IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-メルトブロー口金 図1
  • 特許-メルトブロー口金 図2
  • 特許-メルトブロー口金 図3
  • 特許-メルトブロー口金 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】メルトブロー口金
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/02 20060101AFI20230411BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230411BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
D01D4/02
D04H3/16
D01D5/08 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019024148
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133012
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 秀平
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-014065(JP,A)
【文献】特開平06-184805(JP,A)
【文献】特開平05-132811(JP,A)
【文献】特開平06-166944(JP,A)
【文献】特開平06-166945(JP,A)
【文献】特開2016-130384(JP,A)
【文献】特許第6246055(JP,B2)
【文献】米国特許第03981650(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 3/16
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するノズルプレートおよびベースプレートを有し、
前記ノズルプレートは、前記ベースプレートに対向する面に形成されたポリマーを拡幅するためのマニホールドの一部および前記拡幅されたポリマーを整流化するための幅方向に均一な形状のスリットの一部である一続きの凹部、複数のノズル孔、ならびにノズル孔と前記凹部の前記スリットを構成する部分とを連通するポリマー導入路を有し、
前記ベースプレートは、ポリマーが供給されるポリマー供給口、およびポリマー供給口と前記ノズルプレートに対向する面とを連通して前記凹部の前記マニホールドを構成する部分に開口するポリマー供給路を有し、
前記複数のノズルから吐出されるポリマーに向けて空気を吹き付けるためのエアーノズルを有し、
前記マニホールドおよび前記スリットが、前記ベースプレートの前記ノズルプレートに対向する面と前記凹部とで構成された、メルトブロー口金。
【請求項2】
前記ノズルプレートと間隔をあけて設けられたエアーリッププレートを有し、
前記エアーノズルが、前記ノズルプレートと前記エアーリッププレートとの間の隙間で構成された、請求項1のメルトブロー口金。
【請求項3】
前記ベースプレートが、前記エアーノズルに連通するブローエアー供給部を有する、請求項2のメルトブロー口金。
【請求項4】
前記ベースプレートが、外部と前記ポリマー導入路の両端部とを連通するエアーベントを有する、請求項1~3のいずれかのメルトブロー口金。
【請求項5】
前記ノズルプレートが有する前記スリットの平面度が0.005以下である、請求項1~4のいずれかのメルトブロー口金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布を紡糸するメルトブロー口金であって、組立、洗浄性を向上したメルトブロー口金に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維径がミクロンオーダーからナノオーダーの不織布がフィルター、おむつ、マスクなどの衛生材や医療材、医薬用途などの様々な分野で利用されている。これらの不織布を製造する技術としては、メルトブロー法、スパンポンド法、エレクトロスピニング法での製造が一般的であり、製品用途に合わせて製造方法が選択されている。中でもメルトブロー法は繊維径が1μm前後の繊維を作ることができ、多くの用途で使用されている。メルトブロー法は溶融もしくは溶液にしたポリマーを口金から吐出してノズルの周囲から噴射する高速エアーにより吐出したポリマーを引き延ばして、吐出したポリマーを繊維化している。メルトブロー法で用いられる口金は特許文献1、2に示すようにポリマーを吐出するノズルプレートの上に独立したポリマーを幅方向に拡幅、均一化するコートハンガー型のマニホールドプレートを設置した構成が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-166944号公報
【文献】特許第6246055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている口金の構成は、マニホールドプレートを2分割する形状であり、接続するノズルプレートのポリマーが流入する開口部の幅とマニホールドで拡幅されたポリマーを誘導するスリットの幅を同じにする必要がある。また、流量を均一化するためにはマニホールドの容量を大きくして均一化する必要がある。そのため、口金自体が大型化するため、口金の分解、洗浄、組立といった付帯作業が煩雑になり、大きな労力が必要となる。
【0005】
本発明は、従来技術と同等のポリマーの流動性や均一性を保ちつつ、部品点数を削減することで小型化でき、分解、洗浄、組立といった付帯作業を軽減化できるメルトブロー口金を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明のメルトブロー口金は、
隣接するノズルプレートおよびベースプレートを有し、
上記ノズルプレートは、上記ベースプレートに対向する面に形成されたポリマーを拡幅するためのマニホールドの一部およびポリマーを整流化するためのスリットの一部である一続きの凹部、複数のノズル孔、ならびにノズル孔と上記凹部の上記スリットを構成する部分とを連通するポリマー導入路を有し、
上記ベースプレートは、ポリマーが供給されるポリマー供給口、およびポリマー供給口と上記ノズルプレートに対向する面とを連通して上記凹部の上記マニホールドを構成する部分に開口するポリマー供給路を有し、
上記複数のノズルから吐出されるポリマーに向けて空気を吹き付けるためのエアーノズルを有し、
上記マニホールドおよび上記スリットが、上記ベースプレートの上記ノズルプレートに対向する面と上記凹部とで構成されている。
【0007】
本発明のメルトブロー口金は、好ましくは上記ノズルプレートと間隔をあけて設けられたエアーリッププレートを有し、上記エアーノズルが、上記ノズルプレートと上記エアーリッププレートとの間の隙間で構成ており、より好ましくは上記ベースプレートが、上記エアーノズルに連通するブローエアー供給部を有している。
【0008】
本発明のメルトブロー口金は、好ましくは上記ベースプレートが、外部と上記ポリマー導入路とを連通するエアーベントを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紡糸口金によれば、口金内部を流動するポリマーの流動性や均一性を低下することなく、口金を構成する部品点数を削減して小型化できるので、紡糸口金の分解、洗浄、組立等の付帯作業を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のメルトブロー口金の構成断面を示す模式図である。
図2図1の実施形態でポリマー流入中のエアーを示す模式図
図3図1の実施形態で口金内部にポリマーが充填される工程を示す模式図である。
図4図1の実施形態で紡糸した繊維分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し本発明はこれらに限定されない。
【0012】
まず本発明のメルトブロー口金の実施形態の一例について、図1を用いて説明する。図1は本発明のメルトブロー口金の構成断面を示す模式図である。
【0013】
図1を参照する。本発明のメルトブロー口金は、ポリマーを吐出するノズルプレート2、ポリマーを延伸するブローエアーを供給するベースプレート3、ブローエアーを整流するエアーノズル13から構成される。以下、各構成要素について詳述していく。
【0014】
ノズルプレート2には、ポリマーを拡幅するマニホールド5とポリマーを整流化するスリット6とが一続きの凹部となって、ベースプレート3に対向する面に形成されている。マニホールド5部分とスリット6部分を除いたノズルプレート2の面がベースプレート3と接して連結することで、マニホールド5とスリット6とが閉じた一続きの凹部となり、ポリマーを流動させる。マニホールド5、スリット6はポリマー粘度やポリマーの流量に応じて均一にポリマーを流動できる形状となっている。マニホールド5は流入したポリマーを拡幅する部分であり、半円状の凹部が図1のY方向に均一な形状を有している。ただし、ポリマーを均一に拡幅する形状であればよいので、半円形状には限定されない。また、液の流動性を高めるため、マニホールド5の面粗度がRa0.2以下にすることが好ましい。スリット6はマニホールド5で拡幅されたポリマーを均一に整流するために、凹部は図1のY方向に均一な形状になるように平面度が0.005以下に加工することが好ましく、表面粗さはRa0.2以下が好ましい。マニホールド5およびスリット6の一続きの凹部は、複数のノズル孔7にポリマーを導入するポリマー導入路19に連通する。ノズル孔7の孔径Dはポリマー粘度や孔長さLによる圧損を考慮して決定されるが、細繊化やショットと呼ばれる微小なポリマー塊による不良の発生を防ぐために、孔径Dを小径化し、1孔あたりのポリマー吐出量を少なくすることが好ましく、孔径Dは100μm~400μmが好ましい。以上の構成によりノズルプレート2は、ポリマーを吐出することと、ポリマーを口金幅方向に均一に拡幅することの2つ機能を備える。
【0015】
ベースプレート3は上述したように、ノズルプレート2に対面しメタルタッチによりボルト11でノズルプレート2と直接締結されることで、ノズルプレート2のマニホールド5およびスリット6の一続きの凹部でポリマーが流動する閉空間を構成する。ベースプレート3はノズルプレート2にポリマーを供給するポリマー供給口8を有する。ポリマー供給口8は、ポリマー供給路10を介してベースプレート3に対向するノズルプレート2に連通し、マニホールド5にポリマーを供給する。また、ポリマー供給口8はマニホールド5に連通するように配置し、ポリマー流路が全てマニホールド5の上部になるように配置することが好ましい。ポリマー供給路10の流路形状は限定しないが、加工が比較的容易な丸孔にすることが好ましい。
【0016】
ポリマー供給口8から流入したポリマーは、ポリマー供給路10、マニホールド5、スリット6、およびポリマー導入路19を流動して吐出孔7から吐出され、エアーノズル13から吹き出された高速エアーで延伸、開繊して繊維状となる。
【0017】
エアーノズル13は、エアーリッププレート4とノズルプレート2のノズル先端15の間隙でエアーの風速を調整する。エアーリッププレート4はベースプレート3とボルトで締結されて、エアーノズル13の間隙が調整できることが好ましい。また、エアーノズル13の間隙が一定ではない場合は、ブロー風速にムラが発生し、ノズル孔7から吐出したポリマーの延伸ムラが発生し、繊維径が不均一となる。そのため、エアーノズル13の間隙は図1のY方向に均一となるように調整することが好ましく、間隙のズレは10μm以下が好ましい。
【0018】
ベースプレート3には、エアーノズル13に連通するブローエアー供給部9が備えられている。ブローエアー供給部9は、ノズル孔7から吐出したポリマーをノズルプレート2のノズル先端15の両サイドから均一にブローエアーを当てるために、ノズルプレート2に2個備えられている。また、供給されたブローエアーを多数のブロー整流孔14で均一に分散してエアーノズル13に連通することが好ましい。
【0019】
また、ベースプレート3には、ポリマーを供給した時に混入したエアーを抜くために、エアーベント12が形成されていることが好ましい。図2はポリマー流入中のエアーを示す模式図であり、エアーベント12はポリマー導入流路19に溜まるエアー16を排出するため、ポリマー導入路19に連通している。また、エアーベント12の個数は限定されないが、滞留するエアー16はポリマー導入路19の端部に溜まりやすいため、両端部に2個配置されることが好ましく、エアーベント12の流路が全てポリマー導入路19の上に配置されることがより好ましい。
【0020】
次に図3を用いて本発明の紡糸口金内部でのポリマーが充填される工程を説明する。
図3a)~d)は図1の実施形態で口金内部にポリマーが充填される工程を示す模式図である。図3a)はポリマー供給路10にポリマー17が流入している状態を示す。図3b)~図3c)は図3a)の状態からマニホールド5にポリマー17が流入し、マニホールド5で拡幅して、スリット6で均一に整流される工程を示す。ポリマー17の拡幅を早く均一にするために、マニホールド5の形状を流動計算により小さくすることで、マニホールド内でポリマー17が滞留する時間を短縮することができる。さらにスリット6による隙間でポリマー17を整流することで、口金の全幅でポリマーを均一に押し出すことができる。
【0021】
次に図3d)~f)は図3c)でスリット6から均一に整流されたポリマー17がポリマー導入路19に流入後に充填し、エアーベント12からポリマー17が排出される工程を示す。
【0022】
流入したポリマー17は、ノズル孔7があるポリマー導入路19の下部からエアーベント12の上部に充填するため、ポリマー導入路19のエアー空間18がポリマー17の充填に伴い徐々にエアーベント12に導かれ、ポリマーへのエアーの混入や口金内部でエアーが滞留するのを防止することができる。
【実施例
【0023】
図1の実施形態で紡糸を実施した。
ノズルプレート2のY方向の幅は200mmとし、先端角度60度のノズル先端15に孔径D=0.3mmのノズル孔7をピッチ1.5mmで100個形成した。また、スリット5の長さを10mm、間隙を0.5mmとし、マニホールド5は半径が10mmの半円形状を形成し、ポリマー供給口8がφ6mmを1箇所、φ6mmのエアーベント12を2箇所有するベースプレート3を組み付けて流路を形成した。また、ベースプレート3とエアーリップ4の組み付けの調整により、エアーノズル13とノズル先端15との間隙を0.8mmとし口金を構成した。
【0024】
上記構成した口金にポリ乳酸を酢酸エチルに12wt%で溶かした、粘度1000mPa・sのポリマーを30m/minでポリマー供給ロ8から供給した。吐出孔7からポリマーを吐出しながら、片側のエアーノズルから1000L/minの流量のエアーでブローしポリマーを延伸して紡糸をした。得られた不織布の繊維径を電子顕微鏡で測定したところ、図4に示すように平均繊維径0.47μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ポリマーの流動を均一化しつつ、口金の部品点数を削減することで、口金の分解、洗浄、組立の付帯作業を軽減し、安定的に紡糸が可能な紡糸口金として利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 メルトブロー口金
2 ノズルプレート
3 ベースプレート
4 エアーリップ
5 マニホールド
6 スリット
7 ノズル孔
8 ポリマー供給口
9 ブローエアー供給口
10 ポリマー供給路
11 ボルト
12 エアーベント
13 エアーノズル
14 ブロー整流孔
15 ノズル先端
16 混入エアー
17 ポリマー
18 エアー空間
19 ポリマー導入路
D 孔径
L 孔長さ
図1
図2
図3
図4