(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】薄膜バルク音響波共振器ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20230410BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20230410BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/17 F
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2021503167
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2020099741
(87)【国際公開番号】W WO2021012923
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】201910657440.7
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281859
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 国煌
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-098831(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109309483(CN,A)
【文献】特開2018-129561(JP,A)
【文献】特開2018-190891(JP,A)
【文献】特表2018-537672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0278227(US,A1)
【文献】特表2013-512583(JP,A)
【文献】特開2019-105447(JP,A)
【文献】特開2016-140053(JP,A)
【文献】特開2006-086787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109150135(CN,A)
【文献】特開2005-333642(JP,A)
【文献】特開2009-290371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/302
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を提供し、前記第1の基板に第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層を順次形成することと、
上部で開口するキャビティが貫通して形成される支持層を、前記第2の電極層に形成することと、
第2の基板を提供し、前記第2の基板と前記支持層とを結合させることと、
前記第1の基板を除去することと、
前記第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層をパターニングすることにより、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成することと、を含み、
前記キャビティの開口には、前記開口の一部を覆うように積層される前記第2の電極、前記圧電層及び前記第1の電極により構成される積層領域と、前記開口の他部を覆うように前記積層領域から延在する単一の前記第2の電極により構成される非積層領域とが形成され、
前記第2の電極、前記圧電層及び前記第1の電極は、前記積層領域から前記支持層の一部
の上方へ延在し、
前記支持層の一部
の上方に位置する前記第1の電極は、第1のパッドと接続され、
前記第2の電極は、前記非積層領域から前記支持層の他部
の上方へ延在し、
前記支持層の他部
の上方に位置する前記第2の電極は、第2のパッドと接続される、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項2】
前記第1の電極層を形成する前に、
前記第1の基板に放出層を形成することをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項3】
前記第2の電極層を形成してから前記支持層を形成する前に、
前記第2の電極層にエッチング停止層を形成することをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項4】
前記第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層をパターニングすることにより、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成した後、
前記第1の電極、前記圧電層、および前記第2の電極を覆う不動態化層をさらに形成することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項5】
前記第2の基板と前記支持層との結合は、ホットプレス結合またはドライフィルム接着によって行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項6】
前記放出層の材料は、誘電性材料、光硬化性接着剤、ホットメルト接着剤、またはレーザー離型材料を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項7】
前記放出層の材料が誘電性材料である場合、薄化プロセスで前記誘電性材料と前記第1の基板を除去し、
前記放出層の材料が光硬化性接着剤である場合、化学試薬で前記光硬化性接着剤を除去することにより前記第1の基板を除去し、
前記放出層の材料がホットメルト接着剤である場合、熱放出プロセスで前記ホットメルト接着剤の接着性を除去することにより前記第1の基板を除去し、
前記放出層の材料がレーザー離型材料である場合、レーザーで前記放出層をエッチングすることにより前記第1の基板を剥離させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項8】
第2の基板と、
上部で開口するキャビティが貫通して形成されるように前記第2の基板に結合された支持層と、
前記支持層に順次設けられる第2の電極、圧電層および第1の電極と、を含み、
前記キャビティの開口には、前記開口の一部を覆うように積層される前記第2の電極、前記圧電層及び前記第1の電極により構成される積層領域と、前記開口の他部を覆うように前記積層領域から延在する単一の前記第2の電極により構成される非積層領域とが形成され、
前記第2の電極、前記圧電層及び前記第1の電極は、前記積層領域から前記支持層の一部
の上方へ延在し、
前記支持層の一部
の上方に位置する前記第1の電極は、第1のパッドと接続され、
前記第2の電極は、前記非積層領域から前記支持層の他部
の上方へ延在し、
前記支持層の他部
の上方に位置する前記第2の電極は、第2のパッドと接続される、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項9】
前記支持層は、ホットプレス結合またはドライフィルム接着によって前記第2の基板に結合される、
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項10】
前記第2の基板とホットプレス結合される前記支持層の面には、結合層が設けられる、
ことを特徴とする請求項9に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項11】
前記支持層とドライフィルム接着される前記第2の基板の面には、ドライフィルム層が設けられる、
ことを特徴とする請求項9に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項12】
前記第2の電極と前記支持層との間には、エッチング停止層が設けられる、
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項13】
前記第1の電極、前記圧電層、および前記第2の電極を覆う不動態化層をさらに含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項14】
前記キャビティの外側に位置するとともに、それぞれ前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に接続される少なくとも2つのパッドをさらに含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【請求項15】
前記支持層の厚さは0.5~3μmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の分野、特に薄膜バルク音響波共振器ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話で使用されるような無線周波数(下記は、「RF」と略す)通信では、無線周波数フィルタを使用する必要がある。各無線周波数フィルタは、必要な周波数を通過させ、他のすべての周波数を制限できる。モバイル通信技術の発展に伴い、モバイルデータの送信量も急増している。そのため、周波数資源が限られ、モバイル通信機器をなるべく少なく使用できるようという前提に、無線基地局、マイクロ基地局、リピーターなどの無線送信出力装置の送信出力を増加させることが考慮すべき課題となり、モバイル通信機器のフロントエンド回路におけるフィルタの出力へ要求も高まっている。
【0003】
現在、無線基地局などの装置では高出力フィルタは主にキャビティフィルタであり、その出力は数百ワットに達することができるが、そのようなフィルタのサイズは大きすぎる。一部の装置では誘電体フィルタが使用され、その平均出力は5ワットを超えることができるが、そのフィルタのサイズも大きすぎる。サイズが大きいため、これら2種類のフィルタをRFフロントエンドチップには統合することはできない。
【0004】
MEMS技術がますます成熟するにつれて、バルク音響波共振器で構成されるフィルタは、上記の2種類のフィルタの欠陥を十分に解消できる。薄膜バルク音響波共振器(Film Bulk Acoustic Resonator、FBAR)には、動作周波数高く、挿入損失小さく、Q値高く、耐久力高く、体積小さいなど、多くのメリットがあり、通信やレーダーなどのような電子システムのRFトランシーバーフロントエンドによる高周波数・小型化RFフィルタへの緊迫な需要に満たすことができ、市場のホットスポットになっている。
【0005】
薄膜バルク音響波共振器のコア構造は、上電極-圧電フィルム層ー下電極からなる積層構造(「サンドイッチ」構造)であり、その動作原理は、圧電フィルム層の逆圧電効果を利用して電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、機械的振動がフィルム内で音波を励起して送信し、最終的に圧電効果によって音声信号を電気信号に変換して出力することである。共振器にとって最も重要なものは、圧電フィルム層の圧電パフォーマンスを確保するとともに、音波のエネルギーを圧電フィルム層に閉じ込めることです。したがって、薄膜バルク音響波共振器における下部電極の上部電極に面する領域の下方にキャビティが設定される。
【0006】
薄膜バルク音響波共振器は堆積法により基板材料に製造することができ、上電極―圧電フィルム層―下電極からなる積層構造を形成した後、該積層構造の下方にキャビティを形成する必要があるので、薄膜バルク音響波共振器の製造は困難である。従来技術には前述課題を解決するための解決策が提案されている。
図1A~1Eに示されるように、まず、
図1Aに示されるように、基板100にトレンチ110’が形成される。そして、
図1Bに示すように、前記トレンチ110’に犠牲層材料が充填され、基板100および犠牲層材料の表面は、化学的機械的研磨(CMP)プロセスによって平坦化されて犠牲層101が形成される。その後、
図1Cに示されるように、平坦化された基板100および犠牲層101の表面に第1の電極102、圧電フィルム層103、および第2の電極104が、順次堆積される。次に、
図1Dに示されるように、圧電フィルム層103および第2の電極104がパターニングされ、犠牲層101の上に圧電フィルム層103および第2の電極104のみが残される。そして、
図1Dに示されるように、犠牲層101の上であり圧電フィルム層103及び第2の電極104で覆われていない第1の電極102にいくつかの貫通穴120が設けられる。最後に、
図1Eに示されるように、形成された前記デバイスが化学試薬に投入され、化学試薬が貫通穴120を通過して犠牲層材料120がエッチングし除去され、犠牲層101が放出されてキャビティ110が形成され、それにより、薄膜バルク音響波共振器の浮遊配置を実現する。
【0007】
しかしながら、上記の方法には依然として多くの欠点がある。例えば、この方法が基板100および犠牲材料に対して化学的機械的研磨(CMP)プロセスを施す場合、研磨速度の違いにより、犠牲層101領域に小さな窪みが形成され、その後の圧電層103の成長均一性に影響を与え、それが最終的に薄膜バルク音響波共振器のパフォーマンスに影響を与える。さらに、この方法は犠牲層101の製造を必要とし、犠牲層101の放出プロセスでは薄膜バルク音響波共振器の関連フィルムに亀裂を生じさせる可能性が非常に高い。さらに、犠牲層101がきれいに放出きれず不純物が残っていては、薄膜バルク音響波共振器のQ値を大幅に低下させ、薄膜バルク音響波共振器の品質に影響を与える。
【発明の概要】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、犠牲層製造過程におけるCMPプロセス及び犠牲層の不完全な放出による、薄膜バルク音響波共振器への影響を効果的に避けられる薄膜バルク音響波共振器ならびにその製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、第1の基板を提供し、前記第1の基板に第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層を順次形成することと、
上部で開口するキャビティが貫通して形成される支持層を、前記第2の電極層に形成することと、
第2の基板を提供し、前記第2の基板と前記支持層とを結合させることと、
前記第1の基板を除去することと、
前記第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層をパターニングすることにより、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成することと、を含む薄膜バルク音響波共振器の製造方法が提供される。
【0010】
好ましくは、前記第1の電極層を形成する前に、さらに、前記第1の基板に放出層を形成することを含む。
【0011】
好ましくは、前記第2の電極層を形成してから前記支持層を形成する前に、さらに、前記第2の電極層にエッチング停止層を形成することを含む。
【0012】
好ましくは、前記第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層をパターニングすることにより、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成した後、さらに、前記第1の電極、前記圧電層、および前記第2の電極を覆う鈍化層を形成することを含む。
【0013】
好ましくは、前記第2の基板と前記支持層との結合は、ホットプレス結合またはドライフィルム接合によって行われる。
【0014】
好ましくは、前記第1の基板を除去するための方法は、薄化プロセス、熱放出プロセス、および剥離プロセスのうちの1つを含む。
【0015】
好ましくは、前記放出層の材料は、誘電性材料、光硬化性接着剤、ホットメルト接着剤、またはレーザー離型材料を含む。
【0016】
好ましくは、前記放出層の材料が誘電性材料である場合、薄化プロセスで前記誘電性材料と前記第1の基板を除去し、前記放出層の材料が光硬化性接着剤である場合、化学試薬で前記光硬化性接着剤を除去することにより、前記第1の基板を除去し、前記放出層の材料がホットメルト接着剤である場合、熱放出プロセスで前記ホットメルト接着剤の接着性を除去することにより、前記第1の基板を除去し、前記放出層の材料がレーザー離型材料である場合、レーザーで前記放出層をエッチングすることにより、前記第1の基板を剥離させる。
【0017】
また、本発明によれば、キャビティが貫通して形成されるように前記第2の基板に結合された支持層と、
前記支持層に順次設けられる第2の電極、圧電層および第1の電極と、を含む薄膜バルク音響波共振器が提供される。
【0018】
好ましくは、前記支持層は、ホットプレス結合またはドライフィルム接合によって前記第2の基板に結合される。
【0019】
好ましくは、前記第2の基板とホットプレス結合される前記支持層の面には、結合層が設けられる。
【0020】
好ましくは、前記支持層とドライフィルム接合される前記第2の基板の面には、ドライフィルム層が設けられる。
【0021】
好ましくは、前記第2の電極と前記支持層との間には、エッチング停止層が設けられる。
【0022】
好ましくは、前記薄膜バルク音響波共振器は、さらに、前記第1の電極、前記圧電層、および前記第2の電極を覆う鈍化層を含む。
【0023】
好ましくは、前記薄膜バルク音響波共振器は、前記キャビティの外側に位置するとともに、それぞれ前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に接続される少なくとも2つのパッドをさらに含む。
【0024】
好ましくは、前記支持層の厚さは0.5~3μmである。
【0025】
総じて、本発明は薄膜バルク音響波共振器の製造方法を提供し、当該製造方法は、第1の基板に第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層を順次形成し、前記第2の電極層に支持層を形成し、前記支持層に上部の開口したキャビティを形成し、第2の基板と前記支持層を結合させ、第1の基板を除去し、前記第1の電極層、前記圧電材料層、および前記第2の電極層をパターニングし、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成することを含む。本発明は結合プロセスにより薄膜バルク音響波フィルタのキャビティ構造を実現でき、したがって、CMPプロセスを起因とした異なる媒体間の小さな起伏による圧電層の均一性への影響を避け、同時に、犠牲層の不完全な希釈による薄膜バルク音響波共振器のパフォーマンスへの影響を避ける。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施形態または従来技術における技術方案をより明確に説明するために、以下に、実施形態または従来技術の説明に使用される必要な図面を簡単に紹介する。言うまでもなく、以下の図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎなく、当業者にとって、他の図面は、創造的な作業なしに、これらの図面に基づいて得ることができる。
【0027】
【
図1A】薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図1B】薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図1C】薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図1D】薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図1E】薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図2】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器を製造するための方法の概略フローチャートである。
【
図3A】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3B】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3C】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3D】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3E】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3F】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3G】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3H】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3I】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3J】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【
図3K】本発明の実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の薄膜バルク音響波共振器および薄膜バルク音響波共振器の製造方法を、添付の図面と具体的実施例を参照してさらに詳細に説明する。以下の説明および図面によれば、本発明の利点および特徴はより明確になるであろうが、本発明の技術方案は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の特定の実施例に限定されないことに留意されたい。図面は、非常に簡略化された形式であり、すべて精確でない比例を使用し、本発明の実施例を容易かつ明瞭に補助して説明するためのみに使用される。
【0029】
明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも特定の順序または時系列を説明するために使用されるわけではない。適切な状況で、そのように使用されるこれらの用語は、例えば、本明細書に記載または示された以外の順序で本明細書に記載の本発明の実施形態を実施できるように置き換えることができることを理解されたい。同様に、本明細書に記載の方法が一連の工程を含み、本明細書に記載のこれらの工程の順序が必ずしもこれらの工程を実行できる唯一の順序ではなく、記載された工程のいくつかが省略され得るおよび/または本明細書に記載されない他の工程も方法に追加できる。特定の図面の部材が他の図面の部材と同じである場合、これらの部材はすべての図面で簡単に識別できるが、図面の説明を明確にするために、同じ部材の符号をすべて各図に示されるわけではない。
【0030】
図2は、本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器を製造するための方法のフローチャートである。
図2に示されるように、本実施形態に提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法は、以下の工程を含む:
S01:第1の基板を提供し、前記第1の基板に第1の電極層、圧電材料層、及び第2の電極層を順次形成し;
S02:前記第2の電極層に支持層を形成し、前記支持層に上部の開口したキャビティを形成し、前記キャビティが前記支持層を貫通し;
S03:第2の基板を提供し、前記第2の基板と前記支持層とを結合させ;
S04:前記第1の基板を除去し、及び、
S05:前記第1の電極層、前記圧電材料層、および前記第2の電極層をパターニングし、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成する。
【0031】
図3A~
図3Kは、本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法に対応する各工程の構造概略図である。以下、
図2を参照し
図3A~3Kに基づき本実施形態に提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法を詳細に説明する。
【0032】
まず、
図3Aに示されるように、第1の基板200が提供される。前記第1の基板200は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つである:シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる);またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI);または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP);アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。
【0033】
好ましくは、
図3Bに示されるように、放出層201が前記第1の基板200に形成され、前記放出層201は、その後形成される薄膜バルク音響波共振器の圧電積層構造による第1の基板200への影響を避けられる。同時に、その後の第1の基板200の除去プロセスにおいて、放出層201をエッチングして、前記第1の基板200をその後に形成される圧電積層構造から分離させることができ、前記第1の基板200の迅速除去に有利であるため、プロセス効率が改善される。前記放出層の材料には、誘電性材料、光硬化性接着剤、ホットメルト接着剤、またはレーザー離型材料が含まれる。例えば、前記放出層201の材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、または窒化アルミニウム(AlN)であってよく、化学蒸着、マグネトロンスパッタリングまたは蒸着などの方式によって形成することができる。この実施形態では、前記第1の基板200はシリコンウェーハであり、前記放出層201の材料は二酸化シリコン(SiO
2)である。
【0034】
次に、
図3Cに示すように、圧電積層構造が前記放出層201に形成され、前記圧電積層構造は、前記第1の電極層202’、圧電材料層203’、および第2の電極層204を含む。ここで、前記圧電材料層203’は、前記第1の電極層202’と前記第2の電極層204’との間に位置し、また、前記第1の電極層202’と前記第2の電極層204’とは対向して配置される。第1の電極層202’は、無線周波数(RF)信号などの電気信号を受信または発信する入力電極または出力電極として使用することができる。例えば、第2の電極層204’が入力電極として使用される場合、第1の電極層202’は出力電極として使用されることができ、また、第2の電極層204’が出力電極として使用される場合、第1の電極層202’は入力電極として使用されることができる。圧電材料層203’は、第1の電極層202’または第2の電極層204 ’を介して入力された電気信号をバルク音響波に変換する。例えば、圧電材料層203’は、物理的振動を通じて電気信号をバルク音響波に変換する。
【0035】
前記第1の電極層202’と前記第2の電極層204’は、当分野で周知した任意の適切な導電性材料または半導体材料を使用することができ、ここの導電性材料は、導電性を有する金属材料であってよい。例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)およびその他の金属うちの1つまたは上述金属からなる積層体でできている。前記半導体材料は、たとえば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。第1の電極層202’および第2の電極層204’は、マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理的蒸着法または化学的蒸着法によって形成されることができる。前記圧電材料層203’は、圧電共振層または圧電共振部分と呼ばれることもある。前記圧電材料層203’の材料は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英(Quartz)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)または、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などのようなウルツ鉱型結晶構造を有する圧電材料とそれらの組み合わせを使用できる。圧電材料層203’が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電材料層203’は希土類金属をさらに含むことができ、当該希土類金属は例えば、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)およびランタン(La)のうちの少なくとも1つである。さらに、圧電材料層203’が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電材料層203’は遷移金属をさらに含むことができ、当該遷移金属は例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つである。圧電材料層203’は、化学的蒸着、物理的蒸着、または原子層堆積などの当業者に知られている任意の適切な方法によって堆積することができる。好ましくは、この実施形態では、前記第1の電極層202’および第2の電極層204’は金属モリブデン(Mo)ででき、前記圧電材料層203’は窒化アルミニウム(AlN)でできている。
【0036】
前記第1の電極層202’、圧電材料層203’および第2の電極層204’の形状は、同じでも同じでなくてもよく、そして、第1の電極層202’、圧電材料層203’および第2の電極層204’の面積は同じでも同じでなくてもよい。この実施形態では、前記第1の電極層202’、圧電材料層203’、および第2の電極層204’は形状も面積も同じで、前記第1の電極層202’、圧電材料層203’および第2の電極層204’はいずれも多角形で、例えば、正方形である。
【0037】
第1の電極層202’を形成する前に、前記放出層201にシード層(
図3Cには示されていない)を形成することができ、前記シード層が前記放出層201と前記第1の電極層202’の間に形成され、前記シード層は、その後形成される第1の電極層202’(圧電材料層203’および第2の電極層204’)の結晶配向に対し配向性を有し、その後形成される圧電積層構造が特定の結晶配向に沿って成長でき、圧電層の均一性が保証されることになる。前記シード層の材料は、窒化アルミニウム(AlN)とすることができるが、シード層は、AlNに加えて、六方最密充填(HCP)構造を持つ金属または誘電性材料で形成することもできる。例えば、前記シード層は金属チタン(Ti)で形成されることもできる。
【0038】
次に、工程S02を実施する。
図3Dに示すように、前記第2の電極層204’に支持層206を形成し、前記支持層206に上部の開いたキャビティ210を形成し、前記キャビティ210は前記支持層206を貫通する。具体的には、まず、化学的堆積法により支持層206を形成することができる。前記支持層206の材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、および窒化アルミニウム(AlN)のうちの一種類または複数種類の組み合わせである。この実施形態では、前記支持層206の材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。次に、エッチングプロセスにより前記支持層206をエッチングして開口部210’を形成し、前記第2の電極層204’の一部を露出させる。当該エッチングプロセスは、湿式エッチングまたは乾式エッチングプロセスであってよい。好ましくは、乾式エッチングプロセスが使用される。乾式エッチングには、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザー切断が含まれるが、これらに限られるものではない。開口部210’の深さおよび形状は、製造される薄膜バルク音響波共振器に必要なキャビティの深さおよび形状に依存する。前記薄膜バルク音響波共振器のキャビティの厚さは、共振周波数に関係するので、薄膜バルク音響波共振器に必要な共振周波数に基づき、前記開口部210’の深さ、すなわち、支持層206の厚さを設定することができる。例示的に、前記開口部210’の深さは、0.5μmから3μmで、例えば、1μmまたは2μmまたは3μmである。前記開口部210’の底面の形状は、長方形または五角形、六角形、八角形などの長方形以外の多角形であってよく、円形または楕円形であってよい。開口部210’の側壁は、傾斜しても垂直であってもよい。この実施形態では、開口部210’の底面は長方形であり、側壁と底面とは鈍角を形成する(開口部210’の縦断面(基板の厚さ方向に沿った断面)の形状は逆台形である)。本発明の他の実施形態において、開口部210’の縦断面の形状は所謂「上広下狭」形状の球形キャップであり、すなわち、その縦断面はU字形である。
【0039】
この実施形態では、前記支持層206を形成する前に、前記第2の電極層204’上にさらにエッチング停止層205を形成する。前記エッチング停止層205の材料は、窒化シリコン(Si3N4)および酸窒化シリコン(SiON)を含むが、これに限られるものではない。前記エッチング停止層205は、後で形成される支持層206よりも低いエッチング速度を有するので、その後前記支持層206をエッチングし開口部を形成する際に、オーバーエッチングを防ぐことができ、その下に位置する第2の電極層204’を表面損傷から保護することができる。
【0040】
次に、
図3Fに示されるように、工程S03を実施し、第2の基板300を提供し、前記第2の基板300と前記支持層206とを結合させ、前記第2の基板300と第2の電極204とは、前記支持層206の開口部210’にキャビティ210を形成する。前記第2の基板300は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つである:シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる);またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI);または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP);アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。前記第2の基板300と前記支持層206との結合は、ホットプレス結合によって実現することができる。前記支持層206と前記第2の基板300との結合能力を高めるために、前記支持層206のホットプレス結合が行われる面に結合層が形成され、前記結合層は、例えば、二酸化ケイ素層であってよい。本発明の他の実施形態では、他の結合方法で結合することができる。例えば、ドライフィルム接合により第2の基板300と前記支持層206とを一体に結合させる。例えば、前記第2の基板300のドライフィルム接合の行われる面にドライフィルム層を形成し、ドライフィルムにより前記第2の基板300と前記支持層206とを一体に結合させる。結合工程が完了した後、結合後の上記薄膜バルク音響波共振器を裏返して、
図3Gに示す構造を得られる。
【0041】
次に、
図3Hに示すように、工程S04を実行して、前記第1の基板200を除去する。前記第1の基板200は、薄化プロセス、熱放出プロセス、および剥離プロセスによって除去することができる。例えば、前記放出層201の材料が誘電性材料を含む場合、機械的研磨などの薄化プロセスによって前記放出層201および前記第1の基板200を除去することができる。前記放出層201が光硬化性接着剤である場合、化学試薬によって前記光硬化性接着剤を除去することにより前記第1の基板200を除去することができる。前記放出層がホットメルト接着剤である場合、熱放出プロセスにより前記ホットメルト接着剤に接着性を失わせ、前記第1の基板200を除去するようにする。本発明の他の実施形態では、他の方法で前記第1の基板200を除去することができるが、ここで一々列挙しないこととする。
【0042】
次に、
図3Iに示すように、工程S05を実行して、前記第1の電極層202’、前記圧電材料層203’、および前記第2の電極層204’をパターニングして、第1の電極202、圧電層203及び第2の電極204を形成し、前記第1の電極202、前記圧電層203、および前記第2の電極204の垂直方向(すなわち、厚さ方向)におけるオーバーラップ領域は、少なくとも部分的に前記キャビティ210の上に位置する。
【0043】
パターニングした後、前記第2の電極204は、キャビティ210の開口部を覆うだけでなく、開口部210の周りの支持層206の一部を覆うように延びる(具体的には、支持層206の上のエッチング停止層205の表面を直接に覆う)。すなわち、前記第2の電極204は、キャビティ210を完全に封じるだけでなく、前記支持層206にも掛けている。前記第2の電極204の支持層206に掛けた部分は、前記キャビティ210の開口部を取り囲みクローズループ構造を形成することができる。本発明の他の実施形態では、前記第2の電極204は、前記支持層206の縁と同一平面に保たれる。
【0044】
前記第1の電極層202’、前記圧電材料層203’、および前記第2の電極層204’をパターニングすることにより形成される第1の電極202および圧電層203の形状は、第2の電極204の形状と同じでも同じでなくてもよく、その上面図の形状は、五角形、または四辺形、六角形、七角形、八角形などの他の多角形にすることができる。この実施形態では、パターニング後、前記第1の電極202と圧電層203の面積は等しく完全にオーバーラップし、第2の電極204は、キャビティ210の開口部の面積よりも大きい。
【0045】
具体的には、リソグラフィー、エッチングプロセスによって、前記第1の電極層202’、前記圧電材料層203’、および前記第2の電極層204’をパターニングできる。例えば、
図3Iを参照して示されるように、リソグラフィーにより第1の電極202の電極パターンを定義し、乾式エッチングまたは湿式エッチングによって第1の電極202の形状を形成し、次いで、第1の電極202をマスクとし、乾式エッチングまたは湿式エッチングによって前記圧電材料層203’をエッチングして、次に、
図3Jに示されるように、リソグラフィーにより第2の電極204の電極パターンを定義し、乾式エッチングまたは湿式エッチングによって第2の電極204の形状を形成する。ここで、パターニングされた第1の電極202、前記圧電層203、および前記第2の電極204は、垂直方向にオーバーラップ領域を有し、従って、前記第1の電極202および第2の電極204に電圧が印加されたら、両者の間に電場を形成することができ、前記電場は前記圧電層203に機械的振動を発生させることができる。さらに、前記オーバーラップ領域は、少なくとも部分的に前記キャビティ210の上に位置し、前記キャビティ210の上の第2の電極204の一部領域が露出している。即ち、前記キャビティ210の上に位置する前記第1の電極202、前記圧電層203及び前記第2の電極204の厚さ方向におけるオーバーラップ領域が、バルク音響波共振器が動作するアクティブ領域(有効動作領域)である。この配置は、音響波エネルギーの散逸を比較的低減し、バルク音響波共振器の品質係数を改善できる。
【0046】
さらに、本発明によって提供される薄膜バルク音響波共振器を製造する方法において、
図3Kに示される、前記第1の電極202’、前記圧電材料層203’および前記第2の電極層204’をパターニングし第1の電極202、圧電層203および第2の電極204を形成した後、さらに、鈍化層207を形成する工程を含む。前記鈍化層207は、前記第1の電極202、前記圧電層203、および第2の電極204を覆い、前記鈍化層207は、さらに前記支持層206を覆ってよい。前記支持層206の上の鈍化層207および前記第2の電極204の上の鈍化層207において、それぞれ、鈍化層開口部が形成され、一部の鈍化層開口部が前記第2の電極204を露出し、別の一部の鈍化層開口部が第2の電極202を露出する。前記鈍化層開口部に、それぞれ前記第1の電極202および前記第2の電極204に電気的に接続される第1のパッド208aと第2のパッド208bが形成される。具体的には、鈍化層207は、化学的堆積または熱酸化によって形成することができ、前記鈍化層207の材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸窒化ケイ素(SiON)、窒化アルミニウム(A1N)、酸化アルミニウム(A1
2O
3)等であってよい。そして、前記鈍化層207をエッチングし、前記第1の電極202および前記第2の電極204の上に電極引出窓として鈍化層開口部が形成される。最後に、前記鈍化層開口部に金属などの導電性材料を充填し、それぞれ前記第1の電極202および前記第2の電極204に電気的に接続される第1のパッド208aおよび第2のパッド208bを形成し、薄膜バルク音響波共振器の電極と外部電源装置との接続を実現する。前記第1のパッド208aおよび前記第2のパッド208bの材料は、アルミニウム(A1)、銅(Cu)、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)またはタングステン(W)のうちの1つまたは複数の組み合わせによる複合構造である。好ましくは、この実施形態では、前記第1のパッド208aおよび前記第2のパッド208bはアルミニウムパッドであり、前記第1のパッド208aおよび前記第2のパッド208bは、それぞれ、前記キャビティ210の両側に配置されている。
【0047】
上記のエッチング工程において、前記エッチング方法には、湿式エッチング技術、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング、反応性イオンエッチング(RIE)などが含まれるが、これらに限られるものではない。前記堆積方法には、化学蒸気堆積、マグネトロンスパッタリング、電気化学堆積、原子層堆積(ALD)、分子ビームエピタキシー(MBE)などが含まれるが、これらに限られるものではない。
【0048】
この実施形態は、上記薄膜バルク音響波共振器の製造方法によって製造される薄膜バルク音響波共振器を提供する。
図3Kに示されるように、前記薄膜バルク音響波共振器は、以下を含む:
第2の基板300;
前記第2の基板300上に配置された支持層206;
前記第2の基板300に結合された支持層206であり、前記支持層206を貫通するとともに前記支持層206に設けられるキャビティ210;
前記支持層206に順次配置される第2の電極204、圧電層203、および第1の電極202。
【0049】
前記第1の電極202、前記圧電層203、および前記第2の電極204の厚さ方向におけるオーバーラップ領域の下の前記支持層206にキャビティ210が設けられ、前記第2の電極204は、前記キャビティ210の開口部および前記開口部の周りの支持層206の一部を覆う。前記第2の電極204の支持層206に掛けた部分は、前記キャビティ210の開口部を取り囲みクローズリング構造を形成してよい。本発明の他の実施形態では、前記第2の電極204は、前記支持層206の縁と同一平面に保たれる。
【0050】
前記第2の基板300は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つである:シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる);またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI);または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP);アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。この実施形態では、前記第1の電極202および前記第2の電極層204’は金属モリブデン(Mo)ででき、前記圧電層203は窒化アルミニウム(AlN)でできている。前記支持層206の材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)および窒化アルミニウム(AlN)の1つまたはそれらの組み合わせである。好ましくは、前記支持層206の材料は二酸化ケイ素(SiO2)である。
【0051】
好ましくは、前記第1の電極202と圧電層203の面積は等しく、完全にオーバーラップし、第2の電極204の面積は、キャビティ210の開口部より大きい。前記第1の電極202、前記圧電層203及び前記第2の電極204の厚さ方向におけるオーバーラップ領域、即ち、バルク音響波共振器の動作するアクティブ領域(有効動作領域)が前記キャビティ210の真上に位置する。この配置は、音響波エネルギーの散逸を低減し、バルク音響波共振器の品質係数を改善できる。
【0052】
前記支持層206は、ホットプレス結合またはドライフィルム接合によって前記第2の基板300に結合されている。ホットプレス結合の方法を採用する場合、前記支持層と前記第2の基板とのホットプレス結合が行われる面に結合層が形成され;ドライフィルム接合の方法を採用する場合、前記第2の基板と前記支持層とのドライフィルム接合が行われる面にドライフィルム層が形成される。
【0053】
好ましくは、エッチング停止層205が前記第2の電極204と前記支持層206との間に配置される。さらに、前記エッチング停止層205と第2の電極204は、同じ形状と同じ面積を有し、完全にオーバーラップしている。前記エッチング停止層205の材料には、窒化シリコン(Si3N4)および酸窒化シリコン(SiON)が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0054】
好ましくは、前記薄膜バルク音響波共振器は、前記第1の電極202、前記圧電層203、前記第2の電極204、および前記支持層206を覆う鈍化層207をさらに含む。
【0055】
好ましくは、前記支持層206の上の鈍化層207および第2の電極204の上の鈍化層207には、それぞれ、前記キャビティ210とは異なる鈍化層開口部が形成され、前記薄膜バルク音響波共振器は少なくとも2つのパッドを含み、前記パッドは前記鈍化層207に配置され、前記鈍化層207の開口部を介して、それぞれ前記第1の電極202および前記第2の電極204に電気的に接続される。例えば、第1のパッド208aは、前記第1の電極202に電気的に接続され、前記第2のパッド208bは、前記第2の電極204に電気的に接続される。好ましくは、前記第1のパッド208aおよび前記第2のパッド208bは、それぞれ、前記キャビティ210の両側に配置されている。
【0056】
本発明は薄膜バルク音響波共振器ならびにその製造方法を提供し、薄膜バルク音響波共振器の製造方法は、第1の基板に第1の電極層、圧電材料層、および第2の電極層を順次形成し、前記第2の電極層に支持層を形成し、前記支持層に上部の開口したキャビティを形成し、前記キャビティが前記支持層を貫通し、第2の基板と前記支持層とを結合させ、前記第1の基板を除去し、前記第1の電極層、前記圧電材料層、および前記第2の電極層をパターニングし、第1の電極、圧電層、および第2の電極を形成し、前記第1の電極と前記圧電層と前記第2の電極との厚さ方向におけるオーバーラップ領域を前記キャビティの真上に位置させるようにすることを含む。本発明は支持層をエッチングするプロセスと結合プロセスにより薄膜バルク音響波フィルタのキャビティ構造を実現でき、したがって、CMPプロセスを起因とした異なる媒体間の小さな起伏による圧電層の均一性への影響を避け、同時に、犠牲層の不完全な希釈による薄膜バルク音響波共振器のパフォーマンスへの影響を避ける。
【0057】
本明細書の各実施形態は、関連する方式で説明され、各実施形態の間の同じまたは類似の部分は、互いに参照され得ることに留意されたい。各実施形態は、他の実施形態との違いを重要点として説明し、特に、構造に関する実施形態につき、基本的に方法の実施形態と同様であるため、その説明は比較的簡単であり、関連部材につき、方法に関する実施形態についての説明を参照されたい。
【0058】
前述の説明は、あくまでも本発明の好ましい実施形態の説明に過ぎず、本発明の範囲を決して限定するものではない。当業者が前述の開示に基づき行われた変更または修正は、いずれも特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
100-基板; 110’-トレンチ; 110-キャビティ; 101-犠牲層; 102-第1の電極; 103-圧電層; 104-第2の電極; 120-貫通穴;
200-第1の基板; 210’-開口部; 210-キャビティ; 201-放出層; 202-第1の電極; 203-圧電層; 204-第2の電極; 205-エッチング停止層; 206-支持層; 207-鈍化層; 208a-第1のパッド; 208b-第2のパッド。
300-第2の基板。