(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】液圧ダンパ
(51)【国際特許分類】
B60T 15/36 20060101AFI20230411BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20230411BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20230411BHJP
F15B 1/10 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B60T8/00 Z
B60T17/18
F15B1/10
(21)【出願番号】P 2018183618
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 輝行
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-508854(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097235(WO,A1)
【文献】特開平09-132126(JP,A)
【文献】特開2015-222109(JP,A)
【文献】特開平08-216853(JP,A)
【文献】実開昭61-175601(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102014224828(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 15/00-17/22
F04B 9/00-15/08
F04B 23/00-23/14
F04B 53/00-53/22
F15B 1/00-7/10
F16L 51/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、当該ベースから第1方向に突出し側部から先端にかけて滑らかな第1外周面と、を有したコアと、
弾性部材によって構成され、前記第1外周面との間に気体を封入した状態で前記第1外周面を覆う内周面と、液圧が作用する第2外周面と、当該第2外周面の一部であって前記第1方向の端部である第1端部と、を有したブラダと、
を備え、
前記ブラダを収容する液圧室を構成する内面のうち前記第1端部と面した対向面には前記液圧室と繋がる第1通路の第1開口が設けられ、前記内面には前記液圧室と繋がる前記第1通路とは別の第2通路の第2開口が設けられ、
前記ブラダの前記第1端部である底面の外径は、前記第1開口の内径よりも大きく、
前記第1端部および前記対向面のうち少なくとも一方には、前記ブラダが前記コアから脱落して前記第1端部と前記対向面とが接した場合に当該第1端部と当該対向面との間で前記第1開口と前記第2開口との間の液体通路の少なくとも一部を形成する凸部または凹部が設けられた、液圧ダンパ。
【請求項2】
前記コアには、前記ブラダを部分的に収容する収容部が設けられ、
前記ブラダは、前記収容部に圧入されることにより前記コアに取り付けられた、請求項1に記載の液圧ダンパ。
【請求項3】
前記収容部は、前記第1外周面の周方向に連続して設けられた、請求項2に記載の液圧ダンパ。
【請求項4】
前記ブラダの前記第1端部に溝が前記凹部として形成された請求項1乃至3のいずれか1つに記載の液圧ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液圧ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹部が設けられたコアと、コアの外周面との間に気体を封入した状態で当該外周面を覆うようコアに取り付けられたブラダと、を有した液圧ダンパが知られている。この液圧ダンパでは、ブラダの外周面に液圧が作用することにより、ブラダが収縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の液圧ダンパでは、例えば、組立工程においてブラダがコアに正しく装着されていなかった場合や、何らかの原因によってブラダがコアから外れた場合などに、当該外れたブラダによって液圧ダンパの液圧室内での液体の流れあるいは圧力の伝播が阻害されるのは、好ましくない。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、例えば、仮にコアからブラダが外れた場合にあっても、液圧室内における液体の流れを確保しやすい液圧ダンパを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の液圧ダンパは、例えば、ベースと、当該ベースから第1方向に突出し側部から先端にかけて滑らかな第1外周面と、を有したコアと、弾性部材によって構成され、上記第1外周面との間に気体を封入した状態で上記第1外周面を覆う内周面と、液圧が作用する第2外周面と、当該第2外周面の一部であって上記第1方向の端部である第1端部と、を有したブラダと、を備え、上記ブラダを収容する液圧室を構成する内面のうち上記第1端部と面した対向面には上記液圧室と繋がる第1通路の第1開口が設けられ、上記内面には上記液圧室と繋がる上記第1通路とは別の第2通路の第2開口が設けられ、上記ブラダの上記第1端部である底面の外径は、上記第1開口の内径よりも大きく、上記第1端部および上記対向面のうち少なくとも一方には、上記ブラダが上記コアから脱落して上記第1端部と上記対向面とが接した場合に当該第1端部と当該対向面との間で上記第1開口と上記第2開口との間の液体通路の少なくとも一部を形成する凸部または凹部が設けられる。
【0007】
上記の構成によれば、例えば、仮に何らかの原因でブラダからコアが外れた場合にあっても、ブラダの第1端部と液圧室の対向面との間には凸部または凹部による隙間ができ、液圧室内において、第1開口と第2開口との間においてこの隙間を通る液体通路が確保されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の液圧ダンパの例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダが自由状態の場合の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の突起の外周面の第1軸を含む断面における外形線を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の液圧ダンパの例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダが収縮状態の場合の断面図である。
【
図5】
図5は、比較例の液圧ダンパの例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダが自由状態の場合の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態および比較例の液圧と消費液量との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態のブレーキ装置のハウジングの例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。なお、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
図1は、ブレーキ装置1の例示的かつ模式的な構成図である。ブレーキ装置1は、例えば四輪の車両に設けられる。なお、実施形態の技術は、四輪の車両以外の車両にも適用可能である。
【0011】
図1に示されるように、ブレーキ装置1は、油圧回路10を備えている。ブレーキ装置1は、油圧回路10内のブレーキ液の圧力(液圧)によって、前輪である車輪2FL,2FRと、後輪である車輪2RL,2RRと、の各々に制動力(摩擦制動トルク)を付与することが可能に構成されている。ブレーキ液は、流体とも称されうる。
【0012】
油圧回路10は、圧力発生部32と、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRと、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRと、還流機構37と、を備えている。
【0013】
なお、以下では、簡単化のため、車輪2FL,2FR,2RL,2RRを総称して車輪2と記載し、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRを総称してホイールシリンダ38と記載し、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRを総称して圧力調整部34と記載する場合がある。
【0014】
圧力発生部32は、車両の運転者によるブレーキペダル31の操作に応じた圧力(液圧)を発生させる機構である。ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRは、それぞれ、摩擦制動部材を加圧することで車輪2FL,2FR,2RL,2RRに制動力を付与する機構である。
【0015】
また、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRは、それぞれ、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRに与えられる液圧を調整する機構である。還流機構37は、液圧を発生させる媒体としてのブレーキ液を上流側に、すなわちホイールシリンダ38側から圧力発生部32側に還流させる機構である。
【0016】
圧力発生部32は、マスタシリンダ32aと、リザーバタンク32bと、を有している。マスタシリンダ32aは、運転者によるブレーキペダル31の操作(踏み込み操作)に応じて発生する圧力に基づいて、リザーバタンク32bから補充されるブレーキ液を2つの吐出ポートに吐出する。
【0017】
マスタシリンダ32aの2つの吐出ポートは、それぞれ、開状態と閉状態とが電気的に切り替わる電磁弁33を介して、フロント側の圧力調整部34(34FRおよび34FL)と、リヤ側の圧力調整部34(34RRおよび34RL)と、に接続される。電磁弁33は、制御部(不図示)などから与えられる電気信号に基づいて開閉する。
【0018】
圧力調整部34は、開状態と閉状態とが電気的に切り替わる電磁弁35,36を有している。電磁弁35,36は、電磁弁33と、還流機構37のリザーバ41と、の間に設けられている。電磁弁35は、電磁弁33側に設けられ、電磁弁36は、リザーバ41側に設けられている。
【0019】
電磁弁35と電磁弁36との間には、ホイールシリンダ38が接続されている。これにより、電磁弁35,36は、制御部などから与えられる電気信号に基づいて開閉することで、ホイールシリンダ38の液圧を増圧したり、保持したり、減圧したりすることが可能である。
【0020】
より具体的に、電磁弁35は、通常時において開状態に設定されたいわゆるNO(ノーマルオープン)弁である。したがって、電気信号を受け付けていないオフ状態(通常時)の電磁弁35は、ホイールシリンダ38にブレーキ液を流入させてホイールシリンダ38の液圧を増加させることが可能な増圧弁として機能し、電気信号を受け付けたオン状態(作動時)の電磁弁35は、ホイールシリンダ38へのブレーキ液の流入を阻止してホイールシリンダ38の液圧を保持することが可能な保持弁として機能する。
【0021】
一方、電磁弁36は、通常時において閉状態に設定されたいわゆるNC(ノーマルクローズ)弁である。したがって、電気信号を受け付けていないオフ状態(通常時)の電磁弁36は、ホイールシリンダ38からのブレーキ液の流出を阻止してホイールシリンダ38の液圧を保持することが可能な保持弁として機能し、電気信号を受け付けたオン状態(作動時)の電磁弁36は、ホイールシリンダ38からブレーキ液を流出させてホイールシリンダ38の液圧を減圧することが可能な減圧弁として機能する。
【0022】
還流機構37は、リザーバ41と、ポンプ39と、モータ40と、液圧ダンパ100と、を有している。なお、
図1の例では、リザーバ41、ポンプ39、および液圧ダンパ100は、フロント側の圧力調整部34(34FRおよび34FL)と、リヤ側の圧力調整部34(34RRおよび34RL)と、に対してそれぞれ1つずつ設けられている。
【0023】
リザーバ41は、ホイールシリンダ38から流出するブレーキ液を一時的に貯蔵する。
【0024】
ポンプ39は、モータ40に駆動されることで、ブレーキ液をホイールシリンダ38側からマスタシリンダ32a側に汲み上げる。ポンプ39は、例えばピストンポンプ等の容積型ポンプである。ポンプ39は、ピストンポンプ以外の形式のポンプであってもよい。例えば、ポンプは、ギヤポンプ等であってもよい。また、ポンプ39は、吐出脈動を生じる。ポンプ39は、加圧源の一例である。なお、加圧源は、ポンプ39以外であってもよい。
【0025】
二つのポンプ39は、一つのモータ40によって駆動される。言い換えると、一つのモータ40が、二つのポンプ39の駆動について共用されている。モータ40は、制御部の制御によってポンプ39を駆動する。
【0026】
また、各ポンプ39の吐出側から延びる吐出油路42には、ポンプ39への逆流を防止する逆止弁29と絞り30とが並列に設けられている。絞り30は、例えばオリフィスである。吐出油路42は、ポンプ39と、電磁弁33および電磁弁35の間と、を接続している。吐出油路42は、油圧回路10の油路の一例である。
【0027】
液圧ダンパ100は、吐出油路42において、ポンプ39と、逆止弁29および絞り30と、の間に設けられている。よって、液圧ダンパ100には、ポンプ39から吐出されたブレーキ液の液圧が作用する。液圧ダンパ100は、ポンプ39の吐出脈動を低減するように構成されている。液圧ダンパ100の詳細は、後述する。
【0028】
制御部は、例えば、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を備えたECU(electronic control unit)等によって構成されている。制御部は、車両の各種状態量を検出するセンサ(不図示)の検出結果等に基づいて、油圧回路10を制御する。車両の各種状態量を検出するセンサは、例えば、ブレーキペダル31のストローク量を検出するセンサ、マスタシリンダ32a内の圧力を検出するセンサ、車輪2の回転速度(回転数)を検出するセンサ、車両の加速度(減速度)を検出するセンサ等である。
【0029】
制御部は、アンチロックブレーキ制御等の各種のブレーキ制御を行う。アンチロック制御は、例えば急な制動時や、路面抵抗が比較的低い路面上での制動時などにおいて発生しうる車輪2のロック(車輪速と実際の車速との乖離、スリップ)を抑制するための制御である。アンチロック制御は、例えば、モータ40を作動させ、ホイールシリンダ38側からマスタシリンダ32a側へのブレーキ液の還流を断続的に行うように電磁弁35,36を制御し、ホイールシリンダ38の圧力の減圧、保持、および増圧を適宜切り替えながら実施することで、車輪速と実際の車速との乖離を小さくする。
【0030】
図2は、液圧ダンパ100の例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダ103が自由状態の場合の断面図である。
図2に示されるように、液圧ダンパ100は、ハウジング101に取り付けられている。ハウジング101は、取付部材や支持部材とも称されうる。
【0031】
ハウジング101は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって構成されている。ハウジング101には、吐出油路42を構成する有底の孔101aが設けられている。孔101aは、ハウジング101の外面101bからハウジング101の内方に向かう第1方向D1に延びている。孔101aは、外周面に段差が設けられ第1軸Axを中心とした円柱状に形成され、ハウジング101の外面101bに開口している。第1軸Axは、第1方向D1に沿う。また、以下では、特に断らない限り、第1軸Axの軸方向および周方向を、単に軸方向および周方向と称する場合がある。第1軸Axは、中心軸とも称されうる。また、第1方向D1の反対方向を第2方向D2と称する。また、第1軸Axと直交し第1軸Axに向かう方向を第1直交方向D3と称し、第1軸Axと直交し第1軸Axから離れる方向を第2直交方向D4と称する。
【0032】
また、ハウジング101には、孔101aの上流側の吐出油路42を構成する第2通路101cと、孔101aの下流側の吐出油路42を構成する第1通路101dとが設けられている。
【0033】
また、ハウジング101には、コア102の一部およびブラダ103を収容する孔101aを形成する内面101eが設けられている。内面101eは、内周面101e1と、底面101e2と、を有している。内周面101e1は、第1軸Axを中心とした段付きの円筒内面状の形状を有している。底面101e2は、内周面101e1の第1方向D1の端部と接続され、第1軸Axと直交する方向に広がっている。孔101aは、液圧室の一例である。
【0034】
第2通路101cの第2開口101c1は、孔101aの内周面101e1に開口し孔101aと繋がっている。第2通路101cは、軸方向と交差する方向に延びている。第2通路101cは、ポンプ39と繋がっている。二つの第1通路101dは、孔101aの底面101e2に開口し孔101aと繋がっている。第1通路101dは、軸方向に沿って延びている。二つの第1通路101dの一方は、逆止弁29と繋がり、二つの第1通路101dの他方は、絞り30と繋がっている。第2通路101cおよび第1通路101dは、油路とも称され得る。
【0035】
また、ハウジング101は、複数の構成部材、具体的には第1構成部材105Aおよび第2構成部材105B、の組み合わせによって構成されている。第1構成部材105Aには、孔101aと、第2通路101cと、内周面101e1と、底面101e2の一部とが設けられている。第2構成部材105Bには、二つの第1通路101dと、底面101e2の他部と、が設けられている。なお、ハウジング101は、第1構成部材105Aおよび第2構成部材105B以外の他の構成部材を更に有していてもよいし、一つの構成部材によって構成されていてもよい。
【0036】
液圧ダンパ100は、ハウジング101に取り付けられたコア102と、コア102に取り付けられ外周面103aに液圧が作用するブラダ103と、を備えている。
【0037】
コア102は、ベース102aと、ベース102aから突出した突起102bと、を有している。コア102は、硬質材料で構成される部材である。硬質材料は、弾性体に対して十分に剛性が高い物質であり、例えばアルミニウム等の金属材料やプラスチック等である。
【0038】
ベース102aは、孔101aの第1方向D1の開口端部を閉塞している。ベース102aは、プラグ部102cと、支持部102dと、を有している。プラグ部102cは、孔101aに嵌められて当該孔101aを閉塞している。支持部102dは、プラグ部102cの第1方向D1の端面102eに設けられている。支持部102dは、第1軸Axと中心とした円板状に形成され、端面102eから第1方向D1に突出している。支持部102dの外径は、端面102eの外径よりも小さい。
【0039】
突起102bは、ベース102aの支持部102dから第1方向D1に突出している。突起102bは、第1軸Ax回りの回転体である。突起102bは、支持部102dに接続された基端102fと、基端102fの軸方向の反対側の先端102gと、基端102fから先端102gに向かって延びた外周面102hと、有している。基端102fは、ベース102aに一体化されている。
【0040】
外周面102hには、第1~第3凹部102i1,102i2,102i3が設けられている。第1~第3凹部102i1,102i2,102i3は、第1直交方向D3に凹んでいる。第1~第3凹部102i1,102i2,102i3は、第1軸Ax回りに環状に形成されている。第1凹部102i1は、基端102fに隣接され、第2凹部102i2は、第1凹部102i1の第1方向D1に位置され、第3凹部102i3は、第2凹部102i2の第1方向D1に位置されている。外周面102hのうち第1~第3凹部102i1,102i2,102i3の底部を形成する部分は、それぞれ、小径部とも称されうる。
【0041】
また、外周面102hは、第1~第3頂部102j1,102j2,102j3を有している。第1~第3頂部102j1,102j2,102j3は、第1軸Ax回りに環状に形成されている。第1頂部102j1は、第1凹部102i1と第2凹部102i2との間に位置され、第2頂部102j2は、第2凹部102i2と第3凹部102i3との間に位置され、第3頂部102j3は、第2頂部102j2と先端102gとの間に位置されている。第1頂部102j1は、第1~第3頂部102j1,102j2,102j3のうちで最も外径が大きい。すなわち、第2頂部102j2および第3頂部102j3は、第1頂部102j1よりも外径が小さい。また、第3頂部102j3は、第2頂部102j2よりも外径が小さい。第1~第3頂部102j1,102j2,102j3は、大径部とも称されうる。
【0042】
また、突起102bは、支持部102kと、延部102mと、を有している。支持部102kは、ブラダ103を支持している。支持部102kは、ブラダ103に液圧が作用していない状態で、突起102bにおけるブラダ103と接触している部分によって構成されている。支持部102kは、基端102fおよび第1頂部102j1を含み、支持部102kには、第1凹部102i1が設けられている。延部102mは、支持部102kから第1方向D1に延びている。延部102mは、ブラダ103に液圧が作用していない状態で、突起102bにおけるブラダ103と離間している部分によって構成されている。延部102mは、第2頂部102j2、第3頂部102j3、および先端102gを含み、延部102mには、第2凹部102i2および第3凹部102i3が設けられている。
【0043】
延部102mおよび支持部102kは、それぞれ、第1方向D1に沿った第1軸Ax回りの外周面102h1,102h2を有している。外周面102h1,102h2は、それぞれ、第1方向D1に沿った第1軸Ax回りの回転面である。二つの外周面102h1,102h2は、連続している。当該二つの外周面102h1,102h2は、それぞれ、突起102bの外周面102hに含まれる。外周面102h1は、第1外周面の一例である。
【0044】
延部102mの外周面102h1は、側部102n1と先端102gとを含む。側部102n1には、第2頂部102j2および第3頂部102j3を含み、側部102n1には、第2凹部102i2、第3凹部102i3が設けられている。
【0045】
図3は、突起102bの外周面102h1,102h2の第1軸Axを含む断面における外形線L1,L3を示す図である。
図3に示されるように、突起102bの外周面102h1は、曲面によって構成されている。換言すると、外周面102h
1は、曲面を含む。また、外周面102h1は、先端102gを除き第1方向D1と直交する平面を含まない。具体的には、外周面102h1は、側部102n1から先端102gにかけて滑らかであり、側部102n1から先端102gにかけて外径が滑らかに変化する。すなわち、外周面102h1は、第1方向D1において外径が滑らかに変化する。ここで、「滑らか」とは、外周面102h1の第1軸Axを含む任意の断面における外形線L1を関数y=f(x)(x:第1軸Axの軸方向、y:第1軸Axと直交する方向)で表したときに、外形線L1の所定区間内の任意の位置、すなわち各位置で、当該関数を微分可能であることを言う。また、外形線L1のうち先端102gを除いた部分の各位置での接線L2と前記第1軸Axとのなす角度α1は、90度と異なる。また、外形線L1は、全域が曲線で構成されていている。すなわち、外周面102h1は、第1方向D1において外径が連続的に変化する。なお、外形線L1には、部分的に直線が設けられていてもよい。このような外周面102h1の形状は、以下のように別の言い方をすることができる。すなわち、外周面102h1の第1方向D1と沿う任意の断面における外形線L1が、先端102gを除き、接線L2が第1方向D1と斜めに交差するか若しくは第1方向D1と平行である曲線を含むとともに第1方向D1と直交する線分を含まない。
【0046】
また、本実施形態では、突起102bの外形線L1における変曲点P1での角度α1は、例えば、25度~70度の範囲内に設定されている。なお、変曲点P1での角度α1は、25度~70度の範囲外であってもよい。
【0047】
また、
図2に示されるように、延部102mでは、当該延部102mの第2方向D2の端102m1、第2頂部102j2、第3頂部102j3の順で、外形が小さい。また、外周面102h1のうち、先端102gに最も近い第3凹部102i3よりも第1方向D1に位置された領域102rは、先端102gに近づくにつれて径が小さくなるように形成されている。領域102rは、第1領域の一例である。
【0048】
図2に示されるように、支持部102kの外周面102h2は、側部102n2と、基端102fと、を含む。側部102n2は、第1頂部102j1を含み、側部102n2には、第1凹部102i1が設けられている。
図3に示されるように、支持部102kの外周面102h2は、第1方向D1において外径が滑らかに変化する。また、外周面102h2の第1軸Axを含む断面における外形線L3の各位置での接線L4と第1軸Axとのなす角度α2は、90度と異なる。また、外形線L3は、全域が曲線で構成されている。すなわち、外周面102h2は、第1方向D1において外径が連続的に変化する。なお、外周面102h2は、外径が滑らかに変化していなくてもよい。また、外形線L3のある位置での接線L4と第1軸Axとのなす角度α2が、90度であってもよい。また、外形線L3には、部分的に直線が設けられていてもよい。
【0049】
図2に示されるように、ブラダ103は、コア102における延部102mの外周面102h1との間に気体を封入した状態で外周面102h1を覆うようコア102に取り付けられている。気体は、例えば、窒素ガス等である。ブラダ103は、弾性部材によって構成されており、弾性変形可能である。弾性部材とは、エチレンプロピレンゴム等のエラストマである。
【0050】
詳細には、ブラダ103は、有底の円筒状に形成されて、外周面103aと、内周面103bと、を有している。外周面103aは、ハウジング101の内面101eに面し、内面101eとの間に油路101a1を形成する。すなわち、外周面103aは油路101a1に面しており、当該外周面103aには、油路101a1中のブレーキ液の液圧が作用する。油路101a1は、孔101aの一部によって構成され、第2通路101cおよび第1通路101dと繋がっている。すなわち、油路101a1は、吐出油路42を構成する。内周面103bは、コア102における延部102mの外周面102h1との間に気体を封入した状態で外周面102h1を覆っている。内周面103bは、突起102bに面している。内周面103bは、コア102における延部102mの外周面102h1との間に気体室111を形成している。気体室111には、気体が収容されている。外周面103aは、第2外周面の一例である。
【0051】
図4は、液圧ダンパ100の例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダ103が収縮状態の場合の断面図である。
図4に示されるように、コア102の突起102bにおける延部102mの外周面102h1に第2凹部102i2および第3凹部102i3が設けられているため、ブラダ103の外周面103aに液圧が作用した状態では、ブラダ103の内周面103bは、部分的にコア102の外周面102h1と当接する。すなわち、ブラダ103の外周面103aに液圧が作用した状態で、コア102の外周面102h1が、ブラダ103の内周面103bの一部とは接触し内周面103bの全部とは接触しないように、当該外周面102h1に第2凹部102i2および第3凹部102i3が設けられている。
【0052】
また、
図2に示されるように、ブラダ103は、円筒部103cと、壁部103dと、を有している。円筒部103cは、第1軸Axを中心とした円筒状である。よって、円筒部103cの内周面103bは、第1軸Axと中心とした円筒状である。円筒部103cは、ブラダ103の第2方向D2の端部103eを含む。壁部103dは、円筒部103cの第2方向D2の開口部を閉塞している。
【0053】
また、ブラダ103には、ブラダ103の端部103eから第2方向D2に凹んだ凹部103fが設けられている。凹部103fは、内周面103bに囲まれている。すなわち、内周面103bは、凹部103fを形成している。凹部103fの一部によって、気体室111が構成されている。
【0054】
また、円筒部103cの内周面103bは、抜き勾配を有した形状に形成されている。すなわち、ブラダ103の内周面103bは、第1方向D1に進むにつれて径が小さくなる。
【0055】
また、ブラダ103、コア102に取り付けられた取付部103gと、取付部103gから第1方向D1に延びた延部103hと、を有している。
【0056】
取付部103gは、ブラダ103の端部103eに設けられている。取付部103gは、第1軸Axを中心とした環状に形成されている。取付部103gは、第1部分103iと、内向きフランジ103jと、を有している。第1部分103iは、突起102bとハウジング101の内周面101e1との間に圧入されて、第1軸Axと直交する方向に圧縮した状態となっている。詳細には、第1部分103iは、突起102bの少なくとも第1頂部102j1を含む部分とハウジング101の内周面101e1との間に圧入されている。
【0057】
内向きフランジ103jは、ブラダ103の端部103eに設けられている。内向きフランジ103jは、第1部分103iの第2方向D2に位置されている。内向きフランジ103jは、第1部分103iから第1直交方向D3に突出している。別の言い方をすると、内向きフランジ103jは、ブラダ103の端部103eに含まれた端縁103e1から第1方向D1と交差して内向きに張り出している。すなわち、内向きフランジ103jは、ブラダ103の端縁103e1から第1直交方向D3に張り出している。端縁103e1は、ブラダ103の第2方向D2の端面における内周側の環状の端縁である。内向きフランジ103jは、第1軸Axを中心とした円環状に形成されている。内向きフランジ103jは、コア102の突起102bの第1凹部102i1内に入れられてコア102に引っ掛けられている。第1凹部102i1は、ブラダ103の一部である内向きフランジ103jを収容した収容部の一例である。
【0058】
ここで、内向きフランジ103jの第1方向D1には、コア102の凸部102pが位置されている。凸部102pは、コア102において、内向きフランジ103jの第1直交方向D3の端部103j1よりも第2直交方向D4に突出した部分であり、第1頂部102j1を含む。この凸部102pの外周面は、凸曲面102p1によって構成されている。凸曲面102p1は、内向きフランジ103jに対して先端102gに近い側に隣接し、ブラダ103の外周面103aに液圧が作用していない状態でブラダ103の内周面103bと当接している。ここで、本実施形態では、コア102の外周面102h1は、凸曲面102p1よりも第1方向D1に位置され、凸曲面102p1から第1方向D1に延びている。当該外周面102h1の最大径は、内向きフランジ103jの内径よりも小さい。
【0059】
また、延部103hは、ハウジング101およびコア102と離間している。延部103hの外周面103aは、ハウジング101の内面101eとの間に、油路101a1を形成している。
【0060】
延部103hの内周面103bは、突起102bにおける延部102mの外周面102h1との間に気体室111を形成している。気体室111は、第2凹部102i2および第3凹部102i3を含む。すなわち、延部103hは、少なくとも第2凹部102i2および第3凹部102i3を含む気体室111を形成する。
【0061】
また、上記の構成においては、コア102における外周面102h1の領域102rにおいては、ブラダ103の内周面103bとの間の隙間が、先端102gに近づくにつれて狭くなる。すなわち、コア102における外周面102h1の領域102rと、ブラダ103の内周面103bとの間の隙間は、先端102gと内周面103bとの間が最も狭い。また、コア102の第2頂部102j2とブラダ103の内周面103bとの間の第1軸Axと直交する方向の隙間は、コア102の第3頂部102j3とブラダ103の内周面103bとの間の第1軸Axと直交する方向の隙間よりも小さい。
【0062】
上記の構成では、
図2においてポンプ39から吐出されたブレーキ液は、第2通路101c、油路101a1、および第1通路101dを、この順に流れる。ブレーキ液が油路101a1を流れる際に、液圧ダンパ100におけるブラダ103の外周面103aに液圧が作用する。
図4に示されるように、ブラダ103は、作用する液圧によって、コア102の突起102bに近づくように弾性的に収縮し、突起102bの先端102g、第2頂部102j2、および第3頂部102j3に接触する。このとき、例えば、ブラダ103は、先端102gおよび第2頂部102j2に接触した後に、第3頂部102j3に接触する。ブラダ103と、先端102gおよび第2頂部102j2との接触は、先端102gおよび第2頂部102j2のうちいずれか一方が先であってもいし、それらの両方と略同時であってもよい。この状態では、ブラダ103によって、第2凹部102i2および第3凹部102i3が閉じられる。すなわち、気体室111が、第2凹部102i2と第3凹部102i3との2箇所に形成される。このときの気体室111の合計の容積は、ブラダ103が自由状態(
図2)の場合の気体室111の容積に比べて小さい。すなわち、気体室111内の気体が圧縮されている。以後、ブラダ103が自由状態の場合の気体室111の容積を初期容積とも称する。
【0063】
次に、ポンプ39の吐出脈動により、ポンプ39からブレーキ液が吐出されなくなった場合には、液圧ダンパ100におけるブラダ103の外周面103aに作用する液圧が小さくなるかゼロになる。これにより、ブラダ103が自由状態に近づくまたは自由状態となる。この場合、気体室111の容積が、初期容積に近づくか初期容積に戻る。このようなブラダ103の気体室111の容積を変化させる動作によって、ポンプ39の吐出脈動(圧力変動)が低減される。
【0064】
本実施形態の液圧ダンパ100の性能を、比較例と比較によって説明する。
図5は、比較例の液圧ダンパ200の例示的かつ模式的な断面図であって、ブラダ203が自由状態の場合の断面図である。
【0065】
図5に示されるように、比較例の液圧ダンパ200は、本実施形態の液圧ダンパ100に対して、コア202に第2凹部102i2および第3凹部102i3が設けられていない。すなわち、コア202の第1外周面202n1の第1軸Axを含む断面における外形線が直線である。
【0066】
図6は、実施形態および比較例の液圧と消費液量との関係を示す図である。
図6の横軸は、ブラダ103,203に作用する液圧を示し、
図6の縦軸は、消費液量を示す。消費液量とは、加圧前の状態でのブラダ103,203の外周面103a,203aと加圧された状態でのブラダ103,203の外周面103a,203aとの間の容積である。また、
図6中の実線が本実施形態のブラダ103を示し、
図6中の破線が比較例のブラダ203を示している。
図6から分かるように、液圧が所定の液圧N1以上になると、本実施形態のブラダ103の方が、比較例のブラダ203に比べて、消費液量の増大が緩やかになる。この液圧N1は、ブラダ103が第2頂部102j2に接触し、ブラダ103によって第2凹部102i2が閉じられたときの液圧である。
【0067】
また、
図2,4に示されるように、ブラダ103の底壁103nの外面である底面103n1には、溝103kが設けられている。溝103kは、例えば、底面103n1から第2方向D2に略一定の深さで凹むとともに、底面103n1に沿って第1方向D1および第2方向D2と交差する方向に延びている。これら複数の溝103kは、第2方向D2に見た場合に、例えば十字状に設けられる。複数の溝103kは、互いに繋がっている。なお、第2方向D2に見た場合の溝103kの形状は、十字状には限定されず、メッシュ状や、梯子状等であってもよいし、同心円状の溝と放射状に延びる溝とが交差するような形状であってもよいし、一筆書き状に繋がった屈曲した溝であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。また、いずれの形状においても複数の溝103kが設けられる場合、それら複数の溝103kは、互いに繋がっていてもよい。
【0068】
このような構成により、例えば、ブラダ103がコア102の突起102bに正しく装着されていなかったような場合や、その他の原因によって、ブラダ103が突起102bから外れ、ブラダ103の底面103n1と孔101aの底面101e2とが接した場合、当該底面103n1と底面101e2との間には、少なくとも溝103kの容積に相当する隙間ができる。
図2に示されるように、第1開口101d1は、底面101e2に開口しているが、溝103kが設けられていることにより、ブラダ103の底面103n1は、第1開口101d1を塞ぐことなく、また、底面103n1と底面101e2との間が完全に塞がれることなく、孔101a内において、溝103kと底面101e2との間の隙間が第1開口101d1と第2開口101c1との間の液体の通路の一部を構成することができる。したがって、本実施形態によれば、何らかの原因でブラダ103がコア102から外れ、ブラダ103の底面103n1と孔101aの底面101e2とが接したような場合にあっても、液圧ダンパ100において、ポンプ39の吐出側から延びる吐出油路42が遮断されるのが、抑制されうる。底面103n1は、外周面103aの一部であって、第1端部の一例であり、ブラダ103の第1方向D1の端面とも称されうる。底面103n1と面した孔101aの底面101e2は、対向面の一例である。また、溝103kは、凹部の一例である。また、底面103n1は、溝103kの底部に対する相対的な凸部の一例である。
【0069】
また、
図7に示されるように、ハウジング101には、液圧ダンパ100の液圧室としての孔101aと、ポンプ39(
図1参照)の液圧室としての孔101fとが、互いに隣接して平行に設けられている。ポンプ39は、例えば、単筒のピストンポンプである。孔101aの中心である第1軸Axと、孔101fの中心である第2軸Ax2とは、互いに平行である。また、これら孔101a,101fは、同一の外面101bに開口されているため、それぞれ別の面に開口されている場合に比べて、孔101a,101fの加工の手間およびコストが低減されうる。また、
図7に示される第2通路101cの孔の延長線としての二点鎖線から明らかとなるように、孔101aと孔101fとを繋ぐ第2通路101cは、孔101fの開口端101f1から、加工することができる。ポンプ39を回転駆動するモータ40が収容される液圧室としての孔101g(の第3軸Ax3)は、第1軸Axおよび第2軸Ax2と平行な方向に対して交差し、かつ直交している。孔101fは、外面101bから孔101gに至る貫通孔である。このような構成によれば、ハウジング101に、ポンプ39、モータ40、および液圧ダンパ100を、より効率良く配置することができる。
【0070】
以上、説明したように、本実施形態の液圧ダンパ100では、底面103n1(第1端部)には、ブラダ103がコア102から脱落して底面103n1と孔101a(液圧室)の底面101e2(対向面)とが接した場合に当該底面103n1と当該底面101e2との間で第1開口101d1と第2開口101c1との間の液体通路の少なくとも一部を形成する溝103k(凹部)が設けられている。このような構成によれば、何らかの原因でブラダ103がコア102から外れ、ブラダ103の底面103n1と孔101aの底面101e2とが接したような場合にあっても、例えば、底面103n1と底面101e2との間が完全に塞がれることなく、孔101a内において、溝103kと底面101e2との間の隙間が第1開口101d1と第2開口101c1との間の液体の通路の一部を構成する。したがって、液圧ダンパ100において、ポンプ39の吐出側から延びる吐出油路42が遮断されるのが、抑制されうる。
【0071】
なお、上記実施形態の例には限定されず、底面103n1に突起(凸部、凸条、不図示)が設けられた構成や、底面101e2に溝(凹部、凹溝、不図示)が設けられた構成、底面101e2に突起(凸部、凸条、不図示)が設けられた構成等にあっても、それら凹部および凸部のうち少なくとも一方によって、底面103n1(第1端部)と底面101e2(対向面)との間に、第1開口101d1と第2開口101c1との間の液体の通路の一部を形成する隙間を設けることができる。また、上記実施形態では、第2通路101cの第2開口101c1は、内面101eのうち内周面101e1に開口されていたが、これには限定されず、第2開口101c1も、底面103n1に開口されてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、上述したように、ブラダ103の一部である内向きフランジ103jが第1凹部102i1(収容部)内に圧入されることにより、コア102に取り付けられている。上述した底面103n1および底面101e2のうち少なくとも一方に設けられた凸部または凹部による通路確保の効果は、本実施形態のようにブラダ103がコア102に部分的に圧入されることによりコア102に取り付けられている構成において有益である。言い換えると、ブラダ103がコア102から外れた場合にあっても、孔101a(液圧室)内において液体の通路を確保できるため、コア102へのブラダ103の取付方法として、比較的手間およびコストの低い圧入が採用されやすい。よって、このような構成によれば、例えば、液圧ダンパ100の製造の手間およびコストがより低減されやすい。
【0073】
また、本実施形態では、第1凹部102i1(収容部)は、第1軸Axの周方向、言い換えると外周面102h1(第1外周面)の周方向に連続して設けられている。このような構成によれば、例えば、ブラダ103が互いに離れた複数箇所で支持された場合に比べて、コア102とブラダ103との結合強度が高まりやすい。
【0074】
また、本実施形態の液圧ダンパ100では、突起102bの外周面102h1は、曲面を含むとともに、先端102gを除き第1方向D1と直交する平面を含まない。よって、本実施形態によれば、例えば、ブラダ103が、当該ブラダ103の外周面103aに作用する液圧によってコア102の突起102bに近づくように弾性的に収縮し、コア102に接触して弾性的に変形した場合でも、ブラダ103における応力集中を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、ブラダ103に発生する応力を小さくしやすい。したがって、液圧ダンパ100の耐久性の低下を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、突起102bに第2凹部102i2および第3凹部102i3が設けられているので、ブラダ103が突起102bの第2頂部102j2および第3頂部102j3に接触した後も、第2凹部102i2および第3凹部102i3内に向かって変形可能である。よって、ポンプ39の吐出脈動の低減を、比較例に比べて、高い液圧で発揮することができる。
【0076】
また、本実施形態の液圧ダンパ100では、例えば、外周面102h1は、ブラダ103の外周面103aに液圧が作用していない状態で、先端102gを含み当該先端102gに近付くにつれてブラダ103の内周面103bとの間の隙間が狭くなる領域102r(第1領域)を含む。よって、本実施形態によれば、例えば、ブラダ103が、外周面103aに作用する液圧によってコア102の突起102bに近づくように弾性的に収縮した場合に、当該ブラダ103は、コア102の領域102rにおいては先端102gと最初に接触する。よって、本実施形態によれば、ブラダ103の第1方向D1の座屈を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態の液圧ダンパ100では、例えば、ブラダ103は、先端102gとは第1方向の反対側の環状の端縁103e1と、端縁103e1から第1方向D1と交差して内向きに張り出した内向きフランジ103jと、を有している。よって、本実施形態によれば、例えば、ブラダ103をコア102に引っ掛けるためのフランジが端縁103e1から第1方向と交差して外向きに張り出した構成に比べ、ブラダ103の小型化をすることができる。
【0078】
また、本実施形態の液圧ダンパ100では、例えば、コア102は、内向きフランジ103jに対して先端102gに近い側に隣接し、ブラダ103の外周面103aに液圧が作用していない状態でブラダ103の内周面103bと当接した凸曲面102p1を有している。コア102の外周面102h1は、凸曲面102p1よりも第1方向D1に位置されている。外周面102h1の最大径は、内向きフランジ103jの内径よりも小さい。よって、本実施形態によれば、例えば、ブラダ103をコア102の突起102bに対して第2方向D2に移動させてコア102に取り付ける場合に、ブラダ103の外周面102h1が内向きフランジ103jの内周部に接触するのを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、コア102に対するブラダ103の取り付けがしやすい。
【0079】
また、本実施形態では、突起102bの外形線L1における変曲点P1での角度α1は、例えば、25度~70度の範囲内に設定されている。ここで、変曲点P1での角度α1が小さい程すなわち外形線L1の変化が緩やかな程、気体室111の体積を確保するためには、突起102bの軸方向の長さを長くする必要がある。一方、変曲点P1での角度α1が大きい程、すなわち外形線L1の変化が急な程、ブラダ103の変形に伴って生じるブラダ103の屈曲部の曲率半径が小さくなり、ブラダ103の応力が高くなりやすい。そこで、本実施形態では、例えば、変曲点P1での角度α1の範囲を上記のとおりにすることにより、液圧ダンパ100の小型化と耐久性との両立を図っている。
【0080】
また、本実施形態では、突起102bの外形線L1,L3は、全域が曲線で構成されていている。よって、外形線L1,L3に部分的に直線が設けられた場合に比べて、突起102bの軸方向の長さを短くしやすい。
【0081】
なお、上記実施形態では、液体ダンパが油路内に臨む状態で取り付けられた例が示されたが、これに限定されない。例えば、液体ダンパは、容器の室内に臨む状態で設けられていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、突起の延部の第1外周面に二つの凹部が設けられた例が示されたが、突起の延部の凹部は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ブラダに液圧が作用していない状態では、ブラダが第1頂部および第2頂部と離間した例が示されたが、これに限られない。例えば、ブラダに液圧が作用していない状態で、ブラダが第1頂部および第2頂部と接触していていもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、液圧ダンパがブレーキ装置の油圧回路に設けられた例が示されたが、液圧ダンパは、ブレーキ装置以外の各種の油圧回路に設けられてよい。
【0085】
また、上記実施形態では、突起の第1外周面が回転面によって構成された例が示されたが、これに限られない。例えば、第1外周面は、螺旋形状や楕円形状を含んだ形状であってもよい。また、第1外周面は、円錐面を含んでいてもよい。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
100…液圧ダンパ、101a…孔(液圧室)、101c…第2通路、101c1…第2開口、101d…第1通路、101d1…第1開口、101e…内面、101e2…底面(対向面)、102…コア、102a…ベース、102b…突起、102g…先端、102i1…第1凹部(収容部)、102i2…第2凹部(凹部)、102i3…第3凹部(凹部)、102h1…外周面(第1外周面)、102p1…凸曲面、102r…領域(第1領域)、103…ブラダ、103a…外周面(第2外周面)、103b…内周面、103e1…端縁、103j…内向きフランジ、103k…溝(凹部)、103n1…底面(第1端部、凸部)、D1…第1方向。