIに関する正規化された個別ハザード比も、連続値ではなく、この肥満度分類に応じて規格化された値となってもよい。
【0044】
例えば、上記式において、対象者が20歳の場合における、Underweightクラス、Normal weightクラス、及びPre-obesityクラスのbmi_hrは1(BMI_HR_MIN)であり、Obesity class Iクラスのbmi_hrは2.1であり、Obesity class IIクラスのbmi_hrは7.1であり、Obesity class IIIクラスのbmi_hrは13(BMI_HR_MAX)となるようにすることができる。
【0045】
なお、BMIに関する参照ハザード比は、例えば、下記式のCritical BMI HRのように、各年齢のObesity class I(30kg/m2以上35kg/m2未満)に設定することができる。
【数8】
【0046】
また、基礎データ153は、民族性に関する個別ハザード比の算出式として、下記式に関するデータを含んでいてもよい。民族性に関する正規化された個別ハザード比は、下記式によりNormalized Ethnic HRとして算出することができる。民族性に関する正規化された個別ハザード比は、1,5の範囲にスケーリングしてもよい。ここで、民族性とは、日本、東南アジア、欧州、及びアフリカ系などの人種をいう(図6参照)。
【数9】
【0047】
なお、民族性に関する参照ハザード比は、例えば、下記式のCritical Ethnic HRのように、算出されるすべての民族ハザード比の平均に設定することができる。
【数10】
【0048】
さらに、基礎データ153は、併存症に関する個別ハザード比の算出式として、下記式に関するデータを含んでいてもよい。併存症に関する正規化された個別ハザード比は、下記式によりNormalized Comorbid HRとして算出することができる。併存症の個別ハザード比は、併存疾患が多いほど値が高くなり理論的に上限がないため、その最大値をオイラー定数の6乗に相当する値と規定し、自然対数の範囲を固定してもよい。
【数11】
【0049】
ここで、対象者の併存症に関する情報には、喘息、糖尿病、慢性、癌(白血病、リンパ腫、骨髄腫を除く)、白血病、リンパ腫、骨髄腫、及び心臓の異常、その他の慢性呼吸器疾患、高血圧、脳血管疾患(脳卒中を含む)、肝疾患、脳卒中又は認知症以外の慢性神経疾患、臓器移植、臓器移植、脾臓の病気、リウマチ/全身性エリデマトーデス/乾癬、その他の免疫異常などの罹患に巻子する情報が挙げられる。このなかでも、対象者の併存症に関する情報には、喘息、糖尿病、慢性、癌、及び心臓病からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の疾患の罹患に関する情報が含まれることが好ましい。
【0050】
なお、併存症に関する参照ハザード比は、例えば、下記式のCritical Comorbid HRのように、70歳の人に相当するリスクを実際の年齢のハザードで割った比率に設定することができる。
【数12】
【0051】
評価部154は、基礎データ153を参照して、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化する処理を実行する。ここで正規化とは、年齢などの各 HYPERLINK "https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF" \o "データ" データを一定のルールに基づいて変形し、例えば後述するように1~6段階に分類できるように規格化することをいう。
【0052】
具体的には、端末200から対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を受信すると、評価部154は基礎データ153に記憶された正規化のための上記算出式又はその他データを参照し、個別ハザード比を算出する。
【0053】
また、評価部154は、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する個別ハザード比に基づいて、ハザードリスクスコアを算出してもよい。これにより、年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症の観点を総合して包括的な重症化度をハザードリスクスコアとして表示することが可能となる。
【0054】
さらに、評価部154は、基礎データ153に予め記憶した、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比を取得してもよいし、基礎データ153を参照して、一部また全部の参照ハザード比を算出してもよい。例えば、評価部154は、参照ハザード比のうち、BMI及び併存症に関する参照ハザード比について、対象者の年齢を考慮したモデルに基づいて算出してもよい。これは、年齢の違いによりBMIや併存症が重症化度に与える影響が異なることによる。これにより、対象者の年齢相応の参照ハザード比を表示制御することが可能となり、対象者は自己の年齢に応じたCOVID-19に罹患した場合の重症化度をより適切に把握することが可能となる。
【0055】
表示制御部155は、対象者の個別ハザード比とCOVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比とを対比可能に端末200のディスプレイに表示制御する。これにより、COVID-19に罹患した場合の重症化度を多角的かつ客観的に把握することが可能となる。
【0056】
また、表示制御部155は、評価部154が算出したハザードリスクスコアを、端末200のディスプレイに表示制御してもよい。
【0057】
<端末>
次に、端末200について説明する。図7は、本実施形態に係る端末200のハードウェア構成と機能構成の一例を示す図である。図7に示すように端末200は、典型的には、1つ又は複数のプロセッサ210、有線又は無線の通信を制御する通信インターフェース220、入出力インターフェース230、メモリ240、ストレージ250及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス260を含み、これらの協働により、本開示に記載される処理、機能、または、方法を実現する。
【0058】
端末200のプロセッサ210、通信インターフェース220、入出力インターフェース230、メモリ240、ストレージ250、及び通信バス260は、サーバ100で説明したものと同様とすることができる。
【0059】
端末200は、ストレージ250に記憶されているプログラムに含まれる命令をプロセッサ210が実行することによって、図7に示すように、表示制御部253として機能するように構成されている。
【0060】
オペレーティングシステム251は、例えば、様々な基本的なシステムサービスを処理するとともにハードウェアを用いてタスクを実行するためのプロシージャを含む。
【0061】
ネットワーク通信部252は、例えば、端末200をサーバ100等の他のコンピュータに、通信インターフェース220、及びネットワークNを介して接続するために使用され、各種情報の送受信部として機能する。
【0062】
例えば、ネットワーク通信部252は、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を入力するためのフォームに関する情報をサーバ100から受信し、また、サーバ100に対して当該フォームに入力された各情報を送信することができる。
【0063】
また、ネットワーク通信部252は、サーバ100から対象者の個別ハザード比に関する情報と参照ハザード比に関する情報とを受信することができる。
【0064】
表示制御部253は、サーバ100から受信した各情報を入出力インターフェース230であるディスプレイに表示制御する処理を実行する。例えば、表示制御部253は、ディスプレイにサーバ100から受信した対象者の個別ハザード比に関する情報と参照ハザード比に関する情報と対比可能に表示することができる。
【0065】
図8に、端末200のディスプレイD1に表示制御される個別ハザード比及び参照ハザード比の表示エリアOB1と、ハザードリスクスコアの表示エリアOB2と、ハザードリスクスコアに基づくコメントの表示エリアOB3を示す。
【0066】
表示エリアOB1には、個別ハザード比OB11が6段階のレーダーチャートで表されている。さらに、表示エリアOB1には、参照ハザード比OB12が、レーダーチャートに重ねて表示されている。このように表示することで、対象者は自己の重症化度を多角的かつ客観的に把握することが可能となり、また、具体的にどのような観点からリスクが高いと言えるのかを把握することが可能となる。例えば、BMIの観点で重症化リスクが高く算出されている場合には、重症化リスクを低減するための自助努力としてダイエット等についての動機付けとして使用することもできる。
【0067】
表示エリアOB2には、ハザードリスクスコアOB21が表示されている。さらに、表示エリアOB2には、ハザードリスクスコアOB21を囲むように円形のプログレスバーOB22が表示されていてもよい。このプログレスバーの色は、ハザードリスクスコアに連動して変化するようにしてもよい。例えば、ハザードリスクスコアが低い場合には青などの寒色で表現され、ハザードリスクスコアが高くなるにつれてオレンジから赤色などの暖色で表現されるようにしてもよい。また、表示エリアOB2には、ハザードリスクスコアの値に応じて、例えば、Low,Moderate,Highなどのハザードリスクスコアの分類OB23が表示されていてもよい。
【0068】
表示エリアOB3には、ハザードリスクスコアに基づくコメントが表示される。このようなコメントとしては、例えば、感染を予防するための生活面のアドバイスなどが挙げられる。特に、ハザードリスクスコアが高い場合には、リモートワークの推奨などが表示されるようにしてもよい。
【0069】
<動作処理>
次に、このように構成された本発明の実施形態の情報処理装置(サーバ100)の動作について説明する。
【0070】
図9に、サーバ100と端末200により構成される重症化度スコアリングシステムの処理シーケンスを示す。サーバ100は、インターネット等の通信ネットワークを介して、端末200と通信可能に接続されている。サーバ100は、端末200から受信した、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報に基づいてCOVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比を算出し、算出した個別ハザード比と参照ハザード比に関する情報を端末200に送信する重症化度スコアリングシステムを提供する。
【0071】
ここで、サーバ100は、本発明の重症化度スコアリングシステムの全部又は一部を実装する情報処理装置の一例であり、上述した情報処理装置(サーバ100)の有するハードウェア構成や機能部の構成を有することができる。また、端末200は、情報の送受信及び情報を表示可能なディスプレイを備えた通常のコンピュータであってもよい。
【0072】
ステップS901において、端末200は、対象者の走査に応じて、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報をサーバ100に対して送信し、サーバ100の評価部154は、ネットワーク通信部152を介して、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を取得する。
【0073】
ステップS902において、サーバ100の評価部154は、端末200から受信した対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する情報を、COVID-19に罹患した場合の重症化度を示す個別ハザード比にそれぞれ正規化する。
【0074】
また、ステップS903において、サーバ100の評価部154は、基礎データ153に予め記憶したCOVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比を取得してもよいし、また、サーバ100の評価部154は、基礎データ153を参照し参照ハザード比の一部または全部を算出してもよい。例えば、サーバ100の評価部154は、BMI及び併存症に関する参照ハザード比を、対象者の年齢を考慮したモデルに基づいて算出することができる。
【0075】
さらに、ステップS904において、サーバ100の評価部154は、対象者の年齢、性別、BMI、民族性、及び併存症に関する個別ハザード比に基づいて、ハザードリスクスコアを算出するようにしてもよい。
【0076】
そして、ステップS905において、サーバ100の評価部154は、ネットワーク通信部152を介して、個別ハザード比と参照ハザード比に関する情報を端末200に送信する。この際、サーバ100の評価部154は、算出したハザードリスクスコアに関する情報を端末200に送信してもよい。またここで、ハザードリスクスコアに関する情報には、ハザードリスクスコアのプログレスバーの色調などの情報や、ハザードリスクスコアの分類に関する情報、ハザードリスクスコアに基づくコメントに関する情報が含まれていてもよい。
【0077】
そして、ステップS906において、端末200は、対象者の前記個別ハザード比と、COVID-19に罹患した場合の重症化度の参照値を示す参照ハザード比と、を対比可能に表示制御する。
【0078】
以上説明した本実施形態に係る情報処理装置(サーバ100)が提供する重症化度スコアリングシステムでは、COVID-19に罹患した場合の重症化度を多角的かつ客観的に把握することが可能となる。
【0079】
なお、上述したとおり、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変形が可能である。すなわち、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0080】
例えば、図8において、個別ハザード比と参照ハザード比とをレーダーチャートで重ねて表示することでこれらを対比可能に表示制御する態様を示したが、表示制御の態様はこれに制限されず、例えば、バーグラフで両者を対比するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…重症化度スコアリングシステム、100…サーバ、110…プロセッサ、120…通信インターフェース、130…入出力インターフェース、140…メモリ、150…ストレージ、151…オペレーティング学習支援システム、152…ネットワーク通信部、153…基礎データ、154…評価部、155…表示制御部、160…通信バス、200…端末、210…プロセッサ、220…通信インターフェース、230…入出力インターフェース、240…メモリ、250…ストレージ、251…オペレーティングシステム、252…ネットワーク通信部、253…表示制御部、260…通信バス
図1
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図9