IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝キヤリア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷凍サイクル装置 図1
  • 特許-冷凍サイクル装置 図2
  • 特許-冷凍サイクル装置 図3
  • 特許-冷凍サイクル装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20230410BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F24F11/41 200
F25B1/00 399Y
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021543702
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031827
(87)【国際公開番号】W WO2021044886
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019162172
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 涼子
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142038(JP,A)
【文献】特開2004-353903(JP,A)
【文献】特開2014-158311(JP,A)
【文献】特開2014-077560(JP,A)
【文献】特開平09-014731(JP,A)
【文献】特開2002-349940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24H 4/00
F25B 1/00、39/04
F25D 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機および室外熱交換器を有するとともに室外コントローラを有する室外機と、
室内熱交換器を有する室内機と、
水熱交換器およびこの水熱交換器の水流路と負荷との間で水を循環させるポンプを有するとともに水熱コントローラを有し、前記室外機および前記室内機の電源とは異なる電源により運転する複数の水熱交換ユニットと、
を備えた冷凍サイクル装置において
前記水熱コントローラは、前記水熱交換器の温度が設定値未満の場合に前記ポンプを運転し、
前記室外コントローラは、前記水熱交換ユニットの運転可能台数が、規定台数に達している場合に当該冷凍サイクル装置の運転を許容し、前記規定台数に達していない場合に当該冷凍サイクル装置の運転を禁止する、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記室外コントローラは、前記室外機の電源の投入に際し、前記水熱交換ユニットとの通信により、前記水熱交換ユニットの前記運転可能台数を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記室内熱交換器への冷媒の流量を調整する第1流量調整弁、
前記水熱交換器への冷媒の流量を調整する第2流量調整弁、
をさらに備え、
前記室外コントローラは、
暖房運転時、前記圧縮機の吐出冷媒が前記室内熱交換器、前記第1流量調整弁、前記室外熱交換器を通って前記圧縮機に戻る冷媒流路を形成し、
前記負荷へ温水を供給する温水供給運転時、前記圧縮機の吐出冷媒が前記水熱交換器、前記第2流量調整弁、前記室外熱交換器を通って前記圧縮機に戻る冷媒流路を形成するとともに、前記水熱交換ユニットの前記ポンプを運転する、
前記暖房運転中および前記温水供給運転中の前記室外熱交換器の除霜に際し、前記圧縮機の吐出冷媒が前記室外熱交換器に直接的に流れる冷媒流路を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第1および第2流量調整弁は、供給される駆動パルス電圧の数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブであり、その開度変化によって冷媒の流量を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、室外機、室内機、水熱交換ユニットを備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室外機の圧縮機および室外熱交換器、室内機の室内熱交換器、水熱交換ユニットの水熱交換器などを配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた冷凍サイクル装置(ヒートポンプ式熱源装置ともいう)が知られている。この冷凍サイクル装置は、冷房運転および暖房運転のほかに、水熱交換ユニットから負荷(放熱器や給湯タンク)へ冷水を供給する冷水供給運転および温水を供給する温水供給運転が可能である。
【0003】
暖房運転や温水供給運転を実行すると、蒸発器として機能する室外熱交換器の表面に徐々に霜が付着し、そのままでは室外熱交換器の熱交換量が徐々に減少する。対策として、上記冷凍サイクル装置は、暖房運転時および温水供給運転時、圧縮機の吐出冷媒(高温冷媒)を室外熱交換器に直接的に供給する除霜運転を定期的または必要に応じて実行する。
【0004】
ただし、外気温が低い場合など、室外熱交換器を除霜した後の冷媒が水熱交換器に流入すると、水熱交換器の温度が大きく低下し、水熱交換器内の水が凍結することがある。水熱交換器内の水の凍結が進むと、水熱交換器が破裂に至る可能性もある。この凍結や破裂が生じないよう、上記冷凍サイクル装置は、水熱交換器の温度が設定値以下に低下した場合に、水熱交換ユニットのポンプを運転して水熱交換器に水を流通させ、これにより水熱交換器の凍結を防ぐ凍結予防運転を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-353903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不使用の水熱交換ユニットの電源がユーザにより遮断されることがある。この不使用の水熱交換ユニットの水熱交換器に除霜後の冷媒が流入して同水熱交換器の温度が低下しても、電源が遮断された状態の水熱交換ユニットではポンプによる凍結予防運転を実行できない。凍結予防運転を実行できないまま、水熱交換器内の水が凍結してしまう可能性がある。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、水熱交換器内の水の凍結を未然に防ぐことができる安全性にすぐれた冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機および室外熱交換器を有するとともに室外コントローラを有する室外機と;室内熱交換器を有する室内機と;水熱交換器およびこの水熱交換器の水流路と負荷との間で水を循環させるポンプを有するとともに水熱コントローラを有し、前記室外機および前記室内機の電源とは異なる電源により運転する複数の水熱交換ユニットと;を備える。前記水熱コントローラは、前記水熱交換器の温度が設定値未満の場合に前記ポンプを運転する。前記室外コントローラは、前記水熱交換ユニットの運転可能台数が、規定台数に達している場合に当該冷凍サイクル装置の運転を許容し、前記規定台数に達していない場合に当該冷凍サイクル装置の運転を禁止する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は一実施形態の構成を示すブロック図。
【0010】
図2図2は一実施形態における室内コントローラの制御を示すフローチャート。
【0011】
図3図3は一実施形態における水熱コントローラの制御を示すフローチャート。
【0012】
図4図4は一実施形態における室外コントローラの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、冷凍サイクル装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、圧縮機1の吐出口に四方弁2を介して複数の室内熱交換器11の一端および複数の水熱交換器21における冷媒流路21aの一端が配管接続され、その各室内熱交換器11の他端および各水熱交換器21における冷媒流路21aの他端が流量調整弁(第1流量調整弁)12および流量調整弁(第2流量調整弁)22をそれぞれ介して膨張弁(減圧器)3の一端に配管接続されている。そして、この膨張弁3の他端に室外熱交換器4の一端が配管接続され、その室外熱交換器4の他端が上記四方弁2およびアキュームレータ5を介して圧縮機1の吸込口に配管接続されている。これら配管接続により、ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されている。
【0014】
各流量調整弁12は、供給される駆動パルス電圧の数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)であり、その開度変化によって室内熱交換器11への冷媒の流量を調整する。各流量調整弁22も、供給される駆動パルス電圧の数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)であり、その開度変化によって各水熱交換器21の冷媒流路21aへの冷媒の流量を調整する。
【0015】
なお、暖房運転時や温水供給運転時、各流量調整弁12,22が全閉状態となっても、少量の冷媒が各流量調整弁12,22から室内熱交換器11側および水熱交換器21側に漏れ流れることがある。
【0016】
暖房運転時、矢印で示すように、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って各室内熱交換器11に流れる。各室内熱交換器11に流れたガス冷媒は、室内空気に熱を奪われて凝縮する。各室内熱交換器11から流出する液冷媒は、各流量調整弁12を通り、さらに膨張弁3で減圧されて室外熱交換器4に流れる。室外熱交換器4に流れた液冷媒は、外気から熱を汲み上げて気化する。室外熱交換器4から流出するガス冷媒は、四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれる。すなわち、各室内熱交換器11が凝縮器として機能し、室外熱交換器4が蒸発器として機能する冷媒流路(暖房サイクルともいう)が形成される。
【0017】
温水供給運転(給湯運転)時、矢印で示すように、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って各水熱交換器21の冷媒流路21aに流れる。各冷媒流路21aに流れたガス冷媒は、各水流路21bに流れる水に熱を奪われて凝縮する。各冷媒流路21aから流出する液冷媒は、各流量調整弁22を通り、さらに膨張弁3で減圧されて室外熱交換器(蒸発器)4に流れる。室外熱交換器4に流れた液冷媒は、外気から熱を汲み上げて気化する。室外熱交換器4から流出するガス冷媒は、四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれる。すなわち、各水熱交換器21の冷媒流路21aが凝縮器として機能し、室外熱交換器4が蒸発器として機能する冷媒流路(温水供給サイクルともいう)が形成される。
【0018】
冷房運転時、四方弁2の流路が切換わることにより、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器4に流れる。室外熱交換器4に流れたガス冷媒は、外気に熱を放出して凝縮する。室外熱交換器4から流出する液冷媒は、膨張弁3で減圧され、さらに各流量調整弁12を通って各室内熱交換器11に流れる。各室内熱交換器11に流れた液冷媒は、室内空気から熱を奪って気化する。各室内熱交換器11から流出するガス冷媒は、四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれる。すなわち、室外熱交換器4が凝縮器として機能し、各室内熱交換器11が蒸発器として機能する冷媒流路(冷房サイクルともいう)が形成される。
【0019】
冷水供給運転時、冷房運転時と同じく四方弁2の流路が切換わることにより、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器4に流れる。室外熱交換器4に流れたガス冷媒は、外気に熱を放出して凝縮する。室外熱交換器4から流出する液冷媒は、膨張弁3で減圧され、さらに各流量調整弁22を通って各水熱交換器21の冷媒流路21aに流れる。各冷媒流路21aに流れた液冷媒は、各水流路21bに流れる水から熱を奪って気化する。各冷媒流路21aから流出するガス冷媒は、四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれる。すなわち、室外熱交換器4が凝縮器として機能し、各水熱交換器21の冷媒流路21aが蒸発器として機能する冷媒流路(冷水供給サイクルともいう)が形成される。
【0020】
室外熱交換器4の近傍に、外気を吸込んで室外熱交換器4に通す室外ファン6が配置されているとともに、その室外ファン6の吸込み空気(外気)の温度Toを検知する外気温度センサ7が配置されている。室外熱交換器4に、その室外熱交換器4の温度Tcを検知する熱交換器温度センサ8が取付けられている。
【0021】
各室内熱交換器11の近傍に、室内ファン13および室内温度センサ14がそれぞれ配置されている。各室内ファン13は、室内空気を吸込みその吸込み空気を各室内熱交換器11に通す。各室内温度センサ14は、各室内ファン13の吸込み空気の温度(室内温度)Taを検知する。
【0022】
各水熱交換器21は、冷媒流路21aを通る冷媒と水流路21bを通る水との熱交換を行う。各水流路21bの流入口は、水管23およびその水管23に配置されたポンプ24をそれぞれ介して負荷L1~Lnの水流出口に接続されている。負荷L1~Lnは、例えば放熱器や給湯タンクである。各水流路21bの流出口は、水管25をそれぞれ介して負荷L1~Lnの水流入口に接続されている。各ポンプ24の運転により、負荷L1~Lnに収容されている水が各水管23、各水流路21b、各水管25を通って循環する。各水管23における各ポンプ24の配置位置と各水流路21bの流入口との間に、水を温める補助熱源として電気ヒータ26がそれぞれ配置されている。各水流路21bの流出口に水の温度Twを検知する水温センサ27がそれぞれ取付けられている。
【0023】
上記室外機1、上記四方弁2、上記膨張弁3、上記室外熱交換器4、上記アキュームレータ5、上記室外ファン6、上記外気温度センサ7、上記熱交換器温度センサ8が、室外コントローラ10と共に、室外機Aに収容されている。室外機Aは、電源ライン31およびその電源ライン31に挿入接続された電源スイッチ32を介して室外機用の交流電源(第1電源)30に接続されている。ユーザによる電源スイッチ32のオン操作により、交流電源30の交流電圧が室外機Aに供給される。この電源電圧の供給により、室外コントローラ10の動作を含む室外機Aの運転が可能となる。
【0024】
上記各室内熱交換器11、上記各流量調整弁12、上記各室内ファン13、上記各室内温度センサ14が、各室内コントローラ15と共に、複数台の室内機B1,B2,…Bnにそれぞれ収容されている。これら室内機B1~Bnは、電源ライン41およびその電源ライン41に挿入接続された電源スイッチ42a~42nをそれぞれ介して室内機用の交流電源(第2電源)40に接続されている。ユーザによる電源スイッチ42a~42nのオン操作により、交流電源40の交流電圧が室内機B1~Bnにそれぞれ供給される。この電源電圧の供給により、各室内コントローラ15の動作を含む室内機B1~Bnの運転がそれぞれ可能となる。
【0025】
各室内コントローラ15にそれぞれ操作表示器15aが接続されている。これら操作表示器15aは、運転の開始と停止を指定するための運転釦、室内設定温度Tsの操作釦、運転状態などを文字や画像で表示す表示画面などを有する。
【0026】
上記各水熱交換器21、上記各水管23、上記各ポンプ24、上記各水管25、上記各ヒータ26、上記各水温度センサ27が、各水熱コントローラ28と共に、複数台の水熱交換ユニットC1~Cnにそれぞれ収容されている。水熱交換ユニットC1~Cnは、電源ライン51およびその電源ライン51に挿入接続された電源スイッチ52a~52nをそれぞれ介して水熱交換ユニット用の交流電源(第3電源)50に接続されている。ユーザによる電源スイッチ52a~52nのオン操作により、交流電源50の交流電圧が水熱交換ユニットC1~Cnにそれぞれ供給される。この電源電圧の供給により、各水熱コントローラ28の動作を含む水熱交換ユニットC1~Cnの運転がそれぞれ可能となる。
【0027】
各水熱コントローラ28にそれぞれ操作表示器28aが接続されている。これら操作表示器28aは、運転の開始と停止を指定するための運転釦、水熱交換ユニットC1~Cnに対する水設定温度Twsの操作釦、運転状態などを文字や画像で表示す表示画面などを有する。
【0028】
こうして、室内機B1~Bnおよび水熱交換ユニットC1~Cnが室外機Aに並列接続されたマルチタイプの冷凍サイクル装置(ヒートポンプ式熱源装置ともいう)が構成されている。
【0029】
室外機Aの室外コントローラ10は、各操作表示器15aおよび各操作表示器28aのユーザ操作に応じて室外機Aの運転、室内機B1~Bnの運転、水熱交換ユニットC1~Cnの運転を統括的に制御するもので、主要な機能として第1制御セクション10a,第2制御セクション10b,第3制御セクション10c,第4制御セクション10d,第5制御セクション10eを有する。
【0030】
第1制御セクション10aは、室内機B1~Bnの暖房運転時、各室内熱交換器11が凝縮器として機能し室外熱交換器4が蒸発器として機能する冷媒流路(暖房サイクル)を形成する。また、第1制御セクション10aは、水熱交換ユニットC1~Cnから負荷L1~Lnに温水を供給する温水供給運転時、各水熱交換器21の冷媒流路21aがそれぞれ凝縮器として機能し室外熱交換器4が蒸発器として機能する冷媒流路(温水供給サイクル)を形成する。
【0031】
第2制御セクション10bは、室内機B1~Bnの冷房運転時、室外熱交換器4が凝縮器として機能し各室内熱交換器11が蒸発器として機能する冷媒流路(冷房サイクル)を形成する。また、第2制御セクション10bは、水熱交換ユニットC1~Cnから負荷L1~Lnに冷水を供給する冷水供給運転時、室外熱交換器4が凝縮器として機能し各水熱交換器21の冷媒流路21aがそれぞれ蒸発器として機能する(冷水供給サイクル)を形成する。
【0032】
第3制御セクション10cは、上記暖房運転時および上記温水供給運転時、熱交換器温度センサ8により検知される室外熱交換器4の温度(蒸発温度)Tcに基づいて室外熱交換器4の着霜量を検出し、その着霜量が規定量以上の場合に冷媒の流れ方向が暖房サイクルおよび温水供給サイクルとは反対の冷房サイクルおよび冷水供給サイクルと同じ除霜サイクルに切換え、圧縮機1の吐出冷媒(高温冷媒)が四方弁2を介して室外熱交換器4に直接的に流れる除霜運転を実行し、冷媒の熱で室外熱交換器4の霜を除去する。この除霜運転は、着霜量が規定量未満に減少するまで、あるいは一定時間が経過するまで、継続する。
【0033】
第4制御セクション10dは、当該冷凍サイクル装置の据付けが完了した後の最初の試運転に際し、あるいは室内機B1~Bnや水熱交換ユニットC1~Cnの増設や減設があった後の最初の試運転に際し、通信ライン60を介した室内機B1~Bnの各室内コントローラ15および水熱交換ユニットC1~Cnの各水熱コントローラ28との相互通信により、各室内コントローラ15の制御用アドレス、各水熱コントローラ28の制御用アドレス、室内機B1~Bnの容量(馬力)、水熱交換ユニットC1~Cnの容量(馬力)、水熱交換ユニットC1~Cnの台数(接続台数ともいう)Nsなどを検出し、これら検出結果を制御用データとして当該室外コントローラ10の内部メモリに記憶する。
【0034】
試運転時は、室外機Aの電源スイッチ32、室内機B1~Bnの電源スイッチ42a~42n、水熱交換ユニットC1~Cnの電源スイッチ52a~52nの全てが作業員によってオン操作されるので、設置が完了している全ての水熱交換ユニットC1~Cnの台数Nsが検出され、その検出結果が規定台数Nsとして室外コントローラ10の内部メモリに記憶される。
【0035】
第5制御セクション10eは、試運転が終了した後の電源スイッチ32のオン操作による交流電源30の投入に際し、通信ライン60を介した水熱交換ユニットC1~Cnの各水熱コントローラ28との相互通信により、水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数(つまり動作可能な水熱コントローラ28の台数)Nを検出し、検出した運転可能台数Nと試運転時に記憶した規定台数Nsとを比較し、運転可能台数Nが規定台数Nsに達している場合は当該室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の運転を許容し、運転可能台数Nが規定台数Nsに満たない場合は室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の運転を禁止する。
【0036】
[各室内コントローラ15の制御]
室内機B1~Bnの各室内コントローラ15は、図2のフローチャートに示す制御を実行する。フローチャート中のS1,S2…は処理のステップを示している。
【0037】
すなわち、各室内コントローラ15は、暖房運転時および冷房運転時(S1のYES)、各室内温度センサ14の検知温度Taと室内設定温度Tsとの差に対応する当該室内機B1~Bnの要求能力を通信ライン60を介して室外コントローラ10に通知する(S2)。そして、各室内コントローラ15は、各室内温度センサ14の検知温度Taが室内設定温度Tsとなるよう各室内熱交換器11への冷媒流量つまり各流量調整弁12の開度を制御する(S3)。
【0038】
[各水熱コントローラ28の制御]
水熱交換ユニットC1~Cnの各水熱コントローラ28は、図3のフローチャートに示す制御を実行する。
【0039】
すなわち、各水熱コントローラ28は、温水供給運転時および冷水供給運転時(S11のYES)、各流量調整弁12を開いて各水熱交換器21への冷媒流路を形成し(S12)、かつ各ポンプ24を運転して各水熱交換器21の水流路21bと負荷との間で水を循環させる(S13)。さらに、各水熱コントローラ28は、各水熱交換器21の水流路21bから流出する水の温度Twを各水温センサ27で検知し、その検知温度Twが水設定温度Twsとなるよう各ポンプ24の送水量を制御する(S14)。そして、各水熱コントローラ28は、除霜運転の有無を室外コントローラとの通信により監視する(S15)。除霜運転は、温水供給運転時は定期的または必要に応じて実行され、冷水供給運転時は実行されない。温水供給運転時に除霜運転が実行されると、室外熱交換器4を除霜した後の冷媒が開状態の各流量調整弁12を通って各水熱交換器11に流入するため、各水熱交換器11の温度Twが低下する。
【0040】
除霜運転の実行中でない場合(S15のNO)、各水熱コントローラ28は、上記S11の判定に戻る。除霜運転の実行中である場合(S15のYES)、各水熱コントローラ28は、各水温センサ27の検知温度Twと凍結防止用の設定値Twsとを比較する(S16)。
【0041】
各水温センサ27の検知温度Twが設定値Tws以上の場合(S16のYES)、各水熱コントローラ28は、各ポンプ24を停止する(S17)。各ポンプ24の停止により、各水熱交換器21から負荷L1~Lnに不要な冷水が供給されない。この後、各水熱コントローラ28は、上記S11の判定に戻る。
【0042】
各水温センサ27の検知温度Twが設定値Tws未満の場合(S16のNO)、各水熱コントローラ28は、各水熱交換器21の凍結を防ぐため、各ポンプ24を所定の送水量で運転する(S18)。このときの各ポンプ24の送水量は、あくまでも凍結を防ぐためのものであり、負荷L1~Lnに冷水が供給されない程度の少量で十分である。この凍結予防運転により、水熱交換器21の凍結が未然に防止される。この後、各水熱コントローラ28は、上記S11の判定に戻る。
【0043】
上記S11の判定において、温水供給運転でなく冷水供給運転でもない例えば暖房運転時(S11のNO)、各水熱コントローラ28は、各水熱交換器21へ冷媒が流入しないよう各流量調整弁12を全閉する(S19)。そして、各水熱コントローラ28は、上記S16に移行して各水温センサ27の検知温度Twと凍結防止用の設定値Twsとを比較する(S16)。
【0044】
各流量調整弁12が全閉状態となっても、少量の冷媒が各流量調整弁12から各水熱交換器21側に漏れ流れて各水熱交換器21の温度Twが低下することがある。
【0045】
各水温センサ27の検知温度Twが設定値Tws以上の状態にあれば(S16のYES)、各水熱コントローラ28は、各ポンプ24を停止する(S17)。各ポンプ24の停止により、各水熱交換器21から負荷L1~Lnに不要な冷水が供給されない。この後、各水熱コントローラ28は、上記S11の判定に戻る。
【0046】
各水温センサ27の検知温度Twが設定値Tws未満に低下した場合(S16のNO)、各水熱コントローラ28は、各水熱交換器21の凍結を防ぐため、各ポンプ24を所定の送水量で運転する(S18)。このときの各ポンプ24の送水量は、あくまでも凍結を防ぐためのものであり、負荷L1~Lnに冷水が供給されない程度の少量で十分である。この凍結予防運転により、水熱交換器21の凍結が未然に防止される。この後、各水熱コントローラ28は、上記S11の判定に戻る。
【0047】
[室外コントローラ10の制御]
室外機Aの室外コントローラ10は、図4のフローチャートに示すように、電源スイッチ32のオン操作による交流電源30の投入時(S21)、運転モードが据付け完了後の試運転であるか否かを判定する(S22)。
【0048】
試運転の場合(S22のYES)、室外コントローラ10は、通信ライン60を介して水熱交換ユニットC1~Cnの各水熱コントローラ28との相互通信を実行し(S23)、この相互通信により、設置が完了している全ての水熱交換ユニットC1~Cnの台数(接続台数ともいう)Nsを検出し(S24)、その検出結果を規定台数Nsとして内部メモリに記憶する(S25)。そして、室外コントローラ10は、電源スイッチ32のオフ操作による交流電源30の遮断がなければ(S26のNO)、上記S22の判定に戻る。
【0049】
試運転でない場合(S22のNO)、室外コントローラ10は、通信ライン60を介して水熱交換ユニットC1~Cnの各水熱コントローラ28との相互通信を実行し(S27)、この相互通信により、水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数N(つまり動作可能な水熱コントローラ28の台数)Nを検出し(S28)、検出した運転可能台数Nと試運転時に記憶した上記規定台数Nsとを比較する(S29)。
【0050】
運転可能台数Nが規定台数Nsに達している場合(S29のNO;N=Ns)、室外コントローラ10は、室外機Aの運転を許容する(S30)。この許容により、操作表示器15aや操作表示器28aの操作に応じた暖房運転・温水供給運転・冷房運転・冷水供給運転など全ての運転の実行が可能となる。そして、室外コントローラ10は、電源スイッチ32のオフ操作による交流電源30の遮断がなければ(S26のNO)、上記S22の判定に戻る。
【0051】
運転可能台数Nが規定台数Nsに達していない場合(S29のYES;N<Ns)、室外コントローラ10は、当該室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の運転を禁止するとともにその禁止の旨および原因などを各操作表示器15a,28aの表示によりユーザに報知する。(S31)。この運転の禁止により、暖房運転・温水供給運転・冷房運転・冷水供給運転など全ての運転の実行が不可能となる。そして、室外コントローラ10は、電源スイッチ32のオフ操作による交流電源30の遮断がなければ(S26のNO)、上記S22の判定に戻る。
【0052】
例えば冷房期などの冷水供給運転時、水熱交換ユニットC1~Cnのうち1台または複数台の運転が不要として停止されることがある。この場合、節電のため、停止される水熱交換ユニットたとえば水熱交換ユニットC1の電源スイッチ52aがユーザによりオフ操作されて、水熱交換ユニットC1への電源電圧の供給が遮断されることがある。その後、冷房期から暖房期に移っても、水熱交換ユニットC1の電源スイッチ52aがオフのまま、室内機B1~Bnの暖房運転や他の水熱交換ユニットC2~Cnの温水供給運転が開始されることがある。
【0053】
この場合、電源電圧の供給が遮断されている水熱交換ユニットC1では、流量調整弁22の動作,ポンプ24の運転,電気ヒータ26の動作,水熱コントローラ28の動作が停止した状態にある。このまま室内機B1~Bnの暖房運転や他の水熱交換ユニットC2~Cnの温水供給運転が進んで室外熱交換器4が着霜し、室外熱交換器4に対する除霜運転が実行されると、たとえ水熱交換ユニットC1の流量調整弁22が全閉状態にあっても、除霜後の冷媒が流量調整弁22から水熱交換器21の冷媒流路21a側に漏れ流れることがある。この場合、水温センサ27の検知温度Twが凍結防止用の設定値Tws未満に低下しても、電源電圧の供給が遮断されている水熱交換ユニットC1ではポンプ24を運転できない。こうなると、水熱交換ユニットC1における水熱交換器21内の水が凍結してしまう。凍結が進むと水熱交換器21が破裂する可能性もある。
【0054】
しかしながら、電源電圧の供給が遮断された水熱交換ユニットC1では、水熱コントローラ28が動作停止の状態にあることから、水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数Nが規定台数Nsに満たない状態となる。よって、室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の運転が禁止される。つまり、暖房運転や温水供給運転はもちろん除霜運転も禁止となる。したがって、水熱交換ユニットC1における水熱交換器21内の水の凍結を未然に防止することができる。ひいては、凍結の進行による水熱交換器21の破裂も未然に防ぐことができる。
【0055】
ユーザは、室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の運転が禁止されたことおよびその原因を各操作表示器15a,28aの表示で認識することができる。この認識に基づき、ユーザは、水熱交換ユニットC1の電源スイッチ52aをオン操作するとともに、室外機Aの電源スイッチ32をオフ操作してから再びオン操作すればよい。これ以降、水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数Nが規定台数Nsと同じになり、室外機Aを含む当該冷凍サイクル装置の全ての運転が許容される。
【0056】
上記実施形態では、規定台数Nsを試運転時の室外コントローラ10の通信により検出し記憶する構成としたが、水熱交換ユニットC1~Cnの据付け台数を作業員が確認し、それを操作表示器15aや28aの操作により規定台数Nsとして室外コントローラ10に入力し記憶させる構成としてもよい。
【0057】
上記実施形態では、室外機Aの電源スイッチ32のオン時に水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数Nを検出したが、室外機Aの運転開始ごとに水熱交換ユニットC1~Cnの運転可能台数Nを検出する構成としてもよい。
【0058】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
A…室外機、B1~Bn…室内機、C1~Cn…水熱交換ユニット、1…圧縮機、2…四方弁、3…膨張弁(減圧器)、4…室外熱交換器、8…熱交換器温度センサ、10…室外コントローラ、11…室内熱交換器、12…流量調整弁、15…室内コントローラ、21…水熱交換器、21a…冷媒流路、21b…水流路、22…流量調整弁、24…ポンプ、26…電気ヒータ、27…水温度センサ、28…水熱コントローラ、30,40,50…交流電源、32,42a~42n,52a~52n…電源スイッチ、60…通信ライン
図1
図2
図3
図4