(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】発泡ゴム成形体、その製造方法及びそれを用いたシール材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230411BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230411BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230411BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230411BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CEQ
C09K3/10 C
C08K3/013
C08L21/00
C08L1/00
(21)【出願番号】P 2019555354
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2018043104
(87)【国際公開番号】W WO2019103071
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2017224939
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】長谷 朝博
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 龍二
(72)【発明者】
【氏名】森永 俊史
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/159081(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051310(WO,A1)
【文献】特表2018-527454(JP,A)
【文献】特開2017-128663(JP,A)
【文献】特開2017-172676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
C08L
C08K
C09K 3/10-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤を含む発泡ゴム成形体であって、
前記発泡ゴム成形体において、前記ゴム成分は架橋されており、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填剤の配合量は85質量部以上300質量部以下であり、
前記バイオマスナノファイバーは、平均繊維長が700nm以上であり、かつ所定の方向に配向していることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項2】
ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤を含む発泡ゴム成形体であって、
前記発泡ゴム成形体において、前記ゴム成分は架橋されており、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填剤の配合量は85質量部以上300質量部以下であり、
前記発泡ゴム成形体において、任意の方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向とし、第1方向、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向、第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向、第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向、及び、第2方向の6つの方向について、JIS K 6251:2010に準拠して引張強さを測定し、得られた引張強さの中で、最大の引張強さをTmaxとし、前記Tmaxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さをT2とした場合、最大の引張強さ(Tmax)が600kPa以上であり、TmaxとT2の比(Tmax/T2)が1.16以上であることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項3】
JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の100%引張応力が580kPa以上である請求項1又は2に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項4】
JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の引張強さが800kPa以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項5】
前記発泡ゴム成形体のTmaxが1000kPa以上である請求項2に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項6】
前記発泡ゴム成形体中のバイオマスナノファイバーの含有量は0.001質量%以上10質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項7】
前記バイオマスナノファイバーの平均繊維径が1nm以上100nm以下であり、平均繊維長が800nm以上20000nm以下であり、平均繊維長と平均繊維径の比率(平均繊維長/平均繊維径)が10以上10000以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項8】
JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が45kPa以上200kPa以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項9】
JIS K 6767:1999に準拠して測定した見掛密度が0.30g/cm
3以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項10】
前記ゴム成分は、天然ゴムを5質量%以上含む請求項1~9のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項11】
前記ゴム成分は、天然ゴムに加えて、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成ゴムを含む請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項12】
前記バイオマスナノファイバーは、前記発泡ゴム成形体の気泡セル壁面において所定の方向に配向している、請求項1~11のいずれかに記載の発泡ゴム成形体。
【請求項13】
前記発泡ゴム成形体は、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のゴム成分を含むラテックスと、粘度が5500mPa・秒以上70000mPa・秒以下であるバイオマスナノファイバーの分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、充填剤、加硫剤及び発泡剤を含むゴム組成物を、架橋発泡させてなるものである請求項1~
12のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体の製造方法であって、
天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のゴム成分を含むラテックスと、粘度が5500mPa・秒以上70000mPa・秒以下であるバイオマスナノファイバーの分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、充填剤、加硫剤及び発泡剤を含むゴム組成物を、架橋発泡させて発泡ゴム成形体を得ることを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項15】
前記分散液において、バイオマスナノファイバーの含有量が0.05質量%以上50質量%以下である、請求項
14に記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体を用いたシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスナノファイバーを含む発泡ゴム成形体、その製造方法及びそれを用いたシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ゴム及び合成ゴムを架橋発泡させた発泡ゴム成形体は、軽量性及び断熱性等に優れていることから、水中用衣類、シール材、コンベアベルト、ロール表面部材、電線被覆用部材等の様々な用途に用いられている。これらのうち、各種シール材は、水、潤滑油、液体燃料といった液体や、水蒸気、各種高圧ガスといった気体が外部に漏れ出すのを防ぐために幅広い分野で使用されている。特に自動車及び鉄道車両等の各種車両用のシール材(ゴムパッキン、シーリング材とも称される。)は、燃料、潤滑油などの各種液体の外部への漏出や、雨水や埃等の異物が内部に浸入するのを防ぐため、ゴム弾性に富むことが求められる。それに加え、自動車及び鉄道車両等の各種車両ではこのようなシール材を使用する箇所が多く、交換頻度も高いことから、シール材が大量に消費されるようになり、より安価であることが求められている。
【0003】
近年、天然ゴム及び合成ゴム等のゴム成分を架橋発泡させた発泡ゴム成形体において、ゴム系材料を強化するために、繊維を加えて複合化することが行われている。例えば、特許文献1~6及び非特許文献1には、セルロースナノファイバーを含むゴム組成物及びゴム系架橋発泡成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-249449号公報
【文献】特開2009-263417号公報
【文献】特開2016-191007号公報
【文献】特開2017-128663号公報
【文献】特開2017-172676号公報
【文献】特許第6143187号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Cellulose nanocrystals reinforced foamed nitrile rubber nanocomposites, Carbohydrate Polymers, 2015年, Vol.130, P.149-154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2、4~6はセルロースナノファイバーにより強化されたゴム組成物を開示しているものの、ゴム組成物の内部を多孔質にしたゴム系架橋発泡成形体について十分に検証されていない。また、特許文献3及び非特許文献1に記載のゴム系架橋発泡成形体は、セルロースナノファイバーにより強化されているものの、ゴム成分の比率が高いことから汎用品として生産するにはコストが高いという問題があった。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するため、ゴム弾性が高く、安価な発泡ゴム成形体、その製造方法及びそれを用いたシール材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の要旨において、ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤を含む発泡ゴム成形体であって、前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填剤の配合量は85質量部以上300質量部以下であり、前記バイオマスナノファイバーは、平均繊維長が700nm以上であり、かつ所定の方向に配向していることを特徴とする発泡ゴム成形体に関する。
【0009】
本発明は、第2の要旨において、ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤を含む発泡ゴム成形体であって、前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填剤の配合量は85質量部以上300質量部以下であり、前記発泡ゴム成形体において、任意の方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向とし、第1方向、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向、第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向、第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向、及び、第2方向の6つの方向について、JIS K 6251:2010に準拠して引張強さを測定し、得られた各方向の引張強さの中で、最大の引張強さをTmaxとし、前記Tmaxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さをT2とした場合、最大の引張強さ(Tmax)が600kPa以上であり、TmaxとT2の比(Tmax/T2)が1.16以上であることを特徴とする発泡ゴム成形体に関する。
【0010】
本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の100%引張応力が580kPa以上であることが好ましい。本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の引張強さが800kPa以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体のTmaxが1000kPa以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体中のバイオマスナノファイバーの含有量は0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。本発明の第1及び第2の要旨において、前記バイオマスナノファイバーの平均繊維径が1nm以上100nm以下であり、平均繊維長が800nm以上20000nm以下であり、平均繊維長と平均繊維径の比率(平均繊維長/平均繊維径)が10以上10000以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が45kPa以上であることが好ましい。本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠して測定した見掛密度が0.30g/cm3以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体における前記ゴム成分は、天然ゴムを5質量%以上含むことが好ましい。前記ゴム成分は、天然ゴムに加えて、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成ゴムを含んでもよい。
【0015】
本発明の第1及び第2の要旨において、前記発泡ゴム成形体は、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のゴム成分を含むラテックスと、粘度が5500mPa・秒以上70000mPa・秒以下であるバイオマスナノファイバーの分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、充填剤、加硫剤及び発泡剤を含むゴム組成物を、架橋発泡させてなるものであってもよい。
【0016】
本発明は、また、前記の発泡ゴム成形体の製造方法であって、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のゴム成分を含むラテックスと、粘度が5500mPa・秒以上70000mPa・秒以下であるバイオマスナノファイバーの分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、充填剤、加硫剤及び発泡剤を含むゴム組成物を、架橋発泡させて発泡ゴム成形体を得ることを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法に関する。
【0017】
前記分散液において、バイオマスナノファイバーの含有量が0.05質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は、また、前記の発泡ゴム成形体を用いたシール材に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、発泡ゴム成形体に、ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤を含ませるとともに、バイオマスナノファイバーの繊維長を所定の範囲に調整し、発泡ゴム成形体中でバイオマスナノファイバーを所定の方向に配向させることで、ゴム弾性が高く、安価な発泡ゴム成形体及びそれを用いたシール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の発泡ゴム成形体を製造する際に用いたセルロースナノファイバーの水分散液に含まれるセルロースナノファイバーをショットキー電界放出形走査電子顕微鏡で観察した写真(50000倍)である。
【
図2】比較例3の発泡ゴム成形体を製造する際に用いたセルロースナノファイバーの水分散液に含まれるセルロースナノファイバーをショットキー電界放出形走査電子顕微鏡で観察した写真(50000倍)である。
【
図3】実施例1の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡で観察した写真(2000倍)である。
【
図4】実施例1の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡で観察した写真(5000倍)である。
【
図5】比較例1の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡で観察した写真(5000倍)である。
【
図6】比較例3の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡で観察した写真(5000倍)である。
【
図7】発泡ゴム成形体の引張強さを測定する際の6つの方向における試験片の採取方法について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発明者らは、発泡ゴム成形体において、ゴム弾性を高めつつ、コストを低減することについて鋭意検討した。その結果、ゴム成分、バイオマスナノファイバー及び充填剤を含む発泡ゴム成形体において、ゴム成分100質量部に対して、充填剤の配合量を85質量部以上300質量部以下とし、平均繊維長が700nm以上のバイオマスナノファイバーを所定の方向に配向させることで、安価でゴム弾性が良好な発泡ゴム成形体が得られることを見出した。通常、ゴム系材料において、充填剤の配合量が多くなると、ゴム弾性が低下するが、本発明では、充填剤を多く含む発泡ゴム成形体において、平均繊維長が700nm以上のバイオマスナノファイバーを所定の方向に配向させることで、ゴム弾性を高めることができた。或いは、ゴム成分、バイオマスナノファイバー及び充填剤を含む発泡ゴム成形体において、ゴム成分100質量部に対して、充填剤の配合量を85質量部以上300質量部以下とし、隣り合う測定方向同士がなす角度が30度となる6つの方向において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さの中で最大の引張強さ(Tmax)を600kPa以上にしつつ、Tmaxと前記Tmaxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さ(T2)の比(Tmax/T2)を1.16以上にすることで、安価でゴム弾性が良好な発泡ゴム成形体が得られることを見出した。通常、ゴム系材料において、充填剤の配合量が多くなると、ゴム弾性が低下するが、本発明では、充填剤を多く含む発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーにて引張強さに異方性を持たせることで、ゴム弾性を高めることができた。発泡ゴム成形体において、引張強さが異方性を有することは、バイオマスナノファイバーが所定の方向に配向しているからであると推測される。
【0022】
前記発泡ゴム成形体は、少なくともゴム成分、バイオマスナノファイバー及び充填剤を含む。
【0023】
前記ゴム成分は、特に限定されないが、バイオマスナノファイバーの分散性を高め、所定の方向に配向させやすい観点から、天然ゴムを5質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは7質量%以上含み、さらに好ましくは10質量%以上含み、さらにより好ましくは20質量%以上含み、さらにより好ましくは25質量%以上含み、特に好ましくは30質量%以上含む。また、前記ゴム成分に占める天然ゴム成分の割合の上限は特に限定されず、ゴム成分に占める天然ゴムの割合が100質量%であっても差し支えないが、例えば、耐熱性、耐油性、耐候性及び生産コスト等の観点から、前記ゴム成分は、天然ゴムを90質量%以下含むことが好ましく、80質量%以下含むことがより好ましく、75質量%以下含むことがさらにより好ましく、さらにより好ましくは60質量%以下含み、特に好ましくは50質量%以下含む。具体的には、前記ゴム成分は、天然ゴムを5質量%以上90質量%以下含むことが好ましく、5質量%以上75質量%以下含むことがより好ましく、7質量%以上60質量%以下含むことがより好ましい。
【0024】
前記ゴム成分は、天然ゴムに加えて、合成ゴムを含んでもよい。前記ゴム成分は、特に限定されないが、例えば、耐熱性、耐油性、耐候性及び生産コスト等の観点から、天然ゴムを10質量%以上90質量%以下、合成ゴムを10質量%以上90質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは天然ゴムを20質量%以上80質量%以下、合成ゴムを20質量%以上80質量%以下含み、特に好ましくは天然ゴムを25質量%以上70質量%以下、合成ゴムを30質量%以上75質量%以下含み、最も好ましくは天然ゴムを30質量%以上60質量%以下、合成ゴムを40質量%以上70質量%以下含む。
【0025】
前記合成ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム等が挙げられる。前記ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。前記非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(イソブチレンイソプレンゴムとも称される、IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルの共重合体(GCO)及びエチレンオキシドとエピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルの三元共重合体(GECO)が含まれる)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。前記合成ゴムは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記合成ゴムは、特に限定されないが、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0027】
前記バイオマスナノファイバーは、平均繊維長が700nm以上であり、所定の方向に配向しやすい観点から、好ましくは800nm以上であり、より好ましくは1000nm以上であり、さらに好ましくは1500nm以上であり、特に好ましくは1800nm以上であり、最も好ましくは2000nm以上である。また、前記バイオマスナノファイバーは、特に限定されないが、分散性を高める観点から、平均繊維長が、20000nm以下であることが好ましく、8000nm以下であることがより好ましく、さらにより好ましくは5000nm以下であり、特に好ましくは4000nm以下であり、最も好ましくは3500nm以下である。具体的には、前記バイオマスナノファイバーは、平均繊維長が800nm以上20000nm以下であることが好ましく、800nm以上8000nm以下であることがより好ましく、1000nm以上5000nm以下であることがさらに好ましく、1500nm以上5000nm以下であることがより好ましい。
【0028】
前記バイオマスナノファイバーは、特に限定されないが、例えば、所定の方向に配向しやすいという観点から、平均繊維径が1nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上80nm以下であり、特に好ましくは15nm以上60nm以下である。
【0029】
本発明において、「バイオマスナノファイバーの平均繊維長及び平均繊維径」は、高倍率、例えば、好ましくは10000倍以上、より好ましくは20000倍以上で鮮明な画像が得られる顕微鏡を用いてバイオマスナノファイバーを観察し、得られた画像から100本の繊維について解析し、100本の算術平均を算出して求めることができる。バイオマスナノファイバーの平均繊維長及び平均繊維径の測定には、10000倍以上の倍率において十分に鮮明な画像が得られる顕微鏡であれば特に限定されることはないが、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)や、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いることができる。なお、バイオマスナノファイバーが枝分かれしている場合、繊維長は繊維径が最も大きい枝を含む繊維の繊維長を意味する。また、バイオマスナノファイバーの繊維長が長く、顕微鏡の所定の倍率における1つの画面で観察できない場合は、ソフトウェア上で複数画面を連結して得られた全体像を利用して繊維長を測定することができる。後述する、実施例1の発泡ゴム成形体を作製する際に用いたセルロースナノファイバーの水分散液(株式会社スギノマシン製のセルロースナノファイバー「商品名BiNFi-s(登録商標)、品番:IMa-10005」)に含まれるセルロースナノファイバーをショットキー電界放出形走査電子顕微鏡にて50000倍に拡大して観察した写真を
図1に示す。また、後述する、比較例3の発泡ゴム成形体を作製する際に用いたセルロースナノファイバーの水分散液(株式会社スギノマシン製のセルロースナノファイバー「商品名BiNFi-s(登録商標)、品番:FMa-10005」)に含まれるセルロースナノファイバーをショットキー電界放出形走査電子顕微鏡にて50000倍に拡大して観察した写真を
図2に示す。
【0030】
前記バイオマスナノファイバーは、例えば、所定の方向に配向しやすいという観点から、平均繊維長と平均繊維径の比率(平均繊維長/平均繊維径)が10以上10000以下の範囲であることが好ましく、10以上2000以下の範囲であることがより好ましく、15以上500以下の範囲であることがさらにより好ましく、25以上250以下の範囲であることが特に好ましく、30以上200以下のものが最も好ましい。
【0031】
前記バイオマスナノファイバーとしては、生物由来の原料を微細化することで得られる、繊維径が1nm以上1000nm以下、アスペクト比(繊維長/繊維径)が5以上10000以下の微小な繊維状物質のことを指す。前記バイオマスナノファイバーとしては、例えば、セルロースナノファイバー(以下、CNFとも称す。)、セルロースナノクリスタル(CNC)、セルロースナノウィスカー(CNW)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、酢酸菌などの微生物が生成するバクテリアナノファイバー等が挙げられる。前記セルロースナノファイバーは、例えば、植物や木材の細胞壁を構成する繊維状のセルロースを、粉砕、化学処理(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカルやその誘導体を用いた化学処理が例として挙げられる。)、解繊することで得ることができる。また、セルロースナノファイバーの一種であり、酢酸菌などの微生物が生成するバクテリアナノファイバー(BNF、バクテリアセルロース(BC)、バクテリアセルロースナノファイバーとも称される。)は、酢酸菌などの微生物を廃グリセリンや糖類を含む培地で培養することで、微生物が走行する際に合成、排出するセルロースリボンから得ることができる。前記キチンナノファイバーは、例えば、カニやエビといった各種甲殻類の殻を原料とし、これらを粉砕、解繊することで得ることができる。前記キトサンナノファイバーは、例えば、カニやエビといった各種甲殻類の殻を原料とし、これらを粉砕、アルカリ処理による脱アセチル化したものを解繊することで得ることができる。前記バイオマスナノファイバーは、表面を疎水性に改質したバイオマスナノファイバーであってもよい。前記バイオマスナノファイバーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記バイオマスナノファイバーは、入手の容易さ、種類が豊富にあることからセルロースナノファイバーを含むことが好ましい。セルロースナノファイバーは、表面を疎水性に改質したセルロースナノファイバーであってもよい。また、前記セルロースナノファイバーは、アスペクト比が10以上10000以下の範囲であることが好ましく、10以上2000以下の範囲であることがより好ましく、15以上500以下の範囲であることがより好ましく、25以上250以下の範囲であることが特に好ましく、30以上200以下のものが最も好ましい。
【0033】
前記発泡ゴム成形体は、特に限定されないが、硬さ(硬度)や圧縮時の硬さ(圧縮応力)が求められる用途、例えば、水や潤滑油などの浸入を防ぐゴム弾性シール材、特に自動車及び鉄道車両等の各種車両用のシール材として用いる場合は、バイオマスナノファイバー含有量は0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.005質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.008質量%以上2.3質量%以下が特に好ましく、0.01質量%以上1質量%未満が最も好ましい。
【0034】
前記セルロースナノファイバー等のバイオマスナノファイバーは、取扱い性の観点から、その親水性を利用し、水や、エタノールを始めとする各種アルコールといった極性のある液体(極性溶媒)に分散させた状態のものを用いることができる。勿論、固体微粉末状としたものを用いることも可能である。また各種ゴム成分に混ぜる際の分散性を向上させるため、化学修飾したバイオマスナノファイバーとしてもよいし、カップリング剤を添加してもよい。化学修飾したバイオマスナノファイバーとしては、特に限定されないが、例えば、セルロースナノファイバー表面の水酸基に対し、アセチル基等のアルカノイル基を導入した、化学修飾セルロースナノファイバー等の表面を疎水性に改質したセルロースナノファイバー等が挙げられる。カップリング剤は、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤や、公知の他のカップリング剤等を用いることができる。
【0035】
前記発泡ゴム成形体は、ゴム成分100質量部に対して充填剤を85質量部以上300質量部以下含む。前記発泡ゴム成形体は、コスト及びゴム弾性の観点から、ゴム成分100質量部に対して充填剤を90質量部以上250質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは95質量部以上200質量部以下含み、特に好ましくは100質量部以上180質量部以下含み、最も好ましくは100質量部以上150質量部以下含む。
【0036】
前記充填剤(補強剤とも称されることがある。)としては、特に限定されず、ゴム系材料に用いるものを適宜用いることができる。前記充填剤としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、カーボンブラック(CB)、ホワイトカーボン、タルク、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、マイカ等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
前記発泡ゴム成形体は、また、加硫剤及び発泡剤を含む。また、必要に応じて、公知の加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤(焼け防止剤、リターダーとも称す。)、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、軟化剤、難燃剤、帯電防止剤等を含むことができる。
【0038】
前記発泡ゴム成形体に使用する加硫剤は、特に限定されず公知のものを用いることができる。前記加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄等の種類がある。)、塩化硫黄、二塩化硫黄、セレン、テルル等の無機系加硫剤、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の含硫黄有機化合物、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン等の金属酸化物系の加硫剤、アルキルフェノール樹脂、変性アルキルフェノール樹脂といった樹脂系加硫剤、ヘキサメチレンジアミンカルバメートを始めとするポリアミン系加硫剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートといった過酸化物系加硫剤(過酸化物系架橋剤、PO加硫剤、PO架橋剤、パーオキサイド加硫剤、パーオキサイド架橋剤とも称される。)、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシムといったキノイド系加硫剤(キノイド加硫剤、キノイド系架橋剤、キノイド架橋剤とも称される)等が挙げられる。これらの加硫剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの加硫剤は、ゴム成分に応じて適宜に選択して使用してもよい。
【0039】
前記発泡ゴム成形体において加硫剤の含有量は特に限定されず、用途等に応じて調整することができるが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0040】
前記加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、グアニジン系、チオ尿素系(チオ尿素系化合物又はチオウレア系化合物とも称される。)、チアゾール系、チウラム系(チウラム系化合物とも称される。)、ジチオ酸塩系、キサンテート系、スルフェンアミド系(スルフェンアミド系化合物とも称される)等が挙げられる。前記グアニジン系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジフェニルグアニジン、N,N’-ジオルトトリルグアニジン等を用いることができる。前記チオ尿素系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンチオ尿素(2-メルカプトイミダゾリン)、N,N’-ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素等を用いることができる。前記チウラム系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等を用いることができる。前記キサンテート系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、キサントゲン酸塩及びその誘導体等を用いることができる。前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等を用いることができる。前記加硫促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0041】
前記発泡ゴム成形体において加硫促進剤の含有量は特に限定されず、用途等に応じて適宜調整することができるが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.2質量部以上5質量部以下の割合になるように添加してもよく、0.3質量部以上3質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0042】
前記加硫助剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、鉛丹、酸化カルシウムといった金属酸化物の加硫助剤、ステアリン酸やオレイン酸、ステアリン酸亜鉛等の各種脂肪酸やその金属塩、トリエタノールアミンやジエチレングリコール等が挙げられる。前記加硫助剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記発泡ゴム成形体において加硫助剤の含有量は特に限定されないが、例えばゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0043】
前記発泡ゴム成形体においては、加硫用添加剤、すなわち、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤及び加硫遅延剤を、製造方法や得られる発泡ゴム成形体の用途に応じて適宜調整して使用することができる。前記発泡ゴム成形体は、加硫用添加剤、すなわち、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤及び加硫遅延剤を合計で、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下の割合になるように添加してもよいし、0.5質量部以上40質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上30質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0044】
前記加工助剤は、原料となるゴム成分に各種添加剤を加えて混練する際の加工性を向上させるために添加される。前記加工助剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、硫黄ファクチス、塩化硫黄ファクチス、水素添加した菜種油を原料にした硫黄ファクチス、白色ワセリン、パラフィンワックス等が挙げられる。前記高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。前記加工助剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記発泡ゴム成形体において加工助剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.25質量部以上30質量部以下の割合になるように添加してもよく、0.5質量部以上25質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0045】
前記軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、塩素化パラフィン以外のパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、塩素化リン酸エステル系化合物以外のリン酸エステル系オイル、エステル系オイル、石油樹脂、植物油、液状ゴム、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等が挙げられる。前記軟化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記発泡ゴム成形体において軟化剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合となるように添加してもよく、10質量部以上55質量部以下の割合になるように添加してもよく、12質量部以上50質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0046】
前記発泡ゴム成形体においては、加工用添加剤、すなわち加工助剤、軟化剤及び老化防止剤を、製造方法や得られる発泡ゴム成形体の用途に応じて適宜調整して使用することができる。前記発泡ゴム成形体は、加工用添加剤、すなわち、加工助剤、軟化剤及び老化防止剤を合計で、ゴム成分100質量部に対し、5質量部以上100質量部以下の割合になるように添加してもよいし、10質量部以上85質量部以下の割合になるように添加してもよいし、12質量部以上75質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0047】
前記ゴム成分、バイオマスナノファイバー、充填剤、及びその他の添加剤を混合してゴム組成物にする際、発泡剤も加えて混練し、得られたゴム組成物を加圧・加熱した際に前記発泡剤が発泡することで発泡ゴム成形体となる。
【0048】
前記発泡剤は特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等といった無機系発泡剤の他、各種有機系発泡剤も使用できる。本発明の発泡ゴム成形体においては、有機系発泡剤を使用することが好ましい。
【0049】
前記有機系発泡剤としては、特に限定されず公知の有機系発泡剤を使用することができる。前記有機系発泡剤としては、例えば、ニトロソ系発泡剤、アゾ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤等が挙げられる。
【0050】
前記ニトロソ系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等を用いることができる。前記N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンとしては、永和化成工業株式会社製の「セルラーD(登録商標)」、大内新興化学工業株式会社製のスポンジペーストNo4、三協化成株式会社製の「セルマイク(登録商標)A」等の市販品を用いることができる。
【0051】
前記アゾ系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアゾアミンベンゼン、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等を用いることができる。前記アゾ系発泡剤としては、例えば、永和化成工業株式会社製の「ビニホール(登録商標)AC」及び「ビニホール(登録商標)AZ」、大塚化学株式会社 製の「ユニフォーム(登録商標)AZ」、三協化成株式会社製の「セルマイク(登録商標)C」等の市販品を用いることができる。
【0052】
前記ヒドラジド系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等を用いることができる。前記ヒドラジド系発泡剤としては三協化成株式会社製の「セルマイク(登録商標)S、SX、SX-H」、永和化成工業株式会社製「ネオセルボン(登録商標)」等が挙げられる。本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体では、ヒドラジド系発泡剤を使用することが好ましい。
【0053】
前記発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0054】
前記発泡剤は、発泡剤の分解温度を下げるため、亜鉛華や尿素等の発泡助剤と併用することがよい。
【0055】
前記発泡ゴム成形体において発泡剤(発泡助剤を含む)の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、7質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0056】
前記発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーを添加する方法は特に限定されず、例えば、ゴム成分に直接添加してゴム成分と混練してもよく、バイオマスナノファイバーを高濃度で含むマスターバッチを作製して用いてもよい。例えば、バイオマスナノファイバー(表面を疎水性に改質したバイオマスナノファイバーを含む)が粉末状であるか、乾燥した状態のものであれば、ゴム成分に直接添加し、ゴム成分と混練してもよい。バイオマスナノファイバーが水に分散している水分散液(例えば、ゲル状の分散液を挙げることができ、入手可能なものとしては株式会社スギノマシンより入手可能なBiNFi-s(登録商標)、第一工業製薬株式会社より入手可能なレオクリスタ(登録商標)、王子ホールディングス株式会社より入手可能なアウロ・ヴィスコ(登録商標)などが挙げられる。)を用いる場合は、該バイオマスナノファイバーの水分散液と、天然ゴムや、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックスを用いてバイオマスナノファイバーを高濃度で含むマスターバッチを作製し、得られたマスターバッチと、充填剤及びその他の添加剤を混合して混練することができる。また、必要に応じて、得られたマスターバッチと、合成ゴム、充填剤及びその他の添加剤を混合して混練することができる。また、バイオマスナノファイバーが無極性の液体、例えば各種有機溶媒や油、各種可塑剤に分散している分散液、特に表面を疎水性に改質したバイオマスナノファイバーが有機溶媒に分散している分散液を用いる場合は、該バイオマスナノファイバーの分散液と天然ゴムやクロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックスを用いてバイオマスナノファイバーを高濃度で含むマスターバッチを作製し、得られたマスターバッチと、充填剤及びその他の添加剤を混合して混練することができるし、発泡ゴム成形体の原料を混練する工程にて、軟化剤や可塑剤として使用する各種オイル(例えばパラフィン系オイルが挙げられる。)の一部を、バイオマスナノファイバーが無極性の液体に分散している分散液に置き換えて添加することで、バイオマスナノファイバーが分散した発泡ゴム成形体の原料を混練することもできる。また、必要に応じて、得られたマスターバッチと、天然ゴム及び/又は合成ゴム、充填剤及びその他の添加剤を混合して混練することができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール系のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。
【0057】
前記発泡ゴム成形体において、セルロースナノファイバー等のバイオマスナノファイバーは、発泡ゴム成形体を製造する際、原料を混練する工程で配向し、得られる発泡ゴム成形体内部においても配向していると推測される。混練工程の後、加硫・発泡工程において、バイオマスナノファイバーはゴム分子を拘束すると考えられ、拘束された方向に対してはゴム組成物の膨張が小さくなり、拘束が弱かった方向に対してはゴム組成物の膨張は大きくなる。バイオマスナノファイバーの配向によりゴム分子を拘束しようとする力が、加硫・発泡前のゴム組成物中において方向により変化し、加硫・発泡工程において膨張度合いの異方性を発現(特定方向に大きく膨張し、別の方向には小さく膨張する)し、発泡ゴム成形体の気泡セル壁面の形状変化や、得られた発泡ゴム成形体において機械的特性の異方性、即ち、特定の方向に対し、補強効果が強く発現し、その方向に対し垂直な方向との引張強度の比が1.16倍以上となる性質を発現させている、と推測される。本発明の発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーを配向した状態で含んでいることで、バイオマスナノファイバーの添加量が微量であっても、発泡ゴム成形体全体が効果的に強化され、充填剤を多めに含んでいても、ゴム弾性を高め、引張強度などの機械的特性を向上することができる。
【0058】
前記発泡ゴム成形体を透過型電子顕微鏡、電界放出形走査電子顕微鏡、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて観察することで、発泡ゴム成形体内部の気泡セルの壁面の形状変化、十分に倍率が高ければ気泡セル壁面に取り込まれたバイオマスナノファイバーを観察することができる。また、セルロースナノファイバー等のバイオマスナノファイバーが所定の方向に配向していることを示唆する痕跡を確認できる。
図3及び
図4は、本発明の一実施例の発泡ゴム成形体を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図3及び
図4では、発泡ゴム成形体の気泡セル壁面において畝状(リブ状)の組織が形成され、畝状の組織が特定の方向に延伸している様子が確認できた。バイオマスナノファイバーを含まない発泡ゴム成形体を走査型電子顕微鏡で観察した
図5及び繊維長が短いバイオマスナノファイバーを含む発泡ゴム成形体を走査型電子顕微鏡で観察した
図6では、発泡ゴム成形体の気泡セル壁面において、
図3及び
図4で確認された畝状の組織が確認できないことから、このような気泡セル壁面の形状変化、構造の変化は、平均繊維長が700nm以上のバイオマスナノファイバーの添加及びその配向によって生じたと推測される。
【0059】
本発明において、前記発泡ゴム成形体は、天然ゴムや、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックスとバイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液を混合して固形化して得られたマスターバッチ(以下において、「バイオマスナノファイバーのマスターバッチ」とも記す。)、充填剤、加硫剤及び発泡剤、並びに必要に応じて天然ゴム、合成ゴム及びその他の添加剤を含むゴム組成物を、加硫発泡させることで作製することができる。バイオマスナノファイバーの分散液は、バイオマスナノファイバーが水に分散した水分散液であってもよく、バイオマスナノファイバーが有機溶媒に分散した分散液であってもよい。特に、表面を疎水性に改質したバイオマスナノファイバーの場合、有機溶媒に分散した分散液として好適に用いることができる。
【0060】
前記バイオマスナノファイバーのマスターバッチに含まれるバイオマスナノファイバーの含有量は特に限定されない。即ち、バイオマスナノファイバーが、マスターバッチ中に均一に分散すればよいため、例えば天然ゴムや、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックス等のバイオマスナノファイバーが分散しやすいラテックスを用いてバイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造する場合、前記マスターバッチ中に含まれるバイオマスナノファイバーの含有量は0.1質量%以上50質量%以下の割合であってもよいし、0.5質量%以上30質量%以下の割合であってもよいし、1質量%以上25質量%以下の割合であってもよい。
【0061】
本発明の発泡ゴム成形体の製造方法において、バイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液の粘度は5500mPa・秒以上70000mPa・秒以下である。バイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液の粘度が上記範囲を満たすことで、天然ゴムや、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックスと均一に混ざりやすく、製造が容易になるだけでなく、バイオマスナノファイバーの濃度にもよるが、平均繊維長が比較的長いバイオマスナノファイバーを多く含む分散液になっていると考えられ、得られる発泡ゴム成形体において、機械的特性が効果的に強化される。本発明の発泡ゴム成形体の製造方法において、バイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液の粘度は6000mPa・秒以上60000mPa・秒以下であると好ましく、7000mPa・秒以上50000mPa・秒以下であるとより好ましく、7300mPa・秒以上45000mPa・秒以下であると特に好ましい。本発明において、バイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液の粘度を測定する際、市販のB型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製、ローターNo.4)を使用して、回転数60rpm、測定温度25℃の条件で測定することができる。
【0062】
本発明の発泡ゴム成形体の製造方法において、バイオマスナノファイバーの水分散液等の分散液におけるバイオマスナノファイバーの濃度は特に限定されないが、バイオマスナノファイバーの濃度が0.05質量%以上50質量%以下であることが好ましい。バイオマスナノファイバーの水分散液において、バイオマスナノファイバーの濃度が上記の範囲を満たすことで分散液等の分散液の取り扱いが容易になるだけでなく、天然ゴムや、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを含む各種ラテックスと均一に混ざりやすく、製造が容易になる。前記バイオマスナノファイバーの分散液において、バイオマスナノファイバーの濃度は0.1質量%以上20質量%以下であると好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるとより好ましく、0.8質量%以上8質量%以下であると特に好ましく、1質量%以上4.5質量%以下であると最も好ましい。
【0063】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、軟化剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤等を含むことができる。加硫剤、発泡剤、加硫促進剤、加硫助剤、加工助剤、軟化剤及び充填剤としては、上述したものを用いることができる。
【0064】
前記ゴム組成物は、ニーダー等を用いて混練することができる。混練後のゴム組成物を、高温、高圧で加硫発泡させて発泡ゴム成形体を得る。前記加硫発泡工程において、温度、圧力、処理時間は特に限定されないが、加工性及び製造コストの観点から、温度は100℃以上200℃以下の範囲であり、圧力は3MPa以上25MPa以下の範囲であり、時間は5分以上60分以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、温度は110℃以上170℃以下の範囲であり、圧力は5MPa以上20MPa以下の範囲であり、時間は10分以上45分間以下の範囲である。また、前記加硫発泡は、一段発泡でもよく、二段発泡でもよいが、二段発泡であることが好ましい。
【0065】
前記バイオマスナノファイバーを含むゴム組成物を高温、高圧で加硫発泡させると、ゴムマトリックス内において、発泡剤によって微細な気泡が発生する。そしてこの気泡が成長する際に、周囲のゴムマトリックスを押しのけて気泡セルを構成する。ゴムマトリックスが押しのけられると共に、その部分に分散しているバイオマスナノファイバーも気泡セル中で所定の方向に配向する。このため、得られた発泡ゴム成形体の各気泡セルは強化され、発泡ゴム成形体のゴム弾性(例えば、100%引張応力)及び強度が高まる。
【0066】
前記発泡ゴム成形体はJIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の100%引張応力が580kPa以上であることが好ましく、600kPa以上であることがより好ましく、640kPa以上であることが特に好ましい。100%引張応力が上述した範囲内であると、発泡ゴム成形体は、ゴム弾性に富み、シール性が高まるとともに、適度に硬くなることから、強度や硬度が求められる用途、例えば、防振ゴム、防音ゴム及びシール材等に好適に用いることができる。前記発泡ゴム成形体において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力の上限については特に限定がないが、1500kPa以下であることが好ましく、より好ましくは1200kPa以下であり、特に好ましくは1000kPa以下である。なお、本発明の発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーにより集中的に強化された方向では、100%引張応力を測定する際、試料が硬くなったことで、伸びが100%に達する前に試料が破断し、測定できない場合がある。このような場合、この方向となす角度が90°となる方向について試料を採取し、100%引張応力が前記範囲を満たせばよい。
【0067】
前記発泡ゴム成形体は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の引張強さが800kPa以上であると好ましく、840kPa以上であるとより好ましく、900kPa以上であると特に好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が適度に硬くなり、強度や硬度が求められる用途、例えば、自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができる。前記発泡ゴム成形体において、JIS K6251:2010に準拠して測定した引張強さの上限については特に限定がないが、2500kPa以下であることが好ましく、2000kPa以下であることがより好ましく、1800kPa以下であることが特に好ましく、1700kPa以下であることが最も好ましい。
【0068】
前記発泡ゴム成形体において、任意の方向を第1方向とし、第1方向に垂直な方向を第2方向とし、第1方向、第2方向、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向(第3方向)、第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向(第4方向)、第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向(第5方向)、及び第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向(第6方向)の6つの方向について、JIS K 6251:2010に準拠して引張強さを測定し、得られた引張強さの中、最大の引張強さをT
maxとし、前記T
maxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さをT
2とした場合、最大の引張強さ(T
max)が600kPa以上であり、T
maxとT
2の比(T
max/T
2)が1.16以上であることが好ましい。前記T
maxは800kPa以上であることがより好ましく、1000kPa以上であることがさらに好ましく、1200kPa以上であることが特に好ましい。また、前記T
maxとT
2の比(T
max/T
2)が1.18以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.25以上であることが最も好ましい。前記T
maxとT
2の比(T
max/T
2)の上限は特に限定されないが、5以下であってもよく、3以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2以下であってもよい。具体的には、
図7に示すように、直線AA'で表される任意の方向を第1方向とし、直線BB'で表される第1方向に垂直な方向を第2方向とし、第1方向、第2方向、矢印C'で表される第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向(第3方向)、矢印D'で表される第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向(第4方向)、矢印E'で表される第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向(第5方向)、及び矢印F'で表される第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向(第6方向)の計6つの方向のそれぞれにおいて切り出した、第1方向の引張試験用試験片a、第2方向の引張試験用試験片b、第3方向の引張試験用試験片c、第4方向の引張試験用試験片d、第5方向の引張試験用試験片e、及び第6方向の引張試験用試験片fを用いて、JIS K 6251:2010に準拠して6つの方向における引張強さを測定し、得られた引張強さの中、最大の引張強さをT
maxとし、前記T
maxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さをT
2とする。
【0069】
前記発泡ゴム成形体は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が45kPa以上であることが好ましく、50kPa以上であることがより好ましく、55kPa以上であることが特に好ましい。これにより、発泡ゴム成形体は、ゴム弾性に富み、シール性が高まるとともに、適度に硬くなり、強度や硬度が求められる用途、例えば、シール材、防振ゴム、防音ゴム等に好適に用いることができる。該実施形態の発泡ゴム成形体において、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力の上限については特に限定がないが、150kPa以下であることが好ましく、130kPa以下であることがより好ましく、125kPa以下であることが特に好ましく、120kPa以下であることが最も好ましい。
【0070】
前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した任意の方向の切断時伸びが25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。強度や硬度が求められる用途、例えば、自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができる。切断時伸びの上限は、特に限定されないが、250%以下であることが好ましく、200%以下であることがより好ましい。
【0071】
前記発泡ゴム成形体において、引張強さは、発泡ゴム成形体を使用する用途に応じて、切断時伸びとのバランスを考慮した値とすることもできる。前記発泡ゴム成形体は、ゴム弾性に富み、高い硬度、高い引張強さが求められるシール材に使用する場合、前記切断時伸びが25%以上250%以下であり、かつ前記引張強さが800kPa以上2500kPa以下であると好ましく、前記切断時伸びが50%以上200%以下であり、かつ前記引張強さが840kPa以上2000kPa以下であるとより好ましく、前記切断時伸びが50%以上150%以下であり、かつ前記引張強さが900kPa以上1700kPa以下であると特に好ましい。
【0072】
前記発泡ゴム成形体は、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)C型を用いて測定した硬度が10以上100以下であることが好ましく、20以上90以下であることがより好ましく、25以上85以下であることが特に好ましい。硬度が上述した範囲内であると、ゴム弾性に富み、シール性が高まることで、自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができる。
【0073】
前記発泡ゴム成形体の見掛密度は、発泡ゴム成形体に含まれるゴム成分の種類によって左右されるため特に限定されないが、例えば、軽量性の観点から、JIS K 6767:1999において準用するJIS K 7222:2005に準拠して測定した見掛密度が0.30g/cm3以下であることが好ましく、0.25g/cm3以下であることがより好ましく、0.20g/cm3以下であることが特に好ましく、0.18g/cm3以下であることが最も好ましい。自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができ、車両全体の軽量化に寄与しうる。
【0074】
前記発泡ゴム成形体は、シール性及びシール材として用いた場合の寿命の観点から、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが35%以上60%以下であることが好ましく、40%以上55%以下であることがより好ましい。
【0075】
前記発泡ゴム成形体は、ゴム弾性が高く、硬度及び強度も良好であることから、自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
まず、セルロースナノファイバーの水分散液(株式会社スギノマシン製セルロースナノファイバー「商品名BiNFi-s(登録商標)、品番:IMa-10005」、セルロースナノファイバーを5質量%含有する水分散液、粘度:35000mPa・秒、平均繊維径:40nm、平均繊維長:2300nm、平均繊維長と平均繊維径の比(平均繊維長/平均繊維径):57.5)を用い、該セルロースナノファイバーの水分散液と、天然ゴムのラテックス(固形分60質量%、エスアンドエスジャパン株式会社より購入した、アンモニア含有天然ゴムラテックス)を、天然ゴム100質量部に対してセルロースナノファイバーが2.3質量部になるように混合し、撹拌、固形化し、その後乾燥させて、マスターバッチを得た。得られたセルロースナノファイバーのマスターバッチは、天然ゴム100質量部に対してセルロースナノファイバーを2.3質量部含んでいた。
【0078】
次に、下記表1に示す配合割合で、セルロースナノファイバーのマスターバッチと、その他の添加剤を混合し、ニーダーを用いて60分間混練した。
【0079】
得られたゴム組成物を常温で24時間熟成させた後、押出機で押出し、未加硫シートを得た。前記未加硫シートを120℃に加熱した金型の中に入れ、プレス機で加圧(圧力10MPa)しながら18分間プレス加硫し、発泡させた(一次加硫)。次に、155℃に加熱した金型の中に入れ、プレス機で加圧(圧力10MPa)しながら15分間プレス加硫し、発泡させ(二次加硫)、発泡ゴム成形体を得た。
【0080】
(実施例2)
一次加硫において、加硫時間を16分間にした以外は、実施例1と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0081】
(比較例1)
セルロースナノファイバーを添加せず天然ゴムラテックスを固形化したこと、及び下記表1に示す配合割合で、天然ゴムと各種添加剤を混合した以外は、実施例1と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0082】
(比較例2)
セルロースナノファイバーを添加せず天然ゴムラテックスを固形化したこと、及び下記表1に示す配合割合で、天然ゴムと各種添加剤を混合した以外は、実施例2と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0083】
(比較例3)
セルロースナノファイバーの水分散液として、株式会社スギノマシン製セルロースナノファイバーの水分散液(「商品名BiNFi-s(登録商標)、品番:FMa-10005」、セルロースナノファイバーを5質量%含有する水分散液、粘度:5000mPa・秒、平均繊維径:20nm、平均繊維長:550nm、平均繊維長と平均繊維径の比(平均繊維長/平均繊維径):27.5)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0084】
実施例1、2及び比較例1~3で得られた発泡ゴム成形体の物性を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。実施例1、実施例2、及び比較例3の発泡ゴム成形体を作製する際に用いたセルロースナノファイバーの水分散液に含まれるセルロースナノファイバーをショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製のショットキー電界放出形走査電子顕微鏡、品番:JSM-7001F)で観察し、セルロースナノファイバーの繊維長及び繊維径を測定した。また、
図3に、実施例1の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番「S-3000N」)で観察した写真(2000倍)、
図4に同写真(5000倍)を示した。
図5及び
図6に、それぞれ、比較例1及び比較例3の発泡ゴム成形体を走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番「S-3000N」)で観察した写真(5000倍)を示した。
【0085】
(引張強さ)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が切断したときの引張強力の値を測定し、引張強さとした。
図7に示すように、直線AA'で表される任意の方向を第1方向とし、直線BB'で表される第1方向に垂直な方向を第2方向とし、第1方向、第2方向、矢印C'で表される第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向(第3方向)、矢印D'で表される第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向(第4方向)、矢印E'で表される第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向(第5方向)、及び矢印F'で表される第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向(第6方向)の計6つの方向のそれぞれにおいて切り出した、第1方向の引張試験用試験片a、第2方向の引張試験用試験片b、第3方向の引張試験用試験片c、第4方向の引張試験用試験片d、第5方向の引張試験用試験片e、及び第6方向の引張試験用試験片fを用いて、JIS K 6251:2010に準拠して6つの方向における引張強さを測定し、得られた引張強さの中、最大の引張強さをT
maxとし、前記T
maxとなった引張強さが測定された測定方向に対してなす角度が90度となる測定方向で測定した引張強さをT
2とした。
【0086】
(100%引張応力)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が100%伸長したときの引張応力の値を測定し、100%引張応力とした。なお、上記引張強さの測定において、引張強さが最大となった測定方向(以下において、最大方向とも記す。)に対してなす角度が垂直となる方向(以下において、垂直方向とも記す。)の100%引張応力を測定した。
【0087】
(切断時伸び)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が切断したときの試料の長さ(試料の固定に用いたチャック間の長さ)を測定し、元の試料片の長さから試料の切断時伸びを計算した。なお、上記引張強さの測定において、引張強さが最大となった測定方向(以下において、最大方向とも記す。)と、最大方向に対してなす角度が垂直となる方向(以下において、垂直方向とも記す。)の切断時伸びを測定した。
【0088】
(25%圧縮応力)
JIS K 6767:1999に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6767:1999に準拠し、試験片(20mm×20mm×20mm)を圧縮速度10mm/minで圧縮し、25%ひずみ時、即ち、試料の厚さが元の厚さの75%となったときの圧縮応力を測定した。
【0089】
(50%圧縮永久ひずみ)
JIS K 6767:1999に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6767:1999に準拠し、まず、常温(23±2℃)にて、試験片(20mm×20mm×5mm)を用意し、初期厚さ(T0)を測定した。次に、初期厚さ(T0)から50%歪ませた状態、即ち厚さが初期厚さの半分になる状態に荷重を加えて圧縮し、22時間放置した。22時間圧縮した後、荷重を除くことで圧縮を開放し、圧縮を開放してから(荷重を除いてから)30分後の厚さ(T30m)を、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定し、下記式で、50%圧縮永久ひずみを算出した。
30分後50%圧縮永久ひずみ(%)=[(T0-T30m)/T0]×100
【0090】
(硬度)
高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)C型で測定した。具体的には、試験片の厚さが10mm以上20mm以下の部分を選択し、その場所で硬度を測定した。なお、試験片の厚さが10mm未満の場合は試験片を重ねて厚さが前記範囲になるように調整した。このとき試験片を重ねる枚数は3枚以下とした。
【0091】
(見掛密度)
JIS K 6767:1999において準用するJIS K 7222:2005に準拠して測定した。
【0092】
【0093】
図3及び
図4の結果から分かるように、平均繊維長が700nm以上のセルロースナノファイバーを用いた実施例では、発泡ゴム成形体の気泡セル壁面において畝状(リブ状)の組織が形成され、畝状の組織が特定の方向に延伸している様子が確認できたこと、及び、引張強さの測定値が測定方向によって大きく変化することが確認されたことから、平均繊維長が700nm以上のセルロースナノファイバーが所定の方向に配向していると考えられる。一方、
図5から分かるように、セルロースナノファイバーを含まない比較例1では、
図3、
図4で観察された畝状の組織は観察されず、表1にも示すように発泡ゴム成形体の引張強さにおいて方向依存性(異方性)が見られないことから、
図3及び4に示した実施例1の発泡ゴム成形体の気泡セル壁面に発生した構造の変化は平均繊維長が700nm以上のバイオマスナノファイバーの添加により引き起こされ、添加したバイオマスナノファイバーが一方向に配向していると推測される。また、繊維長の短いセルロースナノファイバーを用いた比較例3では、
図3及び
図4で確認された発泡ゴム成形体の気泡セル壁面の変化は確認できないことが
図6から分かる。加えて、引張強さの測定値が測定にほとんど依存せず一定であることから、比較例3の発泡ゴム成形体では添加した平均繊維長が550nmのセルロースナノファイバーは特定方向に配向せず、ランダムに分散していると考えられる。
【0094】
表1から分かるように、実施例1、2の発泡ゴム成形体は、比較例1~3の発泡ゴム成形体に比べて100%引張応力が高く、高いゴム弾性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の発泡ゴム成形体は、機械的強度に優れ、耐久性も高く、製造コストにも優れるため、各種シール材、特に、自動車及び鉄道車両等の車両用のシール材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
AA' 第1方向
BB’ 第2方向
C' 第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で30度の方向(第3方向)
D' 第1方向から第2方向に向けて時計回り方向で60度の方向(第4方向)
E' 第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で30度の方向(第5方向)
F' 第1方向から第2方向に向けて反時計回り方向で60度の方向(第6方向)
a 第1方向の引張試験用試験片
b 第2方向の引張試験用試験片
c 第3方向の引張試験用試験片
d 第4方向の引張試験用試験片
e 第5方向の引張試験用試験片
f 第6方向の引張試験用試験片