(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ポンプ装置及びサイクロン型水処理装置
(51)【国際特許分類】
B04C 3/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B04C3/00 A
(21)【出願番号】P 2018235880
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509299444
【氏名又は名称】シップスレインワールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100183715
【氏名又は名称】中村 康治
(72)【発明者】
【氏名】中山 義光
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-237061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00-11/00
C02F 1/38
F04B 53/20
F04D 29/70
B01D 21/26
E03B 3/08
E03B 5/04
E03B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプに係続され、そのポンプにより吸い込まれる液体中の異物を除去する装置であって、横断面が円形を有して上下方向に延びる円筒部を上部に、下に向かうに従って直径が縮径する円錐部を下部にして一体係合した本体部と、その本体部の上端開口を塞ぐ天板と、その天板の中央部を貫通して上下方向に伸びる
上端に流出口を有する流出管と、円錐部の下部に渦動管を備え、
渦動管の下端には、液体の吸い込みと分離した異物を排除する流入口を有することを特徴とするサイクロン型水処理装置。
【請求項2】
前記渦動管の内部に羽根部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のサイクロン型水処理装置。
【請求項3】
前記羽根部材が回転することを特徴とする請求項2に記載のサイクロン型水処理装置。
【請求項4】
液体を汲み上げるポンプと、そのポンプに接続された請求項1ないし3のいずれかに記載のサイクロン型水処理装置と、を備えたことを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプにより汲みあげる地下水、河川水等の自然水に混入する異物を除去する装置及びそれを備えたポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下水、河川水等を生活水や雑用水として使用するのにポンプが使用され、電動モーターで駆動するポンプや手押しポンプ等、種々の態様のポンプがある。何れの態様のポンプにおいても、この汲みあげられる自然水にスラッジ、砂、小石等の異物が混入しているとポンプの摺動部に異物が入り込み磨耗による汲み上げ能力の低下や噛込みによるポンプのブロック等、様々な問題が生じる。そのため、液体中に含まれる異物を取り除く必要があり、その手段として例えば遠心力で分離除去する液体サイクロン技術などが存在する。
【0003】
このサイクロン技術は、例えば、下記の特許文献1、又は2に記載されているサイクロン装置のように、上部が円筒形で下部に向かうに従って縮径する円錐形のサイクロン型の異物除去装置に液体を吸い込み、遠心分離により液体中に混入している異物を除去する手段である。これによると、ポンプの吸引により流速を生じた液体を装置上部の流入口から取り入れ、装置本体の内周壁に沿って渦巻流を起こして下方に向かい、下方に向かうほど渦巻流の速度が大きくなって遠心力が増大することで異物を分離するものである。
【0004】
このように、従来のサイクロン型の異物除去装置は、流入口が装置上層部の側辺にあり、流出口が装置天板の中央部に位置していることかから液体の流れは装置の上層部から入り、渦巻流となって一旦下層部に向かい、下層から装置内の中央を上昇して流出口から流出されるのを特長とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-90268号公報
【文献】特開2010-240508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構造の異物除去装置は、下端部に開閉弁やダストタンク、又は排出口を設ける必要があり、これらの開閉弁等には、稼働中に分離した異物が集積するためそれを除去する必要があった。
【0007】
開閉弁の場合、非稼動時に弁を開放して集積した異物を落下させるが、その際異物が詰まって十分な機能が発揮できないことが発生し、またダストタンクや排出口の場合には一定期間の経過後にタンク内に集積した異物を除去するためのメインテナンスが必要であるという問題があった。
【0008】
また、下端部に開閉弁等を設けた異物除去装置は、下端部に流入口を設けることができない構造となっており、装置上層部の側辺部に流入口を備えている。このため他のラインとの接続上、細いパイプを使用した井戸などへの適用には困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、装置下部から液体を流入して、開閉弁やダストタンクを備える必要がなく、構造が単純で、細いパイプを使用した井戸にも適用できるサイクロン型水処理装置とそれを備えたポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明に係るサイクロン型水処理装置は、ポンプに係続され、そのポンプにより吸い込まれる液体中の異物を除去する装置であって、横断面が円形を有して上下方向に延びる円筒部を上部に、下に向かうに従って直径が縮径する円錐部を下部にして一体係合した本体部と、その本体部の上端開口を塞ぐ天板と、その天板の中央部を貫通して上下方向に伸びる上端に流出口を有する流出管と、円錐部の下部に渦動管を備え、渦動管の下端には、液体の吸い込みと分離した異物を排除する流入口を有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明に係るサイクロン型水処理装置は、請求項1に記載の渦動管の内部に羽根部材を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明に係るサイクロン型水処理装置は、請求項2に記載の羽根部材が回転することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載されたポンプ装置は、液体を汲み上げるポンプとそのポンプに接続された請求項1ないし3のいずれかに記載のサイクロン型水処理装置を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置下端部に開閉弁やダストタンクを設ける必要がなく、メインテナンスが不要であり構造が単純で、細いパイプを使用した井戸にも適用できるサイクロン型水処理装置及びそれを備えたポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一態様であるポンプ装置が井戸に配置された状態(一部断面図)を示す正面図である。
【
図2】
図2はポンプ装置のサイクロン型水処理装置を示す正面断面図である。
【
図3】
図3はサイクロン型水処理装置の渦動管を示す正面図、断面図であり、
図3(a)は固定羽根、
図3(b)は回転羽根を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るポンプ装置及びサイクロン型水処理装置を
図1~3に基づいて説明する。
【0017】
図1には、一実施例として井戸30に設置されたポンプ装置が図示されている。
このポンプ装置は、手動式の手押しポンプ50と、楊水管20と、サイクロン型水処理装置1から構成される。地上に設置された手押しポンプ50には、井戸30の中に延設された楊水管20が連結され、揚水管20の先端部にはサイクロン型水処理装置1が接続されている。
【0018】
手押しポンプ50を作動すると揚水管20の先端部に接続されているサイクロン型水処理装置1の流入口9から井戸水が吸い込まれ、その井戸水は揚水管20を介して上昇し手押しポンプ50の吐出口52から吐出される。
【0019】
井戸水がサイクロン型水処理装置1の下端の流入口9から吸い込まれると、後述する渦動管5を通過する際、井戸水に渦巻流が発生する。この渦巻流は、
図2に示すように本体部2の円錐部4から円筒部3へ螺旋軌道40を作って上昇していき、流出管7の流出口10から揚水管20へと上昇していく。
【0020】
渦巻流が発生した井戸水が、本体部2の円錐部4と円筒部3を通過する際、その渦巻流の遠心力が増大することで井戸水中に混入した異物が分離される。ポンプ稼動中に遠心力により分離され円筒部3と円錐部4の内周壁16aに押付けられた砂等の異物は、手押しポンプ50の停止時に自重により円筒部3と円錐部4の内周壁16aを滑り落ちて流入口9から落下する。
【0021】
このように本願発明に係る装置は、ポンプ稼動時に井戸水がサイクロン型水処理装置1の下端の流入口9から入り、渦巻流を生じた井戸水の流れが装置内の下部から上方へと一方向に螺旋軌道40を作って上昇し、上部の流出口10から揚水管20へと移動する。その間に遠心分離により井戸水中の砂等の異物が分離・除去されることを最大の特徴とするものである。
【0022】
手押しポンプ50は、操作レバー51を作動すると、その操作レバー51に連動してピストンロッド53の下端に装着されたブラ玉54がポンプ本体シリンダー内で上下に摺動し、本体シリンダーの下部に位置するライト弁55とブラ玉に装着されている弁のサブタ56が交互に開閉して井戸水の汲み上げ吐出を繰り返す。
従って井戸水は、操作レバー51の上下運動による所定の間隔で断続的に汲み上げられる。
【0023】
井戸水がサイクロン型水処理装置1の下端の流入口9から吸い込まれ、その装置内を通過して上端の流出口10に至る間に井戸水は装置内で渦巻流を生じて螺旋軌道40を作って上昇してく。
【0024】
手押しポンプ50の稼動時のサイクロン型水処理装置内での井戸水の過巻流による上昇で、井戸水に混入している異物を遠心分離により分離し、手押しポンプ50の停止時の井戸水の流れの止まった時に分離した異物をサイクロン型水処理装置1の下端部の流入口9から落下させて排除できる。
【0025】
サイクロン型水処理装置1は、
図2に示すように本体部2と、その上部に流出管7、その下部に渦動管5を備えている。
【0026】
本体部2は、上下方向に延びた横断面形状が円形の筒状から成る円筒部3と円錐部4から構成される。円筒部3は、本体部2の上部に設けられ、直径が同径の真直ぐに延びた筒であり、円錐部4は本体部の下部に設けられ、円筒部3の下端から下方に向かうに従って直径が縮径された形状を有する。
【0027】
本体部2の上端開口は天板6によって塞がれるとともに、天板6には流出管7が設けられている。
流出管7は、円筒状を成し、
図2に示すように、本体部2の天板6の中央部を貫通して上下方向に延びている。上方に延びた流出管7の上端部は、揚水管20に接続され、下方に延びて本体部内に位置する流出管7の下端部は、開口して本体部2から流出管7への水の流入を許容する。
【0028】
本体部2から上方へ延びた流出管7の上端部には、その開口周縁に半径方向外向きのフランジ8aが形成され、揚水管20のフランジ8bにボルト21によって着脱可能に結合されている。流出管7が揚水管20に連通させられることで、サイクロン型水処理装置1が揚水管20を介して手押しポンプ50と同軸に接続されることになる。これにより流出管7のフランジ8aが、サイクロン型水処理装置1を手押しポンプ50に接続する接続部を構成し、本ポンプ装置は井戸内に同軸的に配置される。
【0029】
渦動管は、
図3(a)に示すように管状部11と基軸部12と羽根部材13から構成されている。管状部11は、本体下部の円錐部4の下端の直径と同径の円管が同一径を維持して下方向に延設されている。この管状部11の長さは、管状部内に羽根部材13の装着が確保できる距離が維持されていればよい。
【0030】
基軸部12は、管状部11の軸心に位置しており、基軸部12から羽根部材13が管状部11の内周壁16bに延びて基軸部12と管状部11の内周壁16bを繋ぐようにして固定されている。
【0031】
羽根部材13は、例えばパドル型の複数の羽根から構成されており、各羽根が基軸部12の軸線に対して所定の傾斜角を有して内周壁16bの周方向に均等に離間して形成されている。これにより、井戸水が渦動管内の羽根の間を通過する際に渦巻流が発生することになる。
【0032】
このように渦動管内の羽根部材13は、井戸水がサイクロン型水処理装置内に吸引される際に井戸水に渦巻流を発生させることを目的とする。
従って、羽根部材13は、井戸水の渦巻流の発生の誘因に適しているならば羽根の形態や基軸部12の軸線に対する傾斜角を限定するものではない。
【0033】
また、羽根部材13は、2~3枚の羽根で構成されるのが好ましい。ポンプの稼動が停止すると、サイクロン型水処理装置1の内部で発生していた渦巻流の遠心分離により本体部2の内周壁16aに集積していた砂等の異物が遠心力から解放され、自重により内周壁16aを滑り落ちて渦動管5の羽根部材13の間から落下する。この場合、羽根の数が多すぎるとその落下の妨げになる。従って、各羽根の間の空隙をなるべく大きく確保することで異物の落下を容易にしている。
【0034】
また、
図3(b)に示した羽根部材13は回転するものである。この場合は、基軸部12が管状部11の内周壁16bから延びた複数の支持板15により管状部内に固定され、基軸部12に軸支された回転軸14に、例えばパドル型の複数の羽根が装着されている。そして、各羽根が回転軸14の軸線に対して所定の傾斜角を有して内周壁16bの周方向に均等に離間して延びている。
これにより、井戸水が渦動管内の羽根の間を通過するときに羽根が回転し、渦巻流が発生することになる。
【0035】
このように渦動管内の回転する羽根部材13は、井戸水がサイクロン型水処理装置内に吸引されるときに井戸水に渦巻流を発生させることを目的とする。
従って、回転する羽根部材13は、井戸水の渦巻流の発生の誘因に適しているならば羽根の形態や軸線に対する傾斜角を限定するものではない。
【0036】
この回転羽根も固定羽根と同様に2~3枚の羽根で構成されるのが好ましい。
ポンプの稼動が停止すると、サイクロン型水処理装置1の内部で発生していた渦巻流の遠心分離により本体部2の内周壁16aに集積していた砂等の異物が遠心力から解放され、自重により内周壁16aを滑り落ちて渦動管5の静止した羽根部材13の間から落下する。この場合、回転羽根の数が多すぎるとその落下の妨げになる。従って、各回転羽根の間の空隙をなるべく大きく確保することで異物の落下を容易にしている。
【0037】
以上のように、手押しポンプ50を作動するとサイクロン型水処理装置1の渦動管5の流入口9から井戸水を吸引して汲み上げ、井戸水が渦動管5を通過するときに羽根部材13により井戸水に渦巻流を発生させる。
【0038】
渦動管5で発生した渦巻流は、本体部2の円錐部4から円筒部3へと螺旋軌道40を作って上昇していく。この時、渦巻流の遠心力により井戸水中に混入する砂等の異物が本体部2の内周壁16aに押付けられ、本体部2の内周壁16aに分離・集積される。そして異物が除去された井戸水は、流出管7から揚水管20へと上昇していく。
【0039】
手押しポンプ50の作動が停止すると井戸水の本体部2への吸引も停止して羽根部材13により発生した渦巻流のサイクロン型水処理装置内での上昇も停止する。これにより遠心分離により本体部2の内周壁16aに集積されていた砂等の異物が遠心力から開放されて自重により停止した回転羽根13の間から落下してサイクロン型水処理装置内から排出される。
【0040】
このようにポンプ50の作動時による井戸水中の異物の分離とポンプ50の停止時に本体部2から集積された異物を排出することで、ポンプ摺動部への異物の入り込みを防止でき、磨耗によるポンプ50の汲み上げ能力の低下や噛込みによるポンプ50のブロック等の問題を解消できる。
【0041】
なお、本発明に係るサイクロン型水処理装置1を備えたポンプ装置のポンプは、手動式の手押しポンプ50に限られず、自動式の電動ポンプや液中ポンプのであってもよい。また、井戸水に渦巻流を発生させる手段として、渦動管内にスクリュウー型の羽根も使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る装置は、井戸水、地下水を汲み上げて利用する際にそれらの自然水に含まれる異物を取り除くのに用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 サイクロン型水処理装置
2 本体部
3 円筒部
4 円錐部
5 渦動管
6 天板
7 流出管
8a,8b フランジ
9 流入口
10 流出口
11 管状部
12 基軸部
13 羽根部材
14 回転軸
15 支持板
16a,16b 内周壁
20 揚水管
21 ボルト