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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】標本作製装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
G01N1/28 U
G01N1/28 J
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021543859
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034768
(87)【国際公開番号】W WO2021044543
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 正剛
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-151657(JP,A)
【文献】特開2006-308575(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017291(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0320365(US,A1)
【文献】特開2014-95588(JP,A)
【文献】米国特許第4210099(US,A)
【文献】特開2007-127465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0070069(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/117611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のプレート上の液体溜まりの表面に被観察物が載置された後に該液体溜まりを除去することにより観察標本を作製する標本作製装置であって、
前記プレートを保持する保持手段を備え、
前記保持手段は、
前記プレートを載置するための載置部と、
前記載置部の縁部に設けられた壁部と、
を含み、
前記壁部は、少なくとも上部において疎液部を含む
ことを特徴とする標本作製装置。
【請求項2】
前記保持手段により保持された前記プレート上の前記液体溜まりの液体が排出されるように前記プレートを傾動させる傾動手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項3】
前記保持手段により保持された前記プレート上の前記液体溜まりの液体を該プレートの一端部側から排出させる排液手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の標本作製装置。
【請求項4】
前記壁部は、前記載置部に載置される前記プレートの三つの辺を囲むように設けられる複数の側方壁部および端側壁部を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項5】
前記疎液部は、疎液性を有する取付部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項6】
前記傾動手段を駆動制御する駆動制御手段を更に備え、
前記駆動制御手段は、前記プレート上の前記液体溜まりの表面に前記被観察物が載置された後、前記液体溜まりの液体の量を前記プレートの一端部側において他端部側よりも多くさせるべく、かつ、前記被観察物を前記他端部の方から前記一端部の方に向かって順に前記プレートの表面に貼り付かせて定着させるべく、前記傾動手段を駆動制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の標本作製装置。
【請求項7】
前記壁部は、前記載置部に載置される前記プレートを囲むように前記載置部の縁部に設けられ、
前記保持手段は、前記液体溜まりの液体を排出するための排液部を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載の標本作製装置。
【請求項8】
前記疎液部は、前記液体を前記排液部に案内する液体案内部を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の標本作製装置。
【請求項9】
前記保持手段により保持された前記プレート上の前記液体溜まりの液体を該プレートの一端部側から吸引して排出させる排液手段を更に備え、
前記排液手段は、
前記排液部において前記プレート上の前記液体溜まりの液体を吸引するための吸引手段と、
前記プレート上の前記液体溜まりの液体を吸引により除去するように前記吸引手段を駆動する駆動手段と、を更に含む
ことを特徴とする請求項7に記載の標本作製装置。
【請求項10】
前記プレート上に液体を供給可能な給液ユニットと、
前記プレート上に前記液体溜まりを形成するための液体供給位置と該液体供給位置とは異なる待機位置との間で前記給液ユニットを移動させる移動ユニットと、を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の標本作製装置。
【請求項11】
少なくとも3つの領域に対象物を順に搬送可能な搬送ユニットを更に備え、
前記少なくとも3つの領域は、
前記プレートを前記保持手段に保持させる第一の領域と、
前記保持手段に保持された前記プレート上に前記被観察物を載置するための第二の領域と、
前記被観察物が載置された前記プレートを前記観察標本として前記保持手段から取り出すための第三の領域と、を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の標本作製装置。
【請求項12】
前記第三の領域にアクセス可能に設けられ、前記保持手段から前記観察標本を取り出して他の位置に移載する移載ユニットを、更に備える
ことを特徴とする請求項11に記載の標本作製装置。
【請求項13】
前記搬送ユニットは、
回転可能に構成された回転支持台と、
前記回転支持台を回転及び停止の間欠駆動を行う回転駆動機構と、を備え、
前記保持手段は、前記回転支持台の回転軸の周りに前記プレートを載置可能に配置された複数の載置部を含み、
前記回転駆動機構は、前記複数の載置部の少なくとも1つが前記第一の領域、前記第二の領域および前記第三の領域の何れかに位置するように、前記回転支持台を間欠駆動する
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の標本作製装置。
【請求項14】
前記保持手段は、前記プレートを載置するための複数の載置部を含み、
前記傾動手段は、前記複数の載置部を個別に傾動する傾動機構を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の標本作製装置。
【請求項15】
前記観察標本の温度処理を行う温度処理手段を更に備え、
前記観察標本は複数の観察標本の1つであり、
前記温度処理手段は、
その上に前記複数の観察標本を載置可能な標本載置部と、
前記標本載置部に載置された前記観察標本を加熱する加熱ユニットと、
を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項14の何れか1項記載の標本作製装置。
【請求項16】
前記温度処理手段により温度処理された前記観察標本が移載され、該観察標本を保管する観察標本保管手段と、
前記温度処理手段から前記観察標本を取り出し前記観察標本保管手段へ移載する観察標本移載手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項15に記載の標本作製装置。
【請求項17】
前記観察標本保管手段は、
移載される前記観察標本を収納可能な収納部と、
前記収納部の雰囲気を所定の環境に調整する雰囲気調整ユニット、を含む
ことを特徴とする請求項16に記載の標本作製装置。
【請求項18】
光透過性のプレート上の液体溜まりの表面に被観察物が載置された後に該液体溜まりを除去することにより観察標本を作製する標本作製装置に設けられ、前記プレートが載置される載置部材であって、
前記プレートが載置される載置部と、前記載置部に載置される前記プレートを囲むように前記載置部の縁部に設けられた壁部と、前記液体溜まりの液体を排出するための排液部と、を含み、
前記壁部は、少なくともその上部に疎液部を含む
ことを特徴とする載置部材。
【請求項19】
前記疎液部は、前記液体溜まりの液体を前記排液部に案内する案内部を含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の載置部材。
【請求項20】
前記載置部材は、前記載置部に載置された前記プレートの落下を防止する落下防止部材を備える、
ことを特徴とする請求項19に記載の載置部材。
【請求項21】
前記載置部は、載置された前記プレートに当接する当接部と、載置された前記プレートに当接しない非当接部と、を含む
ことを特徴とする請求項19に記載の載置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に標本作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡観察等で用いられる観察標本は、一般に、スライドガラス(microscope slide)等とも称される光透過性のプレート上に組織片等の被観察物を付与することで作製される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-266394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記観察標本を作製するための標本作製装置においては、作業者が、比較的短い移動距離で或いは所定の移動範囲内で観察標本を作業効率よく作製できるよう、多様な観点での改善が求められる。
【0005】
本発明は、観察標本を作製する際の作業効率を良好にすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は標本作製装置に係り、前記標本作製装置は、光透過性のプレート上の液体溜まりの表面に被観察物が載置された後に該液体溜まりを除去することにより観察標本を作製する標本作製装置であって、前記プレートを保持する保持手段を備え、前記保持手段は、前記プレートを載置するための載置部と、前記載置部の縁部に設けられた壁部と、を含み、前記壁部は、少なくとも上部において疎液部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、観察標本を作製する際の作業効率が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】標本作製システムの構成例を示す斜視図である。
図2】標本作製システムの構成例を示す上面図および正面図である。
図3】標本作製装置の正面斜め上方からの外観を示す斜視図である。
図4】標本作製装置の背面斜め上方からの外観を示す斜視図である。
図5】標本作製装置の内部構成例を示す斜視図である。
図6】被観察物付与用ユニットの各機構を説明するための斜視図である。
図7】標本作製装置における作業内容の一例を説明するための模式図である。
図8】載置部材の構成例を説明するための図である。
図9】被観察物付与用ユニットの各機構を説明するための側面図である。
図10】観察標本の作製方法の一例を説明するための模式図である。
図11】観察標本の作製方法の一例を説明するための模式図である。
図12】観察標本の作製方法の一例を説明するための模式図である。
図13】後処理部の構成例を説明するための斜視図である。
図14】標本格納部の構成例を説明するための図である。
図15】載置部材の他の構成例を説明するための図である。
図16】観察標本の作製方法の他の例を説明するための模式図である。
図17】観察標本の作製方法の他の例を説明するための模式図である。
図18】観察標本の作製方法の他の例を説明するための模式図である。
図19】載置部材の他の構成例を説明するための図である。
図20】載置部材の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
[標本作製システムについて]
図1は、第1実施形態に係る標本作製システムSYの全体構成例を示す斜視図である。システムSYは、標本作製装置1、作業台91、被観察物作製装置92、椅子93、入力装置94、コンピュータ95、表示端末96および入力端末97を備える。
【0011】
ここで、図中には、理解の容易化のため、互いに交差するX方向、Y方向およびZ方向を示す(後述の他の図にも示される場合がある。)。X方向は、標本作製装置1の水平方向における一方向であり、左右方向ないし幅方向に対応する。Y方向は、標本作製装置1の水平方向における上記一方向と直交する他方向であり、前後方向ないし奥行き方向に対応する。Z方向は、標本作製装置1の鉛直方向であり、上下方向ないし高さ方向に対応する。例えば、-Y方向の側は正面側に対応し、+Y方向の側は背面側に対応する。また、例えば、+Z方向の側は上方側に対応し、-Z方向の側は下方側に対応する。
【0012】
図2(A)は、システムSYの上面図、また、図2(B)は、システムSYの正面図を示す。
【0013】
標本作製装置1は、詳細については後述とするが、作業主体により付与された被観察物を用いて所定の観察標本を作製する。被観察物は、ここでは、患者等の被検者から採取された組織をパラフィン等で固形化して成るブロックをスライスすることで得られる組織片とする(後述の被観察物OB)。観察標本は、光透過性のプレート上に被観察物を載置することにより作製される(後述の観察標本SPL)。このプレートは、スライドガラス(microscope slide)、標本用プレート、被観察物載置用プレート、光学観察用プレート等とも表現可能である(後述のプレートPL)。また、作業主体とは、標本作製に関する作業を行う主体であり、典型的には技師等の作業者であるが、被観察物を付与するための付与機構(マニピュレータ等)を備える作業用ロボットであってもよい。本実施形態では、作業主体は「作業者」とし、以下においては単に「作業者」と表現する。
【0014】
作業台91は、作業者が、観察標本の作製に付随する作業を行うための机とする。作業台91上には、被観察物作製装置92、表示端末96および入力端末97が設置される。作業者は、それらを用いて作業台91上で作業(例えば観察標本に関する情報の管理、記録など)を行うことも可能である。また、作業者は、他の作業(例えば筆記作業など)を行うことも可能である。標本作製装置1および作業台91はX方向に並設されており、即ち、作業台91は標本作製装置1の側方(ここでは+X方向の側)に設置される。
【0015】
被観察物作製装置92は、本実施形態では被観察物として組織片を作製するミクロトームとするが、他の実施形態として、例えば医療用機器、実験用機器等の他の装置であってもよい。被観察物作製装置92は、詳細については後述とするが、作業台91上における標本作製装置1側に設置される。
【0016】
椅子93は、本実施形態ではキャスター付の椅子とする。これにより、作業者が作業を行う際に、椅子93に座った状態で標本作製装置1と作業台91との間を容易に行き来することが可能となる。
【0017】
本実施形態では、入力装置94は、作業台91下方に設置されたフットスイッチであり、作業者は、入力装置94を脚で押圧することで所定の操作入力を行うことが可能である。入力装置94は、不図示のケーブルで標本作製装置1に電気接続されており、詳細について後述とするが、標本作製装置1は、入力装置94に所定の操作入力が行われたことに応答して作業のステップを進める。
【0018】
尚、他の実施形態として、入力装置94は無線で標本作製装置1に接続されていてもよい。また、他の実施形態として、入力装置94は作業台91上に設置されてもよい。更に、フットスイッチの代わりに、作業者の手や足で操作するレバー、ジョイスティック等を採用してもよく、また、頭、目、手または足の動きで操作する各種モーションセンサ等を採用してもよい。さらに、入力装置94は、作業者の音声、思考等を認識することにより入力を行う機器であってもよい。
【0019】
コンピュータ95は汎用コンピュータとし、ここでは作業台91下方に設置されるものとするが、その場合、コンピュータ95を標本作製装置1側とは反対側に設置することにより、作業者が誤ってコンピュータ95と干渉することを防ぐことができる。表示端末96には、液晶ディスプレイ等、公知のディスプレイないしモニタが用いられればよい。入力端末97には、キーボード、マウス等、公知の入力用操作子が用いられればよい。作業者は、例えば、表示端末96でプレート及び被観察物を示す情報を視認しながら、入力端末97を用いて観察標本に関する情報管理を行うことができる。
【0020】
[標本作製装置について]
図3は、標本作製装置1についての正面斜め上方からの斜視図である。図3においては、複数の開閉部材が開放された状態の標本作製装置1を示す。図4は、標本作製装置1についての背面斜め上方からの斜視図である。図4においては、複数の開閉部材が閉鎖された状態の標本作製装置1を示す。装置1は、外装パネルを含む筐体100を備え、装置1の機能を実現する複数のユニット(後述)は筐体100内に収容される。
【0021】
標本作製装置1は、筐体100の各部位(後述のF11等)に取り付けられた要素191~197を更に備える。個々の詳細については後述とするが、例えば、筐体100の正面壁部(正面パネル)F11には、上記要素として、開閉部材191、開閉部材192、収容部193および板材196が設けられる。例えば、筐体100の作業台91側の側面壁部(側面パネル)F12には、開閉部材194が設けられる。例えば、筐体100の側面壁部F12とは反対側の側面壁部(側面パネル)F14には、開閉部材195が設けられる。また、例えば、筐体100の背面壁部(背面パネル)F15には、窓部材197が設けられる。
【0022】
詳細については後述とするが、正面壁部F11と側面壁部F12との間の角部には角側壁部(角部パネル)F13が設けられ、角側壁部F13は正面壁部F11の一端部(ないし一縁部)と側面壁部F12の一端部とに接続される。即ち、筐体100は該角部において面取りされた形状(面取り形状)となっている。上述の壁部F11~F15は、筐体100の外装パネルを形成し、これらの一部/全部は、一体成形されたものであってもよいし、別体であってもよい。尚、側面壁部F12は一側面壁部に対応し、側面壁部F14は他側面壁部に対応する。
【0023】
また、筐体100上方部正面には操作表示パネル181が設けられ、作業者は、操作表示パネル181に表示される表示内容に基づいて標本作製装置1の動作状況(作業進捗状況等を含む。)を確認することができる。また、操作表示パネル181には、標本作製装置1の各種設定を入力することができる。各種設定の入力の例としては、後述の識別情報1131の情報入力、後述の加熱ユニット122における温度管理時間の設定入力、標本作製装置1内部の温度設定入力などが挙げられる。また。操作表示パネル181には、各種ユニットの動作を手動で行う場合の操作および各種ユニットを自動で動作させる際の自動運転操作を入力することも可能である。尚、操作表示パネル181には公知のタッチパネル式ディスプレイが用いられればよく、操作表示パネル181は単に操作パネル、表示パネル等と表現されてもよい。
【0024】
図5は、標本作製装置1の内部構造を示す斜視図である。装置1は、前処理部11、後処理部12、標本格納部13、移載ユニット14および被観察物付与用のユニット15を更に備える。詳細については後述とするが、前処理部11は、被観察物の付与前の処理である前処理(pre-processing)を行うユニット111~114を含む。また、後処理部12は、被観察物の付与後の処理である後処理(post-processing)を行う各ユニット121~123を含む。標本格納部13は、作製された観察標本を格納(或いは収納ないし保管)するユニットである。この標本格納部13は、単に格納部と表現されてもよいし、標本収納部(或いは単に収納部)、標本保管部(或いは単に保管部)等と表現されてもよい。移載ユニット14は、本実施形態ではプレートを把持可能なマニピュレータであり、後処理部12から被観察物が付与されたプレートを観察標本SPLとして受け取って標本格納部13に移載する。
【0025】
被観察物付与用のユニット15は、作業者が被観察物を付与する際にアクセス可能なユニットである。ユニット15は、被観察物を付与する際の作業者によるアクセスポイント(被観察物付与位置あるいは単に付与位置P10とする。)に設置される。ユニット15は、作業者から被観察物を受け取るという観点で、作業主体アクセス用ユニット、被観察物受取りユニット等と表現されてもよい。
【0026】
標本作製装置1は、制御ユニット172~173を更に備える。例えば、制御ユニット172は、前処理部11、ユニット15および後処理部12の駆動制御を行うと共に標本作製装置1全体の管理制御を行う。また、制御ユニット173は、移載ユニット14を駆動するための専用の駆動制御を行う。他の実施形態として、何れかのユニット(例えばユニット173)の機能の一部は、他のユニット(例えばユニット172)により実現されてもよいし、それらの機能の一部/全部は単一のユニットにより実現されてもよい。
【0027】
制御ユニット172~173は、典型的にはASIC(特定用途向け集積回路)等の電子部品が実装された制御基盤を内蔵して構成されうるが、この構成に限られるものではない。例えば、制御ユニット172~173はCPU(中央処理装置)及びメモリを含んで構成され且つそれらの機能はコンピュータがプログラムを実行することにより実現されてもよい。即ち、制御ユニット172~173の個々の機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの何れにより実現されてもよい。
【0028】
上述の各要素191~197は、筐体100の外装パネルを支持する枠部材ないし基台に対して、例えばボルト、ネジ等を用いた締結により固定される。本実施形態では、筐体100は、上部支持部材UF、下部支持部材LFおよび連結支持部材CFを含む。上部支持部材UFには、前処理部11、後処理部12およびユニット15が配置される。下部支持部材LFは、上部支持部材UFに対して下方に間隔を空けて設けられる。連結支持部材CFは、上部支持部UFと下部支持部材LFとを連結する。筐体100は、上部支持部材UFを境に上部空間USと下部空間LSとに画定される。上部空間USは、前処理部11、後処理部12およびユニット15が配置される空間であり、下部空間LSは、標本格納部13が配置される空間である。また、上部空間USと下部空間LSとは連通して連通空間CSを形成している。連通空間CSは、移載ユニット14により後処理部12から標本格納部13に移送される観察標本SPLの移送空間である。
【0029】
前処理部11およびユニット15は、筐体100内において正面壁部F11側かつZ方向略中央部に設置される。筐体100は、正面壁部F11側であって所定の高さに前処理部11が配置される前処理配置部11Sと、ユニット15が配置される被観察物付与配置部15Sと、を更に含む。前処理部11は側面壁部F14側に位置し且つユニット15は側面壁部F12側に位置する。ユニット15は角側壁部F13に近接して位置する。同様に、前処理配置部11Sは側面壁部F14側に設けられ、被観察物付与配置部15Sは側面壁部F12側に設けられ、被観察物付与配置部15Sは角側壁部F13に近接する位置に設けられる。本実施形態の場合、上部支持部材UFに前処理配置部11Sおよび被観察物付与配置部15Sが設けられる。
【0030】
後処理部12は、筐体100内において側面壁部F12側かつZ方向略中央部に設置され、ユニット15とY方向で並設される。筐体100は、側面壁部F12に近接する位置に後処理配置部12Sを更に含む。本実施形態の場合、下部支持部材LFに後処理配置部12Sが設けられる。標本格納部13は、筐体100内において前処理部11下方に設置される。筐体100は、前処理配置部11Sの下方に標本格納配置部13Sを更に含む。本実施形態の場合、標本格納部13は下部空間LSに配置され、上部支持部材UFに標本格納配置部13Sが設けられる。
【0031】
制御ユニット172は、筐体100内において後処理部12下方に設置される。また、制御ユニット173は、筐体100内の上方に設置される。筐体100は、後処理配置部12Sの下方に制御ユニット172が配置される第1の制御ユニット配置部172Sを更に含む。本実施形態の場合、下部支持部材LFに第1の制御ユニット配置部172Sが設けられる。また、筐体100は、筐体内の上方に設置される制御ユニット173が配置される第2の制御ユニット配置部173Sを更に含む。本実施形態の場合、上部支持部材UFより上方の上部空間US側において連結支持部材CFに架設された連結部材RFに第2の制御ユニット配置部173Sが設けられる。
【0032】
移載ユニット14は、筐体100内において背面壁部F15側に設置される。移載ユニット14は、その先端をZ方向に移動させながら且つZ方向を軸として回動することが可能であり、本設置態様により後処理部12および標本格納部13の何れにもアクセス可能となっている。筐体100は、背面壁部F15側に移載ユニット配置部14Sを更に含む。本実施形態の場合、下部支持部材LFに移載ユニット配置部14Sが設けられる。移載ユニット14の先端は、上部空間US、下部空間LSおよび連通空間CSに亘って移動可能に配置される。
【0033】
また、筐体100内においてユニット15の下方には、液体タンク1931を収容する収容部193が更に設置される。液体タンク1931は、後述の観察標本の作製に際して使用される液体を貯留する。液体タンク1931は、液体貯留部(或いは単に貯留部)、容器等と表現されてもよい。収容部193は、液体タンク1931を収容する収容部材193aと、収容部材193aを収容位置と引出位置との間で移動可能に構成する移動機構193bと、を備える。収容部材193aは、移動機構193bにより、筐体100内に収まった状態から、図3に示すように-Y方向に引出すことができる。これにより、作業者は、筐体100(収容部材193a)に収容される液体タンク1931にアクセスすることが可能となる。例えば、作業者は、この収容部材193aを引き出すことにより、液体タンク1931に液体を補充したり、収容部材193aに収容されている古い液体タンク1931を新しいものに交換したりすることができる。本実施形態の場合、下部支持部材LFに収容配置部193Sが設けられる。
【0034】
[被観察物付与用のユニットについて]
図6は、前述の被観察物付与用のユニット15及びその周辺領域の様子を示す斜視図である。図9は、ユニット15の一部を拡大して示す図である。ユニット15は、移動ユニット151、傾動機構152および給液ユニット153を含む。また、ユニット15は、ユニット15と後処理部12との間で観察標本SPLを移載する移載ユニット155を更に含む。
【0035】
移動ユニット151は、基台1510、移動支持台(或いは回転支持台)1511、保持部1512および傾動機構152を含む。
【0036】
傾動機構152は、傾動固定体1514b、傾動移動体1514a、係合部1515および昇降機構1522を含む。傾動固定体1514bは、移動支持台1511に支持される。傾動移動体1514aは、傾動固定体1514bに対して移動可能に支持される。係合部1515は、傾動移動体1514aの一方端部側に構成される昇降機構1522は、係合部1515に係止し、傾動移動体1514aを移動させる。昇降機構1522は、係合部1515に係止する移動係止部1521と、移動係止部1521を移動させる昇降駆動部1522aと、を含む。本実施形態においては、傾動移動体1514aを移動させる移動機構として昇降機構を採用しているが、例えば、スイング機構、カム機構等、傾動移動体1514aを往復傾動させることができる移動機構が採用されてもよい。
【0037】
移動支持台1511は、基台1510上に、所定の方向に移動(回転)可能に支持されており、その上面に傾動固定体1514bが配置される。本実施形態では、傾動固定体1514bが所定の間隔を空けて4つ、具体的には、移動支持台1511の回転軸を中心に放射状に90度間隔で、配置される。傾動固定体1514bは、保持部1512を支持する傾動移動体1514aの一方端部と他方端部とが互いに異なる高さになるように、傾動移動体1514aを移動(回動)可能に支持する。
【0038】
保持部1512は、詳細については後述とするが、プレートPLを保持可能に構成され、傾動移動体1514aの上部に取り付けられる。本実施形態では4つの保持部1512が設けられるが、保持部1512は単数であってもよいし複数であってもよい。これら4つの保持部1512は、移動(回転)支持台1511の上下方向に延びる移動(回転)軸1511C周りに所定の間隔で配置され、移動される。
【0039】
保持係止部1513は、上記4つの保持部1512のそれぞれに一つずつ設けられ、保持部1512に保持されたプレートPLが落下しないように該プレートPLを係止する落下防止部材として機能する。保持係止部1513は、傾動移動体1514aの係合部1515側に設けられる。
【0040】
係合部1515は、上記4つの保持部1512のそれぞれに一つずつ設けられる。係合部1515は、保持部1512の下方において、一方が開放された略C字状に形成された部材であり、その開放側が基台1510の径方向外方を向く姿勢で設けられる。
【0041】
移動係止部1521は、側面視で逆L字形の部材であり、本体部1521mbの上端から基台1510の径方向内方に向けて延出する左右一対の板部1521a及び1521bを備える。板部1521a及び1521b間には、ローラ1521rが嵌設された固定軸1521fが設けられる。ローラ1521rは、固定軸1521fに対して回転自在に設けられ。そして、このローラ1521rが、上記4つの係合部1515の1つと所定の位置で係合される。具体的には、移動支持台1511が回動し、係合部1515が水平移動されることで、係合部1515の開放部が移動係止部1521を収容する(挟み込む)ようにそれらが嵌合する。これにより、移動係止部1521(ローラ1521r)と係合部1515とが係わり合い、詳細については後述とするが、保持部1512は傾動可能に支持される。また、昇降駆動部1522aは、移動係止部1521の本体部1521mbに接続して設けられる。
【0042】
ここで、前述のとおり、保持部1512は傾動移動体1514aと傾動固定体1514bとにより回動可能に支持されている。そのため、移動係止部1521と上記係合部1515とが係合した状態で昇降駆動部1522aを昇降(上下動)させることにより、傾動移動体1514aが傾動固定体1514bに対して回動され、これにより保持部1512が傾動される。言い換えると、4つの保持部1512の内、移動係止部1521と係合されている保持部1512のみが昇降駆動部1522aにより傾動可能とされる。
【0043】
尚、ここでは係合部1515が移動係止部1521を収容する態様を例示したが、他の実施形態として、移動係止部1521及び係合部1515は、それらの作用が互いに逆の関係になるように構成されてもよい。即ち、移動係止部1521は、その本体部1521mbの上端から基台1510の径方向内方に向けて延出する上下一対の板部を備えていてもよく、係合部1515側に上下一対の板部間に嵌まり込むローラを設けてもよい。
【0044】
移動ユニット151および傾動機構152について小括すると、回転支持台1511が回転することにより4つの保持部1512の1つが付与位置P10に移動した際、該保持部1512に対応する係合部1515と係止部1521とが係合される。この状態において移動係止部1521が昇降することにより保持部1512が回動し、即ち、該保持部1512及びそれが保持するプレートPLを傾動させることができる。このような構成により、プレートPLの姿勢を、例えば水平姿勢または傾斜姿勢に変更することができる。
【0045】
上述の移動ユニット151は、少なくとも3つの領域/位置において保持部1512及びそれに保持されたプレートPLを停止させることができる。第1に、移動ユニット151は、前処理部11からプレートPLを受け取って該プレートPLを保持部1512に保持させる領域において、保持部1512を停止させる。第2に、移動ユニット151は、作業者がプレートPL上に被観察物を付与するための領域において、保持部1512及びそれに保持されたプレートPLを停止させる。また、第3に、移動ユニット151は、被観察物が付与されたプレートPLを観察標本として後述の移載ユニット155により保持部1512から取り出すための領域において、保持部1512及びそれに保持されたプレートPLを停止させる。ここで、基台1510には回転駆動機構が内蔵されており、制御ユニット172は、4つの保持部1512の少なくとも1つが上述の3つの領域の何れかに位置するように、回転支持台1511を間欠駆動する。これらの詳細については後述とする。
【0046】
移動ユニット151は、保持部1512により保持されたプレートPLを所定の位置に順に移動させるという観点で、搬送ユニット、移送ユニット等と表現されてもよい。また、傾動機構152は、プレートPLの姿勢を変更するという観点で、姿勢変更ユニット、姿勢調整ユニット等と表現されてもよい。
【0047】
給液ユニット153は、液体を排出可能なノズル1531と、ノズル1531を液体供給位置と待機位置との間で移動させる移動機構154と、を含む。また、給液ユニット153は、液体タンク1931から液体を吸引してノズル1531から該液体を排出させるための不図示の供給機構(ポンプ等)を含む。これにより、給液ユニット153は、ノズル1531を液体供給位置に移動させ、保持部1512により保持された上記プレートPL上に液体を供給(給液)可能である。詳細については後述とするが、これによりプレートPL上に液体溜まりを形成することができる。
【0048】
移動機構154は、本実施形態ではスライド機構であり、給液ユニット153を図中矢印の方向に移動可能である。本実施形態においては、移動機構154は、給液ユニット153を、上記プレートPL上に液体を供給するための位置(液体供給位置)と、ホームポジション等とも称される待機位置との間で移動させる。例えば、移動機構154は、給液を実行しない間においては給液ユニット153を待機位置にて待機させ、給液を実行する際にはノズル1531がプレートPL上に位置するように給液ユニット153を液体供給位置に移動させる。
【0049】
移載ユニット155は、本実施形態ではプレートPLを把持可能なマニピュレータであり、詳細について後述とするが、被観察物が付与されたプレートPLを観察標本として保持部1512から受け取って後処理部12に移載する。
【0050】
尚、図5に示されるように、標本作製装置1は貯留タンク171を更に備える。給液ユニット153により供給された液体の余剰分あるいは落下分は、この貯留タンク171に導かれ、貯留タンク171内に貯められる。
【0051】
[標本作製装置内での作業フローについて]
図7は、前処理部11での作業内容、ユニット15での作業内容、および、後処理部12での作業内容を説明するための模式図である。
【0052】
前処理部11は、プレート格納部111、搬送ユニット112、印字ユニット113および読取ユニット114を含む。プレート格納部111は、被観察物が付与される前のプレートPL、即ち観察標本の作製に使用されるべき洗浄済あるいは未使用のプレートPL、を格納するマガジン(カートリッジ、カセット等と表現されてもよい。)である。プレート格納部111は、複数のプレートPLを格納し、それら複数のプレートPLを順に搬送ユニット112に送出可能である。本実施形態の場合、複数のプレートPLは、プレート格納部111内にて積層されて格納される。搬送ユニット112は、本実施形態では搬送ベルトであり、プレート格納部111から送出されたプレートPLをユニット15に向けて一枚ずつ搬送する。
【0053】
印字ユニット113は、本実施形態ではインクジェット式の記録ヘッドであり、搬送ユニット112により搬送中のプレートPLに対して印字を行い、例えば、所定の識別情報1131を付与する。識別情報1131には、例えば二次元コードが用いられるが、代替的/付随的に、文字、数字、記号、図形等が用いられてもよい。
【0054】
読取ユニット114は、プレートPLに付与された識別情報1131を読み取り、その結果をコンピュータ95に出力することも可能である。コンピュータ95は、識別情報1131を示す内容を表示端末96に表示させることも可能である。これにより、識別情報1131と、それが付されたプレートPLに付与される被観察物(の情報)との関連付けを行い、それらの情報を管理することが可能となる。
【0055】
図13に詳細に示されるように、後処理部12は、移送ユニット121、加熱ユニット122および確認ユニット123を含む。移送ユニット121は、本実施形態ではウォーキングビーム式移送装置であり、標本載置部1211および標本移送機構1212を含む。標本載置部1211は、複数の観察標本を一枚ずつ載置可能な長尺状の板材である。標本載置部1211は単に載置部と表現されてもよい。また、標本載置部1211の移送終端部1211aには、後述の確認ユニット123が配置され、移送終端部1211aに移送された観察標本の状態の確認が行われる。
【0056】
標本移送機構1212は、標本載置部1211の両側方に配置された一対のビーム部材と、それらを駆動するための駆動機構と、を備える。駆動機構による駆動により、これら一対のビーム部材が同時並行して上下および水平に動作する。具体的には、一対のビーム部材は、上昇、搬送一方向への移動(送り動作)、下降、搬送他方向への移動(戻り動作)が、この順で連続的に動作され、これによって、標本載置部1211上の観察標本が一方向に間欠的に移送される。標本移送機構1212は、単に移送機構と表現されてもよいし、標本搬送機構(或いは単に搬送機構)等と表現されてもよい。
【0057】
加熱ユニット122は、移送ユニット121下方に設置され、標本載置部1211上に載置された状態で、標本移送機構1212により移送中の観察標本を加熱する。これにより、プレートPL上の被観察物が伸展される。加熱ユニット122は、温度処理ユニット等と表現されてもよいし、同様の観点で、温度処理ユニット、被観察物伸展ユニット等と表現されてもよい。
【0058】
確認ユニット123は、加熱ユニット122により加熱された観察標本の処理状態を確認する。本実施形態では、確認ユニット123は、照明装置1231および撮像装置1232を含む。照明装置1231には、LED等を光源として備える公知の灯体が用いられればよい。撮像装置1232には、CCD/CMOSイメージセンサを備える公知のカメラが用いられればよい。確認ユニット123は、照明装置1231により観察標本に光を照射しながら撮像装置1232により該観察標本を撮像し、画像情報として記録すると共に識別情報1131との関連付けを行う。また、該観察標本の処理状態を確認し、所定の判定を行う。確認ユニット123は、確認及び判定の結果をコンピュータ95に出力することも可能である。これにより、コンピュータ95は、観察標本が適切に作製されたか否かを示す情報を表示端末96に表示させることも可能である。他の実施形態として、上記確認及び判定はコンピュータ95により実行されてもよい。
【0059】
再び図7を参照しながら前処理部11、ユニット15および後処理部12での作業内容について小括すると、前処理部11では、ユニット15に向けて搬送されるプレートPLに識別情報1131が付与される(区別のため「プレートPL0」と図示する。)。ユニット15は、前処理部11からプレートPLを受け取る(区別のため「プレートPL1」と図示する。)。その後、ユニット15は、前処理部11から受け取ったプレートPLを、作業者が被観察物(被観察物OBとする。)を付与(ここでは載置)するための位置まで移動させる(区別のため「プレートPL2」と図示する。)。
【0060】
詳細については後述とするが、このプレートPL上には、給液ユニット153により液体が供給され、液体溜まりが形成される。作業者は、この液体溜まりに、例えばピンセット等の器具T11を用いてこのプレートPL上の液体溜まりに被観察物OBを載置することができる。その後、傾動機構152がプレートPLを傾動させることにより、この液体溜まりはプレートPL上から除去される。尚、液体には、被観察物OBに対して実質的な化学的影響のない溶液ないし薬液が用いられればよく、本実施形態では純水が用いられるものとするが、他の実施形態として生理食塩水等が用いられてもよい。
【0061】
その後、ユニット15は、被観察物OBが付与された上記プレートPLを、移載ユニット155がアクセス可能な位置まで移動させる(区別のため「プレートPL3」と図示する。)。そして、移載ユニット155は、被観察物OBが付与された上記プレートPLを観察標本としてユニット15から取り出し、移送ユニット121に移載する(区別のため「プレートPL4」と図示する。)。その後、このプレートPLは移送ユニット121により所定方向に移送されると共に加熱ユニット122による加熱処理を受け、それにより該プレートPL上の被観察物は伸展されることとなる。移送ユニット121による移送終端部において、確認ユニット123により観察標本が適切に作製されたか否かを確認する(区別のため「プレートPL5」と図示する。)。移載ユニット14は、このプレートPL及びその上の被観察物OBを観察標本として移送ユニット121から取り出して、標本格納部13に格納する。
【0062】
尚、ユニット15の駆動のタイミング(例えばプレートPLの移動のタイミング)は、制御ユニット172と接続される入力装置94(図1図2参照)を作業者が脚で押圧することにより決定されうる。例えば、前処理部11からのプレートPLがユニット15により所定位置まで移動した後、作業者は、そのプレートPL上に被観察物OBを付与してから入力装置94を押圧すればよい。
【0063】
図14は、標本格納部13の構成例を示す斜視図である。標本格納部13は、枠部材130、上段板材131A、下段板材131Bおよび雰囲気調整ユニット132を含む。板材131A及び131Bはそれぞれ所定の角度に傾斜された状態で枠部材130に架設され、それら板材131A及び131Bにより二段のラック131が形成される。板材131A及び131Bには、所定の位置に複数の収容部1312が設けられる。収容部1312は、所定の間隔に設けられた一対の収容部材1312a及び1312bにより構成され、ケース1311の第一の傾斜方向d1への載置および取出を許容する。そして、一対のラック部材1312a及び1312bを一組の収容部1312として、それぞれの板材131Aおよび131B上に複数組の収容部1312が設けられる。
【0064】
ケース1311が第一の傾斜方向d1に傾斜して収容部1312へ載置されるので、移載ユニット14による観察標本SPLの収納を第一の傾斜方向d1と交差する第二の傾斜方向d2から行うことができ、効率よくケースに格納することができる。また、収容部1312へケース1311の載置および収容部1312からケース1311の取出の傾斜方向が第一の傾斜方向d1に設定されているので作業者によるケース1311の取り扱い作業が容易に効率よく行うことができる。
【0065】
ここでは板材131A及び131Bの2つの板材を例示するが、板材の数量(即ち、ラックの段数)はこれに限られない。また、板材131A及び131Bのそれぞれの収容部1312には、所定数の観察標本(観察標本SPLとする。)を1セットとして設定して収納可能なケース1311を1以上収納可能となっている。これにより、複数の観察標本SPLを作業者により管理し易くしている。
【0066】
雰囲気調整ユニット132は、本実施形態では板材131A及び131Bの下方に設置された送風機であり、標本格納部13の雰囲気を所望の環境に調整する。例えば、雰囲気調整ユニット132は、標本格納部13の雰囲気を所望の温度に維持し及び/又は所望の湿度に維持することが可能な不図示の環境調整ユニットを含む。雰囲気調整ユニット132は、環境維持ユニット、環境管理ユニット、空調ユニット等と表現されてもよい。
【0067】
[筐体の取付け部材について]
再び図3図4を参照すると、筐体100には、作業者により筐体100内を視認可能に、及び/又は、必要に応じて作業者が筐体100内にアクセス可能となるように、開閉部材191、192、194及び195、板材196、並びに、窓部材197が取り付けられている。これらは、何れも筐体100と共に筐体100の内/外を区画する区画部材である。尚、筐体100上部には報知ランプ182が設けられており、筐体100内へのアクセスを要する際には報知ランプ182の点灯ないし点滅により作業者に報知される。
【0068】
開閉部材191は、正面壁部F11の上部に開閉自在に設けられた光透過性のカバーである。作業者は、開閉部材191を開けることで前処理部11にアクセス可能となり、例えば、プレート格納部111にプレートPLを補充し又はプレート格納部111を新しいものに交換することができる。
【0069】
開閉部材192は、正面壁部F11に開閉自在に設けられた光透過性のカバーである。作業者は、開閉部材192を開けることで標本格納部13にアクセス可能となり、例えば、標本格納部13からケース1311を取り出すことで観察標本SPLを取り出すことができる。
【0070】
開閉部材194は、側面壁部F12に開閉自在に設けられたドア部材であって窓部材を含むドア部材である。作業者は、開閉部材194を開けることで後処理部12の各要素にアクセス可能となり、例えば、確認ユニット123により適切に作製されていないと判定された観察標本を取り除くことができる。
【0071】
開閉部材195は、側面壁部F14に開閉自在に設けられたドア部材であって窓部材を含むドア部材である。開閉部材195は、例えば移載ユニット14の動作範囲を包絡するサイズで側面壁部F1に設けられ、開閉部材195を開けることで作業者による筐体100内のメンテナンスを容易に行うことが可能となっている。開閉部材195は、メンテナンス用ドア等と表現されてもよい。
【0072】
窓部材197は、背面壁部F15に設けられた光透過性の板材である。作業者は、装置1の背面側からも筐体100内の様子を視認可能となっている。
【0073】
板材196は、本実施形態では正面壁部F11の上部に固定された光透過性の板材である。板材196は、前述のユニット15(図6図9及び図7参照)の一部を、作業者が被観察物OBを付与するためにアクセス可能な領域(付与領域)として露出する。図3を参照しながら述べた付与位置P10は、この付与領域内に含まれる。
【0074】
図3から分かるように、付与位置P10近傍には、作業者がアームないしハンドの一部を載せることが可能な作業補助部P11が設けられる。これにより、作業者は、付与位置P10にてプレートPL上に被観察物OBを付与(載置)する際、作業者自身のアームないしハンドの一部を作業補助部P11に載せて(接触させて)固定する(安定させる)ことが可能となり、安定した姿勢で被観察物OBをプレートPL上に付与可能となる。尚、本実施形態では、作業補助部P11は、角側壁部F13の上辺部としているが、アームレスト部材などの専用の部材を設置し、活用してもよい。
【0075】
ここで、ユニット15においては回転支持台1511が回転し、それにより、4つの保持部1512の1つが付与位置P10まで移動する。一方、それ以外の3つの保持部1512は筐体100内に位置することとなる。板材196下方には(本実施形態においては板材196と回転支持台1511の上面との間には)所定の間隙が形成されており、回転支持台1511の回転に伴い個々の保持部1512は該間隙を通過することとなる。
【0076】
[被観察物付与用ユニット等の設置態様について]
図3から分かるように、被観察物付与用のユニット15および付与位置P10(ユニット15のうち板材196により露出された一部)は、筐体100の角部に近接して(角側壁部F13側に)設けられ、上記付与領域として設定される。ここで、角部に近接しているとは、他の角部よりも近いことを示す。これにより、作業者は、標本作製装置1と作業台91とでの作業を効率よく行うことが可能となる。
【0077】
本実施形態においては、被観察物作成装置92とユニット15(の付与位置P10)との距離が短い。そのため、被観察物OBを装置92から取り出してユニット15に移載する作業を効率よく行うことが可能となる。ユニット15と装置92とは上下方向における距離(高低差)が短いことが好ましく(例えば50cm以下、好適には30cm以下、より好適には20cm以下)、それらの双方が作業者の腰の位置より上方かつ肩より下方に(低く)位置することで作業者の身体への負担が軽減され、更に効率よく作業を行うことができる。なお、このような条件が成立するように標本作製装置1及び/又は作業台91の高さは調整されてもよい。
【0078】
更に、標本作製装置1の筐体100は、上記角部において面取り形状を有し(角側壁部F13を含み)、それにより作業者の脚が筐体100に干渉することを軽減可能とする。このことを適切に実現可能とするため、角側壁部F13の水平方向の幅は、例えば10cm程度、好適には15cm程度またはそれ以上、とするとよい。また、正面壁部F11‐角側壁部F13間の第一の角度(内角)、及び、側面壁部F12‐角側壁部F13間の第二の角度は、何れも、例えば110~160[度]程度、好適には130~140[度]程度、となるとよい。
【0079】
また、図3から分かるように、本実施形態では、筐体100の上記角部は、上端部から下端部まで全域に亘って角側壁部F13が配置され面取り形状となっているが、他の実施形態として、面取り形状は部分的に(例えば上端部および中間部に)設けられてもよく、必要箇所に設けられればよい。
【0080】
[保持部の構成について]
図8は、保持部1512の構造を示す斜視図である。保持部1512は、載置部201および壁部202を含む。載置部201は、プレートPLを載置するための載置面を形成する部分であり、プレートPLの滑りにくい材料で且つプレートPLのサイズに応じた形状で(ここでは長尺状に)形成されるとよい。この載置面には、凹凸形状が設けられており、本実施形態では、プレートPLの裏面と当接する当接部(凸状の部分)2011と、プレートPLの裏面と当接しない非当接部(凹状の部分)2012と、が短手方向に交互に且つ長手方向に沿って溝状に設けられる。例えば、プレートPL上に過剰な液体が供給された場合には該液体の余剰分は非当接部2012に入り込むこととなり、プレートPLの裏面と当接する当接部(凸状の部分)2011との間に浸入した該液体の表面張力によって生じうる密着が軽減されうる。
【0081】
壁部202は、載置部201の3つの辺部に設けられ、本実施形態では、側方壁部2021及び2022並びに端側壁部2023を含む。側方壁部2021及び2022は、載置部201の短手方向の両端部において長手方向に沿って設けられる。端側壁部2023は、載置部201の長手方向の一端部において短手方向に沿って設けられる。本実施形態では、壁部2021~2023は相互に接続され、即ち、壁部202は載置部201の三辺部が閉塞され且つ残りの一辺部が開放された形状となるように略U字状に一体成形されて成る。また、側方壁部2021及び2022並びに端側壁部2023は、当接部2011の載置面からプレートPLの厚み以上の高さで上方に延出する壁面を含み、即ち、側方壁部2021に含まれる側方壁面2021w、側方壁部2022に含まれる側方壁面2022w、及び、端側壁部2023に含まれる側方壁面2023wにより、内周面が形成される。このような構成により、壁部202は、載置部201にプレートPLが載置された場合には該プレートPLの3つの辺を囲むこととなる。壁部202は、枠部等と表現されてもよい。
【0082】
壁部202は、少なくとも表面において疎液性の疎液部(撥液性の撥液部)を含む。即ち、壁部202は、少なくとも表面が液体と馴染み難い疎液性の材料で構成され又は疎液性を有する材料で表面処理されている。例えば、上記液体として水を用いる場合には、疎水性ないし撥水性を有するシリコン樹脂、フッ素樹脂等が用いられる。疎液性とは、或る上面における液体に対する性質を示す相対的なものであるが、典型的には、該上面における液滴の接触角が所定の条件を満たすか否かに基づいて決められうる。例えば、液滴の接触角をθとしたときに、例えば45°<θ、好適には60°<θを満たす場合に、疎液性を有するものと決められてもよい。
【0083】
尚、本実施形態においては、載置部201と壁部202とは一体成形されているものとするが、他の実施形態として、壁部202の全部/一部は載置部201に対して取付け可能な別部材として構成されても良い。また、壁部202の上部に疎液処理された部材が配されてもよい。
【0084】
このような構成により、保持部1512は、載置部201に載置されたプレートPLを壁部202により囲みつつ適切に保持する。保持部1512は、プレート載置部材(或いは単に載置部材)、ベースプレート、観察標本作製用の治具等と表現されてもよい。給液ユニット153によりプレートPL上に液体が供給された場合には、該液体は、壁部202の疎液部により壁部202の上面より高い液面を形成する状態でプレートPL上に滞留することとなり、これによりプレートPL上に液体溜まりが適切に形成される。また、傾動機構152により保持部1512及びプレートPLを壁部202の開放側(壁部202が設けられていない側、端側壁部2023とは反対側)に傾動させた場合、液体溜まりの液体は上記略U字状の壁部202の開放側に流動して排出され、プレートPL上から該液体溜まりが除去される。
【0085】
[プレート上への被観察物の付与態様について]
図10は、保持部1512の構成を示す上面図と、該上面図の略中間位置に図示された線d1-d1での断面図(以下、単に「断面図」。本実施形態の他の断面図についても同様。)と、を並べて示す。状態S100は、保持部1512にプレートPLを配置する前の状態(保持部1512のみの状態)を示す上面図および断面図である。状態S101は、保持部1512にプレートPLを配置した後の状態を示す上面図および断面図である。本実施形態においては、プレートPLは、被観察物OBが載置されるべき載置部211と、識別情報1131を印字可能なフロスト部212とを含む。
【0086】
前述のとおり、傾動機構152によりプレートPLを傾動させることで上記略U字状の壁部202の開放側から液体溜まりの液体を排出(排液)可能であり、それにより該液体溜まりをプレートPL上から除去可能となっている。即ち、プレートPLのうち、壁部202の開放側の一端部は、液体を排出する際に液体の流れる方向(移動方向)の下流側となる端部(排液下流側端部)に対応し、その反対側(端側壁部2023側)の他端部は、上流側となる端部(排液上流側端部)に対応する。この観点で、保持部1512のうち壁部202の開放側の端部は、排液部等と表現されてもよい。
【0087】
図11は、ユニット15における観察標本SPLの作製の様子を工程毎に示す断面図である。観察標本SPLを作製する方法は、保持部1512に保持されたプレートPL上に液体溜まりW1を形成する工程、液体溜まりW1上に被観察物OBを載置する工程、及び、液体溜まりW1を除去しながら被観察物OBをプレートPLに定着させる工程、に大きく分けられる。
【0088】
状態S200は、保持部1512と共にプレートPLを傾斜させてから該プレートPL上に液体を供給する工程を示す断面図である。先ず、水平姿勢の保持部1512およびプレートPLを、矢印で図示する第一の方向に傾けて第一傾斜姿勢とする。これにより、プレートPLにおける壁部202の開放側の一端部よりも端側壁部2023側の他端部が低くなる。このときの傾斜角(プレート1表面(上面)と水平面とが成す角:θ200)は、例えば0.5~5[度]程度とすればよく、本実施形態では1[度]程度とする。
【0089】
次に、状態S200のプレートPL上に(給液ユニット153の)ノズル1531により液体を供給する。前述のとおり、保持部1512は疎液性の壁部202を含む。そのため、傾斜角θ200で傾斜姿勢のプレートPL上においては、上記供給された液体は壁部202により堰き止められてプレートPL上に適切に滞留することとなり、それにより、プレートPL上に液体溜まりW1が形成される。具体的には、上記供給された液体は、壁部202の疎液効果によってはじかれてプレートPL上に滞留し、その表面(後に被観察物OBが載置される面)が壁部202の上面より上方に位置するように液体溜まりW1が形成される。液体溜まりW1の液体の深さ(液深)は、壁部202の開放側である一端部側よりも端側壁部2023側である他端部側において深くなる。
【0090】
状態S201は、液体溜まりW1上に被観察物OBを載置する工程を示す断面図である。作業者は、器具T11を用いて被観察物OBを液体溜まりW1上に載置する。上述のとおり、液体溜まりW1の液深は、壁部202の開放側である一端部側よりも端側壁部2023側である他端部側において深くなっている。詳細については後述とするが、この段階においては、作業者は、器具T11により被観察物OBを、その位置が変動しないように液体溜まりW1に対して押圧して保持するとよい。尚、状態S201における傾斜角を傾斜角θ201(=θ200)として図示する。
【0091】
状態S202は、液体溜まりW1上に被観察物OBが載置されたプレートPLを、前述の状態S201とは反対側となる第二の方向に傾斜させて第二傾斜姿勢とし(傾斜角θ202として図示する。)、それと共に該液体溜まりW1の液体の排出を開始する工程を示す断面図である。これにより、液体溜まりW1の液体を壁部202の開放側である一端部側に導く。
【0092】
ここで、状態S202では、液体溜まりW1の液深は、壁部202の開放側である一端部側よりも端側壁部2023側である他端部側において浅くなる。そのため、被観察物OBは、少なくとも他端部側からプレートPL表面に近接して載置されるため、他端部側においてプレートPL表面に直接的に接触しうる。
【0093】
図12は、プレートPLを更に第二の方向に傾斜させて該プレートPL上の液体溜まりW1の液体の排出を促進し完了させる迄の工程を示す断面図である。
【0094】
状態S203では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第二傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第三傾斜姿勢とする(傾斜角θ203(>θ202)として図示する。)。状態S203では、液体溜まりW1の液体の排出に伴い、該液体の液位は下がっていく(該液体が壁部202の開放側に移動していく)こととなる。これにより、液体溜まりW1上の被観察物OBが他端部側(端側壁部2023側)においてプレートPL表面に直接的に接触し、及び/又は、該接触している面積が大きくなっていくこととなる。一方、一端部側(壁部202の開放側)においては、被観察物OBは依然として液体溜まりW1上に位置する。
【0095】
尚、この状態203(或いは前述の状態202)においては、被観察物OBが少なくとも排液上流側において部分的にプレート表面に定着しているため、作業者は被観察物OBから器具T11を離してもよい。
【0096】
状態S204では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第三傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第四傾斜姿勢とする(傾斜角θ204(>θ203)として図示する。)。状態S204では、液体溜まりW1上の被観察物OBがプレートPL表面に接触している面積が更に大きくなる。それに伴い、被観察物OBにシワ、ヨレ等を生じさせることなく被観察物OBをプレートPL表面に貼り付けさせることができる。
【0097】
状態S205では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第四傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第五傾斜姿勢とする(傾斜角θ205(>θ204)として図示する。)。状態S205では、液体溜まりW1の液体の排出が完了し、被観察物OB全体がプレートPL表面に貼り付いて観察標本SPLが作製されることとなる。傾斜角θ205は、例えば40~60[度]程度であり、本実施形態では55[度]程度とする。
【0098】
小括すると、状態S200~S205の工程によれば、被観察物OBが、プレートPLの表面に広がる液体の排出(被観察物OBとプレートPLの表面との間からの液体の流出)に伴って、他端部側(端側壁部2023側)から一端部側(壁部202の開放側)に向かって連続的にプレートPL表面に貼り付いていく。即ち、排液上流側で被観察物OBを部分的にプレートPL表面に接触させた後、該被観察物OBは排液上流側から排液下流側まで順にプレートPL表面に接触することとなる。これにより、最終的に、被観察物OBをプレートPL表面に定着させることが可能となる。よって、本実施形態によれば、被観察物OBはプレートPL上においてシワ、ヨレ等が解消された状態/観察し易い状態となり、観察標本SPLを適切に作製可能となる。
【0099】
[第1実施形態のまとめ]
以上、本実施形態によれば、プレートPLを保持可能な保持部1512が傾動移動体1514aに設けられる。このような構成によりプレートPLの姿勢を変更可能とし(例えば水平姿勢あるいは傾斜姿勢とし)、プレートPL上の液体溜まりW1の液体を流動させて適切に排出可能とする。これにより、液体溜まりW1はプレートPL上から適切に除去され、それと共に被観察物OBは一方側から徐々にプレートPL表面に適切に定着され、観察標本SPLは適切に作製されることとなる。よって、本実施形態によれば、観察標本SPLを作製する際の作業効率の向上に有利と云える。
【0100】
また、標本作製システムSYにおいては、作業主体(ここでは作業者)がプレートPLにアクセスして被観察物OBを付与するための付与領域は、筐体100の角部に設けられる。この付与領域は、実施形態においては、角側壁部F13の上部に設定され、付与位置P10を含む領域である。制御ユニット172は、前処理部11から保持部1512へのプレートPLの供給位置から、この付与領域内の付与位置P10まで保持部1512及びプレートPLが移動するように、移動ユニット151を制御する。よって、本実施形態によれば、作業主体が適切にプレートPLにアクセス可能となるため、この観点においても観察標本SPLを作製する際の作業効率の向上に更に有利と云える。
【0101】
尚、その後、制御ユニット172は、上記付与領域内の付与位置P10から、被観察物OBが付与されたプレートPLを移載ユニット155が取り出す位置まで保持部1512及びプレートPLが移動するように、移動ユニット151を制御する。また、ユニット15の上記設置態様(図3参照)によれば、板材196は、前処理部11及び後処理部12を筐体100内と筐体100外となるように区画すると云える。
【0102】
(第2実施形態)
前述の第1実施形態では、ユニット15におけるプレートPL上の液体溜まりW1を、プレートPLを傾動させることにより流動させて排出し除去する態様を例示したが、液体溜まりW1の除去方法はこれに限られるものではない。
【0103】
図15は、第2実施形態に係る保持部1512’の構造を示す斜視図である。保持部1512’は、載置部201及び壁部202と、孔部203とを含む。孔部203は、載置部201と端側壁部2023との境界部において、載置部201を挿通するように設けられた開口部である。また、孔部203は、一部が端側壁部2023の側方壁面2023w’に端側壁部2023の上面まで連続して形成される。他の内容については前述の保持部1512(第1実施形態参照)同様とする。
【0104】
図16は、保持部1512’の構成を示す上面図と、該上面図における線d1-d1での断面図(以下、単に「断面図」。本実施形態の他の断面図についても同様。)と、を並べて示す。状態S300は、保持部1512’にプレートPLを配置する前の状態(保持部1512’のみの状態)を示す上面図および断面図である。状態S301は、保持部1512’にプレートPLを配置した後の状態を示す上面図および断面図である。
【0105】
詳細については後述とするが、保持部1512’の孔部203には液体排出用の排液機構を設置可能であり、これにより液体溜まりW1の除去が可能となっている。この排液機構は、液体を吸引するためのノズル221と、該吸引された液体を排出するための管222と、管222に連結され且つノズル221による液体の吸引を実行するための不図示の吸引駆動機構(例えばポンプ等)と、を含む。即ち、プレートPLのうち、ノズル221側の一端部は、ノズル221により液体を吸引して排出する際に液体の流れる方向の下流側となる端部(排液下流側端部)に対応し、その反対側の他端部は、上流側となる端部(排液上流側端部)に対応する。この観点で、孔部203(および上記排液機構)は排液部等と表現されてもよい。
【0106】
ノズル221は、排液する際の液体が通る流路221aを含み、筒状に形成される。流路221aの先端部は、筒の軸心から一方が開放され、開放下部221b、開放側部221cおよび開放上部221dにより形成される。開放下部221bおよび開放上部221dの一方端部に設けられる開放側部221cは、流路221aの一部(外周部および流路部の一部)が連続して形成される。開放下部221bは、載置部201の載置面の一部を形成する。開放上部221dは、ノズル221の外径と同じサイズで形成される。
【0107】
このように形成されたノズル221を載置部201に設けられた孔部203に挿通させ、載置部201に載置されるプレートPLの端部の一部を受け入れるように配置させる。この状態で不図示の排液機構を動作させ、プレートPL上の液体の排出を開始させると、載置部201に載置されたプレートPL上の液体は、開放上部221dとプレートPLの上面との間に形成された隙間を通ってノズル221の開放側部221cへ移動し、開放側部221cとプレートPLの端部とで形成される断面半円状の経路を通って流路221aに導かれ、効率よくプレートPL状の液体の排出を行うことができる。
【0108】
図17は、ユニット15における観察標本SPLの作製の様子を工程毎に示す断面図である。観察標本SPLを作製する方法は、保持部1512’に保持されたプレートPL上に液体溜まりW1を形成する工程、液体溜まりW1上に被観察物OBを載置する工程、及び、液体溜まりW1を除去しながら被観察物OBをプレートPLに定着させる工程、に大きく分けられる。
【0109】
状態S400は、保持部1512’と共にプレートPLを傾斜させてから該プレートPL上に液体を供給する工程を示す断面図である。先ず、水平姿勢の保持部1512’およびプレートPLを、矢印で図示する方向に傾けて第一傾斜姿勢とする。これにより、プレートPLにおけるノズル221側の一端部が他端部よりも低くなる。このときの傾斜角(プレート1表面(上面)と水平面とが成す角:θ400)は、例えば0.5~5[度]程度とすればよく、本実施形態では1[度]程度とする。
【0110】
次に、状態S400のプレートPL上に(給液ユニット153の)ノズル1531により液体を供給する。前述のとおり、保持部1512’は疎液性の壁部202を含む。そのため、傾斜角θ400で傾斜姿勢のプレートPL上においては、上記供給された液体は壁部202により堰き止められてプレートPL上に適切に滞留することとなり、それにより、プレートPL上に液体溜まりW1が形成される。具体的には、上記供給された液体は、壁部202の疎液効果によってはじかれてプレートPL上に滞留し、その表面(後に被観察物OBが載置される面)が壁部202の上面より上方に位置するように液体溜まりW1が形成される。液体溜まりW1の液深は、ノズル221側の一端部側よりも他端部側において浅くなっている。
【0111】
状態S401は、液体溜まりW1上に被観察物OBを載置する工程を示す断面図である。作業者は、器具T11を用いて被観察物OBを液体溜まりW1上に載置する。上述のとおり、液体溜まりW1の液深はノズル221側の一端部側よりも他端部側において浅くなっている。そのため、被観察物OBは、少なくとも他端部側においてはプレートPL表面に近接して載置され、或いは、被観察物OBは、液体溜まりW1に部分的に沈みうるため、他端部側においてプレートPL表面に直接的に接触しうる。尚、状態S401における傾斜角を傾斜角θ401(=θ400)として図示する。
【0112】
状態S402は、液体溜まりW1上に被観察物OBが載置されたプレートPLを更に傾斜させると共に該液体溜まりW1の液体の排出を開始する工程を示す断面図である。即ち、作業者は、所望のタイミングでプレートPLの傾斜角を更に大きく(第一傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第二傾斜姿勢とする(傾斜角θ402(>θ401)として図示する。)。これにより、液体溜まりW1の液体をノズル221に導くと共に該ノズル221による排液を開始する。
【0113】
液体溜まりW1上に被観察物OBを載置させた後に傾斜させる動作(θ401からθ402にする動作)と、吸引ノズル211により液体を吸引する動作とは、略同時に開始されてもよいが、開始のタイミングは必ずしも一致している必要はなく、少なくとも部分的に重複して実行されればよい。典型的には、液体溜まりW1の液体が保持部1512’の壁部202上方から流出することがないように、傾斜角を大きくする動作は、吸引ノズル211により液体を吸引する動作の開始後、所定時間が経過してから開始されうる。
【0114】
図18は、プレートPLを更に傾斜させて該プレートPL上の液体溜まりW1の液体の排出を促進し完了させる迄の工程を示す断面図である。
【0115】
状態S403では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第二傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第三傾斜姿勢とする(傾斜角θ403(>θ402)として図示する。)。状態S403では、傾斜角の増大及び/又は液体溜まりW1の液体の排出に伴い、該液体の液位は下がっていく(該液体がノズル221側に移動していく)こととなる。これにより、液体溜まりW1上の被観察物OBが他端部側(ノズル221とは反対側)においてプレートPL表面に直接的に接触し、及び/又は、該接触している面積が大きくなっていくこととなる。一方、一端部側(ノズル221側)においては、被観察物OBは依然として液体溜まりW1上に位置する。
【0116】
状態S404では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第三傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第四傾斜姿勢とする(傾斜角θ404(>θ403)として図示する。)。状態S404では、液体溜まりW1上の被観察物OBがプレートPL表面に接触している面積が更に大きくなる。それに伴い、被観察物OBにシワ、ヨレ等を生じさせることなく被観察物OBをプレートPL表面に貼り付けさせることができる。
【0117】
状態S405では、プレートPLの傾斜角を更に大きく(第四傾斜姿勢よりも急な傾斜姿勢に)して第五傾斜姿勢とする(傾斜角θ405(>θ404)として図示する。)。状態S405では、液体溜まりW1の液体の排出が完了し、被観察物OB全体がプレートPL表面に貼り付いて観察標本SPLが作製されることとなる。傾斜角θ405は、例えば40~60[度]程度であり、本実施形態では45[度]程度とする。
【0118】
小括すると、状態S400~S405の工程によれば、被観察物OBが、プレートPLの表面に広がる液体の排出(被観察物OBとプレートPLの表面との間からの液体の流出)に伴って、他端部側(ノズル221とは反対側)から一端部側(ノズル221側)に向かって連続的にプレートPL表面に貼り付いていく。即ち、排液上流側で被観察物OBを部分的にプレートPL表面に接触させた後、該被観察物OBは排液上流側から排液下流側まで順にプレートPL表面に接触することとなる。これにより、最終的に、被観察物OBをプレートPL表面に定着させることが可能となる。よって、本実施形態によれば、被観察物OBはプレートPL上においてシワ、ヨレ等が解消された状態/観察し易い状態となり、観察標本SPLを適切に作製可能となる。
【0119】
以上、本実施形態によっても前述の第1実施形態同様の効果が得られ、即ち、観察標本SPLを作製する際の作業効率の向上に有利と云える。尚、ここでは第1実施形態と異なる点を重点的に説明することとしたが、以上の説明において省略された内容は第1実施形態の内容を援用するものとする。
【0120】
(変形例)
図19は、第2実施形態の変形例として、保持部1512’に、それとは別体の取付部材1512Aが取り付けられた構造を示す斜視図である。状態S500は、取付部材1512Aが保持部1512’に取り付けられた状態を示す。図19から分かるように、状態S500では、保持部1512’の載置部201と取付部材1512Aとの間には間隙が形成され、プレートPLは、この間隙に挿入することで設置される(保持部1512’に保持される)。状態S501は、取付部材1512Aが保持部1512’から取り外された状態を示す。保持部1512’と取付部材1512Aとは、着脱自在であり、例えばシール、ネジ等を用いた公知の固定方法で相互に固定されてもよいし、接着剤により固定させてもよい。
【0121】
図20は、取付部材1512Aが取り付けられた保持部1512’の使用方法を説明するための上面図である。状態S502は、取付部材1512Aが保持部1512’に取り付けられた状態の上面図を示す。取付部材1512Aは、少なくとも露出面においては疎液性の材料で形成(塗布処理)されており、本実施形態においては露出面の全域に亘って疎液部231を含む。
【0122】
取付部材1512Aは、孔部203の直径と同程度の幅で、保持部1512’の一端部に設けられる孔部203の上部から保持部1512’の他端部側に向かって所定の長さで形成される幅狭案内部241を含む。また、幅狭案内部241より大きい幅で、幅狭案内部241から保持部1512‘の他端部側に向かって所定の長さで形成される幅広案内部242を含む。幅狭案内部241と幅広案内部242との境界部には、幅方向に延出する接続部241aが形成される。
【0123】
取付部材1512Aに代替して、取付部材1512Bが保持部1512’に取り付けられてもよい。取付部材1512Bにおいては、疎液部231は、露出面のうち、幅狭案内部241、幅広案内部242および接続部241aからそれらの周辺の所定の領域に亘って形成(塗布処理)される。
【0124】
状態S503は、保持部1512’の載置部201と取付部材1512Aとの間にプレートPLが設置され且つ幅広案内部242に被観察物OBが配置されて付与された状態の上面図を示す。この状態は、既にプレートPL上にノズル1531から液体が供給された状態である(図17の状態S400参照)。上記供給された液体は幅狭案内部241、幅広案内部242および接続部241aに滞留され、それにより、液体溜まりW1が適切に形成される。具体的には、液体溜まりW1は、その上部が幅狭案内部241、幅広案内部242および接続部241aにより規制されるように、形成される。
【0125】
その後、この液体溜まりW1上に被観察物OBが載置される(図17の状態S401参照)。具体的には、幅広案内部242の液体溜まりW1上に被観察物OBが載置される。被観察物OBは、幅広案内部242内に収容可能かつ幅狭案内部241よりも大きいサイズであればよい。これにより、被観察物OBは、幅広案内部242により幅方向への移動が規制され、また、接続部241aにより、液体溜まりW1の排液の際の液体の流動に伴う幅狭案内部241側への移動が規制される。この観点で、幅狭案内部241は、液体を排出するための液体案内部(或いは単に案内部)として機能し、液体の排出を効率よく孔部203へ案内して排出させることができる、と云える。
【0126】
以上の内容は一例に過ぎず、その趣旨を逸脱しない範囲で多様な変更を更に加えることが可能である。例えば、上記変形例においては、保持部1512’と取付部材1512Aとは別体であり互いに着脱自在としたが、これらは一体成形されてもよい。或いは、載置部201と壁部202とが着脱自在の別体であり且つ壁部202と取付部材1512Aと一体であってもよい。また、上記変形例の内容は第1実施形態に適用されてもよいし(取付部材1512A又は1512Bは保持部1512に取付け可能に構成されてもよいし)、同様に、上記変形例に第1実施形態が部分的に適用されてもよい。
【0127】
(まとめ)
以上、本発明の一つの側面は標本作製装置1に係り、該装置1は、プレートPL上の液体溜まりW1の表面に被観察物OBが載置された後、この液体溜まりW1を除去することにより観察標本SPLを作製する。実施形態においては、プレートPLを保持可能な保持部(載置部材)1512が傾動移動部1514aに設けられる。このような構成によりプレートPLの姿勢を変更可能とし(例えば水平姿勢あるいは傾斜姿勢とし)、プレートPL上の液体溜まりW1の液体を流動させて適切に排出可能とする(図11図12等参照)。これにより、液体溜まりW1はプレートPL上から適切に除去され、それと共に被観察物OBはプレートPL表面に適切に定着され、観察標本SPLは適切に作製される。よって、本発明の標本作製装置1は、観察標本SPLを作製する際の作業効率の向上に有用である。
【0128】
また、本発明の他の側面として、作業主体(作業者、作業ロボット等)がプレートPLにアクセスしてプレートPL上に被観察物OBを付与するための付与領域は、筐体100の正面壁部F11および側面壁部F12の双方に近接する角部の上部に設けられる。この角部の位置は、作業台91の上面に設置される側になるように標本作製装置1が作業台91の側部に設置される。制御ユニット172は、前処理部11から保持部1512へのプレートPLの供給位置から、この付与領域内の所定位置(実施形態では付与位置P10)まで保持部1512が移動するように、移動ユニット151を制御する。その後、作業主体により被観察物作製装置92から取り出された被観察物OBがプレートPLの載置面に付与される。本発明によれば、プレートPLと被観察物作製装置92との距離を近づけて配置させることで作業主体は効率よく適切にプレートPLおよび被観察物作製装置92にアクセス可能となる。そのため、観察標本SPLを作製する際、作業主体が要する移動距離は短くて済むことから、標本作製装置1の作業効率は良好となり、この点においても有用である。
【0129】
以上の説明においては、理解の容易化のため、各要素をその機能面に関連する名称で示したが、各要素は、実施形態で説明された内容を主機能として備えるものに限られるものではなく、それを補助的に備えるものであってもよい。また、本明細書に記載された個々の用語は、本発明を説明する目的で用いられたものに過ぎず、即ち、本発明は、用語の厳密な意味に限定されるものでない。例えば、装置(apparatus)という文言に替わってユニット/アセンブリ/デバイス/モジュール等と表現されてもよいし、逆も同様である。また、例えば、対称物についての移動(move)という文言に変わって、搬送(convey)/移載(transfer)等と表現されてもよいし、逆も同様である。
【0130】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1:標本作製装置、PL:プレート、OB:被観察物、SPL:観察標本、100:筐体、151:移動ユニット、1512:保持部、152:傾動機構。
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