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特許7259352マゼンタ染料系インク組成物、インクセット、およびマゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法
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  • 特許-マゼンタ染料系インク組成物、インクセット、およびマゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】マゼンタ染料系インク組成物、インクセット、およびマゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20230411BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20230411BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230411BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C09D11/328
C09D11/40
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019010971
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019131801
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】15/883,132
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】江高 恵一
(72)【発明者】
【氏名】スタール・アジェイ ケイ.
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147247(JP,A)
【文献】特開平07-179796(JP,A)
【文献】特開2005-036164(JP,A)
【文献】特開2003-238875(JP,A)
【文献】特開2005-105142(JP,A)
【文献】特開2005-146228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/328
C09D 11/40
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッド染料およびブラック染料を含み、インク組成物中の前記レッド染料と前記ブラック染料の重量比が、20:1~100:1であり、
前記ブラック染料が、256~274の範囲の色相角を有する青味を帯び、且つ、17~31の範囲の耐光性を有するブラック染料からなる群より選択され、
前記ブラック染料が、アゾ直接染料ブラックを含み、
前記レッド染料が、アシッドレッド染料、アントラピリドンジスルホン酸染料、ピリジンアゾ染料、およびその混合物からなる群より選択される
マゼンタ染料系インク組成物。
【請求項2】
前記ブラック染料の量が、前記インク組成物の合計重量に対し、0.05~0.25重量%の範囲である
請求項1に記載のマゼンタ染料系インク組成物。
【請求項3】
前記レッド染料の混合物を含む
請求項1又は請求項に記載のマゼンタ染料系インク組成物。
【請求項4】
潤滑剤、溶媒、浸透剤、界面活性剤、および水をさらに含む
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のマゼンタ染料系インク組成物。
【請求項5】
前記潤滑剤の量が1~30重量%の範囲であり、前記溶媒の量が0~10重量%の範囲であり、前記浸透剤の量が0~5重量%の範囲であり、前記界面活性剤の量が0~2重量%の範囲であり、および前記水の量が6~90重量%の範囲である
請求項に記載のマゼンタ染料系インク組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項の前記マゼンタ染料系インク組成物、シアンインク組成物、イエローインク組成物を含む
インクセット。
【請求項7】
マゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法であって、
レッド染料を提供することと、
前記レッド染料とブラック染料を前記レッド染料対前記ブラック染料が20:1~100:1の重量比で混合して、前記マゼンタ染料系インク組成物を提供することと、
を含み、
前記ブラック染料が、256~274の範囲の色相角を有する青味を帯び、且つ、17~31の範囲の耐光性を有するブラック染料からなる群より選択され、
前記ブラック染料が、アゾ直接染料ブラックを含み、
前記レッド染料が、アシッドレッド染料、アントラピリドンジスルホン酸染料、ピリジンアゾ染料、およびその混合物からなる群より選択される
方法。
【請求項8】
前記マゼンタ染料系インク組成物中の前記ブラック染料の量が、インク組成物の合計重量に対し、0.05~0.25重量%の範囲である
請求項に記載の方法。
【請求項9】
潤滑剤、溶媒、浸透剤、界面活性剤、および水を前記マゼンタ染料系インク組成物と混合することをさらに含む
請求項7又は請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面の彩度を最大化し、高コントラスト、望ましい色むら、および耐光性を提供する改良されたインク組成物に関するものであり、特に、マゼンタインクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、多くの市販品において使用される有利な印刷方法である。その利点は、小型、高速、低コスト、および様々な基板への適応性を含む。このようなインクジェット記録方法は、通常、染料系または顔料系のインクから得られるインクセットを使用する。可溶性着色剤を使用する染料系インクは、基板の表面にインクを浸透させることが要求される様々な印刷用途に適している。しかしながら、1つ、またはそれ以上の色が適切な色相角(hue angle)または色調、高コントラスト、および耐光性を提供することは困難である。インク配合物(ink formulation)中に類似する着色剤を組み合わせて使用することにより、染料系インクのコントラストを上げ、正確な色相角を提供しようと試みたが、望ましい結果は得られていない。
【0003】
インクジェットシステムにおける着色剤の選択は、画像品質にとって重要である。シアン、マゼンタ、イエロー、グリーン、オレンジ等の色は、ピーク波長(λ-max)、吸収曲線の幅、および二次吸収の存在が重要である。着色剤は、インク受け基板(ink-receiving substrate)に印刷した後も高度の耐光性を有していなければならない。水性の染料系インクについては、受け基板上に十分な密度を生成することができ、且つ長期の保存期間において沈殿せずに安定した溶液を作製できるよう、染料は、十分に水に溶けるものでなければならない。染料系のインクを用いた高品質の写実的(photorealistic)インクジェット印刷は、鮮やかな色相と優れた光安定性の両方を提供する染料を必要とする。これらの要件全てを満たす染料、特に、マゼンタ染料を見つけるのは、困難である。
【0004】
色測定の分野において、色相および明度(brightness)が色の基本的な知覚属性であることは周知である。色相は、知覚色レッド、イエロー、グリーン、およびブルーのうち、どの区域がその中の1つに類似して見えるか、またはその中の2つの比率に基づいて、視覚の属性として定義される。
【0005】
CIELAB色空間の観点から見ると、色相は、h°=tan-1(b*/a*)に基づいて、色相角h°によって数学的に定義され、a*は、その色がどのくらい緑色または赤色であるかを測定したものであり、b*その色がどのくらい青色または黄色であるかを測定したものである。
【0006】
明度は、どの区域が比較的多い、または少ない光を表しているように見えるかに基づいて、視覚の属性として定義される。CIELAB色空間の観点から見ると、明度は、C*=(a*+b*1/2に基づいて、彩度(chroma)C*によって数学的に定義される。
【0007】
インクジェット印刷により高品質な写実的画像を製作するため、インクセットは、優れた色特徴を有する印刷画像を提供できるものでなければならない。具体的に説明すると、色相角は、ブルーレコードが約270、マゼンタレコードが約340から約342であるのが望ましい。また、特にレッドレコードの彩度(鮮明性(vividness)とも称す)を最大化することも望ましい。特に、マゼンタインクは、75よりも大きいC*が望ましい。
【0008】
色差(color difference)は、サンプルの色と基準の数値比較として定義することができる。絶対色座標における差をデルタ(delta)(Δ)と称す。式は、2色間の差を計算して不一致を識別するために使用され、ユーザーが製品の色をより効果的に制御できるようにする。
【0009】
国際照明委員会(Commission Internationale de l'Eclairage, CIE)によって赤色と緑色の2色、または黄色と青色の2色は同時に知覚することができないという反対色説(color-opponent theory)が定義された後、L*a*b*色空間がモデル化された。下記に示すように、L*は、明るさ(lightness)を示し、a*は、赤色/緑色座標であり、b*は、黄色/青色座標である。L*、a*、およびb*のデルタ(ΔL*、Δa*、およびΔb*)は、正(+)であっても、負(-)であってもよい。しかしながら、差の合計、つまり、デルタE(ΔE*)は、常に正である。マゼンタインクは、特に、L*が50より小さいのが望ましい。
【0010】
ここで使用するΔL*は、基準と比較したサンプルの明るさおよび暗さにおける差(サンプルのL*引く基準のL*)を意味し、正のΔL*は比較的明るく、負のΔL*は比較的暗い。
【0011】
ここで使用するΔa*は、基準と比較したサンプルの赤色と緑色の間の差(a*サンプル引くa*基準)を意味し、正のΔa*は、より赤味がかった色で、負のΔa*は、より緑味がかった色である。
【0012】
ここで使用するΔb*は、基準と比較したサンプルの黄色と青色の間の差(b*サンプル引くb*基準)を意味し、正のΔb*は、より黄色味がかった色で、負のΔb*は、より青味がかった色である。
【0013】
ここで使用するΔE*は、サンプルが時間とともに色褪せた時のサンプルの色差の合計である。したがって、ここで使用するΔE*は、インクの耐光性を示す。マゼンタインクは、特に、ΔE*が5より小さいのが望ましい。
【0014】
これら全ての座標間の色差合計を決定するためには、下記の式を使用する。
【0015】
【数1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
耐色性のマゼンタ染料系インクは、基板に印刷する時、特に2つの厄介な品質を有する:つまり、(1)印刷されたマゼンタインクの色相角(h)は、赤い色調の方に向く、(2)印刷されたインクは、高いL*を有するため、不必要に低コントラストの画像を提供する。したがって、インクの耐光性を犠牲にせずに望ましい色相角と高コントラストの画像を提供することのできるインクセット、特に、マゼンタ染料系インクが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した点から、本発明の実施形態は、マゼンタ染料系インク組成物、インクセット、およびマゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させることのできる方法を提供する。マゼンタ染料系インク組成物は、1つまたはそれ以上のレッド染料、および少量であるが有効量のブラック染料を含む。マゼンタ染料系インク組成物中のレッド染料とブラック染料の重量比は、約20:1~約100:1である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、マゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法を提供する。この方法は、1つまたはそれ以上のレッド染料を提供することと、1つまたはそれ以上のレッド染料と少量のブラック染料をレッド染料対ブラック染料が約20:1~約50:1の重量比で混合して、マゼンタ染料系インク組成物を提供することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、ブラック染料の量は、マゼンタ染料系インク組成物の合計重量に対し、約0.05~約0.25重量%の範囲である。
【0020】
別の実施形態において、ブラック染料は、青味を帯びた耐光性ブラック染料である。いくつかの実施形態において、ブラック染料は、アゾ直接染料ブラックである。
【0021】
別の実施形態において、レッド染料は、アシッドレッド染料、アントラピリドンジスルホン酸(anthrapyridone disulfonic acid)染料、ピリジンアゾ(pyridine azo)染料、およびその混合物からなる群より選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、マゼンタ染料系インク組成物は、さらに、潤滑剤(humectant)、溶媒、浸透剤(penetrant)、界面活性剤、および水を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、潤滑剤の量は約10~約30重量%の範囲であり、溶媒の量は約0~約10重量%の範囲であり、浸透剤の量は約0~約5重量%の範囲であり、界面活性剤の量は約0~約2重量%の範囲であり、水の量は約60~約90重量%の範囲である。
【0024】
本発明の他の実施形態は、シアンインク組成物、イエローインク組成物、およびマゼンタ染料系インク組成物を含有するインクセットを含み、マゼンタインク染料系組成物は、マゼンタインク染料系組成物の印刷品質を向上させるのに十分な1つまたはそれ以上のレッド染料および少量の有効量のブラック染料を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態の利点は、インクセットが、ブラック染料を含まないマゼンタインク組成物と比較して、実質的に向上した画像コントラストおよび望ましい色むらを表すことである。
【0026】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0028】
図1】基板上のマゼンタ印刷画像の画像強度のグラフ表示である。
図2】基板上のマゼンタ印刷画像の赤味および青味のグラフ表示である。
図3】様々なブラック染料の耐光性を比較したグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態において使用することのできる染料は、例えば、酸性(Acid)、直接(Direct)、食用(Food)、および反応(Reactive)染料等のインクジェットインクに通常使用される染料であり、いずれも本発明の着色剤として使用するのに適している。本質的に、記録媒体にカラー可視画像を形成することのできる任意の染料を使用することができる。
【0030】
このような染料の例は、ニトロ(nitro)染料、ニトロソ(nitroso)染料、モノアゾ(mono-azo)、ジアゾ(di-azo)、ポリアゾ(poly-azo)等のアゾ(azo)染料、媒染(mordant)染料、ホルマザン銅錯体(formazan copper complex)、ピラゾロン(pyrazolone)、およびスチルベン(stilbene)等の予備形成された金属錯体、チアゾール(thiazole)、ジフェニルメタン(diphenylmethane)、トリフェニルメタン(triphenylmethane)、キサンテン(xanthene)、クリジン(cridine)、アジン(azine)、オキサジン(oxazine)、チアジン(thiazine)、キニーネ(quinine)、およびインジゴイド(indigoid)を含むが、本発明はこれに限定されない。特に、染料は、水溶性であることが好ましい。
【0031】
ブラック染料の例は、C.I.(カラーインデックス(color index))ダイレクトブラック2、4、9、11、14、17、19、22、27、32、36、41、48、51、56、62、71、74、75、77、78、80、105、106、107、108、112、113、117、132、146、154、168、171、および194等の直接染料を含むが、本発明はこれに限定されない。使用可能な他のブラック染料は、ダイレクトブラック154およびダイレクトブラック168を含む。C.I.アシッドブラック1、2、7、16、17、24、26、28、31、41、48、52、58、60、63、94、107、109、112、118、119、121、122、131、155、および156等の酸性染料を使用してもよい。また、ブラック染料は、C.I.ベーシックブラック2および8等の塩基性染料、C.I.リアクティブブラック1、3、5、6、8、12、および14等の反応染料、およびC.I.フードブラック1および2等の食用色素から選択することができる。したがって、他のブラック染料は、アメリカ合衆国ニュージャージー州パラマス(Paramus)にあるイルフォード・イメージング(Ilford Imaging USA, Inc.)社から入手可能なイルフォード(ILFORD)K-1334、イルフォードK-1332、ファストブラック(Fast Black)、バスアシッドブラック(Basacid Black)X38、ベイスクリプトスペシャルブラック(Bayscript Special Black)SP、JPD LMBK-001(東京にある日本化薬株式会社のアゾダイレクトブラック)、および富士フイルムイメージングカラーラント(Fujifilm Imaging Colorants, Ltd.)社のPRO-JET CBAブラック等のアゾブラック染料を含む。
【0032】
マゼンタ染料の例は、JPD LM-1リキッド(東京にある日本化薬株式会社のアントラピリドンジスルホン酸(anthrapyridone disulfonic acid)マゼンタ染料)、および米国特許第5,254,160号に開示されたマゼンタ染料を含むが、本発明はこれに限定されない。他のマゼンタ染料は、アシッドレッド35、アシッドレッド52、アシッドレッド81、アシッドレッド249、アシッドレッド289、ダイレクトレッド289、ダイレクトレッド227、ダイレクトバイオレット107、プロジェクト(PROJET)マゼンタ2、プロジェクトマゼンタ3BOA、デュアシン(DUASYN)マゼンタNM-SF、イルフォードM377、1-(2,4-キシリルアゾ)-2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸ジナトリウム塩(1-(2,4-xylylazo)-2-naphthol-3,6-disulphonic acid disodium salt)(アシッドレッド26);3-ヒドロキシ-4-(4-スルホナト-1-ナフチルアゾ)-2,7-ナフタレンジスルホン酸三ナトリウム(trisodium 3-hydroxy-4-(4-sulfonato-1-naphthylazo)-2,7-naphthalenedisulfonate)(アシッドレッド27);7-ナフタレンジスルホン酸(7-naphthalenedisulfonicacid)、4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-フェニルアゾ-ジナトリウム塩(4-amino-5-hydroxy-6-phenylazo-disodium salt)(アシッドレッド33);スルホローダミンBモノナトリウム塩(sulforhodamine B monosodium salt)(アシッドレッド52);2-(2,4,5,7-テトラブロモ-6-ヒドロキシ-3-オキソ-3h-キサンテン-9-イル)-安息香酸二ナトリウム(2-(2,4,5,7-tetrabromo-6-hydroxy-3-oxo-3h-xanthen-9-yl)-benzoic acid disodium)(アシッドレッド87);2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-4,5,6,7-テトラクロロ-フルオレセイン二ナトリウム塩(2',4',5',7'-tetrabromo-4,5,6,7-tetrachloro-fluoresceidisodium salt)(アシッドレッド92);4,5,6,7-テトラクロロ2’,4’,5’,7’-テトラヨード-フルオレセイン二ナトリウム塩(4,5,6,7-tetrachloro-2',4',5',7'-tetraiodo-fluoresceidisodium salt)(アシッドレッド94);およびキサンチリウム,9-(2-カルボキシフェニル)-3-[(2-メチルフェニル)アミノ]-6-[(2-メチル-4-スルホフェニル)アミノ]-ヒドロキシド,分子内塩,モノナトリウム塩(xanthylium, 9-(2-carboxyphenyl)-3-[(2-methylphenyl)amino]-6-[(2-methyl-4-sulfophenyl)amino]-hydroxide, inner salt, monosodium salt)(アシッドバイオレッド9)、IJINKM-001 SLK(日本の富士フイルムイメージングカラーラント社のピリジンアゾ染料)、およびその組み合わせから選択することができる。
【0033】
イエロー染料の例は、日本イエローJPD LM-NLリキッド、ダイレクトイエロー132、ダイレクトイエロー86、アシッドイエロー42、アシッドイエロー17、ダイレクトイエロー44、ダイレクトイエロー50、ダイレクトイエロー86、ダイレクトイエロー173、プロジェクトファストイエロー2、プロジェクトイエロー746、イルフォードY1189、2,4-ジニトロ-1-ナフトール-7-スルホ二ナトリウム塩(2,4-dinitro-1-naphthol-7-sulfo disodium salt)(アシッドイエロー1);ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、4-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-4-(フェニルアゾ)-1H-ピラゾール-1-イル-,ナトリウム塩(4-4,5-dihydro-3-methyl-5-oxo-4-(phenylazo)-1H-pyrazol-1-yl-,sodium salt)(アシッドイエロー11):1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1H-Pyrazole-3-carboxylic acid)、4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1-(4-スルホフェニル)-4-[4-スルホフェニルアゾ]-,三ナトリウム塩(4,5-dihydro-5-oxo-1-(4-sulfophenyl)-4-[(4-sulfophenyl)azo]-,trisodium salt)(アシッドイエロー23);5-クロロ-2-(5-ヒドロキシ-3-メチル-4-(4-((4-メチルフェニル)スルホニルオキシ)フェニルアゾ)-ピラゾール-1-イル)ベンゼンスルホネートナトリウム(Sodium 5-chloro-2-(5-hydroxy-3-methyl-4-(4-((4-methylphenyl)sulphonyloxy)phenylazo)-pyrazol-1-yl)benzenesulphonate)(アシッドイエロー40);および9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-3h-キサンテン-3-オン,二ナトリウム塩(9-(o-carboxyphenyl)-6-hydroxy-3h-xanthen-3-one,disodiumsalt)(アシッドイエロー73)、およびその混合物を含むが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
シアン染料の例は、フジプロジェクトシアン(Fuji PROJET Cyan)GLF、日本シアンJPDLM-1リキッド、ベンゼンメタンアミニウム,N-エチル-N-[4-[[4-[エチル[(3-スルホフェニル)メチル]アミノ]フェニル](4-ヒドロキシ-2-スルホフェニル)メチレン]-2,5-シクロ-ヘキサジエン-1-イリデン]-3-スルホ-,分子内塩,二ナトリウム塩(benzenemethanaminium, N-ethyl-N-[4-[[4-[ethyl[(3-sulfophenyl)methyl]amino]phenyl](4-hydroxy-2-sulfophenyl)methylene]-2,5-cyclo-hexadien-1-ylidene]-3-sulfo-,inner salt, disodium salt)(フードブルー2);1-アミノ-9,10-ジオキソ-4-フェニルアミノアントラセン-2-スルホネートナトリウム(sodium 1-amino-9,10-dioxo-4-phenylaminoanthracene-2-sulphonate)(アシッドブルー5);ベンゼンメタンアミニウム,N-エチル-N-[4-[[4-[エチル[(3-スルホフェニル)メチル]-アミノ]フェニル](2-スルホフェニル)メチレン]-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン]-3-スルホ-,分子内塩,二アンモニウム塩(benzenemethanaminium, N-ethyl-N-[4-[[4-[ethyl[(3-sulfophenyl)methyl]-amino]phenyl](2-sulfophenyl)methylene]-2,5-cy-clohexadien-1-ylidene]-3-sulfo-,inner salt, diammonium salt)(アシッドブルー9);およびベンゼンメタンアミニウム,N-[4-[[4-[(4-エトキシ-フェニル)アミノ]フェニル][4-[エチル[(3-スルホフェニル)-メチル]アミノ]-2メチルフェニル]メチレン]-3-メチル-2,5-シクロゲキサジエン-1-イリデン]-N-エチル-3-スルホ-,分子内塩,モノナトリウム塩(benzenemethanaminium,N-[4-[[4-[(4-ethoxy-phenyl)amino]phenyl][4-[ethyl[(3-sulfophenyl)-methyl]amino]-2-methylphenyl]methylene]-3-methyl-2,5-cyclohexadien-1-ylidene]-N-ethyl-3-sulfo-, inner salt, monosodium salt)(ブリリアントブルー)、およびその混合物を含むが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
インクセットにおける各インク組成物は、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、トリプロピレングリコール(tripropylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、テトラエチレングリコール(tetraethylene glycol)、1,(2,-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(1,(2,-hydroxyethyl)-2-pyrrolidone)、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane)、1,2-プロパンジオール(1,2-propanediol)、1,3-プロパンジオール、1,5-プロパンジオール、2-ピロリドン(2-pyrrolidone)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、テトラエチレングリコール(tetraethylene glycol)、2,2-チオジエタノール(2,2-thiodiethanol)、およびその混合物からなる群より選ばれた潤滑剤(humectant);および1,2-ヘキサンジオール(1,2-hexandiol)、ヘキシルカルビトール(hexyl carbitol)、ジエチレングリコールブチルエーテル(diethylene glycol butyl ether)、ジエチレングリコールベンジルエーテル(diethylene glycol benzyl ether)、n-プロピルアルコール(n-propyl alcohol)、第二級アルコールエトキシレート(secondary alcohol ethoxylate)、エトキシル化したアセチレンジオール(ethoxylated acetylenic diol)、ポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサン(polyalkyleneoxide modified heptamethyltrisiloxane)、およびその混合物からなる群より選ばれた潤滑剤を含むことができる。特に好ましい潤滑剤は、数平均分子量が約400(PEG400)のポリエチレングリコールと2-ピロリドンの混合物である。インク組成物中のPEG400の量は、インク組成物の合計重量に対し、好ましくは、約3~約10重量%の範囲であり、最も好ましくは、約7~約8重量%の範囲である。インク組成物中の2-ピロリドンの量も、インク組成物の合計重量に対し、好ましくは、約3~約10重量%の範囲であり、最も好ましくは、約7~約8重量%の範囲である。
【0036】
本発明に係るインク組成物は、インク組成物の主要部分であるインク媒体(ink vehicle)または分散媒(carrier fluid)も含む。インク組成物中のインク媒体の量は、一般的に、インク組成物の合計重量に対し、約60~約80重量%の範囲である。特に適切なインク媒体は、脱イオン水であるが、本実施形態は、インク媒体として水を使用することに限定されないため、有機系インク媒体で作られたインク組成物および有機系インク媒体と水の混合物を含んでもよい。
【0037】
適切な担体混合物の選択は、例えば、所望の表面張力および粘度を含む特定の応用条件、選択した着色剤の組み合わせ、所望のインクの乾燥時間、およびインクを印刷する紙の種類によって決まる。選択できる水溶性有機溶媒の代表例は、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソ-ブチルアルコール、フルフリル(furfuryl)アルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール;(2)アセトン、メチルエチルケトン、およびジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール;(3)テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)およびジオキサン(dioxane)等のエーテル;(4)酢酸エチル、乳酸エチル、炭酸エチレン、および炭酸プロピレン等のエステル;(5)エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール(glycerol)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、およびチオジグリコール等の多価アルコール;(6)エチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル、およびジエチレングリコールジメチル(またはジエチル)エーテル等のアルキレングリコールから誘導された低級アルキルモノ-またはジ-エーテル;(7)ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の窒素含有環式化合物;および(8)ジメチルスルホキシドおよびテトラメチレンスルホン等の硫黄含有化合物を含む。他の有用な有機溶媒は、ラクトン(lactone)およびラクタム(lactam)を含む。適切な置換または非置換のラクタムの例は、2-ピロリドン、1-メチル2-ピロリドン、およびN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンを含む。
【0038】
共溶媒は、一般的に、約5~約30重量%の量で存在し、より好ましくは、約10~約30重量%であり、ここで包含される全ての範囲を含む。上記の内容からわかるように、共溶媒の量は、一部、インクの別の組成物によって決まる。
【0039】
ここで説明したインク組成物の別の成分は、浸透剤である。浸透剤は、1,2-ヘキサンジオール、ヘキシルカルビトール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、n-プロピルアルコール、コネチカット州ダンベリーのユニオンカーバイド(Union Carbide)から入手可能なタージトール(TERGITOL)15-S-7およびタージトール15-S-9等の第二級アルコールエトキシレート、ペンシルベニア州アレンタウンのエアープロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals, Inc.)社から入手可能なサーフィノール(SURFYNOL)465およびサーフィノール485等のエトキシル化したアセチレンジオール、コロラド州グリーリーのラブランド・インダストリーズ(Loveland Industries, Inc.)社から入手可能なシルウェット(SILWET)L等のポリアルキレンオキシド変性ヘプタメチルトリシロキサン、およびその混合物からなる群より選択することができる。特に好ましい浸透剤は、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(n-ヘキシルカルビトール)と1,2-ヘキサンジオールの混合物である。インク組成物中のヘキシルカルビトールの好ましい量は、インク組成物の合計重量に対し、約0.1~約1.0重量%の範囲であり、最も好ましくは、約0.3~約0.5重量%の範囲である。インク組成物中のヘキサンジオールの量は、インク組成物の合計重量に対し、約0.5~約5重量%の範囲であるのが好ましく、最も好ましくは、約1~約3重量%の範囲である。
【0040】
他の従来の添加剤、例えば、殺生物剤(biocide)、防カビ剤(mildew proofing agent)、pH調整剤、抗酸化剤、伝導性改良剤(conductivity modifiers)、界面活性剤、キレート剤(chelating agent)、粘度調整剤、および酸素吸収剤をインク組成物に含んでもよい。殺生物剤の具体例は、安息香酸ナトリウム(sodium benzoate)、ペンタクロロフェノールナトリウム(sodium pentacholorphenol)、ナトリウム2-ピリジンチオール-1-オキシド(sodium 2-pyridinethiol-1-oxide)、デヒドロ酢酸ナトリウム(sodium dehydroactate)、および1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(1,2-benzisothiazolin-3-one)(プロキセル(PROXEL)GXL)を含む。
【0041】
例えば、シルウェット等の界面活性剤を追加して、インクの表面張力を変更し、インクの紙への浸透を制御してもよい。このような界面活性剤は、インク組成物中に含まれるものであって、分散剤の成分ではない。適切な界面活性剤は、非イオン性、両性、イオン性の界面活性剤を含み、好ましい界面活性剤は、アルキル硫酸、ノニルフェニルポリエチレングリコール(nonyl phenyl polyethylene glycol)、シルウェット(OSIシーラント(OSI Sealants, Inc.))、タージトール(ユニオンカーバイド)、およびサーフィノール(エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ)を含む。
【0042】
例えば、エチレンジアミンテトラアセテート(ethylene diamine tetraacetate, EDTA)等のキレート剤を追加して、金属またはアルカリ金属イオン汚染物質または不純物からの有害作用を防ぐことができる。一般的に、キレート剤は、約0.1~約1.0重量%の量で組成物に追加される。
【0043】
また、例えば、1,2-ベンズ-イソチアゾリン-3-オンをインクに追加して、微生物の成長を防止または抑制することができる。好ましい殺生物剤は、デラウェア州ウィルミントンのアビシア(Avecia, Inc.)社から入手可能なプロキセルQ’GXLである。一般的に、約0.1~約1.9重量%の殺生物剤が有効であり、好ましくは、約0.1~約0.2重量%である。
【0044】
緩衝材(好ましくは、水酸化カリウム)を追加して、インクに対し所望のpHを調整または維持することができる。上記で説明したように、緩衝材の量は、インク中の他の成分によって決まる。しかしながら、少量の緩衝材(例えば、約0.01~約0.3重量%)をインクに追加することが有用であることがわかっている。
【0045】
インク組成物を提供するための成分の追加順は、本発明において特に限定されない。しかしながら、配合を行う好ましい順番は、顔料濃縮液として染料および顔料を水に追加し、その後、他の成分、すなわち、潤滑剤、浸透剤、および殺生物剤を染料と顔料の混合物に追加する。上記成分をよく混合して、インク組成物を提供する。
【0046】
本発明のインクは、本質的に、インクジェットインクを作製するための任意のプロセスによって作製することができる。例示的インクを作製するための好ましい手順は、以下の通りである:潤滑剤、浸透剤、および殺生物剤をDI水に追加して、20分間混合する。その後、顔料濃縮液(分散剤用)および/または染料をゆっくり追加して、さらに20分間混合する。混合している間、pH緩衝材でインクのpHを約8.2~約8.5に調整する。そして、インクを一連のフィルタでフィルタリングし、最終フィルタを0.22ミクロンにする。
【0047】
一般的に、上記の染料は、各インクジェットインク組成物の約0.2~約10重量%、好ましくは、約1~約5重量%を構成する。マゼンタインク組成物は、染料混合物が水溶性のマゼンタアントラピリドン染料の約20~約60重量%、好ましくは、約30~約50重量%、およびブラック染料の約0.05~約0.25重量%を構成する。
【0048】
本発明において使用した一般的なインク組成物は、例えば、以下の成分で構成される:着色剤(0.05~20重量%)、水(20~95重量%)、潤滑剤(5~70重量%)、水混和性共溶剤(2~20重量%)、界面活性剤(0.1~10重量%)、殺生物剤(0.05~5重量%)、およびpH調整剤(0.1~10重量%)。
【0049】
いくつかの実施形態において、例えば、本発明のマゼンタ染料系インク組成物において、潤滑剤の量は、約10~約30重量%の範囲であり、溶媒の量は、約0~約10重量%の範囲であり、浸透剤の量は、約0~約5重量%の範囲であり、界面活性剤の量は、約0~約2重量%の範囲であり、水の量は、約60~約90重量%の範囲である。
【0050】
代表的な染料インク配合物を下記の表に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
本実施形態が提供するインクジェットインク組成物において選択的に存在可能な追加の添加剤は、濃厚剤(thickener)、導電性向上剤(conductivity enhancing agent)、耐コゲーション剤(anti-kogation agents)、乾燥剤(drying agent)、防食剤(anti-corrosion agent)、および消泡剤(defoamer)を含むが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
ここで説明するインクジェットインクセットは、インクジェットプリンタのプリントヘッドの複数のノズルまたは開口部からインク滴を吐出することによって、液体インク滴をインク受け層基板に管理された方法で塗布するインクジェット印刷において使用することができる。
【0054】
市販のインクジェットプリンタは、いくつかの異なる機構を使用してインク滴の沈殿を制御する。このような機構には、一般的に、連続流れ式(continuous stream)およびドロップオンデマンド式(drop-on-demand)の2つのタイプがある。
【0055】
ドロップオンデマンド式システムにおいては、インクの液滴は、例えば、デジタルデータ信号に基づいて制御される圧電素子、音響装置、または熱工程によって生じる圧力によって、開口部から直接インク受け層の位置に向かって吐出される。インク液滴は、必要ない限り、プリントヘッドの開口部から生成および吐出されない。インクジェット印刷方法および関連プリンタは市販のものであるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
本発明において使用するインクジェットインクセットは、熱性または圧電性のドロップオンデマンド式プリンタおよび連続式インクジェットプリンタを含む大衆向けの任意のインクジェット印刷システムにおいて使用することができる。もちろん、特定のインク配合物は、インクジェット印刷システムの種類によって変わる。
【0057】
インクジェット印刷において有用なインク受け基板は、本分野の技術者にとって周知である。このような基板の代表例は、米国特許第5,605,750号;第5,723,211号;および第5,789,070号、ならびにEP813978A1において開示されており、その開示をここに参考として組み入れる。本発明の好ましい実施形態において、インク受け層は、Bermelらの同時係属中の出願第09770,814において開示されているように、アルミナを含み、その開示をここに参考として組み入れる。別の好ましい実施形態において、インク受け層は、約7よりも少ない表面pHを有する。
【0058】
図1を参照すると、基準(S)とマゼンタインクのコントラストまたは暗さの品質の比較を示したものであり、インクAは、ブラック染料を含まず、インクBは、マゼンタインク組成物の合計重量%に対して0.2重量%のブラック染料を含む。理想的には、L*の値が低くなれば低くなるほど、画像のコントラストまたは暗さが高くなる。この場合、レッド染料とブラック染料の混合物を含むインクBは、基準Sとほぼ同じ暗さまたは画像コントラストを有する。
【0059】
図2は、マゼンタインク組成物(インクB)とブラック染料を含まないインクAおよび基準Sのa*b*値または青味の比較を示したものである。図のように、インクBは、マゼンタインクの青味に関して、基準Sに近い。
【0060】
下記の表は、色相角、明度または彩度、コントラスト、および耐光性に関するマゼンタ染料の特製の比較を提供したものである。表において、適切なマゼンタインクの望ましい特性を列記する。
【0061】
【表2】
【0062】
上記の表2に示すように、単独で使用したレッド染料は、どれも望ましい特性の全てを提供しなかった。
【0063】
下記の表は、マゼンタインク組成物の特性を向上させるためのレッド染料の混合物を示したものである。表3のマゼンタインク組成物は、いずれも340~342の色相角および75よりも大きい彩度(C*)を有する。
【0064】
【表3】
【0065】
上記の表3に示すように、どのインク組成物も適切な耐光性を有しておらず、いくつかの組成物は、コントラストがぎりぎりの範囲である。
【0066】
下記の表は、レッド染料とブラック染料の混合物を提供したものである。表4のマゼンタインク組成物は、いずれも340~342の望ましい色相角、75よりも大きい彩度(C*)、および50より少ないコントラスト(L*)を有する。
【0067】
【表4】
【0068】
上記の表に示したように、ファストブラック2染料は、コントラスト(L*)を向上させるが、マゼンタインク組成物の耐光性を向上させていない。
【0069】
マゼンタインク組成物の耐光性を向上させるため、CIE標準光源F2のシミュレーションを行う白色蛍光ランプ(cool white fluorescent, CWF)ライトを使用して、様々な他のブラック染料を試験した。ブラック染料の耐光性の比較を図3に示す。図3において、BK1は、FASTK1であり、BK2は、ファストブラック2であり、BK3は、ダイレクトブラック168であり、BK4は、PRO-JET CBAであり、BK5は、JPD LMBK-001である。図のように、BK5は、CWFライトに80時間以上露光した後、最も低いΔEを有するため、試験したブラック染料の中でBK5が最も優れた耐光性を有することを示している。
【0070】
図5は、PRO-JET CBAおよびJPD LMBK-001ブラック染料を含むマゼンタインク組成物の耐光性の比較を示したものである。
【0071】
【表5】
【0072】
上記の表における全てのインク組成物は、340~342の望ましい色相角、75よりも大きい彩度(C*)、50より少ないコントラスト(L*)、および5よりも小さい望ましい耐光性ΔEを有する。JPD LMBK-001は、PRO-JET CBAと比較して青っぽい色合いを有する。マゼンタ染料と少量のブラック染料を含むマゼンタインク組成物が耐光性のインク組成物を提供し、且つ全ての他の重要なインク特性を有することは意外であり、全く予想外であった。
【0073】
上記の結果から見ると、青味がかったブラック染料の使用がマゼンタ染料と組み合わせて使用するには最も望ましいブラック染料である。特に有用なブラック染料は、下記の特性を有することができる:
256~274の範囲の色相角
9~14の範囲の彩度(C*)
7~32の範囲のコントラスト(L*)
17~31の範囲の耐光性(ΔE)
【0074】
したがって、代表的なマゼンタインク組成物は、インク組成物の色、印刷品質、および耐光性の均衡を保つために、下記の染料を含むことができる:
IJINKM-001 SLK
アシッドレッド249
アシッドレッド289
アシッドレッド52
JPD LMBK-001
【0075】
上記の結果は、本発明において使用したインクジェットインクセットがブラック染料を含有するマゼンタ染料混合物を含むことにより、望ましい色相角、コントラスト、および耐光性を有するマゼンタインク組成物を提供することを示している。
【0076】
本発明の実施形態において修正および/または変更が可能であることは、上記説明から考慮され、当業者にとって明らかである。したがって、上記記載は、限定するものではなく、単に好ましい実施形態の例示であり、本発明の真の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して決定されることが、明確に意図される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、基板の表面の彩度を最大化し、高コントラスト、望ましい色むら、および耐光性を提供する改良されたマゼンタ染料系インク組成物、インクセット、およびマゼンタ染料系インク組成物の印刷品質を向上させる方法に関するものである。
図1
図2
図3