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特許7259080複合先端ホウ素ベースの予備焼結プリフォームを使用するタービンコンポーネントの先端補修
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  • 特許-複合先端ホウ素ベースの予備焼結プリフォームを使用するタービンコンポーネントの先端補修 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】複合先端ホウ素ベースの予備焼結プリフォームを使用するタービンコンポーネントの先端補修
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20230410BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20230410BHJP
   B23P 6/00 20060101ALI20230410BHJP
   B23P 15/04 20060101ALI20230410BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F02C7/00 C
F01D5/28
B23P6/00 Z
B23P15/04
B23K1/00 330P
B23K1/00 330L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021557586
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2019024750
(87)【国際公開番号】W WO2020204872
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ナバール,アトゥル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヤーブロー,ジェームス エー.
(72)【発明者】
【氏名】グネイキカー,ソメシュ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オリバー バルガス,イヴァン エフ.
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199930(US,A1)
【文献】特開2010-069568(JP,A)
【文献】特開2017-115859(JP,A)
【文献】特開2006-312782(JP,A)
【文献】特開2017-196661(JP,A)
【文献】特表2015-504499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224607(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3395494(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 5/28
B23P 6/00
B23P 15/04
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的欠陥(55)を有するタービンブレード(10)の先端部(22)を補修するための方法であって、
タービンブレード(10)を提供するステップであって、前記タービンブレード(10)の先端部(22)に構造的欠陥(55)を備えた、ステップと、
前記タービンブレード(10)の前記先端部(22)を機械加工又は切削することによって損傷部分を除去するステップと、
前記タービンブレード(10)の残余の部分の上面と結合するように構成された予備焼結プリフォーム(PSP)(60)を提供するステップと、
前記PSP(60)を前記上面に適用するステップであって、前記PSP(60)が、超合金材料及びろう付け材料を含む、ステップと、
前記PSP(60)及び前記タービンブレード(10)の残余の部分にろう付け処理を行うステップであって、前記ろう付け材料を溶融させるとともに前記構造欠陥(55)内に充填する、ステップと、
を含み、
前記PSP(60)が、第1の組成を有する第1の部分(62)と、前記第1の組成物とは異なる第2の組成を有する第2の部分(64)とを含む、
方法。
【請求項2】
前記第1の部分が前記タービンブレード(10)の先端の棚部(62)に対応し、前記第2の部分が前記先端のスキーラ部(64)に対応することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の組成物が、60~90重量%の超合金材料及び10~40重量%のろう付け材料を含み、前記第2の組成物が、70~90重量%の超合金材料及び10~30重量%のろう付け材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物が、70重量%の超合金材料及び30重量%のろう付け材料を含み、前記第2の組成物が、80重量%の超合金材料及び20重量%のろう付け材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記超合金材料が、合金247であることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記PSP(60)の超合金材料が、前記タービンブレード(10)の前記残余の部分と同じ材料であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記PSP(60)のろう付け材料が、ホウ素を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記適用するステップが、スポット溶接によって、前記予備焼結プリフォーム(60)を少なくとも1箇所で前記上面に固定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記適用するステップが、スポット溶接によって、前記予備焼結プリフォーム(60)を1箇所だけ前記上面に固定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ろう付け処理を行うステップが、一定量の水素が前記タービンブレード(10)の周囲の環境に導入され、前記ろう付け材料に前記ホウ素及び前記水素からボランを形成する第1段と、形成されたボランが負圧により除去される第2段とが、交互に行われるステップを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記棚部(62)の広いクラック(55)に結合材を有する超合金粉末のペースト混合物を塗布するステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項12】
タービンブレード(10)の先端部(22)に対応する予備焼結プリフォーム(PSP)(60)であって、
タービンブレードの翼部の上面と結合するように構成された棚部(62)と、
前記棚部(62)から半径方向外側に延びるスキーラ部(64)と、
を有し、
前記棚部(62)が第1の組成物を含み、前記スキーラ部(64)が第2の組成物を含む、
予備焼結プリフォーム(PSP)(60)。
【請求項13】
前記第1の組成物と前記第2の組成物とが異なることを特徴とする請求項12に記載の予備焼結プリフォーム(60)。
【請求項14】
前記第1の組成物が、60~90重量%の超合金材料及び10~40重量%のろう付け材料を含み、前記第2の組成物が、70~90重量%の超合金材料及び10~30重量%のろう付け材料を含むことを特徴とする請求項12に記載のPSP(60)。
【請求項15】
前記第1の組成物が、70重量%の超合金材料及び30重量%のろう付け材料を含み、前記第2の組成物が、80重量%の超合金材料及び20重量%のろう付け材料を含む、請求項13に記載のPSP(60)。
【請求項16】
前記超合金材料が合金247である、請求項14又は15に記載のPSP(60)。
【請求項17】
前記PSP(60)の超合金材料が、前記タービンブレード(10)の残余の部分と同じ材料である、請求項14に記載のPSP(60)。
【請求項18】
前記PSP(60)のろう付け材料が、ホウ素を含むことを特徴とする請求項14に記載のPSP(60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、冶金の分野に関し、より詳細には、金属基板内の構造的欠陥の修復のためのプロセスに関し、より詳細には、複合ホウ素ベースの予備焼結プリフォームを使用するタービンコンポーネントの先端修復に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、当技術分野でよく知られている。ガスタービンサイクルの熱効率を高めるために、ガスタービン分野で継続的な研究が行われている。これが達成された一つの方法は、ますます耐熱性の高い材料、または高温で経時的にその構造的完全性を維持することができる材料を開発することである。このため、ガスタービンエンジンの高温ガス経路要素は、しばしば超合金材料から形成される。用語「超合金」は、本明細書では、高温、例えば1000℃よりも高い温度で優れた機械的強度およびクリープ耐性を示す高耐食性および耐酸化性合金を指しており、当該技術分野で一般的に使用されている。
【0003】
その強度にもかかわらず、タービンエンジンの高温ガス経路内の超合金成分は、著しい熱的および機械的応力に長期間さらされるために損傷(欠陥)を受けやすい。超合金材料は修復が最も困難な材料であることが一般に知られている。しかしながら、多くの超合金の溶接は、これらの材料が溶接凝固割れや歪時効割れを進展させる傾向があるため困難である。このように、部品の構造的完全性を維持しながら溶接を排除する超合金材料の補修処理が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
簡単に説明すると、本開示の態様は、構造的欠陥を有するタービンコンポーネントの先端部と、タービンコンポーネントの先端に対応する予備焼結プリフォーム(PSP)とを修復する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示された実施形態は、構造的欠陥を有するタービンコンポーネントの先端部を修復する方法を対象とする。この方法は、先端部に構造的欠陥を有するタービンコンポーネントを際立たせ、次いで、先端部を機械加工または切削することによって損傷部分を除去するステップを含む。タービンコンポーネントの残余の部分の上面と結合するように構成された予備焼結プリフォーム(PSP)が設けられ、次いで、上面に適用される。予備焼結プリフォームは、超合金材料及びろう付け材料を含んでもよい。PSPとタービンコンポーネントの組み合わせは、ろう付け材料が溶融し、構造上の欠陥内に充填するろう付け処理にかけることができる。PSPは、第1の組成物を有する第1の部分と、第2の組成物を有する第2の部分とを備える。この方法は、ろう付けが行われる温度を低下させるために、ろう付け材料中にホウ素を使用することを可能にする。
【0006】
さらなる開示された実施形態は、タービンコンポーネントの先端に対応する予備焼結プリフォーム(PSP)を対象とする。PSPは、タービンコンポーネント翼の上面と結合するように構成された先端棚部と、先端棚部から半径方向に延びるスキーラ先端部とを含む。先端棚部は第1の組成物を含み、スキーラ部は第2の組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態を組み込むことができる、タービンブレード列を備えたガスタービンエンジンの軸方向断面図である。
図2】タービンコンポーネントの先端部の構成の部分断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るPSP複合先端クーポンの斜視図である。
図4】ろう付け熱処理サイクルの一実施形態を示すグラフである。
図5】一実施形態による複合PSPクーポンを利用して修復されたタービンブレードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態、原理、および特徴の理解を容易にするために、以下に、例示的実施形態における実施を参照してそれらを説明する。しかしながら、本開示の実施形態は、記載されたシステムまたは方法での使用に限定されない。
【0009】
以下に、様々な実施形態を構成するものとして記載されるコンポーネントおよび材料は、例示的なものであって、限定的なものではない。本明細書に記載される材料と同一または類似の機能を果たすであろう多くの適切なコンポーネントおよび材料は、本開示の実施形態の範囲内に包含されることが意図される。
【0010】
ガスタービンエンジンは、コンプレッサセクションと、燃焼セクションと、タービンセクションとを備えることができる。コンプレッサセクションは周囲の空気を圧縮する。燃焼セクションは、圧縮空気と燃料を組み合わせ、混合気を点火させて、作動流体を形成する高温ガスを含む燃焼生成物を生成する。作動流体はタービンセクションに伝わる。タービンセクション内では、ベーンおよびブレードの円周方向交互横列であり、ブレードはロータに連結されている。静翼と動翼の各対横列は、タービンセクションに段を形成する。タービンセクションは、固定されたタービンケーシングを備え、このケーシングは、ベーン、ブレードおよびロータを収容する。
【0011】
タービンブレードは、半径方向内側根元部と半径方向外側先端部とを含む。タービンブレードの先端は、先端流漏れを防止するためにタービンのガス経路内のリングセグメントとブレードの間のギャップのサイズを減少させるための先端機能を有することができ、これはタービンブレードによって発生されるトルクの量を減少させる。先端機能はスキーラ先端と呼ぶことができ、タービン段間の空力損失を低減するのに役立つようにブレードの先端に組み込むことができる。これらの機能は、ブレード先端とリングセグメントとの間の漏れを最小限に抑えるように設計されている。
【0012】
現在、ブレードまたはベーンのようなタービンコンポーネントの先端領域に影響を及ぼす構造的欠陥は、研削および充填材を利用するスキーラ先端の溶接増強を含む。さらに、損傷部分を周囲温度または高温でホットボックス溶接補修プロセスを用いて充填材で溶接補修することにより、先端および翼の棚部分のクラックを除去することができる。ホットボックス溶接補修は、完了するまでに8時間以上かかる場合があり、高温を維持するためにホットボックス内部で作業する必要条件は、そのような溶接を行うことを困難にする。
【0013】
概して、本発明者は、タービンコンポーネントの先端部分の構造的欠陥を修復するための様々な組成を有する予備焼結プリフォーム(PSP)を利用するろう付け処理を提案する。「ろう付けのみ」のプロセスは、いかなる溶接補修プロセスも必要とせずに、タービンコンポーネントの先端損傷を補修するために使用されてもよい。溶接が不要なため、過時効熱処理の必要性、熟練溶接士の必要性、熱影響部割れなど、溶接工程の欠点はすべて解消される。
【0014】
予備焼結プリフォーム(PSP)は、典型的には、ベース合金粒子とろう付け合金粒子の粉末混合物を含み、粒子が冶金的結合を確立するように予備焼結される。加えて、予備焼結プリフォームは、ボイドを作る結合材材料を含まない。予備焼結材料は、提案されたような修復プロセスで使用され得るネット形状に形成される。提案した修復プロセスの場合、タービンコンポーネント先端の複合ほう素ベースのPSPを利用することができる。
【0015】
図1を参照すると、タービンエンジン32の一部が示されている。中心線11は、タービンエンジン32の軸方向中心を表すように示されている。半径方向Raは、半径方向外側にある方向で示される。また、作動流体Wf方向が示されている。タービンブレード10は、ロータディスク(図示せず)に連結された根元部34と、根元部34に連結されたプラットフォーム24から外方に延びる翼12を形成する細長い部分とから形成される。タービンブレード10の反対側の端部では、ブレード10は、根元部34に対向する先端22と、前縁14と、後縁16とで構成されている。前縁14と後縁16とを連結することにより、翼12の圧力側18と吸込側20とが半径方向に延びる。タービンブレード10の先端部22に沿って、タービンブレード10によって発生されるトルクの量を減少させる先端流の漏れを防止するために、タービンのガス経路内のリングセグメント26とブレード10との間のギャップのサイズを減少させるための先端部形状構成が配置されている。先端機能は、スキーラまたはスキーラ先端と呼ばれ、タービン段間の空力損失を低減するのを助けるために、ブレード先端に組み込まれる。これらの機能は、ブレード先端22とリングセグメント26との間の漏れを最小にするように設計されている。
【0016】
図2は、離間して配置された先端壁が、ブレード10の圧力側18及び吸込側20の長さから直接上方に伸びて延びる、従来のスキーラ先端36の位置を表す。スキーラ先端壁36の間に横たわる先端端部22には、先端棚面50を有する先端棚40が存在する。
【0017】
上述したように、ブレードの作動中、特にタービンエンジンの初期段では、著しい熱的および機械的応力の影響を受けやすいことが理解される。従って、特に幾つかの超合金では、ブレード先端、特に先端22のスキーラ先端壁36及び棚領域40にクラック及び他の欠陥が進展するのを見ることが一般的である。図2は、例えば、スキーラ先端36内及び先端部の棚部分40内に延在するクラック(不連続部)55を含む先端22を示す。クラックが示されているが、スキーラ先端のこすれや棚のこすれのような他の欠陥もまた、修復が必要な欠陥と考えられ得る。
【0018】
タービンコンポーネントは、任意の適切な金属材料を含んでもよい。一実施形態によると、タービンコンポーネントは超合金材料を含んでもよい。例示を目的として、本明細書で言及されるタービンコンポーネントはタービンブレードである。例示的な超合金としては、ハステロイ、インコネル(例えば、IN100、IN600、IN713)、ウォスパロイ、レン合金、ハインズ合金、インコロイ、MP98T、TMS合金、およびCMSX(例えば、CMSX-4)単結晶合金が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、タービンコンポーネントは、合金247材料(当該技術分野で公知であり、プラクスエア・サーフェス・テクノロジーズ(Praxair Surface Technologies)社から市販されているようなCM247またはMAR-M247材料)から形成される。一実施形態によると、合金247材料は、以下の範囲(重量%)内の組成を有してもよい。
C=0.07~0.15%
Cr=8.1~8.4%
Co=9.2~10.0%
Al=5.5~5.6%
B=0.015%
W=9.5~10.0%
Mo=0.5~0.7%
Ta=3.0~3.2%
Ti=0.7~1.0%
Hf=1.4~1.5%
Zr=0.015~0.05%
Ni=残余
【0019】
図3は、タービンコンポーネントを修復するために使用される複合PSP先端クーポン60を示す。複合先端クーポン60は、先端棚(キャップ)部62とスキーラ部64とを含む。先端棚部62は第1の組成物を含み、スキーラ部64は第2の組成物を含む。一実施形態によると、第1の組成物と第2の組成物とが異なる。PSPの各部分は、先端棚形状に形成されたろう付け粒子及び超合金粒子をそれぞれ含む粉末混合物と、スキーラ先端形状とを含み、ブレード翼のようなタービンコンポーネントの残余の部分に結合するように構成されていてもよい。一実施形態によると、先端棚部62の第1の厚さは、0.762mm(0.030インチ)からの1.270mm(0.050インチ)の範囲であってもよい。一方、スキーラ部64の第2の厚さは、1.524mm(0.060インチ)から3.556mm(0.140インチ)の範囲であってもよい。ブレード棚が例えば1.016mm(0.040インチ)と非常に薄い場合、複合材クーポンを取り付ける前に、既存の棚部分に追加の棚PSP材料62を取り付けることによって、その基部の厚さを増加させることができる。
【0020】
少なくとも一定量のホウ素を含むろう付けのために、当該技術分野における任意の適切な材料を含むことができ、一定量のホウ素を含まない同じろう付け材料に対して効果的に溶融温度を低下させる。一実施形態によれば、一定量のホウ素は、ろう付け材料の溶融温度を所望の程度まで低下させるのに有効な量のホウ素であってもよい。特定の実施形態では、ろう付け材料は、一定量のホウ素に、ろう付け/修復されるべきコンポーネントの損傷領域におけるものと同じ合金コンポーネントを含む第1の粉末材料を加えたものを含む。任意ろう付け材料組成は、参照により本明細書に組み込まれている国際出願番号PCT/US2018/020170、「ホウ素捕獲用水素添加による超合金コンポーネントのろう付け」に見出され得る。
【0021】
次に、図1図3を参照すると、構造的欠陥を有するタービンコンポーネントの先端部分を修復するための方法が提示される。タービンコンポーネントは、本明細書においてタービンブレードとして描かれ、図面に例示されているが、本明細書に記載される修復プロセスはブレードに限定されるものではなく、他の損傷した金属コンポーネントにも適用され得ることが理解されよう。タービンブレード10は、まず、損傷した先端部22を残余のタービンブレード翼12から取り除くことによって、修復プロセスのために準備される。損傷部分を除去することは、損傷部分を有するタービンブレード翼12の少なくともスキーラ部36を機械加工及び/又は切削することを必要とする。加えて、棚部セクション40が、幅の広いクラック、例えば、0.508mm(0.020インチ)より幅の広いクラックを含む場合、クラックは、ペーストで充填されてもよい。タービンブレード10が、例えば合金247を含む場合、ペーストは、合金247を適切な結合剤と混合することによって形成され得る247ペーストであってもよい。一実施形態によると、次いで、残余のブレード翼12の上面を機械加工して、例えば、除去された損傷先端部分を置換する複合PSP先端部60の表面と結合するために、平滑で平坦な表面を生成することができる。このプロセスと他の従来のプロセスとの間の違いは、スルークラックが棚部分に存在するときに、ペースト塗布の利用が必要とされるだけである。そうしないと、ろう付け中のPSP組成物が欠陥に利用されること、例えば、スルークラックが棚部分に存在する場合にのみペースト塗布が利用されることがある。つまり、ろう付け材料がクラックに流れ込んで充填される。これにより、完全な修復が可能になり、ペーストが必要な場所の特定が容易になる。
【0022】
ペースト塗布およびろう付けの前に、随意に、コンポーネントの構造的欠陥を含む領域を洗浄してもよい。一実施形態によると、洗浄ステップは、フッ化物イオン洗浄(FIC)を用いて実行されてもよい。特定の実施形態では、欠陥を含む損傷領域は、フッ化物イオン洗浄(FIC)プロセスを介して洗浄されて、ろう付けのために損傷表面を準備することができる。状況によっては、FICプロセスの前にクラックを物理的に開く必要がある場合がある。いくつかの実施態様において、FICプロセスは、フッ化水素ガスによる洗浄を含む。FIC洗浄の使用は、好都合に、不要な酸化物および欠陥内の残留被覆残留物(例えば、拡散被覆残留物)を、部品の表面上だけでなく、除去される。
【0023】
一実施形態によると、PSP先端クーポン60の表面は、残余のブレード翼12の準備された表面に適用される。PSP先端クーポン60は、PSP先端クーポン60を強固に固定することを避けるため、またはろう付け中にそれが飛び落ちることを避けるために、特に1箇所または2箇所のみのスポット溶接によって、ブレード棚面50の表面にスポット溶接によって軽く固着することができる。ろう付けされる表面とPSP先端クーポン60との間には、間隙が存在してもよい。PSP先端クーポン60は、ろう付け熱処理サイクル中に、ろう付けされている表面に形成されるであろう。
【0024】
ろう付け材料を含むPSP先端クーポン60が、所望または必要に応じて適用されると、少なくともろう付け材料を溶融させ、溶融ろう付け材料を欠陥に流入させるために、PSPとともにタービンブレードに熱処理(本明細書では「ろう付け」または「ろう付けプロセス」と称する)が施される。一実施形態によると、ろう付け熱処理は、国際特許出願番号PCT/US2018/020170の「ホウ素捕獲のための水素添加による超合金成分のろう付け」に記載されているように制御された熱処理であってもよい。この熱処理と他のろう付け熱処理プロセスとの主な相違点は、コンポーネント、例えばタービンブレード及び固定されたPSPが、ろう付け材料及びタービンブレードの少なくとも一部を加熱しながら、水素環境(「水素段」)内及び真空環境(「真空段」)内で交互の段にさらされることである。この交替プロセス70は、図4に見られるろう付け熱処理チャートに見られることがあり、水素段と真空段との交替は、中心線共晶を排除し、ろう付け混合物の低融点部分のホウ素除去によって、ろう付け後の再融点特性を改善するのに役立つ。中心線共晶を除去することにより、供用条件中にクラックが発生しやすい修復領域内の脆性ゾーンを回避する。
【0025】
図5は、複合PSPクーポン60を用いて修復されたタービンブレード10の斜視図を示す。図5は、ろう付け後の先端22を示す。特定の実施形態では、所望の最終ブレード構成に応じて、ブレンディング、機械加工、冷却穴ドリル加工およびコーティング作業などの仕上げ工程が、適用可能に応じて実施されてもよい。
【0026】
開示は、コストがかかり、時間がかかり、溶接に関連した割れおよび変形を誘発し得る溶接なしで、タービンコンポーネントの先端部分を修復することができるプロセスを提供する。複合PSP先端クーポンは、例えば、スキーラ先端部のための1つの材料組成と、タービン翼の棚部分のための異なる材料組成とを可能にする。PSP組成選択は、運転条件と修復が必要な損傷モードに基づいている。スキーラ部をより高いパーセンテージの基材合金材料とより少ないろう付け材料とすることにより、スキーラはより良い酸化及び摩耗特性を有することが可能になり、一方、ブレード棚のクラックを埋めるために先端部分よりも高いパーセンテージのろう付け材料が必要となり得る。最後に、他の利点の中でも、最小のペースト塗布と組み合わせたPSP先端クーポンの利用は、既存および/または必要とされる最終的な幾何学形状により多く適合するコンポーネントをもたらす。これにより、プロセスの完了後に必要な後処理(ブレンディングまたは機械加工)の量を減らすことができる。毛細管作用に基づいてろう付けが働くことを考えると、適切な手入れと手順により、内部空洞が詰まる機会も最小限に抑えられる。記載された実施形態はタービンブレード修復に向けられてきたが、提案された方法は、他の超合金コンポーネントの修復に拡張することができる。
【0027】
本開示の実施形態は、例示的な形態で開示されてきたが、以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明およびその同等物の精神および範囲から逸脱することなく、その中で多くの修正、追加、および削除を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5