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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】樹脂製密閉容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20230411BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B65D43/08 200
B65D77/20 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018173385
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020045127
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218215(JP,A)
【文献】特開平07-206019(JP,A)
【文献】特開2008-230617(JP,A)
【文献】実開昭64-023463(JP,U)
【文献】米国特許第03096904(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/08
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部及び側壁部を有する容器本体、及び該容器本体とは別体のフランジ部材とから成る容器と、該容器の開口部を覆う蓋部材とから成る密閉容器であって、
前記フランジ部材が、環状のフランジ部及び該フランジ部の下面から下方に延び且つ容器本体側壁部外面と密着する環状側壁から成り、
前記容器本体と前記環状側壁の接合面に、係合用突起が形成されており、
前記環状側壁の下部に開封開始用の突起部が形成されており、
前記フランジ部材が、曲げ弾性率が300~900MPaの範囲にある熱可塑性樹脂から成り、
前記突起部は、前記環状側壁の厚みよりも薄肉であり、前記突起部内面と前記容器本体の側壁部外面との間に隙間が形成されており、
前記容器本体側壁部には、前記環状側との密着面の下端において外方に突出する段差が形成されており、該段差より上方の側壁部外面がストレート状に形成されており、前記段差よりも下方の側壁部が下方に行くに従って径が小さくなるテーパ状であることを特徴とする密閉容器。
【請求項2】
前記フランジ部材が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、又はこれらのブレンド物の何れかから成る請求項1記載の密閉容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の密閉容器の成形方法であって、容器本体を先に成形し、該容器本体をフランジ部材成形金型に設置した後、該金型にフランジ部材を構成する樹脂を供給して、容器本体及びフランジ部材を一体に成形し、容器本体及びフランジ部材の接合面がフランジ部材を構成する樹脂の収縮により密着することを特徴とする密閉容器の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及び蓋から成る易開封性密閉容器に関するものであり、より詳細には、密封性、易開封性及び耐衝撃性に優れた樹脂製の密閉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用途の包装容器として、樹脂製の容器のフランジ部に可撓性を有する蓋をヒートシールで密封して成る密閉容器が広く使用されている。
このような密閉容器は、容器の密閉性を確保する一方、ヒートシールで溶着された蓋を手で容易に剥離して開封できるという、密封性能とは相反する性能を有することも要求されている。
更に、内容物が残った場合などに、一旦容器から引き剥がした蓋を再び容器に嵌合して、再密封(リシール)できることが望まれている。
【0003】
このようなリシール可能な密閉容器としては、例えば落とし蓋形状の成形蓋を使用することにより、リシール性を持たせた密閉容器(特許文献1)や、表面樹脂層と特定のスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とする粘着樹脂層とヒートシール性樹脂層とから成る再封機能付き多層フィルムを用いて成る包装体(特許文献2)が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に記載された落とし蓋形状の成形蓋は、可撓性の高いシート状の蓋に比して厚みがあり剛性が高いことから、シール性に劣ると共に開封に際して蓋が歪みやすい場合がある。
また上記特許文献2に記載された再封機能付き多層フィルムを用いて成る包装体においては、特定の粘着樹脂層を用いることにより、剥離時に露出した表面樹脂層と粘着樹脂層が手や指による加圧接着のみで再封止性が発現されるが、再密封した際の密封性の点で未だ十分満足するものではなかった。
【0005】
このような問題を解決するものとして、容器本体と、別体のフランジ部材とから成る容器と、該容器の開口部を覆う蓋部材とから成る密閉容器であって、開封に際して前記容器本体と前記フランジ部材の接合面が剥離することを特徴とする密閉容器が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-331156号公報
【文献】特開2007-125820号公報
【文献】国際公開2013/47554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3に記載された密閉容器は、優れた密閉性と易開封性を有すると共に、リシールも可能であるが、容器本体とフランジ部材が密着するように一体的に成形されているため、開封し難いという問題があった。また、開封を容易にするために嵌合力を低下させると、フランジ部の外周端部から落下衝撃を受けた場合に、フランジ部材が容器から外れて開封したり、或いはフランジ部材が割れるという問題があった。
従って本発明の目的は、優れた密封性と易開封性とを兼ね備え、耐落下衝撃性にも優れた密閉容器を提供することである。
本発明の他の目的は、密封性、易開封性及び耐落下衝撃性に優れた密閉容器を、生産性及び経済性良く製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、少なくとも底部及び側壁部を有する容器本体、及び該容器本体とは別体のフランジ部材とから成る容器と、該容器の開口部を覆う蓋部材とから成る密閉容器であって、前記フランジ部材が、環状のフランジ部及び該フランジ部の下面から下方に延び且つ容器本体側壁部外面と密着する環状側壁から成り、前記容器本体と前記環状側壁の接合面に、係合用突起が形成されており、前記環状側壁の下部に開封開始用の突起部が形成されており、前記フランジ部材が、曲げ弾性率が300~900MPaの範囲にある熱可塑性樹脂から成り、前記突起部は、前記環状側壁の厚みよりも薄肉であり、前記突起部内面と前記容器本体の側壁部外面との間に隙間が形成されており、
前記容器本体側壁部には、前記環状側との密着面の下端において外方に突出する段差が形成されており、該段差より上方の側壁部外面がストレート状に形成されており、前記段差よりも下方の側壁部が下方に行くに従って径が小さくなるテーパ状であることを特徴とする密閉容器が提供される。
【0009】
本発明の密閉容器においては、前記フランジ部材が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、又はこれらのブレンド物の何れかから成ること、が好適である。
【0010】
本発明によればまた、上記密閉容器の成形方法であって、容器本体を先に成形し、該容器本体をフランジ部材成形金型に設置した後、該金型にフランジ部材を構成する樹脂を供給して、容器本体及びフランジ部材を一体に成形し、容器本体及びフランジ部材の接合面がフランジ部材を構成する樹脂の収縮により密着することを特徴とする密閉容器の成形方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の密閉容器は、予め成形された容器本体をフランジ部材を形成するための金型に設置して、フランジ部材の成形と、フランジ部材と容器との一体化を同時に行うことにより成形されることから、フランジ部材の環状側壁は成形時に収縮して容器本体をタガ締めするようにして一体化される。このため、容器本体とフランジ部材の環状側壁は高い密着性を有している。
その一方、容器本体とフランジ部材の環状側壁が高い密着性を有すると、容器本体からフランジ部材を取り外すことは容易ではないが、本発明においては、環状側壁の下部に開封開始用の突起部を形成することにより、開封に際してこの突起部を最初に半径方向外方且つ上方に引き上げることにより、容器本体側壁部外面と密着している環状側壁を容器本体から離すことができ、次いで行うフランジ部の引き上げが容易になり、容易に開封することが可能になる。
すなわち、本発明においては、フランジ部材を上方に引き上げるという1つの動作だけであった従来の密閉容器の開封を、フランジ部の引き上げの前に環状側壁と容器本体の密着を解除し、この状態でフランジ部を上方に押し上げるという2つの動作に分けることによって、密封性が向上された密閉容器であっても容易に開封することが可能になる。
またフランジ部材を、曲げ弾性率が300~900MPaの範囲にある熱可塑性樹脂から形成することによって、密封性と易開封性のみならず、落下衝撃等にも耐え得る機械的強度の両方を兼ね備えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の密閉容器の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は、開封用片が図面右側に位置する場合の側断面図を示す。
図2】本発明の密閉容器の他の一例における、図1(B)のX部分に相当する部分を拡大して示す図である。
図3】本発明の密閉容器の開封機構を説明するための図である。
図4】実施例1及び比較例1の開封官能評価結果を示す図である。
図5】実施例1~4及び比較例2~3における曲げ弾性率に対する開封官能評価結果との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(密閉容器)
本発明の密閉容器を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の密閉容器1は、容器本体2、容器本体の開口部に位置し、容器本体とは別体のフランジ部材3、及びフランジ部材3にヒートシールで溶着される蓋4からなっている。
容器本体2は、図1に示すように、少なくとも底部21、側壁部22から成っている。またフランジ部材3は、図1(B)から明らかなように、容器本体2の開口部先端23と全周にわたって当接し、容器本体の開口部先端23との当接部分から外方に延びる環状のフランジ部31、このフランジ部31の下面から下方に延び、容器本体側壁部22の外面と密着し、容器本体の側壁部上方を外側からタガ締めする環状側壁32から成っている。
【0014】
フランジ部材3の環状側壁32は成形収縮により容器本体2をタガ閉めしているため、図1及び図2に示すように、容器本体2とフランジ部材3が一体化している状態では、容器本体側壁部22の外面と環状側壁32の内面は密着し、容器の密閉性が確保されている。
その一方、容器本体2とフランジ部材3が強固に嵌合していることにより、フランジ部31を上方に持ち上げただけでは、環状側壁32を容器本体側壁部22と引き離すための半径方向の力が、環状側壁32には充分作用しない。そのため本発明においては、環状側壁32の下端32aから下方に延びる突起部34が形成されている。
突起部34の内面は容器本体側壁22との間に隙間35を有するように形成されている。これにより開封の際に突起部34に容易に指をかけることができ、突起部34の引き上げが容易になる。またこの態様においては、図1(A)から明らかなように、突起部34の外面側に厚みを持たせることにより、隙間35を確保しつつ突起部34の機械的強度を向上させて、突起部34を引き上げる際に破断してしまうことが防止されている。
【0015】
図1(B)に示すように、図に示す具体例においては、フランジ部材3の環状側壁32及び容器本体側壁部22に、環状側壁32の内面に環状の係合用突起33、及びこの係合用突起33の形状に合致する環状の係合用凹部24が容器本体外面側に形成されている。なお反対に環状側壁32の内面に係合用突起の形状に合致する環状の係合用凹部、及び容器本体外面側にこの環状の係合用凹部に合致する係合用突起が形成されていても良い。これにより、環状側壁32によるフランジ部材3の容器本体2へのタガ締めによる半径方向の固定のみならず、係合用凹部24と係合用突起33との上下方向の係合によって更にフランジ部材3を容器口部に強固に固定できる。そのため、落下等によりフランジ部材に衝撃が加わった場合に、フランジ部材が容器本体から外れることを抑制できる。またフランジ部材を容器本体から取り外した後、リシールする際に、係合用凹部24に係合用突起33が係合した感触を得ることができるため、リシールが確実に行われたことが明らかになるという利点もある。このように、容器本体側壁部及び環状側壁の間に、係合用突起及び係合用凹部から成る係合部分を有する場合でも、図に示すように環状側壁の下端から延びる突起部はこの係合部分よりも下方に位置するので、開封操作に影響を受けることはない。
【0016】
図2は、図1(B)に示したX部分の他の態様を示す部分拡大図である。図2に示す態様においては、容器本体の側壁部22は、環状側壁32との密着面の下端において外方に突出する段差25が形成されており、側壁部22の上方において下方よりも突出した形状を有している。これにより、突起部34の内方に指をかけるのに十分な隙間35を形成できる。また容器本体の側壁部が下方に行くにしたがって径が小さくなるテーパ状の場合であっても、段差25よりも上方の側面をストレートに、あるいは上方に行くにしたがって径が小さくなる逆テーパ状に形成することによって、フランジ部材32の容器本体からの引き抜きが容易になる。なお、リシール性の観点からすると逆テーパ状の方が好ましい。
また突起部は、環状側壁の下部に形成され、環状側壁を容器本体から引き離すことができる限り、図に示した具体例に限定されず、突起部としてリング状の別部材を使用し、これを環状側壁に接合する等、種々の態様を採用することができる。尚、この場合においても、容器本体側壁部及び環状側壁の間に、係合用突起及び係合用凹部から成る係合部分を有する場合には、突起部の引き上げによる力の作用点が係合部分の下方に位置することが望ましい。
【0017】
本発明の密閉容器においては、後述するように、容器本体とフランジ部材が、互いに接着性に乏しい或いは非接着性の樹脂の組み合わせから一体的に成形されていることから、開封に際して、容器本体及びフランジ部材の接合面が容易に剥離する。その一方、蓋部材はフランジ部材に剥離不可能に強固に接着されていることから、容器本体からフランジ部材が分離することにより、フランジ部材と一体化した蓋が容器本体から取り除かれて開口が形成される。
【0018】
図3は、本発明の密閉容器の開封操作を説明するための図であり、図3(A)は、密封状態を示す図であり、図3(B)は蓋4の開封用片41を引き上げ始めた状態を示す図であり、図3(C)はフランジ部材3環状側壁が容器本体から外れた状態を示す図である。
上述したとおり、密閉状態においては、図3(A)に示すように、容器本体2の開口先端部23及び側壁部22の上方が、フランジ部材3 のフランジ部31の内周側と環状側壁32と容易に剥離可能に接合していると共に、フランジ部材の環状側壁32は成形時に樹脂が収縮することにより外側から容器側壁部22の上方をタガ締めし、更に容器本体2の側壁部外面と環状側壁32の内面に形成された互いに嵌合し合う係合用凹部24及び係合用突起33によってがっちりと組み合わされている。また蓋4は、フランジ部材3と溶着部5によって剥離不可能に接合されているので、容器内は確実に密閉状態が維持されている。
図3(B)に示すように、突起部34を半径方向外方且つ上方(P1方向)に引き上げることにより、容器本体側壁部22と環状側壁32が剥離し始めると共に、環状側壁32による外側からのタガ締めが緩められ、係合用凹部24と係合用突起33の係合が解除され始める。次いで、図3(C)に示すように、フランジ部31(開封用片41)を上方(P2)に引き上げることにより、フランジ部材3が容器本体から完全に容易に開封することが可能になる。
【0019】
(使用樹脂)
本発明の密閉容器は、容器本体及びフランジ部材が、フランジ部材の成形と同時に容器本体と一体化されていることから、容器本体及びフランジ部材を構成する樹脂が全く接着性のない樹脂の組み合わせであっても密閉状態を確実に維持可能であり、開封時においては容器本体及びフランジ部材は容易に剥離することができる。勿論、容器本体を構成する樹脂とフランジ部材を構成する樹脂を易剥離性を発現可能な組み合わせにすることもできるが、この場合には、接着強度を調整することが好ましい。
尚、容器本体を構成する樹脂とフランジ部材を構成する樹脂の組み合わせ以外にも、フランジ部材の環状側壁と容器本体の接合面に形成される係合用突起及び係合用凹部間の係合によって密封性能を高めることができる。
【0020】
非接着性の樹脂の組み合わせとしては、容器本体をプロピレン系重合体から構成する場合、フランジ部材をエチレン系重合体から構成することができる。
また容易に凝集破壊を生じて易開封性を発現可能な樹脂の組み合わせとしては、ヒートシール性があり且つ相溶性のない2種以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることができる。例えば、容器本体をプロピレン系重合体から構成する場合、フランジ部材をエチレン系重合体とプロピレン系重合体のブレンド物から構成することにより、密封性を確保しつつ易剥離性を保持することができ、ブレンド物のブレンド比を適宜変更することにより剥離強度を調整することができる。
【0021】
上記プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレンの他、プロピレンとエチレンもしくは他のα-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等とのランダム共重合体等を挙げることができる。また上記エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中・高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)等のエチレンの単独重合体、もしくはエチレンと、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の他のα-オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系単量体等との共重合体、或いはアイオノマー等を挙げることができる。
またブレンド物としては上記オレフィン系重合体同士の組み合わせ以外にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート共重合体等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等と、上記オレフィン系重合体との組み合わせ等も使用することができる。
ブレンド物としてプロピレン系重合体とエチレン系重合体を使用する場合に、ブレンド物から成るフランジ部材がプロピレン系重合体から成る容器本体との良好な易剥離性を発現するためには、プロピレン系重合体とエチレン系重合体を重量比で、5:5~9.5:0.5の範囲でブレンドしたブレンド物を好適に使用することが好ましい。
【0022】
また本発明の密閉容器においては、図3で先に説明しているように開封操作を第一の操作と第二の操作に分けることができる。第一の操作とはフランジ部材の環状側壁に形成した突起部を半径方向外方且つ上方に引き上げて、容器本体の側壁部とフランジ部材の環状側壁部の接合面に一部剥離を生じさせることである。第二の操作とは容器本体の側壁部とフランジ部材の環状側壁部の接合面が一部剥離した状態で、フランジ部または突起部を上方に引き上げ容器本体からフランジ部材を完全に分離させることである。フランジ部材が過度に柔らかい材料では第二の操作がしにくくなる。その一方で、フランジ部材が過度に硬い材料では、第一の操作がしにくくなるばかりか落下衝撃を受けた時に、フランジ部材が割れてしまうおそれがある。かかる観点から本発明においては、フランジ部材は、上述した熱可塑性樹脂の中でも、曲げ弾性率が300~900MPaの範囲にある熱可塑性樹脂から成ることが好適である。
【0023】
本発明において、容器本体、フランジ部材、及び蓋の樹脂の組み合わせとしては、これに限定されないが、以下の組み合わせを例示することができる。
例えば、容器本体とフランジ部材を非接着の樹脂から成形する場合には、容器本体をプロピレン系重合体で成形し、フランジ部材をエチレン系重合体で成形し、蓋の少なくとも内層を、フランジ部材と同様のエチレン系重合体から形成することができる。容器本体及びフランジ部を易剥離性の樹脂から成形する場合には、容器本体をプロピレン系重合体で成形し、フランジ部材をプロピレン系重合体とエチレン系重合体のブレンド物で成形し、蓋の少なくとも内層を、フランジ部材と同様のプロピレン系重合体とエチレン系重合体のブレンド物から形成することができる。
また本発明においては、フランジ部材と蓋との間の接合は上述したとおりヒートシールにより剥離不可能に接合することが特に好適であるが、酸変性オレフィン系樹脂等の接着性樹脂を用いた接合や、蓋或いはフランジ部材にレーザ照射により発熱する材料を含有させてレーザ溶着により剥離不可能に接合することもできる。
【0024】
本発明の密閉容器における容器の形状は、特に限定されず、開口部の形状が円形、楕円形の他、矩形であってもよい。またフランジ部で蓋を接合し得るかぎり、カップ型、トレイ型等従来公知の形状を採用できる。更に容器本体は、前述した樹脂の単層構成であってもよいが、フランジ部材との接合面が上述した条件を満足する限り、ガスバリア性中間層等を有する多層構成であってもよい。
またフランジ部材の環状側壁に形成される突起部の形状も図に示したものに限定されず、容器の大きさ等によって適宜変更できる。
本発明の密閉容器に使用される蓋としては、フランジ部材と剥離不可能に接合される以外は、従来公知の蓋を使用することができる。
例えば、フランジ部材と同様の樹脂から成る層をフランジ部材側に少なくとも有する可撓性の単層フィルム又は多層フィルム、具体的には、前記内層/ガスバリア性中間層/外層等から成る可撓性積層体を挙げることができる。
上記ガスバリア性中間層を構成する材料としては、アルミニウム箔等の金属箔、無機蒸着フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂等を例示できる。
また、フランジ部材と同様の樹脂から成る層をフランジ部材側に少なくとも有する落とし蓋形状の成形蓋であってもよい。このような落とし蓋形状の成形蓋は、シートからの熱成形、圧縮成形、射出成形等の従来公知の方法により成形することができる。
【0025】
(製造方法)
本発明の密閉容器において容器は、前述した構成を有する限り、種々の方法で製造することができるが、好適には、予め成形された容器本体と、フランジ部材を成形しながら一体化することにより、成形時の樹脂の収縮を利用して効率よく、両者を密着させることが可能になる。
すなわち、予め射出成形等で成形した容器本体を、フランジ部材成形用の圧縮成形型又は射出成形型に挿入して、フランジ部材を圧縮成形又は射出成形により成形するインサート成形によって、容器本体及びフランジ部材を一体的に成形することができる。
本発明の密閉容器は、容器本体及びフランジ部材が一体的に成形された状態で、内容物を充填し、次いで蓋部材をフランジ部材にヒートシール等の接着手段により接着することにより密封することができる。
【実施例
【0026】
本発明を次の例によりさらに説明する。
なお、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。
(水平方向落下試験)
容器本体及びフランジ部材を一体に成形したカップ型容器において、水を満注充填し、次いで蓋部材をフランジ部材にヒートシールする。水の内容量は120cc程度である。そのまま常温にて1日以上保管した後、フランジ外周部がコンクリート製落下面に当たるように容器を水平方向に寝かせた状態で、高さ60cmから2回連続落下させた。この落下試験結果を、表1に示す。落下の際、容器本体からフランジ部材がはずれて開封した場合、またはフランジ部材が割れた場合を×とし、何も問題なければ○としている。サンプル数はN=5である。
【0027】
(開封性官能評価)
容器本体及びフランジ部材を一体に成形したカップ型容器について、フランジ部材に蓋部材をヒートシールした後、無作為に選んだ5人により該容器の開封操作を行った。この時の開封性の評価結果を、図4及び図5に示す。一般的な容器の開封しやすさと比較して非常に開けやすい場合を“5”、非常に開けにくい場合を“1”、全く開封できない場合を“0”とし、以上6段階で評価している。グラフには平均値をプロットし、エラーバーで最大値・最小値も示している。
【0028】
(3点曲げ試験)
フランジ部材の曲げ弾性率は成形に用いた材料のカタログ値を使用しているが、フランジ部材をドライブレンドして成形した場合においてはJIS K7171に基づいて3点曲げ試験を実施し曲げ弾性率を測定した。射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を180℃の条件で測定樹脂を射出成形金型に供給してダンベル型試験片を作製した。万能試験機((株)島津製作所製 オートグラフ AG-IS 1kN)にて3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率を算出した。測定条件は試験片厚さ2mm×幅5mm、支点間距離30mm、試験速度10mm/secとした。サンプル数はN=5である。
【0029】
[実施例1]
ホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製 J105G)をφ30押出機(L/D=25)に供給し、押出機温度230℃、ダイ温度230℃、樹脂圧力9.0MPaの条件で押し出すと共に切断し、溶融樹脂塊を得た。その後圧縮成形を行い、図1(B)容器本体2に示す断面構造を有し、容器厚さ1.0乃至1.6mm、容器高さ94.5mm、容器外径51.4mm、重量12gの単層の容器本体を得た。
次いで、この単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を190℃の条件で直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 UJ990)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0030】
[実施例2]
前記実施例1と同様の単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を190℃の条件で直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー(株)製 ネオゼックス 45200)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0031】
[実施例3]
前記実施例1と同様の単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を190℃の条件で高密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー(株)製 ハイゼックス 2110JH)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0032】
[実施例4]
ランダムポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製 J-2021GRP)をφ65押出機(L/D=30)に供給し、押出機温度230℃、ダイ温度230℃、樹脂圧力9.0MPaの条件で押し出すと共に切断し、溶融樹脂塊を得た。その後圧縮成形を行い、図1(B)容器本体2に示す断面構造を有し、容器厚さ1.0乃至1.6mm、容器高さ94.5mm、容器外径51.4mm、重量12gの単層の容器本体を得た。
次いで、この単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 LJ8041)と高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 HJ590N)を6:4の比率でドライブレンドし、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を180℃の条件でこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0033】
[比較例1]
前記実施例1と同様の単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を180℃の条件で直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 UJ990)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有するが、開封開始用の突起34を有していない、重量13.2gのカップ型容器を得た。
【0034】
[比較例2]
前記実施例1と同様の単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を160℃の条件で低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 LJ8041)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0035】
[比較例3]
前記実施例1と同様の単層の容器本体を射出成形金型に設置した後、射出成形機((株)新潟鐵工所製 NN75JS)にて、バレル設定温度を210℃の条件で高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製 HJ590N)をこの射出成形金型に供給して、容器本体にフランジ部材を一体に成形し、図1(B)に示す断面構造を有する、重量13.3gのカップ型容器を得た。
【0036】
【0037】
[考察]
図4は実施例1と比較例1の開封官能評価結果を示している。両者の違いは実施例1には突起部があり、比較例1には突起部がないことである。要するに突起部が開封性に与える効果を示したものである。結果より比較例1では5人中4人が開封できなかったのに対して、実施例1では5人中5人開封できたことがわかる。これにより本発明における突起部の開封性に対する有効性が示されている。
図5は実施例1~4、及び比較例2~3の開封官能評価結果を示している。結果を見ると比較例2及び3において評価結果が低くなっていることがわかる。まず比較例2のようにフランジ部材の曲げ弾性率が低い場合、フランジ部材は変形しやすく、前述の開封操作の第一の操作である突起部の半径方向外方且つ上方への引き上げによる容器本体の側壁部とフランジ部材の環状側壁部の接合面における剥離は生じやすい。しかし開封操作の第二の操作ではフランジ部材の変形によりフランジ部材の引き上げがそのまま容器本体からの分離に作用しにくいため、非常に開けにくくなってしまう。また比較例3のようにフランジ部材の曲げ弾性率が高い場合は、フランジ部材は変形しにくくなり、開封操作の第一の操作である突起部の半径方向外方且つ上方への引き上げによる容器本体の側壁部とフランジ部材の環状側壁部の接合面における剥離は生じにくくなるか、あるいは突起部自体が硬いため折れてしまうこともある。しかし開封操作の第二の操作ではフランジ部材の引き上げがそのまま容器本体からの分離に作用しやすく容易に外れることから、官能評価には差が出やすい。
表1は水平方向落下試験結果を示している。比較例3のみ落下衝撃に耐えられずフランジ部材に割れが発生している。これはフランジ部材として曲げ弾性率1000MPaの高密度ポリエチレン樹脂を使用しており、曲げ弾性率が高すぎるためである。
以上、表1、図4及び図5の結果より、本発明の密閉容器においてフランジ部材は曲げ弾性率300~900MPaの範囲の熱可塑性樹脂から形成することによって、密封性と易開封性のみならず、落下衝撃にも耐え得る機械的強度の両方を兼ね備えることができると言える。
【符号の説明】
【0038】
1 密閉容器、2 容器本体、3 フランジ部材、4 蓋、21 底部、22 側壁部、23 開口部先端、24 係合用凹部 25 段差、31 フランジ部、32 環状突起、33 係合用突起、34 突起部、35 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5