(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびそれからなる高電圧部品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230411BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20230411BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230411BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230411BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230411BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230411BHJP
H01B 3/42 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L77/06
C08K3/04
C08K7/14
C08L23/08
C08L23/26
H01B3/42 D
(21)【出願番号】P 2018211096
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大田 健史
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭雄
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144154(JP,A)
【文献】特開2016-056355(JP,A)
【文献】特開2016-023291(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148796(WO,A1)
【文献】特開2017-027906(JP,A)
【文献】特開2000-038497(JP,A)
【文献】特開平06-057110(JP,A)
【文献】特開平02-138366(JP,A)
【文献】特開2002-179909(JP,A)
【文献】特開昭61-163964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
H01B 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)ポリアミド樹脂9~24重量部、(C)変性エラストマー6~44重量部、(D)ガラス繊維25~89重量部、および(E)カーボンブラック0.05~1.7重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
前記(B)ポリアミド樹脂がポリアミド610であり、前記(C)変性エラストマーがα-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、および酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の、IEC60112に準拠して測定される比較トラッキング指数が600V以上である請求項
1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の、23℃の水中に24時間浸漬したときの吸水率が0.12%以下である請求項1
または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる電気自動車における高電圧部品。
【請求項5】
前記電気自動車における高電圧部品が、インバーターからモーターへ電力を供給するケーブルのコネクターである請求項
4に記載の高電圧部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐トラッキング性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTと略記することがある。)は、電気特性、耐薬品性、耐熱性、寸法安定性などに優れているため、各種の電気・電子機器部品、自動車、列車、電車などの車両用内外装部材、その他の一般工業製品製造用材料として広く使用されている。
【0003】
電気自動車には、使用時に高電圧が印加される部品(高電圧部品)が使用されており、その場合、トラッキング現象を抑制するため、その高電圧部品の材料として使用される樹脂組成物には高い耐トラッキング性が要求される。本明細書における「電気自動車」には、モーターとエンジンの双方を備えるハイブリット車や燃料電池車を含む。ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する樹脂組成物は、優れた耐トラッキング性を有する材料として知られ、高電圧部品向けの樹脂材料として使用されている。
【0004】
しかし、近年、自動車部品の一層の小型化により、高電圧部品の表面において十分に長い絶縁距離を確保することが難しくなり、トラッキング現象が従来よりも発生しやすくなっている。そのため、そのような高電圧部品に使用する樹脂材料には、従来よりも高い耐トラッキング性が要求されるようになった。カーボンブラックを添加した黒色のガラス繊維強化のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は耐トラッキング性が悪く、その要求を満たすことができなかった。
【0005】
上記の問題を解決するため、特許文献1にはポリブチレンテレフタレート樹脂にポリアミド樹脂と変性ポリオレフィン樹脂を配合する方法が提案されている。また、特許文献2にはポリブチレンテレフタレート樹脂に所定の有機顔料を配合する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-59497号公報
【文献】国際公開第2014/175450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂組成物は、吸水率が高いという問題があった。また吸水後の部品の寸法変化量が大きいため、コネクターやケースなどの嵌合部品には適していなかった。また、特許文献2に開示された樹脂組成物は、高温環境下に曝露された場合、変色するという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、優れた耐トラッキング性を有し吸水率が低い黒色ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究、検討を重ねた結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂に特定量のポリアミド樹脂と変性エラストマーを配合することで、電気自動車の高電圧部品に適した優れた耐トラッキング性を有し吸水率の低いポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)ポリアミド樹脂9~24重量部、(C)変性エラストマー6~44重量部、(D)ガラス繊維25~89重量部、および(E)カーボンブラック0.05~1.7重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記(B)ポリアミド樹脂がポリアミド610であり、前記(C)変性エラストマーがα-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、および酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種である(1)項または(2)項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の、IEC60112に準拠して測定される比較トラッキング指数が600V以上である(1)項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(3)前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の、23℃の水中に24時間浸漬したときの吸水率が0.12%以下である(1)項または(2)項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)(1)項~(3)項のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる電気自動車における高電圧部品。
(5)前記電気自動車における高電圧部品がインバーターからモーターへ電力を供給するケーブルのコネクターである(4)項に記載の高電圧部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気自動車の高電圧部品に適した優れた耐トラッキング性を有する吸水率の低いポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)ポリアミド樹脂9~24重量部、(C)変性エラストマー6~44重量部、(D)ガラス繊維25~89重量部、および(E)カーボンブラック0.05~1.7重量部を配合してなる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分が互いに反応した反応物を含むが、当該反応物は複雑な反応により生成されたものであり、その構造を特定することは実際的でない事情が存在する。したがって、本発明は配合する成分により発明を特定するものである。
【0014】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂>
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、1,4-ブタンジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体とを重縮合することによって得られる重合体である。テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルなどが挙げられる。1,4-ブタンジオールのエステル形成性誘導体としては、例えば、1,4-ブタンジオールエステルなどのジオールのアルキルエステルなどが挙げられる。
【0015】
本発明の特性を損なわない範囲であれば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とともに、他のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を共重合したものであってもよいし、1,4-ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体とともに、他のジオールまたはそのエステル形成性誘導体を共重合したものであってもよい。共重合成分として用いられるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸やこれらのアルキルエステルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、共重合成分として用いられるジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、分子量400~6000のポリエチレングリコールやポリ1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの長鎖グリコールやこれらの脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これら共重合成分は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を形成する原料の20重量%以下が好ましい。
【0016】
このような共重合体の好ましい例としては、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0017】
<ポリアミド樹脂>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(B)ポリアミド樹脂を含有する。本発明で用いる(B)ポリアミド樹脂は、3員環以上のラクタム、重合可能なアミノ酸、ジアミンと二塩基酸、あるいはこれらの混合物の重合によって得られるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0018】
具体的には、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタムなどのラクタムから得られるポリアミド樹脂、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノ酸から得られるポリアミド樹脂、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ジミノペンタン、3-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサンなどのジアミンとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂、あるいはこれらの任意の共重合体が挙げられる。また、これらを2種以上配合してもよい。
【0019】
本発明の(B)ポリアミド樹脂の製造方法に特に制限はなく、例えば、上記記載の3員環以上のラクタム、重合可能なアミノ酸、ジアミンと二塩基酸、あるいはこれらの混合物を重合缶内で、加圧、高温下で縮合させることによりオリゴマーを生成し、その後、減圧により適切な溶融粘度まで重合を進行させることにより所望のポリアミド樹脂を得ることができる。もちろん、市販品を使用することもできる。
【0020】
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11,ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/612、ナイロンMXD(m-キシリレンジアミン)6、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/M5Tコポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン66/6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン66/6I/6コポリマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。特に、低吸水性であるナイロン610が好ましい。
【0021】
本発明で用いる(B)ポリアミド樹脂の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、9~24重量部である。配合量が9重量部未満であると比較トラッキング指数が600Vに到達せず、十分な耐トラッキング特性を得ることができないため好ましくない。また、配合量が24重量部を超えると吸水率が高くなるため好ましくない。
【0022】
<変性エラストマー>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(C)変性エラストマーを含有する。本発明で用いる(C)変性エラストマーは、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体、および酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0023】
α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体は、α-オレフィン、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルおよび必要に応じてこれらと共重合可能な不飽和酸モノマを共重合することにより得られる共重合体である。全共重合成分中、α-オレフィンおよびα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを合計して60重量%以上用いることが好ましい。
【0024】
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン等を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。中でも、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。また、上記成分と共重合可能な不飽和酸モノマとしては、例えば、ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアクリル酸およびメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、スチレンなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0025】
本発明におけるα-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとを共重合成分とするグリシジル基含有共重合体の好ましい例としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0026】
酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、ポリアミド樹脂との相互作用を発揮し得る酸基が導入された変性エラストマーである。
【0027】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、2種以上のオレフィンを共重合してなるものが挙げられる。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、及び炭素数4~8のα-オレフィン等が挙げられる。このうち炭素数4~8のα-オレフィンとしては、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
【0028】
これらのなかでも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体、及び、プロピレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0029】
即ち、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体(EOR)が挙げられる。また、プロピレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体としては、プロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。これらのなかでも、EPR、EBR、EORが好ましく、EBR、EORがより好ましい。
【0030】
一方、オレフィン系熱可塑性エラストマーに導入される酸基としては、酸無水物基(-CO-O-OC-)及び/又はカルボキシル基(-COOH)等が挙げられる。これらの反応性基をエラストマーに付与する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0031】
上記酸基のなかでも、特に酸無水物基が好ましい。この酸無水物基を導入するための単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等の酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
即ち、酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性されたエチレン-1-ブテン共重合体、又は、無水マレイン酸変性されたエチレン・オクテン共重合体が特に好ましい。なお、相容化剤として、酸無水物基等の酸基が導入されたオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる場合、その酸基の量は特に限定されない。
【0033】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における(C)変性エラストマーの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して6~44重量部である。(C)変性エラストマー量の配合量が6重量部未満であると耐トラッキング性が低下し、44重量部を超えると剛性が低下するため好ましくない。
【0034】
<ガラス繊維>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(D)ガラス繊維を含有する。本発明で用いる(D)ガラス繊維の溶融混錬後のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。また、(B)ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
【0035】
本発明で用いる(D)ガラス繊維の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100重量部に対し、25~89重量部である。配合量が29重量部未満であると材料強度が低いことから好ましくない。配合量が89重量部を超えると射出成形時の流動性が低下するため好ましくない。
【0036】
<カーボンブラック>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(E)カーボンブラックを含有する。本発明で用いる(E)カーボンブラックは、その製法により、ファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック等に、また原料の違いにより、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、オイルブラック、ガスブラック等に分類され、本発明においては、いずれも使用できるが、その成形品中の平均一次凝集径は、20~70nmであることが好ましく、特に好ましくは平均粒子系が30~60nmである。平均一次凝集径が20nm未満では、樹脂への分散性が低下する。一方、70nmを超えると機械的特性が低下する可能性がある。
【0037】
本発明で用いる(E)成分の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、0.05~1.7重量部である。配合量が0.05重量部未満であると十分な黒色が得られない。配合量が1.7重量部を超えると比較トラッキング指数が600Vに到達しない。
【0038】
<その他>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリアミド樹脂、および(C)変性エラストマー以外の樹脂成分(以下、「他の樹脂成分」と表す場合がある。)、(D)ガラス繊維以外の無機充填材、およびその他添加剤などを添加することができる。
【0039】
他の樹脂成分としては、溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、水添または未水添SBS樹脂(スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、水添または未水添SIS樹脂(スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体)、未変性のポリオレフィン樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0040】
(D)ガラス繊維以外の無機充填材としては、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどのウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウムなどの粉状、粒状または板状充填材などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0041】
添加剤は、例えばエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ノボラック型、グリシジルエステル型等)、リン系安定剤(ホスファイト系酸化防止剤等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、リレン、ぺリレン、ナフタトシアニン、キナクリドン、酸化チタン、酸化鉄、アゾ系、モノアゾ系、金属錯塩等)、染料(アジン系、アゾ系、ぺリレン、アンスラキノン等)、結晶核剤(タルク、ポリエーテルエーテルケトン等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、縮合リン酸エステル、ホスフィン酸塩、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、着色防止剤(次亜リン酸塩等)、他の重合体などを含有することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL(mm)、スクリュー直径をD(mm)とすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。二軸押出機のL/Dの上限は150であり、好ましくはL/Dが30を超え、100以下のものが使用できる。
【0043】
また、本発明において溶融混練に二軸押出機を用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。そのため、スクリュー全長に対するニーディングディスクの合計長さ(ニーディングゾーン)の割合は、5~50%の範囲が好ましく、10~40%の範囲であればさらに好ましい。
【0044】
本発明において溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および必要に応じてその他成分を供給する方法や、主投入口から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(D)ガラス繊維を供給し溶融混合する方法などが挙げられる。あるいは(A)~(E)の合計量100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。
【0045】
本発明の樹脂組成物からなる成形品の、IEC60112に準拠して測定される比較トラッキング指数は、600V以上であることが好ましい。比較トラッキング指数600V以上を達成することで、後述する電気自動車の高電圧部品として好適に使用することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物からなる成形品の、23℃の水中に24時間浸漬したときの吸水率は、0.12%以下であることが好ましい。このような吸水率とすることで、寸法安定性に優れた成形品として好適に使用することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用でき、フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。
【0048】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特に電気自動車の高電圧部品に好適である。さらに、耐トラッキング性が要求され、かつ黒色が求められるインバーターからモーターへ電力を供給するケーブルのコネクターに好適である。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、下記の具体的な用途に使用することができる。具体例としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、リチウムイオンバッテリー、パワーデリバリーモジュール、走行用モーター、バスバーの絶縁材料、高電圧ケーブル、モーター用コネクター、インバーター冷却用電動ウォーターポンプ、インバーターハウジング、インバーター用コネクター、サービスプラグなどの電気自動車部品、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジング、および内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。
【0050】
更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。
【0051】
また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類、化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例2、9、および11は参考例とする。
【0053】
実施例および比較例に使用した配合組成物を示す。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1100S
(B)ポリアミド樹脂
(B-1)ポリアミド6樹脂
東レ(株)社製ポリアミド樹脂“アミラン”CM1010
(B-2)ポリアミド610樹脂
東レ(株)社製ポリアミド樹脂“アミラン”CM2001
(C)変性エラストマー
(C-1)アルケマ社製“ロタダ―”AX8840(エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体)
(C-2)三井化学(株)社製“タフマー”MH7020(無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体)
(D)ガラス繊維 日本電気硝子(株)社製 T-120H(チョップドストランド 3mm長、平均繊維径10.5μm)
(E)カーボンブラック
越谷化成工業(株)製P500B3(カーボンブラック40質量%とポリブチレンテレフタレート60質量%のマスターバッチ)本明細書ではカーボンブラック量で規定する。
【0054】
実施例および比較例により得た樹脂組成物の評価方法を以下に示す。
【0055】
(1)耐トラッキング性
各実施例および比較例より得られた樹脂組成物を射出成形し、角板成形品(100×100×3mm厚)を得た。得られた角板成形品を用いてIEC60112に準拠して比較トラッキング指数を測定し、それが600V以上の場合を合格とした。
【0056】
(2)吸水率
各実施例および比較例より得られた樹脂組成物を射出成形し、ISO3167(TypeA)に準拠した試験片(長さ170mm、狭い平行部の幅10mm、広い平行部の幅20mm、厚み4mm)を得た。試験片は、成形後、吸水させないようにデシケーターに入れて室温まで冷却した後、その重量を0.1mgの桁まで測定した(その重量をM1とする)。その試験片を23℃の水中下に24時間浸漬後、試験片を水から取り出し,表面の水分を乾いた布を用いて全てふき取った後、その重量を0.1mgの桁まで測定した(その重量をM2とする)。吸水率は、以下の式から算出した。
(M2-M1)÷M1×100。
【0057】
実施例1~11、比較例1~3
表1に示す組み合わせの原料をスクリュー径57mmΦの二軸押出機を用いて、バレル設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmで押出し、樹脂組成物ペレットを製造した。このペレットから各種物性測定用の試験片をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、以下の試験を行った。得られた組成物は何れも比較トラッキング指数が600V以上であり、吸水率は0.12%以下であった。
【0058】
樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
表1の結果より以下のことが明らかとなった。
【0061】
実施例1~11と比較例1との比較において、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、ポリアミド樹脂が24重量部以下添加されていると吸水率の低い成形品を得られることがわかった。
【0062】
実施例1~11と比較例2との比較において、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、ポリアミド樹脂が9重量部以上添加されていると耐トラッキング性の優れた材料を得られることがわかった。
【0063】
実施例1~11と比較例3との比較において、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、カーボンブラックが1.7重量部以下添加されていると耐トラッキング性の優れた材料を得られることがわかった。
【0064】
上述したように、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、優れた耐トラッキング性、及び吸水性の低い樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気自動車の高電圧部品などに使用することができる。