(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】面発光レーザ、電子装置、面発光レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20230411BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/042 612
(21)【出願番号】P 2019088615
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】辻 幸洋
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/026362(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/030562(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に設けられた光出射部と、
前記基板の上に設けられた2つの第1電極と第2電極と、を具備し、
前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、
前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、
前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、
前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並び、
前記第2電極は前記光出射部と電気的に接続され、
前記2つの第1電極のうち一方は前記光出射部と電気的に接続され、他方は前記光出射部に接続されない面発光レーザ。
【請求項2】
前記基板は矩形の形状を有し、
前記2つの第1電極は前記基板の四隅のうち2つに配置され、
前記第2電極は前記四隅のうち1つに配置され、
前記基板の第1の辺に沿って、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とが並び、
前記第1の辺に交差する前記基板の第2の辺に沿って、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とが並ぶ請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項3】
前記光出射部は、前記基板の上に設けられた下部反射鏡層と、前記下部反射鏡層の上に設けられた活性層と、前記活性層の上に設けられた上部反射鏡層と、を含み、
前記第1電極および前記第2電極は前記上部反射鏡層よりも上側に位置し、
前記2つの第1電極のうち前記一方は前記下部反射鏡層に電気的に接続され、前記第2電極は前記上部反射鏡層に電気的に接続される請求項1
または請求項2に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
実装基板と、
前記実装基板に実装される面発光レーザと、を具備し、
前記面発光レーザは、基板の上に設けられた光出射部と、
前記基板の上に設けられ、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極と第2電極と、を有し、
前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、
前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、
前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、
前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並び、
前記実装基板は第1パッドおよび第2パッドを有し、
前記第1パッドは、前記2つの第1電極のうち一方と対向し、かつ第1ボンディングワイヤを用いて電気的に接続され、前記2つの第1電極のうち他方とは電気的に接続されず、
前記第2パッドは前記第2電極と対向し、かつ第2ボンディングワイヤを用いて電気的に接続される電子装置。
【請求項5】
基板の上に光出射部を形成する工程と、
前記基板の上に2つの第1電極および第2電極を形成する工程と、を有し、
前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、
前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、
前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、
前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並び、
前記第2電極は前記光出射部と電気的に接続され、
前記2つの第1電極のうち一方は前記光出射部と電気的に接続され、他方は前記光出射部に接続されない面発光レーザの製造方法。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極は第1金属層および第2金属層を含み、
前記第1電極および前記第2電極を形成する工程は、前記基板の上に第1レジストおよび第1マスクを順に形成し、前記第1マスクを用いて前記第1レジストをパターニングする工程と、
前記第1レジストの上に前記第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層の上に第2レジストおよび第2マスクを順に形成し、前記第2マスクを用いて前記第2レジストをパターニングする工程と、
前記第2レジストおよび前記第1金属層の上に前記第2金属層を形成する工程と、を含む請求項5に記載の面発光レーザの製造方法。
【請求項7】
前記光出射部に電気的に接続される第3電極および第4電極を形成する工程と、
前記基板、前記第1電極および前記第2電極の上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に第3レジストおよび第3マスクを順に形成し、前記第3マスクを用いて前記第3レジストをパターニングする工程と、
前記第3レジストを用いて前記第1絶縁膜をエッチングすることで、前記第1絶縁膜に、前記第3電極が露出する第1開口部、および前記第4電極が露出する第2開口部を形成する工程と、を有し、
前記第1絶縁膜に第1開口部および第2開口部を形成する工程の後に、前記第1電極および前記第2電極を形成する工程を行い、
前記2つの第1電極のうち前記一方は前記第1開口部を介して前記第3電極と電気的に接続され、前記2つの第1電極のうち前記他方は前記第3電極と電気的に接続されず、
前記第2電極は前記第2開口部を介して前記第4電極と電気的に接続される請求項5または請求項6に記載の面発光レーザの製造方法。
【請求項8】
前記基板、前記第1電極および前記第2電極の上に第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜の上に第4レジストおよび第4マスクを順に形成し、前記第4マスクを用いて、前記第4レジストをパターニングする工程と、
前記第4レジストを用いて前記第2絶縁膜をエッチングすることで、前記第2絶縁膜に、前記第1電極が露出する第3開口部、および前記第2電極が露出する第4開口部を形成する工程と、を有する請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の面発光レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面発光レーザ、電子装置、面発光レーザの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、垂直共振型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が開示されている。VCSELが形成されたチップを例えばプリント基板などに実装するチップオンボード方式を用いることがある。VCSELのアノード電極およびカソード電極はプリント基板の電極に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VCSELのアノード電極およびカソード電極の位置を、プリント基板上の電極の位置に対応させることが好ましい。すなわち、VCSELのアノード電極をプリント基板のアノード電極の近傍に配置し、VCSELのカソード電極をプリント基板のカソード電極の近傍に配置する。しかし、プリント基板の電極配置は様々である。したがって、プリント基板の設計に合わせて、電極の配置が異なる複数種類のVCSELを製造することがある。この結果、コストが上昇してしまう。そこで、コストを低減することが可能な面発光レーザ、電子装置、面発光レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る面発光レーザは、基板の上に設けられた光出射部と、前記基板の上に設けられ、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極と第2電極と、を具備し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並ぶものである。
【0006】
本発明に係る電子装置は、実装基板と、前記実装基板に実装される面発光レーザと、を具備し、前記面発光レーザは、基板の上に設けられた光出射部と、前記基板の上に設けられ、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極と第2電極と、を有し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並び、前記実装基板は第1パッドおよび第2パッドを有し、前記第1パッドは、前記2つの第1電極のうち一方と対向し、かつ第1ボンディングワイヤを用いて電気的に接続され、前記2つの第1電極のうち他方とは電気的に接続されず、前記第2パッドは前記第2パッドと対向し、かつ第2ボンディングワイヤを用いて電気的に接続されるものである。
【0007】
本発明に係る面発光レーザの製造方法は、基板の上に光出射部を形成する工程と、前記基板の上に、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極および第2電極を形成する工程と、を有し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並ぶものである。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は実施例1に係る面発光レーザを例示する平面図であり、
図1(b)は面発光レーザを例示する断面図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は電子装置を例示する平面図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は面発光レーザの製造方法を例示する平面図である。
【
図11】
図11は実施例1の変形例に係る面発光レーザを例示する平面図である。
【
図12】
図12(a)は比較例1に係る面発光レーザを例示する平面図であり、
図12(b)は比較例2に係る面発光レーザを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本願発明の一形態は、(1)基板の上に設けられた光出射部と、前記基板の上に設けられ、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極と第2電極と、を具備し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並ぶ面発光レーザである。2つの第1電極が設けられているため、面発光レーザの向きを変えることで、第1電極と第2電極との配置を変更することができる。電極の配置が異なる複数種類の面発光レーザを製造しなくてよいため、コストの低減が可能である。
(2)前記基板は矩形の形状を有し、前記2つの第1電極は前記基板の四隅のうち2つに配置され、前記第2電極は前記四隅のうち1つに配置され、前記基板の第1の辺に沿って、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とが並び、前記第1の辺に交差する前記基板の第2の辺に沿って、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とが並んでもよい。矩形の面発光レーザを回転させることで、第1電極と第2電極との並びを変更することができる。したがって面発光レーザのコストを低減することができる。
(3)前記2つの第1電極のうち一方は前記光出射部と電気的に接続され、他方は前記光出射部に接続されないとしてもよい。2つの第1電極のうち1つが接続されないことで、寄生容量の増加を抑制することができる。
(4)前記光出射部は、前記基板の上に設けられた下部反射鏡層と、前記下部反射鏡層の上に設けられた活性層と、前記活性層の上に設けられた上部反射鏡層と、を含み、前記第1電極および前記第2電極は前記上部反射鏡層よりも上側に位置し、前記第1電極は前記下部反射鏡層に電気的に接続され、前記第2電極は前記上部反射鏡層に電気的に接続されてもよい。第1電極と下部反射鏡層との間で発生する寄生容量の増加を抑制することができる。
(5)実装基板と、前記実装基板に実装される面発光レーザと、を具備し、前記面発光レーザは、基板の上に設けられた光出射部と、前記基板の上に設けられ、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極と第2電極と、を有し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並び、前記実装基板は第1パッドおよび第2パッドを有し、前記第1パッドは、前記2つの第1電極のうち一方と対向し、かつ第1ボンディングワイヤを用いて電気的に接続され、前記2つの第1電極のうち他方とは電気的に接続されず、前記第2パッドは前記第2電極と対向し、かつ第2ボンディングワイヤを用いて電気的に接続される電子装置である。第1ボンディングワイヤと第2ボンディングワイヤとを交差させずに、ワイヤボンディングが可能である。また、電子装置のコストの低減が可能である。
(6)基板の上に光出射部を形成する工程と、前記基板の上に、前記光出射部と電気的に接続される2つの第1電極および第2電極を形成する工程と、を有し、前記第1電極はカソード電極およびアノード電極の一方であり、前記第2電極はカソード電極およびアノード電極の他方であり、前記2つの第1電極の一方と前記第2電極とは第1の方向において並び、前記2つの第1電極の他方と前記第2電極とは、前記第1の方向に交差する第2の方向において並ぶ面発光レーザの製造方法である。電極の配置が異なる複数種類の面発光レーザを製造しなくてよいため、コストを低減することができる。
(7)前記第1電極および前記第2電極は第1金属層および第2金属層を含み、前記第1電極および前記第2電極を形成する工程は、前記基板の上に第1レジストおよび第1マスクを順に形成し、前記第1マスクを用いて前記第1レジストをパターニングする工程と、前記第1レジストの上に前記第1金属層を形成する工程と、前記第1金属層の上に第2レジストおよび第2マスクを順に形成し、前記第2マスクを用いて前記第2レジストをパターニングする工程と、前記第2レジストおよび前記第1金属層の上に前記第2金属層を形成する工程と、を含んでもよい。複数種類の面発光レーザを製造する場合に比べて、マスクの種類を少なくすることができるため、コストを低減することができる。
(8)前記光出射部に電気的に接続される第3電極および第4電極を形成する工程と、前記基板、前記第1電極および前記第2電極の上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜の上に第3レジストおよび第3マスクを順に形成し、前記第3マスクを用いて前記第3レジストをパターニングする工程と、前記第3レジストを用いて前記第1絶縁膜をエッチングすることで、前記第1絶縁膜に、前記第3電極が露出する第1開口部、および前記第4電極が露出する第2開口部を形成する工程と、を有し、前記第1絶縁膜に第1開口部および第2開口部を形成する工程の後に、前記第1電極および前記第2電極を形成する工程を行い、前記2つの第1電極のうち一方は前記第1開口部を介して前記第3電極と電気的に接続され、前記2つの第1電極のうち他方は前記第3電極と電気的に接続されず、前記第2電極は前記第2開口部を介して前記第4電極と電気的に接続されてもよい。複数種類の面発光レーザを製造する場合に比べて、マスクの種類を少なくすることができるため、コストを低減することができる。
(9)前記基板、前記第1電極および前記第2電極の上に第2絶縁膜を形成する工程と、前記第2絶縁膜の上に第4レジストおよび第4マスクを順に形成し、前記第4マスクを用いて、前記第4レジストをパターニングする工程と、前記第4レジストを用いて前記第2絶縁膜をエッチングすることで、前記第2絶縁膜に、前記第1電極が露出する第3開口部、および前記第2電極が露出する第4開口部を形成する工程と、を有してもよい。複数種類の面発光レーザを製造する場合に比べて、マスクの種類を少なくすることができるため、コストを低減することができる。
【0012】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る面発光レーザ、電子装置および面発光レーザの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例1】
【0013】
(面発光レーザ)
図1(a)は実施例1に係る面発光レーザ100を例示する平面図であり、
図1(b)は面発光レーザ100を例示する断面図である。
【0014】
図1(a)および
図1(b)に示すように、面発光レーザ100は矩形の平面形状を有し、メサ19、パッド28および32を備える。
図1(a)のX軸およびY軸は互いに直交し、面発光レーザ100の辺はX軸方向またはY軸方向に延伸する。Y軸方向に延伸する辺の1つを辺10a、X軸方向に延伸する辺の1つを辺10bとする。D1軸はXY平面内であってX軸方向とY軸方向との間に位置し、D2軸はD1軸に直交する。D1軸方向およびD2軸方向は、面発光レーザ100の対角線方向である。
【0015】
メサ19、2つのパッド28(第1電極)、およびパッド32(第2電極)は、それぞれ面発光レーザ100の四隅に配置されている。メサ19からX軸方向に2つのパッド28のうち一方(パッド28a)が位置し、Y軸方向に他方(パッド28b)が位置し、対角線方向(D1軸方向)にパッド32が位置する。パッド28aとパッド32とは基板10の辺10a(第1の辺)に沿って並ぶ。パッド28bとパッド32とは辺10b(第2の辺)に沿って並ぶ。パッド28aとパッド28bとは対角線方向(D2軸方向)において対向する。パッド28aおよび28bは、パッド32をX側およびY側から挟む。
【0016】
メサ19は光出射部として機能する。メサ19の上に電極30が設けられ、メサ19の周囲に溝13が設けられ、溝13に2つの電極26が設けられている。パッド28aおよび28bはそれぞれ、配線27により電極26に電気的に接続される。パッド32は配線31により電極30に電気的に接続される。パッド28はカソード電極として機能し、パッド32はアノード電極として機能する。パッド32はメサ19の化合物半導体と電気的に接続される。2つの電極26は離間し、電気的に接続されない。2つのパッド28および電極26のうち、一方はメサ19の化合物半導体と電気的に接続され、他方は接続されない。
【0017】
面発光レーザ100の一辺の長さは例えば200μm、パッド28a、28bおよび32の直径は例えば60μmであり、2つの電極26の外縁部(外周面)間の距離は例えば70μmである。
【0018】
図1(b)に示すように、面発光レーザ100は基板10、下部反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)層12、活性層14、上部反射鏡層16、電極26および28を備えるVCSELである。
【0019】
基板10は例えば半絶縁性のガリウム砒素(GaAs)で形成された半導体基板である。基板10の上に下部反射鏡層12、活性層14、上部反射鏡層16が順に積層され、これらの半導体層はメサ19を形成する。
【0020】
下部反射鏡層12は例えばn型のAl0.16Ga0.84AsとAl0.9Ga0.1Asとを光学膜厚λ/4ずつ交互に積層した半導体多層膜である。なおλは光の波長である。下部反射鏡層12には例えばシリコン(Si)がドーピングされている。また下部反射鏡層12は電極50に接触する導電性のコンタクト層を含み、コンタクト層は例えばAlGaAsで形成される。
【0021】
活性層14は例えばAlGaAsおよびAlInGaAsで形成され、量子井戸層とバリア層とが交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有し、光学利得を有する。活性層14と下部反射鏡層12との間、および活性層と上部反射鏡層16との間には不図示のクラッド層が介在する。
【0022】
上部反射鏡層16は例えばp型のAl0.16Ga0.84AsとAl0.9Ga0.1Asとを光学膜厚λ/4ずつ交互に積層した半導体多層膜である。上部反射鏡層16には例えば炭素(C)がドーピングされている。上部反射鏡層16は電極52に接触する導電性のコンタクト層を含み、コンタクト層は例えばAlGaAsで形成される。
【0023】
基板10、下部反射鏡層12、活性層14、上部反射鏡層16は上記以外の化合物半導体で形成されてもよい。例えば基板10はGaAs以外に、AlxGa1-xAs(0≦x≦0.2)などでもよく、GaとAsを含むものである。
【0024】
上部反射鏡層16の一部を選択的に酸化させることで電流狭窄層22が形成される。電流狭窄層22は上部反射鏡層16の周縁部に形成され、上部反射鏡層16の中央部には形成されない。電流狭窄層22は例えば酸化アルミニウム(Al2O3)を含み、絶縁性であり、酸化されない部分よりも電流が流れにくい。したがって上部反射鏡層16の中央側である未酸化部分が電流経路となり、効率的な電流注入が可能となる。
【0025】
電流狭窄層22よりも外側であって、メサ19の周縁部には高抵抗領域20が形成されている。高抵抗領域20は上部反射鏡層16、活性層14および下部反射鏡層12の上側の一部にわたっており、例えばプロトンなどのイオンを注入することで形成される。溝13は高抵抗領域20を厚さ方向に貫通し、下部反射鏡層12に達し、メサ19を囲む。溝11は溝13および高抵抗領域20よりも外側に位置し、これらを囲み、厚さ方向において基板10に達する。
【0026】
絶縁膜15は例えば厚さ40nmの窒化シリコン(SiN)膜であり、溝11の底面、高抵抗領域20の表面およびメサ19の表面を覆う。絶縁膜17は例えばSiN膜であり、絶縁膜15を覆う。絶縁膜80は例えばSiN膜であり、絶縁膜17を覆う。絶縁膜15および17は活性層14が出射する光を反射する反射膜として機能し、厚さおよび屈折率は反射率が高まるように定める。
【0027】
電極50は、例えば金ゲルマニウム(AuGe)とニッケル(Ni)との積層構造を有するn型電極であり、溝13の内側であって下部反射鏡層12の表面に設けられている。電極52は、例えばチタン(Ti)、白金(Pt)およびAuの積層構造を有するp型電極であり、メサ19の上であって上部反射鏡層16の表面に設けられている。電極50および52はオーミック電極である。パッド28および32は、上部反射鏡層16よりも上側に位置する。電極26、配線27、およびパッド28は絶縁膜17の開口部を通じて、電極50および下部反射鏡層12と電気的に接続される。電極30、配線31、およびパッド32は電極52および上部反射鏡層16と電気的に接続される。電極26および30、配線27および31、パッド28および32は、後述のようにシードメタルおよびメッキ層を含む。
【0028】
(電子装置)
図2(a)および
図2(b)は電子装置を例示する平面図である。
図2(a)に示す電子装置110および
図2(b)に示す電子装置112は、プリント基板40と、プリント基板40上に実装される面発光レーザ100とを有する。プリント基板40の表面にはパッド42aおよび42b(第1パッドおよび第2パッド)が設けられている。
図2(a)の電子装置110における面発光レーザ100の向き、パッド42aおよび42bの位置は、
図2(b)の電子装置112における面発光レーザ100の向きおよびパッドの位置とは異なる。
【0029】
図2(a)に示すように、電子装置110のプリント基板40では、図の右から左(-X側から+X側)にかけて、カソード電極であるパッド42bとアノード電極であるパッド42aとが順に並ぶ。面発光レーザ100の辺10bがパッド42aおよび42bに対向するように、面発光レーザ100をプリント基板40上に搭載する。プリント基板40のパッド42bと、面発光レーザ100のカソード電極であるパッド28bとはY軸方向に対向し、ボンディングワイヤ43b(第1ボンディングワイヤ)により電気的に接続される。パッド42aと、面発光レーザ100のアノード電極であるパッド32とはY軸方向に対向し、ボンディングワイヤ43a(第2ボンディングワイヤ)により電気的に接続される。
【0030】
図2(b)に示すように、電子装置112のプリント基板40では、図の右から左(+Y側から-Y側)にかけて、パッド42aとパッド42bとが順に並ぶ。また、電子装置110に比べて面発光レーザ100をXY平面内において左に90°回転させている。つまり、面発光レーザ100の辺10aがパッド42aおよび42bに対向するように、面発光レーザ100をプリント基板40上に搭載する。パッド42bとパッド28aとはY軸方向に対向し、ボンディングワイヤ43bにより電気的に接続される。パッド42aとパッド32とはY軸方向に対向し、ボンディングワイヤ43aにより電気的に接続される。
【0031】
以上のように、プリント基板40上のパッドの配置に合わせて、面発光レーザ100の向きを変える。これにより、アノード電極であるパッド32とパッド42aとを対向させ、カソード電極であるパッド28aまたは28bとパッド42bとを対向させることができる。この結果、ボンディングワイヤ43aおよび43bを交差させず、パッド間の接続が可能である。
【0032】
(製造方法)
図3(a)から
図9(b)は面発光レーザ100の製造方法を例示する平面図である。
図3(a)に示すように、例えば有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法または分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法などにより基板10上に下部反射鏡層12、活性層14および上部反射鏡層16を順にエピタキシャル成長する。下部反射鏡層12は電流狭窄層22形成のためのAl
xGa
1-xAs層(0.9≦x≦1.0)を含む。
【0033】
イオン注入を行うことで高抵抗領域20を形成する。例えば厚さ10μm以上、15μm以下のフォトレジストをスピン塗布し、フォトリソグラフィによりレジストパターニングを行い、メサ19となる部分をフォトレジストで保護する。例えばプロトン(H
+)などのイオンを注入することで、
図1(b)に示した高抵抗領域20を形成する。イオン注入後、有機溶媒および酸素プラズマなどによるアッシングを行い、フォトレジストを除去する。
【0034】
図3(b)に示すように、例えば誘電結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)装置を用いて高抵抗領域20のドライエッチングを行い、メサ19を形成する。このとき高抵抗領域20には下部反射鏡層12まで達する溝13が形成され、エッチングしない部分は不図示のフォトレジストで保護する。エッチングガスとして例えばBCl
3ガス、またはBCl
3とCl
2との混合ガスを用いる。エッチング条件の例を以下に示す。
BCl
3/Ar=30sccm/70sccm
(またはBCl
3/Cl
2/Ar=20sccm/10sccm/70sccm)
ICPパワー:50W~1000W
バイアスパワー:50W~500W
ウェハの温度:25℃以下
【0035】
メサ19の形成後、例えば水蒸気雰囲気中で400℃程度に加熱することで、上部反射鏡層16の一部を端部側から酸化し、電流狭窄層22を形成する。電流狭窄層22が所定の幅に達し、電流狭窄層22の間に所定の幅の未酸化部分が残るように加熱時間を定める。
【0036】
さらに、高抵抗領域20、下部反射鏡層12および基板10の一部をドライエッチングすることで溝11を形成する。溝11は、ウェハ内の複数の基板10の間に位置し、スクライブラインに重なる。溝11は例えば7μmの深さを有し、高抵抗領域20および下部反射鏡層12を貫通する。溝11により、複数の面発光レーザ100間が電気的に分離される。エッチングにより露出する基板10の面が溝11の底面となる。このときメサ19および溝13などエッチングしない部分は不図示のフォトレジストで覆う。エッチングの条件を以下に示す。
BCl3/Ar=30sccm/70sccm
(またはBCl3/Cl2/Ar=20sccm/10sccm/70sccm)
ICPパワー:50W~1000W
バイアスパワー:50W~500W
ウェハの温度:25℃以下
【0037】
図4(a)に示すように、例えばプラズマ化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)により、ウェハを覆う絶縁膜15を形成する。絶縁膜15は例えばSiN膜であり、さらにSiON膜またはSiO
2膜を含んでもよい。絶縁膜15が面発光レーザ100の出射光に対して反射膜として機能するように、材料および厚さを調節する。絶縁膜15上にレジストパターンを形成し、真空蒸着法により、溝13の内側に電極50(第3電極)を形成し、メサ19の上に電極52(第4電極)を形成する。電極50は、例えばメサ19を囲むリング状の電極である。電極の形成後に例えば400℃程度の温度で1分間の熱処理を行うことで、電極と半導体との間でオーミック接触をとる。電極50は下部反射鏡層12と電気的に接続され、電極52は上部反射鏡層16と電気的に接続される。
【0038】
図4(b)に示すように、例えばプラズマCVD法などにより、絶縁膜15、電極50および52の上に絶縁膜17(第1絶縁膜)を形成する。絶縁膜17は例えばSiON膜またはSiO
2膜などである。
【0039】
図5(a)に示すように、絶縁膜17の上にレジスト60(第3レジスト)を塗布し、レジスト60の上にフォトマスク62a(第3マスク)を設ける。フォトマスク62aは溝13およびメサ19に重なる開口部を有する。フォトマスク62aを用いたフォトリソグラフィにより、レジスト60のパターニングを行い、開口部61aおよび63を形成する。開口部63はメサ19に重なる。開口部61aは溝13に重なり、開口部63を基準として+X側に位置する。
【0040】
図5(b)に示すように、レジスト60のパターンを用いて絶縁膜17をエッチングすることで、絶縁膜17に、開口部61aに重なる位置に開口部17a(第1開口部)を形成し、開口部63と重なる位置に開口部17c(第2開口部)を形成する。開口部17cはメサ19上に位置し、電極52が開口部17cから露出する。開口部17aは開口部17cから+X側であって溝13内に位置し、電極50が開口部17aから露出する。レジスト60は除去する。
【0041】
図6(a)に示すように、絶縁膜17の上にレジスト70(第1レジスト)を塗布し、レジスト70の上にフォトマスク72(第1マスク)を設ける。フォトマスク72を用いたフォトリソグラフィにより、レジスト70のパターニングを行い、開口部71a、71bおよび73を形成する。開口部71aは、
図1(a)に示したパッド28a、配線27、および電極26に対応する位置に設けられ、絶縁膜17の開口部17aに重なる。開口部71bはパッド28b、配線27、および電極26に対応する位置に設けられ、開口部17aに重ならない。開口部73はパッド32、配線31、および電極30に対応する位置に設けられる。
図6(b)に示すように、例えばスパッタリングなどにより、例えばTiWのシードメタル74(第1金属層)をウェハの表面全体に形成する。
【0042】
図7(a)に示すように、シードメタル74の上にレジスト75(第2レジスト)を塗布し、レジスト75の上にフォトマスク76(第2マスク)を設ける。フォトマスク76はパッド28aおよび28b、パッド32、配線27および31、電極26および30が形成される位置に開口部を有する。フォトマスク76を用いたフォトリソグラフィにより、レジスト75のパターニングを行い、開口部77a、77bおよび78を形成する。開口部77aは
図6(a)に示した開口部71aに重なり、開口部77bは開口部71bに重なり、開口部78は開口部73に重なる。各開口部からはシードメタル74が露出する。
【0043】
図7(b)に示すように、メッキ処理を行い、例えば金(Au)のメッキ層79(第2金属層)を形成する。メッキ層79は、レジスト75の開口部77a、77bおよび78から露出するシードメタル74の上に形成される。メッキの後、現像液によりレジスト75を除去する。ミリングによりシードメタル74のうちメッキ層79から露出する部分、およびレジスト70を除去する。残存するシードメタル74およびメッキ層79の積層体が、
図1(a)に示した電極26および30、配線27および31、パッド28a、28bおよび32として機能する。
【0044】
図8(a)に示すように、例えばプラズマCVD法により絶縁膜80(第2絶縁膜)を設ける。絶縁膜80は例えばSiNまたはSiO
2などの絶縁体で形成されたパッシベーション膜であり、絶縁膜17およびメッキ層79を覆う。
【0045】
図8(b)に示すように、絶縁膜80の上にレジスト82(第4レジスト)を塗布し、レジスト82の上にフォトマスク84(第4マスク)を設ける。フォトマスク84はパッド28aおよびパッド32の上に開口部を有する。また、フォトマスク84は基板10の溝11には重ならない。フォトマスク84を用いたフォトリソグラフィにより、レジスト82に開口部81および83を形成する。絶縁膜80のうち、パッド28aに重なる部分は開口部81から露出し、パッド32に重なる部分は開口部83から露出する。また、絶縁膜80のうち溝11に重なる部分はレジスト82から露出する。
【0046】
図9(a)に示すように、レジスト82を用いて絶縁膜80のエッチングを行う。エッチングにより絶縁膜80に開口部85(第3開口部)および開口部86(第4開口部)を形成し、かつ溝11上の部分を除去する。パッド28aは開口部85から露出し、パッド32は開口部86から露出し、溝11も絶縁膜80から露出する。パッド28b、メサ19、配線27および31は絶縁膜80に覆われる。レジスト82を除去する。バックグラインダーまたはラッピング装置などを用いて基板10の裏面を研磨し、ダイサーでスクライブラインに沿ってウェハを切断することで、ウェハから複数の面発光レーザ100を形成する。
【0047】
上記の工程で製造された面発光レーザ100においては、パッド28aは
図5(b)に示した開口部17aを通じて電極50およびメサ19に電気的に接続される。したがって、面発光レーザ100を
図2(b)に示す電子装置112に使用し、パッド28aとパッド42bとを電気的に接続することができる。一方、パッド28bは電極50およびメサ19に電気的に接続されないため、
図2(a)に示す電子装置110に使用することは困難である。
【0048】
図2(b)に示す電子装置110に使用可能な面発光レーザ100を製造することもできる。
図10(a)および
図10(b)は面発光レーザ100の製造方法を例示する平面図である。
図2(a)から
図4(b)、
図6(a)から
図9(b)の工程は共通であり、
図5(a)および
図5(b)に代えて
図10(a)および
図10(b)に示す工程を行う。
【0049】
図10(a)に示すフォトマスク62bは、
図5(a)に示したフォトマスク62aとは異なる位置に開口部を有する。フォトマスク62bを用いたフォトリソグラフィにより、レジスト60に開口部61bおよび63を形成する。開口部61bは開口部63を基準として+Y側に位置する。
図10(b)に示すように、レジスト60のパターンを用いて絶縁膜17をエッチングすることで、絶縁膜17に、開口部63に重なる開口部17cおよび開口部61bに重なる開口部17bを形成する。開口部17bは開口部17cから+Y側であって溝13内に位置し、電極50が開口部17bから露出する。
【0050】
上記の工程で製造された面発光レーザ100においては、パッド28bは開口部17bを通じて電極50およびメサ19に電気的に接続される。したがって、面発光レーザ100を
図2(a)に示す電子装置110に使用し、パッド28bとパッド42bとを電気的に接続することができる。
【0051】
図11は実施例1の変形例に係る面発光レーザ101を例示する平面図である。電極26は1つのリングを形成し、パッド28aおよび28bは電極26を通じて電極50およびメサ19と電気的に接続される。しかし、パッド28aおよび28bと、導電性の半導体層(下部反射鏡層12など)との間に寄生容量が発生する。2つのパッドが電気的に接続されることで寄生容量が増大し、高速での変調が困難となる。したがって、実装するプリント基板40におけるパッドの配置に応じて、パッド28aおよび28bの一方をメサ19に接続し、他方を浮き電極とすることが好ましい。
【0052】
(比較例)
次に比較例を説明する。
図12(a)は比較例1に係る面発光レーザ100Rを例示する平面図であり、
図12(b)は比較例2に係る面発光レーザ200Rを例示する平面図である。
図12(a)に示すように面発光レーザ100Rはパッド28aおよびパッド32を有し、パッド28bを有さない。
図12(b)に示すように面発光レーザ200Rはパッド28bおよびパッド32を有し、パッド28aを有さない。
【0053】
面発光レーザ100Rを、
図2(b)に示したプリント基板40に実装することができる。しかし
図2(a)のプリント基板40に対しては、面発光レーザ100Rを、パッド28aがパッド42bに対向し、パッド32がパッド42aに対向するようにプリント基板40に実装することは困難である。また、面発光レーザ200Rを、
図2(a)に示したプリント基板40に実装することができる。しかし
図2(b)のプリント基板40に対しては、面発光レーザ200Rを、パッド28bがパッド42bに対向し、パッド32がパッド42aに対向するようにプリント基板40に実装することは困難である。
【0054】
したがって、プリント基板40の配置に合わせて面発光レーザ100Rおよび200Rの両方を製造する。しかし、
図5(a)、
図6(a)、
図7(a)および
図8(b)に対応する工程ごとに、面発光レーザ100Rおよび200Rに対して異なるフォトマスクを使い分ける。したがって、例えば8種類のフォトマスクを用いることになる。したがって製造のコストが上昇してしまう。
【0055】
これに対し、第1実施形態によれば、パッド28aとパッド32とがY軸方向において並び、パッド28bとパッド32とがX軸方向において並ぶ。このため、面発光レーザ100の向きを変えることで、パッドの配置を変更することができる。パッドの配置が異なる複数種類の面発光レーザを製造しなくてよいため、コストの低減が可能である。
【0056】
より具体的には、
図6(a)、
図7(a)および
図8(b)それぞれにおいてフォトマスクは1種類でよい。
図8(b)では2つのパッドに対応する開口部を有するフォトマスク84を用いる。フォトマスク84を回転させることで、レジスト82のうちパッド28aおよび28bのいずれかに対応した部分を開口することができる。
図5(a)および
図10(a)の例を作り分けるために2種類のフォトマスクを用いる。したがって例えば5種類のフォトマスクを用いればよく、比較例に比べてフォトマスクの種類を少なくすることができる。したがって製造のコストを低減することができる。
【0057】
図1(a)に示すように、基板10が矩形であり、基板10の四隅にメサ19、パッド28a、28bおよび32が配置される。基板10の辺10aに沿ってパッド28aとパッド32とが並び、辺10bに沿ってパッド28bとパッド32とが並ぶ。面発光レーザ100を90°回転させ、辺10aおよび10bのいずれかをプリント基板40のパッドに対向させることで、面発光レーザ100の実装が可能である。
【0058】
例えば
図2(a)の例では、面発光レーザ100の辺10bをパッド42aおよび42bに対向させる。これによりパッド42bとパッド28bとが対向し、パッド42aとパッド32とが対向する。
図2(b)の例では、面発光レーザ100の辺10aをパッド42aおよび42bに対向させる。これによりパッド42bとパッド28aとが対向し、パッド42aとパッド32とが対向する。したがって、ボンディングワイヤ43aおよび43bを交差させずに、パッド間をワイヤボンディングすることができる。また、プリント基板40のパッドの配置に応じた複数種類の面発光レーザ100を低コストで製造することができる。したがって電子装置のコストを低減することができる。
【0059】
図10の例のように、2つのパッド28aおよび28bの両方がメサ19に接続されてもよい。ただし、2つのパッド28aおよび28bの一方はメサ19と電気的に接続され、他方は電気的に接続されないことが好ましい。これにより、寄生容量の増加を抑制することができ、高速での変調が可能となる。
【0060】
メサ19は、下部反射鏡層12、活性層14、上部反射鏡層16を含む。パッド28aおよび28bのいずれか一方が、
図1(a)に示す配線27、電極26、
図4(a)に示す電極50を通じて下部反射鏡層12に接続される。パッド32は、
図1(a)に示す配線31、電極30、
図4(a)に示す電極52を通じて上部反射鏡層16に接続される。パッドから電気信号を入力することで、メサ19から光を出射することができる。またパッド28aおよび28bの他方は下部反射鏡層12に接続されないため、寄生容量の増加を抑制することができる。
【0061】
図5(a)に示すようにフォトマスク62aを用いてレジスト60に開口部61aおよび63を形成し、
図5(b)に示すように絶縁膜17に開口部17aおよび17cを形成する。パッド28aは開口部17aを通じて電極50および下部反射鏡層12と電気的に接続され、パッド28bは接続されない。したがって寄生容量の増加を抑制することができる。また、
図10(a)および
図10(b)に示すように、開口部の位置が異なるフォトマスク62bを用いることで、パッド28bが下部反射鏡層12に接続され、パッド28aが接続されない。これらの例を含めてもフォトマスクは5種類でよく、比較例1および2の8種類に比べて少ない。したがってコストを低減することができる。
【0062】
パッド28aおよび28bのうち電極50に接続される側は特性検査などに使用され、プローブが接触する。パッド28aおよび28bのうち他方にはプローブが接触しないため、プローブの痕が付きにくい。例えば画像認識などによる外観検査では、プローブ痕のない側のパッドを基準とすることで、簡潔かつ精度の高い検査が可能である。また、画像認識による位置合わせにおいてもプローブ痕のない側のパッドを用いることが好ましい。
【0063】
なお、基板10は矩形以外の形状を有してもよい。パッド28a、28bおよび32、メサ19は四隅以外の場所に位置してもよい。
図1(a)の例ではパッド28aとパッド32とが並ぶ方向と、パッド28bとパッド32とが並ぶ方向は直交しているが、これらの方向は交差していればよい。また、発光素子以外に受光素子に実施例1を適用してもよい。
【実施例2】
【0064】
実施例2では、複数の面発光レーザ100を含むアレイチップを用いる。
図13(a)および
図13(b)は実施例2に係る電子装置を例示する平面図である。
図13(a)に示す電子装置200はプリント基板90、パッド92aおよび92b、制御IC(集積回路、Integrated Circuit)94、およびアレイチップ120を有する。複数のパッド92aおよび92bはプリント基板90の表面に設けられ、制御IC94およびアレイチップ120はプリント基板90の表面に実装される。なお、プリント基板90には、アレイチップ120の出射光が入射するレンズアレイおよびミラー、および制御IC94およびアレイチップ120を覆う筐体を設けてもよい。
【0065】
パッド92aはアノード電極であり、パッド92bはカソード電極である。パッド92bとパッド92aとは順に、-X側から+X側にかけてX軸方向に沿って交互に配置されている。制御IC94は複数のパッド92aおよび92bと電気的に接続されている。
【0066】
アレイチップ120は複数の面発光レーザ100を含む。複数の面発光レーザ100は、X軸方向に沿って一列に連結されている。アレイチップ120内において、面発光レーザ100のメサ19およびパッド28bは、隣の面発光レーザ100のパッド28aおよび32に隣接する。パッド28bおよび32は順に、-X側から+X側にかけてX軸方向に沿って交互に並び、Y軸方向において制御IC94、パッド92aおよび92bに対向する。
【0067】
アレイチップ120のパッド32と、プリント基板90のパッド92aとはボンディングワイヤ91aにより電気的に接続されている。アレイチップ120のパッド28bと、プリント基板90のパッド92bとはボンディングワイヤ91bにより電気的に接続されている。電子装置200においては、アノード電極であるパッド32とパッド92aとを対向させ、カソード電極であるパッド28bとパッド92bとを対向させる。この結果、ボンディングワイヤ91aおよび91bを交差させず、パッド間の接続が可能である。
【0068】
図13(b)に示す電子装置210はプリント基板90、パッド92aおよび92b、制御IC94、およびアレイチップ122を有する。プリント基板90におけるパッドの配列の順番は電子装置200とは反対である。パッド92aとパッド92bとは順に、+Y側から-Y側にかけてY軸方向に沿って交互に配置されている。
【0069】
アレイチップ122は複数の面発光レーザ100を含む。アレイチップ122における面発光レーザ100は、アレイチップ120の面発光レーザ100に比べて90°左に回転している。つまり、面発光レーザ100のメサ19およびパッド28aは、隣の面発光レーザ100のパッド28bおよび32に隣接する。パッド32および28aは順に、+Y側から-Y側にかけてY軸方向に沿って交互に並び、X軸方向において制御IC94、パッド92aおよび92bに対向する。アレイチップ122のパッド32と、プリント基板90のパッド92aとはボンディングワイヤ91aにより電気的に接続されている。アレイチップ122のパッド28aと、プリント基板90のパッド92bとはボンディングワイヤ91bにより電気的に接続されている。ボンディングワイヤ91aおよび91bを交差させず、パッド間の接続が可能である。
【0070】
実施例2によれば、プリント基板90のパッドの配置に応じた複数種類のアレイチップを低コストで製造することができる。したがって電子装置のコストを低減することができる。また、ボンディングワイヤ同士の干渉が抑制されるため、ワイヤボンディングが容易であり、コストを低減することができる。
【0071】
アレイチップ120および122は、
図9(a)に示した工程の後、複数の面発光レーザ100が連結するようにウェハを切断することで取得することができる。アレイチップ120および122に含まれる面発光レーザ100の数は複数であり、4つ未満でもよいし、4つ以上でもよい。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 基板
10a、10b 辺
11、13 溝
12 下部反射鏡層
14 活性層
15、17、80 絶縁膜
16 上部反射鏡層
19 メサ
20 高抵抗領域
28、28a、28b、32、42a、42b、82a、82b パッド
26、28、50、52 電極
27、31 配線
40、90 プリント基板
43a、43b、91a、91b ボンディングワイヤ
60、70、75、82 レジスト
62a、62b、72、76、84 フォトマスク
17a、17b、61a、61b、63、71a、71b、73、77a,77b,78、81、83、85、86 開口部
74 シードメタル
79 メッキ層
94 制御IC
100、101 面発光レーザ
110、112、200、210 電子装置
120、122 アレイチップ