(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】血圧計本体及び血圧計
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230411BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230411BHJP
A61B 5/318 20210101ALI20230411BHJP
A61B 5/25 20210101ALI20230411BHJP
【FI】
A61B5/022 E
A61B5/02 D
A61B5/318
A61B5/25
(21)【出願番号】P 2019014375
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 オムロンヘルスケア株式会社が、平成31年1月7日~11日に、Consumer Electronics Show 2019において、吉田秀輝、濱口剛宏、吉野寛子、西山賢吾、平澤麻、田中伸哉、中西基文、村瀬和矢、江副美佳及び小野健児が発明した血圧計(公開時における日本語の名称 心電計付き血圧計)を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】濱口 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】吉野 寛子
(72)【発明者】
【氏名】西山 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】平澤 麻
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 基文
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 和矢
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
(72)【発明者】
【氏名】小野 健児
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206102(JP,U)
【文献】登録実用新案第3206503(JP,U)
【文献】特開2004-180910(JP,A)
【文献】特開2013-230291(JP,A)
【文献】特開2013-226189(JP,A)
【文献】特開2017-086773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/25-5/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の腕に巻き付けられる袋状の腕帯を用いて前記被験者の血圧を測定する上腕式血圧計の本体において、
前記本体は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置された心電図波形測定回路と、
前記ハウジングの外表面に配置された、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の心電図波形測定電極及び第2の心電図波形測定電極と、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の基準電極とを備えており、
前記ハウジングは、
上面と、
底面と、
前面と、
背面と、
左右一対の第1の側面と第2の側面と、
前記腕帯に収容されている空気袋に空気を供給するための空気供給回路と、
前記空気供給回路を通じて前記空気袋に空気を供給する空気ポンプと、
前記空気供給回路における空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する血圧測定回路とを備えており、
前記第1の側面は第1の側面電極領域を有し、
前記第2の側面は第2の側面電極領域を有し、
前記上面は前記第2の側面よりも前記第1の側面の近くに位置する第1の上面電極領域を有し、
前記第1の心電図波形測定電極は前記第1の側面電極領域に配置され、
前記第2の心電図波形測定電極は前記第2の側面電極領域に配置され、
前記第1の基準電極は前記第1の上面電極領域に配置され、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第1の基準電極は、
測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第1の側面に左右が対応する一方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする血圧計本体。
【請求項2】
前記血圧計本体は前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第2の基準電極とを備えており、
前記上面は前記第1の側面よりも前記第2の側面の近くに位置する第2の上面電極領域を有し、
前記第2の基準電極は前記第2の上面電極領域に配置されており、
前記第2の心電図波形測定電極と前記第2の基準電極は、
測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第2の側面に左右が対応する他方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の血圧計本体。
【請求項3】
被験者の腕に巻き付けられる袋状の腕帯を用いて前記被験者の血圧を測定する上腕式血圧計の本体において、
前記本体は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置された心電図波形測定回路と、
前記ハウジングの外表面に配置された、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の心電図波形測定電極及び第2の心電図波形測定電極と、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の基準電極とを備えており、
前記ハウジングは、
上面と、
底面と、
前面と、
背面と、
左右一対の第1の側面と第2の側面と、
前記腕帯に収容されている空気袋に空気を供給するための空気供給回路と、
前記空気供給回路を通じて前記空気袋に空気を供給する空気ポンプと、
前記空気供給回路における空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する血圧測定回路とを備えており、
前記第1の側面は第1の側面電極領域を有し、
前記第2の側面は第2の側面電極領域を有し、
前記上面は前記第2の側面よりも前記第1の側面の近くに位置する第1の上面電極領域を有し、
前記第1の心電図波形測定電極は前記第1の上面電極領域に配置され、
前記第2の心電図波形測定電極は前記第2の側面電極領域に配置され、
前記第1の基準電極は前記第1の側面電極領域に配置され、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第1の基準電極は、
測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第1の側面に左右が対応する一方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする血圧計本体。
【請求項4】
前記血圧計本体は前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第2の基準電極とを備えており、
前記上面は前記第1の側面よりも前記第2の側面の近くに位置する第2の上面電極領域を有し、
前記第2の基準電極は前記第2の上面電極領域に配置されており、
前記第2の心電図波形測定電極と前記第2の基準電極は、
測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第2の側面に左右が対応する他方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の血圧計本体。
【請求項5】
前記第1の上面電極領域は前記第1の側面電極領域よりも前記前面側に位置しており、
前記第2の上面電極領域は前記第2の側面電極領域よりも前記前面側に位置している
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の血圧計本体。
【請求項6】
前記上面は前記前面から前記背面に向かって次第に高くなる登り勾配が付けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項7】
前記第1の側面電極領域は前記背面と前記第1の側面を繋ぐ領域に伸びており、
前記第2の側面電極領域は前記背面と前記第2の側面を繋ぐ領域に伸びている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項8】
前記第1の側面電極領域と前記第2の側面電極領域は左右対称に配置されている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項9】
前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の心電図波形測定電極は、
弾性を有する絶縁材料からなり、前記ハウジングに固定された弾性支持部によって支持されている
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項10】
前記第1の側面電極領域に配置されている前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の側面電極領域に配置されている前記第2の心電図波形測定電極の少なくともいずれか一方の表面は外側に向かって凸状の曲面である
ことを特徴とする請求項1、2及び5~9のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項11】
前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の心電図波形測定電極の少なくともいずれか一方の表面は外側に向かって突出する少なくとも1つの突起を有する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の血圧計本体。
【請求項12】
上腕式血圧計であって、
血圧計本体と前記血圧計本体に着脱自在に接続される腕帯ユニットとを備えており、
前記血圧計本体は請求項1~11のいずれかに記載の血圧計本体であり、
前記腕帯ユニットは、
空気袋を内蔵した帯状の腕帯と、
一端が前記空気袋に接続されており、前記空気袋に空気を供給するためのエアチューブとを備えており、
前記血圧計本体は、
前記ハウジングの表面に設けられ、前記エアチューブの他端が着脱自在に接続されるチューブ接続部を備えており、
前記チューブ接続部が前記空気供給回路に接続されている
ことを特徴とする上腕式血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図波形測定機能付血圧計本体及びその血圧計本体を備えた血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の血圧と心電図波形の両方を測定する血圧計が特許文献1に提案されている。この血圧計は、腕帯を含む血圧測定部と、1対の電極を含む心電図波形測定部を備えている。従って、被験者は、腕帯を自身の腕に取り付けて血圧を測定しながら、自身の手を1対の電極に接触させることで心電図波形を同時に測定できる。
【0003】
また、被験者の血圧と心電図波形の両方を測定し、電源、モニタ、Wi-Fi(登録商標)等が発する環境ノイズを心電図波形から除去する電極を有する血圧計が特許文献2に提案されている。この血圧計は、脈波センサと、1対の心電図波形測定電極及び1対のノイズ除去電極を含む心電図波形測定部を備えている。従って、被験者は、手の一部を脈波センサに接触させて血圧を測定しながら、自身の指を1対の電極に接触させることで、ノイズが低減された心電図波形を同時に測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-176340号
【文献】登録特許5641011号
【0005】
しかし、特許文献1に記載の装置において、環境ノイズが被験者を通じて心電図波形測定部に伝わりやすく、それが心電図波形の正確な測定を阻害する虞がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の装置において、ノイズ除去電極が設けられているため、環境ノイズが低減された心電図波形を測定できる。しかし、被験者は不安定な姿勢で血圧を測定することになるため、被験者の手と心電図波形測定電極との接触状態は変化しやすくなり、接触抵抗の変化がノイズとして心電図波形に乗り、正確な心電図波形を得ることが難しくなる。また、得られる血圧値は脈波からの推定値であって正確ではなく、血圧値を精度よく測定するための構造について考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、血圧値と心電図波形の両方を正確に測定することができる心電図波形測定機能付上腕血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の実施形態における、被験者の腕に巻き付けられる袋状の腕帯を用いて前記被験者の血圧を測定する上腕式血圧計の本体において、
前記本体は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置された心電図波形測定回路と、
前記ハウジングの外表面に配置された、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の心電図波形測定電極及び第2の心電図波形測定電極と、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の基準電極とを備えており、
前記ハウジングは、
上面と、
底面と、
前面と、
背面と、
左右一対の第1の側面と第2の側面と、
前記腕帯に収容されている空気袋に空気を供給するための空気供給回路と、
前記空気供給回路を通じて前記空気袋に空気を供給する空気ポンプと、
前記空気供給回路における空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する血圧測定回路とを備えており、
前記第1の側面は第1の側面電極領域を有し、
前記第2の側面は第2の側面電極領域を有し、
前記上面は前記第2の側面よりも前記第1の側面の近くに位置する第1の上面電極領域を有し、
前記第1の心電図波形測定電極は前記第1の側面電極領域に配置され、
前記第2の心電図波形測定電極は前記第2の側面電極領域に配置され、
前記第1の基準電極は前記第1の上面電極領域に配置され、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第1の基準電極は、測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第1の側面に左右が対応する一方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする。
【0009】
この血圧計本体によれば、左右いずれか一方の基準電極に被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある外来ノイズを除去できる。また、心電図波形測定電極及び基準電極に被験者の指がリラックスした状態で触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。そのため、血圧に加えて、信頼性の高い心電図波形が得られる。さらに、血圧の測定が行われるとき、腕帯が被験者の腕に巻き付けられている状態で、空気ポンプは、空気供給回路を通じて、腕帯に収容されている空気袋に空気を供給する。その後、圧力センサは、空気袋に空気を供給している空気供給回路における空気の圧力を検出する。血圧測定回路は、圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する。このようにして、血圧の測定が行われる。
【0010】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記血圧計本体は前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第2の基準電極とを備えており、
前記上面は前記第1の側面よりも前記第2の側面の近くに位置する第2の上面電極領域を有し、
前記第2の基準電極は前記第2の上面電極領域に配置されており、
前記第2の心電図波形測定電極と前記第2の基準電極は、測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第2の側面に左右が対応する他方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする。
【0011】
この血圧計本体によれば、左右両方の基準電極に被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある外来ノイズを除去できる。
【0012】
他の実施形態における、被験者の腕に巻き付けられる袋状の腕帯を用いて前記被験者の血圧を測定する上腕式血圧計の本体において、
前記本体は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置された心電図波形測定回路と、
前記ハウジングの外表面に配置された、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の心電図波形測定電極及び第2の心電図波形測定電極と、前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第1の基準電極とを備えており、
前記ハウジングは、
上面と、
底面と、
前面と、
背面と、
左右一対の第1の側面と第2の側面と、
前記腕帯に収容されている空気袋に空気を供給するための空気供給回路と、
前記空気供給回路を通じて前記空気袋に空気を供給する空気ポンプと、
前記空気供給回路における空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する血圧測定回路とを備えており、
前記第1の側面は第1の側面電極領域を有し、
前記第2の側面は第2の側面電極領域を有し、
前記上面は前記第2の側面よりも前記第1の側面の近くに位置する第1の上面電極領域を有し、
前記第1の心電図波形測定電極は前記第1の上面電極領域に配置され、
前記第2の心電図波形測定電極は前記第2の側面電極領域に配置され、
前記第1の基準電極は前記第1の側面電極領域に配置され、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第1の基準電極は、測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第1の側面に左右が対応する一方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする。
【0013】
この血圧計本体によれば、左右いずれか一方の基準電極に被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある外来ノイズを除去できる。また、心電図波形測定電極及び基準電極に被験者の指がリラックスした状態で触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。そのため、血圧に加えて、信頼性の高い心電図波形が得られる。さらに、血圧の測定が行われるとき、腕帯が被験者の腕に巻き付けられている状態で、空気ポンプは、空気供給回路を通じて、腕帯に収容されている空気袋に空気を供給する。その後、圧力センサは、空気袋に空気を供給している空気供給回路における空気の圧力を検出する。血圧測定回路は、圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する。このようにして、血圧の測定が行われる。
【0014】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記血圧計本体は前記心電図波形測定回路と電気的に接続された第2の基準電極とを備えており、
前記上面は前記第1の側面よりも前記第2の側面の近くに位置する第2の上面電極領域を有し、
前記第2の基準電極は前記第2の上面電極領域に配置されており、
前記第2の心電図波形測定電極と前記第2の基準電極は、測定時に、前記被験者が前記ハウジングの前記前面に向かい合ったとき、前記被験者の左手と右手のうち、前記第2の側面に左右が対応する他方の手で同時に触れることができる位置に設けられている
ことを特徴とする。
【0015】
この血圧計本体によれば、両方の基準電極に被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある外来ノイズを除去できる。
【0016】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の上面電極領域は前記第1の側面電極領域よりも前記前面側に位置しており、
前記第2の上面電極領域は前記第2の側面電極領域よりも前記前面側に位置している
ことを特徴とする。
【0017】
この血圧計本体によれば、被験者の指が心電図波形測定電極及び基準電極にリラックスした状態で安定して接触できるため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0018】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記上面は前記前面から前記背面に向かって次第に高くなる登り勾配が付けられている
ことを特徴とする。
【0019】
この血圧計本体によれば、被験者の指が心電図波形測定電極及び基準電極にリラックスした状態で安定して接触できるため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0020】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の側面電極領域は前記背面と前記第1の側面を繋ぐ領域に伸びており、
前記第2の側面電極領域は前記背面と前記第2の側面を繋ぐ領域に伸びている
ことを特徴とする。
【0021】
この血圧計本体によれば、被験者の指が触れやすい位置に側面の電極を配置できる。これにより、被験者の指が側面の電極にリラックスした状態で安定して接触できるため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0022】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の側面電極領域と前記第2の側面電極領域は左右対称に配置されている
ことを特徴とする。
【0023】
この血圧計本体によれば、左右の側面の電極に加えられる力が同じ作用線上で対向するため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0024】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の心電図波形測定電極は、
弾性を有する絶縁材料からなり、前記ハウジングに固定された弾性支持部によって支持されている
ことを特徴とする。
【0025】
この血圧計本体によれば、被験者の指が心電図波形測定電極に接触することで、弾性支持部が変形するため、被験者は、自身の指が心電図波形測定電極に適当な力で接触していることを知覚できる。
【0026】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の側面電極領域に配置されている前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の側面電極領域に配置されている前記第2の心電図波形測定電極の少なくともいずれか一方の表面は外側に向かって凸状の曲面である
ことを特徴とする。
【0027】
この血圧計本体によれば、被験者の指が心電図波形測定電極に安定して接触できるため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0028】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記第1の心電図波形測定電極と前記第2の心電図波形測定電極の少なくともいずれか一方の表面は外側に向かって突出する少なくとも1つの突起を有する
ことを特徴とする。
【0029】
この血圧計本体によれば、被験者の指が突起に接触することで、被験者は、自身の指が心電図波形測定電極に接触していることを知覚できる。
【0030】
他の実施形態における、血圧計本体は、
前記ハウジングが、
前記腕帯に収容されている空気袋に空気を供給するための空気供給回路と、
前記空気供給回路を通じて前記空気袋に空気を供給する空気ポンプと、
前記空気供給回路における空気の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて被験者の血圧を測定する血圧測定回路を収容している
ことを特徴とする。
【0031】
この血圧計本体によれば、腕帯を空気供給回路に接続することで、心電図波形測定と血圧測定を同時に行える。
【0032】
本発明の実施形態における、上腕式血圧計は、
血圧計本体と前記血圧計本体に着脱自在に接続される腕帯ユニットとを備えており、
前記血圧計本体は他の実施形態における血圧計本体であり、
前記腕帯ユニットは、
空気袋を内蔵した帯状の腕帯と、
一端が前記空気袋に接続されており、前記空気袋に空気を供給するためのエアチューブとを備えており、
前記血圧計本体は、
前記ハウジングの表面に設けられ、前記エアチューブの他端が着脱自在に接続されるチューブ接続部を備えており、
前記チューブ接続部が前記空気供給回路に接続されている
ことを特徴とする。
【0033】
この上腕式血圧計によれば、腕帯を空気供給回路に接続することで、心電図波形測定と血圧測定を同時に行える。
【発明の効果】
【0034】
以上、本願の発明によれば、左右いずれか一方の基準電極に被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある外来ノイズが除去され、心電図波形測定電極及び基準電極にリラックスした状態で被験者の指が触れることによって、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズが除去される血圧計本体を提供できる。そのため、血圧に加えて、信頼性の高い心電図波形が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る上腕式血圧計及びその使用状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す上腕式血圧計本体を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示す上腕式血圧計本体を斜め上方から見た部分斜視図である。
【
図4】携帯情報端末を載せた上腕式血圧計本体を斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図1に示す上腕式血圧計の制御ブロック図である。
【
図6】基準電極と弾性支持部を表した分解斜視図である。
【
図7】
図1に示す上腕式血圧計本体を斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】基準電極に触れていないときに測定される心電図波形と基準電極に触れているときに測定される心電図波形である。
【
図9】心電図波形測定電極を上面に設けたときに測定される心電図波形と心電図波形測定電極を側面に設けたときに測定される心電図波形である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る上腕血圧計の実施形態を説明する。
【0037】
[1:上腕血圧計]
図1は、本発明の実施形態に係る上腕血圧計(以下、適宜「血圧計」という。)10の概略構成を示す。この血圧計10は、被験者100の血圧と心電図波形を測定する機能を備えた心電図波形測定機能付血圧計である。
【0038】
[2:上腕血圧計の構成]
図1に示すように、血圧計10は血圧計本体11と腕帯ユニット12を有する。
【0039】
血圧計本体11は、後述する種々の制御機器等を内蔵したハウジング21を有する。実施形態において、ハウジング21は横方向に長い箱形をしており、その外形は上面22、前面23、背面24、左右の側面25(25L、25R)、及び底面26によって構成されている。
【0040】
実施形態において、上面22は、前面23から背面24に向かって次第に高くなるように全体に傾斜が付けられており、前面23側に第1のインターフェイス領域(マンマシンインターフェイス領域)30が配置され、背面24側に第2のインターフェイス領域(マンマシンインターフェイス領域)31が配置されている(
図2参照)。
【0041】
第1のインターフェイス領域30は、左右方向中央の表示領域32と、表示領域32の両側にあって左右側面25(25L,25R)の近傍に配置された一対の上面電極領域(第1と第2の上面電極領域)33(33L,33R)を有する。中央の表示領域32は横長四角形の形をしており、そこには表示部34が配置されている。好ましくは、表示部34は液晶ディスプレイで構成される。左右の上面電極領域33は、実施形態では前後方向に長い縦長略四角形の形をしており、そこには基準電極35(第1の基準電極35Lと第2の基準電極35R)が配置されている。基準電極35は、少なくともその表面が導電性材料で形成されており、心電図波形に含まれる可能性のあるノイズを除去するために、心電図波形測定時被験者100がその体の一部(具体的には、
図1に示すように、少なくとも左右のいずれかの親指102)を接触させる箇所である。
【0042】
第1のインターフェイス領域30には、表示部34と基準電極35の他に、表示部34と左右の基準電極35との間にスイッチ領域36,37がそれぞれ形成されており、そこに通信スイッチ38と開始・停止スイッチ39がそれぞれ配置されている。
【0043】
実施形態において、第2のインターフェイス領域31は、第1のインターフェイス領域30が設けられている前面側上面部分よりも低い背面側上面部分を備えており、そこに左右方向に長い横長四角形の平坦な携帯情報端末設置部40が形成されている。携帯情報端末設置部40は、携帯情報端末41(例えばスマートフォン)が設置される領域である。したがって、携帯情報端末設置部40は、市販されている一般的な大きさの携帯情報端末を安定して支持できる大きさと形状を有する。実施形態では、携帯情報端末設置部40は、その後端がハウジング21の背面24から後方に突出させてあり、市販されている最大の大きさの携帯情報端末の全体を支持できるように設計されている。また、携帯情報端末設置部40の表面は、後方に向かって次第に高くなるように傾斜が付けられている。
【0044】
ハウジング21の両側面25(25L、25R)はそれぞれ側面電極領域42(第1と第2の側面電極領域42L,42R)を有し、そこには心電図波形測定電極43(第1の心電図波形測定電極43Lと第2の心電図波形測定電極43R)がそれぞれ配置されている。心電図波形測定電極43は、少なくともその表面が導電性材料で形成されており、心電図波形測定時被験者100がその体の一部(具体的には、
図1に示すように、親指以外の指103、例えば人差指、中指、小指)を接触させる箇所である。
【0045】
図1及び
図4に示すように、心電図波形測定にあたって被験者100がその両腕を前方に伸ばしてテーブル101等の上に載せた状態では、一般に被験者100の親指102の先端部分が他の指103(人差指、中指、薬指、小指)の先端部分よりも手前側(被験者側)に位置する(先端部とは、第1関節(DIP関節)よりも先の部分をいう。)。そのため、実施形態では、被験者100がその両腕を前方に伸ばした状態で親指102とその他の指103が無理なく基準電極35と心電図波形測定電極43にそれぞれ接触するように、基準電極35は前面23寄りに配置され、心電図波形測定電極43は基準電極35よりも背面24寄りに配置されている。また、左右に心電図波形測定電極43に加えられる力が同じ作用線上で対向するように、左右の心電図波形測定電極43は、前後方向の中心軸に対して、左右対称に配置されている。
【0046】
好ましい実施形態では、基準電極35(第1の基準電極35Lと第2の基準電極35R)の大きさは縦40mm×横23mm、心電図波形測定電極43(第1の心電図波形測定電極43Lと第2の心電図波形測定電極43R)の大きさは縦50mm×横23mmである。また基準電極35の中心は、前面23から背面24に向かう上面22の傾斜方向に関して前面23から29mm離れた位置に配置され、一方の側面25(25L、25R)から他方の側面25(25L、25R)に向かう水平方向に関して一方の側面25から22.5mm離れた位置に配置される。また、心電図波形測定電極43の中心は、前面23から背面24に向かう上面22の傾斜方向に関して前面23から51.5mm離れた位置に配置され、上面22から底面26に向かう上面22の垂直方向に関して底面26から39mm離れた位置に配置される。基準電極35と心電図波形測定電極43がこのように配置されることで、
図4に示すように、被験者100は手の小指側の側面をテーブル101の上に置いた状態で基準電極35と心電図波形測定電極43に親指102とその他の指103をそれぞれ無理なく自然な状態で同時に接触できる。そのため、心電図波形に含まれる可能性のある体動ノイズを除去できる。
【0047】
図1に示すように、ハウジング21の背面24には、腕帯チューブ接続部(空気供給用の接続穴)44が設けてある。
【0048】
図1に示すように、腕帯ユニット12は、空気袋52を内蔵した帯状の腕帯51と、一端が空気袋52に接続されたエアチューブ53を備えている。エアチューブ53の他端は、ハウジング背面24の腕帯チューブ接続部44に着脱可能な形状のコネクタ54が取り付けてある。コネクタ54は、後述する、ハウジング21の内部に設けた空気供給回路55(
図5参照)の末端に接続されている。したがって、コネクタ54を腕帯チューブ接続部44に接続した状態で、空気袋52がエアチューブ53を介して空気供給回路55(
図5参照)に接続される。
【0049】
ハウジング21は、
図5に示される制御部60を内蔵している。実施形態において、制御部60は、プロセッサ61と、該プロセッサ61に接続された、血圧測定に関連した機器と通信可能に接続された血圧測定回路62及び心電図波形の測定に関連した機器に接続された心電図波形測定回路63を有する。
【0050】
血圧の測定に関連した機器には、空気供給回路55を介して腕帯ユニット12の空気袋52に空気を供給する空気ポンプ65と、空気供給回路55を大気に開放して空気袋52から空気を排気する排気バルブ66と、空気供給回路55内の圧力を検知する圧力センサ67が含まれる。
【0051】
心電図波形の測定と関連した機器には、上述の心電図波形測定電極43(第1の心電図波形測定電極43Lと第2の心電図波形測定電極43R)と基準電極35(第1の基準電極35Lと第2の基準電極35R)が含まれる。
【0052】
プロセッサ61は、表示部34、通信スイッチ38、開始・停止スイッチ39と電気的に接続されており、表示部34に表示する表示内容に応じて必要な信号を表示部34に対して出力し、通信スイッチ38と開始・停止スイッチ39が押下されたときにそれに対応する信号を通信スイッチ38と開始・停止スイッチ39からそれぞれ受信するように構成されている。
【0053】
プロセッサ61はまた、血圧測定回路62で測定された血圧と脈拍数を無線送信する通信部(血圧送信部)68と心電図波形測定回路63で測定された心電図波形を無線送信する通信部(心電図波形送信部)69と電気的に接続されており、通信部68を通じて血圧と脈拍数を無線送信し、通信部69を通じて心電図波形を無線送信するように構成されている。
【0054】
このように構成された血圧計10を用いて血圧を測定する場合、
図1に示すように、腕帯ユニット12のコネクタ54をハウジング21の腕帯チューブ接続部44に接続して空気袋52を空気供給回路55に接続する。また、腕帯ユニット12の腕帯51を被験者100の上腕に巻き付ける。この状態から、被験者100が、ハウジング上面22の血圧測定開始・停止スイッチ39を押下(オン)することにより、血圧測定が開始される。
【0055】
血圧測定開始・停止スイッチ39の押下(オン)されると、その押下(オン)信号はプロセッサ61によって検出される。プロセッサ61が押下(オン)信号を検知すると、その信号に応答して血圧測定回路62が空気ポンプ65を駆動して空気供給回路55を通じて空気袋52に空気を供給し、これにより被験者100の上腕が腕帯51によって圧迫される。空気ポンプ65によって空気袋52に空気が供給される間、空気袋52の圧力(これは空気供給回路55の圧力に相当する。)は圧力センサ67で検知される。
【0056】
圧力センサ67の出力によって空気袋52の圧力が所定の圧力に達したことが検知されると、血圧測定回路62が排気バルブ66を開き、空気袋52の空気を排出する。空気袋52から空気が排気される間、空気袋52の圧力は圧力センサ67で検知される。
【0057】
圧力センサ67の出力は血圧測定回路62に検知される。血圧測定回路62は、予め決められた血圧計算アルゴリズムに基づいて、圧力センサ67の出力から血圧(最高血圧、最低血圧)と脈拍数を計算し、その計算結果をプロセッサ61に出力する。プロセッサ61は、血圧測定回路62から受信した血圧と脈拍数を表示部34に出力して表示する。
【0058】
後に説明するように、血圧測定後、ハウジング上面22の通信スイッチ38が押下(オン)されると、血圧測定回路62は通信部68を介して血圧と脈拍数を携帯情報端末41に送信する。
【0059】
心電図波形を測定する場合、
図1に示すように、携帯情報端末41を携帯情報端末設置部40に載せる。携帯情報端末41には、血圧計10から出力される心電図波形情報を携帯情報端末41が受信し、受信した心電図波形情報を携帯情報端末41のディスプレイに表示するための専用ソフトウェア(アプリケーション)が搭載されている。この状態で、被験者100は、左右の親指以外の指103(人指し指、中指、薬指)を左右側面の心電図波形測定電極43に接触させる。被験者100はまた、左右の親指102の一方又は両方を上面22の基準電極35に接触させる。
【0060】
図示するように、この状態で、親指以外の指103は親指102よりも前方に位置する。これに対応して、実施形態の血圧計10では、側面25の心電図波形測定電極43は上面22の基準電極35よりも被験者前方に(被験者から離れて)配置されている。したがって、被験者100は、自然な状態(無理の無い状態)で左右の親指とそれ以外の指で基準電極35と心電図波形測定電極43に接触できるとともに、その接触状態を無理なく維持できる。
【0061】
被験者100がその両手の指103を心電図波形測定電極43に接触させると、心電図波形測定回路63は心電図波形測定電極43が被験者を通じて互いに電気的に接続されたことを検知し、この検知信号をトリガとして心電図波形の測定を開始する。このとき、被験者100の左手又は右手若しくは両手の親指102が基準電極35に接触している。
【0062】
この状態で、基準電極35に入力される信号と心電図波形測定電極43に入力される信号との間には電位差がある。この電位差は、親指102とそれ以外の指103までの経路長の差に起因する。一方、基準電極35に入力される信号と心電図波形測定電極43に入力される信号にはほぼ同じレベルのノイズが含まれている。したがって、親指102を通じて基準電極35に入力される信号とそれ以外の指103を通じて心電図波形測定電極43に入力される信号の電位差を測定し、必要であればその電位差を増幅することによって、ノイズの影響の少ない心電図波形を得ることができる。
【0063】
図8を参照して、ノイズの低減効果について説明する。まず、
図8の上段に示す
図8(a)は、左右の手の親指以外の指103だけが左右の心電図波形測定電極43にそれぞれ接触している(左右の手の親指102はいずれの基準電極35に触れていない)状態で得られた心電図波形を示し、
図8の下段に示す
図8(b)は、左右の手の親指以外の指103が左右の心電図波形測定電極43にそれぞれ接触し、かつ、左手又は右手の親指102が対応する基準電極35に触れている状態で得られた心電図波形を示す。親指102が基準電極35に触れていない状態で得られた
図8(a)の心電図波形には、振幅約0.2mV、周波数約60Hzのノイズが重畳されている。これに対し、左右いずれかの手の親指102が基準電極35に触れている状態で得られた
図8(b)の心電図波形にはそのようなノイズが見られない。したがって、左手又は右手若しくは両手の親指102を基準電極35に接触させることで、心電図波形からノイズを除去できることが確認できる。
【0064】
上述したノイズ除去機能に加えて、上述した実施形態の血圧計によれば、心電図波形の測定中、上述のように、被験者100は、自然な状態で両手を血圧計本体11に添えることができるため、心電図波形測定中(約30秒)、被験者の体動を最小限に抑えられる。そのため、体動に起因するノイズの発生を最小限に抑えることができる。
【0065】
このようにして得られた心電図波形は、通信部69を介して携帯情報端末41に送信される。
図4に示すように、心電図波形を受信した携帯情報端末41は、搭載されたソフトウェアにしたがって、携帯情報端末41のディスプレイ70に心電図波形71をリアルタイムに表示する。心電図波形情報は他の測定情報(測定日時)と共に携帯情報端末41のメモリに記憶される。メモリに記憶された心電図波形情報は、必要に応じて他の通信端末に送信できる。
【0066】
また、血圧測定によって得られた血圧と脈拍数の情報は、ハウジング上面22の通信スイッチ38が押下(オン)されると、通信部68を介して携帯情報端末41に送信される。携帯情報端末41に受信された血圧と脈拍数は、心電図波形と共に携帯情報端末41のディスプレイ70に表示される。心電図波形情報と同様に、血圧と脈拍数の情報は、他の測定情報(測定日時)と共に携帯情報端末41のメモリに記憶される。メモリに記憶された血圧と脈拍数の情報は、必要に応じて他の通信端末に送信できる。
【0067】
このように、上述した実施形態に係る血圧計10及び血圧計本体11によれば、心電図波形の測定中、被験者100はその親指102とその他の指103をそれぞれ楽な姿勢で、またほぼ一定の接触面積でほぼ一定の接触圧を維持できる。また、外来ノイズや被験者100の体動によって発生するノイズや心電図波形電極と指との接触圧や接触面積が変化することに起因するノイズを含めて、心電図波形に含まれる可能性のあるあらゆるノイズを最小限に抑えることができる。
【0068】
上述した血圧計及び血圧計本体は種々改変可能である。
【0069】
例えば、
図6に示すように、基準電極35とハウジング21との間に、基準電極35に加えられる力によって容易に圧縮変形する程度の弾性を有する絶縁弾性シート又は絶縁弾性パッドからなる弾性支持部75を配置してもよい。この場合、被験者は弾性支持部75の変形によって自身の指が適当な力で基準電極に接触していることを知覚できる。また、
図6に示すように、基準電極35の表面に1つ又は複数の突起76を形成し、基準電極35に指が接触していることを被験者が知覚するようにしてもよい。
【0070】
弾性支持部は、心電図波形測定電極43とそれを支持するハウジング部分との間にも配置してもよい。この場合、被験者は弾性支持部の変形によって自身の指が適当な力で心電図波形測定電極43に接触していることを知覚できる。また、
図3に示すように、心電図波形測定電極43の表面にも1つ又は複数の突起77を形成し、心電図波形測定電極43に指が接触していることを被験者が知覚するようにしてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、左右の上面電極領域33に基準電極35を配置し、左右の側面電極領域42に心電図波形測定電極43を配置したが、上面電極領域に心電図波形測定電極を配置し、側面電極領域に基準電極を配置してもよい。
【0072】
ただし、安定した心電図波形を測定するためには、左右の上面電極領域33に基準電極35を配置し、左右の側面電極領域42に心電図波形測定電極43を配置することが好ましい。その理由は、手を小指側を下にしてテーブル101の上に置いた状態において、親指102は、親指以外の指103に比べて動きの自由度が高く動き易いため、例えば上面電極領域33に心電図波形測定電極43を設けてそこに親指102を接触させると、親指102が動くことによって親指102と電図波形測定電極43との接触抵抗が変動する可能性があるからである。
【0073】
具体的に、
図9の上段に表した
図9(a)に示すように、上面電極領域に心電図波形測定電極を設けて測定した心電図波形は基線が変動する極めて不安定な波形であった。これに対し、
図9の下段に表した
図9(b)に示すように、側面電極領域に心電図波形測定電極を設けて測定した心電図波形は基線の変動が見られない波形であった。従って、安定した心電図波形を測定するためには、左右の上面電極領域33に基準電極35を配置し、左右の側面電極領域42に心電図波形測定電極43を配置することが好ましい。
【0074】
また、例えば、一対の基準電極の一方を左側(又は右側)の上面電極領域に配置するとともに一対の基準電極の他方を右側(又は左側)の側面電極領域に配置し、一対の心電図波形測定電極の一方を左側(又は右側)の側面電極領域に配置するとともに一対の心電図波形測定電極の他方を右側(又は左側)の上面電極領域に配置してもよい。これにより、被験者の左手又は右手の親指又は親指以外の指が電極から離れていても、外来ノイズが除去された心電図波形を測定することができる。
【0075】
上述の実施形態では、左右の心電図波形測定電極43に左右の指を接触させたことを検知し、その検知信号をトリガとして心電図波形測定を開始しているが、心電図波形測定用スイッチを設け、この心電図波形測定電極が押下(オン)された直後又は一定時間後から心電図波形測定を開始してもよい。
【0076】
通信部68と通信部69は異なる通信方式を採用してもよい。例えば、一般的な携帯情報端末は音声入力部(マイクロフォン)を備えているため、例えば、一方の通信部から出力される心電図波形の情報を音波に乗せて出力し、他方の通信部から出力される血圧及び脈拍数の情報を電波に乗せて出力してもよい。逆に、一方の通信部から出力される心電図波形の情報を電波に乗せて出力し、他方の通信部から出力される血圧及び脈拍数の情報を音波に乗せて出力してもよい。
【0077】
被験者がリラックスできる測定姿勢を維持するために、側面電極領域に配置される心電図波形測定電極又は基準電極の間の距離は約20cm~約30cmに設計することが好ましい。その理由は、被験者が窮屈な姿勢でいる場合、血圧測定における血圧値が上昇し、被験者の筋電の変化に起因するノイズが心電図波形に乗る可能性があるからである。
【0078】
図7に示すように、側面電極領域42(第1と第2の側面電極領域42L,42R)に配置されている心電図波形測定電極43(第1の心電図波形測定電極43Lと第2の心電図波形測定電極43R)は、その表面が外側に向かって凸状に突出した曲面であることが好ましい。また、左右の側面25(25L、25R)は、互いの距離が上面22から底面26に向かって次第に縮むように勾配を有することが好ましい。被験者100の左右の手の親指以外の指103は、自然な状態では、先端部分が内側に湾曲していくような姿勢を有している。そのため、心電図波形測定電極43を曲面状に突出させることで、指先をより安定して電極表面に接触させることができ、指と電極の接触抵抗の変動を少なくすることができる。また、左右の側面25が被験者100から離れる向きに窄まる形状を有することで、被験者100は、自然な姿勢で、心電図波形測定電極43に左右の指を接触させることができる。結果として、ノイズの少ない安定した心電図波形を得ることができる。
【0079】
第1と第2の側面電極領域及び第1と第2の側面電極は、側面から背面に繋がる角部に伸びてもよいし、その角部を超えて背面に伸びてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10:上腕血圧計
11:血圧計本体
21:ハウジング
22:上面
23:前面
24:背面
25:側面(25L、25R)
33:上面電極領域(33L,33R)
35:基準電極(35L,35R)
42:側面電極領域(42L,42R)
43:心電図波形測定電極(43L,43R)
51:腕帯