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特許7259079計時器用コンポーネントを様々な支持要素に固定するための弾性保持メンバー
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  • 特許-計時器用コンポーネントを様々な支持要素に固定するための弾性保持メンバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】計時器用コンポーネントを様々な支持要素に固定するための弾性保持メンバー
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/32 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
G04B17/32
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021557529
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2020059815
(87)【国際公開番号】W WO2020207986
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】19167903.4
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス,イバン
(72)【発明者】
【氏名】キュザン,ピエール
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524163(JP,A)
【文献】特開2018-063250(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第00707288(CH,A3)
【文献】特表2014-528572(JP,A)
【文献】特表2006-516718(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03432081(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03401740(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03432080(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/34,17/32
G04B 13/02,15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる断面を有する複数の支持要素(3a、3b)に計時器用コンポーネント(2)を固定するための弾性保持メンバー(1)であって、
前記弾性保持メンバー(1)には、各支持要素(3a、3b)を挿入することができる開口(5)があり、
前記弾性保持メンバー(1)は、複数の構造的要素(6)を含み、
これらの構造的要素(6)は一緒に、この弾性保持メンバー(1)の本体を形成し、前記開口(5)内における各支持要素(3a、3b)の取り付けを確実にすることに貢献し、
前記構造的要素(6)のそれぞれは、第1の構造的サブ要素(7a)及び第2の構造的サブ要素(7b)を備え、
前記第1の構造的サブ要素(7a)の材料の体積は、前記第2の構造的サブ要素(7b)を構成している材料の体積よりも大きく、
前記弾性保持メンバー(1)には、前記弾性保持メンバー(1)における前記支持要素(3a、3b)それぞれの取り付けを確実にする接続部分(19)があり、
前記接続部分(19)は、前記第1の構造的サブ要素(7a)の内面に形成され
前記第2の構造的サブ要素(7b)は、長手方向に延在し、前記長手方向の周りにねじり弾性変形可能および前記長手方向に弾性伸長変形可能である
ことを特徴とする弾性保持メンバー(1)。
【請求項2】
前記接続部分(19)は、前記第1の構造的サブ要素(7a)の前記内面にのみ形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項3】
前記接続部分(19)には、前記弾性保持メンバー(1)における前記支持要素(3a、3b)それぞれの取り付けを確実にする第1及び第2の保持部(20a、20b)がある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項4】
前記第1及び第2の保持部(20a、20b)にはそれぞれ、対応する支持要素(3a、3b)と連係するように構成している少なくとも1つの接触領域(8a、8b)がある
ことを特徴とする請求項3に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項5】
前記第1及び第2の保持部(20a、20b)の少なくとも1つの接触領域(8a、8b)は、前記弾性保持メンバー(1)の各第1の構造的サブ要素(7a)の前記接続部分(19)にあり、
この接続部分(19)は、前記弾性保持メンバー(1)の厚みのすべて又は一部にわたって延在している
ことを特徴とする請求項4に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項6】
前記第1及び第2の保持部(20a、20b)の各接触領域(8a、8b)は、平凸タイプの構成にて接触して、対応する支持要素(3a、3b)の対応する接触部分(10)と連係することができる
ことを特徴とする請求項5に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項7】
前記第1の保持部(20a)には、各第1の構造的サブ要素(7a)の接続部分(19)を形成する2つの凸状の接触領域(8a)がある
ことを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項8】
前記第2の保持部(20b)には、前記第1の保持部(20a)の2つの接触領域(8a)の間にて各第1の構造的サブ要素(7a)の接続部分(19)にて互いに連結されずに分布する2つの平坦な接触領域(8b)がある
ことを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項9】
各第1の構造的サブ要素(7a)の前記第2の保持部(20b)の前記2つの平坦な接触領域(8b)はそれぞれ、異なる平面内にあり、
これらの異なる平面における面どうしは鈍角を形成する
ことを特徴とする請求項8に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項10】
各第1の構造的サブ要素(7a)の前記第2の保持部(20b)には、前記第1の保持部(20a)の前記2つの凸状の接触領域(8a)から等距離に配置される単一の平坦な接触領域(8b)がある
ことを特徴とする請求項7に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項11】
前記第2の構造的サブ要素(7b)と同じ数の第1の構造的サブ要素(7a)を備える
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項12】
前記第1の構造的サブ要素(7a)と前記第2の構造的サブ要素(7b)は、前記弾性保持メンバー(1)において順次的かつ交互に配置される
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項13】
各第1の構造的サブ要素(7a)は、その2つの反対側の端において、2つの異なる第2の構造的サブ要素(7b)に接続される
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項14】
各第2の構造的サブ要素(7b)の断面は、各第1の構造的サブ要素(7a)の断面よりも小さい
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項15】
各第2の構造的サブ要素(7b)の断面は、その第2の構造的サブ要素(7b)の本体全体にわたって一定である
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項16】
前記計時器用コンポーネント(2)との取り付け箇所(11)がある
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項17】
渦巻き体のような前記計時器用コンポーネント(2)をバランスシャフトやスタブ軸のような支持要素(3)に固定するためのコレットである
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項18】
ケイ素、石英、コランダム、ケイ素及び二酸化ケイ素、DLC、金属性ガラス、セラミックス又は他の少なくとも部分的にアモルファスな材料を含む微細加工可能な材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)。
【請求項19】
計時器(100)の計時器用ムーブメント(110)のための弾性保持メンバーと計時器用コンポーネント(2)のアセンブリー(120)であって、
請求項1~18のいずれか一項に記載の弾性保持メンバー(1)を備える
ことを特徴とするアセンブリー(120)。
【請求項20】
一体的に作られる
ことを特徴とする請求項19に記載のアセンブリー(120)。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のアセンブリー(120)と、及び支持要素(3a)とを備える集合体(130a)であって、
前記アセンブリー(120)は、前記弾性保持メンバー(1)の第1の保持部(20a)にて前記支持要素(3a)に保持されており、
前記第1の保持部(20a)は、前記支持要素(3a)の周壁(21)と連係するように構成している
ことを特徴とする集合体。
【請求項22】
請求項19又は20に記載のアセンブリー(120)と、及び支持要素(3b)とを備える集合体(130b)であって、
前記アセンブリー(120)は、前記弾性保持メンバー(1)の第2の保持部(20b)にて前記支持要素(3b)に保持され、
前記第2の保持部(20b)は、前記支持要素(3b)の周壁(21)と連係するように構成している
ことを特徴とする集合体。
【請求項23】
請求項22に記載の集合体(130b)を少なくとも1つ備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(110)。
【請求項24】
請求項23に記載の計時器用ムーブメント(110)を備える
ことを特徴とする計時器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスシャフト、スタブ軸のような異なるタイプの支持要素に計時器用コンポーネントを固定するための弾性保持メンバーに関する。
【0002】
本発明は、さらに、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー、及びこのようなアセンブリーと支持要素を備える集合体に関する。
【0003】
最後に、本発明は、このような集合体を少なくとも1つ備える計時器用ムーブメント、そして、このようなムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0004】
従来技術において、弾性クランプによって、シャフト上に、又は計時器用ムーブメントの共振器のような調整メンバーのバランス軸上に設けられる、渦巻き体の集合体の要素である計時器用コレット、弾性保持メンバーが知られている。このような渦巻き体はそれぞれ、伝統的には、内側の端にコレットを設けて、渦巻き軸のまわりに巻かれる。このコレットには開口があり、その内面には、前記渦巻き軸を中心とする回転体となっている回転シャフトと連係するように構成している保持部があり、このようなシャフト上における前記渦巻き体のセンタリングに寄与する。
【0005】
このような集合体を作る前に、特に分類操作と呼ばれる操作中に、これらの渦巻き体のトルク及び/又は剛性の測定を行うことが一般的である。このために、所与の渦巻き体のコレットは、断面が円形であるスタブ軸に取り付けられ、このことによって、適切な角位置と鉛直方向の位置に保持されることが確実になる。このスタブ軸の直径は、渦巻き体のコレットの開口の直径に応じて定められ、これによって、渦巻き体のトルクを測定するときに、このコレットをこのスタブ軸にクランプすることによって、このコレットを適切な角位置と鉛直方向の位置に保持することができる。このようなクランプは、コレットの弾性変形に起因するものであり、クランプの強さは、スタブ軸の直径に応じて定められる。その後に、分類操作が完了すると、渦巻き体のコレットがスタブ軸から離間/解放されて、バランスシャフトに取り付けることによって組み付けて、バランスコレットを保持している部品がこのバランスシャフトと連係して、弾性クランプを確実にする。
【0006】
しかし、このような分類操作は「製品の欠陥」の原因となる可能性がある。これは、コレットが損壊することがあることに起因し、この損壊は、コレットの取り付け、スタブ軸からの解放、バランスシャフトに対する「取り付け直し」、又はコレットが備えられる共振器の他の動作、特にその共振器の運動、に関連する多くの反復的な応力が与えられるときに発生する。実際に、分類操作中に、スタブ軸とコレットの間で行われるクランプは、せん断力を発生させて、このせん断力は、このコレットの少なくとも1つの端において微小損壊を発生させることによって、このコレットを損傷してしまう可能性がある。すなわち、伝統的にはケイ素のような機械的応力下で非常に脆弱な材料によって作られるこのコレットをスタブ軸に取り付けることによって、この渦巻き体の材料に引っ張りを発生させて、崩壊のリスクを発生させてしまう可能性があり、このことは非常に悪影響を与える可能性がある。コレットにおいて破裂の開始点の発生を誘発して、コレットが破損してしまうリスクがあるためであり、このような破損は後で動いたときに顕在化してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、所与のタイプの支持要素、特にこの支持要素の周壁、と排他的に連係するようにそれぞれ設けられるいくつかの特定の保持部がある弾性保持メンバーを設けることによって弾性保持メンバーを支持要素に取り付けることによって、上記の課題のすべて又は一部を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、異なる断面を有する複数の支持要素に計時器用コンポーネントを固定するための弾性保持メンバーに関し、前記弾性保持メンバーには、各支持要素を挿入することができる開口があり、前記弾性保持メンバーは、複数の構造的要素を含み、これらの構造的要素は一緒に、この弾性保持メンバーの本体を形成し、前記開口内における各支持要素の取り付けを確実にすることに貢献し、前記構造的要素のそれぞれは、第1の構造的サブ要素及び第2の構造的サブ要素を備え、前記第1の構造的サブ要素の材料の体積は、前記第2の構造的サブ要素を構成している材料の体積よりも大きく、前記弾性保持メンバーには、前記弾性保持メンバーにおける前記支持要素それぞれの取り付けを確実にする接続部分があり、前記接続部分は、前記第1の構造的サブ要素の内面に形成される。
【0009】
したがって、この弾性保持メンバーにおいて、弾性保持メンバーの各構造的要素の第1の構造的サブ要素の同じ接続部分には、その特徴のおかげで、この弾性保持メンバーをスタブ軸に取り付けるときと、この弾性保持メンバーをバランスシャフトのような支持要素上にて動かすときの両方において、この支持要素の断面の幾何学的な形にかかわらず、応力が与えられる。また、このような弾性保持メンバーの第1の構造的サブ要素の接続部分は、この取り付けを必要とせずに、この弾性保持メンバーとこのスタブ軸との取り付け及び結合を行うことによって、この弾性保持メンバーをスタブ軸上に組み付けることを可能にする。この取り付けには、従来技術の場合のように駆動操作を必要としない。この嵌め付けは、特に渦巻き体のトルクを測定するときに、スタブ軸上の角位置と鉛直方向の位置におけるこの弾性保持メンバーのポジショニングを与える。これには、弾性クランプなしで行われる。すなわち、構造的要素の変形なしで行われ、特に、この弾性保持メンバーの変形なしで行われる。すなわち、分類操作を行うために必要であるこのような弾性保持メンバーとスタブ軸の間の結合を、特にそれらの形の相補性のおかげで、弾性クランプなしで行うことができる。したがって、分類操作を行うときに回転するときにそれらの形の間の連係が可能になる。また、この弾性保持メンバーを構成している各構造的要素の第1及び第2の構造的サブ要素の間の材料の体積/量の分布のおかげでもある。したがって、分類操作を行うときに、弾性保持メンバーは、その構造に微小破壊を発生させて損傷してしまう可能性があるせん断力による応力を受けないことがわかる。
【0010】
他の実施形態においては、以下の特徴がある。
- 前記接続部分は、前記第1の構造的サブ要素の前記内面にのみ形成される。
- 前記接続部分には、前記弾性保持メンバーにおける前記支持要素それぞれの取り付けを確実にする第1及び第2の保持部がある。
- 前記第1及び第2の保持部にはそれぞれ、対応する支持要素と連係するように構成している少なくとも1つの接触領域がある。
- 前記第1及び第2の保持部の少なくとも1つの接触領域は、前記弾性保持メンバーの各第1の構造的サブ要素の前記接続部分にあり、この接続部分は、前記弾性保持メンバーの厚みのすべて又は一部にわたって延在している。
- 前記第1及び第2の保持部の各接触領域は、平凸タイプの構成にて接触して、対応する支持要素の対応する接触部分と連係することができる。
- 前記第1の保持部には、各第1の構造的サブ要素の接続部分の境界を定める2つの凸状の接触領域がある。
- 前記第2の保持部には、前記第1の保持部の2つの接触領域の間にて各第1の構造的サブ要素の接続部分にて連結せずに分布する2つの平坦な接触領域がある。
- 各第1の構造的サブ要素の前記第2の保持部の前記2つの平坦な接触領域はそれぞれ、異なる平面内にあり、これらの異なる平面における面どうしは鈍角を形成する。
- 各第1の構造的サブ要素の前記第2の保持部には、前記第1の保持部の前記2つの凸状の接触領域から等距離に配置される単一の平坦な接触領域がある。
- 前記弾性保持メンバーは、前記第2の構造的サブ要素と同じ数の第1の構造的サブ要素を備える。
- 前記第1の構造的サブ要素と前記第2の構造的サブ要素は、前記弾性保持メンバーにおいて順次的かつ交互に配置される。
- 各第1の構造的サブ要素は、その2つの反対側の端において、2つの異なる第2の構造的サブ要素に接続される。
- 各第2の構造的サブ要素の断面は、各第1の構造的サブ要素の断面よりも小さい。
- 各第2の構造的サブ要素の断面は、その第2の構造的サブ要素の本体全体にわたって一定である。
- 前記弾性保持メンバーには、前記計時器用コンポーネントとの取り付け箇所がある。
- 前記弾性保持メンバーは、渦巻き体のような計時器用コンポーネントをバランスシャフトやスタブ軸のような支持要素に固定するためのコレットである。
- 前記弾性保持メンバーは、ケイ素、石英、コランダム、ケイ素及び二酸化ケイ素、DLC、金属性ガラス、セラミックス又は他の少なくとも部分的にアモルファスな材料などを含む微細加工可能な材料によって作られる。
【0011】
本発明は、さらに、弾性保持メンバーを備える計時器の計時器用ムーブメントのための、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリーに関する。
【0012】
好ましいことに、このアセンブリーは一体的に作られる。
【0013】
本発明は、さらに、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー、及び支持要素、特に、スタブ軸、を備える集合体に関する。前記アセンブリーは、前記弾性保持メンバーの第1の保持部にて前記支持要素に保持される。前記第1の保持部は、前記支持要素の周壁と連係するように構成している。
【0014】
特に、集合体は、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントとのアセンブリーと、支持要素、特に、バランスシャフト、を備える。前記アセンブリーは、前記弾性保持メンバーの第2の保持部にて前記支持要素に保持され、前記第2の保持部は、前記支持要素の周壁と連係するように構成している。
【0015】
本発明は、さらに、前記集合体を少なくとも1つ備える計時器用ムーブメントに関する。
【0016】
本発明は、さらに、前記計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【0017】
添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、他の特徴や利点についても明確になる。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る、スタブ軸のような支持要素に組み付けられた計時器用コンポーネントを固定するための弾性保持メンバーの図である。
図2】本発明の実施形態に係る、バランスシャフトのような支持要素に組み付けられた計時器用コンポーネントを固定するための弾性保持メンバーの図である。
図3】本発明の実施形態に係る、計時器用コンポーネントを支持要素に固定するための弾性保持メンバーの図である。
図4】本発明の実施形態に係る、別の観察角度から見た、図3の部分Aについての拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る、分類操作を行うためのデバイスが備える、スタブ軸のような支持要素に固定される、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリーを備える集合体を示している図である。
図6】本発明の実施形態に係る、バランスシャフトのような支持要素に固定される、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリーを備える少なくとも1つの集合体を備える計時器用ムーブメントを備える計時器を示している。
図7】弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリーと、スタブ軸タイプ又はバランスシャフトタイプの支持要素との集合体を作成する方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~4は、計時器用コンポーネント2を支持要素3a、3bに固定するための弾性保持メンバー1の実施形態を示している。例として、弾性保持メンバー1は、渦巻き体のような計時器用コンポーネント2を支持要素3a、3bに固定するためのコレットであることができ、前記支持要素3a、3bは、例えば、図1及び2にそれぞれ示している「スタブ軸」3a及びバランスシャフト3bである。このスタブ軸3aは、調整軸、スタブシャフト又は分類軸とも呼ばれ、特に、異なる既知の技術によるバランスばねアセンブリーの調整に関連して用いられる。この既知の技術は、例えば、オメガメトリック法と呼ばれる技術であり、オメガメトリック法においては、渦巻き体の分類、バランスの分類、特定のクラスのものが選択されるバランスのペアリングを行い、渦巻き体も特定のクラスのものが選択され、これらのクラスは互いに互換性がある。
【0020】
また、バランスシャフト3bは、その類義語である「バランス軸」と呼ばれることがあり、特にコレットを受けるように設計されている。
【0021】
この弾性保持メンバー1は、「脆弱な」材料と呼ばれる材料、好ましくは微細加工可能な材料、によって作られる。このような材料は、ケイ素、石英、コランダム、ケイ素及び二酸化ケイ素、DLC、金属性ガラス、セラミックス、他の少なくとも部分的にアモルファスな材料などを含むことができる。
【0022】
この実施形態において、この弾性保持メンバー1は、図5及び6に示している弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー120に備えられることができる。このようなアセンブリー120は、図6に示している計時器100の計時器用ムーブメント110内に配置されるように意図されており、また、分類操作を行うときに、バランスシャフトのような支持要素3aに取り付けられるように、又はスタブ軸のような支持要素3b上に配置されるように意図されている。このようなアセンブリー120は、一体的に作ることができ、コレットの材料と同様の「脆弱な」材料によって作ることができる。
【0023】
なお、このアセンブリー120の代替形態において、弾性保持メンバー1のみをこのような「脆弱な」材料と呼ばれる材料によって作ることができ、この場合には計時器用コンポーネント2は別の材料によって作られる。
【0024】
このアセンブリー120は、支持要素3a、3b、ここではバランスシャフト又はスタブ軸、に取り付けられることによって、計時器用ムーブメント110のための、又は分類操作を行うデバイス140のための、集合体130a、130bの一部を形成することができる。図5に示しているこのようなデバイス140は、特に、測定モジュール150と、ここではスタブ軸3aである支持要素3aとを備える。なお、この集合体130a、130bは、腕時計製造の分野におけるアプリケーションのために設計されている。しかし、本発明は、航空学、宝飾品又は自動車のような他の分野においても完全に実装することができる。
【0025】
このような弾性保持メンバー1には、外側及び内側構造4a、4bがあり、そして、好ましくは平坦である上面及び下面12があり、これらの上面及び下面12はそれぞれ、第1及び第2の平面P1及びP2内に含まれる。以下においてそれぞれ外周壁4a、内周壁4bと呼ばれる前記外側及び内側構造4a、4bはそれぞれ、この弾性保持メンバー1の外側及び内側輪郭の境界を定め、前記内側輪郭は、この弾性保持メンバーの開口5を定める。外周壁4aと内周壁4bは、弾性保持メンバー1の異なる形を定める。この弾性保持メンバー1の厚みは、上面から下面12まで延在している。上記のように、この弾性保持メンバー1は、それぞれが弾性サブアーム又は剛性かつ弾性サブアーム7a、7bを備えるアーム6を備える、任意のタイプのコレットに対応することができる。以下、これらのアーム6は、この弾性保持メンバー1の「構造的要素6」と呼ばれる。このような構造的要素6は一緒に、この弾性保持メンバー1の本体を形成する。実際に、各構造的要素6には、外周壁4aと内周壁4bの一部、そして、上面及び下面12の一部がある。これらの構造的要素6は、好ましくは、中実体である。すなわち、これらの構造的要素6は、好ましくは、中空ではない。以下、これらの条件下で、剛性サブアーム7aと弾性サブアーム7bはそれぞれ、第1の構造的サブ要素7aと第2の構造的サブ要素7bと呼ばれる。
【0026】
このような弾性保持メンバー1の外周壁4aは、任意の形であることができ、例えば、本質的に三角形的、円形的、又は四辺形の形に類似した形、であることができる。前記のように、この弾性保持メンバー1の内周壁4bは、支持要素3a、3bを挿入することが意図されているこの弾性保持メンバー1の開口5を形成することに関与している。この開口5は、その中に配置されるように意図された支持要素3a、3bの一端の接続部分の体積よりも小さいような体積を弾性保持メンバー1において定める。なお、この接続部分には、支持要素3a、3bの周壁21にて定められた接触部分10のすべて又は一部があり、これは、特に、構造的要素6の特定かつ/又は専用の第1及び第2の保持部20a、20bと連係することを意図されている。これらの第1及び第2の保持部20a、20bはそれぞれ、ここではバランスシャフトとスタブ軸である異なる支持要素3a、3bに前記弾性保持メンバー1を確実に取り付けるように意図されている。以下に示しているように、これらの第1及び第2の保持部20a、20bにはそれぞれ、対応する支持要素3a、3bと連係するように構成している少なくとも1つの接触領域8a、8bがある。第1及び第2の保持部20a、20bの各接触領域8a、8bは、好ましくは平凸タイプの接触構成であることによって、対応する支持要素3a、3bの対応する接触部分10と連係することができる。
【0027】
外周壁4aは、特に、弾性保持メンバー1の外周壁に配置される少なくとも1つの取り付け箇所11を介して計時器用コンポーネント2に接続されるように意図されている。
【0028】
以下において、理解を深めるために、構造的要素6を備える図1~4に示しているコレットのような弾性保持メンバー1であって、各構造的要素6が第1の構造的サブ要素7aと第2の構造的サブ要素7bを備えるもの、に基づいて本発明を説明する。この弾性保持メンバー1には、凸状の部分を含む概して六角形である内面4bがある。これらの部分それぞれは、第2の構造的サブ要素7bを第1の構造的サブ要素7aに接続する接続領域9に含まれる。この弾性保持メンバー1の内周壁4bは、非三角形の形をしている。なお、前記接続部分には、支持要素3a、3bの周壁21上にて定められる接触部分10のすべて又は一部があり、これは、特に、第1の構造的サブ要素7aの特定かつ/又は専用の第1及び第2の保持部20a、20bと連係するように意図されている。
【0029】
したがって、この弾性保持メンバー1は、外周壁4aと内周壁4bを互いに接続する第1の構造的サブ要素7aと第2の構造的サブ要素7bを備える。なお、この弾性保持メンバー1は、第2の構造的サブ要素7bと同じ数の第1の構造的サブ要素7aを備える。第1の構造的サブ要素7aは、ここでは変形不能ないしほとんど変形不能であり、弾性保持メンバー1の要素を補強する役割を果たす。第2の構造的サブ要素7bは、特に、第1の構造的サブ要素7aと比べて弾性的な性質を有する。実際に、これらの第2のサブ要素7bは、主に引っ張りによって変形することができ、さらに、ねじれによっても変形することができる。これらの第1の構造的サブ要素7aとこれらの第2の構造的サブ要素7bは、この弾性保持メンバー1において、順次的かつ交互に、定められ又はさらには分布する。すなわち、これらの第1の構造的サブ要素7aどうしは、前記第2の構造的サブ要素7bによって相互接続される。特に、各第2の構造的サブ要素7bは、接続領域9にあるその2つの反対側の端において、2つの異なる第1の構造的サブ要素7aに接続される。上記のように、このような第1及び第2の構造的サブ要素7a、7bには、以下がある。なお、これらに限定されず、これらが網羅しているわけではない。
- 内周壁4bにあり、同様にこの弾性保持メンバー1の開口5を定めることに寄与する内面
- この弾性保持メンバー1の外周壁4aにある外面
【0030】
なお、第2の構造的サブ要素7bの内面は本質的に平坦であり、第1の構造的サブ要素7aの内面は、非平坦であることができ、例えば、波形である。これに関連して、各第1の構造的サブ要素7aの内面には、図4に示している第1及び第2の保持部20a、20bがある接続部分19があり、これは、断面が異なる支持要素3a、3bそれぞれに前記弾性保持メンバー1を取り付けるように意図されている。なお、この接続部分19は、「取り付け部分19」又は「集合組み付け部分19」とも呼ばれる。
【0031】
これらの第1及び第2の保持部20a、20bは、「取り付け部分」、「集合組み付け部分」又は「接続部分」とも呼ばれ、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19に含まれ、この接続部分19は、この弾性保持メンバー1の厚みのすべて又は一部にわたって延在している弾性保持メンバー1の内面に含まれる。したがって、各第1及び第2の保持部20a、20bは、弾性保持メンバー1の厚みのすべて又は一部にわたって延在している。
【0032】
第1及び第2の保持部20a、20bにはそれぞれ、対応する支持要素3a、3bと接触する少なくとも1つの接触領域8a、8bがある。各接触領域8a、8bは、丸まっていたり、凸状であったり、又は平坦であったりすることができる。各第1及び第2の保持部20a、20bの接触領域8a、8bは、平凸タイプの接触構成であることによって、特にこの周壁21にて定められる対応する接触部分10と接続する、支持要素3a、3bの接続部分の周壁21と連係することができる。
【0033】
これらの第1の構造的サブ要素とこれらの第2の構造的サブ要素7a、7bは、弾性保持メンバー1の外周壁4aと内周壁4bを互いに接続する。この弾性保持メンバー1において、これらの第1及び第2の構造的かつ弾性サブ要素7a、7bは、本質的に、この弾性保持メンバー1に形成されこの弾性保持メンバー1の内周壁4bによって定められる開口5において、支持要素3a、3bの弾性クランプタイプの結合を達成することを可能にする。
【0034】
したがって、すでに示したように、これらの第1の構造的サブ要素7aには、各第1の構造的サブ要素7aの第1の接続部分19のすべて又は一部において定めることができる、支持要素3a、3bと接触する、弾性保持メンバー1の接触領域8a、8bのみがある。
【0035】
これに関連して、第1の保持部20aには、少なくとも1つの接触領域8aがある。この第1の保持部20aは、支持要素3aの周壁21、例えば、ここではスタブ軸3a、と連係するように意図されている。このような支持要素3aは、シャフト3bのような別の支持要素3bの断面とは異なる断面を有し、その周壁は、弾性保持メンバー1の各第1の構造的サブ要素7aの第2の保持部20bとのみ連係するように意図されている。この断面の違いは、この断面の形、特に、その幾何学的な形、に関連していることができる。なお、これに限定されない。
【0036】
なお、この断面の形及び/又は寸法構成は、具体的に定められて、前記少なくとも1つの接触領域8aは、この支持要素3aの周壁21と排他的に連係するように構成している、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19の唯一の接触領域8aである。
【0037】
実際に、本実施形態において、図1を参照すると、この支持要素3aの断面は、非円形であり、好ましくは、主に三角形であり、3つの本質的に平坦な面によって形成される。これに関連して、この支持要素3aの平坦な面には、この要素3aの接触部分10があり、したがって、この接触部分10も平坦である。図4を参照すると、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19には、実質的にくぼんだ又は実質的に凹状の部分と、端において形成される2つの接触領域8aがあり、これらの2つの接触領域8aは、実質的に弾性保持メンバー1の厚みのすべて又は一部にわたって延在している。これらの2つの接触領域8aは、特に、この支持要素3aの周壁21に含まれる対応する接触部分10と連係するように定められる。このような接触領域8aにはそれぞれ、好ましくは、凸面があり、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19の両端の境界を定める。したがって、これらの接触領域8aそれぞれの凸面は、それらが接触部分10を用いて平凸タイプの接触構成を達成することを可能にする。ここで、支持要素3aの各接触部分10の平坦な面は、この接触部分10を含む対応する接触領域8aそれぞれの凸面に対して相対的に評価される。この構成において、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19に2つの凸状の接触領域8aが存在することによって、弾性保持メンバー1と支持要素3aの間の接触圧力を、それらの間の機械的接続を行うときに、発生させることができ、これによって、この弾性保持メンバー1を、ここではスタブ軸である支持要素3aとともに組み付けかつ/又は固定するときに、これらの接触領域8a、及び支持要素3aの対応する接触部分10aにおける応力の強度を低減する。このような応力によって、破損/フラクチャー又は亀裂が出現して、弾性保持メンバー1を損傷してしまう可能性がある。すなわち、支持要素3aの駆動がなく、この実施形態において、この支持要素3aには、この支持要素3aの軸方向において円錐を形成する増大する三角形の断面を有し、接続メンバー1は、この円錐の最大断面において単純にブロックされる。このときの応力は、ほぼゼロ又はゼロである。
【0038】
また、第2の保持部20bには、さらに、少なくとも1つの接触領域8bがある。この第2の保持部20bは、バランスシャフト3bのような支持要素3bの周壁21と連係するように意図されている。このような支持要素3bの断面は、スタブ軸3aのような別の支持要素3aの断面とは異なり、その周壁は、弾性保持メンバー1の各第1の構造的サブ要素7aの第1の保持部20aとのみ連係するように意図されている。この断面の違いは、この断面の形に関連していることができるが、これに限定されない。
【0039】
なお、この断面の形及び/又は寸法構成は、前記少なくとも1つの接触領域8bが、この支持要素3bの周壁21と排他的に連係するように構成している各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19の唯一の接触領域8bであるように具体的に定められる。
【0040】
実際に、本実施形態において、図2を参照すると、この支持要素3bの断面は、好ましくは、円形である。図4において、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19は、実質的に中空又は実質的に凹状の部分があり、2つの接触領域8bが含まれる。これらの2つの接触領域8bは、支持要素3bの対応する接触部分10と連係することができる。このような接触領域8bは、接続部分19、特に、この接続部分19の凹部、において定められ、実質的に弾性保持メンバー1の厚みのすべて又は一部にわたって延在している。また、これらの接触領域8bは平坦であり、各接触領域8bに、完全に又は部分的に平坦である面がある。接続部分19において、各第1の構造的サブ要素7aの2つの接触領域8bは、平坦な接触領域8bとも呼ばれ、それぞれが異なる平面内にあり、それらの平面における面どうしは鈍角を形成する。各第1の構造的サブ要素7aのこれらの2つの接触領域8bは、互いに離間することによって分離されている。すなわち、接続部分19には、図4に示している各第1の構造的サブ要素7aの2つの接触領域8bを離間する離間領域18がある。
【0041】
第1の構造的サブ要素7aの接触領域8bは、特に、平凸タイプの接触構成にしたがって接触部分10と連係するように設けられる。この接触構成は、各接触領域8bの平坦な面が支持要素3の対応する凸状の接触部分10と連係する構成である。ここで、各接触部分10のこの凸状の形は、反対側にこの接触部分10が配置される対応する接触領域8bそれぞれの平坦な面に対して相対的に評価される。なお、各接触領域8bのこの平坦な面は、支持要素の直径に直交する平面を形成する。すなわち、この平坦な面は、前記直径に対して垂直であり、したがって、支持要素の半径R1に対して垂直である。
【0042】
この構成において、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19に2つの平坦な接触領域8bが存在することによって、弾性保持メンバー1と支持要素3bの間を機械的接続するときに、それらの間に接触圧力を発生させ、その結果、この弾性保持メンバー1を支持要素3bと組み付けかつ/又は固定するときに、これらの接触領域8b及び支持要素3bの対応する接触部分10における応力の強度を低減させることができる。このような応力は、破損/フラクチャー又は亀裂の出現によって弾性保持メンバー1を損傷してしまう傾向がある。
【0043】
なお、これらの2つの平坦な接触領域8bは、好ましくは、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19において、第1の保持部20aの2つの接触領域8aの間にて別々に分布する。
【0044】
代替形態の1つにおいて、第2の保持部20bには、第1の保持部20aの2つの接触領域8bから等距離の位置に、各第1の構造的サブ要素7aの接続部分19に含まれる単一の平坦な接触領域8bがある。
【0045】
そして、弾性保持メンバー1には、12個の接触領域8a、8bがあり、そのうちの6個の接触領域8aは、支持要素3a、例えば、分類操作に関連してのスタブ軸3aタイプのもの、と排他的に連係するように構成しており、支持要素3bに接する他の6個の接触領域8bは、例えば、バランスシャフトタイプのものであり、計時器用ムーブメント110において、計時器用コンポーネント2、例えば、渦巻き体、の正確なセンタリングを達成するように構成している。この弾性保持メンバー1において、各第1の構造的サブ要素7aの材料の体積又は量は、各第2の構造的サブ要素7bを構成している材料の体積又は量よりも実質的に大きい又は厳密に大きい。実際に、この弾性保持メンバー1において、外周壁4aと内周壁4bの間の距離Eは変動し、この可変距離Eは、これらの周壁4a、4bが、例えば、第1の構造的サブ要素7aに含まれているか、又は第2の構造的サブ要素7bに含まれているかに応じて変わる。実際に、この距離Eは、各第1の構造的サブ要素7aに含まれる内壁と外壁の部分の間において形成されるときに最大距離E1となる。すなわち、最大距離E1は、この第1の構造的サブ要素7aの内面と外面の間に存在する。特に、各第1の構造的サブ要素7aにおいて、この最大距離E1は、この第1の構造的サブ要素7aの外周壁の一部と、スタブ軸のような支持要素3bの周壁21との連係に専用の各接触領域8aの間にて形成される。この接触領域8aは、この第1の構造的サブ要素7aの内周壁の内面に含まれる。なお、この最大距離E1は、第1の構造的サブ要素7aの外周壁の一部と、バランスシャフト3bのような支持要素3bの周壁21との連係に専用の各接触領域8bとの間に定められる距離E3よりも大きい。この接触領域8bは、この第1の構造的サブ要素7aの内周壁4bの内面に含まれる。
【0046】
また、この距離Eは、第2の構造的サブ要素7bに含まれる外周壁4aの部分と内周壁4bの部分の間にて定められるときに最小距離E2となり、すなわち、この最小距離E2は、この第2の構造的サブ要素7bの内面と外面の間に存在する。このような最小距離E2は、これらの第2の構造的サブ要素7bが延在している全長にわたって一定ないし実質的に一定である。ここで、この長さは、これらの第2の構造的サブ要素7bに含まれる外周壁4aと内周壁4bに平行ないし実質的に平行である。また、距離E2は、この弾性保持メンバー1において、第1の構造的サブ要素7aにおいて定められる最小距離よりも小さい。すなわち、距離E2は、この弾性保持メンバー1の外周壁4aと内周壁4bの間で定められる最小距離である。
【0047】
したがって、ここで、各第2の構造的サブ要素7bの断面が、各第1の構造的サブ要素7aの断面よりも小さいことがわかる。すなわち、各第2の構造的サブ要素7bの断面は、各第1の構造的サブ要素7aの断面の面積よりも小さい面積を有する。なお、第2の構造的サブ要素7bの断面は、この第2の構造的サブ要素7bの本体全体にわたって一定ないし実質的に一定であるが、第1の構造的サブ要素7aの断面は、この第1の構造的サブ要素7aの本体全体にわたって一定ではない/変動する。また、以下の点に留意すべきである。
- 各第1の構造的サブ要素7aの断面は、好ましくは、この第1の構造的サブ要素7aの本体が延在している長手方向に垂直である、中実又は部分的に中実な断面である。
- 各第2の構造的サブ要素7bの断面は、好ましくは、この第2の構造的サブ要素7bの本体が延在している長手方向に垂直である、中実又は部分的に中実の断面である。
【0048】
第1の構造的サブ要素及び第2の構造的サブ要素7a、7bのこのような構成は、弾性保持メンバー1が、従来技術の保持メンバーと比べて、同じクランプに対してより大きな弾性エネルギーを蓄えることを可能にする。そして、弾性保持メンバー1に蓄えられるこのような大きい量の弾性エネルギーによって、弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー120と支持要素3a、3bとの集合体130a、130bにおいて、支持要素3a、3bに対する弾性保持メンバー1の保持トルクを大きくすることが可能になる。したがって、弾性保持メンバー1に蓄えられるこのような大きな弾性エネルギーは、保持トルクを増加させ、最適な弾性クランプを可能にする。さらに、このような弾性保持メンバー1の構成は、従来技術の保持メンバーの弾性エネルギー比よりも6~8倍大きい弾性エネルギー比の弾性エネルギーを蓄えることを可能にする。
【0049】
なお、弾性保持メンバー1における第1の構造的サブ要素及び第2の構造的サブ要素7a、7bの構成は、クランプを伴って挿入しているときに、各第2の構造的サブ要素7bが変形することを可能にし、これによって、弾性保持メンバー1が組み付けられる支持要素3a、3bの接続部分の幾何学的構成によって、弾性保持メンバー1のアセンブリーの変形に対応することが可能になる。また、各第2の構造的サブ要素7bが経る変形のモードは、トロイダルねじれと、半径方向の延伸とが組み合わさったものである。
【0050】
図7を参照すると、本発明は、さらに、弾性弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー120と、バランスシャフト3bやスタブ軸3aのような支持要素3a、3bとの集合体130a、130bを作成する方法に関する。この方法は、支持要素3a、3bを弾性保持メンバー1に取り付ける取り付けステップ13を行う。この取り付けステップ13の間に、支持要素3a、3bが、弾性保持メンバー1の開口5内に挿入され、より正確には、この開口5内にて定められる体積内にこの支持要素3a、3bの接続部分を導入することを見越して、この支持要素3a、3bの端が、弾性保持メンバー1の内周壁4bによって定められるこの開口5の入口に用意される。
【0051】
弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー120と、スタブ軸3aのような支持要素3aとの集合体130aに関して、この取り付けステップ13は、フィッティングサブステップ14aを行う。このフィッティングサブステップ14aにおいては、分類操作などを行うことを見越して、このスタブ軸3a上にコレットを配置する。この取り付けステップ13は、さらに、この弾性保持メンバー1をここではスタブ軸3aである支持要素3aと結合する結合サブステップ16aを行う。これらの弾性保持メンバー1の形と支持要素3aの形の相補性のおかげで、この結合サブステップ16aの間に、弾性クランプなしで結合が行われる。したがって、このことによって、分類操作を行うときに回転するときに前記形の間の連係が可能になる。なお、これらの形のこの相補性は、特に、この弾性保持メンバー1と支持要素3aが異なる形であるということに起因する。また、この取り付けステップ13の間に、8aを付与された接触領域8aのみが、支持要素3aの接続部分の周壁21の接触部分10と連係する。
【0052】
弾性保持メンバーと計時器用コンポーネントのアセンブリー120と、バランスシャフト3bのような支持要素3bとの集合体130bに関して、この取り付けステップ13は、弾性保持メンバー1、特に、この弾性保持メンバー1の中央領域、を弾性変形させる弾性変形サブステップ14bを行う。この中央領域の輪郭は、前記開口5を形成する。このような変形は、支持要素3bの接続部分の周壁21の接触部分10によって第1の構造的サブ要素7aの接触領域8bに接触力が与えられることに起因する。
【0053】
前記のように、弾性保持メンバー1のこの弾性変形は、支持要素3bの周壁21の接触部分10によって第1の構造的サブ要素7aの接触領域8bに接触力が与えられることに起因する。このような変形サブステップ14bは、第1の構造的サブ要素7aに与えられる接触力の作用下において第1の構造的サブ要素7aを変位させる変位段階15を行う。第1の構造的サブ要素7aのこのような変位は、支持要素3bと弾性保持メンバー1にて共通である中心軸Cを中心とする半径方向B1と、この中心軸Cと一致する方向B2の間の方向にて行われる。なお、この方向B2は、方向B1に対して垂直であり、下面12から上面の方への所定の方向を向いている。接触力は、好ましくは、各接触領域8bに対して垂直ないし実質的に垂直である。
【0054】
なお、図1~4に示している弾性保持メンバー1の実施形態に関連して、この変位段階15が進行しているときに、この接触力の作用下で変位する第1の構造的サブ要素7aは、第2の構造的サブ要素7bの以下の二重の弾性変形を発生させる。
【0055】
まず、これらの第2の構造的サブ要素7bの「ねじり弾性変形」とも呼ばれる第1の変形を発生させる。このねじり変形の間に、各第2の構造的サブ要素7bは、その2つの端が接続されている変位する第1の構造的サブ要素7aによって、その2つの端において同じ回転方向B4に動かされる。なお、ここでは第2の構造的サブ要素7bの両端である、第2の構造的サブ要素7bの本体の一部のみが、ねじり変形可能である。このような第1の変形は、特に、このような状況で各構造的要素6のねじれ変形を発生させることに寄与する。この第1の変形は、支持要素3bとの組み付けの間に、弾性保持メンバー1の破損、及び/又は弾性保持メンバー1の亀裂の出現を防ぐことに寄与しつつ、弾性保持メンバー1の開口5内への支持要素3bの挿入を改善することを可能にする。
【0056】
また、第2の構造的サブ要素7bの、「引っ張り変形」又は「弾性伸長変形」とも呼ばれる第2の変形が発生する。この伸長変形の間に、各第2の構造的サブ要素7bは、その2つの端が接続されている変位する第1の構造的サブ要素7aによって、その2つの端において長手方向B3に反対方向に引っ張られる。第2の構造的サブ要素7bのこのような第2の変形は、特に、各構造的要素6が大量の弾性エネルギーを蓄えることに寄与する。すなわち、支持要素も大量の弾性エネルギーを蓄える。
【0057】
第2の構造的サブ要素7bのこの二重の弾性変形は、同時ないし実質的に同時に、又は順次的ないし実質的に順次的に行うことができる。なお、この変位段階15の実施に関連して、この二重の弾性変形が順次的ないし実質的に順次的に行われるときに、第1の変形が第2の変形の前に行われる。
【0058】
次に、前記取り付けステップ13は、弾性保持メンバー1を支持要素3bに固定する固定サブステップ16bを行う。このような固定サブステップ16bは、支持要素3bに対する弾性保持メンバー1の半径方向の弾性クランプを行う弾性クランプ段階17を行う。したがって、このような応力状態において、弾性保持メンバー1は、大量の弾性エネルギーを蓄え、これが相当に大きい保持トルクを与えることに寄与し、特に、弾性クランプによって最適なねじれを可能にすることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7