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特許7259398ブーム異常負荷検知装置、移動式クレーン及びブーム異常負荷検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ブーム異常負荷検知装置、移動式クレーン及びブーム異常負荷検知方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20230411BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B66C23/90 X
B66C23/90 N
B66C23/88 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019032389
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020132415
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】足立 純也
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-157796(JP,A)
【文献】特開昭61-282294(JP,A)
【文献】特開2006-044932(JP,A)
【文献】特開2011-102167(JP,A)
【文献】米国特許第06496766(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/16;15/00
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンに装備されるブーム異常負荷検知装置であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出部と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出部と、
前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力と、前記ブーム姿勢検出部が検出した作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの予測反力との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定部と、
前記判定部が前記ブームに前記異常負荷がかかっていると判定した場合に前記異常負荷を報知する報知部と、
を備え、
前記判定部は、前記ジャッキ反力検出部が検出した前記ジャッキ反力に基づいて前記閾値を求めるブーム異常負荷検知装置。
【請求項2】
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンに装備されるブーム異常負荷検知装置であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出部と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出部と、
前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の合計値に基づいて前記吊荷の荷重を求め、前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の前記荷重に対する反力変化率と、前記ブーム姿勢検出部が検出した作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの前記荷重に対する反力の予測変化率との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定部と、
前記判定部が前記ブームに前記異常負荷がかかっていると判定した場合に前記異常負荷を報知する報知部と、
を備えるブーム異常負荷検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記ブーム姿勢検出部が検出した前記作業姿勢に基づいて前記閾値を求める、
請求項1又は2に記載のブーム異常負荷検知装置。
【請求項4】
前記ブーム姿勢検出部は、前記ブームの先端に設けられた測位センサを有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のブーム異常負荷検知装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のブーム異常負荷検知装置を備える移動式クレーン。
【請求項6】
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンのブーム異常負荷検知方法であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出工程と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出工程と、
前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力と、前記ブーム姿勢検出工程で検出された作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの予測反力との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定工程と、
を備え
前記判定工程では、前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記ジャッキ反力に基づいて前記閾値を求めるブーム異常負荷検知方法。
【請求項7】
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンのブーム異常負荷検知方法であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出工程と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出工程と、
前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の合計値に基づいて前記吊荷の荷重を求め、前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の前記荷重に対する反力変化率と、前記ブーム姿勢検出工程で検出された作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの前記荷重に対する反力の予測変化率との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定工程と、
を備えるブーム異常負荷検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブーム異常負荷検知装置、移動式クレーン及びブーム異常負荷検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンには、走行体を支持するアウトリガーに設けられたジャッキのジャッキ反力を検出することにより、クレーンの異常を検知するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行体の前後左右にあるアウトリガーそれぞれに設けられた反力センサの出力値の和を求め、その和からクレーンの重心の偏りを検出して、クレーンの転倒危険度を判定するクレーンが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アウトリガーの反力センサからカウンターウエイトの重量の異常を検出するクレーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-291779号公報
【文献】特開2011-162316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動式クレーンでは、ブームの破損とクレーンの転倒を防ぐため、ブームから吊り下げたフックを吊荷の重心の上に移動させ、吊荷を吊り上げる必要がある。しかし、移動式クレーンでは、フックから離れた走行体のキャビンからブームの操作をするため、フックを正確に吊荷の重心の上に移動させることが難しい。このため、フックが吊荷の重心の上からずれて、吊荷をいわゆる横引き、斜め引きをしてしまうことがある。その結果、横引き、斜め引きによってブームが破損したりクレーンが転倒したりしてしまうことがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のクレーンでは、クレーンの重心の偏りを検出するだけで、吊荷の横引き、斜め引きを検出することができない。その結果、横引き、斜め引きによるブームの破損、クレーンの転倒を防ぐことができない。
【0008】
特許文献2に記載のクレーンは、反力センサのほか、ブーム荷重検出センサを備えている。しかし、ブーム荷重検出センサは、鉛直方向の荷重を検出するだけである。このため、吊荷の横引き、斜め引きによる荷重かどうかを判定することができない。その結果、特許文献2に記載のクレーンでも、横引き、斜め引きによるブームの破損、クレーンの転倒を防ぐことができない。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ブームの破損、クレーンの転倒を未然に防止してクレーンの安全性を高めることができるブーム異常負荷検知装置、移動式クレーン及びブーム異常負荷検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るブーム異常負荷検知装置は、
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンに装備されるブーム異常負荷検知装置であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出部と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出部と、
前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力と、前記ブーム姿勢検出部が検出した作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの予測反力との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定部と、
前記判定部が前記ブームに前記異常負荷がかかっていると判定した場合に前記異常負荷を報知する報知部と、
を備え
前記判定部は、前記ジャッキ反力検出部が検出した前記ジャッキ反力に基づいて前記閾値を求めることを特徴とする。
【0011】
本発明の第二の観点に係るブーム異常負荷検知装置は、
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンに装備されるブーム異常負荷検知装置であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出部と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出部と、
前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の合計値に基づいて前記吊荷の荷重を求め、前記ジャッキ反力検出部が検出した前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の前記荷重に対する反力変化率と、前記ブーム姿勢検出部が検出した作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの前記荷重に対する反力の予測変化率との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定部と、
前記判定部が前記ブームに前記異常負荷がかかっていると判定した場合に前記異常負荷を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする
【0012】
前記判定部は、前記ブーム姿勢検出部が検出した前記作業姿勢に基づいて前記閾値を求めてもよい。
【0013】
前記ブーム姿勢検出部は、前記ブームの先端に設けられた測位センサを有してもよい。
【0014】
本発明の第三の観点に係る移動式クレーンは、第一又は第二の観点に係るブーム異常負荷検知装置を備えることを特徴とする
【0015】
本発明の第の観点に係るブーム異常負荷検知方法は、
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンのブーム異常負荷検知方法であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出工程と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出工程と、
前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力と、前記ブーム姿勢検出工程で検出された作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの予測反力との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定工程と、
を備え、
前記判定工程では、前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記ジャッキ反力に基づいて前記閾値を求めることを特徴とする。
【0016】
本発明の第の観点に係るブーム異常負荷検知方法は、
走行体に伸縮可能に設けられ、伸長時に前記走行体を支持する複数のジャッキと、前記走行体上で格納姿勢から吊荷を吊り上げできる作業姿勢へ姿勢変化することが可能なブームと、を備える移動式クレーンのブーム異常負荷検知方法であって、
前記ブームの作業姿勢を検出するブーム姿勢検出工程と、
前記複数のジャッキのジャッキ反力をそれぞれ検出するジャッキ反力検出工程と、
前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の合計値に基づいて前記吊荷の荷重を求め、前記ジャッキ反力検出工程で検出された前記複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力の前記荷重に対する反力変化率と、前記ブーム姿勢検出工程で検出された作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの前記複数のジャッキそれぞれの前記荷重に対する反力の予測変化率との差を算出し、算出された前記差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、前記ブームに異常負荷がかかっていると判定する判定工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、判定部が、複数のジャッキそれぞれのジャッキ反力と、複数のジャッキそれぞれの予測反力との差の絶対値のうち、1つ以上が閾値よりも大きい場合に、ブームに異常負荷がかかっていると判定し、報知部が、判定部の判定結果を報知する。本発明では、ブームの異常負荷が報知されるので、ブームの破損、クレーンの転倒を未然に防止することができる。その結果、クレーンの安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置が装備されたラフテレーンクレーンの斜視図
図2】本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置が装備されたラフテレーンの正面図
図3】本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置が装備されたラフテレーンの側面図
図4】本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置のブロック図
図5】本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置が実施するブーム異常負荷検知処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置、移動式クレーン及びブーム異常負荷検知方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0020】
実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置は、ラフテレーンクレーンが備えるアウトリガーのジャッキの反力を用いてブームの異常な負荷を検知する装置である。まず、図1図3を参照して、ラフテレーンクレーンの構成とブームの負荷について説明する。次に、図4を参照して、ブーム異常負荷検知装置について説明し、続いて、図5を参照して、その装置で行われるブームの異常負荷の検知方法について説明する。
【0021】
図1は、実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置が装備されたラフテレーンクレーン100の斜視図である。図2は、ラフテレーンクレーン100の正面図である。図3は、ラフテレーンクレーン100の側面図である。
【0022】
図1に示すように、ラフテレーンクレーン100は、走行体110の前後左右に設けられたアウトリガー120A-120Dと、走行体110上に設置され、図示しない旋回体に設けられたブーム140と、を備えている。
【0023】
アウトリガー120A-120Dは、左右方向に張出可能なビーム121A-121Dと、上下方向に伸縮可能に設けられたジャッキ122A-122Dと、を有している。アウトリガー120A-120Dは、クレーン作業時にビーム121A-121Dを張り出し、ジャッキ122A-122Dを伸長して、先端のフロート123A-123Dを接地する。これにより、アウトリガー120A-120Dは、走行体110を安定させてラフテレーンクレーン100の転倒を防止する。
【0024】
これに対して、ブーム140は、図示しない旋回体に設けられた起伏シリンダ131によって起伏可能に設けられている。また、ブーム140は、テレスコピックブームで構成され、先端にブームヘッド141が設けられている。そのブームヘッド141から、フック150が垂下可能である。ブーム140は、クレーン作業時に、旋回体が所望の位置に旋回された状態で、起立又は伸長する。その結果、ブーム140は、ブームヘッド141を吊り上げ作業を行う所望の位置に移動させて、その位置の下にある吊荷200を吊り上げ可能にする。
なお、本明細書では、ブームヘッド141が所望の位置に移動した状態をブーム140の作業姿勢という。また、ブーム140が前方を向きかつ倒伏し、最縮小した状態をブーム140の格納姿勢、格納姿勢から作業姿勢への変化を姿勢変化という。
【0025】
吊荷200の吊り上げ時、ラフテレーンクレーン100では、ブーム140に異常な負荷をかけないため、ブーム140の作業姿勢を、吊荷200の重心の真上にフック150がある姿勢にする必要がある。
【0026】
しかし、ラフテレーンクレーン100のオペレータは、旋回体上のキャビン132に搭乗するため、吊荷200から離れている。このため、旋回体の旋回、ブーム140の伸長を操作して、吊荷200の重心の真上にフック150を移動させることが難しい。その結果、クレーン作業で、吊荷200を横引き、斜め引きをしてブーム140に異常な負荷がかかってしまうことがある。
【0027】
ここで、横引きとは、図2に示す、フック150の中心を通る鉛直線VLよりも左右方向、すなわち横方向に重心CGがある吊荷200を吊り上げることである。また、斜め引きとは、図3に示す、上記鉛直線VLよりも前後方向に重心CGがある吊荷200を吊り上げることである。
【0028】
ラフテレーンクレーン100では、吊荷200を横引き又は斜め引きをしてしまうと、図2及び図3に示す矢印A1-A4の方向へブーム140が引っ張られてしまう。その結果、ブーム140に異常な負荷がかかり、ひいてはブーム140の破損、ラフテレーンクレーン100の転倒を招きかねない。そこで、ラフテレーンクレーン100には、ブーム140の異常な負荷を検知してブーム140の破損、ラフテレーンクレーン100の転倒を未然に防止するため、ブーム異常負荷検知装置が装備されている。次に、図4を参照して、ブーム異常負荷検知装置1の構成について説明する。
【0029】
図4は、ブーム異常負荷検知装置1のブロック図である。
図4に示すように、ブーム異常負荷検知装置1は、ブーム140の作業姿勢を検出するブーム姿勢検出部10と、ジャッキ122A-122Dのフロート123A-123Dが接地したときの反力を検出するジャッキ反力検出部20と、ブーム姿勢検出部10が検出したブーム140の作業姿勢データとジャッキ反力検出部20が検出した反力データに基づいてブーム140の異常負荷の有無を判定する制御部30と、制御部30の判定結果を報知する報知部40と、を備えている。
【0030】
ブーム姿勢検出部10は、GPS(Global Positioning System)衛星の信号を受信して位置を計測する測位センサ11、12を有する。測位センサ11と12は、図1に示すように、ブームヘッド141と走行体110に配置されている。ブーム姿勢検出部10は、測位センサ11、12が測位した位置から、旋回体の旋回中心に対する、ブームヘッド141の位置座標を求める。例えば、ブーム姿勢検出部10は、旋回体の旋回中心を原点としたブームヘッド141の、フック150を垂下させるシーブの位置座標を求める。ブーム姿勢検出部10は、制御部30から指示信号を受ける毎に上記の位置座標を求め、その位置座標データを制御部30に出力する。
【0031】
一方、ジャッキ反力検出部20は、ひずみゲージ式ロードセル、静電容量式ロードセルなどの板状の荷重計21A-21Dを有する。その荷重計21A-21Dは、ジャッキ122A-122Dそれぞれに配置されている。ジャッキ反力検出部20は、制御部30から指示信号を受ける毎に、各ジャッキ122A-122Dの反力を計測する。そして、ジャッキ反力検出部20は、計測した各ジャッキ122A-122Dの反力データを制御部30に出力する。
【0032】
制御部30は、ブーム異常負荷検知装置1が備える記憶部50に格納されたブーム異常負荷検知プログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより実現されている。
【0033】
制御部30は、ブーム姿勢検出部10とジャッキ反力検出部20に指示信号を出力して、ブーム姿勢検出部10からブームヘッド141の位置座標を取得する。さらに、制御部30は、ジャッキ反力検出部20から各ジャッキ122A-122Dの反力を取得する。制御部30は、取得したブームヘッド141の位置座標と各ジャッキ122A-122Dの反力を記憶部50に記憶させる。
【0034】
また、制御部30は、取得したブームヘッド141の位置座標に基づいてブーム140の作業姿勢、すなわち、ブーム140の長さ、起伏角度、旋回体の旋回角度を求める。そして、求めたブーム140の長さ、起伏角度、旋回体の旋回角度から、その作業姿勢でブーム140が吊荷を吊り上げたと仮定したときの各ジャッキ122A-122Dの荷重に対する反力の予測変化率(以下、単に予測変化率ともいう)を算出する。また、制御部30は、ジャッキ反力検出部20から取得した各ジャッキ122A-122Dの反力に基づいて、荷重に対する反力変化率(以下、単に反力変化率ともいう)を算出する。
【0035】
制御部30は、算出した予測変化率と反力変化率を利用して、ブーム140に横引き、斜め引き等による異常な負荷がかかっているか否かを判定する。この判定では、横引き、斜め引きをしたときに反力変化率が、横引き、斜め引きをしないときの反力変化率からずれる現象を利用する。次に、表1-表3を参照して、横引き、斜め引きをしたときに反力変化率がずれる現象について説明する。
【0036】
表1は、1-5トンの吊荷200を吊り上げたときの各ジャッキ122A-122Dの反力を示す表である。表1では、ブームヘッド141から鉛直方向に垂下したフック150に1-5トンの吊荷200を吊り上げたときの、すなわち、横引き、斜め引きをしないときの各ジャッキ122A-122Dの反力を、機構解析ソフトウエアを用いて算出している。ブーム140の作業姿勢は、ブーム140の起伏角度が60°、旋回体の旋回角度が0°としている。また、ブーム140にたわみはないものとしている。
【0037】
【表1】
【0038】
表1を参照すると、各ジャッキ122A-122Dの反力は、荷重に応じて変化し、その変化は、各ジャッキ122A-122D毎に応じた反力変化率であることがわかる。このことは、図示しないが、他の作業姿勢でも同様である。
【0039】
一方、この作業姿勢のときに、吊荷200を横引き、斜め引きをすると、各ジャッキ122A-122Dの反力は、表1に示す反力から変化する。
表2に、表1と同一条件下において、ブームヘッド141の鉛直方向に対して1°横方向にある5トンの吊荷200を吊り上げて横引きしたときの反力と、1°前後方向にある同荷重の吊荷200を吊り上げて斜め引きしたときの反力と、を示す。
【0040】
なお、表2は、「垂直」と記載された欄に、表1の、ブームヘッド141の鉛直方向にある吊荷200を吊り上げときの反力を参考として示している。また、「横引き」「斜め引き」の各欄の「差」は、「垂直」のときの反力との差を示している。これらの単位はトンである。さらに「垂直」、「横引き」、「斜め引き」の各欄の「変化率」は、上述した反力変化率を示しており、荷重0トンのときの反力からの反力変化量を荷重増加量5トンで除算したときの変化率である。その単位は%である。
【0041】
【表2】
【0042】
また、別の作業姿勢のときでも、吊荷200の横引き、斜め引きによって、各ジャッキ122A-122Dの反力が変化する。
表3に、ブーム140の旋回角度45°における、1°の横引きしたときの反力と1°の斜め引きしたときの反力を示す。なお、表3での条件は、旋回角度45°を除き、表2と同じである。
【0043】
【表3】
【0044】
表2及び表3を参照すると、吊荷200の横引き、斜め引きをした場合、ジャッキ122A-122Dの反力の合計が一定値であるにもかかわらず、ジャッキ122A-122Dの荷重に対する反力変化率が、吊荷200を真上に吊り上げるときの反力変化率と異なることがわかる。表2及び表3では、吊荷200を真上に吊り上げるときの反力変化率から3%を超えて変化した反力変化率を太字で表示しているが、この3%を超えて変化した反力変化率のジャッキ122A-122Dは、明らかに横引き、斜め引きの影響を受けていると考えられる。このことから、吊荷200を吊り上げるときの実際の反力変化率が、吊荷200を真上に吊り上げると仮定した予測変化率よりも、例えば、3%の閾値を超えている場合に、異常な負荷がかかっていると判定できることがわかる。そして、この判定から横引き、斜め引き等の正常でない吊り上げを検知できることがわかる。
【0045】
制御部30は、上記の反力変化率が変動する現象を利用して、ブーム140に横引き、斜め引き等による異常な負荷がかかっているか否かを判定する。
【0046】
図4に戻って、制御部30は、算出した反力変化率と予測変化率との差の絶対値を求め、求めた差の絶対値が第一閾値よりも大きいか否かを判定する。そして、制御部30は、差の絶対値が第一閾値よりも大きいと判定した場合に、ブーム140に横引き、斜め引き等による異常な負荷がかかっていると判定する。制御部30は、異常な負荷がかかっていると判定した場合に、報知部40に異常信号を出力する。さらに、制御部30は、上記差の絶対値が第二閾値よりも大きいか否かを判定する。ここで、第二閾値は、第一閾値よりも大きい閾値のことである。制御部30は、差の絶対値が第二閾値よりも大きいと判定した場合、ブーム140の破損を未然に防止するため、ラフテレーンクレーン100が備えるブーム伸縮駆動部61、ブーム起伏駆動部62、旋回駆動部63及びウインチドラム駆動部64それぞれに停止信号を出力する。これにより、制御部30は、ラフテレーンクレーン100によるクレーン作業を停止させる。なお、本明細書では、制御部30が判定処理をすることから、制御部30のことを判定部ともいう。
【0047】
報知部40は、ブザー41を有する。報知部40は、制御部30から異常信号を受信すると、ブザー41から音を発生させる。これにより、報知部40は、ラフテレーンクレーン100のオペレータに、横引き、斜め引き等による異常な負荷を報知する。その結果、ブーム140の破損、ラフテレーンクレーン100の転倒を未然に防止する。
【0048】
次に、図5を参照して、ブーム異常負荷検知装置1が実施するブーム異常負荷検知処理について説明する。
【0049】
図5は、ブーム異常負荷検知装置1が実施するブーム異常負荷検知処理のフローチャートである。以下の説明では、ラフテレーンクレーン100がクレーン作業を行う場所に停車し、アウトリガー120A-120Dを張り出していることを前提とする。そして、ジャッキ122A-122Dのフロート123A-123Dが接地されているものとする。また、図示しないが、ラフテレーンクレーン100には、アウトリガー張出幅を検出して、その張出幅を表示するアウトリガー張出幅検出装置が設けられているものとする。そのアウトリガー張出幅検出装置には、張出幅の表示と実際のアウトリガー120A-120Dの張出幅が合っている場合に押されるアウトリガー状態登録ボタンが設けられているものとする。
【0050】
まず、ラフテレーンクレーン100のオペレータは、アウトリガー120A-120Dの張出幅を確認する。次いで、オペレータは、アウトリガー張出幅検出装置の張出幅の表示と実際のアウトリガー120A-120Dの張出幅が合っていることを確認した場合、アウトリガー状態登録ボタンを押す。これにより、CPUによってブーム異常負荷検知プログラムが実行される。その結果、ブーム異常負荷検知処理のフローが開始される。
【0051】
ブーム異常負荷検知処理のフローが開始されると、制御部30は、ジャッキ反力検出部20から各ジャッキ122A-122Dの反力を取得し、さらにブーム姿勢検出部10からブームヘッド141の位置座標を所得する(ステップS1)。制御部30は、取得した各ジャッキ122A-122Dの反力を、吊荷200を吊り上げていない無荷重状態のラフテレーンクレーン100の初期反力R’(i)[以下、iは各ジャッキ122A-122Dの番号を示す]として記憶部50に記憶する。また、制御部30は、取得したブームヘッド141の位置座標を前回位置座標として記憶部50に記憶する。
【0052】
一方、オペレータは、アウトリガー状態登録ボタンを押した後、ラフテレーンクレーン100を操作して、ブームヘッド141を吊荷200の上に移動させる。そして、オペレータは、クレーン作業を行う。
【0053】
制御部30は、ステップS1の次に、ブーム姿勢検出部10からブームヘッド141の位置座標を取得する(ステップS2)。続いて、記憶部50から前回位置座標を読み出し、前回位置座標と取得した位置座標を比較して、取得した位置座標が前回位置座標から変化したか否かを判定する(ステップS3)。
なお、本明細書では、ブーム姿勢検出部10がブームヘッド141の位置座標を検出することを、ブーム姿勢検出工程ともいう。
【0054】
制御部30は、取得した位置座標が変化したと判定した場合(ステップS3のYes)、各ジャッキ122A-122Dの反力の予測変化率Δ(i)を算出する(ステップS4)。詳細には、制御部30は、取得した位置座標から、ブーム140の長さ、起伏角度、旋回体の旋回角度等の作業姿勢を求める。続いて、制御部30は、求めた作業姿勢からラフテレーンクレーン100の重心位置を求め、さらに吊荷200を吊り上げていないと仮定して、すなわち、無荷重状態であると仮定して各ジャッキ122A-122Dの反力R(i)を算出する。また、質量mの吊荷200を吊り上げたと仮定して、そのときの各ジャッキ122A-122Dの反力R(i)を算出する。そして、算出した反力R(i)、R(i)から各ジャッキ122A-122Dの反力の予測変化率Δ(i)を算出する。
【0055】
ここで、Δ(i)は、以下の式1で求める。
Δ(i)={R(i)-R(i)}/m・・・式1
制御部30は、式1を用いて求めた予測変化率Δ(i)を記憶部50に記憶させる。
【0056】
一方、制御部30は、取得した位置座標が変化していないと判定した場合(ステップS3のNo)、ステップS5に処理を進める。
【0057】
次に、制御部30は、ジャッキ反力検出部20から各ジャッキ122A-122Dの反力を取得する(ステップS5)。続いて、制御部30は、各ジャッキ122A-122Dの反力変化率Δ’(i)を算出する(ステップS6)。この反力変化率Δ’(i)の算出では、各ジャッキ122A-122Dの初期反力R’(i)を記憶部50から読み出し、読み出した初期反力R’(i)と取得した反力R’ (i)とに基づいて、反力変化率Δ’(i)を算出する。
【0058】
ここで、Δ’(i)は以下の式2で求める。
Δ’(i)={R’(i)-R’ (i)}/M・・・式2
式2のMは、吊荷200の質量である。Mは、各ジャッキ122A-122Dの反力R’ (i)の合計値から各ジャッキ122A-122Dの初期反力R’(i)の合計値を除算することにより求める。なお、本明細書では、ステップS5のジャッキ反力検出部20が各ジャッキ122A-122Dの反力を検出する工程をジャッキ反力検出工程ともいう。
【0059】
次に、制御部30は、ステップS4で算出した反力の予測変化率Δ(i)を記憶部50が読み出す。記憶部50には、実験により求めた第一閾値と、第一閾値よりも大きい値の第二閾値と、が予め記憶されている。制御部30は、その第一閾値を読み出す。制御部30は、ステップS6で算出した反力変化率Δ’(i)と読み出した予測変化率Δ(i)の差の絶対値A(i)を求め、その差の絶対値A(i)の1つ以上が第一閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。なお、本明細書では、この工程の事を判定工程ともいう。
【0060】
制御部30は、差の絶対値A(i)の1つ以上が第一閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS7のYes)、ブーム140に横引き、斜め引き等による異常な負荷がかかっているとして、報知部40に異常信号を出力する。これにより、制御部30は報知部40に異常を報知させる(ステップS8)。
【0061】
続いて、制御部30は、記憶部50から第二閾値を読み出し、ステップS7で求めた差の絶対値A(i)の1つ以上が第二閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS9)。
【0062】
制御部30は、差の絶対値A(i)の1つ以上が第二閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS9のYes)、ブーム140の破壊、ラフテレーンクレーン100の転倒を未然に防止するため、ブーム伸縮駆動部61、ブーム起伏駆動部62、旋回駆動部63及びウインチドラム駆動部64それぞれに停止信号を出力する。これにより、クレーン作業を停止させる(ステップS10)。
【0063】
クレーン作業が停止すると、オペレータは、作業を続けるために、吊荷200の横引き、斜め引き等の状況の確認をする必要がある。そして、クレーン作業を再開する必要がある。そこで、ラフテレーンクレーン100には、クレーン作業の停止を解除する解除ボタンが設けられている。
【0064】
次に、制御部30は、この解除ボタンが押されたか否かを判定する(ステップS11)。制御部30は、解除ボタンが押されたと判定した場合(ステップS11のYes)、再びクレーン作業が開始され、ブームヘッド141の位置が動くと予想されることから、ステップS2に戻る。また、制御部30は、解除ボタンが押されていないと判定した場合(ステップS11のNo)、解除ボタンが押されるまで、ステップS11で待機する。
【0065】
一方、制御部30は、差の絶対値A(i)のいずれも第一閾値以下であると判定した場合(ステップS7のNo)、或いは差の絶対値A(i)のいずれも第二閾値以下であると判定した場合(ステップS9のNo)、ステップS2に戻り、ブームヘッド141の位置座標の変化の判定、反力の予測変化率Δ(i)の算出、反力変化率Δ’(i)の算出等の処理を繰り返す。
【0066】
オペレータは、クレーン作業が終了すると、アウトリガー120A-120Dを格納する。このとき、オペレータは、アウトリガー120A-120Dが張り出していないことを確認して、アウトリガー状態登録ボタンを押す。制御部30は、アウトリガー状態登録ボタンが押されることにより、ブーム異常負荷検知処理を強制的に終了させる。
【0067】
なお、ステップS7、S9では、制御部30は、反力変化率Δ’(i)と予測変化率Δ(i)との差の絶対値A(i)の1つ以上が、第一閾値又は第二閾値よりも大きいか否かを判定しているが、制御部30は、差の絶対値A(i)の2つ以上が、第一閾値又は第二閾値よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態に係るブーム異常負荷検知装置1では、制御部30が、各ジャッキ122A-122Dの反力から算出した荷重に対する反力変化率Δ’(i)とブームヘッド141の位置座標から算出した反力の予測変化率Δ(i)との差の絶対値A(i)が第一閾値より大きい場合に、ブーム140に異常な負荷がかかっていると判定する。このため、横引き、斜め引き等の異常な負荷の有無を検知して、ブームの破損、クレーンの転倒を未然に防止することができる。その結果、ラフテレーンクレーン100の安全性を高めることができる。
【0069】
ブーム異常負荷検知装置1は、各ジャッキ122A-122Dの反力R’ (i)とブームヘッド141の位置座標から、ブーム140の異常な負荷の有無を判定する。このため、横引き、斜め引きによる異常な負荷のほか、ブーム140の急な動作、停止による負荷、例えば、遠心力、慣性力による負荷も検知できる。
【0070】
また、ブーム異常負荷検知装置1は、ブーム140の異常な負荷を報知する報知部40を備えるので、オペレータが異常な負荷の有無を容易に認知できる。
【0071】
ブーム姿勢検出部10は、GPS衛星の信号を受信して位置を計測する測位センサ11、12によってブームヘッド141の位置を計測する。このため、ブーム140がたわんだ場合でも、ブームヘッド141の位置を正確に計測できる。その結果、制御部30がブーム140の異常な負荷を正確に判定することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施の形態では、ブーム姿勢検出部10が測位センサ11、12を備えている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、ブーム姿勢検出部10は、ブーム140の作業姿勢を検出する限りにおいて、その検出手段は任意である。
【0073】
例えば、ブーム姿勢検出部10は、測位センサ11、12の代わりにブーム140の長さを検出する距離計を備えてもよい。この場合、ブーム姿勢検出部10は、旋回体の旋回角度を計測する角度計と、ブーム140の起伏角度を計測する角度計とを備え、これらの計測器で計測したデータからブーム140の作業姿勢を求めてもよい。
【0074】
また、本発明では、上述したように、ブーム姿勢検出部10がブーム140の作業姿勢を検出できればよいので、ブーム姿勢検出部10が測位する箇所は、この限りにおいて、任意である。例えば、ブームヘッド141に設けられたシーブ等、他の部品の位置を測位してもよい。この場合、その他の部品の位置からブーム140の作業姿勢を求めるとよい。
【0075】
上記の実施の形態では、第一閾値と第二閾値が記憶部50に予め記憶された一定の値である。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、第一閾値と第二閾値は、変動してもよい。
【0076】
例えば、第一閾値と第二閾値は、ブーム140の作業姿勢に基づいて求められてもよい。第一閾値、第二閾値は、旋回体の旋回角度、ブーム140の長さ、ブーム140の起伏角度に基づいて算出されてもよい。例えば、旋回体の旋回角度が特定の角度範囲にあるときに、制御部30は、第一閾値又は第二閾値を小さい値にしてもよい。また、制御部30は、ブーム140の長さが大きくなるに従って第一閾値又は第二閾値を小さい値にしてもよい。制御部30は、ブーム140が起立するに従って第一閾値又は第二閾値を小さい値にしてもよい。なお、第一閾値と第二閾値は、アウトリガー張出量に基づいて求められてもよく、第一閾値と第二閾値は、アウトリガー張出量が大きいほど、大きい値になってもよい。
【0077】
また、第一閾値と第二閾値は、ジャッキ122A-122Dの反力に基づいて求められてもよい。例えば、第一閾値、第二閾値は、上述した吊荷200の質量Mに基づいて算出されてもよい。例えば、制御部30は、質量Mが大きくなるに従って第一閾値又は第二閾値を小さい値にしてもよい。また、質量Mの大きさに応じて段階的に第一閾値又は第二閾値の値を変化させてもよい。
【0078】
上記の実施の形態では、制御部30は、反力変化率Δ’(i)と予測変化率Δ(i)の差の絶対値A(i)が第二閾値よりも大きいか否かを判定し、第二閾値よりも大きいと判定した場合に、クレーン作業を停止させている(ステップS10)。しかし、本発明は、これに限定されない。本発明では、反力変化率Δ’(i)と予測変化率Δ(i)の差の絶対値A(i)が閾値よりも大きい場合に、報知部40が異常な負荷を報知すればよい。このため、制御部30がクレーン作業を停止させるか否かは任意である。
【0079】
例えば、制御部30の、上述したステップS9の第二閾値を用いた判定とステップS10のクレーン作業の停止は、省略されてもよい。また、制御部30は、クレーン作業の停止以外の処理をしてもよい。例えば、制御部30は、ステップS9で第二閾値を用いた判定をして、反力変化率Δ’(i)と予測変化率Δ(i)の差の絶対値A(i)が第二閾値よりも大きいと判定した場合に、ブーム140の起伏、伸長、旋回体の旋回、ウインチドラムの回転等の各動作を減速してもよい。また、各動作を微動に変更してもよい。さらに、各ジャッキ122A-122Dの反力R’ (i)を比較することにより、制御部30が上記各動作の危険動作を特定し、特定された危険動作を回避してもよい。
【0080】
上記の実施の形態では、制御部30は、反力変化率Δ’(i)と予測変化率Δ(i)との差の絶対値A(i)を用いて、横引き、斜め引き等の、吊荷がブームヘッド141の鉛直方向からずれたときにブーム140にかかる異常な負荷を検出している。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、制御部30は、ジャッキ反力検出部20が検出した各ジャッキ122A-122Dの反力R’ (i)と、ブーム姿勢検出部10が検出した作業姿勢で吊荷を吊り上げたと仮定したときの各ジャッキ122A-122Dの反力R(i)[予測反力ともいう]との差を算出し、その差の絶対値A’(i)が第一閾値よりも大きい場合に、ブーム140に異常負荷がかかっていると判定してもよい。この場合、制御部30は、吊荷200の質量mを、各ジャッキ122A-122Dの反力R’ (i)の合計値から各ジャッキ122A-122Dの、実施の形態で説明した初期反力R’(i)の合計値を除算して求め、その吊荷200の質量mから各ジャッキ122A-122Dの反力R(i)、すなわち、予測反力を求めるとよい。また、この場合、制御部30は、算出した差の絶対値A’(i)のうち、1つ以上が第一閾値よりも大きい場合に、ブーム140に異常負荷がかかっていると判定してもよい。なお、制御部30は、算出した差の絶対値A’(i)のうち、1つ以上が第二閾値よりも大きい場合に、クレーン作業を停止させてもよい。
【0081】
上記の実施の形態では、報知部40がブザー41を備えているが、報知部40は、ブーム140の異常な動作を報知する限りにおいて、その具体的な報知手段は任意である。例えば、報知部40がランプを備え、そのランプを点灯、点滅させて、異常な負荷を報知してもよい。また、報知部40が液晶ディスプレイを備え、その液晶ディスプレイに、異常な負荷を示す文字、画像を表示してもよい。
【0082】
上記の実施の形態では、ブーム異常負荷検知装置1が単独で動作しているが、ラフテレーンクレーン100に装備される安全装置、例えば、過負荷防止装置と連動してもよい。例えば、報知部40のブザー41は、過負荷防止装置が備えるブザーと共用されてもよい。
【0083】
上記の実施の形態では、ジャッキ反力検出部20が荷重計21A-21Dを有しているが、ジャッキ反力検出部20は、ジャッキ反力を検出すればよいので、ジャッキ122A-122Dが備えるジャッキシリンダの内圧を測定してもよい。
【0084】
上記の実施の形態では、ブーム異常負荷検知装置1がラフテレーンクレーン100に装備されているが、ブーム異常負荷検知装置1は、ジャッキとブームを備える移動式クレーン全般に適用可能である。例えば、ブーム異常負荷検知装置1は、オールテレーンクレーン、トラッククレーンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…ブーム異常負荷検知装置、10…ブーム姿勢検出部、11,12…測位センサ、20…ジャッキ反力検出部、21A-21D…荷重計、30…制御部、40…報知部、41…ブザー、50…記憶部、61…ブーム伸縮駆動部、62…ブーム起伏駆動部、63…旋回駆動部、64…ウインチドラム駆動部、100…ラフテレーンクレーン、110…走行体、120A-120D…アウトリガー、121A-121D…ビーム、122A-122D…ジャッキ、123A-123D…フロート、131…起伏シリンダ、132…キャビン、140…ブーム、141…ブームヘッド、150…フック、200…吊荷、CG…重心、VL…鉛直線、A1-A4…矢印
図1
図2
図3
図4
図5