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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】静電気除去装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/00 20060101AFI20230411BHJP
   H05F 7/00 20060101ALI20230411BHJP
   F16D 65/00 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
H05F3/00
H05F7/00
F16D65/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018231084
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020095801
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518439228
【氏名又は名称】藤林 英世
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤林 英世
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148369(JP,A)
【文献】特開2009-181694(JP,A)
【文献】特開2014-008065(JP,A)
【文献】実開平06-049384(JP,U)
【文献】特許第4048941(JP,B2)
【文献】特許第3466969(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/00
H05F 7/00
F16D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械に装着されて、静電気を除去する静電気除去装置であって、
マイナスイオンを発生する複数のマイナスイオン発生素子と、
前記機械に装着され、前記マイナスイオン発生素子を収納する容器と、
を備え、
前記マイナスイオン発生素子は、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む球体または平板であり、
前記容器は、
外囲部分と、
前記外囲部分の内部を複数の収納領域に区分する仕切り部分と、
前記外囲部分を塞ぐ蓋部分と、
を有し、
前記複数のマイナスイオン発生素子は、前記複数の収納領域のそれぞれの内部に直列に配列された状態で収納され、前記蓋部分が前記外囲部分を塞ぐことで前記容器の内部に密閉されており、
前記マイナスイオン発生素子が発生する前記マイナスイオンにより、前記機械に正の電荷として帯電する静電気を電気的に中和して除電することを特徴とする静電気除去装置。
【請求項2】
前記容器は、複数の前記仕切り部分を有し、
前記複数のマイナスイオン発生素子は、3列以上に配列された状態で前記容器に収納されたことを特徴とする請求項1に記載の静電気除去装置。
【請求項3】
前記容器は、変形可能な導電性を有する金属箔により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の静電気除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械において発生する静電気を除去する静電気除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械には、様々な理由により静電気が発生することがある。例えば、自動車等の車両が走行すると、空気が車両に摩擦接触する状態で流れることから、車両にはプラスの電荷(正の電荷)の静電気が発生する。また、車両が走行すると、車輪の回転に伴ってタイヤの各部分が路面に接触したり離れたりすることを繰り返し、エンジンやブレーキ装置等の構成部品が相対的に運動する。これによっても、プラスの電荷の静電気が発生する。
【0003】
車両は、比較的高い絶縁性を有するタイヤにより地面から電気的に絶縁されているので、このように静電気が発生すると、プラスの電荷が車両の各部分に帯電する。プラスの電荷が車両の各部に帯電すると、車両の各部分の機能に悪影響を与えることがある。あるいは、車両の各部分が本来の性能を十分に発揮できないことがある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、空気イオン変換型自己放電式除電器が設けられた車両の制動力発生装置が開示されている。特許文献1に記載された車両の制動力発生装置では、車両の制動力発生装置に自己放電式除電器を設けて、制動力発生装置内のグリースに帯電する電荷を除去することで、電荷の帯電によりグリースの粘性抵抗が高くなることを防止している。そして、特許文献1に自己放電式除電器は、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象を利用し、負の空気イオンとブレーキディスクに帯電する正の電荷との間において電気的中和を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-148369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象は、ブレーキディスクに帯電する正の電荷に応じて変化する。そのため、負の空気イオンと正の電荷との間において電気的中和を安定的に生じさせるという点においては、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、機械から静電気を安定的に除去あるいは抑制して、静電気発生による機械的損失を低減し、機械の能力を最大限に発揮させることができる静電気除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明によれば、機械に装着されて、静電気を除去する静電気除去装置であって、マイナスイオンを発生するマイナスイオン発生素子と、前記機械に装着され、前記マイナスイオン発生素子を収納する容器と、を備え、前記マイナスイオン発生素子が発生する前記マイナスイオンにより、前記機械に正の電荷として帯電する静電気を電気的に中和して除電することを特徴とする静電気除去装置により解決される。
【0009】
本発明に係る静電気除去装置によれば、容器内に収納されたマイナスイオン発生素子が、容器を通じて容器の外部にマイナスイオンを放出して、機械に正の電荷として帯電する静電気を電気的に中和して除電する。従って、機械から静電気を安定的に除去あるいは抑制して、静電気発生による機械的損失を低減し、機械の能力を最大限に発揮させることができる。また、マイナスイオン発生素子は、容器に収納されているので、機械の運転によっては飛散しない。このため、静電気除去装置は、長期間にわたって安定的に静電気の除去あるいは抑制を行うことができる。
【0010】
本発明に係る静電気除去装置において、好ましくは、前記マイナスイオン発生素子は、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む球体または平板であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る静電気除去装置によれば、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む球体として形成されたマイナスイオン発生素子は、自然の状態(常温静止状態)でマイナスイオンを発生することができる。また、マイナスイオン発生素子は、球体であるため、より多くのマイナスイオンを発生し、機械から静電気を安定的に除去あるいは抑制することができる。
【0012】
本発明に係る静電気除去装置において、好ましくは、前記マイナスイオン発生素子は、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む粉体であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る静電気除去装置によれば、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む粉体として形成されたマイナスイオン発生素子は、自然の状態(常温静止状態)でマイナスイオンを発生することができる。また、マイナスイオン発生素子は、粉体であるため、より狭い空間であっても設置可能とされ、機械から静電気を安定的に除去あるいは抑制することができる。また、塗装用塗料に粉体を混入して対象物の一例であるブレーキキャリパ、ブレーキディスク、ブレーキパッドのバックプレートなどを塗装、着色することにより、さらには、ブレーキキャリパ、ブレーキディスク、ブレーキパッドのバックプレート等の金属部分を鋳造もしくは鍛造にて製造する場合において、原材料の中に粉体を混入して製造することにより、車両から静電気を安定的に除去あるいは抑制することができる。
【0014】
本発明に係る静電気除去装置において、好ましくは、前記容器は、変形可能な導電性を有する金属箔により形成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る静電気除去装置によれば、変形可能な導電性を有する金属箔により容器が形成されているため、静電気除去装置は、機械の外面形状に合わせて容易に変形し、機械の外面に装着可能とされている。また、マイナスイオン発生素子は、導電性を有する金属箔を通じて金属箔の外部にマイナスイオンを継続的かつ安定的に放出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、機械から静電気を安定的に除去あるいは抑制して、静電気発生による機械的損失を低減し、機械の能力を最大限に発揮させることができる静電気除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の例を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の例を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る静電気除去装置を表す図である。
図4】第1実施形態に係る静電気除去装置を表す図である。
図5】本発明者が実施した検討の結果の一例を例示する表である。
図6】本実施形態のマイナスイオン発生素子の各種の形状例を表す図である。
図7】第2実施形態に係る静電気除去装置を表す断面図である。
図8】本実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の他の例を示す斜視図である。
図9】本実施形態に係る静電気除去装置が装着された一般的な車両のエンジン周りの部位の例を示す斜視図である。
図10】本実施形態に係る静電気除去装置が装着されたヒートポンプの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
機械には、様々な理由により静電気が発生することがある。本発明者の得た知見によれば、機械に発生した静電気は、機械に対して少なからず影響を及ぼしている。このような機械に対する静電気の影響を可能な限り抑制することを目的として、本発明がなされた。 本実施形態の静電気除去装置は、機械全般に対して装着可能とされている。本実施形態の機械としては、例えば自動車等の車両、船舶、あるいは産業機械などが挙げられる。本実施形態の説明では、説明の便宜上、静電気除去装置の装着対象物として、車両を例に挙げる。但し、本実施形態に係る静電気除去装置の装着対象物は、車両に限定されるわけではない。
【0020】
[静電気の中和、減衰、除去による液体、気体の流速、流量の向上について]
自動車の冷却水(クーラント)を例に挙げて説明すると、自動車の冷却水は、エンジンの熱により温められ、ウォータポンプにより圧送され、ラジエータホースを通り、ラジエータにて熱を大気中に放出して熱交換を行い、エンジンに戻ってくる。その場合において、冷却水がエンジン内部のウォーターライン内、ラジエータホース内、ラジエータ内などを流れるときに、冷却水と各ラインのホース等の内壁との摩擦により、静電気が発生する。
【0021】
本発明者の得た知見によれば、このような静電気を、中和、減衰、除去することにより、冷却水の流れが良くなり、冷却性能が向上する。これは、自動車や機械類における、作動油、オイル類、エンジンオイルにも該当する。作動油、オイル類、エンジンオイルの場合において、エンジン内部には、高回転で回転するギヤー類やポンプがある。また、エンジン内部には、ピストン、カムシャフト等がある。このような部位には、冷却水の場合と比較して、より高速回転の動きにより多くの静電気が発生する。そのため、静電気除去の効果は、冷却水の場合よりも顕著である。また、液体である内燃機関の燃料においても、同様の効果が得られる。
【0022】
さらに、自動車や機械類においては、エンジンが陰圧にて空気を吸入するため、エアークリーナ(空気吸入部分)のダクトの内壁にも静電気が発生している。エンジンが高回転になるにつれて、陰圧の吸入空気量は増加し、内壁における静電気も増加する。この場合においても、本実施形態に係る静電気除去装置を装着対象部位に貼り付けたり、本実施形態に係る静電気除去装置の粉末を混入した塗料を対象部位の金属に塗布したり、対象部位の金属や樹脂を製造する段階において本実施形態に係る静電気除去装置の粉末を原材料の中に混入したりする方法により、液体、気体が流れるときに発生する静電気の中和、減衰、除去を効果的に行うことができる。
【0023】
また、副次的効果として、液体および気体を細分化(クラスター化)する効果が得られる。これにより、クーラントなどの液体の場合には、本実施形態に係る静電気除去装置は、より円滑な流れと、冷却性能の向上に関与する。さらに、気体の場合には、本実施形態に係る静電気除去装置は、気体と燃料との接触体積の増加により、燃焼効率の向上に関与する。これは、燃焼を爆発エネルギーに変換する燃料においても該当する。本実施形態に係る静電気除去装置は、空気と燃料との接触体積の向上により、燃焼効率の向上および完全燃焼に寄与する。
【0024】
自動車が走行するときに高速で回転するタイヤにおいても、タイヤと路面との摩擦により、膨大な静電気が発生している。静電気が中和、除去されると、タイヤは、本来の路面に対する摩擦性能を発揮することができる。これに対して、本実施形態に係る静電気除去装置の粉末をタイヤ内部に充填したり、本実施形態に係る静電気除去装置をホイール部分に張り付けたり、タイヤ、ホイールの製造時に本実施形態に係る静電気除去装置の粉末を原材料の中に混入したりする方法により、タイヤに発生する静電気を中和、除去することができる。
【0025】
また、自動車が空気中を走行する場合において、車体の外部には膨大な空気摩擦が発生し、静電気が発生している。車体の外部としては、例えば、金属のボディや、フロント、サイド、リヤのガラス部分などが挙げられる。本実施形態に係る静電気除去装置は、例えばアルミテープなどにより静電気を放電しつつ、アルミテープ内に静電気を中和、除去するマイナスイオン発生素子を含有している。そのため、本実施形態に係る静電気除去装置は、より優位に静電気の中和、除去を行うことができる。これにより、本実施形態に係る静電気除去装置は、自動車の設計時の空力性能をより確実に発揮させることができる。
【0026】
[静電気の中和、減衰、除去による金属の剛性向上について]
本発明者の得た知見によれば、金属に対して外部より力が加えられた場合、金属の分子間に静電気が発生している。例えば、金属に対して捻り、回転、圧縮などの外部の力が加えられた場合、金属の分子同士が動く。そのときに、金属の分子間に静電気が発生する。これにより、金属の分子同士の結合力か弱くなり、金属の強度、剛性が低下する。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る静電気除去装置では、本実施形態に係る静電気除去装置を装着対象部位に貼り付けたり、本実施形態に係る静電気除去装置の粉末を混入した塗料を対象部位の金属に塗布したり、対象部位の金属を製造する段階において本実施形態に係る静電気除去装置の粉末を原材料の中に混入したりする方法により、金属が発生する静電気を中和、減衰、除去して、金属の分子同士の結合力を維持あるいは向上させることができる。これにより、金属製品の本来の能力が発揮され、本実施形態に係る静電気除去装置の非装着時よりも強度、剛性が向上する。
【0028】
例えば、自動車のサスペンションに取り付けてあるスタビライザ(アンチロールバー)において、自動車がカーブを曲がろうとして外側に遠心力がかかったときには、外側のサスペンションは遠心力により縮もうとする一方で、内側のサスペンションは伸びようとする。なお、このときの傾きを抑制するために、サスペンションは、スプリングを有するとともに、ショックアブソーバを有する。さらに、スタビライザは、左右のサスペンションを接続して、左右のサスペンションの傾きを抑制するように働く。遠心力により、捻る力がスタビライザに加えられた場合、スタビライザの分子間においては、静電気が発生している。このような静電気が中和、減衰、除去されると、スタビライザの剛性、強度が向上し、自動車のロール、傾きが抑制される。
【0029】
これは、自動車の車体にも該当する。フレーム式、モノコック式を問わず、走行時においては車体のあらゆる部分に、外部からの入力が発生している。そのため、車体の各部分において、膨大な静電気が発生し、自動車の製造時における本来の車体剛性を発揮できていないおそれがある。そのため、本実施形態に係る静電気除去装置を用いて車体の各部分の静電気を除去することは、本来の金属の剛性の向上させるために有効な手段である。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の例を示す断面図である。
【0031】
本実施形態の静電気除去装置は、例えば自動車の各装着対象部位に対して、装着可能とされている。静電気除去装置の装着対象部位としては、ブレーキキャリパの他に、例えば、ブレーキパッドのバックプレート、フロントスタビライザ、リヤスタビライザ、フロントショックアブソーバ、リヤショックアブソーバ、エンジンオイルパン、ミッション(マニュアル、オートマチック)オイルパン、フロンドデフ、リヤデフ、センタートランスファ(四輪駆動車用)、ハブベアリング部分、エンジンコントロールコンピュータ、エアークリーナーボックス、エアーインレットホース、マフラ(パイプ部分、消音器部分)、フューエルホース、ラジエータホース等が挙げられる。自動車のボディにおける装着対象部位としては、フロント、サイド、リヤの各ウインドウ、サイドミラー、ボンネット、ルーフパネル、フロントフェンダ、リヤフェンダ、トランク、アンダーパネル、A、B、Cの各ピラー部分、タイヤ、ホイール等などが挙げられる。タイヤを除電する場合には、本実施形態にかかる静電気除去装置の粉末を、水をはじめとする液体に攪拌させ、空気注入前にタイヤに注入する。すなわち、固体,気体、液体を問わず、摩擦、反復接触、摺動、可動、可変、流動、回転等する部分のすべての部位において、本実施形態の静電気除去装置は、静電気を中和、除電することに極めて有効である。以下の説明では、説明の便宜上、本実施形態に係る静電気除去装置が車両の制動装置に装着された場合を主として挙げる。
【0032】
図1および図2に示す車両の制動装置1は、例えば自動車の前輪や後輪の制動を行う。車両の制動装置1は、運転者が例えばフットブレーキペダルを踏むことで、油圧で作動する摩擦式のブレーキ装置である。車両の制動装置1は、例えばディスク式油圧ブレーキ(ディスクブレーキ)である。ディスク式油圧ブレーキについては、放熱性が良く、高速で繰り返して制動しても制動力の変化が少なく、安定した制動力を発揮することができる。
【0033】
図1および図2に示す車両の制動装置1は、例えば浮動キャリパ型のディスク式油圧ブレーキであり、タイヤホイールとともに回転する円板型のブレーキディスク2を、ブレーキディスク2の両面側からブレーキパッド3,4で強く挟み込んで制動する。ブレーキディスク2およびブレーキパッド3,4のそれぞれの材料は、特には限定されず、例えば金属を含む材料であってもよく、カーボンを含む材料であってもよい。
【0034】
ブレーキキャリパ5は、浮遊状態になっている。ブレーキキャリパ5の一方側は、その内面部分にブレーキパッド3を固定している。ブレーキキャリパ5の他方側は、シリンダ7を有する。シリンダ7は、油圧ピストン6を有している。油圧ピストン6の内面部分は、ブレーキパッド4を固定している。なお、シリンダ7が有する油圧ピストンの数は、1つは限定されず、例えば2つ、4つ、6つ、8つ、あるいは8つ以上の数のいずれであってもよい。
【0035】
図2に示すように、油圧ピストン6は、ブレーキキャリパ5の他方側のシリンダ7内において、矢印T方向に沿って移動可能に保持されている。油圧ピストン6とシリンダ7との間は、ダストブーツ8により密封されている。シリンダ7と油圧ピストン6との間には、ブレーキフルード9が満たされている。
【0036】
運転者がフットブレーキペダルを踏むと、油圧が、ホース9Aを通じてシリンダ7と油圧ピストン6との間のブレーキフルード9に加わる。これにより、油圧ピストン6はシリンダ7内において矢印T方向に押される。これにより、図2に表した矢印TRのように、ブレーキディスク2は、ブレーキパッド3,4により、強く挟まれて圧着される。このように、ブレーキディスク2がブレーキパッド3,4により強く挟まれて圧着されると、ブレーキディスク2の回転力が低減し、制動力が生ずるとともに摩擦が生じて、熱および静電気が発生する。
【0037】
あるいは、ブレーキディスク2がブレーキパッド3,4により圧着されていない場合(制動装置1が制動力を発生していない場合)においても、静電気が発生する。すなわち、車両の走行中の場合であって、運転者がフットブレーキペダルを踏んでおらず、制動装置1が制動力を発生していない場合においても、回転しているブレーキディスク2がブレーキパッド3,4に僅かに接触している。この場合には、ブレーキディスク2は、ブレーキパッド3,4により圧着されていないにもかかわらず、摩擦が生じて静電気が発生する。
【0038】
自動車は、比較的高い絶縁性を有するタイヤによって地面から電気的に絶縁された状態であるので、自動車に静電気が発生すると、一般的に正の電荷の静電気が車両の車体や車両の制動装置1に帯電する。例えば、正の電荷は、制動装置1内のグリースに帯電している。正の電荷の帯電によりグリースの粘性が高くなると、グリースの粘性抵抗が高くなる。そのため、車両の制動装置1の制動力が低下したり、あるいは、車両の制動装置1が本来の性能を十分に発揮できなかったりすることがある。
【0039】
これに対して、車両の制動装置1に正の電荷として帯電する静電気を除去したり抑制したりするために、図1図2に例示するように、車両の制動装置1には、静電気除去装置20が装着されている。なお、本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される車両の制動装置は、図1および図2に表したディスク式油圧ブレーキ(ディスクブレーキ)には限定されず、ドラムブレーキであってもよい。また、本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される車両の制動装置は、ブレーキマスタシリンダの周辺の装置であってもよい。ブレーキマスタシリンダの周辺の装置については、図面を参照して後述する。
【0040】
図1および図2に表した制動装置1では、静電気除去装置20は、ブレーキキャリパ5の外面5Sに装着されている。但し、静電気除去装置20の装着箇所は、ブレーキキャリパ5の外面5Sには限定されず、例えば図2に表した二点鎖線のように、シリンダ7の外面であってもよく、ブレーキキャリパ5の外面5Sとは異なる外面(例えば上面)であってもよい。
【0041】
図3および図4は、第1実施形態に係る静電気除去装置を表す図である。
なお、図3は、本実施形態に係る静電気除去装置の一部分が切り欠かれた部分断面図である。図4は、本実施形態に係る静電気除去装置の内部構造例を示す断面図である。
【0042】
図3および図4に示すように、静電気除去装置20は、複数個のボール状のマイナスイオン発生素子21と、これらのマイナスイオン発生素子21を収納する容器(ケーシングともいう)22と、を有する。
マイナスイオン発生素子21は、マイナスイオンを発生する物質で作られたボール状体あるいは球体であり、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む。
【0043】
マイナスイオン発生素子21は、セラミックや天然鉱石をそのまま球体に形成したものであっても良いし、セラミックや天然鉱石を一度粉体してから、再度ボール状に固めたものであっても良い。なお、マイナスイオン発生素子21の形状は、球体には限定されず平板であってもよい。平板の形状を有するマイナスイオン発生素子21の例は、図6(a)~図6(i)に関して後述する。また、マイナスイオン発生素子21は、1種類の天然鉱石には限定されず、複数の種類の天然鉱石が混合されたものであってもよい。あるいは、マイナスイオン発生素子21は、1種類または複数の種類の天然鉱石と、金属と、を含んでいてもよい。マイナスイオン発生素子21は、自然の状態(常温静止状態)でマイナスイオンを発生することができる。このマイナスイオン発生素子21が、マイナスイオンを発生することで、プラスの電荷に帯電した静電気を電気的に中和して除電することができる。本願明細書において「除電」とは、電気を除去することだけではなく、電気の発生を抑制することを含む。マイナスイオン発生素子21に含まれる天然鉱石としては、例えば、トルマリン、麦飯石、医王石、ゼオライト、ミネラル砕石、快悠石、ラジウム鉱石、化石珊瑚、珪石、翠砕石、天照石、ブラックシリカ、ホワイトシリカ、銀原料鉱石、無機ゲルマニウム、遠赤外線(黒体原料)粉末、菱苦土鉱(マグネシュウム原料鉱石)、磁器粉末などが挙げられる。
【0044】
図3および図4に示す容器22は、例えば長方形状を有している。容器22は、変形可能で導電性を有する金属箔により形成されている。容器22の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、あるいはこれらの合金などが挙げられる。但し、容器22は、変形可能な金属箔により形成されていることには限定されず、可撓性を有していない構造および形状の容器であって、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、あるいはこれらの合金などにより形成された容器であってもよい。また、容器22は、プラスチックやゴムなどで形成された容器であってもよい。容器22は、図3および図4に示す例えば長方形状の外囲部分23と、図3および図4に示す長方形状の蓋部分24と、そして図4に示す複数の仕切り部分25と、を有する。
【0045】
複数の仕切り部分25は、外囲部分23の内部を複数の収納領域23Rに区分している。複数個のマイナスイオン発生素子21は、外囲部分23の各収納領域23R内に、直列に配列された状態で収納されている。そして、図3に示すように、蓋部分24が外囲部分23を塞ぐことで、複数個のマイナスイオン発生素子21は容器22内に密閉されている。なお、マイナスイオン発生素子21の配置は、図4に表した配置には限定されない。
【0046】
各マイナスイオン発生素子21が発生するマイナスイオンは、変形可能な導電性を有する容器22を通過して容器22の外部に放出される。容器22の外部に放出されたマイナスイオンは、プラスの電荷に帯電した静電気を電気的に中和して除電することができる。
【0047】
図3および図4に示す静電気除去装置20は、図1および図2に例示するように、ブレーキキャリパ5の外面に対して、例えば接着剤あるいは粘着剤を用いて固定あるいは装着されている。あるいは、静電気除去装置20は、ブレーキパッド3,4のバックプレートに固定あるいは装着されていてもよい。また、車両の制動装置がドラムブレーキである場合には、静電気除去装置20は、例えばブレーキシューの部分や、ブレーキシューをブレーキドラムに押し付けるピストンの部分などに固定あるいは装着される。
【0048】
ブレーキキャリパ5の外面5Sは、形状変化に富んだ曲面形状である。これに対して、本実施形態に係る静電気除去装置20では、柔らかく変形可能な導電性を有する金属箔により形成された容器22が、複数個のボール状のマイナスイオン発生素子21を収めている。これにより、静電気除去装置20は、ブレーキキャリパ5の外面5Sの形状に合わせて容易に変形し、ブレーキキャリパ5の外面5Sに貼り付けられ固定あるいは装着可能とされている。また、マイナスイオン発生素子21は、導電性を有する金属箔を通じて金属箔の外部にマイナスイオンを安定的に放出することができる。
【0049】
本実施形態に係る静電気除去装置20および車両の制動装置1によれば、容器22内に収納されたマイナスイオン発生素子21が、容器22を通じて容器22の外部にマイナスイオンを放出して、車両の制動装置1に正の電荷として帯電する静電気を電気的に中和して除電する。これにより、車両の制動装置1から静電気を安定的に除去あるいは抑制して、静電気発生による機械的損失を低減し、車両の能力を最大限に発揮させる。具体的には、車両の制動装置1の制動力の向上を図ることができる。さらに具体的には、マイナスイオン発生素子21が発生するマイナスイオンは、車両の制動装置1の各部位や、グリースや油類や、ブレーキパッド3,4や、ブレーキディスク2等に正の電荷として帯電する静電気を、電気的に中和して除電することができる。
【0050】
これにより、例えば、制動時のリニアで剛性感のあるペダルタッチ、応答性及びコントロール性の向上、ブレーキの初期制動力の向上、ブレーキの最大制動力の向上、ブレーキディスク2に対するブレーキパッド3,4の摩擦係数があたかも向上したかのような制動力の立ち上がり方、ブレーキディスク2の当たり面の色の変化、ブレーキダストの減少化、ブレーキキャリパ5の体積増大による熱吸収容量の増大、非制動時のブレーキディスク2とブレーキパッド3,4との僅かな接触において発生する摩擦および静電気を削減することによるブレーキ回転抵抗の削減、ブレーキパッド3,4の寿命延長等の効果を発揮することができる。
【0051】
また、マイナスイオン発生素子21は、容器22に収納されているので、車両の走行によっては飛散しない。このため、静電気除去装置20は、長期間にわたって安定的に静電気の除去あるいは抑制を行うことができる。また、マイナスイオン発生素子21は、球体であるため、より多くのマイナスイオンを発生し、車両の制動装置1から静電気を安定的に除去あるいは抑制することができる。
【0052】
図5は、本発明者が実施した検討の結果の一例を例示する表である。
図5は、本実施形態に係る静電気除去装置20が、自動車の前輪側の右制動装置と、前輪側の左制動装置と、後輪側の右制動装置と、後輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着された後の場合と、装着される前の場合と、について、得られた制動力の値の例を示している。
【0053】
本発明者は、例えば車検検査ライン等において、本実施形態に係る静電気除去装置20が、自動車の前輪側の右制動装置と、前輪側の左制動装置と、後輪側の右制動装置と、後輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着された後の場合と、装着される前の場合と、について、自動車の制動力を測定した。車両の制動装置1に対する静電気除去装置20の装着前後において、本発明者は、ブレーキオイルの交換や、ブレーキパッドの交換や、ブレーキキャリパを分解しての清掃作業や、ブレーキパッドのパックプレートのグリースアップや、ブレーキパッドの当たり面研磨作業や、ブレーキディスクの表面研磨作業などを一切行っていない。
【0054】
図5に示すように、静電気除去装置20が、自動車の前輪側の右制動装置と、前輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着される前では、制動力は、それぞれ344daN,309daNである。これに対して、静電気除去装置20が、自動車の前輪側の右制動装置と、前輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着された後では、制動力は、それぞれ378daN,364daNである。
【0055】
このため、静電気除去装置20が前輪側の右制動装置と前輪側の左制動装置とにそれぞれ装着された後の制動力と、装着される前の制動力と、との間の差は、それぞれ+34daN,+55daNである。つまり、静電気除去装置20が車両の前輪側の制動装置1に装着される前後において、制動力は増加している。前輪側の右制動装置と前輪側の左制動装置との制動力の増減割合は、+9.88%,+17.80%である。また、前輪側の右制動装置と前輪側の左制動装置との制動力の増減割合の平均値は、+13.84%である。
【0056】
また、静電気除去装置20が、自動車の後輪側の右制動装置と、後輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着される前では、制動力は、それぞれ310daN,313daNである。これに対して、静電気除去装置20が、自動車の後輪側の右制動装置と、後輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着された後では、制動力は、それぞれ334daN,336daNである。
【0057】
このため、静電気除去装置20が後輪側の右制動装置と後輪側の左制動装置とにそれぞれ装着された後の制動力と、装着される前の制動力と、との間の差は、それぞれ+24daN,+23daNである。つまり、静電気除去装置20が車両の後輪側の制動装置1に装着される前後において、制動力は増加している。後輪側の右制動装置と後輪側の左制動装置との制動力の増減割合は、+7.74%,+7.35%である。また、後輪側の右制動装置と後輪側の左制動装置との制動力の増減割合の平均値は、+7.55%である。
従って、4輪の制動力の増減割合の全体の平均値は、+10.69%となる。
【0058】
このように、静電気除去装置20が、自動車の前輪側の右制動装置と、前輪側の左制動装置と、後輪側の右制動装置と、後輪側の左制動装置と、にそれぞれ装着された後の場合と、装着される前の場合を比較すると、4輪の制動力の増減割合の全体の平均値は、10%以上増加している。これにより、静電気除去装置20が車両の制動装置1に装着された場合の効果(制動力の向上)が得られていることが分かる。
【0059】
図6は、本実施形態のマイナスイオン発生素子の各種の形状例を表す図である。
図3図4に関して前述したマイナスイオン発生素子21は、マイナスイオンを発生する物質で作られたボール状体あるいは球体である。但し、マイナスイオン発生素子21の形状は、特には限定されず、図6(a)から図6(i)に例示する各種の形状であってもよい。
【0060】
すなわち、図6(a)のマイナスイオン発生素子21は、立方体あるいは断面正方形の平板であり、図6(b)のマイナスイオン発生素子21は、三角錐体、三角柱体あるいは断面三角形の平板である。図6(c)のマイナスイオン発生素子21は、多角形、例えば正六角形体あるいは断面正六角形の平板であり、図6(d)のマイナスイオン発生素子21は、楕円体あるいは断面楕円形の平板である。図6(e)のマイナスイオン発生素子21は、直方体あるいは断面長方形の平板である。図6(f)は、円柱あるいは断面円形の平板である。図6(g)は、断面菱形の柱体あるいは平板である。図6(h)は、断面円形の柱体あるいは平板である。図6(i)は、断面星形の柱体あるいは平板である。
【0061】
また、図3図4に関して前述した容器22は、例えば長方形状である。但し、容器22の形状は,特には限定されず、他の任意の形状であってもよい。
【0062】
図7は、第2実施形態に係る静電気除去装置を表す断面図である。
図7に示す静電気除去装置30は、マイナスイオン発生素子31と、容器32と、を有する。マイナスイオン発生素子31は、マイナスイオンを発生する物質で作られた粉体であり、セラミックおよび天然鉱石の少なくともいずれかを含む。マイナスイオン発生素子31は、1種類の天然鉱石には限定されず、複数の種類の天然鉱石が混合されたものであってもよい。あるいは、マイナスイオン発生素子31は、1種類または複数の種類の天然鉱石と、金属と、を含んでいてもよい。マイナスイオン発生素子31は、自然の状態(常温静止状態)でマイナスイオンを発生することができる。このマイナスイオン発生素子31が、マイナスイオンを発生することで、プラスの電荷に帯電した静電気を電気的に中和して除電することができる。マイナスイオン発生素子31に含まれる天然鉱石の例は、第1実施形態のマイナスイオン発生素子21に関して前述した通りである。
【0063】
容器32は、一方のフィルム33と他方のフィルム34とを有している。フィルム33,34は、変形可能で導電性を有する金属箔により形成されている。容器32の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スチール、真鍮、ステンレス、チタンあるいはこれらの合金などが挙げられる。粉体状のマイナスイオン発生素子31は、容器32の一方のフィルム33と他方のフィルム34との間において、例えば粘着剤あるいは接着剤を用いて封止または収納されている。これにより、粉体のマイナスイオン発生素子31が容器32の外部に漏れたり、飛散したりすることを防止している。
【0064】
静電気除去装置30は、図7に示すような構造を有することで、さらに薄型化を図ることができる。これにより、静電気除去装置30は、装着対象部位あるいは装着対象部位である例えば車両の制動装置1の形状に合わせて、より簡単にしかも確実に変形することができる。このため、静電気除去装置30は、例えば車両の制動装置1の形状に合わせて容易に変形し、ブレーキキャリパ5の外面5Sに貼り付けられ固定あるいは装着可能とされている。つまり、静電気除去装置30は、より狭い空間であっても設置可能とされている。
【0065】
図8は、本実施形態に係る静電気除去装置を備える車両の制動装置の他の例を示す斜視図である。
図1および図2に関して前述した通り、本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される車両の制動装置は、ブレーキマスタシリンダの周辺の装置であってもよい。図8に関する説明では、図3および図4に関して前述した静電気除去装置20が車両の制動装置1Aに装着された場合を例に挙げる。但し、図8に表した車両の制動装置1Aには、図7に関して前述した静電気除去装置30が装着されてもよい。
【0066】
図8に表した車両の制動装置1Aは、ブレーキマスタシリンダの周辺装置であり、ブレーキペダル11と、ブレーキブースタ(ブレーキマスタバック)12と、ブレーキオイルタンク(リザーバタンク)13と、マスタシリンダ14と、を備える。図8に表した車両の制動装置1Aは、汎用のブレーキマスタシリンダの周辺装置であってよい。図8に表した車両の制動装置1Aでは、車両の制動装置1Aに正の電荷として帯電する静電気を除去したり抑制したりするために、静電気除去装置20がブレーキペダル11に装着されている。
【0067】
図8に表した車両の制動装置1Aでは、容器22内に収納されたマイナスイオン発生素子21が、容器22を通じて容器22の外部にマイナスイオンを放出して、車両の制動装置1Aに正の電荷として帯電する静電気を電気的に中和して除電する。これにより、車両の制動装置1Aから静電気を安定的に除去あるいは抑制して、静電気発生による機械的損失を低減し、車両の能力を最大限に発揮させることができる。具体的には、車両の制動装置1Aの制動力の向上を図ることができる。さらに具体的には、マイナスイオン発生素子21が発生するマイナスイオンは、車両の制動装置1Aのブレーキペダル11や、ブレーキマスタバック12や、ブレーキオイルタンク13や、マスタシリンダ14や、あるいはブレーキオイル等に正の電荷として帯電する静電気を、電気的に中和して除電することができる。
【0068】
これにより、例えば、ブレーキの初期制動力の向上、および、ブレーキペダル11を踏んでブレーキ制動力を発揮する場合に効き方の向上等の効果を発揮することができる。また、図1図7に関して前述した他の効果についても、同様に得られる。
【0069】
なお、静電気除去装置20の装着箇所は、ブレーキペダル11には限定されず、図8に表した二点鎖線のように、ブレーキブースタ(ブレーキマスタバック)12と、ブレーキオイルタンク(リザーバタンク)13と、マスタシリンダ14と、の少なくともいずれかであってもよい。あるいは、静電気除去装置20の装着箇所は、電子制御制動力配分システム(EBD:Electronic Brake force Distribution)のユニットであってもよく、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)のユニットであってもよい。この場合であっても、同様の効果が得られる。
【0070】
次に、本実施形態に係る静電気除去装置の装着対象部位の他の例を説明する。
図9は、本実施形態に係る静電気除去装置が装着された一般的な車両のエンジン周りの部位の例を示す斜視図である。
本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される対象部位は、車両の制動装置には限定されず、車両のエンジン周りの部位1Bであってもよい。図9に関する説明では、図3および図4に関して前述した静電気除去装置20が車両のエンジン周りの部位1Bに装着された場合を例に挙げる。但し、図9に表した車両のエンジン周りの部位1Bには、図7に関して前述した静電気除去装置30が装着されてもよい。
【0071】
図9に表した車両のエンジン周りの部位1Bでは、静電気除去装置20は、外気をエアークリーナー47へ導くインテークダクト41に装着されている。また、静電気除去装置20は、ターボタービン等を含むターボユニット42に装着されている。また、静電気除去装置20は、ターボユニット42で圧縮された空気をインタークーラからエンジンへ導くインテークダクト43に装着されている。また、静電気除去装置20は、エンジンのヘッドカバー44に装着されている。また、静電気除去装置20は、ストラット取付上部45に装着されている。また、静電気除去装置20は、ストラットタワーバー46に装着されている。
【0072】
図9に表したように、静電気除去装置20が車両のエンジン周りの部位1Bに装着されることにより、車両のエンジン周りの部位1Bにおいて発生する静電気を中和、減衰あるいは除去することができる。これにより、車両のエンジン周りの部位1Bを流れる液体や気体の流速および流量を向上させることができる。また、車両のエンジン周りの部位1Bに設けられた金属の強度および剛性を向上させることができる。これらは、本実施形態の説明の冒頭の部分(図1に関する説明の前の部分)において説明した通りである。
【0073】
なお、図9に表した車両のエンジン周りの部位1Bでは、複数の静電気除去装置20が種々の部品や部位に装着されている。但し、これは、車両のエンジン周りの部位1Bにおける静電気除去装置20の装着対象部位の一例であり、図9に表した全ての静電気除去装置20が必要であることを意味するわけではない。1つの静電気除去装置20が対象部位に装着された場合であっても、静電気除去装置20は、装着対象部位に発生する静電気を中和、減衰あるいは除去することができる。
【0074】
図10は、本実施形態に係る静電気除去装置が装着されたヒートポンプの例を示す斜視図である。
本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される対象部位は、車両には限定されず、静電気が発生し得る船舶、産業機械あるいはその他の機械であってもよい。例えば、図10に表したように、本実施形態に係る静電気除去装置20が装着される対象部位は、ヒートポンプ1Cであってもよい。図10に関する説明では、図3および図4に関して前述した静電気除去装置20がヒートポンプ1Cに装着された場合を例に挙げる。但し、図10に表したヒートポンプ1Cには、図7に関して前述した静電気除去装置30が装着されてもよい。
【0075】
図10に表したヒートポンプ1Cでは、静電気除去装置20は、室外機51から室内機(図示せず)へ熱媒体(冷媒)を導く第1冷媒管52に装着されている。また、静電気除去装置20は、室内機(図示せず)から室外機51へ熱媒体を導く第2冷媒管53に装着されている。
【0076】
図10に表したように、静電気除去装置20がヒートポンプ1Cに装着されることにより、ヒートポンプ1Cにおいて発生する静電気を中和、減衰あるいは除去することができる。図10に表したヒートポンプ1Cでは、第1冷媒管52および第2冷媒管53を流れる熱媒体(冷媒)の流速および流量を向上させることができる。また、ヒートポンプ1Cに設けられた金属の強度および剛性を向上させることができる。これらは、本実施形態の説明の冒頭の部分(図1に関する説明の前の部分)において説明した通りである。
【0077】
図10に表したヒートポンプ1Cでは、静電気除去装置20が第1冷媒管52および第2冷媒管53の両方に装着されている。但し、これは、ヒートポンプ1Cにおける静電気除去装置20の装着対象部位の一例であり、図10に表した全ての静電気除去装置20が必要であることを意味するわけではない。1つの静電気除去装置20が対象部位に装着された場合であっても、静電気除去装置20は、装着対象部位に発生する静電気を中和、減衰あるいは除去することができる。また、静電気除去装置20は、室外機51の外部や内部に装着されてもよい。この場合であっても、同様の効果が得られる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【0079】
本発明の実施形態の静電気除去装置20は、例えば自動車の各装着対象部位に対して、装着可能とされている。静電気除去装置20の装着対象部位としては、ブレーキキャリパ5の他に、例えば、ブレーキパッド3,4のバックプレート、フロントスタビライザ、リヤスタビライザ、フロントショックアブソーバ、リヤショックアブソーバ、エンジンオイルパン、ミッション(マニュアル、オートマチック)オイルパン、フロンドデフ、リヤデフ、センタートランスファ(四輪駆動車用)、ハブベアリング部分、エンジンコントロールコンピュータ、エアークリーナーボックス、エアーインレットホース、マフラ(パイプ部分、消音器部分)、フューエルホース、ラジエータホース等が挙げられる。自動車のボディにおける装着対象部位としては、フロント、サイド、リヤの各ウインドウ、サイドミラー、ボンネット、ルーフパネル、フロントフェンダ、リヤフェンダ、トランク、アンダーパネル、A、B、Cの各ピラー部分、タイヤ、ホイール等などが挙げられる。タイヤを除電する場合には、本実施形態にかかる静電気除去装置の粉末を、水をはじめとする液体に攪拌させ、空気注入前にタイヤに注入する。すなわち、固体、気体、液体を問わず、摩擦、反復接触、摺動、可動、可変、流動、回転等する部分のすべての部位において、本実施形態の静電気除去装置20は、静電気を中和、除電することに極めて有効である。なお、静電気除去装置20は、本実施形態の説明において例示した装着箇所のいずれかに装着されることにより効果を発揮することができ、本実施形態の説明において例示した装着箇所のすべてに装着されないと効果を発揮できないわけではない。また、静電気除去装置20の装着部位が多いほど、複合効果および相乗効果が得られ、全体としてより大きな効果が得られる。
【符号の説明】
【0080】
1、1A・・・制動装置、 1B・・・エンジン周りの部位、 1C・・・ヒートポンプ、 2・・・ブレーキディスク、 3、4・・・ブレーキパッド、 5・・・ブレーキキャリパ、 5S・・・外面、 6・・・油圧ピストン、 7・・・シリンダ、 8・・・ダストブーツ、 9・・・ブレーキフルード、 9A・・・ホース、 11・・・ブレーキペダル、 12・・・ブレーキブースタ(ブレーキマスタバック)、 13・・・ブレーキオイルタンク(リザーバタンク)、14・・・マスタシリンダ14、 20・・・静電気除去装置、 21・・・マイナスイオン発生素子、 22・・・容器、 23・・・外囲部分、 23R・・・収納領域、 24・・・蓋部分、 25・・・仕切り部分、 30・・・静電気除去装置、 31・・・マイナスイオン発生素子、 32・・・容器、 33、34・・・フィルム、 41・・・インテークダクト、 42・・・ターボユニット、 43・・・インテークダクト、 44・・・ヘッドカバー、 45・・・ストラット取付上部、 46・・・ストラットタワーバー、 47・・・エアークリーナー、 51・・・室外機、 52・・・第1冷媒管、 53・・・第2冷媒管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10