(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20230411BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F03G7/06 E
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2018178165
(22)【出願日】2018-09-22
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】高山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】相川 武憲
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0284379(US,A1)
【文献】特許第5787120(JP,B2)
【文献】特許第6046980(JP,B2)
【文献】特開2018-021466(JP,A)
【文献】特開2019-143555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G7/06,
B06B1/04,
G05D3/00,
G06F3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、この固定子と対向し、固定子に対し近接離反自在に設けられた移動子と、前記固定子との間に形状記憶合金からなる収縮伸張可能なワイヤを備えたアクチュエータであって、
前記固定子は、前記移動子と対向する面に、固定子側突起部と固定子側窪み部が前記固定子の一方向に交互に形成され、
前記移動子は、前記固定子
側突起部と対向する面に移動子側窪み部と、前記固定子側窪み部と対向する面に移動子側突起部が、前記移動子の一方向に交互に形成され、
前記固定子側窪み部には、底面から突出した固定子側突出片が形成され、
前記移動子側窪み部には、底面から突出した移動子側突出片が形成され、
前記固定子側突起部の中央部には、前記ワイヤとともに、対向する前記移動子側突出片を収容可能な溝部が形成され、
前記移動子側突起部の中央部には、前記ワイヤとともに、対向する前記固定子側突出片を収容可能な溝部が形成されている、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記固定子及び前記移動子は、前記移動子と前記固定子が最も近接したときにおいても、前記固定子側突出片の頂面と前記移動子側溝部の底面との間、及び前記移動子側突出片の頂面と前記固定子側溝部との間に間隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記固定子側窪み部及び前記移動子側窪み部の底面、並びに前記固定子側突起部及び前記移動子側突起部の頂面は、それぞれ第1の曲率の弧状をなしており、
前記固定子側突出片及び移動子側突出片の頂面、並びに前記固定子側溝部及び前記移動子側溝部の底面は、それぞれ前記第1の曲率よりも小さい第2の曲率の弧状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記固定子及び前記移動子は放熱性樹脂からなる請求項1から3のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、形状記憶合金の熱による収縮性を利用して振動を発生させるアクチュエータに係り、詳しくは固定子及び移動子に形状記憶合金のワイヤのはみ出しを防止する凹部及び凸部を形成したアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スマートフォンのような携帯端末や、いわゆるVR(仮想現実)のゲーム機器等において使用者に振動を伝達するアクチュエータ(振動装置)が搭載されているものがある。皮膚の触感を利用したユーザインターフェースとしてのこの種のアクチュエータは小型軽量であって、加速度が大きいとユーザに対し強い触感を与えることができるので、大きな加速度が得られることが望ましい。
【0003】
この種のアクチュエータとしては形状記憶合金を用い、移動部材を固定子側から離反、近接させ振動を発生させるものがある。
【0004】
上記のアクチュエータとしては、例えば特許文献1乃至4が存在する。
【0005】
特許文献1乃至4は導電性の形状記憶合金からなるワイヤを有し、通電での発熱、非通電での冷却によるワイヤの伸縮作用によって固定子に対し移動子を離反させたり、元の位置に復帰させることにより振動を発生させて、ユーザにタッチパネル操作時のクリック感等を与えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6046980号
【文献】特許第5787120号
【文献】特開2018-21466号公報
【文献】特開2018-21468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アクチュエータの小型化、薄型化が進み、ワイヤを挟持する固定子及び移動子の面積も小さくなってきている。そのため、アクチュエータの組み付けが困難となったり、ワイヤが固定子と移動子との間から脱落しやすくなるという問題が生じる。特に固定子又は移動子の側面から外力が加わると、固定子と移動子との間にずれが生じ、そのずれからワイヤが脱落するおそれがある。
【0008】
これに対し、特許文献1では移動子の移動子側突起部に溝部を形成している。また、特許文献2では、固定子の両側部にリブ部を形成している。特許文献3では、固定子及び移動子のそれぞれの突起部に溝部を形成している。特許文献4では、固定子及び移動子の両側面をそれぞれ外殻体で挟み込むことで各突起部に幅方向両側に壁部を形成している。
【0009】
このように、特許文献1、3、4では固定子又は移動子の突起部に溝を形成することで、ワイヤの脱落を防止しているが、固定子と移動子とのずれによる脱落を防止できるものではない。また、特許文献2、4では、固定子又は移動子の両側面にリブ部や外殻体を設けるためにアクチュエータが大型化するという問題がある。
【0010】
この発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、固定子と移動子との間のずれを抑制し、且つワイヤが脱落するのを防止することができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るアクチュエータは、固定子と、この固定子と対向し、固定子に対し近接離反自在に設けられた移動子と、前記固定子との間に形状記憶合金からなる収縮伸張可能なワイヤを備えたアクチュエータであって、前記固定子は、前記移動子と対向する面に、固定子側突起部と固定子側窪み部が前記固定子の一方向に交互に形成され、前記移動子は、前記固定子側突起部と対向する面に移動子側窪み部と、前記固定子側窪み部と対向する面に移動子側突起部が、前記移動子の一方向に交互に形成され、前記固定子側窪み部には、底面から突出した固定子側突出片が形成され、前記移動子側窪み部には、底面から突出した移動子側突出片が形成され、前記固定子側突起部の中央部には、前記ワイヤとともに、対向する前記移動子側突出片を収容可能な溝部が形成され、前記移動子側突起部の中央部には、前記ワイヤとともに、対向する前記固定子側突出片を収容可能な溝部が形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
上記アクチュエータにおいて、前記固定子及び前記移動子は、前記移動子と前記固定子が最も近接したときにおいても、前記固定子側突出片の頂面と前記移動子側溝部の底面との間、及び前記移動子側突出片の頂面と前記固定子側溝部との間に間隙が形成されていてもよい。
【0013】
また上記アクチュエータにおいて、前記固定子側窪み部及び前記移動子側窪み部の底面、並びに前記固定子側突起部及び前記移動子側突起部の頂面は、それぞれ第1の曲率の弧状をなしており、前記固定子側突出片及び移動子側突出片の頂面、並びに前記固定子側溝部及び前記移動子側溝部の底面は、それぞれ前記第1の曲率よりも小さい第2の曲率の弧状をなしていてもよい。
【0014】
また上記アクチュエータにおいて、前記固定子及び前記移動子は樹脂からなるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、固定子と移動子との間のずれを抑制し、且つワイヤが脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の動作原理であって形状記憶合金からなるワイヤが冷えた状態を示す説明図である。
【
図2】同本発明の動作原理であってワイヤが熱により縮み移動子を押し上げた状態を示す説明図である。
【
図3】同本発明の動作原理であってワイヤが熱により縮んだ後にワイヤへの電流を遮断した状態を示す説明図である。
【
図4】同本発明の動作原理であってワイヤが固定子によって冷却され移動子に働く付勢力により移動子が元の位置に戻った状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの分解斜視図である。
【
図10】(a)
図5のI-I線に沿う断面図及び(b)
図5のII-II線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず本発明の実施形態に先立ち、
図1~
図4に添って本実施形態に用いられるアクチュエータの動作原理について説明する。
【0018】
図1において、1はアクチュエータを構成する主要部材の一つである固定子、2は移動子である。3は形状記憶合金からなるワイヤであり、固定子1と移動子2との間に配置される。4は形状記憶合金からなるワイヤ3に接続された電線、5は電源、6はオン、オフ用の電源スイッチで、オンすれば形状記憶合金からなるワイヤ3は通電される。
図1はスイッチ6がオフとなっており、電流がオフであって移動子2が固定子1側に位置している状態を示す。
【0019】
図2ではスイッチ6がオンされワイヤ3が通電された状態を示す。ワイヤ3に電流が流れてワイヤ3が発熱することでワイヤ3が縮み、ワイヤ3がピンと張ることで、矢印で示すように、移動子2を固定子1から離反させる方向の推力が発生する。
【0020】
スイッチ6をオフにすればワイヤ3に電流が流れなくなり固定子1によって冷却される。
図3はその状態を示す。冷却されると
図4に示すように矢印の方向で移動子2に付勢力が働くことでワイヤ3が伸び、再び移動子2は矢印で示すように固定子1側に位置し、元の状態となる。これらの一連の動作を繰り返すことにより振動が発生する。
【0021】
図5は本発明の一実施形態に係るアクチュエータの正面図、
図6は斜視図、
図7は分解斜視図、
図8は移動子の上面を示す拡大斜視図、
図9は移動子の下面を示す拡大斜視図、
図10の(a)は
図5のI-I線に沿う断面図及び(b)は
図5のII-II線に沿う断面図、
図11の(a)は
図10(a)の要部拡大図及び(b)は
図10(b)の要部拡大図である。
【0022】
まず、正面図を示す
図5、斜視図を示す
図6、分解斜視図である
図7を参照して本実施形態のアクチュエータAを説明する。図中10は絶縁性熱伝導体からなる固定子で放熱性を有する樹脂からなる。20は図示の状態において前記固定子10の上方に対向配置された移動子であり、その間に形状記憶合金からなるワイヤ30が設けられている。これは
図1~
図4に示した固定子1、移動子2、ワイヤ3に対応する。
【0023】
固定子10及び移動子20を構成する材料は、絶縁性のある放熱性樹脂等を用いるのが好ましい。特に放熱性樹脂には主に耐熱性が高く耐摩耗性、寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(以下、PPS)が好適である。さらに、放熱性樹脂を固定子10や移動子20に用いる場合は、PPSに熱伝導性を高める熱伝導性フィラーの微粒子を分散させて使用すると、形状記憶合金の放熱性がさらに向上しアクチュエータAの繰り返し反応速度の向上に効果的である。なお、成形が可能であれば固定子10及び移動子20を構成する材料として、放熱性の良いアルミなどの金属材料に絶縁処理を施したものを用いてもよい。
【0024】
放熱性樹脂としては、前記PPSの他にポリアミド系合成樹脂を使用してもよい。
【0025】
固定子10は、横方向に細長い略直方体の形状をなしている。また、固定子10の上面(移動子20と対向する面)には、固定子側窪み部11と固定子側突起部12とが長手方向に交互に形成された波状部分を有している。なお、本実施形態では固定子側窪み部11が6つ、固定子側突起部12が5つ形成されているが、固定子側窪み部11及び固定子側突起部12の数はこれに限られるものではない。
【0026】
図8に詳しく示すように、固定子側窪み部11は底面11aが固定子10の長手方向に第1の曲率で湾曲した弧状に形成されている。さらに固定子側窪み部11には、幅方向(短手方向)の中央部に、底面11aから突出した固定子側突出片11bが形成されている。この固定子側突出片11bの頂面11btは、固定子10の長手方向に第1の曲率よりも小さい(即ち、曲率半径が大きい)第2の曲率で湾曲した弧状をなしている。
【0027】
また、固定子側突起部12は頂面12aが固定子10の長手方向に第1の曲率で湾曲した弧状に形成されている。さらに固定子側突起部12には、幅方向(短手方向)の中央部に、頂面12aから窪んだ固定子側溝部12bが形成されている。この固定子側溝部12bの底面12bbは、固定子10の長手方向に第2の曲率で湾曲した弧状をなしている。
【0028】
このように固定子10の波状部分には、幅方向中央部に固定子側突出片11bと固定子側溝部12bとが交互に形成され、固定子側窪み部11の底面11a及び固定子側突起部12の頂面12aよりも曲率の小さい(緩い)波形状を形成している。なお、固定子側突出片11b及び固定子側溝部12bの各角部分はR面取り加工及びR溝加工が施されている。
【0029】
移動子20も絶縁性熱伝導体であり放熱性を有する樹脂からなる。この移動子20もまた横方向に細長い略直方体の形状をなしている。また、移動子20の上面(固定子10と対向する面)には、移動子側窪み部21及び移動子側突起部22とが長手方向に交互に形成された波状部分を有している。なお、本実施形態では移動子側窪み部21が5つ、移動子側突起部22が6つ形成されているが、移動子側窪み部及び移動子側突起部の数はこれに限られるものではない。
【0030】
図9に詳しく示すように、移動子側窪み部21は底面21aが移動子20の長手方向に第1の曲率で湾曲した弧状に形成されている。さらに移動子側窪み部21には、幅方向(短手方向)の中央部に、底面21aから突出した移動子側突出片21bが形成されている。この移動子側突出片21bの頂面21btは、移動子20の長手方向に第2の曲率で湾曲した弧状をなしている。
【0031】
また、移動子側突起部22は頂面22aが移動子20の長手方向に第1の曲率で湾曲した弧状に形成されている。さらに移動子側突起部22には、幅方向(短手方向)の中央部に、頂面22aから窪んだ移動子側溝部22bが形成されている。この移動子側溝部22bの底面22bbは、移動子20の長手方向に第2の曲率で湾曲した弧状をなしている。
【0032】
このように移動子20の波状部分には、幅方向中央部に移動子側突出片21bと移動子側溝部22bとが交互に形成され、移動子側窪み部21の底面21a及び移動子側突起部22の頂面22aよりも曲率の小さい(緩い)波形状を形成している。なお、移動子側突出片21b及び移動子側溝部22bの各角部分はR面取り加工及びR溝加工が施されている。
【0033】
固定子10の波状部分と移動子2の波状部分はワイヤ30を間に挟持して互いに係合可能である。具体的には固定子側窪み部11に移動子側突起部22が係合し、移動子側窪み部21に固定子側突起部12が係合する。さらに、
図10(a)に示すように固定子側突起部12の固定子側溝部12bは移動子側窪み部21の移動子側突出片21bをワイヤ30とともに収容可能であり、また
図10(b)に示すように移動子側突起部22の移動子側溝部22bは固定子側窪み部11の固定子側突出片11bをワイヤ30とともに収容可能である。
【0034】
より詳しくは、
図11(a)に示すように、固定子10と移動子20が最も近接した際には、固定子側突起部12の頂面12aと移動子側窪み部21の底面21aと当接する一方で、固定子側溝部12bと移動子側突出片21bとの間には間隙があり、この間隙内にワイヤ30が配置される。また、
図11(b)に示すように、固定子10と移動子20が最も近接した際には、移動子側突起部22の頂面22aと固定子側窪み部11の底面11aとが当接する一方で、移動子側溝部22bと固定子側突出片11bとの間には間隙があり、この間隙内にワイヤ30が配置される。
【0035】
これらの間隙は、少なくとも固定子側溝部12bの底面12bbと移動子側突出片21bの頂面21btとの間隔、及び移動子側溝部22bの底面22bbと固定子側突出片11bの頂面11btとの間隔がワイヤ30の径よりも大きければよい。
【0036】
また、固定子側溝部12b及び移動子側溝部22bの深さと、固定子側突出片11b及び移動子側突出片21bの高さは、固定子10と移動子20が最も近接した状態においてアクチュエータAの短手方向側面からの外力により固定子10と移動子20の係合が解かれない高さに加えて、アクチュエータAの振幅よりも大きい寸法を加える必要がある。つまり、移動子20が固定子10に対して最も離反した際にも各突出片11b、21bが各溝部12b、22b内に収容されるのが好ましい。これにより、アクチュエータAの振動時においても、常に各溝部12b、22bの開口を各突出片11b、21bが塞ぐことになり、ワイヤ30の脱落をより確実に防止することができる。
【0037】
なお、各溝部12b、22bの側壁と各突出片11b、21bの側壁との間隔をワイヤ30の径よりも小さくすれば、ワイヤ30は各溝部12b、22bの側壁から抜けることがなくなり、より好ましい。
【0038】
ワイヤ30はニッケル・チタン合金のような形状記憶合金効果のある合金からなる。
図7に示すように(各突出片11b、21b及び各溝部12b、22bについては
図8、9も参照)、ワイヤ30は、非通電状態において、固定子10及び移動子20の各突出片11b、21b及び各溝部12b、22bにより形成される波形状に対応した波形状となり、この各突出片11b、21b及び各溝部12b、22bの間に位置するよう配置される。
【0039】
ワイヤ30の一端部は、固定子10の長手方向一端部に形成された端子台13側にて端子部40を介し取付けられる。ワイヤ30の他端部も同様に固定子10の長手方向他端部に形成された端子台14側にて端子部40を介し取付けられる。
【0040】
41~43は端子部40の一端側に設けられたワイヤ取付部である。このワイヤ取付部41~43は例えば第1~第3の3分割構造をなし、各取付部41~43にはワイヤ30を挿通して固定する溝bが形成されている。
【0041】
これらのうち第1、第3の取付部41、43は同位置に形成され、中央の第2の取付部42は位置が幅方向にずれている。これはワイヤ3をクランク状に取付けてカシメることによって簡単に固定できるようにし、また、ワイヤ3が伸縮動作する際のゆるみを防止するようにしたものである。
【0042】
端子部40の他端側は端子台13、14に固定される端子基部44が形成されている。端子基部44にはネジ挿通用の孔dが2つ形成されているとともに、電線(図示せず)を通して接続するための電線接続孔45が形成されている。
【0043】
50は端子部40の上面に設けられる板バネ50である。この板バネ50は全体として略Z字状に折曲成形され、端子部40の上面側に取付けられる。
【0044】
この板バネ50は、端子部40の端子基部44に取付けられる板バネ基部51と、当該板バネ基部51の一端から立ち上がった板バネ中間部52と、板バネ中間部52から90°よりも鋭角に屈曲して延びる板バネ押さえ部53と、を有する薄板バネである。なお、板バネ押さえ部53の先端部53aは僅かに上方(押し付ける面と逆側)に屈曲している。
【0045】
板バネ基部51にもネジ60を挿通する孔cが2つ形成されている。また、固定子10の各端子台13、14にも同じくネジ挿通用の孔eが2つ形成されている。そして、ネジ60は板バネ50の孔cと、端子部40の孔d及び端子台13、14の孔eに挿通され、端子台13、14の下面に位置するネジ固定部61のネジ穴fに螺着される。
【0046】
移動子20の上面の長手方向両端部には、先端部53aの先端形状に沿って窪んだ板バネ支持溝23、24が形成されている。各板バネ50は、板バネ押さえ部53の先端側が移動子20の板バネ支持溝23、24に係合し、移動子20を固定子10側に押し付ける付勢力を付与する。
【0047】
なお、15、16は固定子10の端子台13、14の長手方向内側上部に形成されたワイヤガイド部である。このワイヤガイド部15、16は一対の突部からなり、突部間にワイヤ30の直線部分が挿通、案内され、ワイヤ取付部41~43側に引き出される。
【0048】
組み立てにあたっては、まず固定子10の端子台13、14の上に端子部40が設けられる。
【0049】
ワイヤ30は、予め所定の長さに切断され、その両端部においてワイヤ取付部41~43の各溝b内に挿通されカシメられる。また、ワイヤ30は固定子10のワイヤガイド部15、16の突部及び固定子溝部12bに載置されることで幅方向の位置決めが行われ、配置される。
【0050】
続いて、固定子10と移動子20によりワイヤ30を挟持すべく、固定子10の波状部分と移動子20の波状部分とが係合するように固定子10に移動子20が載置される。これにより、ワイヤ30は固定子側突出片11bと移動子側溝部22bとの間、及び固定子側溝部12bと移動子側突出片21bとの間の間隙に配置される。
【0051】
ついで、移動子20の板バネ支持溝23、24に板バネ押さえ部53が係合されて、板バネ基部51が端子部40の端子基部44上に配置され、ネジ60が各孔c、d、eに挿通される。そして、ネジ60の先端部がネジ固定部61のネジ穴fに螺着されることで、各部材は一体化される。
【0052】
動作にあたっては、ワイヤ30が通電され、発熱するとワイヤ30は縮み、その推力により移動子20は板バネ50の付勢力に抗して固定子10から離反する動きをする。ワイヤ30が非通電になるとワイヤ30は固定子10、移動子20等を介し冷却されて通電前の長さまで伸張し、板バネ50の付勢力により瞬時に移動子2は固定子1側の位置に戻る。
【0053】
このように構成された本実施形態のアクチュエータAは、固定子10の固定子側窪み部11に固定子側突出片11bを、固定子側突起部12に固定子側溝部12bを形成し、これに対応して移動子20の移動子側窪み部21に移動子側突出片21bを、移動子側突起部22に移動子側溝部22bを形成したことに主な特徴を有している。
【0054】
これにより、ワイヤ30は固定子側溝部12b及び移動子側溝部22b内に収容され、固定子側溝部12b及び移動子側溝部22bの開口は対応する固定子側突出片11b及び移動子側突出片21bにより塞がれることから、ワイヤ30が固定子10及び移動子20から脱落することが防止される。これは、たとえ固定子10又は移動子20に外部から力が加わった場合でも、固定子側溝部12b及び移動子側溝部22bと固定子側突出片11b及び移動子側突出片21bとの間で幅方向の移動が規制されることから、固定子10と移動子20とのずれが抑制され、ワイヤ30の脱落は防がれる。
【0055】
また、固定子側突出片11b及び移動子側突出片21bの頂面11bt、21btと固定子側溝部12b及び移動子側溝部22bの底面12bb、22bbは、固定子10と移動子20が最も近接したときにおいても間隙を有するよう形成されていることで、固定子と移動子が最も近接した状態においてアクチュエータAの短手方向側面から外力が加わった場合でもワイヤ30に余計な力が加わることがなく、ワイヤ30の脱落をより確実に防止することができる。
【0056】
また、固定子及び移動子は放熱性樹脂からなり、固定子側突出片11b及び固定子側溝部12bにより形成される波形状と、移動子側突出片21b及び移動子側溝部22bにより形成される波形状を射出成型法により形成することで、小型化、薄型化した固定子及び移動子に対しても、容易に各突出片及び各溝部を形成することができるので量産性が良い。
【0057】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記実施形態のアクチュエータAは、形状記憶合金のワイヤ30を1本のみを用いているが、ワイヤの数はこれに限られず複数用いてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、端子部40によりワイヤ30の両端が固定子10に取り付けられているが、ワイヤ30の取付構造はこれに限られず、他の手段により取り付けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、薄板バネからなる板バネ50により移動子20を固定子10に押さえつけて取り付けている、他の手段により移動子を固定子に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
A アクチュエータ
1、 固定子
2 移動子
3 ワイヤ
4 電線
5 電源
6 電源スイッチ
10 固定子
11 固定子側窪み部
11a 固定子側窪み部底面
11b 固定子側突出片
11bt 固定子側突出片頂面
12 固定子側突起部
12a 固定子側突起部頂面
12b 固定子側溝部
12bb 固定子側溝部底面
13、14 端子台
15、16 ワイヤガイド部
20 移動子
21 移動子側窪み部
21a 移動子側窪み部底面
21b 移動子側突出片
21bt 移動子側突出片頂面
22 移動子側突起部
22a 移動子側突起部頂面
22b 移動子側溝部
22bb 移動子側溝部底面
23、24 板バネ支持溝
30 ワイヤ
40 端子部
41、42、43 ワイヤ取付部
44 端子基部
45 電線接続孔
50 板バネ
51 板バネ基部
52 板バネ中間部
53 板バネ押さえ部
53a 先端部
60 ネジ
61 ネジ固定部
b 溝
c、d、e、 孔
f ネジ穴