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  • 特許-熱膨張性微小球、組成物、及び成形体 図1
  • 特許-熱膨張性微小球、組成物、及び成形体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球、組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230410BHJP
   B01J 13/14 20060101ALI20230410BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20230410BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20230410BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20230410BHJP
   C08L 33/18 20060101ALI20230410BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
B01J13/14
C08J9/32 CER
C08J9/32 CEZ
C08K9/10
C08K7/22
C08L33/18
C08L101/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022561538
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022014864
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021124372
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 智大
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/049616(WO,A1)
【文献】特開平06-049260(JP,A)
【文献】特開2016-169274(JP,A)
【文献】ヘプタフルオロプロパンガス[インターネット],日本,浙江ノアフルオロケミカル株式会社,2022年06月06日,http://m.ja.noah1230.com/227-gas/heptafluoropropane-gas.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02
C09K 3/00
C08J 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包されかつ加熱することにより気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体であり、
前記ニトリル系単量体がアクリロニトリルとメタクリロニトリルを含み、
前記アクリロニトリルの含有量100重量部に対する前記メタクリロニトリルの含有量が40~80重量部であり、
前記発泡剤が発泡剤(a)を含み、前記発泡剤(a)の比熱が0.8~2.0J/g・Kである、
熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記熱膨張性微小球の比熱が1.05~1.5J/g・Kである、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
【請求項3】
前記発泡剤(a)がフルオロケトン、及びハイドロフルオロエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球。
【請求項4】
前記重合性成分に占める前記ニトリル系単量体の重量割合が25重量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項5】
前記熱膨張性微小球の体積基準の累積10%粒子径(A10)と体積基準の累積50%粒子径(A50)の比(A50/A10)が1.1以上である、請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項6】
前記熱膨張性微小球の体積基準の累積90%粒子径(A90)と体積基準の累積50%粒子径(A50)の比(A90/A50)が1.1~5.5である、請求項1~5のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性微小球の膨張体である、中空粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の中空粒子と、前記中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子からなる、微粒子付着中空粒子。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性微小球、請求項7に記載の中空粒子、及び請求項8に記載の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含む、組成物。
【請求項10】
液状またはペースト状である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の組成物を成形してなる、成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性微小球、組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、樹脂や塗料の軽量化、壁紙やインクの意匠付与等、幅広い分野で使用されている。
例えば、特許文献1には熱可塑性樹脂原料の重合成分であるエチレン性不飽和モノマーとして、20~80重量%のアクリロニトリル、20~80重量%のアクリル酸エステルからなる群より選択されるモノマー、0~10重量%のメタクリロニトリル、0~40重量%のメタクリル酸のエステルからなる群より選択されるモノマーを含み、アクリロニトリル及びアクリル酸のエステルの合計量がエチレン性不飽和モノマーの50~100重量%で構成し、かつ発泡剤は、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、n-ブタン及びイソペンタンのうちの少なくとも1種を含む、高い膨張性能を有する熱膨張性微小球が例示されている。このような熱膨張性微小球を用いることで樹脂や塗料の軽量化が可能となっている。
しかしながら、特許文献1に記載の熱膨張性微小球では、目標とする膨張倍率に到達するまでに必要な加熱時間が長いため、膨張工程に長い時間を必要となり、生産効率が低下する問題があり、また、膨張工程時間を短縮するために加熱温度を高めると、過加熱により得られる膨張体が収縮してしまう、いわゆるヘタリが発生し、目標の膨張倍率の膨張体が得られない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2007/091961号 パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、短い加熱時間でも高い膨張性を有し、熱応答性の高い膨張挙動を示し、膨張後のヘタリを抑制できる熱膨張性微小球、及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される特定の発泡剤を含む熱膨張性微小球であれば、前述の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包されかつ加熱することにより気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体であり、前記ニトリル系単量体がアクリロニトリルとメタクリロニトリルを含み、前記アクリロニトリルの含有量100重量部に対する前記メタクリロニトリルの含有量が40~80重量部であり、前記発泡剤が発泡剤(a)を含み、前記発泡剤(a)の比熱が0.8~2.0J/g・Kである、熱膨張性微小球である。
【0006】
本発明の熱膨張性微小球は、前記熱膨張性微小球の比熱が1.05~1.5J/g・Kであると、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記発泡剤(a)がフルオロケトン及びハイドロフルオロエーテルから選ばれる少なくとも1種を含むと、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記重合性成分に占める前記ニトリル系単量体の重量割合が25重量%以上であると、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記熱膨張性微小球の体積基準の累積10%粒子径(A10)と体積基準の累積50%粒子径(A50)の比(A50/A10)が1.1以上であると、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記熱膨張性微小球の体積基準の累積90%粒子径(A90)と体積基準の累積50%粒子径(A50)の比(A90/A50)が1.1~5.5であると、好ましい。
【0007】
本発明の中空粒子は、前述の熱膨張性微小球の膨張体である。
本発明の微粒子付着中空粒子は、前述の中空粒子と、前記中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子からなる。
【0008】
本発明の組成物は、前述の熱膨張性微小球、前述の中空粒子、及び前述の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含む。
本発明の組成物は、液状またはペースト状であると、好ましい。
本発明の成形体は、前述の組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱膨張性微小球は、短い加熱時間でも高い膨張性を有し、熱応答性の高い膨張挙動を示し、膨張後のヘタリを抑制できる。
本発明の中空粒子は、前述の熱膨張性微小球の膨張体であり、軽量かつ、ヘタリを抑制できる。
本発明の微粒子付着中空粒子は、前述の中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子からなるものであり、軽量かつ、ヘタリを抑制できる。
本発明の組成物は、前述の熱膨張性微小球、前述の中空粒子、及び前述の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種を含むため、軽量かつ、ヘタリを抑制できる成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、前述の組成物を成形してなるものであり、軽量かつ、ヘタリを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。
図2】本発明の微粒子付着中空粒子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔熱膨張性微小球〕
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)6と、それに内包されかつ加熱することで気化する発泡剤(コア)7とを含む形態で構成される熱膨張性微小球である。この熱膨張性微小球はコア-シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂は重合性成分の重合体である。
【0012】
重合性成分は、重合することによって、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、ラジカル反応性を有する炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体成分(以下、単に単量体成分ということがある)を必須とし、ラジカル反応性を有する炭素-炭素二重結合を2つ以上有する架橋剤(以下、単に架橋剤ということがある)を含むことがある成分である。単量体成分、架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は熱可塑性樹脂に橋架け構造を導入できる成分である。
【0013】
重合性成分は単量体成分として、ニトリル系単量体を含む。さらに、ニトリル系単量体は、アクリロニトリルとメタクリロニトリルを含み、アクリロニトリルの含有量100重量部に対するメタクリロニトリルの含有量が40~80重量部である。
ニトリル系単量体に必須に含まれるアクリロニトリルとメタクリロニトリルにおいて、アクリロニトリルの含有量100重量部に対するメタクリロニトリルの含有量は40~80重量部である。該含有量が40重量部未満であると、アクリロニトリルのブロック重合の割合が増加するために外殻の剛性が高くなりすぎてしまい、最大膨張倍率に膨張させるために必要な加熱時間が長くなり、該含有量が80重量部超であると、メタクリロトリルのブロック重合の割合が増加するために外殻の耐熱性とガスバリア性が低下し、加熱膨張後のヘタリの抑制ができなくなる。一方、該含有量が40~80重量部の範囲であると、アクリロニトリルとメタクリロニトリルのランダム重合が適切な割合で進行し、熱応答性とヘタリの抑制性の両立が可能となると考えられる。該含有量の上限は、好ましくは78重量部、さらに好ましくは76重量部、より好ましくは74重量部、特に好ましくは70重量部である。一方、該含有量の下限は、好ましくは42重量部、さらに好ましくは44重量部、より好ましくは46重量部、特に好ましくは50重量部、最も好ましくは53重量部である。
【0014】
重合性成分が単量体成分として含むニトリル系単量体であって、アクリロニトリルとメタクリロニトリル以外のものとしては、例えば、フマロニトリル、マレオニトリル等が挙げられる。
重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合としては、特に限定はないが、好ましくは25重量%以上である。該重量割合が25重量%以上であると、外殻のガスバリア性と軟化時の延伸性が向上し、低い温度でも高い膨張性を示す傾向がある。該重量割合の上限は、より好ましくは99.7重量%、さらに好ましくは99.5重量%、特に好ましくは99重量%、最も好ましくは98.5重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは35重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは50重量%である。
【0015】
重合性成分は単量体成分として、ニトリル系単量体以外の単量体(以下、その他の単量体ということがある)を含んでもよい。
その他の単量体としては、例えば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸の無水物や、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。本発明において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを意味するものとする。上記その他の単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
重合性成分が単量体成分としてカルボキシル基含有単量体をさらに含むと、膨張開始温度を制御しやすい点で好ましい。
重合性成分がカルボキシル基含有単量体をさらに含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~80重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは70重量%、特に好ましくは60重量%、最も好ましくは50重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、もっとも好ましくは25重量%である。
また、重合性成分がカルボキシル基含有単量体をさらに含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合において、特に限定はないが、その上限は好ましくは95重量%、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは75重量%である。一方、該重量割合の下限は、好ましくは10重量%、より好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは25重量%、もっとも好ましくは30重量%である。
【0017】
重合性成分が単量体成分として(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含むと、熱膨張性微小球の膨張挙動を調整できる点で好ましい。
重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含む場合、重合性成分に占める(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.1~50重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは15重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.3重量%、さらに好ましくは0.5重量%、特に好ましくは1重量%、最も好ましくは2重量%である。
【0018】
重合性成分が単量体成分として(メタ)アクリルアミド系単量体をさらに含むと、耐熱性が向上する点で好ましい。
重合性成分が(メタ)アクリルアミド系単量体をさらに含む場合、重合性成分に占める(メタ)アクリルアミド系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.1~40重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは15重量%、最も好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.3重量%、さらに好ましくは0.5重量%、特に好ましくは1重量%である。
【0019】
重合性成分は前述のとおり、架橋剤を含んでもよい。重合性成分が架橋剤を含むと、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上し、圧縮回復性の高い熱膨張性微小球を得ることができる点で、好ましい。
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8オクタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール#650ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(EO付加2~30)、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エトキシ化グリセリントリアクリレート、1,3,5-トリ(メタ)アクリロイル・ヘキサヒドロ1,3,5-トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-トリビニルベンゼン、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二官能架橋性単量体、三官能性単量体、及び四官能以上の架橋性単量体等が挙げられる。上記架橋剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合性成分は架橋剤を含まなくてもよいが、その含有量については特に限定はなく、重合性成分に占める架橋剤の重量割合は、好ましくは6重量%以下である。該重量割合が6重量%以下であると、膨張性能が向上する傾向がある。架橋剤の重量割合の上限は、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは4重量%、特に好ましくは3重量%、最も好ましくは2重量%である。一方、該重量割合の下限は、好ましくは0重量%、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.2重量%である。
【0021】
発泡剤は、加熱することで気化する成分であり、熱膨張性微小球の熱可塑性樹脂からなる外殻に内包されることによって、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示すようになる。
【0022】
本発明の熱膨張性微小球に含まれる発泡剤は、比熱が0.8~2.0J/g・Kである発泡剤(a)を必須に含む。発泡剤(a)の比熱が0.8J/g・K未満であると、加熱時に外殻が軟化するタイミングと発泡剤が気化するタイミングが合わず、膨張性が低下する。一方、該比熱が2.0J/g・K超であると、熱応答性が低下する。該比熱の上限は、好ましくは1.9J/g・K、より好ましくは1.8J/g・K、さらに好ましくは1.7J/g・K、特に好ましくは1.6J/g・K、最も好ましくは1.5J/g・Kである。一方、該比熱の下限は、好ましくは0.9J/g・K、より好ましくは0.95J/g・K、さらに好ましくは1.0J/g・K、特に好ましくは1.05J/g・Kである。なお、発泡剤(a)の比熱は実施例で測定される方法によるものである。
【0023】
発泡剤(a)としては、例えば、フッ素原子含有化合物が挙げられる。発泡剤(a)がフッ素原子含有化合物を含むと、本発明の効果を奏する点で好ましい。
フッ素原子含有化合物としては、例えば、CHOCHCFCHF、CHOCHCFCF、CHOCFCHFCF、CHOCFCFCF、CHFOCHCFCF、CHOCH(CF、CHOCF(CF、CFCHOCFCHF、CFCHOCFCHF等のハイドロフルオロエーテル;CFCFCOCF(CF)CF等のフルオロケトン;CFOCF、CFOCFCF等のパーフルオロエーテル等;CFCHCHCF等のハイドロフルオロオレフィン;CFCHCHCl等のハイドロクロロフルオロオレフィンが挙げられる。上記発泡剤(a)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
発泡剤(a)は、フルオロケトン、及びハイドロフルオロエーテルから選ばれる少なくとも1種を含むと、本発明の効果を奏する点で好ましい。発泡剤(a)に占めるフルオロケトン、及びハイドロフルオロエーテルの含有量の合計は、特に限定はないが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは100重量%である。
【0025】
熱膨張性微小球が含む発泡剤に占める発泡剤(a)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50重量%以上である。該重量割合が50重量%以上であると、短い加熱時間において膨張性が向上する傾向がある。該重量割合はより好ましくは75~100重量%、さらに好ましくは90~100重量%、特に好ましくは95~100重量%、最も好ましくは100重量%である。
【0026】
本発明の熱膨張性微小球において、含まれる発泡剤は前述の発泡剤(a)以外の発泡剤(以下、その他の発泡剤)を含んでもよい。
その他の発泡剤としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数1~13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150~260℃及び/または蒸留範囲70~360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等の炭素数1~5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。上記その他の発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0027】
発泡剤の比熱は、特に限定はないが、比熱が0.8~2.0J/g・Kであると好ましい。発泡剤の比熱が0.8J/g・K以上であると、加熱時に外殻が軟化するタイミングと発泡剤が気化するタイミングが近接し、熱膨張性微小球の膨張性が向上する傾向がある。一方、該比熱が2.0J/g・K以下であると、熱応答性が向上する傾向がある。該比熱の上限は、好ましくは1.9J/g・K、より好ましくは1.8J/g・K、さらに好ましくは1.7J/g・K、特に好ましくは1.6J/g・K、最も好ましくは1.5J/g・Kである。一方、該比熱の下限は、好ましくは0.9J/g・K、より好ましくは0.95J/g・K、さらに好ましくは1.0J/g・K、特に好ましくは1.05J/g・Kである。なお、発泡剤の比熱は実施例で測定される方法によるものである。
【0028】
発泡剤の150℃における蒸気圧は、特に限定はないが、熱膨張性微小球の膨張性が向上する点で、0.01MPa~50MPaであると好ましい。該蒸気圧の上限は、(1)40MPa、(2)30MPa、(3)20MPa、(4)10MPa、(6)5MPa、(7)3MPa、(8)2MPaの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるほど好ましい)。一方、該蒸気圧の下限は、(1)0.05MPa、(2)0.1MPa、(3)0.2MPa、(4)0.3MPa、(5)0.5MPa、(6)0.8MPa、(7)1MPaの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるほど好ましい)。
【0029】
本発明の熱膨張性微小球に内包される発泡剤の量(以下、発泡剤の内包率ということがある)は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に含まれる発泡剤の重量の百分率で定義されるものである。
発泡剤の内包率は、特に限定されないが、好ましくは1~55重量%である。該内包率がこの範囲にあると、加熱により高い内圧が得られるため、熱膨張性微小球を大きく膨張させることができる。該内包率の上限は、より好ましくは50重量%、さらに好ましくは45重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは35重量%である。一方、該内包率の下限は、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは15重量%である。なお、発泡剤の内包率は実施例で測定される方法によるものである。
【0030】
本発明の熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、好ましくは70~250℃である。該温度の上限は、より好ましくは230℃さらに好ましくは200℃、特に好ましくは180℃、もっとも好ましくは160℃である。一方、該温度の下限は、より好ましくは80℃、さらに好ましくは90℃、特に好ましくは100℃である。なお、熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は実施例で測定される方法によるものである。
【0031】
本発明の熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、好ましくは95~300℃である。該温度の上限は、より好ましくは280℃、さらに好ましくは260℃、特に好ましくは240℃、もっとも好ましくは200℃である。一方、該温度の下限は、より好ましくは100℃、さらに好ましくは105℃、特に好ましくは110℃、最も好ましくは120℃である。なお、熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は実施例で測定される方法によるものである。
【0032】
本発明の熱膨張性微小球の比熱は、特に限定はないが、好ましくは1.05~1.5J/g・Kである。該比熱が前述の範囲内であると、短い加熱時間でも高い膨張性を有し、熱応答性の高い膨張挙動を示す傾向がある。該比熱の上限は、より好ましくは1.45J/g・K、さらに好ましくは1.40J/g・K、特に好ましくは1.35J/g・Kである。一方、該比熱の下限は、より好ましくは1.10J/g・K、さらに好ましくは1.15J/g・K、特に好ましくは1.20J/g・Kである。なお、熱膨張性微小球の比熱は実施例で測定される方法によるものである。
【0033】
本発明の熱膨張性微小球の体積基準の累積50%粒子径(A50)(以下、単にA50ということがある)は、特に限定はないが、熱膨張性微小球の膨張性を高める点で、好ましくは1~200μmである。該粒子径が前述の範囲内であると、熱膨張性微小球の外殻のガスバリア性及び厚みが十分となり、膨張性能が向上する傾向がある。該粒子径の上限は、より好ましくは100μm、さらに好ましくは50μm、特に好ましくは45mである。一方、該粒子径の下限は、より好ましくは3μm、さらに好ましくは5μm、特に好ましくは7μm、最も好ましくは10μmである。なお、A50は実施例で測定される方法によるものである。
【0034】
本発明の熱膨張性微小球の体積基準の累積10%粒子径(A10)(以下、単にA10ということがある)とA50の比(A50/A10)は、特に限定はないが、好ましくは1.1以上である。A50/A10が1.1以上であると、小さい熱膨張性微小球の数が適正化され、熱応答性の高い膨張挙動を示す傾向がある。A50/A10の上限は、好ましくは7、より好ましくは6.5、さらに好ましくは6、特に好ましくは5である。一方、A50/A10の下限は、より好ましくは1.2、さらに好ましくは1.3、特に好ましくは1.4、最も好ましくは1.5である。なお、A10は実施例で測定される方法によるものである。
【0035】
本発明の熱膨張性微小球の体積基準の累積90%粒子径(A90)と(以下、単にA90ということがある)とA50の比(A90/A50)は、特に限定はないが、好ましくは1.1~5.5である。A90/A50が前述の範囲内であると、粗大な熱膨張性微小球の数が適正化され、短い加熱時間でも均一に膨張する傾向がある。A90/A50の上限は、より好ましくは5、さらに好ましくは4.5、特に好ましくは4、最も好ましくは3.5である。一方、A90/A50の下限は、より好ましくは1.15、さらに好ましくは1.2、特に好ましくは1.25、最も好ましくは1.3である。なお、A90は実施例で測定される方法によるものである。
【0036】
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法は、重合性成分と、発泡剤と、重合開始剤とを含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程(以下では、重合工程ということがある。)を含む方法である。
【0037】
重合開始剤としては、特に限定はないが、ごく一般に用いられる過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
【0038】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。
【0039】
重合開始剤の重量割合については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量%であり、さらに好ましくは0.1~8重量%、最も好ましくは0.2~5重量%である。該重量割合が0.05重量%未満である場合、重合されない重合性成分が残存し、熱膨張性微小球が凝集することで均一な粒子を作製できないことがある。当該重量割合が10重量%を超える場合、耐熱性が低下することがある。
【0040】
熱膨張性微小球の製造方法では、油性混合物を水性分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、重合性成分を重合させる。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100~1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0041】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1~50重量部含有するのが好ましい。
【0042】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類及び水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0043】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、さらに好ましくは0.0003~0.1重量部、特に好ましくは0.001~0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
【0044】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、例えば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、さらに好ましくは0.5~20重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、例えば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0045】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤及び/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
【0046】
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法では、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
【0047】
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、球状油滴の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0048】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、さらに好ましくは40~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0~5MPa、さらに好ましくは0.1~3MPaの範囲である。
【0049】
熱膨張性微小球の製造方法では、重合後のスラリー(熱膨張性微小球含有分散液)に金属塩を添加し、カルボキシル基とイオン架橋を形成させてもよく、金属を含有する有機化合物で表面処理してもよい。
金属塩は、2価以上の金属カチオンが好ましく、例えばAl、Ca、Mg、Fe、Ti、Cu等が挙げられる。添加のしやすさから、水溶性が好ましいが、非水溶性でも構わない。金属含有有機化合物は、表面処理効率より、水溶性であると好ましく、周期表3~12に属する金属を含有する有機化合物であると、耐熱性がさらに向上するため好ましい。
【0050】
得られたスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等により濾過し、含水率10~50重量%、好ましくは15~45重量%、さらに好ましくは20~40重量%の湿粉を得ることができる。また、得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体が得られる。得られた乾燥粉体の含水率は、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
イオン性物質の含有量を低減させる目的で、得られた湿粉または乾燥粉体を水洗及び/または再分散後に再濾過し、乾燥させても構わない。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。湿粉と乾燥粉体は使用用途に応じて適宜選択することができる。
【0051】
〔中空粒子〕
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であり、組成物や成形体に含ませると材料物性に優れる。
本発明の中空粒子は、上記で説明したような、特定の重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される特定の発泡剤を含む熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であるため、軽量かつ、ヘタリを抑制することができる。
【0052】
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を、好ましくは70~450℃で加熱膨張させることで得られる。加熱膨張の方法としては、特に限定はなく、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等のいずれでもよい。乾式加熱膨張法としては、例えば、特開2006-213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法が挙げられる。また、別の乾式加熱膨張法としては、特開2006-96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、特開昭62-201231号公報に記載の方法等がある。
【0053】
本発明の中空粒子の体積平均粒子径については用途に応じて自由に設計することができる。中空粒子の体積平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは3~1000μmである。該体積平均粒子径の上限は、より好ましくは500μm、さらに好ましくは300μmである。一方、該体積平均粒子径の下限は、より好ましくは5μm、さらに好ましくは10μm、特に好ましくは20μmである。なお、該体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定された体積基準の累積50%粒子径の値である。
【0054】
本発明の中空粒子の真比重については、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で、好ましくは0.001~0.60である。該真比重が前述の範囲内であると、中空粒子のヘタリを抑制できる傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、特に好ましくは0.30、最も好ましくは0.20である。一方、該真比重の下限は、より好ましくは0.0015、さらに好ましくは0.002である。なお、中空粒子の真比重は実施例で測定される方法によるものである。
【0055】
〔微粒子付着中空粒子〕
本発明の微粒子付着中空粒子は、図2のように、前述の中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)から構成されたものである。
ここでいう付着とは、単に中空粒子の外殻2の外表面に微粒子4及び5が、吸着された状態(図2の微粒子4の状態)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(図2の微粒子5の状態)であってもよいという意味である。微粒子の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
微粒子が中空粒子に付着することにより、中空粒子の飛散を抑制しハンドリングを向上させることができ、また、バインダーや樹脂等の基材成分への分散性も向上させることができる。
【0056】
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物としては、特に限定はないが、例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ、ガラスマイクロバルーン等が挙げられる。
【0057】
微粒子を構成する有機物としては、特に限定はないが、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物や有機物は、シランカップリング剤、パラフィンワックス、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0058】
微粒子の体積平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~30μm、より好ましくは0.005~25μm、特に好ましくは0.01~20μmである。なお、該体積平均粒子径は、該体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定された体積基準の累積50%粒子径の値である。
微粒子の体積平均粒子径と中空粒子の体積平均粒子径との比率(微粒子の体積平均粒子径/中空粒子の体積平均粒子径)は特に限定はないが、中空粒子表面への微粒子の付着性の点で、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0059】
微粒子付着中空粒子に対する微粒子の重量割合については、特に限定はないが、95重量%以下が好ましく、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。微粒子の重量割合が95重量%超であると、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際にその添加量が大きくなり、非経済的であることがある。微粒子の重量割合の下限は、好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは40重量%である。
【0060】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.03~0.60である。該真比重が0.03以上であると、外殻部の膜厚が十分となり、ヘタリを抑制できる傾向がある。一方、該真比重0.60以下であると、低比重化効果が十分に得られ、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際に、組成物や成形体としての物性を十分に保つことができる傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.40、特に好ましくは0.30、最も好ましくは0.20である。一方、該真比重の下限は0.07、特に好ましい下限は0.10である。
【0061】
本発明の微粒子付着中空粒子において、その製造方法は、例えば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0062】
混合工程は、前述の熱膨張性微小球と前述の微粒子とを混合する工程である。
混合工程における熱膨張性微小球及び微粒子の合計に対する微粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。該重量割合が95重量%以下であると、得られる微粒子付着中空粒子は軽量であり、十分な低比重化効果が得られる傾向がある。
【0063】
混合工程において、熱膨張性微小球と微粒子とを混合するのに用いられる装置としては、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。
粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等も紹介されており、これらを用いてもよい。
【0064】
付着工程は、前述の混合工程で得られた熱膨張性微小球と微粒子とを含む混合物を、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外殻部の外表面に微粒子を付着させる。
加熱は、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、特に限定はないが、たとえば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン)等が挙げられる。
加熱の温度条件については熱膨張性微小球の種類にもよるが、最適膨張温度とするのがよく、好ましくは70~250℃、より好ましくは80~230℃、さらに好ましくは90~220℃である。
【0065】
〔組成物及び成形体〕
本発明の組成物は、前述の熱膨張性微小球、前述の中空粒子、前述の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含むものである。
基材成分としては、特に限定はなく、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド系、ウレタン系、アクリル系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン-酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系等のエマルジョンやプラスチゾル等の液状物成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物;セルロース、ケナフ、フスマ、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン等の有機繊維が挙げられる。上記基材成分は水や有機溶剤に希釈、溶解、分散していてもよい。上記基材成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明の組成物は、前述の基材成分と、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種とを混合することによって調製することができる。また、基材成分と、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種とを混合して得られた組成物に、さらに別の基材成分と混合して本発明の組成物とすることもできる。
本発明の組成物は、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分以外に、用途に応じて適宜、その他の成分を含んでもよい。
【0067】
本発明の組成物において、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子の含有量の合計は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.05~350重量部である。該含有量が0.01重量部以上であると、十分に軽量な成形体が得られる傾向がある。一方、該含有率が350重量部以下であると、熱膨張性微小球、中空粒子及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種の均一分散性が向上する傾向がある。該含有率の上限は、より好ましくは300重量部、さらに好ましくは200重量部、特に好ましくは150重量部、最も好ましくは100重量部である。一方、該含有率の下限は、より好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.2重量部、特に好ましくは0.5重量部、最も好ましくは1重量部である。
【0068】
本発明の組成物を調整する方法は特に限定はなく、従来公知の方法を採用すればよい。該方法としては、例えば、ホモミキサー、スタティックミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等の混合機を用いて、機械的に均一に混合させる方法が挙げられる。
本発明の組成物としては、例えば、ゴム組成物、成形用組成物、塗料用組成物、粘土組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0069】
本発明の組成物は、液状またはペースト状である組成物(以下、液状またはペースト状組成物ということがある)であると好ましい。液状またはペースト状組成物としては、例えば、塩化ビニル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエステル系樹脂;メラミン樹脂;エポキシ樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA):ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;エチレン-テトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;天然ゴムやスチレン系ゴム等のゴム等を含むものが挙げられる。液状またはペースト状である組成物は、また、可塑剤を含むプラスチゾルや、液体分散媒を含む樹脂エマルジョン、ラテックス等の液状物と混合した組成物が挙げられる。プラスチゾルや樹脂エマルジョン、ラテックス等を含む液状組成物は、成形体の製造効率を向上させる目的から、高い温度で短時間に加熱する場合もあり、上記組成物を使用することで、軽量でヘタリを抑制した成形体を製造することが可能となる。
【0070】
本発明の組成物においては、液状またはペースト状組成物である場合、塗料用組成物や接着剤用組成物であると好ましい。
本発明の組成物が塗料用組成物である場合、例えば、自動車用塗料、航空機用塗料、電車用塗料、家電製品匡体用塗料、建築物の外壁用塗料、内張材用塗料、屋根材用塗料等として利用することができる。
本発明の組成物が接着剤用組成物である場合、自動車用接着剤、航空機用接着剤、電車用接着剤、家電製品用接着剤、建築物用接着剤等として利用することができる。
【0071】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸系可塑剤;アルキルジフエニルホスフェートなどのリン酸系可塑剤;塩素化脂肪族エステル;塩素化パラフィン;低分子量エポキシ;低分子量ポリエステル;ジオクチルアジペート等のアジピン酸系可塑剤;ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロヘキサンジカルボン酸系可塑剤等が挙げられる。
液体分散媒としては、例えば、水、ミネラルスピリット、メタノール、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0072】
本発明の組成物は、必要に応じて、充填材、着色剤、高沸点有機溶剤、接着剤等を含んでもよい。
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、亜鉛華、クレー、カオリン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
接着剤としては、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール等から選ばれる1種以上と、オキシム、ラクタム等の適当なブロック剤により末端のNCO基がブロックされたポリイシソアネートプレポリマーとの混合物が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物が、特に、熱膨張性微小球とともに、基材成分として、熱膨張性微小球の膨張開始温度より低い融点を有する化合物及び/又は熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム成分等)を含む場合は、発泡成形用マスターバッチとして用いることができる。発泡成形用マスターバッチは、射出成形、押出成形、プレス成形等に利用され、気泡導入剤として好適に用いられる。
【0074】
本発明の成形体は、前述の組成物を成形してなるものである。
本発明の成形体としては、例えば、塗膜や成形品等の成形体を挙げることができる。
本発明の成形体では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度、チッピング性等の諸物性が向上し、さらに、ヒケやソリに対する安定化、寸法安定性等得られる効果も得ることができる。
【実施例
【0075】
以下に、本発明の熱膨張性微小球の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を意味するものである。
また、以下の実施例及び比較例で挙げた熱膨張性微小球について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。熱膨張性微小球を単に「微小球」ということがある。
【0076】
〔熱膨張性微小球の粒子径A50、A10、A90の測定〕
測定装置としてマイクロトラック粒度分布計(9320-HRA、日機装株式会社製)を使用し、体積基準測定によるD50値をA50、体積基準測定によるD10値をA10、体積基準測定によるD90値をA90とした。
【0077】
〔熱膨張性微小球の含水率(Cw)の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。熱膨張性微小球の含水率(重量%)をCwとした。
【0078】
〔熱膨張性微小球に内包される発泡剤の内包率(Cr)の測定〕
含水率2重量%以下に調整した熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(WA1(g))を測定した。アセトニトリルを30ml加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥後の重量(WA2(g))を測定した。
熱膨張性微小球に内包される発泡剤の内包率(Cr)は、下記の式により算出した。
Cr(重量%)=100×{100×(WA1-WA2)/1.0-Cw}/(100-Cw) (1)
(式中、熱膨張性微小球の含水率Cwは、前述の方法で測定した。)
【0079】
〔熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)及び最大膨張温度(Tmax)の測定〕
測定装置としてDMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。乾燥した微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts(℃))とし最大変位量を示した時の温度を最大膨張温度(Tmax(℃))とした。
【0080】
〔発泡剤の比熱の測定〕
発泡剤(a)、発泡剤の比熱は、示差走査熱量測定装置(DSC4000、PerkinElmer製)を用いて測定した。測定温度範囲は-30℃から30℃までとし、昇温速度は毎分10℃とした。
測定した発泡剤の重量、測定した標準物質の重量、空の容器と発泡剤を入れた容器との測定で得た25℃におけるDSC曲線差、空の容器と標準物質を入れた容器との測定で得たDSC曲線差、及び標準物質の25℃における比熱から下記の式により、25℃における発泡剤の熱容量値を算出し、発泡剤の比熱(Cpe)とした。なお、使用した標準物質はα-アルミナであり、その25℃における比熱(Cpr)は、0.7639J/g・Kを採用した。
Cpe(J/g・K)=(Ye/Yr)×(Mr/Me)×Cpr
Cpe:発泡剤の比熱
Cpr:標準物質の比熱
Ye:空容器と発泡剤のDSC曲線差
Yr:空容器と標準物質のDSC曲線差
Me:測定した発泡剤の重量
Mr:測定した標準物質の重量
【0081】
〔熱膨張性微小球の比熱の測定〕
熱膨性張微小球の比熱は、示差走査熱量測定装置(DSC4000、PerkinElmer製)を用いて測定した。測定に用いる熱膨張性微小球はあらかじめ80℃、10mmHg以下で減圧乾燥させ、含水率を1%以下としたものを使用した。測定温度範囲は-10℃から100℃までとし、昇温速度は毎分10℃とした。
測定した熱膨張性微小球の重量、測定した標準物質の重量、空の容器と熱膨張性微小球を入れた容器との測定で得た25℃におけるDSC曲線差、空の容器と標準物質を入れた容器との測定で得た25℃におけるDSC曲線差、及び標準物質の25℃における比熱から下記の式により、25℃における熱膨張性微小球の熱容量値を算出し、熱膨張性微小球の比熱(Cps)とした。なお、使用した標準物質はα-アルミナであり、その25℃における比熱(Cpr)は、0.7639J/g・Kを採用した。
Cps(J/g・K)=(Ys/Yr)×(Mr/Ms)×Cpr
Cps:熱膨張性微小球の比熱
Cpr:標準物質の比熱
Ys:空容器と熱膨張性微小球のDSC曲線差
Yr:空容器と標準物質のDSC曲線差
Ms:測定した熱膨張性微小球の重量
Mr:測定した標準物質の重量
【0082】
〔真比重の測定〕
熱膨張性微小球、中空粒子、または微粒子付着中空粒子(以下、単に総じて粒子試料ということがある)の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100mLの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。また、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50mLの粒子試料を充填し、粒子試料の充填されたメスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、粒子試料の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2及びWS3を下式に導入して、粒子試料の真比重(d)を計算した。
d={(WS2-WS1)×(WB2-WB1)/100}/{(WB2-WB1)-(WS3-WS2)}
【0083】
(実施例1)
イオン交換水500部に、塩化ナトリウム100部、有効成分20%であるコロイダルシリカ100部、及びポリビニルピロリドン0.5部を加えた後、得られた混合物のpHを2.5~3.5に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル200部、メタクリロニトリル80部、メタクリル酸メチル20部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.6部、発泡剤(a-1)であるメチルパーフルオロプロピルエーテル100部、及びパーロイルLであるジラウロイルパーオキサイド2.5部を混合して、油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プラミクス社製、TK ホモミキサー)により、回転数12000rpmで油性混合物の液滴サイズが目標とする熱膨張性微小球のサイズとなるまで分散させ、懸濁液を調製した。
この懸濁液を窒素置換した容量1.5リットルの加圧反応容器へ仕込み、0.5MPaに加圧し、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で5時間重合後、連続して75℃で15時間反応した。反応後、得られた生成物を濾過、乾燥し、実施例1の熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性と後述する方法による評価の結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2~11、比較例1~7)
実施例2~11、及び比較例1~7では、実施例1において、表1~2に示すように条件をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様にして、実施例2~11、及び比較例1~7の熱膨張性微小球をそれぞれ得た。得られた熱膨張性微小球の物性と後述する方法による評価の結果を表1~2に示す。
【0085】
<最大膨張倍率到達加熱時間及びヘタリ耐性度の測定>
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作成し、その中に微小球1.0gを均一になるように入れ、ギア式オーブン中に入れ、下式により算出される熱処理温度で所定時間加熱膨張処理した後、得られた中空粒子の真比重を測定した。加熱後の中空粒子の真比重(d1)と加熱前の熱膨張性微小球の真比重(d0)を用いて下式より膨張倍率(E)を算出した。膨張倍率(E)が最も大きくなるまで加熱膨張処理時間を延長していき、膨張倍率(E)が最も大きくなるまでに要した最小の加熱膨張時間を最大膨張加熱時間B1(秒)とした。B1が小さいほど、短い加熱時間での膨張性能及び熱応答性が良好であることを示す。
熱処理温度(℃)=(Ts+Tmax)/2
膨張倍率(E)=d0/d1
さらに、熱膨張性微小球を上記熱処理温度で下式により算出される加熱処理時間B2で加熱処理した後、微小球の真比重(d2)を測定した。そして、得られたd1、d2を用いて下式よりヘタリ耐性度を算出した。ヘタリ耐性度は数値が小さいほど、良好にヘタリが抑制されていることを示す。
B2(秒)=B1+30
ヘタリ耐性度=d2/d1×100
【0086】
<解砕性(凝集性)>
40℃で12h乾燥させた熱膨張性マイクロカプセル200gを5分間篩(篩目開き:150μm、線径:100μm、東京スクリーン社製)にかけた後、篩を通過した熱膨張性マイクロカプセルの重量(Wp)を測定した。下式より篩を通過した熱膨張性マイクロカプセルの比率を算出し、熱膨張マイクロカプセルの解砕性の評価を以下の基準により行った。篩透過率が高いほど解砕性が良好であり、凝集性が低いことを示す。
◎:篩通過率が90%以上であり、解砕性が優れる。
○:篩通過率が80%以上90%未満であり、解砕性がやや優れる。
△:篩通過率が70%以上80%未満であり、解砕性がやや劣る。
×:篩通過率が70%未満であり、解砕性が劣る。
篩通過率(%)=Wp/100
【0087】
<成形体の均一性の評価>
得られた熱膨張性微小球を50重量部と酸化チタンを(平均粒子径0.8μm)50重量部、スチレン-ブタジエンラテックスとしてSBラテックス L-7063(旭化成株式会社製、固形分48%)を10重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬製、セロゲン7A)0.5重量部、さらにイオン交換水を混合し固形分40%のスラリーを調整した。上記スラリーをアルミ板に、バーコーターで塗工厚みが300μとなるよう塗工し、塗工したアルミ板をオーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、熱膨張性微小球を含む被膜を得た。得られた被膜におけるアルミ板の被覆面積を100%として、塗膜にひび割れや凹凸が発生していない面積を目視で計測し、加熱前の被膜の均一性評価を実施した。
次に、得られた被膜をギア式オーブン中に入れ、使用した熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)で2分間加熱した。加熱後の被膜におけるアルミ板の被覆面積を100%として、塗膜にひび割れや凹凸が発生していない面積を目視で計測し、加熱後の被膜の均一性評価を実施した。
◎:ひび割れや凹凸がなく、良好。
○:被覆面積中、1%~5%でひび割れや凹凸が見られるが、問題のない状態。
△:被覆面積中、5%超~20%でひび割れや凹凸が見られ、不良。
×:被覆面積中、20%超でひび割れや凹凸が見られ、不良。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
実施例及び比較例で使用した、表1及び表2に記載の原料の詳細を以下に示す。
1,9ND-A:1,9-ノナンジオールジアクリレート
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
TMP-A:トリメチロールプロパントリアクリレート
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
発泡剤a-1:1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-3-メトキシプロパン、比熱1.30J/g・K
発泡剤a-2:1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、比熱1.31J/g・K
発泡剤a-3:1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、比熱1.26J/g・K
発泡剤a-4:ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン、比熱1.10J/g・K
発泡剤a-5:(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、比熱1.20J/g・K
SBP:ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(有効濃度50%)
OPP:ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(有効濃度70%)
パーロイルL:ジラウロイルパーオキサイド
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0091】
表1~2からわかるように、アクリロニトリルとメタクリロニトリルを必須に含み、アクリロニトリルの含有量100重量部に対するメタクリロニトリルの含有量が40~80重量部であるニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂から構成さされる外殻を有し、0.8~2.0J/g・Kの比熱を有する発泡剤(a)を含む発泡剤を内包する熱膨張性微小球であると、短い加熱時間でも高い膨張性を有し、熱応答性の高い膨張挙動を示すことを確認することができ、さらに膨張後のヘタリを抑制できる。一方、アクリロニトリルの含有量100重量部に対するメタクリロニトリルの含有量が40~80重量部でない比較例1、3~7や、0.8~2.0J/g・Kである発泡剤(a)を含まない比較例2では、その膨張挙動については熱応答性が低く、ヘタリ抑制の程度も低い。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の熱膨張性微小球は、例えば、パテ、塗料、インク、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化剤として用いることが可能であり、また、基材成分に配合して、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形を行って、遮音性、断熱性、遮熱性、吸音性等の性能を有する成形体の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 微粒子付着中空粒子
2 外殻部(外殻)
3 中空部
4 微粒子(吸着された状態)
5 微粒子(めり込み、固定された状態)
6 熱可塑性樹脂からなる外殻
7 発泡剤
【要約】
本発明の目的は、短い加熱時間でも高い膨張性を有し、熱応答性の高い膨張挙動を示す熱膨張性微小球、及びその用途を提供することである。
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包されかつ加熱することにより気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体であり、前記ニトリル系単量体がアクリロニトリルとメタクリロニトリルを含み、前記アクリロニトリルの含有量100重量部に対する前記メタクリロニトリルの含有量が40~80重量部であり、前記発泡剤が発泡剤(a)を含み、前記発泡剤(a)の比熱が0.8~2.0J/g・Kである、熱膨張性微小球。
図1
図2