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特許7259376遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法
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  • 特許-遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
H02J13/00 301C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019021459
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020129894
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小室 靖
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 英治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 利明
(72)【発明者】
【氏名】今岡 邦明
(72)【発明者】
【氏名】角 正敏
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165358(JP,A)
【文献】特開2014-096863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基幹給電制御所と接続された遠隔監視制御装置と、電気所内の各電力機器の監視を行う現地監視制御装置と、第1の管理設備と、第2の管理設備と、を備え、
前記遠隔監視制御装置及び現地監視制御装置は、前記第1の管理設備と前記第2の管理設備とに選択的に接続され、
また、前記電力機器は、前記第1の管理設備と第2の管理設備とに選択的に接続されており、
前記電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に自動で接続するとともに、第2の管理設備を前記現地監視制御装置のみに自動で接続した
ことを特徴とする遠隔監視制御システム。
【請求項2】
基幹給電制御所と接続された遠隔監視制御装置と、電気所内の各電力機器の監視を行う現地監視制御装置と、第1の管理設備と、第2の管理設備と、を備え、
前記遠隔監視制御装置及び現地監視制御装置は、前記第1の管理設備と前記第2の管理設備とに選択的に接続され、
また、前記電力機器は、前記第1の管理設備と第2の管理設備とに選択的に接続されており、
前記電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に接続するとともに、第2の管理設備と前記現地監視制御装置のみに接続した
ことを特徴とする遠隔監視制御方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変電所などに設置されている遠隔監視制御装置において、電気所の各電力機器の定期点検時において表示試験を行うのに好適な遠隔監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電所、変電所、開閉所などの電気所内の電力機器(たとえば、遮断器、断路器およびリレー装置)などを遠方から運転制御するために、遠隔監視制御システムが一般化されつつある。
【0003】
図6は、基幹給電制御所10と電気所20の電力機器70、71、75とデータのやり取りや電力機器70、71、75の監視制御を行う制御信号の伝達する遠隔制御システム1の一例を示した構成図である。
【0004】
基幹給電制御所10には制御装置が設置されるとともに、各電気所20には前記基幹給電制御所10とネットワークを介して接続された遠隔監視制御装置(以下、「ITC」という。)30が設置され、1つの基幹給電制御所10で複数の電気所20、20、…を遠隔操作にて監視制御できるようになっている。
【0005】
また、電気所20内には、ITC30の他、電気所20内の各電力機器70、71、75の状態を監視するための集中管理制御装置(以下、「OPC」という。)31が設置され、前記ITC30とネットワークSLANを介して接続されている。このITC30とOPC31とが接続される階層を一般にステーションレベルと称される。
【0006】
前記ステーションレベルの下位階層としてベイレベルと称される階層があり、このベイレベルには、電圧階級別に例えば500kV機器70、71とのデータ処理・中継を行うデータ処理・中継装置(以下、「500kVDCU」という。)40や220kV以下機器75とのデータ処理・中継を行うデータ処理・中継装置(以下、「220kVDCU」という。)45が設置されている。
【0007】
これら500kVDCU40と220kVDCU45とは、同階層であるベイレベルとしてネットワークBLANを介して接続され、また、各500kVDCU40、220kVDCU45は、上位階層である前記ステーションレベルとの接続のため、ネットワークSLANにも接続されている。
【0008】
前記ベイレベルの下位階層としてプロセスレベルと称される階層があり、このプロセスレベルには、各電力機器70、71、75に接続された入出力分散制御装置(以下、BCUという。)50、51、55が設置され、各BCU50、51、55は、上位階層であるベイレベルのネットワークBLANに接続されている。
【0009】
そして、各レベルにおいてネットワークに接続されたDCU40、45-BCU50、51、55は管理設備60として機能し、これら管理設備60は第1の管理設備60Aと第2の管理設備60Bとを有し、前記ITC30及び前記OPC31は2つの管理設備60A、60Bに選択的に接続され、また、各電力機器70、71、75も前記2つの管理設備60A、60Bに選択的に接続されるようになっていて、各電力機器70、71、75は前記ITC30及び前記OPC31に対して2系統の伝送路(2つの管理設備60A、60B)で接続されている。
【0010】
このように2系統の伝送路を有するのは、一方の伝送路は常用系として、他方の伝送路は待機系として機能する。すなわち、通常は常用系の伝送路でITC及びOPCと各電力機器70、71、75とデータのやり取りを行い、万が一、常用系の伝送路に事故が起きたときに直ちに待機系の伝送路に切り替わり、非常用として用いることができるようになっている。なお、図中、符号の後ろに「A]と記しているのは「常用系」を示し、「B]と記しているのは「待機系」を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2009-95197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記のような遠隔監視制御システムにおいて、数ヶ月或いは数年に1度、電力所における各電力機器の定期点検が行われ、定期点検時において表示試験(OPCのモニタに当該電力機器の点検データを表示する)を行う必要があり、そのためには、遠隔監視制御システムから試験・点検に該当する電力機器を切り離して、すなわち、前記BCUと各電力機器と接続する接続ケーブルを切り離さなければならなかった。
【0013】
そして、遠隔監視制御システムから切り離した電力機器にメンテナンス用パーソナルコンピュータを接続して、電力機器の点検を行っていた。
【0014】
ところで、試験・点検に該当する電力機器を遠隔監視制御システムから切り離さずに試験・点検を行うと、当該電力機器における試験・点検用の信号が基幹給電制御所に伝達されてしまい、遠隔監視制御システム全体として異常・故障が発生したと誤認してしまうため、上記切り離し作業が必須であった。
【0015】
そのため、接続ケーブルの切り離し作業に手間が掛かり、また、時間も必要であるとともに、物理的に切り離し作業を行うため、人為的ミスも発生しやすいという問題があった。さらに、試験・点検終了後、切り離した接続ケーブルを接続しなければならず、その分の手間と時間も必要で、更に人為的ミスのリスクもあった。
【0016】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、待機系伝送路を他の常用系伝送路から切り離し電力機器の点検用データを伝送する伝送路として利用することで点検作業の手間と時間の軽減を図る遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、基幹給電制御所と接続されたITCと、電気所内の各電力機器の監視を行うOPCと、第1の管理設備と、第2の管理設備と、を備え、前記ITC及びOPCは、前記第1の管理設備と前記第2の管理設備とに選択的に接続され、また、前記電力機器は、前記第1の管理設備と第2の管理設備とに選択的に接続されており、前記電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に自動で接続するとともに、該第2の管理設備を前記現地監視制御装置のみに自動で接続した、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に自動で接続するとともに、該第2の管理設備を前記OPCのみに自動で接続する。
【0019】
請求項2の発明は、基幹給電制御所と接続されたITCと、電気所内の各電力機器の監視を行うOPCと、第1の管理設備と、第2の管理設備と、を備え、前記ITC及びOPCは、前記第1の管理設備と前記第2の管理設備とに選択的に接続され、また、前記電力機器は、前記第1の管理設備と第2の管理設備とに選択的に接続されており、前記電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に接続するとともに、該第2の管理設備と前記現地監視制御装置のみに接続した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1及び請求項2の発明によれば、電力機器の点検時に、点検対象となる電力機器を第2の管理設備に接続するとともに、該第2の管理設備と前記OPCのみに接続したので、点検の対象となる電力機器については、待機系としての第2の管理設備を介してOPCにデータを上げて表示させることができ、点検の対象となっていない他の電力機器については、常用系としての第1の管理設備を介して、ITCを通じて基幹給電制御所に遠隔監視制御されつつ、OPCにもデータを上げて表示させることができ、結局、各管理設備内のスイッチの切換のみ、接続ケーブルの切り離し及び接続などの作業を不要とし、その分の作業時間の短縮、さらには人為的ミスのリスクも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図2図5とともに、この発明の実施の形態を示すもので、本図は全体の概略を示す構成図である。
図2】500kV機器からのデータ収集するときのデータの流れを説明するための構成図である。
図3】500kV機器及び220kV以下機器に基幹給電制御所からの指令の流れを説明するための構成図である。
図4】220kV以下機器の点検を行うための手順を示すフローチャート図である。
図5】220kV以下機器について点検を行う場合のデータの流れを説明するための構成図である。
図6】従来において220kV以下機器の点検を行う場合のデータの流れを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1乃至図5は、この実施の形態に係る遠隔制御監視システム1を示すもので、図1は全体の概略を示す構成図であり、図2は500kV機器からのデータ収集するときのデータの流れを説明するための構成図で、図3は500kV機器及び220kV以下機器に基幹給電制御所からの指令の流れを説明するための構成図である。
【0024】
なお、この実施の形態に係る遠隔制御監視システム1の構成は、背景技術を説明した図6の遠隔制御監視システム1と同じものであるため、同一符号を付すことにより詳細な説明は省略する。
【0025】
特に、図1図6との相違は、各設備、例えば、「DCU」「BCU」の標記を図1にあっては電圧階級「500kV」「220kV・110kV」を付記しているのに対して図6にあってはその電圧階級は省略した点である。また、図2図4図6の図面は、データ(情報)の流れを説明するものであるため、その設備が(常用系)か(待機系)かを明記した点で図1とは相違する。
【0026】
なお、各設備、ITC、OPC、DCU、BCUには、他の設備、他の電力機器、各ネットワークなどとの接続、切断を為すためのハードスイッチ又はソフトスイッチが設けられ、各設備の状態が切り替えられるようになっている。
【0027】
まず、各電力機器、例えば500kV機器70のデータ(入/切状態、計測情報など)収集についてその流れを説明する(図2参照)。尚、ここで使用される伝送路は常用系となっている第1の管理設備60Aが使用される。
【0028】
また、500kV機器70のデータの流れを、太線で表し、データの流れる方向を矢印で記す。以下において説明する、データ及び情報の流れについての表現も同様に記す。
【0029】
500kV機器70の上記データは、前記プロセスレベルにおけるBCU50A(常用系)を介してベイレベルのBLAN-Aに上げられ、さらに、500kVDCU40A(常用系)を介してステーションレベルのSLAN-Aに上げられた後、ITC-Aを通じて、ネットワーク回線により基幹給電制御所10に上げられる。
【0030】
これにより、基幹給電制御所10では、500kV機器70のデータに基づき監視制御を行うことができる。
【0031】
また、ステーションレベルのSLAN-Aに上げられた500kV機器70のデータはOPC-1にも上げられて、モニタに表示されるため、現地での管理部門でも500kV機器70の状態を確認することができる。
【0032】
なお、この実施の形態では500kV機器70のデータがBCU50Bには上がらないようになっているが、待機系となっているBCU50B(待機系)-ベイレベルのBLAN-B-500kVDCU40B(待機系)まで上げ、それより上位の階層にはいかないように選択的な接続することもできる。
【0033】
次に各電力機器、例えば500kV機器70と220kV以下機器75に対する基幹給電制御所10からの指令情報の流れを説明する(図3参照)。尚、ここで使用される伝送路は常用系となっている第1の管理設備60Aが使用される。
【0034】
各電力機器70、71、75のデータを収集した後、他の情報も考慮した上で、各電力機器70、71に指令が発せられる。
【0035】
この指令情報は、基幹給電制御所10からネットワーク回線により電気所20のITC-Aを通じてステーションレベルのSLAN-1に流され、500kVDCU40A(常用系)を介してベイションレベルのBLAN-Aに送られた後、プロセスレベルにおけるBCU50A(常用系)を介して、500kV機器70に伝えられ、500kV機器70はその指令情報に従い制御管理される。
【0036】
また、ステーションレベルのSLAN-1に流された指令情報は、220kV以下DCU45A-BLAN-Aを通じてプロセスレベルにおけるBCU(常用系)を介して220kV以下機器75に伝えられ、220kV機器75はその指令情報に従い制御管理される。
【0037】
そして、電力機器、例えば、220kV以下機器75の点検を行う場合についてその手順について説明する(図4図5参照)。
【0038】
まず、点検対象となる220kV以下機器75のデータ(情報)を常用系の伝送路から切り離し、待機系の伝送路に乗せる必要がある。そのたの手順をステップ1~ステップ4に示し(図4参照)、また、図5に待機系の伝送路を成立させた場合の構成図を示す。
【0039】
(ステップ1)
OPC31のスイッチ43TS(ソフトスイッチ)を点検用試験データを受け入れるように切り替える(S1)(図4参照)。すなわち、ステーションレベルのネットワークSLAN-2に接続される。これにより、OPC31は「平常」状態から「試験」状態に切り替わる(図5参照)。
【0040】
(ステップ2)
DCU45B(待機系)のハードスイッチを、ステーションレベルのネットワークSLAN-2を介して前記OPC31に接続するとともにベイレベルのネットワークBLAN-2に接続できるように切り替える(ステップ2)(図4参照)。これにより、DCU45Bは「待機」状態から「試験」状態に切り替わる(図5参照)。
【0041】
(ステップ3)
点検対象の220kV以下機器75を担当するBCU55Bのハードスイッチ43-TLSを、ベイレベルのネットワークBLAN-2を介して前記DCU45Bに接続するとともに点検対象の220kV以下機器75に接続するように切り替える(ステップ3)(図4参照)。これにより、BCU55Bは「待機」状態から「試験」状態に切り替わる(図5参照)。
【0042】
(ステップ4)
OPC31のハードスイッチ43-28を「切」から「入」に切り替える(ステップ4)(図4参照)。これは、点検対象となる220kV以下機器75のデータ(情報)をOPC31に表示するとともに警報を鳴動する(図5参照)。
【0043】
以上のステップ1~4の手順を行うことにより、待機系の伝送路であったものが、「試験」という特別な系の伝送路に変更され、点検対象の220kV以下機器75からのデータ(情報)をOPC31に表示することが可能となる。
【0044】
そして、この「試験」という新たな系の伝送路は、他の常用系の伝送路とは、別個独立の系として成立するため、点検対象の220kV以下機器75からのデータ(情報)が他の常用系の伝送路、とりわけ、ITC30へは流れることはなく、よって基幹給電制御所10にも上がることはない。そのため、遠隔監視制御システム1としては、点検対象の220kV以下機器75のみを切り離した形で他の電力機器71、75については従来通りの遠隔監視制御を行いつつ、かつ、当該電気所20における点検対象となる電力機器のみを、その表示試験(点検)を行うことができる。しかも、点検対象となす電力機器75とBCU55との接続ケーブルの切り離し及び接続などの作業を不要とし、その分の作業時間の短縮、さらには人為的ミスのリスクも回避することができる。
【0045】
以上に説明したように、この実施の形態による遠隔監視制御システム1によれば、点検対象の電力機器75をその担当のBCU55との接続ケーブルを切り離すことなく、各設備における各種スイッチの切換のみで、当該電力機器を常用系の伝送路から切り離すことが出来る。
【符号の説明】
【0046】
1 遠隔制御監視システム
10 基幹給電制御所
20 電気所
30 ITC:遠隔監視制御装置
31 OPC:集中管理制御装置
40 DCU:データ処理・中継装置
45 DCU
50 BCU:入出力分散制御装置
51 BCU
55 BCU
60A 第1の管理設備
60B 第2の管理設備
70 電力機器
71 電力機器
75 電力機器


図1
図2
図3
図4
図5
図6