IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧

<>
  • 特許-車両の制動装置 図1
  • 特許-車両の制動装置 図2
  • 特許-車両の制動装置 図3
  • 特許-車両の制動装置 図4
  • 特許-車両の制動装置 図5
  • 特許-車両の制動装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】車両の制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B60T8/17 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019012018
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117175
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 将来
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182210(JP,A)
【文献】特開2008-162535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動操作部材の操作に応じて車両の制動力が調整される車両に適用される車両の制動装置であって、
前記制動操作部材に入力される操作力又は当該操作力に対応する力を取得する第1取得部と、
前記制動操作部材のストローク量を取得する第2取得部と、
前記操作力又は当該操作力に対応する力と、前記ストローク量とを基に、車両の制動力の目標である目標制動力を導出する目標導出部と、
前記目標制動力を基に車両の制動力を制御する制動制御部と、を備え、
前記目標導出部は、前記ストローク量の増大中で前記操作力又は当該操作力に対応する力が減少しているときには、前記目標制動力を増大又は保持し、
前記制動装置は、
前記操作力又は当該操作力に対応する力が大きいほど値が大きくなるように、第1目標制動力を導出する第1導出部と、
前記ストローク量が多いほど値が大きくなるように、第2目標制動力を導出する第2導出部と、を備え、
前記目標導出部は、前記第1目標制動力が大きいほど値が大きくなり、前記第2目標制動力が大きいほど値が大きくなるように、前記目標制動力を導出するようになっており、
前記第1導出部は、前記ストローク量の増大中に前記操作力又は当該操作力に対応する力が減少している場合、前記第1目標制動力を保持又は増大する規定処理を実行し、
前記第1導出部は、前記規定処理を実行している状況下で前記操作力又は当該操作力に対応する力が増大され始めた場合、前記操作力又は当該操作力に対応する力に応じた前記第1目標制動力と、前記規定処理の実行が開始された時点での前記操作力又は当該操作力に対応する力に応じた前記第1目標制動力である規定制動力との差が、前記操作力又は当該操作力に対応する力が前記規定処理の開始時点での値近傍まで回復してきたか否かの判断基準である判定値未満になったことを条件に、前記規定処理を終了する
車両の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の制動操作に応じた制動力を車両に付与する車両の制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転者のペダル踏力と、ブレーキペダルのストローク量とを基に、目標制動力を設定する車両の制動制御装置の一例が記載されている。ペダル踏力は踏力センサからの検出信号に基づいたセンサ値であり、ストローク量はストロークセンサからの検出信号に基づいたセンサ値である。
【0003】
特許文献1に記載の装置では、ペダル踏力が高いほど値が大きくなるように第1目標制動力が導出され、ストローク量が多いほど値が大きくなるように第2目標制動力が導出される。そして、第1目標制動力及び第2目標制動力を基に、最終の目標制動力が導出される。この際、ペダル踏力が高いほど、最終の目標制動力のうち、第1目標制動力の占める割合が大きくなるように、最終の目標制動力が導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-86674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者がブレーキペダルなどの制動操作部材を操作する場合、制動操作部材のストローク量が多くなっているにも拘わらず、センサ値であるペダル踏力に相当する操作力が減少する事象が発生することがある。このような事象が発生した場合、特許文献1に記載の装置では、ストローク量が多くなっている最中に、操作力が減少しているために最終の目標制動力が小さくなることがある。最終の目標制動力が減少されると、ストローク量が多くなっている最中に車両の制動力が減少することとなり、運転者に違和感を与えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の制動装置は、制動操作部材の操作に応じて車両の制動力が調整される車両に適用され、前記制動操作部材に入力される操作力又は当該操作力に対応する力を取得する第1取得部と、前記制動操作部材のストローク量を取得する第2取得部と、前記操作力又は当該操作力に対応する力と、前記ストローク量とを基に、車両の制動力の目標である目標制動力を設定する目標導出部と、前記目標制動力を基に車両の制動力を制御する制動制御部と、を備えている。そして、前記目標導出部は、前記ストローク量の増大中で前記操作力又は当該操作力に対応する力が減少しているときには、前記目標制動力を増大又は保持する。
【0007】
上記構成によれば、車両の運転者による制動操作部材の操作によってストローク量が増大している場合に、目標制動力が減少されることがなくなる。その結果、当該目標制動力を基に車両の制動力を制御することにより、ストローク量が増大しているときには上記操作力が減少したとしても車両の制動力が減少される事象が生じなくなる。これにより、運転者の制動操作によって車両を減速させる場合に、運転者に違和感を与えることを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の制動装置の一実施形態を示す概略構成図。
図2】同制動装置の制動制御装置の機能構成を示すブロック図。
図3】同制動制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
図4】(a)及び(b)は、運転者が制動操作を行っている際のタイミングチャート。
図5】同制動制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
図6】(a)~(e)は、運転者が制動操作を行っている際のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、車両の制動装置の一実施形態を図1図6に従って説明する。
図1には、本実施形態の制動装置20を備える車両が図示されている。車両の車輪11には、制動機構12の作動によって制動力が付与される。制動機構12は、ホイールシリンダ121内の液圧であるWC圧PWCが高いほど、車輪11と一体回転する回転体122に摩擦材123を押し付ける力が大きくなるように構成されている。すなわち、制動機構12は、WC圧PWCが高いほど大きな制動力を車輪11に付与することができる。
【0010】
制動装置20は、液圧発生装置21と、制動アクチュエータ26と、制動制御装置30とを備えている。液圧発生装置21は、制動操作部材の一例であるブレーキペダル22と、車両の運転者によるブレーキペダル22の操作に応じた液圧が発生するマスタシリンダ23とを有している。制動アクチュエータ26は、ホイールシリンダ121内のWC圧PWCの調整を通じて車両の制動力BPを制御する。車両の制動力BPとは、複数の車輪11に付与される制動力の総和である。
【0011】
制動制御装置30は、制動アクチュエータ26の作動を制御する。制動制御装置30には、各種のセンサからの検出信号が入力される。こうしたセンサとしては、例えば、操作力センサ101及びストロークセンサ102を挙げることができる。操作力センサ101は、ブレーキペダル22に入力される操作力PFを検出し、検出した操作力PFに応じた検出信号を出力する。ストロークセンサ102は、ブレーキペダル22のストローク量SSを検出し、検出したストローク量SSに応じた検出信号を出力する。
【0012】
制動制御装置30は、操作力PF及びストローク量SSを基に、車両の制動力の目標である目標制動力BPTrを設定する。つまり、制動制御装置30は、目標制動力設定装置としての機能を有している。そして、制動制御装置30は、設定した目標制動力BPTrを基に制動アクチュエータ26を制御する。
【0013】
図2に示すように、制動制御装置30は、機能部として、第1取得部31、第2取得部32、第1導出部33、第2導出部34、目標導出部35及び制動制御部36を有している。
【0014】
第1取得部31は、操作力センサ101からの検出信号を基に算出された操作力PFを取得する。すなわち、第1取得部31によって取得される操作力PFは、センサ値である。
【0015】
第2取得部32は、ストロークセンサ102からの検出信号を基に算出されたストローク量SSを取得する。すなわち、第2取得部32によって取得されるストローク量SSは、センサ値である。
【0016】
第1導出部33は、第1取得部31によって取得された操作力PFを基に、第1目標制動力BPTr1を導出する。第1導出部33は、導出基準部331と、処理部332とを含んでいる。導出基準部331は、第1目標制動力BPTr1を操作力PFに基づいて導出する。具体的には、導出基準部331は、操作力PFが第1操作力PF1未満であるときには第1目標制動力BPTr1を「0」とする。導出基準部331は、操作力PFが第1操作力PF1以上であるときには、操作力PFが大きいほど値が大きくなるように第1目標制動力BPTr1を導出する。
【0017】
処理部332は、第1取得部31によって取得された操作力PF、及び、第2取得部32によって取得されたストローク量SS、目標導出部35によって導出された目標制動力BPTrを基に、第1目標制動力BPTr1を決定する。第1目標制動力BPTr1の具体的な決定方法については後述する。
【0018】
第2導出部34は、第2取得部32によって取得されたストローク量SSを基に、第2目標制動力BPTr2を導出する。第2導出部34は、ストローク量SSが多いほど値が大きくなるように第2目標制動力BPTr2を導出する。
【0019】
目標導出部35は、加重係数設定部351と、目標算出部352とを含んでいる。本実施形態では、加重係数設定部351は、予め設定された値αを加重係数KAとする。値αは、「0」よりも大きく且つ「1」未満の値である。
【0020】
目標算出部352は、第1導出部33によって導出された第1目標制動力BPTr1、第2導出部34によって導出された第2目標制動力BPTr2、及び、加重係数設定部351によって設定された加重係数KAを基に、目標制動力BPTrを算出する加重平均処理を実行する。具体的には、目標算出部352は、加重平均処理では、以下に示す関係式(式1)を用いて目標制動力BPTrを算出する。この関係式(式1)によれば、第1目標制動力BPTr1が大きいほど目標制動力BPTrが大きくなる。また、第2目標制動力BPTr2が大きいほど目標制動力BPTrが大きくなる。すなわち、本実施形態では、第1取得部31、第2取得部32、第1導出部33、第2導出部34及び目標導出部35により、「目標制動力設定装置40」が構成される。
【0021】
BPTr=BPTr1・KA+BPTr2・(1-KA) ・・・(式1)
制動制御部36は、目標算出部352によって算出された目標制動力BPTrを基に制動アクチュエータ26を制御する。すなわち、目標制動力BPTrを基に車両の制動力BPが制御される。これにより、車両の制動力BPを目標制動力BPTrに接近させることができる。
【0022】
次に、図3及び図4を参照し、第1目標制動力BPTr1を保持する保持処理を開始するために処理部332によって実行される処理ルーチンについて説明する。保持処理が、「規定処理」の一例である。本処理ルーチンは、制動操作が行われている最中において保持処理が実行されていない場合には繰り返し実行される。
【0023】
図3に示すように、本処理ルーチンにおいて、処理部332は、ストローク量SSが増大しているか否かを判定する(S11)。ストローク量SSが増大していると判定していない場合(S11:NO)、ストローク量SSが保持又は減少されているため、処理部332は、保持処理を実行することなく、本処理ルーチンを一旦終了する。この場合、導出基準部331で導出された第1目標制動力BPTr1が目標算出部352に出力される。
【0024】
一方、ストローク量SSが増大していると判定している場合(S11:YES)、処理部332は、操作力PFが減少しているか否かを判定する(S12)。操作力PFが減少していると判定していない場合(S12:NO)、操作力PFが保持又は増大されているため、処理部332は、保持処理を実行することなく、本処理ルーチンを一旦終了する。この場合、導出基準部331で導出された第1目標制動力BPTr1が目標算出部352に出力される。
【0025】
一方、操作力PFが減少していると判定している場合(S12:YES)、処理部332は、保持処理を開始する(S13)。処理部332は、保持処理では、第1目標制動力BPTr1として規定制動力BPTr1Aと同じ値とする。規定制動力BPTr1Aとは、操作力PFが減少しているとの判定がなされていない状態から当該判定がなされる状態に移行した時点における第1目標制動力BPTr1のことである。そして、処理部332は、本処理ルーチンを終了する。すなわち、本実施形態では、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少している場合、目標算出部352に入力される第1目標制動力BPTr1は、操作力PFが減少していると判定され始めた時点の値で保持される。
【0026】
図4(a),(b)に示すように、タイミングT11以前では、ストローク量SSが増大している状況下で操作力PFも増大している。そのため、タイミングT11以前では保持処理が実行されない。その結果、目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1は、操作力PFが大きくなるにつれて大きくなる。つまり、目標算出部352に入力される第1目標制動力BPTr1は、導出基準部331で導出された第1目標制動力BPTr1と同じである。しかし、タイミングT11以降では、ストローク量SSが増大している一方で操作力PFは減少している。そのため、保持処理の実行によって、タイミングT11以降では目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1は、タイミングT11で導出された第1目標制動力BPTr1の値に保持される。この場合、目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1は、導出基準部331で導出された第1目標制動力BPTr1とは異なる値となる。
【0027】
次に、図4及び図5を参照し、処理部332によって実行される処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンでは、保持処理を終了するか否かの判定が行われる。また、この処理ルーチンは、制動操作が行われている場合において保持処理が実行されており、且つ操作力PFが増大している場合には繰り返し実行される。
【0028】
図5に示すように、本処理ルーチンにおいて、処理部332は、上記の規定制動力BPTr1Aから第1目標制動力BPTr1を引いた値を、目標差ΔBPTrとして算出する(S21)。目標差ΔBPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1は、導出基準部331から出力される値である。
【0029】
続いて、処理部332は、算出した目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrTh以下であるか否かを判定する(S22)。操作力PFが増大し始めると、第1目標制動力BPTr1は大きくなるため、目標差ΔBPTrは小さくなる。算出された目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrTh以下である場合、操作力PFが保持処理の開始時点での値に近づいたこととなる。そのため、保持処理が終了されても第1目標制動力BPTr1が大きく変化することはない。つまり、判定値ΔBPTrThは、一度減少した操作力PFが保持処理の開始時点での値近傍まで回復してきたか否かの判断基準である。なお、判定値ΔBPTrThは、保持処理の開始時点での操作力PFの値に応じて設定されてもよい。例えば、保持処理の開始時点での操作力PFの値が大きいほど、値が大きくなるように判定値ΔBPTrThが設定されてもよい。また、判定値ΔBPTrThは予め設定された値でもよい。
【0030】
ステップS22において、目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrThよりも大きい場合(NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。すなわち、目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrThよりも大きい場合では、図4におけるタイミングT12以降のように操作力PFの増大が再開されても、目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1の保持が継続される。
【0031】
図5に戻り、ステップS22において、目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrTh以下である場合(YES)、処理部332は、保持処理を終了する(S23)。これにより、目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1の増大が再開される。そして、処理部332は、本処理ルーチンを終了する。
【0032】
次に、図6を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。
図6(a),(b),(c),(d),(e)に示すように、タイミングT21から制動操作が開始される。すると、タイミングT21からはブレーキペダル22のストローク量SSの増大、及び操作力PFの増大の双方が開始される。すると、タイミングT21から第2目標制動力BPTr2が大きくなり始めるものの、第1目標制動力BPTr1は、タイミングT21よりも少し後のタイミングT22から大きくなり始める。そのため、タイミングT21からタイミングT22までの期間では、第2目標制動力BPTr2の増大に応じ、目標制動力BPTrが大きくなる。タイミングT22以降では、第1目標制動力BPTr1が大きくなり始めるため、目標制動力BPTrの増大速度がタイミングT22以前よりも大きくなる。
【0033】
なお、目標制動力BPTrが「0」よりも大きい場合、目標制動力BPTrに基づいて制動アクチュエータ26の作動が制御される。そのため、車両に制動力BPが付与される。つまり、目標制動力BPTrの増大に応じ、車両の制動力BPもまた大きくなる。
【0034】
ストローク量SSが増大している最中のタイミングT23で操作力PFが減少し始める。すると、図6(b)に破線で示すように、導出基準部331によって導出される第1目標制動力BPTr1が減少するようになる。しかし、本実施形態では、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少し始めると、保持処理が実行される。そのため、目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる第1目標制動力BPTr1は、図6(b)に実線で示すように保持される。その結果、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少していても、図6(e)に示すように目標算出部352において目標制動力BPTrの算出に用いられる目標制動力BPTrが減少されない。つまり、車両の運転者による制動操作によってストローク量SSが増大している場合に、目標制動力BPTrが減少されることがなくなる。その結果、ストローク量SSが増大しているときには、操作力PFが減少したとしても車両の制動力BPが減少される事象が生じなくなる。これにより、運転者の制動操作によって車両を減速させる場合に、運転者に違和感を与えることを抑制できる。
【0035】
次に、保持処理の終了について説明する。図6が示す例では、保持処理が開始されたタイミングT23以降で、減少していた操作力PFが増大し始める。すると、操作力PFの変化に応じて第1目標制動力BPTr1が変化する。第1目標制動力BPTr1が増減を繰り返した後、タイミングT24で前述した目標差ΔBPTrが判定値ΔBPTrTh以下となるため、保持処理が終了される。第1目標制動力BPTr1と規定制動力BPTr1Aとの差分が小さくなったことに応じて保持処理が終了されるので、保持処理の終了の前後で目標制動力BPTrが大きく変動することが抑制される。その結果、保持処理の終了に起因する違和感を運転者に与えることを抑制できる。
【0036】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・判定値ΔBPTrThの値は「0」であってもよい。この場合、増大し始めた第1目標制動力BPTr1が規定制動力BPTr1Aに達すると、保持処理が終了されることになる。
【0037】
・上記実施形態において、増大し始めた操作力PFと、保持処理の開始時点での操作力PFとの差が所定値以下となった場合に、保持処理を終了するようにしてもよい。この場合、所定値を「0」としてもよい。このように所定値が「0」である場合、増大し始めた操作力PFが、保持処理の開始時点での操作力PFの値に達すると、保持処理が終了されることになる。
【0038】
・上記実施形態では、加重係数KAを値αで固定している。しかし、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少しているときに目標制動力BPTrを増大又は保持させることができるのであれば、加重係数KAを可変させるようにしてもよい。例えば、操作力PFに応じて加重係数KAを可変させるようにしてもよい。
【0039】
・保持処理の実行中において操作力PFが減少されなくなったことを条件に、保持処理の実行を終了するようにしてもよい。
・制動操作中に保持処理が開始された場合、制動操作の解除を条件に保持処理を終了するようにしてもよい。
【0040】
・ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少している場合に目標制動力BPTrを増大又は保持することができるのであれば、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少しているときに保持処理を実行しなくてもよい。例えば、目標制動力BPTrの算出には、導出基準部331によって導出された第1目標制動力BPTr1を用いるようにしてもよい。ストローク量SSの増大中において操作力PFの減少が検知された時点での目標制動力BPTrを基準目標制動力BPTrAとした場合、操作力PFが減少しているときには目標制動力BPTrを基準目標制動力BPTrAで保持するようにしてもよい。また、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少しているときには、第2目標制動力BPTr2の増大量に見合った量だけ、目標制動力BPTrを基準目標制動力BPTrAよりも大きくするようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、操作力PFに基づいた第1目標制動力BPTr1と、ストローク量SSに基づいた第2目標制動力BPTr2との双方を導出し、第1目標制動力BPTr1及び第2目標制動力BPTr2を基に目標制動力BPTrを算出するようにしている。しかし、操作力PF及びストローク量SSの双方を加味して目標制動力BPTrを導出することができるのであれば、目標制動力BPTrの算出に第1目標制動力BPTr1及び第2目標制動力BPTr2の双方を用いなくてもよい。
【0042】
・第1目標制動力BPTr1を、ブレーキペダル22に入力される操作力PFではなく、操作力PFに対応する力を基に導出するようにしてもよい。当該力としては、例えば、ブレーキペダル22の操作に応じてマスタシリンダ23内で発生する圧力を挙げることができる。この場合、ブレーキペダル22の操作に応じてマスタシリンダ23に入力される圧力や、マスタシリンダ23から出力される圧力を検出可能な検出部が設けられていればよい。
【0043】
・制動操作部材は、運転者によって操作することができるものであれば、ブレーキペダル22以外の部材であってもよい。例えば、ブレーキペダル22以外の制動操作部材としては、ブレーキレバーなどを挙げることができる。
【0044】
・上記実施形態では、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少しているときには、第1目標制動力BPTr1の値は操作力PFが減少していると判定されたときの値で保持される。しかし、第1目標制動力BPTr1の値は保持されなくてもよい。例えば、ストローク量SSの増大中に操作力PFが減少しているときには、規定処理の一例として、第1目標制動力BPTr1の値を漸増させる処理を実行させるようにしてもよい。この場合、第1目標制動力BPTr1の単位時間あたりの増大量を、減少し始めるまでの操作力PFの増大量よりも小さい値にしてもよいし、ストローク量SSの増大量に応じた値にしてもよいし、予め設定された所定の値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0045】
20…制動装置、22…制動操作部材の一例であるブレーキペダル、26…制動アクチュエータ、30…制動制御装置、31…第1取得部、32…第2取得部、33…第1導出部、34…第2導出部、35…目標導出部、36…制動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6