(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】耐火性製品の為の保護層
(51)【国際特許分類】
C04B 41/80 20060101AFI20230410BHJP
C04B 35/109 20060101ALI20230410BHJP
C04B 35/484 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C04B41/80 A
C04B35/109
C04B35/484
(21)【出願番号】P 2021504822
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019070241
(87)【国際公開番号】W WO2020025496
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-23
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】カボディ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ベスパ,ピエリック ファビアン
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-513328(JP,A)
【文献】特表2007-530409(JP,A)
【文献】特開平01-057970(JP,A)
【文献】特開昭63-123883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0137329(US,A1)
【文献】国際公開第2017/026038(WO,A1)
【文献】T. N. Tiegs et al.,Surface Treatment of AZS Refractories Using High-Density Infrared Heating,64th Conference on Glass Problems,pp.3-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00-41/91
C04B 35/00-35/84
C03B 5/00-5/44
F27D 1/00-1/18
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10質量%超のZrO
2を含む溶融された耐火性製品、すなわちベース製品、を処理する為の方法であって、
工程a)上記製品の表面の少なくとも一部分、すなわち処理されるべき表面を加熱して、2000μm未満の深さまで延在する表層領域内のZrO
2結晶を融解する、すなわち再融解すること;及び
工程b)上記工程a)で得られた融解された表層領域を冷やして、保護層を得ること;
工程c)任意的に、該保護層の非晶質相内に存在するジルコニアを少なくとも部分的に再結晶すること
を含み、
上記工程a)において、該処理されるべき表面が、レーザービームとプラズマ照射ビームとから選択される入射ビームを用いて照射され、該入射ビームの単位面積当たりの出力が5000W/mm
2超であり、該処理されるべき表面に、150J
/mm
3超の露光エネルギーが供給され、該露光エネルギーが、該入射ビームの単位面積当たりの出力と、該処理されるべき表面への前記入射ビームの移動速度との比である、上記方法。
【請求項2】
工程a)において、該処理されるべき表面が、2500℃超の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、該処理されるべき表面が、該ベース製品を1000μm未満の深さまで融解するように加熱される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、該処理されるべき表面が、該ベース製品を50μm超の深さまで融解するように加熱される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)において、該融解された領域が、該融解された表層領域を開放空気に曝露することによって冷やされる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、該融解された領域の冷却速度が100℃/秒超である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該処理されるべき表面が、該ベース製品の表面の10%超である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該ベース製品が、
10%<ZrO
2<98%;及び/又は
0.5%<Al
2O
3<70%;及び/又は
1.5%<SiO
2<40%;
但し、90%<ZrO
2+Al
2O
3+SiO
2、好ましくは95%<ZrO
2+Al
2O
3+SiO
2、
の組成を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該ベース製品が、80質量%超のZrO
2を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該ベース製品が、酸化物に基づく質量パーセンテージとして、合計90%超として、下記の通りの組成を有する:
ZrO
2: 26~45%;
Al
2O
3: 40~ 60%;
SiO
2: 5~35%;
又は下記の組成を有する:
ZrO
2: 50~80%未満;
Al
2O
3: 15~30%;
SiO
2: 5~15%;
又は下記の組成を有する:
ZrO
2: ≧80%;
Al
2O
3: ≧5%;
SiO
2: ≦12%;
又は下記の組成を有する:
10%<ZrO
2≦25%;
50%<Al
2O
3<75%;
5%<SiO
2<35%、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
処理されるべき表面に存在する空洞を塞ぐ為に、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法の使用であって、該処理されるべき表面が、該空洞の縁から10mmの距離を超えて連続して延在しない、上記使用。
【請求項12】
保護層で保護された溶融された耐火性製品であって、該製品は、該保護層の下に、10質量%超のZrO
2を含み、該保護層は、
10質量%超のZrO
2を含み;
2000μm未満の厚さを有し;及び
50体積%超について
、ジルコニア結晶子を含み、ここで、ジルコニア結晶子の平均表面積は5μm
2未満である、
前記溶融された耐火性製品。
【請求項13】
該ジルコニア結晶子の平均表面積が2μm
2未満である、請求項12に記載の溶融された耐火性製品。
【請求項14】
該保護層の多孔度が5%未満であり、ここで、該多孔度は、処理されるべき表面に垂直な切断面における、孔によって占有された表面積のパーセンテージである、請求項12又は13に記載の溶融された耐火性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層で少なくとも部分的に覆われた溶融された耐火性製品、特にブロック、に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明に従う製品を得る為に、レーザー照射で照射することによって、被覆されていない耐火性製品の表面を処理する為の方法に関する。
【0003】
最後に、本発明はガラス炉に関し、該ガラス炉のライニングが本発明に従う少なくとも1つのブロックを備えている。
【背景技術】
【0004】
耐火性ブロックの中で、ガラス又は金属の融解炉の構築の為に周知である溶融されたブロックは、焼結ブロックと区別される。
【0005】
焼結ブロックとは異なり、溶融されたブロックは通常、結晶質グレインをつなぐ粒間非晶質相(intergranular amorphous phase)を含む。従って、焼結ブロックと溶融されたブロックとが遭遇する問題及びそれらを解決する為に採用される技術的解決策は、一般的に異なる。従って、焼結ブロックを製造する為に開発された組成は原則として、そのまま、溶融されたブロックを製造する為に使用されることはできず、その逆も同様である。
【0006】
「電気溶融されたブロック」(electrofused blocks)としばしば云われる溶融されたブロックは、好適な出発材料の混合物を、電気アーク炉(electric arc furnace)内で又は任意の他の好適な技法を介して融解することによって得られる。次に、該溶融材料(molten material)は慣用的に、型に流され、そして、次に固化される。次に、一般的に、得られた製品は破砕することなしに、周囲温度にまで、制御された冷却サイクルを受ける。
【0007】
ガラス炉の耐火性ライニングの為に使用される溶融されたブロックは典型的には、10%~95%のZrO2を含みうる。
【0008】
低又は中程度のZrO2含量を有するブロックは良好な特性を有するが、融解ガラスによる又はその蒸気による浸出及び腐食に関して改善の余地がある。
【0009】
80質量%超又は更には85質量%超又は更には90質量%超のZrO2を一般に含む、高い又は非常に高いZrO2含量(VHZC:very high ZrO2 content)を含む溶融されたブロックは、それらの非常に高い腐食耐性と、生成されたガラスを着色せず、ガラスに欠陥を発生させず、且つごく僅かしか浸出しないそれらの能力とが評価される。ガラス蒸気に対するそれらの耐性は、依然として改善の余地がある。
【0010】
米国特許出願公開第2007/0141348号明細書は、融解ガラスとの接触による耐火性製品の表面の反応性及び膨れを低減させる為に、該耐火性製品の表面がレーザー照射に曝露される耐火性製品を記載する。しかしながら、この処理は、10質量%超のZrO2を含む溶融された耐火性ブロックを効率的に保護することを可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、10質量%超のZrO2を含み且つ融解ガラス蒸気による腐食に対してより良好な耐性を有し且つより低い浸出を有する溶融された耐火性製品についての必要性がある。
【0012】
本発明の一つの目的は、少なくとも部分的に、この要求に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、10質量%超のZrO2を含む溶融された耐火性製品、すなわちベース製品、を処理する為の方法であって、
工程a)上記製品の表面の少なくとも一部分、すなわち処理されるべき表面を加熱して、2000μm未満の深さまで延在する表層領域内のZrO2グレインを融解する、すなわち再融解すること;及び
工程b)上記工程a)で得られた融解された表層領域を冷やして、保護層を得ること;
工程c)任意的に、該保護層の非晶質相内に存在するジルコニアを少なくとも部分的に再結晶すること
を含む、上記方法に関する。
【0014】
驚くべきことに、本明細書の詳細な説明の下記の続きで更に詳細にわかるように、ZrO2グレインの融解は、非常に高密度で且つ均質な保護層を得ることを可能にし、それは、ガラス蒸気による腐食に対して優れた耐性を与え、且つ処理された表面による浸出に向かう傾向をかなり低減する。理論的に説明できるものではないが、本発明者等はまた、得られた結果、特に注目に値する機械的性質の維持、及び特に亀裂の不存在は、該保護層の非常に薄い厚さ(深さの方向で測定された)によると考える。
【0015】
該保護層の接着がまた、注目に値する。
【0016】
注目に値する様式において、該結果はまた、80質量%超のZrO2を含む溶融されたベース製品について得られる。
【0017】
米国特許出願公開第2007/0141348号明細書に記載された処理は、再融解を可能にする加熱を含まない。
【0018】
本発明に従う方法は、下記の任意的な特徴の1つ以上を含みうる:
工程a)において、該処理されるべき表面が、2500℃超、好ましくは2700℃超、好ましくは2750℃超、好ましくは2800℃超、好ましくは2900℃超、好ましくは3000℃超、の温度に加熱される;
工程a)において、該処理されるべき表面が、レーザービームとプラズマ照射ビームと
から選択される入射ビームを使用して、慣用的にはプラズマトーチで、照射される;
工程a)において、該処理されるべき表面が、加熱されて、好ましくはレーザー照射によって加熱されて、該ベース製品を、50μm超、好ましくは100μm超、及び/又は好ましくは1500μm未満、好ましくは1200μm未満、1000μm未満、好ましくは700μm未満、好ましくは500μm未満、の深さまで融解する;
工程a)において、該処理されるべき表面は、50J/mm3超、好ましくは100J/mm3超、の露光エネルギーを供給され、ここで、該露光エネルギーが、該ビームの単位面積当たりの出力(power)と、該処理されるべき表面への入射ビームの移動速度との比である;
工程b)において、該融解された領域が、該融解された表層領域を開放空気に曝露することによって冷やされる;
工程b)において、冷却速度が、100℃/秒超、好ましくは500℃/秒超、である;
該ベース製品は、ブロック、好ましくは1kg超、好ましくは5kg超、又は更には10kg超、の質量を有するブロック、である;
該処理されるべき表面は、該ベース製品の1つの面の表面の、又は更には幾つかの面の表面の、又は更には全ての面の表面の、10%超、30%超、60%超、80%超、又は更には100%、である;
該製品は、工程a)の前に、
10%<ZrO2<98%;及び/又は
0.5%<Al2O3<70%;及び/又は
1.5%<SiO2<40%;
但し、90%<ZrO2+Al2O3+SiO2、好ましくは95%<ZrO2+Al2O3+SiO2、
になる化学組成を有する。
【0019】
驚くべきことに、本発明者等はまた、工程a)及びb)が、該ベース製品上の表面欠陥又は亀裂を塞ぐことを可能にすることを発見した。
【0020】
従って、本発明はまた、ベース製品の表面の空洞、例えば亀裂、を塞ぐ為の方法に関し、該方法は、工程a)及び工程b)及び任意的に、工程c)を含み、ここで、該処理されるべき表面は上記空洞を含み、又は更には上記空洞を含むことが特に決定される。
【0021】
一つの実施態様において、該処理されるべき表面は、該空洞の縁から10mmの距離を超えて連続して延在しない。従って、該空洞は、局所的に処理される。
【0022】
本発明はまた、保護層で保護された溶融された耐火性製品、好ましくは本発明に従う方法に従って製造された、保護層で保護された溶融された耐火性製品、に関し、ここで、該製品は該保護層の下に、10質量%超のZrO2を含み、該保護層は、
10質量%超のZrO2を含み;
2000μm未満の厚さを有し;及び
50体積%超について、非晶質相及び/又はジルコニア結晶子を含み、又は更にはそれから実質的になり、ここで、ジルコニア結晶子の平均表面積は5μm2未満である。
【0023】
限られた時間の高温融解は、ミクロ構造と厚さとのこの特定の組み合わせを得ることを可能にする。
【0024】
本発明に従う製品はまた、下記の任意的な特徴の1つ以上を含みうる:
好ましくは、該ジルコニア結晶子の平均表面積が2μm2未満、又は更には1μm2以下である;
好ましくは、該保護層の厚さが1500μm未満、又は更には1000μm未満である;
該保護層の多孔度が10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、であり、ここで、該多孔度は、該処理されるべき表面に垂直な切断面における、孔によって占有された表面積のパーセンテージである。この多孔度は好ましくは、処理される表面に垂直な切断面において、走査型顕微鏡で得られた研摩断面で測定される。
【0025】
定義
語「包含する(include)」、「有する(have)」、及び「含む(comprise)」は、広範な非限定的な様式で解釈される。
「高温面」(hot face)は、炉の内部に暴露されている面、すなわち融解材料(molten material)、例えばガラス若しくは金属、に接触する及び/又はこの材料の気体環境に接触する面である。低温面(cold face)は慣用的に、高温面とは反対の面である。ブロックの高温面及び低温面は、
同じ列のブロックにおける隣接するブロックの側面に面する側面、すなわち「接合面」(joint faces)を介して、及び
上記ブロック上に載置される少なくとも1つの上方ブロックの下面に面する上面を介して、及び上記ブロックが載置されている少なくとも1つの下方ブロックの上面に面する下面を介して、
互いに接続されている。
ブロックの厚さは慣用的に、その最小寸法である。炉の雰囲気に接触する高温面と、その反対側の低温面との間の距離が慣用的に、測定される。
ジルコニア結晶子の平均表面積は、処理された表面に垂直な切断で結晶子ごとに測定された表面積の算術平均である。好ましくは、切断面の画像は、走査型顕微鏡を使用して取得され、そして、次に、解析される。結晶子表面積が測定される面積は好ましくは、100μm2超、好ましくは500μm2超、好ましくは1000μm2超である。該倍率は、測定がなされる結晶子のサイズに慣用的に適合される。例えば、5000~10000の倍率は典型的には、0.1~5μm2の結晶子表面積を測定することを可能にする。10000~25000の倍率は典型的には、0.01~0.5μm2の結晶子表面積を測定することを可能にする。任意的にそれらのコントラストを改善する為に画像の2値化の後に、慣用的な画像解析技法が行われうる。
多孔度は、処理されるべき表面に垂直な切断面において孔(pores)によって占有された表面積のパーセンテージである。垂直な断面の切断面は、任意である。好ましくは、孔によって占有された表面積を測定する為に使用される切断面の画像は、走査型電子顕微鏡を使用して取得される。当業者は、使用される画像の表面積が、測定値が有意である為に十分でなければならないことを知っている。好ましくは、画像上の保護層の面積は、代表的な表面積を得る為に100μm2超、好ましくは500μm2超、好ましくは1000μm2超、の表面積を表す。
【0026】
より好ましくは、使用される切断面の画像は、該保護層の全体の厚さを表す。
【0027】
孔によって占有された表面積は、任意的にそのコントラストを増大させる為に画像の2値化後に、当業者に周知である慣用的な画像解析技法を介して測定されうる。多孔度は、孔の表面積の合計と、画像に表される保護層の表面積とのパーセンテージ比である。
ビームの断面の等価直径は、この断面と同じ面積を有するディスクの直径である。
語「グレイン」(grain)は、均質な組成物又は共晶組成物を有し且つ10μm超のサイズを有する結晶質要素を云う。
語「結晶子」(crystallite)は、0.1μm2超且つ10μm2未満の表面積を有する結晶質要素を云い、ここで、該表面積は、製品の断面において光学顕微鏡法による撮影された画像において測定される。
語「グレインサイズ」(grain size)は、グレインの全長と全幅の合計半値を意味し、ここで、該長さ及び該幅は、製品の断面で光学顕微鏡法により撮影された画像において測定され、該幅は、上記長さに垂直な方向において測定される。
語「平均」は、算術平均を意味する。
語「ZrO2グレイン」は、酸化物に基づく質量パーセンテージとして、80%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは98%超、のZrO2を含むグレインを意味する。
他に明示されない限り、該組成に関する全てのパーセンテージは、酸化物に基づく質量パーセンテージである。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明を読むことによって且つ添付図面を検証することによって、より明瞭に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、レーザー照射によって処理された、本発明に従うブロックの、処理された表面に垂直な切断面における断面を示す。
【
図2B】
図2Bは、溶融されていないZrO
2グレインを示す、この構造の詳細を示す。
【
図3】
図3は、異なるZrO
2含量を有する本発明に従う他のブロックを示し、ここで、保護層がまたレーザー照射によって形成される。
図3は、亀裂を示す。該亀裂は、研摩された断片の調製中の研摩に起因する。
【
図4】
図4は、異なるZrO
2含量を有する本発明に従う他のブロックを示し、ここで、保護層がまたレーザー照射によって形成される。
図4は、亀裂を示す。該亀裂は、研摩された断片の調製中の研摩に起因する。
【
図5】
図5は、異なるZrO
2含量を有する本発明に従う他のブロックを示し、ここで、保護層がまたレーザー照射によって形成される。
図5は、亀裂を示す。該亀裂は、研摩された断片の調製中の研摩に起因する。
【
図6】
図6は、より大きい倍率で、本発明の
図4に従うブロックの保護層中に存在するジルコニア結晶子の構造を示す。
【
図7】
図7は、より大きい倍率で、本発明の
図5に従うブロックの保護層中に存在するジルコニア結晶子の構造を示す。
【
図8A】
図8Aは、ブロックER1681の断面を示し、より正確には、アニール前の保護層の非晶質相の構造を示す。
【
図8B】
図8Bは、ブロックER1681の断面を示し、より正確には、アニール後の保護層の非晶質相の構造を示す。
【
図8C】
図8Cは、ブロックER1681の断面を示し、より正確には、アニール後の保護層の非晶質相の構造を示し、高倍率を用いて、アニールされたブロックの保護層における新しいジルコニア微結晶の外観を示す。
【
図9A】
図9Aは、処理前の、亀裂がある溶融された耐火性ブロックの外観を示す。
【
図9B】
図9Bは、様々な円盤状表面でのレーザービームへの露光後の、亀裂がある溶融された耐火性ブロックの外観を示す。
【
図9C】
図9Cは、様々な円盤状表面でのレーザービームへの露光後の、亀裂がある溶融された耐火性ブロックの外観を示し、高倍率を用いて、亀裂20を塞いだ状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
製造方法
工程a)において、10質量%超のZrO2を含む溶融された耐火性製品、すなわちベース製品、が、処理される。
【0031】
該ベース製品は、高密度の溶融された製品であり、すなわち、全多孔度が10体積%未満の製品であり、ここで、該全多孔度は、下記の関係式によって与えられる:
全多孔度=100×(絶対密度-見掛け密度)/絶対密度
【0032】
該見掛け密度は、正常なゾーン(healthy zone)における、部品の芯から得られたバーにおいて、規格ISO 5017に従って測定される。該絶対密度は、ヘリウムピクノメーターを使用して、粉砕された粉末で測定される。
【0033】
該ベース製品は慣用的に、耐火性のグレインで構成された供給材料を融解し、そのように得られた液体浴を型に流し込、そして、次に、冷やして該液体の塊を固化することによって得られる。好ましくは、該ベース製品は、電気融着によって得られる。
【0034】
該ベース製品は慣用的に、溶融された耐火性ブロックである。
【0035】
好ましくは、この耐火性ブロックは、50mm超、又は更には100mm超、の最大厚さを有する。注目すべき様式において、本発明に従う処理方法は、そのようなブロックの表面にマクロ亀裂の外観をもたらさない。
【0036】
該ブロックは、特に、プレートブロック、バーナーアーチ、タンクブロックからなる群からだけでなく、ガラス炉の上部構造部品からなる群からまた選択されうる。
【0037】
該処理されるべき表面は好ましくは、該ブロックの高温面の一部又は全てであり、すなわち、融解ガラスに接触する及び/又は融解ガラスの上方に延在する気体に接触する表面、である。一つの実施態様において、該処理されるべき表面は、該ブロックの外面全体を含む。
【0038】
該ベース製品は慣用的に、結晶質グレインをつなぐ粒間結合剤相(intergranular binder phase)を含む。
【0039】
該結晶質グレインは、ZrO2グレイン、及び任意的に、コランダム-ジルコニア共晶混合物を含む。
【0040】
該ベース製品におけるジルコニウムは、グレインの形で主に存在する。これらの単結晶質又は多結晶質のグレインは好ましくは、それらの質量の95%超、98%超、99%超、又は実質的に100%、のZrO2からなる。
【0041】
該平均グレインは好ましくは、10μm超、好ましくは20μm超、好ましくは30μm以上、及び/又は200μm未満、好ましくは100μm未満、である。
【0042】
該ベース製品は好ましくは、その質量の90%超が、ZrO2、Al2O3、SiO2、Cr2O3、Y2O3、及びCeO2からなる群から選択される1種以上の酸化物からなる。好ましくは、ZrO2、Al2O3、及びSiO2は一緒に、該ベース製品の質量の90%超である。
【0043】
該ベース製品は好ましくは、15%超のZrO2を含み、より好ましくは26%~95%のZrO2を含む。
【0044】
様々な好ましい実施態様において、該ベース製品の組成は、合計90%超、95%超、又は更には98%超、について下記の通りである:
ZrO2: 26~45%;
Al2O3: 40~ 60%;
SiO2: 5~35%;
又は下記の通りである
ZrO2: 50~80%未満;
Al2O3: 15~30%;
SiO2: 5~15%;
又は下記の通りである
ZrO2: 80~98%;
Al2O3: 5~20%;
SiO2: 1~12%;
又は下記の通りである
10%<ZrO2≦25%;
50%<Al2O3<75%;
5%<SiO2<35%。
【0045】
該結合剤相は、1つ以上の非晶質又はガラスセラミック相を含み、好ましくは該非晶質又はガラスセラミック相からなり、好ましくはシリケート相、である。それは好ましくは、該ベース製品の5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~40質量%、である。
【0046】
好ましくは、該相がシリケート相であり、該シリケート相の酸化物に基づく質量パーセンテージとして、そのNa2Oの質量割合は20%未満、好ましくは10%未満である、及び/又はそのAl2O3の質量割合は30%未満である。
【0047】
好ましくは、特にこれら全ての実施態様について、Na2O及びB2O3の質量含量は、該ベース製品の酸化物に基づく質量パーセンテージとして2%未満である。
【0048】
該ベース製品の、該処理されるべき表面における保護層を作成する為に、大量のエネルギーが、非常に短い期間にわたって小さい表面積において集中される。
【0049】
好ましくは、該ベース製品は最初に乾燥し、すなわち質量パーセンテージとして、1%以下、好ましくは0.5%未満、の水分のパーセンテージを有する。
【0050】
次に、該処理されるべき表面は、レーザーの入射ビーム又はプラズマ射線の入射ビームを使用して、この表面に50J/mm3超、好ましくは75J/mm3超、好ましくは100J/mm3超、又は更には150J/mm3超、及び/又は500J/mm3未満、400J/mm3未満、又は300J/mm3未満、の露光エネルギーを伝達するように照射される。
【0051】
該露光エネルギーは、入射ビームの単位面積当たりの出力(power)と、該処理されるべき表面での入射ビームの移動速度との比である。ZrO2グレインを融解させる為に、該ZrO2グレインの組成の関数として適合される。好ましくは、温度は、2800℃超である。
【0052】
単位面積当たりの出力は、入射ビームのワットを単位とする力を、該ベース製品の表面、すなわち「衝突表面」、に入射ビームが当たった時の、入射ビームの断面のmm2を単位とする表面積で除した比である。
【0053】
該入射ビームの該力は好ましくは、10W超、20W超、30W超、40W超及び/又は400W未満、300W未満、200W未満、100W未満、である。
【0054】
衝突表面での、該入射ビームの断面の等価直径は好ましくは、10μm超、好ましくは20μm超、及び/又は100μm未満、好ましくは80μm未満、60μm未満、50μm未満、若しくは40μm未満、である。
【0055】
該入射ビームの断面は、様々な形状、例えば円形断面又は長方形断面(「インライン」レーザービーム)でありうる。長方形の断面は有利には、大きい表面積のより速い処理を可能にする。好ましくは、該入射ビームの移動方向は、長方形の断面の長辺に垂直である。
【0056】
好ましくは、衝突表面での該入射ビームの断面より小さな寸法(すなわち「幅」)は、10~500μm、好ましくは10~100μm、である。溶融されたベース製品の表面でのZrO2グレインの幅に近い、この幅に沿って移動するビームは、非常に高密度で均質な保護層を得る為に特に好適である。
【0057】
好ましくは、該ビーム幅(beam width)は、ベース製品の表面に存在するZrO2グレインの平均サイズの関数として適合される。好ましくは、平均グレインサイズが大きくなるほど、該ビーム幅が大きくなる。好ましくは、該ビーム幅は、ZrO2グレインの平均サイズの0.5~2倍である。
【0058】
該入射ビームの単位面積当たりの出力は好ましくは、5000W/mm2超、好ましくは7000W/mm2超、好ましくは10000W/mm2超、又は更には15000W/mm2超、及び/又は好ましくは50000W/mm2未満、好ましくは30000W/mm2未満、又は更には25000W/mm2未満、である。
【0059】
衝突表面に供給されるエネルギーは、該ベース製品の表層損傷を限定するように、その結果、深さの再融解が限定されるように、非常に短い期間で供給されなければならない。従って、該入射ビームは、迅速に移動しなければならない。
【0060】
該処理されるべき表面に対する衝突表面での入射ビームの移動速度(mm/秒単位)は好ましくは、20mm/秒超、好ましくは30mm/秒超、40mm/秒超、好ましくは50mm/秒超、好ましくは75mm/秒超、及び/又は500mm/秒未満、又は更には300mm/秒未満、又は更には100mm/秒未満、である。
【0061】
該処理されるべき表面を処理する為に好ましくは、1065±5nmの波長を有し且つ10~100ワット、好ましくは20~60W、の平均レーザービーム力を有するレーザー、好ましくは「CO2」型のレーザー、が使用される。該レーザー装置は、該レーザービームの位置決めを支援する標的デバイスを備えうる。該レーザー装置は例えば、Cerlaseによって販売されているレーザー処理機でありうる。
【0062】
該入射ビームは慣用的に、1次ビームを集束することによって得られる。
【0063】
好ましくは、該1次ビームの等価直径は、1000マイクロメートル未満である。
【0064】
該焦点距離は、該入射ビームの形状及びサイズに影響を及ぼす。一般的に、該焦点距離が短いほど、面積当たりの力は高くなる。
【0065】
該焦点距離は好ましくは、50~500mm、好ましくは60~400mm、より好ましくは70~300mm、である。それは好ましくは、150mm~200mmである。有利には、処理の均質性、従って保護層の均質性が、それによって改善される。
【0066】
その上、そのような焦点距離は有利には、上述のレーザービーム幅に適合し、特に10~100μmの幅に適合する。
【0067】
該処理されるべき表面を加熱する為にパルスレーザーを使用することが可能であり、該パルス中に非常に高い力(力ピーク)を得ることが可能である。しかしながら、そのようなレーザーは、断続的に放出するだけである。
【0068】
好ましくは、該使用されるレーザーは、パルス送出されず、又はそのパルス周波数が300kHzよりも大きいパルスレーザーである。
【0069】
ベクトル化は慣用的に、入射ビームで処理された2本の隣接するラインの間の縁部間距離(ミクロン単位)で表す。該ベクトル化が高過ぎる又は低過ぎる場合、融解はそれほど均質でないであろう。該ベクトル化は好ましくは、0.2~2倍、好ましくは0.5~1.5倍、好ましくは20~80ミクロン、好ましくは30~50ミクロンのビーム幅である。
【0070】
好ましくは、該入射ビームは、該処理されるべき表面のゾーン上を、最大で1回通過する。
【0071】
工程b)において、融解ベース製品上の表層領域は、急速に冷やされて、保護層に変換される。
【0072】
レーザー処理を用いて、周囲雰囲気への曝露は、保護層を得る為に好適なクエンチ処理を得る為に十分である。
【0073】
追加の冷却手段、例えば周囲温度で又はより低い温度で空気を吹付ける為の追加の冷却手段、が、使用されうる。
【0074】
工程c)において、保護層は、熱によって、好ましくは加熱によって、
好ましくは空気中で、
好ましくは1000℃超、好ましくは1300℃超、好ましくは1400℃超、好ましくは1500℃超、の温度で、
好ましくは10時間超、好ましくは15時間超、好ましくは20時間超、時間で、
好ましくは、5℃/時間超、10℃/時間超、及び/又は好ましくは80℃/時間未満、好ましくは50℃/時間未満、好ましくは30℃/時間未満、の温度上昇速度、
好ましくは、5℃/時間超、10℃/時間超、及び/又は80℃/時間未満、好ましくは50℃/時間未満、好ましくは30℃/時間未満、の温度低下速度
で再処理されうる。
【0075】
工程c)は好ましくは、空気中で、10℃/時間の温度上昇速度で1500℃まで、この温度で24時間の段階、引き続き、50℃/時間での制御された低減で行われる。
【0076】
従って、非晶質相のZrO
2は、
図8A及び
図8Bに示されている通り、ジルコニア結晶子の形で再結晶することができる。これらの結晶子は好ましくは、5μm
2未満、3μm
2未満、2μm
2未満、又は更には1μm
2未満、及び/又は0.1μm
2超、0.2μm
2超、又は0.5μm
2超、の平均表面積を有する。
【0077】
処理された製品
該方法から得られる製品は、「処理された製品」と呼ばれる。この製品は、基板と、該基板の表面に延在する保護層とからなる。
【0078】
該基板は、保護層を製造する為の方法によって、実質的に変更されない。従って、該ベース製品に関する特徴は、該基板に適用可能である。
【0079】
該保護層の平均厚さは、該ベース製品の性質に、及び高エネルギービームへの曝露のパラメーター、特に単位面積当たりの出力及びベース製品に対するビームの相対移動速度、に依存する。該保護層の平均厚さは好ましくは、50~2000μm、好ましくは100~1000μm、より好ましくは100~700μm、又は更には100~500μm、である。該保護層の平均厚さは好ましくは、200μm超である。
【0080】
該保護層は、該基板の組成、従って該ベース製品の組成に実質的に類似する組成を有する。従って、該ベース製品の該組成に関する特徴は、該保護層に適用可能である。特に、該保護層は好ましくは、元素Zr、Al、Si、及びOを含む。
【0081】
しかしながら、好ましくは、該保護層は、該基板の元素Na及び/又はSiの質量含量よりも低い元素Na及び/又はSiの質量含量を有する。これらの元素は、実際のところ、工程a)の間に揮発しうる。
【0082】
特に、該保護層におけるSiO2含量と該基板におけるのSiO2含量との質量比は好ましくは、1.0未満、好ましくは0.9未満、又は更には0.8未満、及び/又は好ましくは0.1超、好ましくは0.3超、好ましくは0.5超、である。
【0083】
工程a)の間の元素Na及び/又はSiの揮発は、他の元素における相対的な増加を生じる。特に、該保護層におけるZrO2含量と該基板におけるZrO2含量との質量比は好ましくは、1.0超、好ましくは1.1超、又は更には1.2超、及び/又は好ましくは2.0未満、好ましくは1.8未満、より好ましくは1.6未満、である。
【0084】
該保護層は、全体として非晶質でありうる。それはまた、非晶質結合剤相に分散された数個のジルコニア結晶子を含みうる。最後に、それは、ジルコニア結晶子から実質的になり得、特にベース製品が80質量%超又は更には90質量%超のZrO2を含む化学組成を有する場合、該ジルコニア結晶子は、実質的に連続する層を形成する点に事実上隣接している。
【0085】
好ましくは、該保護層は、50体積%超、70体積%超、80体積%超、又は更には90体積%超について、非晶質高密度相及び/又はジルコニア結晶子からなる。
【0086】
該保護層において、該ジルコニア結晶子は好ましくは、単結晶であり、すなわちジルコニア単結晶と同じ構造を有する結晶子である。
【0087】
好ましくは、該ジルコニア結晶子の平均表面積は、0.2μm2超、又は更には0.5μm2超、及び/又は好ましくは5μm2未満、好ましくは3μm2未満、好ましくは2μm2未満、好ましくは1.0μm2未満、である。
【0088】
該保護層はまた、Al2O3を含む結晶子又は更にはコランダムを含みうる。
【0089】
好ましくは、該保護層は、50体積%超、70体積%超、80体積%超、又は更には90体積%超、又は更には実質的に100体積%、について、非晶質高密度相、及び/又はジルコニア結晶子、及び/又はAl2O3を含む結晶子からなる。
【0090】
好ましくは、該保護層は、体積パーセンテージとして、80%超、90%超、95%超、又は更には実質的に100%、の非晶質相及びジルコニア結晶子を含む。このパーセンテージは特に、SEM/EDXによる画像処理、そして観察によって評価されうる。
【0091】
図1は、基板8の表面における、非晶質相AZS 12の形をとるジルコニアとジルコニア結晶子14の数個のシード(seeds)とを含む保護層10の存在を示す。ジルコニア結晶子14はまた、
図6及び
図7において見られる。
【0092】
図2Aはベース製品の表層侵襲を示し、及び
図2Aは特に、溶融されていないZrO
2グレインの表面での存在を示す。
【0093】
図3~
図5は、亀裂を示す。これら亀裂は、研摩された断片の調製中の研摩に起因する。
【0094】
[実施例]
下記の実施例は、例示目的の為に提供されており、本発明を限定するものでない。
【0095】
500mm×500mm×500mmサイズのベースブロックの形におけるベース製品は、出発材料をアーク炉内で融解し、引き続き、型に流し込み、固化する方法を介して製造された。次に、乾燥された無塵ベースブロックが、
「YAGファイバーYb-YAG」型のレーザーが使用された、比較例2を除く、「単峰Yb/CO2ファイバー」型の、
1064nmの波長を有する、
10~100Wでありうる力、及び均質保護層を得るように調節された焦点距離
の、Carlase処理機のレーザービームに付された。
【0096】
該処理は、空気中、大気圧で行われ、ここで、該ベクトル化は、シングルパスで、40μmであった。該レーザーの機能化は、ファイバーレーザーに直接接続された制御ユニットによって管理された。次に、該得られたブロックが観察された。
【0097】
表1は、様々なレーザー露光パラメーターと、レーザービーム照射に曝露され後のブロック上での測定及び観察結果を示す。
【0098】
ブロックの観察
本発明に従う実施例1は、高密度の保護層の存在を示す(
図1)。
【0099】
該保護層の、マイクロプローブでの且つ電子後方散乱回折(EBSD:electron backscatter diffraction)走査電子顕微鏡での分析は、菊池図形(Kikuchi figures)の不存在、従って事実上純粋なAZS非晶質相Al2O3-ZrO2-SiO2(Al2O3:50~51%、ZrO2:39~41%、SiO2:10~11%、質量パーセンテージで)の存在を明らかにする。従って、該保護層は、ベースブロックよりも(従って、基板よりも)高いZrO2含量と、ベースブロックよりも有意に低いSiO2含量とを有する。
【0100】
0.01μm2未満の表面積を有する結晶子の形にある再結晶されたジルコニアの数個のシードの存在がまた観察される。
【0101】
次に、実施例1に従うレーザーで処理されたブロックを、10℃/時間の温度上昇速度で1500℃まで、この温度で24時間の段階、引き続き、10℃/時間での制御された温度低下で、空気中でアニールされた(工程c)。次に、該ブロックは、
図8A~
図8Cに示されている通り、0.68μm
2の平均表面積を有するジルコニア結晶子を含む高密度の非晶質保護層を有する。
【0102】
比較例1は、米国特許出願公開第2007/0141348号明細書のパラメーターに近いパラメーターの下で照射に付される、本発明に従う実施例1の場合と同一の組成のベースブロックが、低いレーザー移動速度及び単位面積当たり高い力を持つとしても、高密度で且つ均質なジルコニア保護層を有しないことを示す。
【0103】
米国特許出願公開第2007/0141348号明細書に記載されている露光エネルゴーと同様に、5J/mm
3程度の露光エネルギーを実現するように行われた比較例2は、ZrO
2グレインの融解なしに、ブロックの非晶質相の局所融解をもたらす(
図2A、及びより高い倍率で見るには、
図2B参照)。この実施例は、溶融されたベース製品におけるそのような露光エネルギーで、本発明に従う保護層を得ることが不可能であることを確認する。
【0104】
実施例2~4は、ZrO2のほぼ95質量%までの、非常に異なるZrO2含量を有するブロックのレーザー照射によって、高密度で且つ完全に接着する保護層を得ることがまた可能であることを示す。該保護層の組成は基板の組成に近く、しかしながら、該基板よりも高いZrO2含量及び該基板よりも低いシリカ含量を有する。
【0105】
試験
下記の浸出及び腐食試験が行われた。
【0106】
ガラス蒸気による腐食の試験1
直径60mm及び長さ40mmの2つの系列の円筒状試験片が、実施例1のベースブロック、すなわちレーザー処理されていないブロック、から得られた。
【0107】
第1の系列の各円筒状試験片のベース表面(円盤状)は、先に定義されたようにレーザー照射に曝露された。第2の系列の試験片(対照系列)は、対照として処理され且つ保存された。次に、2つの系列の試験片のそれぞれは、硫酸ナトリウムによる腐食試験に付された。より詳細には、試験片のそれぞれは、処理されたベース表面(第1の系列の試験片の場合)又は未処理のベース表面(第2の系列の試験片の場合)が、約60gの硫酸ナトリウムを含む直径50mmの白金坩堝に、該坩堝が閉鎖されるように硫酸ナトリウム浴の上方に且つ該浴に面する位置で、アルミナセメントで密封された。これらのアセンブリが、1500℃の温度の炉内に100時間置かれた。
【0108】
次に、水酸化ナトリウムの浸透の平均厚さが、電子顕微鏡での分析によって測定された。下記の表1は、下記の計算に従う、対照試験片の場合に対するレーザー処理された第1の系列の試験片の浸透の深さの低減のパーセンテージを示す:
水酸化ナトリウム蒸気での浸透の低減%=100×(第2の対照系列についての浸透の深さ-第1のレーザー処理された系列についての浸透の深さ)/(第2の対照系列についての浸透の深さ)
【0109】
浸出試験2
直径24mm及び長さ100mmの2つの系列の円筒状試験片が、実施例1のベースブロック、すなわちレーザー処理されていないブロック、から得られた。
【0110】
第1の系列の試験片の、下方ベース表面及び部分的な周辺が、レーザー照射に曝露された。従って、周辺について、その下方ベースから出発して各試験片の高さの2/3のみが処理された。
【0111】
第2の系列(対照系列)の試験片は処理されず、対照として保存されなかった。次に、2つの系列の試験片のそれぞれが、炉内に配置され、白金坩堝の上方のキーによって吊るされて、浸出物を収集した。
【0112】
熱処理が、2つの連続的なサイクルを介して炉内で行われた。各サイクルは、1550℃までの温度上昇、空気中、この温度で6時間の維持、引き続き、周囲温度までの冷却で構成された。次に、試験片の初期体積に相対的に浸出された体積パーセンテージが、各試験片について計算された。下記の表1は、浸出物低減のパーセンテージを示す:
浸出物の低減%=100×(浸出された試料対照系列の体積%-浸出された試料の第1の系列の体積%)/(浸出された対照系列の体積%)。
【0113】
融解ガラスによる腐食の試験3
直径20mm及び長さ100mmの2つの系列の円筒状試験片が、実施例4のベースブロック、すなわちレーザー処理されていないブロック、から得られた。
【0114】
第1の系列の試験片の、下方ベース表面及び部分的な周辺が、レーザー照射に曝露された。従って、周辺について、その下方ベースから出発して各試験片の高さの2/3のみが処理された。
【0115】
第2の系列(対照系列)の試験片は処理されず、対照として保存されなかった。次に、2つの系列の試験片のそれぞれが、1500℃で維持されたソーダ石灰ガラスの浴に浸漬された試料を回転させることからなる試験に付された。試料ホルダーの軸の周りの回転速度は、6rpmであった。そのような速度は、腐食界面を非常に頻繁に新しくすることを可能にし、従って該試験を更になお負荷のかかるものにする。該試験は、48時間継続した。
【0116】
この期間の終わりに、各試料について、試料の残りの体積が評価され、そして、次に、この試料の初期体積との相違によって、試験中に失われた体積が評価された。次に、失われた体積のパーセンテージが、失われた体積と初期体積との比を決定することによって計算された。
【0117】
下記の表1は、下記の通り計算された腐食耐性の増大を示す:
腐食耐性の増大=100×(失われた試料の対照系列の体積%-失われた試料の第1の系列の体積%)/(失われた対照系列の体積%)
【0118】
このパーセンテージの変化は、レーザー処理されていない試験片に対する、レーザー処理された試験片の腐食耐性の改善を測定する。
【0119】
【0120】
該表1は、同じ組成の比較ブロックに対する、本発明に従うブロックの有意な改善を示す。
【0121】
実施例4で行われた融解ガラスとの接触に対する腐食の試験は、非常に高い含量のZrO2を含むブロックの性能を増大することが更に可能であることを示す。
【0122】
今明らかにされている通り、本発明は、融解ガラス蒸気による腐食に対する、より良好な耐性、及びより少ない浸出を与える為に、10質量%超のZrO2を含む溶融された耐火性製品を保護することを可能にする。
【0123】
言うまでもなく、本発明は、詳細に記述され且つ図に示される実施態様に限定するものでなく、例示を目的に提示される。
【0124】
驚くべきことに、本発明者等はまた、工程a)及び工程b)が、ベース製品の表面の空洞、特に優先的腐食の部位に存在しうる亀裂又はクレーター、を塞ぐことを可能にすることを発見した。
【0125】
一つの実施態様において、該処理されるべき表面は連続的に延在せず、すなわち途切れないように、上記空洞の縁から10mm、5mm、又は3mmの距離を越えて延在しない。
図9Aにおいて、該空洞は、亀裂20の形にある。
【0126】
図9Bは、処理される3つの円盤状表面22を示し、これら円盤状表面は、亀裂20に沿って延在する。
【0127】
一つの実施態様において、該空洞は実質的に、該処理されるべき表面の中心である。
【0128】
一つの実施態様において、
該空洞の長さは、少なくとも1cmであり、又はベースブロックの長さよりも10%大きく;及び/又は
該空洞の深さは好ましくは、1cm未満である;及び/又は
該空洞の幅は、100μmよりも大きく、及び/又は1000μm未満であり;
該空洞の長さ及び幅は、該処理されるべき表面上のその穴(aperture)の長さ及び幅である。
【0129】
図9A及び
図9Bに示されている通り、該空洞は、上記保護層の材料の同一の材料で塞がれる。従って、この材料は、この保護層の特徴の1つ以上を含みうる。
【0130】
有利には、該塞ぐことは、いかなる追加の欠陥も創出しない。従って、本発明は、ベース製品の局所修復を可能にする。