(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】電磁波で動作する距離センサをテストするためのテストベンチ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
G01S7/40 195
G01S7/40 186
(21)【出願番号】P 2021535882
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086697
(87)【国際公開番号】W WO2020127984
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】102018133521.0
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ベルネック
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ローヘーフェナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタリ アンゼルム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ローツマン
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021026(JP,A)
【文献】特表2007-517275(JP,A)
【文献】特開2005-114698(JP,A)
【文献】特開2010-048673(JP,A)
【文献】特開2017-227616(JP,A)
【文献】特開2018-031652(JP,A)
【文献】特開2000-206230(JP,A)
【文献】特開2001-183452(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0932383(KR,B1)
【文献】石井 望 他,アンテナ放射電力測定法に関する国内研究動向,電子情報通信学会論文誌,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年05月01日,第J95-B巻 第5号,Pages: 607-617,ISSN: 1344-4697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/51
13/00 - 13/95
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波で動作する距離センサ(2)をテストするためのテストベンチ(1)であって、テスト対象の前記距離センサ(2)は、少なくとも1つの送信信号(4)を放射するセンサ放射素子(3a)と、反射信号を受信するセンサ受信素子(3b)と、を有し、前記テストベンチ(1)は、テスト対象の前記距離センサ(2)を保持する収容部(5)と、前記収容部(5)に保持された距離センサ(2)の放射領域における少なくとも部分的に可動の接続部材(6、6m、6s)と、前記センサ放射素子(3a)によって放射された送信信号(4)を受信する、前記接続部材(6、6m、6s)に保持された少なくとも1つのテストベンチ受信素子(7)と、シミュレートされた反射信号として、テストベンチ送信信号(9)を放射する、前記接続部材(6)に保持された少なくとも1つのテストベンチ放射素子(8)と、を有するテストベンチ(1)において、
少なくとも1つのテストベンチ受信素子(7、7a、7b)とテストベンチ放射素子(8、8a、8b)とは、一緒に前記接続部材(6)の可動部分(6m)に配置されて
おり、
前記接続部材(6)および/または前記接続部材(6)の前記可動部分(6m)は、円環状の要素として形成されており、
円環状の前記要素は、駆動ローラ(11a、11b、11c)および歯付きベルト(12a、12b、12c)を介して駆動部(10)によって駆動されかつ移動される、
テストベンチ(1)。
【請求項2】
前記接続部材(6)の複数の異なる可動部分(6m)には、少なくともそれぞれ1つのテストベンチ受信素子(7a、7b)と少なくともそれぞれ1つのテストベンチ放射素子(8a、8b)とが、一緒に配置されている、
請求項1記載のテストベンチ(1)。
【請求項3】
前記接続部材(6)の可動部分(6m)に一緒に配置される前記テストベンチ受信素子(7a、7b)および前記テストベンチ放射素子(8a、8b)は、同一のテストベンチ受信および放射素子(7a、8a;7b、8b)として、特にレーダ波用の共通のアンテナとして、特に可視スペクトルにおける電磁波用の共通の光学素子として、特に共通のレーザ受信および送信素子として構成されている、
請求項1または2記載のテストベンチ(1)。
【請求項4】
前記接続部材(6)の可動部分(6m)に一緒に配置されている前記テストベンチ受信素子(7a、7b)と前記テストベンチ放射素子(8a、8b)とは、互いに隣接して、別体のテストベンチ受信素子(7a、7b)として、また別体のテストベンチ放射素子(8a、8b)として、特にレーダ波用の別体のアンテナとして、特に可視スペクトルにおける電磁波用の別体の光学素子として、特に別体のレーザ受信素子およびレーザ送信素子として配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【請求項5】
前記要素は、テスト対象の前記距離センサ(2)の収容部(5)に向かって凹に開いており、特に、前記接続部材(6)の前記可動部分(6m)は
、その円環形状
部に沿って可動に支承されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【請求項6】
前記接続部材(6)は、上下に重ね合わされかつ互いに可動
な円環
状の要素として構成されている複数の可動部分(6m)を有し、特に前記接続部材の複数の前記可動部分は、共通の、特に物体でない回転軸を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【請求項7】
テストベンチ受信素子(7)およびテストベンチ放射素子(8)が保持されない領域において、前記接続部材(6)は、使用される電磁ビームに対する吸収材料(13)で覆われているか、またはこのような材料から構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【請求項8】
反射シミュレータ(14)が含まれており、前記反射シミュレータ(14)は、前記接続部材(6)の可動部分(6m)に一緒に配置されている少なくとも1つのテストベンチ受信素子(7)および少なくとも1つのテストベンチ放射素子(8)に信号技術的に接続されており、前記反射シミュレータ(14)は、テスト対象の前記距離センサ(2)によって放射された前記送信信号(4)を、前記テストベンチ受信素子(7)を介して受信し、シミュレートされた周囲対象体(15)の供給された位置情報および運動情報(x
i;v
i;a
i)に基づいて、対応するテストベンチ送信信号(9)を生成し、前記テストベンチ放射素子(8a、8b;8c)を介して、テスト対象の前記距離センサ(2)の方向に放射するように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【請求項9】
前記テストベンチ受信素子(7)および/または前記テストベンチ放射素子(8)は、多芯ケーブル(16)を介して前記反射シミュレータ(14)に接続されており、1つの導体もしくは導体対は、前記テストベンチ受信素子(7)および/または前記テストベンチ放射素子(8)のエネルギ供給に使用され、1つの導体は、受信される、前記テスト対象の前記距離センサ(2)からの前記送信信号(4)を周波数的にダウンコンバージョンするために、また前記反射シミュレータ(14)によってシミュレートされた低周波の反射信号を周波数的にアップコンバージョンするために、前記反射シミュレータ(14)から前記テストベンチ受信素子(7)に発振器信号を伝送するために使用され、1つの導体は、前記テストベンチ受信素子(7)において受信されてアップコンバージョンされた、テスト対象の前記距離センサ(2)の送信信号を前記反射シミュレータ(14)に伝送するか、もしくは前記反射シミュレータ(14)によってシミュレートされて生成された低周波の前記反射信
号を前記反射シミュレータ(14)から前記テストベンチ放射素子(8)に伝送するために使用される、
請求項8記載のテストベンチ(1)。
【請求項10】
前記反射シミュレータ(14)は、周囲環境シミュレータ(17)に信号技術的に接続されており、前記反射シミュレータ(14)は、前記周囲環境シミュレータ(17)から、前記接続部材(6)の可動部分(6m)に一緒に配置されているテストベンチ受信素子(7a、7b)とテストベンチ放射素子(8a、8b)とから成るそれぞれの機能対について、シミュレートされた周囲対象体(15)の位置情報および運動情報(x
i、w
i、a
i)を受け取る、
請求項8または9記載のテストベンチ(1)。
【請求項11】
テストベンチ受信素子(7a、7b)とテストベンチ放射素子(8a、8b)とから成る機能対(7a、8a;7b、8b)の
前記駆動部(10)は、周囲環境シミュレータ(17)に信号技術的に接続されており、前記周囲環境シミュレータ(17)により、テスト対象の距離センサ(2)の、それぞれ対応付けられてシミュレートされる周囲対象体(15)に対する、シミュレートされる相対位置から、テストベンチ受信素子(7a、7b)とテストベンチ放射素子(8a、8b)とから成る機能対(7a、8a;7b、8b)の位置情報および運動情報が計算され、計算された前記位置情報および運動情報を実現するために駆動部が相応に駆動制御される、
請求項1から10までのいずれか1項記載のテストベンチ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波で動作する距離センサをテストするためのテストベンチであって、テスト対象の距離センサが、少なくとも1つの送信信号を放射するセンサ放射素子と反射信号を受信するセンサ受信素子とを有するテストベンチに関し、このテストベンチは、テスト対象の距離センサを保持する収容部と、保持部に保持された距離センサの放射領域における少なくとも部分的に可動の接続部材(Kulisse)と、センサ放射素子によって放射された送信信号を受信する、接続部材に保持された少なくとも1つのテストベンチ受信素子と、シミュレートされた反射信号としてテストベンチ送信信号を放射する、接続部材に保持された少なくとも1つのテストベンチ放射要素と、を有する。
【背景技術】
【0002】
上述のテストベンチは、最近、制御装置開発および制御装置テストの分野から(例えば自動車分野において)公知である。この際によくあるテストシナリオの実体は、シミュレートされた環境を用いて、大量生産制御装置の機能をテストすることにある。このために、制御装置の環境が、高性能のシミュレーション環境によってリアルタイムに部分的にまたは完全に計算され、この際にはシミュレーション環境により、制御装置の入力信号である物理信号が生成され、さらにシミュレーション環境は、制御装置によって生成された出力信号を受信してリアルタイムシミュレーションに取り込ませる。制御装置は、このようにしてシミュレートされた周囲環境において、実践的には「真の」条件下で安全にテスト可能である。このテストがどの程度に現実に近いかは、シミュレーション環境の品質の良さと、これに応じて計算されるシミュレーションと、に依存する。すなわち、このようにして制御装置は、閉ループ制御においてテスト可能であり、したがってこのようなテストシナリオは、ハードウェアインザループ(Hardware-in-the-Loop-Tests)とも称される。
【0003】
本願の場合、電磁波で動作する距離センサのテストを対象としている。自動車分野では、レーダセンサがかなり圧倒的に使用されている。しかしながら基本的には、電磁波の別の周波数領域において、例えば可視光の領域において動作する距離センサも、または例えばレーザ応用の場合(例えばライダー)のようにコヒーレンス長の長い電磁波を放射する電磁ビーム源で動作する距離センサもテスト可能である。
【0004】
現代の車両には、車両およびその支援システムに周囲情報を供給するためにますます多くの距離センサが使用されている。例えば、車両周囲における対象体の位置、速度および/または加速度(すなわち位置データおよび運動データ)が特定されるが、多くの距離センサにより、例えば、反射されたビームの強度を考慮して、周囲対象体の反射強度および放射画像も検出可能である。このような周囲情報を使用する支援システムには、例えば、適応型速度制御(ACC:adaptive cruise control)および自律型非常ブレーキシステム(AEB:autonomous emergency breaking)が属する。このような安全関連の支援システムのテストは、細心の注意で行わなければならないことは理解可能であり、この際には電磁波の伝搬特性も可能な限り現実的に則して考慮しなければならない。これは、これまでもっぱら極めてコストがかかりかつ時間コストのかかる実際の走行テストによって行われていた。これらの走行テストは、冒頭で説明した、距離センサをテストするためのテストベンチによってますます置き換えられており、これらのテストベンチでは自由空間波も機能する。これらのようなテストベンチは、OTA(over-the-air)テストベンチとも称され、これらのテストベンチでは、テスト対象の距離センサにより、実際に電磁波が自由空間に、すなわちガイドされず放射され、また自由空間からの電磁波も、シミュレートされた反射信号として受信される。このようなOTAテストベンチの利点は、センサ放射素子とセンサ受信素子とが関与する放射および受信特性を含めた、テスト対象の距離センサとの関連における作用連鎖全体の広範なチェックである。さらに、例えば、バンパーが電磁波にどのように影響を及ぼすかなどのように、テスト対象の距離センサの組み込み状態の影響がチェック可能である。
【0005】
上記の説明からはわかるのは、ここで用語「距離センサ」は、この距離センサが距離特定のためにだけ適していればよいというように制限的に理解すべきでないことであり、この距離センサにより、むしろ周囲対象体の位置パラメータおよび運動パラメータおよび反射特性も特定可能である。テスト対象の距離センサがどのタイプの電磁波を使用しているかとは無関係に、距離センサのテストの際には、本特許出願において信号処理は第一ではないとしても、全体として必要でもある電子信号処理に極めて高い要求が課される。周囲にある対象体の距離は、多くの場合に、放射された電磁波が、対象体に向かい、対象体から距離センサに反射されて戻るのに必要な信号走行時間を介して直接に特定される。周囲にある対象体の速度は、放射された電磁波と反射された電磁波との間の周波数偏移(ドップラー偏移)を介して特定される。実質的に光速で伝搬する電磁波により、この際には極めて短い信号走行時間を分解しなければならない。例えば、1メートルの最小間隔を検出できるようにするためには、ナノ秒範囲で信号走行時間を分解しなければならない。より小さな間隔、すなわち最小間隔の問題とは無関係に、数センチメールの範囲のより小さな間隔を検出しようとする場合、走行時間差をサブナノ秒範囲でも分解できなければならない。
【0006】
テストベンチでは、テスト対象の距離センサによって放射される電磁波が実際には反射されないようにし、むしろ放射された電磁波がテストベンチ受信素子によって受信され、後置された高速の信号処理電子装置、すなわち反射シミュレータにおいて処理され、すなわち走行時間が遅延されて場合によって周波数偏移されるようにする。シミュレートされる周囲対象体に対するシミュレーション対象の距離に依存して、またはテスト対象の距離センサに対する周囲対象体の相対速度に依存して、対応して時間遅延され、かつ/または周波数偏移された信号が、反射シミュレータにおいて生成され、シミュレートされた(すなわち実際のものではない)反射信号として、センサ放射素子を介して、テスト対象の距離センサの方向に再度、放射される。反射シミュレータの構成に応じて、この反射シミュレータは、反射信号の振幅に影響を及ぼすこともでき、これにより、周囲対象体の大きさも模擬可能である。これにより、この距離センサでは、場合によっては、シミュレートされる周囲環境において、異なる距離だけ離れておりかつ異なって移動される複数の異なる対象体をも有する真の周囲環境の印象が生まれる。
【0007】
従来技術から公知のテストベンチ(2017年12月の"Echte Echos im Labor":dSPACE Magazin 2/2017)は、接続部材全体において、特に接続部材の位置固定部分において、センサ放射素子によって放射された送信信号を受信するただ1つのテストベンチ受信素子が、すなわち、対象体周囲環境においていくつの対象をシミュレートすべきかとも無関係に配置されているという特徴を有する。しかしながらこの場合、接続部材の異なる可動部分には複数のテストベンチ放射素子が配置されており、それぞれのテストベンチ放射素子が、対象体周囲環境におけるシミュレート対象の1つの対象体に使用される。
【0008】
従来技術から公知のテストベンチ放射素子は、方位角方向に別々に移動させることが可能であり、すなわち、これにより、テスト対象の距離センサの放射方向により、対象体位置の「左」および「右」をシミュレートすることができる。後置接続された反射シミュレータは、例えば、テストベンチ放射素子によってそれぞれ放射されてシミュレートされる反射信号の適合された信号強度で応答するために、かつ対応する時間遅延および周波数偏移を設定するために、対象体空間内のシミュレート対象の対象体の距離および運動についての情報を有する。
【0009】
本発明によって認識されたのは、特に、テスト対象の距離センサがMIMO(multiple input - multiple output)原理にしたがって動作する場合に困難が生じることである。この新たなタイプの距離センサは、複数のセンサ放射素子および複数のセンサ受信素子を有し、これらの素子は、1つのアレイに接続されておりかつ全体として評価可能であるか、またはさまざまな組み合わせでも一緒になって互いに動作する。これにより、これらのような距離センサは、エコー信号を評価することによって方向推定を行うことができる。従来技術から公知のテストベンチを用いて、このような距離センサに対する信頼性の高い周囲環境シミュレーションは、制限付きでしか可能にならず、テスト対象の距離センサは、状況によっては誤った事態に陥ってしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、MIMO原理で動作する距離センサをテストする場合であっても、より高い信頼性が得られるテストベンチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上で導出された課題は、電磁波で動作する距離センサをテストするための冒頭に述べられたテストベンチにおいて、少なくとも1つのテストベンチ受信素子とテストベンチ放射素子とが一緒に接続部材の可動部分に配置されていることによって解決される。これによって保証されるのは、接続部材の同一の可動部分に配置された、テストベンチの受信素子および放射素子が、一緒に移動され、これにより、テスト対象の距離センサに対して相対的に同等の位置を取ることである。これにより、MIMO原理にしたがって動作する距離センサも、特に、ただ1つの位置固定のテストベンチ受信素子を有するテストベンチに比べて、良好な精度および高い確かさでテストを行うことができる。
【0012】
すなわち、本発明によって識別されたのは、特にMIMO距離センサをテストする際の困難が、以下に理由付けされること、すなわち、テスト対象の距離センサによって放射される電磁波を位置固定で受信する際、波動特性は、この位置固定の位置とは異なる位置において生じる波動特性とは大きく異なり得ること、および実際の物理的な状況をもはや正当に評価することができない、シミュレーションされる反射信号が生成されてしまい、それぞれのテストベンチ放射素子に放射されてしまうことに理由付けされていることである。この問題は、基本的にテストベンチを本発明にしたがって構成することによって取り除くことが可能である。上述の問題は、従来技術から公知のテストベンチにおいて、後置接続された反射シミュレータに、テスト対象の距離センサの動作の仕方についての情報を伝えることによって軽減可能かもしれない。しかしながらこれは、繁雑であり、誤りが起こり易く、またテスト対象の制御装置の動作の仕方を詳細な情報を利用してこれをシミュレーションに取りこませることなく、シミュレート対象の周囲環境を可能な限りに客観的にシミュレートするというテストベンチの意義とは相容れない。本発明によるテストベンチによれば、これは不要である。
【0013】
本発明によるテストベンチの一発展形態では、接続部材の複数の異なる可動部分には、少なくともそれぞれ1つのテストベンチ受信素子と、少なくともそれぞれ1つのテストベンチ放射素子と、が配置されているように構成されている。これにより、接続部材のそれぞれ異なる可動部分により、テスト対象の距離センサについての仮想の対象体空間において、それぞれ1つの異なる対象体がシミュレート可能である。
【0014】
本発明によるテストベンチの一実施形態によればさらに、接続部材の可動部分に一緒に配置されるテストベンチ受信素子およびテストベンチ放射素子は、同一のテストベンチ受信および放射素子として形成されているように構成されている。このことが意味するのは、この同一のテストベンチ受信および放射素子が、距離センサによって放射された送信信号を受信するためにも、シミュレートされた反射信号を放射するためにも使用されることである。特に、この同一のテストベンチ受信および放射素子は、レーダ波用の共通のアンテナとして、可視スペクトルにおける電磁波用の共通の光学素子として、または特に共通のレーザ受信および放射素子として構成されていてよい。このような構成において有意義であるかまたは必要であり得るのは、受信された信号を受信電子装置に供給するか、または反射シミュレータによって生成されてシミュレートされた反射信号をテストベンチ受信および放射素子に供給する信号切換器を、後置接続された反射シミュレータが有することである。
【0015】
別の一実施形態では、接続部材の可動部分に一緒に配置されるテストベンチ受信素子とテストベンチ放射素子とは互いに隣接して、別体のテストベンチ受信素子として、また別体のテストベンチ放射素子として配置されるように構成されている。上述した変形形態と同様に、ここでこれは、レーダ波用の別体のアンテナ、可視光における電磁波用の別体の光学素子、または別体のレーザ受信素子およびレーダ送信素子であってよい。この実施形態では、反射シミュレータの後置接続された電子装置は、必ずしも信号切換器を必要としない。というのは、受信された信号と放射対象のシミュレートされた反射信号とは、異なるチャネルを介して処理可能だからである。説明された2つの変形形態(一体型の実施形態および別体の実施形態)は、1つのテストベンチにおいて一緒に実現することも可能であり、すなわちテストベンチ受信素子およびテストベンチ放射素子から成る異なる機能対において実現することも可能である。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態の特徴は、接続部材および/また接続部材の可動部分が、弓形要素として構成されていることであり、この要素は、テスト対象の距離センサの保持部に向かって凹に開いていることである。特に、接続部材および/または接続部材の可動部分は、円環状または部分円環状に形成可能である。これにより、接続部材および/または接続部材の可動部分は、実践的には接続部材および/または接続部材の可動部分に対する中央位置に設けられるテスト対象の距離センサを取り囲む。しかしながらテスト対象の距離センサは、接続部材の円環状または部分円環状部分において偏心して配置することも可能であるが、距離センサは、テストベンチ素子の作用領域内に設けなければならない。したがって弓形要素は、テスト対象の距離センサの保持部に向かって凹に開いている。特に、接続部材の可動部分は、その弓形に沿って水平方向に(方位角方向に)、可動に支承されるように構成されている。この要素が、円環状または部分円環状に構成されている場合、この要素は、好適にはその円環形状部もしくはその部分円環形状部に沿って移動する。この配置構成において有利であるのは、特に、本発明にしたがってつねに機能対として、接続部材の可動部分に配置されているテストベンチ受信素子およびテストベンチ放射素子はつねに、ほぼテスト対象の距離センサの方向に配向されており、これらを方位角方向に特に案内して配向する必要はない。
【0017】
上述された実施形態の一発展形態では、接続部材は、上下に重ね合わされかつ互いに可動な弓形要素として構成されている複数の可動部分を有し、特に接続部材の複数の可動部分は、共通の回転軸を有する。回転軸は、物体として構成されている必要はなく、むしろ仮想の回転軸であってよい。特に、可動の弓形要素は、円環状または部分円環状に形成されているように構成されている。
【0018】
接続部材の可動部分を弓形要素として形成する際には、特に、ベルト駆動部により、このようにして形成された要素を駆動して移動させることができる。ベルト駆動部は、例えば、それぞれの弓形要素の周囲に案内されかつ張力が付勢された歯付きベルトを有していてよく、電動モータ駆動部が、ベルト駆動部の他方の張力付勢点を形成する。この電動モータ駆動部は、特に、距離センサの後方の領域に配置可能であり、これにより、テスト対象の距離センサと接続部材との間の中間空間には駆動要素がまったくないようにされる。
【0019】
テストベンチの好ましい一実施形態では、テストベンチ受信素子およびテストベンチ放射素子が保持されない領域において、接続部材は、使用される電磁ビームに対する吸収材料で覆われているか、または接続部材は、この領域においてこのような材料から構成されている。この吸収材料は、真の反射信号を阻止するために使用される。テスト対象の距離センサには、それぞれのテストベンチ放射素子によって放射されかつシミュレートされる反射信号だけが加えられるようにする。というのは、シミュレートされるこの反射信号だけが、所望の時間遅延および周波数偏移を有するからである。
【0020】
本発明によるテストベンチの別の一発展形態では、反射シミュレータも含まれており、反射シミュレータは、(共通の機能対を形成しかつ接続部材の可動部分に一緒に配置されている)少なくとも1つのテストベンチ受信素子および少なくとも1つのテストベンチ放射素子に信号技術的に接続されている。この場合に、反射シミュレータは、(上述したように)テスト対象の距離センサによって放射された送信信号を、テストベンチ受信素子を介して受信し、シミュレートされた周囲対象体の供給された位置情報および運動情報に基づいて、対応するシミュレートされたテストベンチ送信信号を生成し、テストベンチ放射素子を介して、テスト対象の距離センサの方向に放射するように構成されている。
【0021】
反射シミュレータを有するテストベンチの構成の別の一発展形態において、テストベンチ受信素子および/またはテストベンチ放射素子は、多芯ケーブルを介して反射シミュレータに接続されている。多芯ケーブルの1つの導体もしくは導体対は、テストベンチ受信素子および/またはテストベンチ放射素子のエネルギ供給に使用される。多芯ケーブルの別の1つの導体は、反射シミュレータからテストベンチ受信素子に発振器信号を伝送するために使用される。発振器信号は、テストベンチ受信素子において、受信されるテスト対象の距離センサからの送信信号を周波数的にダウンコンバージョンするために使用される。択一的または付加的には、伝送される発振器信号は、反射シミュレータによってシミュレートされた低周波の反射信号を周波数的にアップコンバーションするために使用される。多芯ケーブルの別の1つの導体は、テストベンチ受信素子において受信されてアップコンバージョンされた、テスト対象の距離センサの送信信号を反射シミュレータに伝送するか、もしくは反射シミュレータによってシミュレートされて生成された低周波の反射信号を反射シミュレータからテストベンチ放射素子に伝送するために使用される。このような多芯ケーブルを使用することにより、テストベンチ構造が格段に簡略化され、誤りの起こり易さが低減される。別の一実施形態では、多芯ケーブルは、複数のシールドおよび1つの中心導体を有する同軸ケーブルによって置き換えられ、給電電圧、発振器信号ならびに送信信号および受信信号は、同軸ケーブルの中心導体によって導かれる。
【0022】
テストベンチの別の有利な一実施形態では、反射シミュレータは、周囲環境シミュレータに信号技術的に接続されており、これにより、反射シミュレータは、周囲環境シミュレータから、接続部材の可動部分に一緒に配置されているテストベンチ受信素子とテストベンチ放射素子とから成るそれぞれの機能対について、シミュレートされた周囲対象体の位置情報および運動情報を受け取る。これによって反射シミュレータに可能になるのは、距離情報および運動情報にしたがって、受信された距離センサの送信信号を遅延させ、さらに周波数偏移させ、次に再度放射することであり、これにより、所望のシミュレーション作用が達成される。閉ループ制御が使用される事例では、さらに、周囲環境シミュレータとテスト対象の距離センサとの間にも信号技術的に接続があり、これにより、距離センサは、例えばハードウェアインザループシミュレータ(HIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレータ)の形態をした周囲環境シミュレータにフィードバック可能である。距離センサに対するレストバスシミュレーションの目的のためにも、周囲環境センサとテスト対象の距離センサとの間に接続が設けられている。一般に、距離センサの検出アルゴリズムには、例えば実際の自車速度、操舵角などの車両についての情報が必要である。この場合、これらの信号は、周囲環境シミュレータもしくはHILシミュレータから距離センサに送られる。
【0023】
テストベンチの別の一実施形態ではさらに、テストベンチ受信素子とテストベンチ放射素子とから成る機能対の駆動部は、周囲環境シミュレータに信号技術的に接続されているように構成されている。周囲環境シミュレータにより、テスト対象の距離センサの、シミュレートされる周囲対象体に対するシミュレートされる相対位置から、テストベンチ受信素子とテストベンチ放射素子とから成る機能対の位置情報および運動情報が計算される。次に周囲環境シミュレータにより、計算された位置情報および運動情報を実現するために駆動部が相応に駆動制御される。
【0024】
詳細には、独立特許請求項1によるテストベンチを発展させて構成するために種々異なる可能性がある。以下の図面に示された図に関連して、このことを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術から基本的に公知のテストベンチを示す図である。
【
図2】一体型で構成されたテストベンチ受信および放射素子を有する本発明によるテストベンチを示す図である。
【
図3】互いに隣接して配置された別体のテストベンチ受信素子と別体のテストベンチ放射素子とを有する本発明によるテストベンチを示す図である。
【
図4】ベルト駆動部を有する、本発明によるテストベンチを示す図である。
【
図5】反射シミュレータおよび周囲環境シミュレータを有する、本発明によるテストベンチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、基本的に従来技術から公知のテストベンチ1が示されている。テストベンチ1は、電磁波で動作する距離センサ2をテストするために使用される。電磁波は、図において湾曲した波の線によって示されている。テスト対象の距離センサ2は、送信信号4を放射するセンサ放射素子3aと、反射信号を受信するセンサ受信素子3bと、を有する。
【0027】
テストベンチ1はさらに、テスト対象の距離センサ2を保持する収容部5を有する。収容部5とは、テストベンチ1の最適な動作を保証するために、テスト対象の距離センサ2が配置されるべき単なる位置のことと理解される。すなわち、収容部5は、特別な機械的な構成を有する必要はない。
【0028】
距離センサ2は、接続部材6の方向にその送信信号4を放射し、したがって接続部材6は、距離センサ2の放射領域に設けられている。送信信号4は、テストベンチ1において実際には反射されないようにすべきであり、それどころか真の物理的な反射は回避されるべきである。目標はむしろ、接続部材6に保持されたテストベンチ受信素子7によって送信信号4が受信されるようにすることである。次に、受信された送信信号4は、
図1~
図4に図示されておらず、
図5にはじめて略示されている反射シミュレータ14に供給され、そこで特定の設定値にしたがって遅延および変調されて(特に周波数偏移されて)、接続部材6に同様に保持されたテストベンチ放射素子8により、テストベンチ送信信号9として放射される。すなわち、テストベンチ送信信号9は、実際の反射信号ではなく、シミュレートされた反射信号である。
【0029】
図1の概略図の上側部分では、さしあたりテストベンチ受信素子7およびテストベンチ放射素子8a、8bが、接続部材6の共通の部分に保持されているかのように見える。これは実際にはそうではなく、このことは、
図1の下側部分からわかる(ついでに、対応することは、
図2~
図4にも当てはまる)。
図1の下側部分には、テストベンチ1をA方向に見た側面図が示されており、すなわち視線は、距離センサ2から接続部材6の方向に向いている。この図において識別できるのは、接続部材6が、上下に積層された異なる部分から構成されることである。これらの部分は、部分円環である。中央の要素6s(「s」は、「固定」を表す)は、移動しない。接続部材6の可動でない部分6sには、テストベンチ受信素子7が保持されており、これにより、テストベンチ受信素子7も同様に位置固定であり、実践的には、距離センサ2の収容部5に対し、つねに直接に位置決めされている。接続部材6の2つの部分円環6m(「m」は「可動」を表す)は、回動可能に、しかも部分円環状の接続部材6の円周方向に可動に支承されている。この回動は、接続部材6の部分円環6mにおいて、テストベンチ放射素子8aおよび8bの左右の矢印によって示されている。したがってこれらのテストベンチ放射素子8aおよび8bは、テスト対象の距離センサ2の周りで移動可能であり、これにより、テスト対象の距離センサ2に向かって異なる方向から、シミュレートされた反射信号としてテストベンチ送信信号9を放射可能である。このようにしてテスト対象の距離センサ2を基準にして、シミュレートされる周囲環境における異なる対象体を見せかけることができる。
【0030】
冒頭では、従来技術からの上述されたテストベンチにより、方向に依存する放射および/または受信特性を有するテスト対象の距離センサ2をテストすることは状況によっては困難である(例えば、MIMO原理に基づく距離センサを挙げた)ことを説明した。本発明にしたがって識別されたのは、公知のテストベンチにより、特定の状況では、使用されかつ位置が変化し得る波動特性を十分に正確に検出することはできず、この場合にはこれにより、実際の状況にも対応せず、かつ場合によってはテスト対象の距離センサから観点から見ると一貫性のないテストベンチ送信信号が生じてしまうかもしくは生成されてしまうことにこの問題が関連していることである。
【0031】
図2~
図5には、電磁波による、より複雑なテスト状況も模倣可能なテストベンチ1が示されている。図示されたこれらの解決手段に共通であるのは、少なくとも1つのテストベンチ受信素子7、7a、7bおよびテストベンチ放射素子8、8a、8bが一緒に、接続部材6の可動部分6mに配置されていることである。
図2~
図4におけるテストベンチ1のこの構成によって保証されるのは、テストベンチ受信素子7a、7bおよびそれぞれ対応付けられているテストベンチ放射素子8a、8bは、つねに互いに一緒にのみ移動可能であることである。したがって、互いに対応付けられておりかつ互いに一部を成すテストベンチ受信素子7a、7bおよびテストベンチ放射素子8a、8bから成りかつこのようにして得られる機能対7a、8aおよび7b、8bが、互いにすぐ近くに配置されることは有意義である。というのは、これにより、距離センサ2の送信信号4の受信の位置と、シミュレートされる反射信号としてのテストベンチ送信信号9の放射位置と、は、位置的に可能な限りに等しくなるが、このことは、現実の物理的な対象体周囲環境においても同様である。これにより、複雑の波動特性もテストベンチ1によって模擬可能である。
【0032】
図2~
図4では、テスト対象の距離センサ2は、いくらかより複雑な受信特性を有する距離センサ2として図示されており、すなわち、ここではそれぞれ1つのセンサ放射素子3aと、複数のセンサ受信素子3bと、が示されている。現実の距離センサ2は、複数のセンサ放射素子も有し、またはるかに多くのセンサ受信素子も有し得る。
【0033】
図2および
図3の実施例において共通であるのは、接続部材6の複数の異なる可動部分6mが存在することである。図示された実施例では、全部で2つの可動部分6mが存在し、これらの可動部分6mには、それぞれ1つのテストベンチ受信素子7a、7bと、それぞれ1つのテストベンチ放射素子8a、8bと、が一緒に配置されている。
【0034】
図2による実施例は、接続部材6の可動部分6mに一緒に配置されたテストベンチ受信素子7a、7bとテストベンチ放射素子8a、8bとが、同一の(一体型に構成された)テストベンチ受信素子7aおよびテストベンチ放射素子8aならびにテストベンチ受信素子7bおよびテストベンチ放射素子8bとして構成されている点が特徴である。この場合、テスト対象の距離センサ2は、レーダセンサであり、これにより、同一かつ一体型に構成されたテストベンチ受信素子7aおよびテストベンチ放射素子8aもしくはテストベンチ受信素子7bおよびテストベンチ放射素子8bは、特にレーダ波用の共通のアンテナを有する。
図2の上側部分において両向き矢印によって示されているのは、テストベンチ受信およびテストベンチ受信素子7aおよびテストベンチ放射素子8aもしくはテストベンチ受信素子7bおよびテストベンチ放射素子8bが、送信特性も受信特性も有することである。
【0035】
図3に示された実施例は、接続部材6の可動部分6mに一緒に配置されたテストベンチ受信素子7a、7bと、それぞれ対応付けられているテストベンチ放射素子8a、8bと、が互いに隣接して(ここですなわち並んで)、別体のテストベンチ受信素子7a、7bとして、また別体のテストベンチ放射素子8a、8bとして、すなわちここでは特に電波用の別体のアンテナとして配置されている点が特徴である。ここに図示されていない実施例では、素子の隣接した配置は、上下に重ねて行うことも可能である。この実施例では、後置される信号処理部に対し、電磁波の受信および送出用の2つの異なる信号チャネルが自動的に生じるのに対し、
図2による実施例では、ただ1つの信号チャネルによって処理され、これにより、後置される処理電子装置は、信号切換器と共に動作しなければならない。
【0036】
図示されたこれらの実施形態において同様に共通しているのは、ここでは同一である接続部材6が、接続部材6の可動部分6mにより、弓形の、すなわち部分円状の要素として、もしくは部分円環状の要素として構成されており、これらの要素がテスト対象の距離センサ2に向かって凹に開いていることである。接続部材6の可動部分6mは、水平方向に(すなわち方位角方向に)その円環形状部に沿って可動に重ね合わされている。部分円環状の素子の回転軸は、単に仮想的にのみ存在し、すなわち物体的なものではない。というのは、回転軸それ自体は、物体的には実現されていないからである。複数の可動部分6mは、上下に重ね合わせされかつ互いに可動な部分円環形状の要素として構成されているが、このことは暗に、図の下側の概略側面図から見て取れるだけである。
【0037】
本発明によるテストベンチ構造の核心は、接続部材6におけるテストベンチ受信素子7およびテストベンチ放射素子8の配置構成である。すなわち、この点においては、テスト対象の距離センサ2は、説明されかつ特許請求の範囲において請求されるテストベンチ1に付加的に属することはない。それにもかかわらず、距離センサ2は、テストベンチ1と密接に関連して説明された。というのは、テスト対象の距離センサ2との関連においてのみ機能的な関連を有意義に説明できるからである。
【0038】
図4に概略的に図示されているのは、可動の部分円環状の要素6mが、ベルト駆動部10によって駆動されて移動されることである。図示された実施例では、それぞれテストベンチ受信素子7aおよびテストベンチ放射素子8aおよびテストベンチ受信素子7bおよびテストベンチ放射素子8bおよびテストベンチ受信素子7cおよびテストベンチ放射素子8cを有する全部で3つの可動要素6mが設けられている。異なる3つの可動要素6mは、それぞれ別体の駆動ローラ11a、11b、11cにより、歯付きベルト12a、12b、12cを用いて駆動される。
【0039】
図4にさらに図示されているのは、テストベンチ受信素子7およびテストベンチ放射素子8が保持されていない領域において、使用される電磁ビーム(ここではレーダ波)に対する吸収材料13で接続部材6が覆われていることである。
【0040】
図5には上で示したテストベンチ1の拡張された構造が示されている。ここでは、接続部材6の可動部分6mに一緒に配置されているテストベンチ受信素子7a、7bおよびテストベンチ放射素子8a、8bに信号技術的に接続されている反射シミュレータ14が設けられている。反射シミュレータ14は、テストベンチ受信素子7を介して、テスト対象の距離センサ2によって放射された送信信号4を受信し、シミュレートされる周囲対象体15の、供給された位置情報および運動情報ならびに特性x
i;v
i;a
i(すなわち位置および/または速度および/または加速度および/または対象体サイズ)に基づいて、対応するテストベンチ送信信号9を生成し、テストベンチ放射素子8a、8b;8cを介して、テスト対象の距離センサ2の方向に放射するように構成されている。
【0041】
テストベンチ受信素子7およびテストベンチ放射素子8は、多芯ケーブル16を介して反射シミュレータ14に接続されており、1つの導体もしくは導体対は、テストベンチ受信素子7およびテストベンチ放射素子8のエネルギ供給に使用される。別の1つの導体は、発振器信号を反射シミュレータ14からテストベンチ受信素子7に伝送するために使用され、すなわち受信される、テスト対象の距離センサ2からの送信信号4を周波数的にダウンコンバージョンするために、また反射シミュレータ14によってシミュレートされた低周波の反射信号を周波数的にアップコンバージョンするために使用される。ここでは、1つの導体は、テストベンチ受信素子7において受信されてダウンコンバージョンされた、テスト対象の距離センサ2の送信信号を反射シミュレータ14に伝送するか、もしくは反射シミュレータ14によってシミュレートされて生成された低周波のシミュレートされた反射信号を反射シミュレータ14からテストベンチ放射素子8に伝送するために使用される。
【0042】
図5にさらに示されているのは、反射シミュレータ14が、周囲環境シミュレータ17に信号技術的に接続されており、また反射シミュレータ14は、接続部材6の可動部分6mに一緒に配置されているテストベンチ受信素子7a、7bとテストベンチ放射素子8a、8bとから成るそれぞれの機能対7a、8a;7b、8bに対し、シミュレートされた周囲対象体15の位置情報および運動情報(x
i,v
i,a
i)を周囲環境シミュレータ17から受け取ることである。
【0043】
最後に
図5に示されているのは、テストベンチ受信素子7a、7bとテストベンチ放射素子8a、8bとから成る機能対7a、8a;7b、8bの駆動部10が、周囲環境シミュレータ17に信号技術的に接続されており、周囲環境シミュレータ17により、テスト対象の距離センサ2の、それぞれ対応付けられてシミュレートされる周囲対象体15に対する、シミュレートされる相対位置から、テストベンチ受信素子7a、7bとテストベンチ放射素子8a、8bとから成る対7a、8a;7b、8bの位置情報および運動情報が計算され、計算された位置情報および運動情報を実現するために駆動部10が、対応して駆動制御されることである。
【符号の説明】
【0044】
1 テストベンチ
2 距離センサ
3a センサ放射素子
3b センサ受信素子
4 反射信号
5 収容部
6 接続部材
6m 可動の接続部材要素
6s 固定の接続部材要素
7 テストベンチ受信素子
8 テストベンチ放射素子
9 テストベンチ送信信号
10 ベルト駆動部
11 駆動ローラ
12 歯付きベルト
13 吸収材料
14 反射シミュレータ
15 周囲対象体
16 多芯ケーブル
17 周囲環境シミュレータ