(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】衣類の乾燥方法及び当該方法を応用する衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
D06F 33/52 20200101AFI20230410BHJP
【FI】
D06F33/52
(21)【出願番号】P 2021506740
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2019098391
(87)【国際公開番号】W WO2020029834
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】201810910674.3
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514114622
【氏名又は名称】青島海爾滾筒洗衣机有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520148792
【氏名又は名称】海爾智家股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAIER SMART HOME CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Haier Road, Laoshan District Qingdao, Shandong 266101 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】張立君
(72)【発明者】
【氏名】徐永洪
(72)【発明者】
【氏名】史海兵
(72)【発明者】
【氏名】黄世坤
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/206988(WO,A1)
【文献】特開2000-051578(JP,A)
【文献】特開平06-031098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の乾燥方法であって、
衣類処理装置は、衣類負荷に基づき、回転槽が乾燥時間内に間欠的に回転停止及び加速起動するよう制御することで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させ、
同時に、衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づき、循環風の熱量供給を制御することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持させ、
衣類処理装置は、衣類負荷に基づき乾燥時間を選択し、乾燥時間内において、回転槽が高速段階、回転停止段階及び加速起動段階を順番に繰り返し実行するよう制御することで、乾燥時間内における回転槽の間欠的な回転停止及び加速起動を実現し、
衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、吸気口及び/又は排気口の温度が閾値範囲を超えた場合、加熱部材を調節することで回転槽内の循環風の熱量供給を増加又は減少させ、
衣類処理装置は、回転槽の回転停止段階及び加速起動段階では、所定の乾燥温度を低下させるとともに、これに応じて、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させ、回転槽が高速段階に入ると、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を元に戻すことで、衣類を捌いてほぐす過程での乾燥効果を確実に保証することを特徴とする方法。
【請求項2】
回転槽は、高速段階では第1回転速度で稼働し、回転停止段階では静止を維持し、回転停止後の加速起動段階では第2回転速度と第3回転速度で順に稼働し、回転槽が第1回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上であり、第2及び第3回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上であり、第3回転速度は第2回転速度の設定以上であることを特徴とする請求項1に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項3】
前記加速起動段階では、回転槽が静止状態から第2回転速度で少なくとも1回回転し、衣類を捌いてほぐしたあとに回転を停止してから、第3回転速度で回転しつつ、加速度aで回転槽を第3回転速度から第1回転速度まで上昇させることで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させ、
回転槽が高速段階において第1回転速度で稼働する際、回転により発生する遠心力が衣類の重力以上となることで、衣類と回転する回転槽の内壁との間に相対運動を存在させないことを特徴とする請求項
2に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項4】
回転槽の第1回転速度時、第2回転速度時及び第3回転速度時の回転方向は同じ又は異なっており、
回転槽の第1回転速度時の回転方向と第2回転速度時の回転方向は同じ又は逆方向であり、回転槽の第1回転速度時と第3回転速度時の回転方向は同じであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項5】
衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づき加熱部材をそれぞれ調節し、回転槽内に供給する循環風の熱量を変更することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項6】
排気口における温度の閾値の上限は所定の乾燥温度以下
であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項7】
具体的に、
S1:乾燥を開始し、
S2:衣類負荷を検出したあと、ステップS3を実行し、
S3:衣類負荷に基づいて、乾燥時間、所定の乾燥温度、吸気口及び排気口の温度の閾値を設定し、乾燥時間内における回転槽の高速段階、回転停止段階及び加速起動段階の稼働周期を決定したあと、ステップS4を実行し、
S4:乾燥時間に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS11を実行し、達していない場合にはステップS5を実行し、
S5:排気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9を実行し、達していない場合にはステップS6を実行し、
S6:排気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10を実行し、低くない場合にはステップS9を実行し、
S7:吸気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9’を実行し、達していない場合にはステップS8を実行し、
S8:吸気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10’を実行し、低くない場合にはステップS9’を実行し、
S9:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS6を実行し、
S9’:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS8を実行し、
S10:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS7を実行し、
S10’:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS4を実行し、
S11:回転槽を停止して衣類を冷却したあと、ステップS12を実行し、
S12:乾燥を終了する、
とのステップを含むことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項8】
ステップS4とS5の間に、更に、
S41:回転槽が回転停止段階又は加速起動段階であるか否かを判断し、そうである場合にはステップS42を実行し、そうでない場合にはステップS5を実行し、
S42:所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させたあと、ステップS5を実行する、
とのステップを含むことを特徴とする請求項
7に記載の衣類の乾燥方法。
【請求項9】
乾燥機能を備えた衣類処理装置であって、
上記請求項1~
8のいずれか1項に記載の衣類の乾燥方法を応用することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機能を有する衣類処理の技術分野に関し、具体的には、衣類の乾燥方法及び当該方法を応用する衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場に存在する大多数の衣類処理装置は乾燥原理が似通っており、いずれも加熱部材によって空気を加熱し、加熱した空気をファンにより槽内に導入する。槽内の衣類が熱を受けると、水分は蒸発して高温・高湿の蒸気となる。蒸気は、交換器内で冷媒と直接又は間接的に接触することで凝結し、凝縮水となって交換器の内壁沿いに流れ出す。
【0003】
湿気の多い高温環境及び洗浄剤の作用によって、ウール繊維又は織物のスケールは広がって行くが、これと同時に摩擦や押圧が繰り返し加わると、絡み合った繊維が決まった方向への摩擦の作用で一定の方向にゆっくりと動いて行く。その結果、ウール繊維は み合ってフェルト状となり、ウール織物は縮んで密着する。これが、一般的に言われる水による収縮である。また、乾燥温度が高い場合には、摩擦状態下で収縮が加速する。
【0004】
従来の乾燥機能を備えた衣類処理装置では、織物が乾燥過程で長時間にわたり積層状態となるため、乾燥の均一度が相対的に劣る。また、これにより織物の表面温度が高温となり、収縮現象が顕著となる。
【0005】
上記に鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、衣類負荷に基づいて回転槽の回転時間、回転速度及び周期を調整するとともに、リアルタイムで取得した温度に基づき乾燥温度を調整する衣類の乾燥方法及び当該方法を応用する衣類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明で採用する技術方案の基本思想は以下の通りである。
【0008】
本発明は、衣類の乾燥方法を提供する。当該方法は、以下を含む。即ち、衣類処理装置は、衣類負荷に基づき、回転槽が乾燥時間内に間欠的に回転停止及び加速起動するよう制御することで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させる。同時に、衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づき、循環風の熱量供給を制御することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0009】
上記の方法では、衣類負荷に基づいて回転槽の回転速度と回転周期を調整する。これは、織物同士の摩擦や、織物と回転槽壁との摩擦を減少させるためである。回転槽の回転速度を設定することで、ウール織物を均一に槽壁に密着させられるため、ウール織物と回転槽との間に相対的な摩擦は存在しなくなる。且つ、ウール織物が広がった状態となるため、乾燥にいっそう有利となる。また、リアルタイムで検出される排気口の温度は衣類表面の乾燥温度に最も近似している。そのため、ウール織物のフェルト状収縮が高温により加速されないよう、吸気口及び排気口の温度を利用して循環風の熱量供給を制御することで、織物を乾燥過程の全般にわたり比較的安定した温度区間に位置させて、ウール織物に収縮が生じないよう制御する。
【0010】
上記の方法によれば、衣類処理装置は、衣類負荷に基づき乾燥時間を選択し、乾燥時間内において、回転槽が高速段階、回転停止段階及び加速起動段階を順番に繰り返し実行するよう制御する。これにより、乾燥時間内における回転槽の間欠的な回転停止及び加速起動を実現する。回転槽は、高速段階では第1回転速度で稼働し、回転停止段階では静止を維持する。また、回転停止後の加速起動段階では、第2回転速度と第3回転速度で順に稼働する。回転槽が第1回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上である。また、第2及び第3回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上であり、第3回転速度は第2回転速度の設定以上である。
【0011】
上記の方法において、回転槽は、遠心力が衣類の重力よりも大きい第1回転速度下で、衣類を回転槽の内壁に密着させることで、衣類と回転槽との相対運動に伴う摩擦及び摩耗を防止可能である。しかし、衣類が多い場合には、槽壁に密着する過程で衣類が積層し、乾燥効果に支障をきたす。そこで、衣類の積層により乾燥の均一度が低下するとの事態を防止するために、回転槽は一定時間稼働したあと、回転を停止して一定時間静止する。そして、再び起動することで、均一に分布させた衣類を改めて内槽壁に密着させる。これにより、衣類同士の積層を防止可能であるほか、織物の各部位を広げることができるため、乾燥の均一度が向上する。
【0012】
上記の方法によれば、前記加速起動段階では、回転槽が静止状態から第2回転速度で少なくとも1回回転し、衣類を捌いてほぐしたあとに回転を停止する。次に、第3回転速度で回転しつつ、加速度aで回転槽を第3回転速度から第1回転速度まで上昇させることで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させる。好ましくは、回転槽が高速段階において第1回転速度で稼働する際、回転により発生する遠心力が衣類の重力以上となることで、衣類と回転する回転槽の内壁との間に相対運動を存在させない。
【0013】
上記の方法において、ウール衣類をいっそう平坦に内槽壁上に広げるために、本発明では、回転槽を加速起動する際の回転速度を上昇させる方案を更に含む。回転槽が静止状態から起動する際、モータは、まず比較的低い第2回転速度で少なくとも1回回転することで衣類を捌いてほぐす。その後、第3回転速度で稼働し、捌いてほぐした衣類を徐々に槽壁に密着させつつ、比較的大きな加速度aで短時間のうちに第1回転速度まで上昇させる。これにより、均一に分布させた衣類を比較的大きな力で槽壁に振り飛ばし、槽壁との密着を維持する。
【0014】
上記の方法によれば、回転槽の第1回転速度時、第2回転速度時及び第3回転速度時の回転方向は同じ又は異なっている。好ましくは、回転槽の第1回転速度時の回転方向と第2回転速度時の回転方向は同じ又は逆方向であり、回転槽の第1回転速度時と第3回転速度時の回転方向は同じである。
【0015】
上記の方法では、第1、第2、第3回転速度時の回転槽の回転方向を調整する。これにより、捌いたり均一に分布させたりする際の効果をいっそう向上させられる。また、第1回転速度下で回転する衣類が槽壁に分離不可能に密着している際に、逆方向の低速の回転を採用することで、衣類を槽壁から効果的に分離させられる。
【0016】
上記の方法によれば、衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づいて加熱部材を調節し、回転槽内に供給する循環風の熱量を変更することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0017】
上記の方法によれば、衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、吸気口及び/又は排気口の温度が閾値範囲を超えた場合、加熱部材を調節することで回転槽内の循環風の熱量供給を増加又は減少させる。好ましくは、排気口における温度の閾値の上限は所定の乾燥温度以下であり、より好ましくは、排気口における温度の閾値範囲は吸気口よりも小さい。
【0018】
上記の方法において、衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、リアルタイムで吸気口及び排気口の温度を監視測定する。そして、吸気口及び/又は排気口が閾値の上限を超えるか、閾値の下限を下回った場合、加熱部材を調節して回転槽内の乾燥循環風の熱量供給を変更することで、衣類の表面温度をそれ以上上昇させないよう、所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0019】
上記の方法によれば、衣類処理装置は、回転槽の回転停止段階及び加速起動段階では、所定の乾燥温度を低下させるとともに、これに応じて、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させる。そして、回転槽が高速段階に入ると、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を元に戻す。これにより、衣類を捌いてほぐす過程での乾燥効果を確実に保証する。
【0020】
上記の方法では、回転槽が第1回転速度から減速して回転を停止し、再び加速起動する期間に衣類が捌かれてほぐされ、回転槽内に分布する。この期間は、第1回転速度時の壁と密着している期間と比較して、衣類の占有体積が大きくなり、循環風を受ける面積も増大する。従って、このときには、回転槽に吹き付けられる循環乾燥風によって衣類にいっそう多くの熱量がもたらされ、衣類の表面温度と排気口の温度が上昇する。よって、この過程では、所定の乾燥温度を適切に低下させるとともに、これに応じて、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させることで、当該過程で衣類の表面温度があまりにも急速に上昇し、フェルト状に収縮するとの現象を防止する必要がある。
【0021】
上記の方法によれば、具体的に以下のステップを含む。
【0022】
S1:乾燥を開始する。
【0023】
S2:衣類負荷を検出したあと、ステップS3を実行する。
【0024】
S3:衣類負荷に基づいて、乾燥時間、所定の乾燥温度、吸気口及び排気口の温度の閾値を設定し、乾燥時間内における回転槽の高速段階、回転停止段階及び加速起動段階の稼働周期を決定したあと、ステップS4を実行する。
【0025】
S4:乾燥時間に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS11を実行し、達していない場合にはステップS5を実行する。
【0026】
S5:排気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9を実行し、達していない場合にはステップS6を実行する。
【0027】
S6:排気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10を実行し、低くない場合にはステップS9を実行する。
【0028】
S7:吸気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9’を実行し、達していない場合にはステップS8を実行する。
【0029】
S8:吸気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10’を実行し、低くない場合にはステップS9’を実行する。
【0030】
S9:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS6を実行する。
【0031】
S9’:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS8を実行する。
【0032】
S10:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS7を実行する。
【0033】
S10’:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS4を実行する。
【0034】
S11:回転槽を停止して衣類を冷却したあと、ステップS12を実行する。
【0035】
S12:乾燥を終了する。
【0036】
上記の方法によれば、ステップS4とS5の間に更に以下を含む。
【0037】
S41:回転槽が段階又は加速起動段階であるか否かを判断し、そうである場合にはステップS42を実行し、そうでない場合にはステップS5を実行する。
【0038】
S42:所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させたあと、ステップS5を実行する。
【0039】
本発明は、更に、上記の衣類の乾燥方法を応用する乾燥機能を備えた衣類処理装置を提供する。上記の乾燥機能を備えた衣類処理装置は、特に、衣類乾燥機、洗濯乾燥一体機に関し、高温消毒機能や加湿機能を兼ね備えた衣類処理装置としてもよい。
【発明の効果】
【0040】
上記の技術方案を用いることで、本発明は従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0041】
1.本発明で提供する衣類の乾燥方法では、ウール衣類の摩擦及び摩耗を減少させることを前提に、乾燥の均一度を向上させ、乾燥過程における衣類の積層を防止する。
【0042】
2.本発明で提供する衣類の乾燥方法では、循環風の熱量供給を変更することで、ウール衣類の表面温度を効果的に制御して、高温によるフェルト状収縮現象の加速を防止する。
【0043】
3.本発明で提供する衣類の乾燥方法では、衣類を捌いてほぐす過程で、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を適切に低下させることで、体積が増大した衣類が循環乾燥風の影響を受けてあまりにも急速に温度上昇するとの事態を防止する。
【0044】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に述べる。
【0045】
図面は本発明の一部として本発明の更なる理解のために用いられる。また、本発明の概略的実施例及びその説明は本発明の解釈のために用いられるが、本発明を不当に限定するものではない。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1における方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1における回転速度と、吸気口及び排気口の温度の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1における回転速度の変化の詳細を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2における方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例2における回転速度の変化の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
説明すべき点として、これらの図面及び文字記載は何らかの方式で本発明の構想の範囲を制限するとの意図ではなく、特定の実施例を参照して当業者に本発明の概念を説明するためのものである。
【0048】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下では、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0049】
本発明の記載において、説明すべき点として、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0050】
本発明の記載において、説明すべき点として、別途明確に規定及び限定しない限り、「装着する」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体的な接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。更には、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【実施例1】
【0051】
本実施例では、
図1~
図2に示すように、以下を含む衣類の乾燥方法を提供する。即ち、衣類処理装置は、衣類負荷に基づき、回転槽が乾燥時間内に間欠的に回転停止及び加速起動するよう制御することで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させる。同時に、衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づき、循環風の熱量供給を制御することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0052】
本実施例では、衣類負荷に基づいて回転槽の回転速度と回転周期を調整する。これは、織物同士の摩擦や、織物と回転槽壁との摩擦を減少させるためである。回転槽の回転速度を設定することで、ウール織物を均一に槽壁に密着させられるため、ウール織物と回転槽との間に相対的な摩擦は存在しなくなる。且つ、ウール織物が広がった状態となるため、乾燥にいっそう有利となる。また、リアルタイムで検出される排気口の温度は衣類表面の乾燥温度に最も近似している。そのため、ウール織物のフェルト状収縮が高温により加速されないよう、吸気口及び排気口の温度を利用して循環風の熱量供給を制御することで、織物を乾燥過程の全般にわたり比較的安定した温度区間に位置させて、ウール織物に収縮が生じないよう制御する。
【0053】
本実施例において、衣類処理装置は、衣類負荷に基づき乾燥時間を選択し、乾燥時間内において、回転槽が高速段階、回転停止段階及び加速起動段階を順番に繰り返し実行するよう制御する。これにより、乾燥時間内における回転槽の間欠的な回転停止及び加速起動を実現する。回転槽は、高速段階では第1回転速度で稼働し、回転停止段階では静止を維持する。また、回転停止後の加速起動段階では、第2回転速度と第3回転速度で順に稼働する。回転槽が第1回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上である。また、第2及び第3回転速度の際に発生する遠心力は衣類の重力以上であり、第3回転速度は第2回転速度の設定以上である。
【0054】
本実施例において、回転槽は、遠心力が衣類の重力よりも大きい第1回転速度下で、衣類を回転槽の内壁に密着させることで、衣類と回転槽との相対運動に伴う摩擦及び摩耗を防止可能である。しかし、衣類が多い場合には、槽壁に密着する過程で衣類が積層し、乾燥効果に支障をきたす。そこで、衣類の積層により乾燥の均一度が低下するとの事態を防止するために、回転槽は一定時間稼働したあと、回転を停止して一定時間静止する。そして、再び起動することで、均一に分布させた衣類を改めて内槽壁に密着させる。これにより、衣類同士の積層を防止可能であるほか、織物の各部位を広げることができるため、乾燥の均一度が向上する。
【0055】
本実施例において、前記加速起動段階では、回転槽が静止状態から第2回転速度で少なくとも1回回転し、衣類を捌いてほぐしたあとに回転を停止する。次に、第3回転速度で回転しつつ、加速度aで回転槽を第3回転速度から第1回転速度まで上昇させることで、衣類を回転槽の内壁に均一に分布させる。好ましくは、回転槽が高速段階において第1回転速度で稼働する際、回転により発生する遠心力が衣類の重力以上となることで、衣類と回転する回転槽の内壁との間に相対運動を存在させない。
【0056】
本実施例において、ウール衣類をいっそう平坦に内槽壁上に広げるために、本発明では、回転槽を加速起動する際の回転速度を上昇させる方案を更に含む。回転槽が静止状態から起動する際、モータは、まず比較的低い第2回転速度で少なくとも1回回転することで衣類を捌いてほぐす。その後、第3回転速度で稼働し、捌いてほぐした衣類を徐々に槽壁に密着させつつ、比較的大きな加速度aで短時間のうちに第1回転速度まで上昇させる。これにより、均一に分布させた衣類を比較的大きな力で槽壁に振り飛ばし、槽壁との密着を維持する。
【0057】
本実施例では、
図3に示すように、回転槽の第1回転速度時の回転方向と第2回転速度時の回転方向は逆方向であり、回転槽の第1回転速度時と第3回転速度時の回転方向は同じである。
【0058】
本実施例では、第1、第2、第3回転速度時の回転槽の回転方向を調整する。これにより、捌いたり均一に分布させたりする際の効果をいっそう向上させられる。また、第1回転速度下で回転する衣類が槽壁に分離不可能に密着している際に、逆方向の低速の回転を採用することで、衣類を槽壁から効果的に分離させられる。
【0059】
本実施例において、衣類処理装置は、回転槽の吸気口及び排気口の温度に基づいて加熱部材を調節し、回転槽内に供給する循環風の熱量を変更することで、衣類の表面温度を所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0060】
本実施例において、衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、吸気口及び/又は排気口の温度が閾値範囲を超えた場合、加熱部材を調節することで回転槽内の循環風の熱量供給を増加又は減少させる。
【0061】
本実施例において、衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、リアルタイムで吸気口及び排気口の温度を監視測定する。そして、吸気口及び/又は排気口が閾値の上限を超えるか、閾値の下限を下回った場合、加熱部材を調節して回転槽内の乾燥循環風の熱量供給を変更することで、衣類の表面温度をそれ以上上昇させないよう、所定の乾燥温度と同等に維持する。
【0062】
本実施例において、前記衣類の乾燥方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0063】
S1:乾燥を開始する。
【0064】
S2:衣類負荷を検出したあと、ステップS3を実行する。
【0065】
S3:衣類負荷に基づいて、乾燥時間、所定の乾燥温度、吸気口及び排気口の温度の閾値を設定し、乾燥時間内における回転槽の高速段階、回転停止段階及び加速起動段階の稼働周期を決定したあと、ステップS4を実行する。
【0066】
S4:乾燥時間に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS11を実行し、達していない場合にはステップS5を実行する。
【0067】
S5:排気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9を実行し、達していない場合にはステップS6を実行する。
【0068】
S6:排気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10を実行し、低くない場合にはステップS9を実行する。
【0069】
S7:吸気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9’を実行し、達していない場合にはステップS8を実行する。
【0070】
S8:吸気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10’を実行し、低くない場合にはステップS9’を実行する。
【0071】
S9:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS6を実行する。
【0072】
S9’:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS8を実行する。
【0073】
S10:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS7を実行する。
【0074】
S10’:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS4を実行する。
【0075】
S11:回転槽を停止して衣類を冷却したあと、ステップS12を実行する。
【0076】
S12:乾燥を終了する。
【0077】
本実施例は、更に、上記の衣類の乾燥方法を応用する乾燥機能を備えた衣類処理装置を提供する。上記の乾燥機能を備えた衣類処理装置は、特に、衣類乾燥機、洗濯乾燥一体機に関し、高温消毒機能や加湿機能を兼ね備えた衣類処理装置としてもよい。
【実施例2】
【0078】
図4に示すように、本実施例は実施例1と以下の点において異なる。
【0079】
本実施例では、
図5に示すように、回転槽の第1回転速度時の回転方向と第2回転速度時の回転方向が同じであり、回転槽の第1回転速度時と第3回転速度時の回転方向が同じである。
【0080】
本実施例では、第1、第2、第3回転速度時の回転槽の回転方向を調整する。これにより、捌いたり均一に分布させたりする際の効果をいっそう向上させられる。
【0081】
本実施例において、衣類処理装置は、衣類負荷に基づいて、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を取得するとともに、吸気口及び/又は排気口の温度が閾値範囲を超えた場合、加熱部材を調節することで回転槽内の循環風の熱量供給を増加又は減少させる。排気口における温度の閾値の上限は所定の乾燥温度以下であり、排気口における温度の閾値範囲は吸気口よりも小さい。
【0082】
本実施例において、衣類処理装置は、回転槽の回転停止段階及び加速起動段階では、所定の乾燥温度を低下させるとともに、これに応じて、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させる。そして、回転槽が高速段階に入ると、所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口の温度の閾値を元に戻す。これにより、衣類を捌いてほぐす過程での乾燥効果を確実に保証する。
【0083】
本実施例では、回転槽が第1回転速度から減速して回転を停止し、再び加速起動する期間に衣類が捌かれてほぐされ、回転槽内に分布する。この期間は、第1回転速度時の壁と密着している期間と比較して、衣類の占有体積が大きくなり、循環風を受ける面積も増大する。従って、このときには、回転槽に吹き付けられる循環乾燥風によって衣類にいっそう多くの熱量がもたらされ、衣類の表面温度と排気口の温度が上昇する。よって、この過程では、所定の乾燥温度を適切に低下させるとともに、これに応じて、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させることで、当該過程で衣類の表面温度があまりにも急速に上昇し、フェルト状に収縮するとの現象を防止する必要がある。
【0084】
本実施例において、前記衣類の乾燥方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0085】
S1:乾燥を開始する。
【0086】
S2:衣類負荷を検出したあと、ステップS3を実行する。
【0087】
S3:衣類負荷に基づいて、乾燥時間、所定の乾燥温度、吸気口及び排気口の温度の閾値を設定し、乾燥時間内における回転槽の高速段階、回転停止段階及び加速起動段階の稼働周期を決定したあと、ステップS4を実行する。
【0088】
S4:乾燥時間に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS11を実行し、達していない場合にはステップS41を実行する。
【0089】
S41:回転槽が回転停止段階又は加速起動段階であるか否かを判断し、そうである場合にはステップS42を実行し、そうでない場合にはステップS5を実行する。
【0090】
S42:所定の乾燥温度と、吸気口及び排気口における温度の閾値の上下限を低下させたあと、ステップS5を実行する。
【0091】
S5:排気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9を実行し、達していない場合にはステップS6を実行する。
【0092】
S6:排気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10を実行し、低くない場合にはステップS9を実行する。
【0093】
S7:吸気口の温度が閾値の上限に達したか否かを判断し、達した場合にはステップS9’を実行し、達していない場合にはステップS8を実行する。
【0094】
S8:吸気口の温度が閾値の下限よりも低いか否かを判断し、低い場合にはステップS10’を実行し、低くない場合にはステップS9’を実行する。
【0095】
S9:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS6を実行する。
【0096】
S9’:加熱部材の熱量供給を低下させたあと、ステップS8を実行する。
【0097】
S10:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS7を実行する。
【0098】
S10’:加熱部材の熱量供給を上昇させたあと、ステップS4を実行する。
【0099】
S11:回転槽を停止して衣類を冷却したあと、ステップS12を実行する。
【0100】
S12:乾燥を終了する。
【0101】
本実施例は、更に、上記の衣類の乾燥方法を応用する乾燥機能を備えた衣類処理装置を提供する。上記の乾燥機能を備えた衣類処理装置は、特に、衣類乾燥機、洗濯乾燥一体機に関し、高温消毒機能や加湿機能を兼ね備えた衣類処理装置としてもよい。
【0102】
本実施例におけるその他の実施形態は、実施例1と同様である。
【0103】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に制限するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて実施可能なわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされ、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる任意の簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲に属する。