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特許7259098生産システムのための支持システム及びそのワークピースホルダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】生産システムのための支持システム及びそのワークピースホルダ
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20230410BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230410BHJP
   B22F 10/47 20210101ALI20230410BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20230410BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230410BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20230410BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230410BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230410BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20230410BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20230410BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230410BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20230410BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230410BHJP
【FI】
B29C64/245
B22F10/28
B22F10/47
B22F10/66
B22F10/85
B22F12/30
B28B1/30
B29C64/153
B29C64/188
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y50/02
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010214
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020544123の分割
【原出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2022064947
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】17201412.8
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520163371
【氏名又は名称】キャズ アディティブ ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】520163382
【氏名又は名称】ペーター レーマン アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタドルマイアー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘーラー、ボルフガング
(72)【発明者】
【氏名】フリガー、ウルス
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-100884(JP,A)
【文献】特表2016-521315(JP,A)
【文献】特開2018-171775(JP,A)
【文献】特表2016-508086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335434(US,A1)
【文献】特表2018-530457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加形式の製造プロセスに従ってワークピースを製作するための方法であって、
製作されるワークピースの、前記ワークピースが上で付加製造されるワークピースホルダ(8)に対する位置及び/又は向きを、前記ワークピースの幾何形状を定義するデジタルパーツデータを考慮し、前記ワークピースの除去的後処理ステップによって定義される条件を考慮して決定するステップと、
決定された前記ワークピースの位置及び/又は向きに基づき、前記ワークピースホルダ(8)の上で前記ワークピースの付加製造を実行するステップと
を含前記方法が、製造システムのための支持システムであって、前記製造システムのプロセスチャンバに取り付けられるように配置され、少なくとも1つの位置決め要素を備える、ベース支持体(6)と、ワークピースホルダ(8)であって、粉末状の原材料の積層塗布を含む製造プロセスに従って、ワークピースがその上で製作され得る、ワークピースホルダ(8)とを備える、支持システムであり、前記ワークピースホルダ(8)が、下方側(12)と、前記下方側(12)の実質的反対側に位置する、前記ワークピースホルダ(8)の上方側(11)としての構築側とを有し、前記ワークピースホルダ(8)は、前記下方側(12)に、前記支持システムの前記ベース支持体(6)へ前記ワークピースホルダ(8)を解放可能に、位置的に正確に装着するために、少なくとも1つの第1の位置決め装置を有し、前記少なくとも1つの位置決め要素(10)及び前記少なくとも1つの第1の位置決め装置(14)は、相補的な様式に設計され、ピンと穴とを備えるピン/穴の対を形成し、前記ピンの少なくとも1つの部位(87)が、第1の熱膨張係数を有する第1の材料から作製され、前記穴の、位置決め精度に対して決め手となる保持部位(28、42、91)が、第2の熱膨張係数を有する第2の材料から作製され、前記第2の熱膨張係数が前記第1の熱膨張係数よりも小さいため、前記製造プロセス中に前記支持システムの温度が上昇した場合に、前記ピンの前記部位(87)の膨張に起因し、前記ピンと取り囲む前記穴との間にクランプ効果が生じる、又は、前記第1の熱膨張係数が前記第2の熱膨張係数よりも小さいため、前記製造プロセス中に前記支持システムの温度が上昇した場合に、前記穴の前記保持部位(28、42、91)の膨張に起因し、前記ピンと取り囲む前記穴との間にクランプ効果が生じる、支持システムを提供するステップを更に含み、前記ワークピースホルダ(8)が、前記支持システムの前記ワークピースホルダ(8)であり、
前記支持システムの前記ワークピースホルダ(8)を、付加形式の製造装置の前記支持システムの前記ベース支持体(6)の上に置くステップであって、前記少なくとも1つの位置決め要素(10)及び前記少なくとも1つの位置決め装置(14)が、相補的な様式に設計され、前記ピンと前記穴とを備える前記ピン/穴の対を形成し、前記ピンが前記穴に係合する、ステップと、
前記製造装置によって前記ワークピースホルダ(8)の上でワークピースの付加製造を実行するステップであって、前記支持システムの温度が前記製造プロセス中に上昇し、前記ピンの前記部位(87)の前記膨張に起因し、又は、前記穴の前記保持部位(28、42、91)の前記膨張に起因し、前記ピンと取り囲む前記穴との間にクランプ効果が生じる、ステップと、
前記支持システムを冷却し、それにより前記クランプ効果が解除されるステップと、
前記ワークピースホルダ(8)を、その上で製作された前記ワークピースと一緒に前記ベース支持体(6)から係合解除するステップと、
前記ワークピースの除去的後処理のための設備の支持体の上に前記ワークピースホルダ(8)を配置するステップであって、前記支持体の位置決め要素(10)と前記ワークピースホルダ(8)の前記位置決め装置(14)が互いに係合する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ワークピースの前記除去的後処理によって定義される前記条件を考慮して、前記ワークピースのための少なくとも1つの支持構造を含む支持幾何形状を決定するステップを更に含み、
付加製造を実行する前記ステップが、前記支持構造の付加製造を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークピースの前記除去的後処理によって定義される前記条件が、前記除去的後処理で使用される工具のフライス力、前記除去的後処理で使用される前記工具のフライストルク、前記除去的後処理中の振動、前記除去的後処理で使用される前記工具による前記ワークピース及び/又は前記支持構造の前記幾何形状の達成の可能性、前記除去的後処理で使用される前記工具の機械運動学、前記除去的後処理で使用される前記工具の工具幾何形状、前記除去的後処理で使用される前記工具の工具連携のうちの少なくとも1つの条件を含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記ワークピースの前記付加製造のための製造装置の利用可能な構築空間を構成するステップを更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ワークピースの幾何形状を定義する前記デジタルパーツデータを考慮し、前記ワークピースの前記除去的後処理によって定義される前記条件を考慮して、前記付加製造の層厚を決定するステップ、及び/又は、前記付加製造のための暴露ストラテジーを決定するステップを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記除去的後処理のための設備の前記支持体の上に前記ワークピースホルダ(8)を置く前記ステップに先立ち、
前記ワークピースの熱的後処理のための設備の支持体の上に前記ワークピースホルダ(8)を置くステップを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
係合解除する前記ステップが、
前記ワークピースホルダ(8)側面に配置された持手段(97)において、前記ワークピースホルダ(8)を把持具によって把持するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数のワークピースホルダ(8)が、前記製造装置の前記ベース支持体(6)の上に並べて配置される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる製造システムのための支持システム、及び、そのワークピースホルダに関する。本発明は、更に、そのような支持システムを備える製造装置、及び、ワークピースを製作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「3D印刷」とも呼ばれる付加製造では、ワークピースが、構築材料から段階的に構築される。この目的のために、1つの変形例では、構築材料の粉末が、構築プラットフォーム(「ステージ」)に一層ずつ塗布される。この粉末は、エネルギーを入力することにより、制御された様式で溶融される。溶融された領域が固化すると、ワークピースが完成するまでこのプロセスが繰り返される。エネルギーは、例えば、電磁放射を用いた、より詳細にはレーザーによる標的照射、又は粒子放射を用いた標的照射によって印加される。粉末の積層塗布は、例えば、構築シリンダ内で構築プラットフォームを段階的に下降させることによって達成される。この種の装置は、例えばEP2386404(A1)より周知されている。
【0003】
精密で、高品質に製造するために、粉末の塗布は均一で緻密でなくてはならない。特に、製造プロセス中の構築材料の局所たるみは回避されなければならない。これが生じる原因として考えられるのは、プロセス中に崩れる小さな空隙である。それぞれの最上層における凹凸は、製造されたワークピースの構造的欠陥をもたらす。
【0004】
上記の製造プロセスの別の態様は、構築シリンダに対する構築プラットフォームの完全な封止であり、この封止の漏れに起因する、構築プラットフォームの下の空間への構築材料のロスを回避する。又、そのような材料の流れは、塗布された構築材料層の望ましくない凹凸をもたらす恐れがある。
【0005】
様々な構築材料が、これらの付加製造法で使用される。具体的には、ポリマー、より詳細には熱可塑性ポリマー、金属粉末、セラミック粉末などの溶融可能又は部分的に溶融可能な材料が知られている。
【0006】
製造プロセスが完了し、余分な構築材料を取り除いた後、ワークピースは、接触面で、又、多くの場合は支持構造を通じ、構築プラットフォームに強固に固定されている。支持構造は、製造プロセス中にワークピースの位置を安定させ、生成された熱を構築プラットフォームに導く働きをする。
【0007】
付加製造プロセスで製作されたそのようなワークピースは、多くの場合、更なるプロセスステップ、例えば熱的処置、又は切削(即ち、除材又は除去)製造プロセスが続かなくてはならない状態にある。この目的のために、これらの更なるプロセスステップを適用することができるように、ワークピースを構築プラットフォームから取り外すことが必要である。構築プラットフォームは付加製造装置の一体的な部分であり、そこから構築プラットフォームを取り外すことは手間がかかるため、プラットフォームからワークピースを取り外すことは、現場で行われなければならず、それは複雑であり、一般的には手作業を必要とする。更に、複数のオブジェクト(例えば100個まで)が同時に製作されるので、取り外し中に個々のワークピースに接近することは難しい。
【0008】
切削製造(旋削、フライス削り、研削など)の分野からは、ベースプレートの上に交換可能なワークピースホルダ、いわゆるパレットを配置することが知られている。パレットには、ワークピース用の適切な固定装置が設けられ、最近では、加工中の熱膨張及びパレットに印加された機械的負荷に起因する、パレットの中心に対する変位が回避される、いわゆるゼロポイントクランピングシステムも設けられる。パレットは、加工中の負荷に耐えるように、能動的固定装置によってベースキャリアに固定される。
【0009】
しかしながら、この種のパレットは、付加製造プロセス、特に、層に塗布される粉末を使用する付加製造プロセスには適用できない。具体的には、それらは、特定の要件を満たさず、つまり、パレットの表面でワークピースが構築され得るようにするための構築材料との親和性という要件と、付加製造は、一方で複数のワークピースを一斉に製作することを可能し、他方では、高い時間要件があるために、一斉に製作される大量のワークピースが、利益性を左右する要素となるが故の、表面を最大限に利用しながら粉末で空隙のなく被覆するという要件と、付加製造では、構築表面がワークピースに直接連結していることに起因し、構築表面の変形が直接ワークピースに伝わるが故の、加熱時の寸法安定性という要件とを満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】EP2386404(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、支持システム、ワークピースホルダ、及び、関連する方法の形態で、付加製造プロセスのための製造装置から次の製造プロセス、より詳細には、次の除去プロセス(例えば切削プロセス)、又は、次の熱的プロセスへのワークピースのより合理的な移送を可能にする解決方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのような支持システムが請求項1に記載され、ワークピースホルダは請求項2に記載されている。請求項15から19はそれぞれ、ワークピースを製作するための対応する方法を定義する。更なる請求項は、好ましい実施例及び製造装置を示す。
【0013】
以下の説明及び特許請求の範囲に示される数字は、それぞれ通常の許容範囲を含むものと理解すべきである。
【0014】
第1の態様によれば、製造装置のための支持システム、及び、そのような支持システムのためのワークピースホルダが提供される。支持システムは、製造システムのプロセスチャンバに取り付けられるように設計され、少なくとも1つの位置決め要素を備える、ベース支持体(又はベースプレート)と、ワークピースホルダであって、粉末状の原材料の積層塗布を含む製造プロセスに従って、ワークピースがその上で製作され得る、ワークピースホルダとを備える。ワークピースホルダは、下方側と、下方側の実質的反対側に存在する、ワークピースホルダの上方側としての構築側とを有する。ワークピースホルダは、下方側に、製造装置のベース支持体へワークピースホルダを解放可能に、位置的に正確に装着するために、少なくとも1つの第1の位置決め装置を有する。少なくとも1つの位置決め要素及び少なくとも1つの第1の位置決め装置は、相補的な様式に設計され、ピン/穴の対を形成する。ピンの少なくとも1つの部位は、第1の熱膨張係数を有する第1の材料から作製され、位置決め精度に対して決め手となる穴の部位は、第2の熱膨張係数を有する第2の材料から作製される。第1の選択肢では、第2の熱膨張係数が第1の熱膨張係数よりも小さいため、製造プロセス中に支持システムの温度が上昇した場合に、ピンの部位の膨張に起因し、ピンと取り囲む穴との間にクランプ効果が生じる。第2の選択肢では、第1の熱膨張係数が第2の熱膨張係数よりも小さいため、製造プロセス中に支持システムの温度が上昇した場合に、穴の保持部位の膨張に起因し、ピンと取り囲む穴との間にクランプ効果が生じる。
【0015】
製造システムは、例えば、付加形式(例えば選択的レーザー溶融用)の製造装置とすることができる。又、製造システムは、ワークピースの熱的後処理のための製造システム、又は、除去(例えば切削)製造のための製造システムとすることができる。プロセスチャンバは、それぞれの製造プロセス(例えば付加製造プロセス)が行われる製造システムの空間とすることができる。より詳細には、ベース支持体は、製造システムの構築プラットフォームの一部として提供され得る。ベース支持体は、ベース支持体を製造システムのベースプレートに固定するのに適した固定手段を含むことができる。そのような固定手段は、例えば、穴、ピン、及び/又は、ねじとすることができる。具体的には、ベース支持体は、製造システムのベースプレートに螺合されるように適合され得る。
【0016】
製造プロセスは、例えば、選択的レーザー溶融又は選択的レーザー焼結を含むことができる。粉末状の原材料は、金属粉末とすることができる。ワークピースホルダの下方側及び上方側は、ワークピースホルダの実質的に平坦な表面として提供され得、ワークピースホルダの両側を画定することができる。構築側は、粉末状の原材料の積層塗布を含む方法に従って、その上でワークピースを製造するのに適し得る。第1の位置決め装置は、円形断面又は円形形状から逸脱した断面を有することができる。複数の第1の位置決め装置が(例えば位置決め装置の配列の形態で)、ワークピースホルダに設けられ得る。更に、複数の位置決め要素が(例えば位置決め要素の配列の形態で)、ベース支持体に設けられ得る。位置決め装置の数は、位置決め要素の数とは相違し得る。位置決め要素及び第1の位置決め装置が、ピン/穴の対として構成されるということは、位置決め要素がピンとして設計され、第1の位置決め装置が穴として設計されるか、又は、位置決め要素が穴として設計され、第1の位置決め装置がピンとして設計されることを意味し得る。言い換えれば、ピン/穴の対は、ベース支持体がピンを、ワークピースホルダが穴を備えるか、又は、ベース支持体が穴を、ワークピースホルダがピンを備えるように設計される。複数のピン/穴の対が設けられる場合、ベース支持体が、ピンと穴との両方を備え、ワークピースホルダが、関連する穴とピンとを備えることができる。位置決め要素及び第1の位置決め装置が、設計上相補的であるということは、位置決め要素の断面が、第1の位置決め装置の断面に実質的に一致することを意味することができる。言い換えれば、ピンは、実質的に遊びがなく穴に受け入れられ得る。
【0017】
ピンの少なくとも1つの部位は、位置決めリングとすることができる。位置決めリングは、実質的に環状形状を有することができる。位置決めリングは、例えば円盤形状のリングの形態で提供され得る。位置決めリングの厚さは、例えば一定とすることができる。ピンの少なくとも1つの部位は、シリンダの形態で提供されることもできる。熱膨張係数は、縦膨張係数又は空間膨張係数とすることができる。第1の選択肢によれば、クランプ効果は、例えば、ピンの部位が、ピンの半径方向に膨張し、従って、ピンと穴との間の摩擦及びポジティブ連結を伴うことによって達成され得る。第2の選択肢によれば、クランプ効果は、例えば、穴の保持部位が、穴の(負の)半径方向に、即ちピンに向かって膨張し、従って、ピンと穴との間の摩擦及びポジティブ連結を伴うことによって達成され得る。
【0018】
ポジティブ連結は、例えば、上方側及び下方側に平行な方向に達成され得、摩擦連結は、上方側及び下方側に垂直な方向に達成され得る。支持システムが冷めると、クランプ効果は解除され得る。
【0019】
ワークピースホルダは、プレート形状の上方要素と、プレート形状の下方要素とを備えることができる。上方要素は上方側を備えることができ、下方要素は下方側を備えることができる。上方要素は、下方要素とは異なる材料から形成され得る。
【0020】
以降、下方要素は下方部とも呼ばれ、上方要素は上方部とも呼ばれる。ワークピースホルダの上方側と下方側との間には、上方要素と下方要素との間に境界面があり得る。この境界面で、上方要素と下方要素は、平面状に互いに接触することができる。しかしながら、キャビティ又は複数のキャビティが、上方要素と下方要素との間に設けられてもよい。
【0021】
上方要素及び下方要素は、それぞれプレート形状である。又、2つの要素の境界面に、上方要素及び下方要素は、同一の断面(例えば実質的に長方形の断面)を有することができる。上方要素は、下方要素とは異なる材料から形成される。例えば、上方要素は、製造プロセスによって、より詳細には、(選択的レーザー溶融)プロセスによってワークピースを製作するのに適する材料から形成され得る。上方要素は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され得る。下方要素は、耐熱性材料から形成され得る。下方要素は、例えば、工具鋼から形成され得る。
【0022】
下方要素及び上方要素は、互いに着脱可能に連結され得る。従って、下方要素及び上方要素は、例えば、互いに螺合され得る。代替え的には、2つの要素は、例えば、他の解放可能な固定装置によって、例えば、ペグ又はピン及び関連する穴によって、或いはクランプによって互いに連結され得る。
【0023】
上方側から始まり、ワークピースホルダの高さの少なくとも1/4が、上方要素を形成することができ、下方側から始まり、最大で上方要素まで、下方要素が延在することができ、下方要素には、第1の位置決め装置の少なくとも一部が、例えば穴の形態で形成される。上方要素は、例えば、ワークピースホルダの高さの最大3/4、例えば、ワークピースホルダの高さの約半分を形成することができる。
【0024】
第2の材料は、
- 550℃までの耐熱性
- 45から68HRC(ロックウェル硬度C)の範囲の硬度
の2つの特性のうちの少なくとも1つを示すことができる。
【0025】
第2の材料は、更に、1000℃までの耐熱性を有することができる。第2の材料の硬度は、例えば50から55HRCの範囲とすることができる。この材料は、工具鋼とすることができる。下方要素全体は、例えば、第1の位置決め装置の、位置決め精度に関連する保持部位が構成される材料から構成され得る。
【0026】
第1の位置決め装置は実質的に穴とすることができ、穴の保持部位は、実質的に穴の内壁の環状部分を表すことができる。保持部位は、押し込まれる又は螺合される少なくとも1つのリングを、穴毎に備えることができる。
【0027】
保持部位が、押し込まれる又は螺合されるリングを備える場合、リングは、例えば、第2の材料から形成され得、残りのワークピースホルダは、別の材料から形成され得る。他の材料は、例えば、製造プロセスによってその上でワークピースを製作するのに適した材料とすることができる。
【0028】
第2の位置決め装置が、上方要素及び下方要素に設けられ得、互いに相補的な構成を有することができるため、上方要素及び下方要素は、位置的に正確に互いに固定され得る。第2の位置決め装置は、第1の穴と少なくとも1つの第2の穴とを含む、少なくとも2つの穴の対を有することができ、第2の穴が長穴として設計されるため、そこに挿入される第2の位置決め装置の位置決めピンは、下方要素に対する上方要素の熱的寸法変化を補償するために、少なくとも1つの方向に変位可能である。より具体的には、長穴は、実質的に第1の穴と第2の穴との間を接続する方向に一致する方向に延在することができる。
【0029】
第1の位置決め装置が、円形断面を有する穴を表すことができ、中心をずらして配置された第2の陥凹部が、ワークピースホルダに設けられるため、又は、穴が楕円形、長円形、又は多角形断面を有するため、ワークピースホルダは、相補的な構成の少なくとも1つの位置決め要素を有するベース支持体の上に置かれると、回転が抑制される。具体的には、ワークピースホルダは、ワークピースホルダの上方側及び下方側に平行な方向に、ベース支持体に対して回転が抑制されるべきである。この目的のために、例えば、第1の位置決め装置の多角形断面が有利であり得る。
【0030】
ワークピースホルダの、下方側と上方側との間の側面が傾斜し得るため、ワークピースホルダは、下方側から上方側に向かって細くなる。傾斜した側面は、ワークピースホルダの熱膨張による圧縮に起因する、粉末状の構築材料の凝集が回避されることを確保する。更に、ワークピースホルダに塗布された粉末状の構築材料に空隙が生成される危険が回避される。側面の傾斜は、例えば、1°から11°、詳細には3°から9°、より詳細には5°から7°、例えば6°までの範囲とすることができる。
【0031】
ワークピースホルダの少なくとも1つの側面は、溝又は隆起の形態の少なくとも1つの把持手段を備えることができる。把持手段は、上から下まで、即ち、上方側から下方側まで延在することができる。把持手段は、把持装置が、ワークピースホルダを動かすことができるように、把持手段に係合し、具体的には、摩擦及び/又はポジティブ連結によってそこに固定されることが可能となるように設計され得る。
【0032】
把持手段は、あり継ぎ断面を有する溝の形態に設計され得る。把持手段の側壁は、それぞれ10°から40°まで、具体的には、15°から20°までのアンダーカットを有することができる。
【0033】
少なくとも1つの位置決め要素は、ピンを備えることができ、少なくとも1つの位置決め装置は、穴を備えることができ、下方要素は、第2の材料から形成される。下方要素の第2の材料は、工具鋼とすることができる。
【0034】
第2の態様によれば、粉末状の原材料の積層塗布を含む製造プロセスを用いる付加形式の製造装置であって、構築ステージと、第1の態様による支持システムとを備え、製造装置の構築ステージが、支持システムのベース支持体を備える、製造装置が提供される。ベース支持体は、例えば、ベース支持体が製造装置の構築ステージの一部を表すように、ベースプレートに螺合され得る。
【0035】
ベース支持体は、位置決め要素の配列を備えることができ、位置決め要素の配列は、円形断面のピンと、追加的な回転抑制ピンとを含む。代替え的には、ワークピースホルダがベース支持体の上に置かれたときに回転が抑制されるように、ピンが、楕円形、長円形、又は多角形断面を有してもよい。具体的には、ワークピースホルダは、ワークピースホルダの上方側及び下方側に平行な方向に回転が抑制されるべきである。
【0036】
第3の態様によれば、ワークピースを製作するための方法が提供される。本方法は、第1の態様による支持システムのワークピースホルダを、付加形式の製造装置の支持システムのベース支持体の上に置くステップであって、少なくとも1つの位置決め要素がピンを備え、少なくとも1つの位置決め装置が穴を備え、ピンが穴に係合する、ステップを含む。本方法は、製造装置によってワークピースホルダの上でワークピースの付加製造を実行するステップであって、支持システムの温度が製造プロセス中に上昇し、ピンの部位の膨張又は穴の保持部位の膨張に起因し、ピンと取り囲む穴との間にクランプ効果が発生する、ステップと、支持システムを冷却し、それによりクランプ効果が解除されるステップと、ワークピースホルダを、その上で製作されたワークピースと一緒にベース支持体から係合解除するステップと、ワークピースの除去的後処理のためのシステムの支持体の上にワークピースホルダを配置するステップであって、支持体のピンがワークピースホルダの穴に係合する、ステップとを更に含む。
【0037】
本方法は、除去的後処理のための設備の支持体の上にワークピースホルダを配置するステップに先立ち、ワークピースの熱的後処理のための設備の支持体の上にワークピースホルダを配置するステップを更に含むことができる。熱的後処理は、例えば次の加熱処置とすることができる。ワークピースホルダの下方要素の材料は、設備によって生成された熱に対する耐熱性を有することができる。熱的後処理中、ワークピースホルダの穴と熱的後処理のためのシステムのベース支持体のピンとの間の前述のクランプ効果も利用され得る。
【0038】
係合解除するステップは、ワークピースホルダの側面に設けられた把持手段により、ワークピースホルダを把持具によって把持するステップを含むことができる。把持手段は、例えば、あり継ぎ溝とすることができる。
【0039】
複数のワークピースホルダが、製造装置のベース支持体の上に並べて、可能であれば離間して配置され得る。この配置は、例えば、ベース支持体の全表面が、ワークピースホルダで覆われるようにすることができる。製造プロセスでは、ワークピースは、例えば、各々のワークピースホルダの上で製作され得る。
【0040】
第4の態様によれば、付加形式の製造プロセスに従ってワークピースを製作するための方法が提供される。本方法は、製作されるワークピースの、このワークピースが上で付加製造されるワークピースホルダに対する位置及び/又は向きを、ワークピースの幾何形状を定義するデジタルパーツデータを考慮し、ワークピースの除去的後処理によって定義される条件を考慮して決定するステップと、決定されたワークピースの位置及び/又は向きに基づき、ワークピースホルダの上でワークピースの付加製造を実行するステップとを含む。
【0041】
本方法は、例えば、付加形式の製造装置の制御装置によって実行され得る。本方法は、付加形式の製造装置及び除去的後処理のための装置の両方を制御するように構成された中央制御装置又は中央コンピュータによっても提供され得る。本方法を実行する制御装置及び/又はコンピュータは、個々のプロセスステップを実行するためのプロセッサと、個々のプロセスステップのためのプログラム命令が記憶されるメモリとを備えることができる。デジタルパーツデータは、CAD(コンピュータ支援設計)データ、より具体的には機械可読CADファイルであり得る。本方法は、付加製造のための機械制御ファイルを生成するステップを含むことができ、そのファイルに基づき、付加製造を実行するステップが実施される。機械制御ファイルは、決定されたワークピースの位置及び/又は向きに関する情報を含むことができる。
【0042】
本法は、ワークピースの除去的後処理によって定義される条件を考慮して、ワークピースのための少なくとも1つの支持構造を含む支持幾何形状を決定するステップを更に含むことができ、付加製造を実行するステップは、支持構造の付加製造を含む。支持構造は、具体的には、ワークピースホルダの上でワークピースを支持する、ワークピースのための1つ又は複数の支持体及び/又はカラムを含むことができる。本方法は、付加製造のための機械制御ファイルを生成するステップを含むことができ、機械制御ファイルは、支持構造に関する情報を含む及び/又は定義する。
【0043】
ワークピースの除去的後処理によって定義される条件は、除去的後処理で使用される工具のフライス力、除去的後処理で使用される工具のフライストルク、除去的後処理中の振動、除去的後処理で使用される工具によるワークピース及び/又は支持構造の幾何形状の達成の可能性(attainability)、除去的後処理で使用される工具の機械運動学、除去的後処理で使用される工具の工具幾何形状、除去的後処理で使用される工具の工具連携のうちの少なくとも1つの条件を含むことができる。これらの条件は、例えばメモリに記憶され得、従って、本方法を実施する機械に周知される。これらの条件は、例えば、パラメータ又は数値データの形態で提供され得る。
【0044】
本方法は、ワークピースの付加製造のための製造装置の利用可能な構築空間を構成するステップを更に含むことができる。
【0045】
本方法は、ワークピースの幾何形状を定義するデジタルパーツデータを考慮し、ワークピースの除去的後処理によって定義される条件を考慮して、付加製造の層厚を決定するステップ、及び/又は、付加製造のための暴露ストラテジーを決定するステップを更に含むことができる。言い換えれば、層厚及び暴露ストラテジーの両方が、デジタルパーツデータを考慮して決定され得る。暴露ストラテジーは、例えば、複数の暴露パスの位置を定義することができる。
【0046】
本方法は、第1の態様による支持システムを提供するステップを更に含むことができ、ワークピースホルダは、支持システムのワークピースホルダである。
【0047】
上記で説明したように、第1の態様によるワークピースホルダは、ワークピースが付加製造によって製作される少なくともそれらの表面が、製作がその上で可能となる材料から構成されるという点で、それ自体を差別化することができる。最も単純な場合、表面は、実質的に製造に使用される材料から構成される。
【0048】
第1の態様によるワークピースホルダは、それに応じて装備された製造装置のベースプレートへの装着のために、それらの下方側に、対応する位置決め装置、好ましくは穴が設けられ得る。ワークピースホルダは、従って、この位置決め装置に相補的な位置決め装置、即ち、好ましくはピンを有するベースプレートの上に配置され得る。
【0049】
好ましい実施例では、ワークピースホルダの位置決め装置の機能的に重要な部分は、耐熱性(例えば500℃まで)を有する、且つ/或いは、硬化可能な又は硬化された材料から構成される。ワークピースホルダは、従って、ワークピースと共に加熱処置に暴露され得る、又は、切削又は除材処置中の挟持によって引き起こされる負荷にそれぞれ耐えることができる。適する材料は、工具鋼である。
【0050】
耐熱性とは、十分な機械的特性、特に強度が、所定の高温(例えば500℃又は900℃)でも維持されることを意味する。耐熱性のパラメータとして、0.2%の降伏点、即ち0.2%の可逆伸長を引き起こす応力が使用され得る。要件に応じて、少なくとも10MPa、好ましくは20MPa、又はより高い、例えば30MPa又は40MPaでの0.2%降伏点が、耐熱性に対する限界とみなされ得る。
【0051】
位置決め装置は、ワークピースホルダの本体の穴に螺合される又は押し込まれるインサートであり得る。
【0052】
特に好ましい実施例では、ワークピースホルダの上方部(上方要素)は、付加製造と親和性のある材料から構成され、下方部(下方要素)は、位置決め目的のために適切に選択された材料、好ましくは工具鋼から構成される。
【0053】
付加製造に使用される粉末による均一、緻密、且つ空隙のない被覆のために、ワークピースホルダの縁部は、好ましい実施例では斜角を付けられ、角錐台の全体形状を示す。上方に向かって、即ちベースプレートから上方に細くなる形状は、緻密な粉末の被覆をもたらす。加えて、対応して選択された側面の角度は、温度変化、より詳細には膨張の結果として寸法が変化した場合に、隣接するワークピースホルダ間、又は、ワークピースホルダと構築シリンダとの間で、粉末が上方に移行することができるという有利性を提供する。
【0054】
ワークピースホルダの上方に向かって細くなる形状の1つの問題は、通常の把持具では、側壁で保持することもできず、又は、ワークピースホルダの下で係合することもできないため、それらが掴まれ得ないことである。この問題に対する好ましい解決法は、垂直の、又は好ましくは、わずかにアンダーカットされた側壁を有する把持溝(あり継ぎ溝)を側壁に設けることにある。そのような溝では、特に、ポジティブ連結が可能なアンダーカットされた側壁を有する実施例において、把持具は、十分な保持を見出す。
【0055】
好ましい例示的な実施例及び図面を参照し、前述の態様による本発明が更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】ワークピースホルダを有する付加製造システムの構築シリンダの等角図である。
図2図1による製造システムのためのベース支持体の等角図である。
図3a図1のワークピースホルダの1つの実施例の下から見た等角図である。
図3b図1のワークピースホルダの別の1つの実施例の下から見た等角図である。
図3c図1のワークピースホルダのさらに別の1つの実施例の下から見た等角図である。
図4】支持システムの第1の実施例のワークピースホルダの上面図である。
図5図4による、「展開された」ワークピースホルダの3次元図である。
図6図5によるワークピースホルダをベースプレートの上に配置した状態の断面図である。
図7】位置決め装置の第2の実施例を有する、図3cによるワークピースホルダの断面図である。
図8】位置決め装置の第3の実施例を有する、図3cによるワークピースホルダの下から見た等角図である。
図9】ベースプレートの上のワークピースホルダの拡大図、及び、図8による位置決め装置の部分断面図である。
図10図4によるワークピースホルダを、位置決めピンを有するベース支持体の上に配置した状態の断面図であり、位置決めピンは、断面及び非断面で示される。
図11】付加形式の製造プロセスに従ってワークピースを製作するための方法の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、構築プラットフォーム4を有する、付加製造のための機械の構築シリンダ2の概略図を示し、構築プラットフォーム4はその中で鉛直に移動可能である。ここでは、特に、レーザー溶融法が考慮され、構築プラットフォームは、構築材料の粉末で一層ずつ被覆され、新たに塗布された層毎に、レーザーによって粉末を溶融することによりワークピースの構造が作りだされる。
【0058】
構築プラットフォーム4は、ベース支持体又はベースプレート6(ここでは視認できず、図2参照)を備え、その上に、最適には、図示するようにベース支持体6の全表面が覆われるようにワークピースホルダ8又はパレット8が配置される。パレット毎に1つのワークピースが製作されるというガイドラインがあるため、製作されるワークピースのサイズに適合するように異なるサイズのパレット8が使用されるが、未使用パレットの存在、又は、1つのパレット上で複数のワークピースを製造することを排除するものではない。パレット8と共に、ベース支持体6が支持システムを形成する。
【0059】
ベース支持体6は、パレット8を位置決めする目的のためにピン10を有する。パレット8は、それらの下方側12に、少なくとも円周線で断面がピン10と相補的であるくぼみ14を有するため、ピン10は、あったとしてもわずかな抵抗で陥凹部14に滑り込み、しかし、いかなる場合においても、遊びがほんのわずかである又は実質的に遊びがないため、パレット8を所定の位置に精度良く維持する。「陥凹部」及び「くぼみ」という用語は、本明細書では同義語として使用され、本開示の範囲では同じ意味を有する。1つの陥凹部14のみを有する最も小さいパレット16については、回転抑制を提供することが、ベース支持体6の上への自動配置に有利である、又は、必要でさえある。この場合、回転抑制は、小さめの回転抑制陥凹部18と、ベース支持体6の適合する回転抑制ピン20とから構成される。
【0060】
又、以下で更に説明するように、回転抑制手段は、ピン10に対し中心をずらして形状付けられた隆起部分、及び、パレット8の下方側の対応する陥凹部の形態で一般的に提供され得る。これに対する代替方法は、円形対称ではない形状、例えば、長円形、楕円形、又は多角形の断面、或いは、半径方向に突出するノーズなどの円形対称の断面から逸脱する他の特徴的形状、或いは、前述の形状の組み合わせを有するピン10である。
【0061】
本発明の例示的な実施例によるパレット8は、少なくとも上方側11に、ワークピースが付加製造プロセスによってその上で製作され得る材料を示す。従って、それは、それぞれの構築材料と親和性のある材料である。金属粉末からワークピースを製造する場合、そのような材料は、例えばアルミニウム合金である。
【0062】
この点に関する別の問題は、製造プロセスに温度の上昇が伴うことである。例えば、ベース支持体6は、例えば200℃の温度まで加熱される。更に、構築材料の溶融は、特に初期段階で、表面11の近くに追加のエネルギー入力を伴い、局所的な温度上昇をもたらす。これらの温度の上昇は、熱膨張作用を引き起こす。それにもかかわらず、少なくともパレットの表面は、寸法安定性に関する高い要件を満たす必要がある。xy平面における、即ち上方側11に平行(図1参照)な寸法変化とは別に、温度の変動に起因する湾曲、即ち、正確な平面からの逸脱、及び、ピン10の周りの遊びの発生に起因するxy平面における変位は、回避されなければならない、又は、少なくとも許容範囲まで低減されなければならない。
【0063】
xy変位は、陥凹部14が、少なくとも位置決めに対して決め手となる領域において、相応する低い熱膨張を有する材料から構成されることで低減される。この目的のためには工具鋼が好ましく、特に、次に、切削製造のための工作機械へ、又は更に、高温での熱的後処理、例えば熱間静水圧加圧処理のための工作機械へパレット8を移送する点から見ると耐熱工具鋼も好ましい。
【0064】
図4から6は、サンドイッチ状構造の形態で提供されるワークピースホルダ8(パレット8)の第1の実施例を示し、パレット8は、上方部57(本明細書では「上方要素57」でもある)と、下方部59(本明細書では「下方要素59」でもある)とから構成される。上方部57は、付加製造に要求される材料から構成され、即ち、ワークピースが、その上で、構築材料からそれぞれの付加製造プロセスを用いて構築され得る材料から構成される。これに対して、下方部59は、第2及び第3の実施例のソケット28及び42に関して以下に記載するように、高強度で、異なる、より詳細には低い熱膨張を有する材料から構成される。上方部57及び下方部59は、適する様式で互いに連結される。これは、好ましくは着脱可能な様式で、例えば、図示するように、好ましくは位置決め陥凹部14の周りに対称的に配置されたねじ61によって達成される。ねじ61は、上方部57の対応する止まり穴63に螺合される。
【0065】
この構造により、上方部57内では、温度勾配がより小さくなり、それに応じて湾曲した表面を形成する傾向が低くなることが観察された。湾曲に対抗する別の要素は、下方部59とすることができ、下方部59は、堅く、温度が安定した要素であるため、上方部57の下方側に凹湾曲が形成されることに対抗する。下方部59及び上方部57を、それらの組み立て中に、精密に相対的に位置決めするために、下方部59の第1の位置決めボルト65が提案され、これは、上方部57の精度良く嵌合する第1の位置決め穴67に挿入され得る。位置決めボルト65から間隔をあけて、下方部59は、第2の位置決め穴に挿入されることが意図された第2の位置決めボルト69を備える。位置決め穴は、第1の位置決め穴67への接続線の方向に長くなるという特徴を有し、従って、長円形断面を示す、又は、長穴の形態で提供される。このようにして、パレット8の加熱時の上方部57及び下方部59の異なる熱膨張が、第2の位置決めボルト69に応力を印加することなく補償される。大きめのパレット8の場合、第1の位置決めボルト65と第2の位置決めボルト69との間の接続線から横方向にずれた追加の位置決めボルト及び穴を設けることが必要となり得る。この場合、xy平面における任意の方向への変位を可能にするために、それぞれの位置決めボルトよりも大きな断面を有する、第3の位置決め穴(図示せず)が、第2の位置決めボルト69のために設けられなければならない。同様に、下方部59のねじ61のための穴63は、ねじ61の柄に対して大型であるため、ねじ61のねじ頭及びそれらの柄は、上方部57の相対的な熱膨張に応じて下方部59で変位することができる。
【0066】
支持システムの第2の実施例によるワークピースホルダ8(パレット8)が、図7に示される。パレット8の本体9は、全体的に、付加製造のためのキャリア材料として適する材料から構成される。本体9は、その上方側にパレット8の表面を画定し、その上でワークピースが構築され得る。本体9の下方側には、雌ねじ26を備える円筒形の陥凹部32が作製される。ソケット28は、実質的にリングの形状に工具鋼から作製され、ねじ山26に螺合される。ソケット28は、回転抑制陥凹部30を有する。この場合、直径方向に対向する2つの回転抑制陥凹部30がソケット28に設けられ、ソケット28を螺合する、及び、緩めるために、ねじ回しと係合する役割を果たす。
【0067】
ソケット28を受け入れる陥凹部32は、膨張用の隙間38によって囲まれる比較的薄いシリンダ壁36によって限定される。必要であれば、やはり内側にねじ山26を備えるシリンダ壁36は、ソケット28の周囲に対して小型のサイズにされ、ソケット28の材料に対する下方要素の本体9の材料の、製作条件下において起こり得る高い熱膨張を補償する。具体的には、小型のサイズは、ソケット28が、付加製造中に、想定される最高温度において、ねじ山26に確実に遊びがなく保持されるように選択される。
【0068】
この解決法に関しては、ソケット28及び回転抑制陥凹部30が、精度良く位置決めされなければならないため、ソケット28、及び、それに応じてパレット8のねじ山26は、高精度に作製されなければならないことに留意されたい。
【0069】
大きな力がパレット8に印加される加工中、ソケット28は、このプロセスでは一般的である固定器具(anchorages)、例えば伸縮可能なボール又は爪を有するピンのための係合手段として機能する。ソケット28が妨害してしまう、又は、耐えられないプロセスステップ、例えば熱間静水圧加圧処理中は、ソケット28を取り外すことも可能である。
【0070】
図8による第3の実施例では、ソケット42は、パレット8の陥凹部44に圧入される。ソケット42は、回転抑制陥凹部48が位置するノーズ46を有する。ここでも又、パレット8の本体及びソケット42の熱膨張係数が異なることに起因して発生し得るひずみを低減するために、膨張用の隙間50が設けられる。ソケット42が圧入される壁部52は、パレットの本体の熱膨張がソケット42の熱膨張よりも大きい場合であっても、壁部52が、やはり、最高発生温度において少なくとも遊びがなくソケット42を保持するように設計される。
【0071】
前述の第2の例示的な実施例に記載したように、ソケット42は耐熱性工具鋼から構成され、パレット8の本体は、付加製造のためのキャリア材料として適する材料(例えばアルミニウム又はアルミニウム合金)から構成される。
【0072】
この実施例では、回転抑制開口部48の位置は予め決定されているが、ソケット42が押し込まれている間、鉛直方向(z方向)の精密な位置決めが確保されなければならない。最高発生温度においてもこの位置決めが保たれることを確保するために、より高い予応力をここに与えなければならず、即ち、ソケット42に対して壁部52を小型のサイズにしなければならず、それにより、材料がより高い負荷にさらされる。
【0073】
その他、加工中のその固定、及び取り外しに関しては、ソケット28に関する上記の説明が適用される。
【0074】
図10は、ピン10の好ましい実施例を示す。より詳細には、図10は、ワークピースホルダ8が、ピン10及び関連する陥凹部14によってベース支持体6に装着される実施例を示す。ワークピースホルダ8は、前述の実施例のうちの1つ、特に図4から6による第1の実施例のワークピースホルダであり得る。ピンベース81には、ピンカバー85が、ねじ83によって固定される。ピンベース81とピンカバー85との間に、第1の例示的な実施例のワークピースホルダ8の下方要素59(図示するような)、又は、他の実施例のそれぞれのソケット28、42よりも高い熱膨張(高い熱膨張係数)を有する材料のリング87が挟持される。アルミニウム合金が、この目的には好ましい。具体的には、リング87は、それぞれのソケット28、42に、又は、図示するように、下方要素59の環状カラー91に精度良く隣接するように配置される。パレット8がベース支持体6の上に置かれるとき、ピン10は、可能な限り少ない遊びで、それでもなお容易にパレットの陥凹部14に滑入する。温度が上昇した場合、リング87は、取り囲む材料よりも膨張し、それにより、パレット(ワークピースホルダ)8が、増加する力でベース支持体6の上に保持される。
【0075】
ピン10の上述の実施例の代替え方法として、より高い熱膨張を有する材料が、穴の縁部に提供されてもよい。具体的には、穴(14)の保持部位28、42、91は、ピン10の部位の材料よりも高い熱膨張係数を有する材料で形成され得る。第1の実施例の場合、これは、穴のカラー91、及び、可能であれば下方要素59全体が、より高い熱膨張係数を有する材料で形成されることを意味する。第2及び第3の例示的な実施例の場合、これは、ソケット28又はソケット42がそれぞれ、より高い熱膨張係数を有する材料で形成されることを意味する。この代替え方法によれば、支持システムが加熱されると、取り囲む穴14が、ピン10に向かって負の半径方向に膨張し、所望のクランプ効果が達成される。
【0076】
カラー91も又、ソケット28及び42と類似し、次の切削処理ステップ中に固定装置と係合する役目を果たす。例えば過大温度のためなど、処置が下方部の材料に好ましくない場合、下方部は取り外され得る。
【0077】
特に、平面状に一層ずつ粉末が塗布される付加製造プロセスでは、空隙又は他の凹凸が層に生成されることが回避されるべきである。従って、パレット8と構築シリンダ2の壁部との間の空間は、構築材料の粉末で確実に均一に満たされなければならない。他の影響としては、それぞれ、製造プロセス中の熱膨張又は収縮である。パレット8が膨張するとき、構築材料粉末が、このプロセスに起因してサイズが減少する空間の外に移動し得ることが確保されなければならない。これに対し、パレットのサイズが減少する場合、粉末は、むしろ液体の流れに相当する様式で、増加する空間を再び満たし得、少なくとも、粉末の層を塗布し、それを平滑化させた後に、粉末内でそれ以上の変位又は移動が発生しない、即ち、システムが安定することが確かとなることが確保されなければならない。
【0078】
これらの要件を満たすために、切頭角錐形状のパレットが適することが見出されている。例示的な実施例におけるパレット8の側壁は、パレットがそれらの下方側12からそれらの上方側11に向かって細くなるように傾斜する。これは、一方で、パレット間、又はパレットとシリンダ壁との間の空間が減少するときには、粉末が移行するのを可能にし、他方で、これらの空間の大きさが増加する場合には、安全で抵抗のない供給を確保する、一種の漏斗効果をもたらす。
【0079】
別の観点から、アンダーカット又はキャビティは、前述の理由のために回避されるべきである。具体的には、これは、パレットの下で把持具を係合させるための、パレットの下方側12とベース支持体6の表面との間の隙間を排除する。斜角を付けられた側壁95は、パレットを掴むことを更に難しくする。確実に把持するために、従って、少なくとも1つの側壁95に把持溝97が設けられる。その側壁98は、垂直又は好ましくはわずかにアンダーカットされるため、把持溝97があり継ぎされ、適する把持具に対する保持を提供する。把持溝97の寸法が比較的小さく、それらの向きがほぼ垂直であり、且つ、あり継ぎ形状を達成するためのアンダーカットが限定的であるので、把持溝97は、不規則な粉末被覆に関する危険性をもたらさない。
【0080】
特に、粉末状の材料の標的溶融を用いる方法の特殊性は、ワークピースの取り外し中に、構築キャリアの表面からも材料が取り除かれることである。この点に関する第1の実施例における更なる有利性は、上方部57が容易に交換できることである。これに関しては、上方部57をより小さく作製し、把持溝97が工具鋼から下方部59にのみ設けられるようにすることが考えられる。このようにして、上方部57の形状は、実質的に単純化され、即ち、まっすぐで連続した側壁を有する角錐台となる。
【0081】
しかし、これに関しては、別の様式で、例えば、新たな材料の成長によって材料損失が補償される付加製造ステップを挿入することによっても、上方部57におけるパレット8の材料の損失を補償することも考えられる。
【0082】
上述の例示的な実施例では、ベース支持体6は少なくとも1つのピン10を備え、ワークピースホルダ8は少なくとも1つの穴14を備える。しかしながら、代替え的で例示的な実施例では、ピン/穴の対は、逆の構成で配置され得、ベース支持体6が少なくとも1つの穴を有し、ワークピースホルダ8が少なくとも1つの関連するピンを有する。これらの例示的な実施例では、前述のクランプ効果も、前述の様式で達成される。残りの様相に関しては、これらの例示的な実施例は、上述の様相と同様である。更に、ベース支持体6がピンと穴との両方を備え、ワークピースホルダ8が関連する穴とピンとを備えるように、複数のピン/穴の対が設けられ得る。
【0083】
要約すると、記載されたパレット(ワークピースホルダ)8は、ベース支持体6と共に支持システムを提供し、それにより、付加製造システムとワークピースの他の処置(切削、加熱処置、洗浄、測定)のためのシステムとの間で、単純な様式で、特に、ロボットによっても、ワークピースをパレットと共に移送することが可能となる。全体として、このことは、かなりの合理化の可能性をもたらす。パレットの適切な構造により、熱膨張又は不規則な粉末の被覆の危険性による悪影響が回避された。従って、あるプロセスでは、例えば、ワークピースホルダ8は、付加製造(例えば選択的レーザー溶融のためのビーム溶融システム)のためのシステムから(より詳細には、システムのベース支持体6から)製造されたワークピースの除去処理のためのシステムへ、自動化された様式で運ばれ得る。任意に、中間ステップでは、ワークピースホルダ8はワークピースと共に、熱的後処理のためのシステムに配置され得る。
【0084】
本明細書に記載される第1から第3の実施例の支持システムを用いて、ワークピースを製作するための方法が、例えば以下のように実行され得る。最初に、実施例のうちの1つによる支持システムのワークピースホルダ8が、付加形式の製造装置の支持システムのベース支持体6の上に置かれる。このステップでは、図10に示すように、ベース支持体6のピン10が、ワークピースホルダ8の穴14に係合する。次に、ワークピースの付加製造が、ワークピースホルダ8の上で製造装置によって実行される。生成されたプロセス熱に起因し、製造プロセス中に支持システムの温度が上昇する。ピン10の部位87の材料は、部位87を取り囲む、ワークピースホルダ8の穴14の材料よりも高い熱膨張係数を有するため、部位87の熱膨張に起因し、ピン10と取り囲む穴14との間にクランプ効果が生じる。代替え方法によれば、保持部位28、42、91の材料が、ピン10の少なくとも部位87の材料よりも高い熱膨張係数を有するため、代替え的には、保持部位28、42、91の膨張に起因し、ピン10と取り囲む穴14との間にクランプ効果が生じる。
【0085】
付加製造を実行した後、支持システムは冷却され、クランプ作用が解除される。次に、ワークピースホルダ8が、その上で製作されたワークピースと共に、ベース支持体6から取り外され、ワークピースの除去的後処理のためのシステムへ運ばれる。ワークピースホルダ8が、除去的後処理のためのシステムの支持体の上に置かれ、支持体のピン10が、ワークピースホルダ8の穴14に係合する。代替え的には、ワークピースホルダ8の上に置かれたワークピースは、付加製造と除去製造との間に、1つ又は複数の中間製造ステップ、例えば、対応するシステムでの熱的後処理ステップを経てもよく、この対応するシステムも、付加製造及び除去製造のためのシステムと同様に、対応するピンを有するベース支持体を備える。
【0086】
例として、付加製造及び対応するパレット表面に適する、異なる材料に対する加熱処置を掲げる。
- アルミニウム合金:約200℃から約500℃、好ましくは約400℃から約540℃の範囲の加熱処置
- チタン合金:約400℃から約995℃(合金の種類による)、好ましくは約480℃から約730℃の範囲の加熱処置
【0087】
好ましくは、パレット8及びベース支持体6は、以下の数値によって特徴付けられる。
・側壁95の傾斜:1°から11°、好ましくは3°から9°、5°から7°、又は約6°。角度が大きいと、特に、製造に利用可能な表面積の著しい低減を伴う。角度が小さいと、粉末の詰まりを伴い、一般的に効果のないものとなる。特に、角度が小さすぎる場合、粉末は、やはり間隙に閉じ込められ、熱膨張により間隙が減少すると、上方に逃れることがもはやできない。
・上方部57の高さは、パレットの全体の高さの1/4から3/4になる。しかしながら、パレットの高さの最大半分の高さが好ましい。
・把持溝97の側壁98はそれぞれ、把持溝97の底部に対して、10°から40°、好ましくは10°から20°、より好ましくは15°から20°傾斜するが、好ましい値は約15°である。把持溝の深さは、3mmから6mmの間で構成され得、好ましい値は4mmである。1mmが最下限と想定され得る。
・パレットの高さ:25mmから35mm。
・位置決めパーツ(ソケット28、42;下方部59;又、可能であればベース支持体6)の硬度:約45から約68HRC(ロックウェル硬度C)、好ましくは約50から約55HRC。
【0088】
例示的な実施例の前述の記載から、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を逸脱することなく、当業者は修正及び補足を理解できるであろう。特に考えられるのは以下のとおりである。
・ベース支持体6は、詳細には、丸みのある角を有する構築シリンダ壁とパレットの鋭い角との間の移行部を提供する外周縁を備えることができ、従って、さもなければパレットの側壁と構築シリンダ壁との間に結果として生じる比較的大きな隙間を満たすために充填されなければならない構築材料を節約する。
・本文脈中では、着脱可能又は非着脱可能な連結が考えられる。
・回転抑制の供給は、少なくとも2つの位置決め手段(陥凹部14)を有するパレットでは省略されてもよい。
・パレット8は、例えば、1方より多い側に、好ましくは両側に1つより多い把持溝97を有する、又は、1方側に1つより多い溝97を有する。1方側に1つより多い溝97を有することが、大きめのパレットの場合は有利であり得る。パレットの角に把持溝を設ける、即ち、把持溝を有する少なくとも1つの角を設けることも考えられる。
・把持溝の代わりに、逆の手段、即ち、一定の幅、又は、パレット本体に向かって減少する幅を有する隆起が設けられる。
・第2の位置決め装置では、長穴71は、その幅よりも最大0.4mm大きい長さを有し、より大きい直径を有する穴(長穴71に対する追加的、又は代替え的な「第3の位置決め穴」)は、第1の(位置決め)穴67よりも最大0.4mm大きい直径を有する。
【0089】
図11では、付加形式の製造プロセスでワークピースを製作するための方法が示される。本方法は、例えば、本明細書に記載される製造装置の1つによる付加製造を含むことができる。具体的には、本方法は、本明細書に記載されるワークピースホルダ8のうちの1つの上での(具体的には、第1の実施例によるワークピースホルダ8の上での)ワークピースの付加製造を含むことができる。
【0090】
図11による方法は、例えば、付加形式の製造装置の制御装置によって実行され得る。本方法は、付加形式の製造装置及び除去的後処理のための装置の両方を制御する、中央制御装置又は中央コンピュータによっても提供され得る。本方法を実行する制御装置及び/又はコンピュータは、個々のプロセスステップを実行するためのプロセッサと、個々のプロセスステップのためのプログラム命令が記憶されるメモリとを備える。
【0091】
第1のステップS1によれば、本方法は、製作されるワークピースの、このワークピースが上で付加製造されるワークピースホルダ8に対する位置及び/又は向きを、ワークピースの幾何形状を定義するデジタルパーツデータを考慮し、ワークピースの除去的後処理によって定義される条件を考慮して決定するステップを含む。第2のステップS2によれば、本方法は、決定されたワークピースの位置及び/又は向きに基づき、ワークピースホルダ8の上でワークピースの付加製造を実行するステップを含む。
【0092】
以降、図11に示される本方法の更なる(部分的に任意の)詳細が説明される。
【0093】
1つの実施例によれば、図11の製造プロセスは、以下のステップを含む。
1.)CADからのパーツのインポート
2.)パレット載置システム(palletizing system)/支持システムによる付加製作機械の構成
3.)付加製造のためのパーツの準備(ステップS1を含む)
4.)更なる除去処置のためのパーツの準備
5.)必要な機械制御ファイルの生成(付加及び除去の両方)
6.)品質保証基準の定義
7.)全ての製造プロセスの開始(ステップS2を含む)
【0094】
ステップ1.)に関して
本方法は、対応するCAD(コンピュータ支援設計)プログラム、又は、接続されたPLM(製品ライフサイクル管理)システムからそれぞれデジタルパーツをインポートすることから始まる。この目的のために、ネイティブファイル形式、軽量データ、及び、ニュートラル交換形式の両方が使用され得る。例として、*.prt、*.CATPart、*.step、*.igs、*.stl、JT、PVXなどの形式を挙げることができる。後に、この幾何形状に基づき、付加構築プロセスの準備が、除去的後処理の見地からステップ3.)において続く。これには、特定の後処理に基づく、既存のCADパーツの変更の可能性が含まれる(例えば、後処理を実装することを考慮したオーバーサイズ許容値)。
【0095】
ステップ2.)に関して
CADパーツ又は製造されるパーツの幾何学的特徴に従って、付加製造機械の実行可能な構築空間が構成される。ワークピースホルダ8及びベース支持体6の実施例に関して論じられたサイズ及び材料の変形例を、選択のために利用することができる。構築空間の構成は、ガスフロー、塗布機の方向、及びスキャンストラテジーの見地から、付加製造の要件に従ってカスタマイズされ得る。この構成は、プロセスの最適化のために、工業ロボットを使用する自動化されたアナログプロセスチェーンを考慮することも含む(例えば、上述の把持溝97の向き)。
【0096】
ステップ3.)に関して
付加製造のためのパーツの準備は、構築空間でのパーツの位置(ステップS1に従う)及び対応するパレット載置を定義するステップと、パーツを付加製造するための実行可能な支持材を定義するステップと、付加製造プロセスの暴露ストラテジー及び層厚を定義するステップとを含む。
【0097】
a.)位置定義:機械の構築空間でのパーツの向きは、除去的後処理の見地から定義されなければならない。これには、除去プロセスステップ(例えば、座ぐり、穴あけ、平面研削、荒削り、ねじ立てなど)、これらの後処理ステップを実行するのに必要な工具、それにより生じる、フライス力又はフライストルク、振動などの制約、及び、使用される材料を考慮することが含まれる。この情報は、オペレーターによって提供される内部ストラテジー、データベースなどに基づき、手動、及び、自動化された様式の両方で提供され得る。構築空間でのワークピースの方向を最適化するために、機械加工される領域の達成の可能性の分析が、定義された除去工具に基づき実行される。とりわけ、これには、機械運動学、工具の幾何形状、工具連係などの要素が含まれる。特定の向きの品質が、偽色表現の形態でオペレーターに対し視覚化される。更に、この表示は、パーツの反り、支持幾何形状の最小限の複雑性、付加構築時間などに関する更なる品質基準と組み合され得、個々に重み付けされ得る。
【0098】
b.)支持材:定義された除去プロセスステップに基づき、適する支持幾何形状の計算が実行される。支持幾何形状は、結果として生じる力、トルク、振動などが、それに応じて吸収され、抵抗されるように設計される。支持幾何形状の複雑性を最小限にするという見地から、重み付けが再び続く。適用される戦略には、トポロジー最適化に基づくシミュレーションによるアセスメントと、評価された以前の製造プロセスに基づく機械学習プロセスとを含む。
【0099】
c.)付加製造プロセスの暴露ストラテジー及び層厚:個々の層の生成及び関連する暴露ストラテジーには、定義された除去プロセスステップが含まれる。これにより、除去的後処理を容易にするために、付加製造されるワークピースの得られた材料特性を局所的に適応させることが可能になる。付随する利点は、支持材の穏やかな除去、及び、高精度な後処理のために分量を高品質に準備することにある。
【0100】
ステップ4.)に関して
付加製造ステップの定義の後に、周知のストラテジーに従ったCAM(コンピュータ支援製造)パスの定義が続く。この目的のために、付加処理されるワークピースの選択された向き、及び、定義された工具のリストを参照する。個々の処理パス内で得られた変位パスは、有効性がチェックされ、ニュートラルGコードとして生成される。
【0101】
ステップ5.)に関して
定義された付加及び除去プロセスステップに基づき、対応する機械制御ファイルが生成される。これは、対応する付加製造機械のための構築ファイルの生成と、特定の除去処理機械、又はその制御システムに必要なフォーマットに、ニュートラルGコードをそれぞれ変換することとの両方を含む。これらのステップの定義は、除去的後処理ステップに限定されず、触覚的又は光学的な測定方法に同様に適用され得る。従って、このプロセスステップは、後処理ステップの定義、及び、自動化された品質保証測定の定義の両方を可能にする。
【0102】
ステップ6.)に関して
前述のステップの他に、更なる品質保証基準の定義も可能である。これは、
a.)QRコード(登録商標)、構造的適合(structural adaptation)などによる明確な識別の形態での、それぞれのパーツ又はパレット/ワークピースホルダの、特定の製造タスクへの明確な割り当ての定義。
b.)付加製造、及び、それにより得られるパーツ品質の付随するモニタリングのための、プロセス関連センサデータ(アナログ、デジタル、光学的など)の収集と評価。
c.)付加製造されるブランクの自動測定のための測定点の定義。この測定は、デジタルターゲットとの比較と組み合され、その結果、必要に応じて除去的後処理の再校正を行う。
【0103】
ステップ7.)に関して
最後に、製造が始まり、ステップS2に従って、付加製造プロセス(例えば選択的ビーム溶融)が最初に実行される。この目的のために、予め定義されたデータが使用される。次いで、任意に、熱的後処理ステップ、及び、最終的にワークピースの少なくとも1つの除去的後処理ステップが続く。例示的な実施例では、ワークピースは、付加製造中及び除去的後処理中、ワークピースホルダの上にとどまる。ワークピースホルダは、先に記載された第1から第3の実施例のワークピースホルダのうちの1つであり得る。
【0104】
図11による上述の方法は、上述の実施例による支持システム及びそれらのワークピースホルダ8の有利性を利用することを可能にする。このことは、デジタル的な準備、及び、実際に製造を実施するためのアナログプロセスチェーンの両方にあてはまる。プロセスチェーン全体には、スマートファクトリー(Smart Factory)という意味での統合、結合、及び監視が含まれる。PLM(商品ライフサイクル管理)ソリューションという意味において、ライフサイクルは、デジタル部品から始まり、安全な廃棄に至るまでの製造プロセス全体を途切れなく表す。この継ぎ目のない統合により、無駄なく、且つ、冗長なステップ、バージョン、又は、暫定的なソリューションが発生する恐れなく、製作が実施され得る。
【0105】
従って、上述の方法は、管理及び運用の手間を低減する。同様に、例えば航空又は医療技術などのガイドラインに従った妥当性検証の意味での規制の手間が、全体的な統合チェーンにおいて低減される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11