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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電線付温度管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20230411BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20230411BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20230411BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
F16L3/08 D
F16L3/12 A
B60K1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019105154
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020196395
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三谷 健一
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003401(WO,A1)
【文献】特開2008-199850(JP,A)
【文献】特開2007-211851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
F16L 3/08
F16L 3/12
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される熱交換対象機器において熱交換を行う冷媒が通過する冷媒用管と、
少なくとも一部が前記冷媒用管の少なくとも一部に沿う複数の電線と、
を備え
前記電線は、ラジエータからモータに向かう冷媒が通過する前記冷媒用管に沿っており、
前記冷媒用管は、内部に前記冷媒を通す管本体部と、複数の電線保持部とが一体形成される構成であり、
複数の前記電線保持部は、それぞれ前記電線を保持し、
複数の前記電線保持部は、前記管本体部の外周側に隣合って設けられ、
それぞれの前記電線保持部は、前記管本体部の外周囲の一部から外方に向けて突出し、外周の一部にスリットが形成された管状であり、弾性的に変形可能である、
電線付温度管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電線付温度管理システムであって、
前記電線が前記熱交換対象機器に接続される、電線付温度管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電線付温度管理システムであって、
前記電線は高電圧用電線を含む、電線付温度管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電線付温度管理システムであって、
ヒータと高電圧電気機器とバッテリとのうちの複数を経由する冷媒回路を備え、
前記冷媒回路は、前記冷媒用管を含む、電線付温度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線付温度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワイヤーハーネスの外周に、ホースを螺旋状に巻付けて配索する技術を開示している。ホースとしては、ウオッシャ液用のホースが想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、BEV(Battery Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等において、高圧回路が増加しつつある。また、高電圧機器等を温度管理するため、冷却用ホースが車両に搭載されるに至っている。高電圧機器の周りに配設される電線は、高圧を印加するため、太径であることが多い。また、高電圧機器等を温度管理するため、冷却用ホースも太径であることが多い。このため、高電圧機器の周りに配設される電線及び冷却ホースが、車両スペースを圧迫している。
【0005】
このため、電線と冷媒用管とを、コンパクトな構成で車両に搭載できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、電線と冷媒用管とを、コンパクトな構成で車両に搭載できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電線付温度管理システムは、車両に搭載される熱交換対象機器において熱交換を行う冷媒が通過する冷媒用管と、少なくとも一部が前記冷媒用管の少なくとも一部に沿う電線とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電線と冷媒用管とが、コンパクトな構成で車両に搭載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態に係る電線付温度管理システムを示す説明図である。
図2図2は冷媒用管及び電線を示す概略断面図である。
図3図3は他の例に係る冷媒用管及び電線を示す概略断面図である。
図4図4は他の例に係る冷媒用管及び電線を示す概略断面図である。
図5図5は他の例に係る冷媒用管及び電線を示す概略断面図である。
図6図6は変形例に係る電線付温度管理システムを示す説明図である。
図7】図は他の変形例に係る電線付温度管理システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の電線付温度管理システムは、次の通りである。
【0012】
(1)車両に搭載される熱交換対象機器において熱交換を行う冷媒が通過する冷媒用管と、少なくとも一部が前記冷媒用管の少なくとも一部に沿う電線と、を備える電線付温度管理システムである。この場合、電線の少なくとも一部が前記冷媒用管の少なくとも一部に沿う。このため、電線と冷媒用管とが、コンパクトな構成で車両に搭載される。
【0013】
(2)前記電線が前記熱交換対象機器に接続されてもよい。この場合、電線が、冷媒用管を通過する冷媒によって温度管理される熱交換対象機器に接続される。このため、電線の少なくとも一部が前記冷媒用管の少なくとも一部に沿う形態がよりコンパクト化される。
【0014】
(3)電線付温度管理システムは、前記電線は高電圧用電線を含んでもよい。これにより、高電圧用電線が、冷媒用管によって効果的に冷却される。
【0015】
(4)電線付温度管理システムは、ヒータと高電圧電気機器とバッテリとのうちの複数を経由する冷媒回路を備え、前記冷媒回路は、前記冷媒用管を含んでもよい。これにより、冷媒回路がヒータと高電圧電気機器とバッテリとのうちの複数を経由するため、冷媒回路の構成部品数を削減することが可能となる。かかる冷媒回路を構成する冷媒用管に沿って電線を配設することで、電線と冷媒用管とが、コンパクトな構成で車両に搭載される。
【0016】
(5)前記冷媒用管に、前記電線を保持する電線保持部が一体形成されていてもよい。これにより、冷媒用管に一体形成された電線保持部によって、冷媒用管に沿って電線が保持される。
【0017】
(6)電線付温度管理システムは、前記冷媒用管に取付けられる管取付部と、前記電線に取付けられる電線取付部とを含む取付部材をさらに備えていてもよい。これにより、取付部材を用いて、電線が冷媒用管に容易に取付けられる。
【0018】
(7)前記取付部材は、車両に固定される車両固定部を含んでいてもよい。これにより、取付部材を用いて、電線及び冷媒用管が車両に固定される。
【0019】
(8)電線付温度管理システムは、前記電線及び前記冷媒用管の周りに巻付けられる束ね部材をさらに備えていてもよい。これにより、束ね部材を用いて、前記電線が前記冷媒用管に沿った状態に保たれる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電線付温度管理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る電線付温度管理システムについて説明する。図1は車両10に組込まれた電線付温度管理システム50を示す説明図である。
【0022】
本実施形態では、車両10がBEV(Battery Electric Vehicle)である場合を想定して説明する。ここで、BEVは、外部電源によって充電されるバッテリを備え、当該バッテリに蓄えられたエネルギーによって走行する車両である。ここでは、BEVは、バッテリに蓄えられたエネルギーのみを動力源として走行する車両を意味することとする。
【0023】
本電線付温度管理システム50は、BEVだけでなく、電気モータの駆動によって走行する車両に適用するのに適する。かかる車両に対しては、電気モータを駆動させるため、高電圧電気機器が搭載される。電線付温度管理システム50は、このような高電圧電気機器及び当該高電圧電気機器に給電する高電圧用電線を冷却するために有効である。電気モータの駆動によって走行する車両としては、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)等が想定される。
【0024】
<熱交換対象機器について>
車両10に搭載される熱交換対象機器の一例について説明する。ここでは、車両10には、バッテリ20及び充電ユニット22が搭載される。
【0025】
バッテリ20は、走行用の電力エネルギーを蓄える。バッテリ20としては、ニッケル電池、リチウムイオン電池等が用いられる。バッテリ20は、充放電時に発熱する。バッテリ20の温度が上がり過ぎると、充放電特性が悪化する。バッテリ20の過剰な温度上昇を抑制するため、バッテリ20を冷却することが望まれる。なお、バッテリ20からの供給電圧は、例えば、400~800Vである。
【0026】
充電ユニット22は、バッテリ20に接続されている。充電ユニット22は、外部から電力供給を受けて、バッテリ20を充電制御するユニットである。充電ユニット22は、外部から例えば100V~1000Vの電圧供給を受けて、バッテリ20を充電制御する。充電ユニット22も発熱し易いユニットであり、当該充電ユニット22を冷却することが望まれる。充電ユニット22は、高電圧電気機器の一例であり、熱交換対象機器の一例である。
【0027】
なお、高電圧とは、例えば、60Vより大きいことをいう。このため、高電圧電気機器とは、例えば、60Vより大きい電圧が印加される電気機器である。また、熱交換対象機器は、後述する冷媒用管を通過する冷媒によって熱交換される機器である。
【0028】
車両10には、高圧JB(Junction Box)24、PCU(Power Control Unit)26、モータ28、DC-DCコンバータ30等が搭載されている。
【0029】
高圧JB24は、バッテリ20に接続されている。高圧JB24は、バッテリ20から供給される電力を複数に分配して複数の電気機器に供給する。
【0030】
PCU26及びDC-DCコンバータ30が高圧J/B24に接続されている。
【0031】
PCU26は、バッテリ20とモータ28との間で電力を制御するユニットである。PCU26は、例えば、バッテリ20の電圧を昇圧するDC-DCコンバータ、モータ28を駆動するためのDC-ACインバータ等を含んでいる。バッテリ20からの電力は、DC-DCコンバータにおいて昇圧された後、DC-ACインバータによって3相交流に変換されて、モータ28に供給される。
【0032】
DC-DCコンバータ30は、バッテリ20の電圧を降圧する。DC-DCコンバータ30には、車両における各種電気機器が接続される。電気機器としては、ECU(電子制御ユニット)、アクチュエータ、表示装置、発光ダイオード、ランプ、エンターテイメント機器等が想定される。
【0033】
高圧JB24、PCU26、DC-DCコンバータ30も発熱し易いユニットであり、高圧JB24、PCU26、DC-DCコンバータ30を冷却することが望まれる。上記高圧JB24、PCU26、DC-DCコンバータ30は、バッテリ20の供給電圧が印加される高電圧電気機器の一例である。また、高圧JB24、PCU26、DC-DCコンバータ30は、熱交換対象機器の一例である。
【0034】
モータ28も発熱し易いユニットであり、当該モータ28を冷却することが望まれる。モータ28は、高電圧電気機器の一例である。モータ28は、熱交換対象機器の一例でもある。
【0035】
また、車両10には、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ32が搭載されている。PTCヒータ32は、高圧JB24に接続されており、バッテリ20からの電力供給を受けて発熱できる。ここで、ガソリン自動車、ディーゼル自動車においては、燃料の燃焼に伴う排熱を利用してエアコンディショナーユニットによる暖房が可能となる。これに対して、車両10がBEVであると、燃料の燃焼に伴う排熱を利用できない。そこで、PTCヒータ32を用いることによって、BEVにおいても、エアコンディショナーユニットによる暖房が可能となる。PTCヒータは、寒冷条件等において、バッテリ20を暖めるヒータとして用いられてもよい。
【0036】
PTCヒータ32は、高電圧によって駆動する高電圧電気機器の一例である。また、PTCヒータ32は、後述する冷媒用管を通過する冷媒が加熱される熱交換対象機器の一例でもある。
【0037】
本例では、バッテリ20と充電ユニット22とが電線W1によって接続されている。バッテリ20と高圧JB24とが電線W2によって接続されている。高圧JB24とPCU26とが電線W3によって接続されている。高圧JB24とDC-DCコンバータ30とが電線W4によって接続されている。高圧JB24とPTCヒータ32とが電線W5によって接続されている。電線W1、W2、W3、W4、W5は、熱交換対象機器に接続される電線の一例である。また、電線W1、W2、W3、W4、W5は、高電圧用電線の一例である。ここで、高電圧用電線とは、例えば、60Vより大きい電圧が印加される電線である。
【0038】
<冷媒回路について>
上記車両10に組込まれる冷媒回路60の一例について説明する。
【0039】
冷媒回路60は、冷媒を通すための回路であり、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20とのうちの複数を経由するように構成されている。
【0040】
本実施形態においては、冷媒回路60は、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20の全てを経由する回路として構成されている。
【0041】
より具体的には、冷媒回路60は、タンク62と、ポンプ64と、ラジエータ66と、冷媒用管70とを備える。
【0042】
タンク62は、冷媒を溜めるタンクである。ポンプ64は、冷媒が、冷媒用管70を経て各機器内を通過するように送出すポンプである。ラジエータ66は、冷媒を放熱する装置である。
【0043】
冷媒用管70は、車両に搭載される熱交換対象機器において熱交換を行う冷媒が通過する樹脂製又は金属製の管である。冷媒用管70は、上記各機器間を繋ぐように接続されている。ここでは、冷媒用管70は、一例として、タンク62からポンプ64、ラジエータ66、PCU26、高圧JB24、バッテリ20、充電ユニット22、バッテリ20、高圧JB24、DC-DCコンバータ30、PTCヒータ32、熱交換器33、モータ28を経てタンク62に戻る冷媒回路を構成している。ラジエータ66、PCU26、高圧JB24、バッテリ20、充電ユニット22、バッテリ20、高圧JB24、DC-DCコンバータ30、PTCヒータ32、熱交換器33、モータ28内においては、熱交換専用の管が設けられていてもよい。この場合、冷媒用管70は、それらの機器に設けられた管に接続される。或は、冷媒用管70がそのまま各機器内を通って熱交換を行ってもよい。上記冷媒回路が各機器を通過する順は、上記例に限られない。冷媒回路が各機器を通過する順は、各機器の発熱の程度、使用温度範囲等を考慮して適宜決定されてもよい。
【0044】
そして、タンク62に蓄えられた冷媒は、ポンプ64によってラジエータ66に送られる。冷媒はラジエータ66において冷却される。冷却された冷媒は、冷媒用管70を経由して、PCU26、高圧JB24、バッテリ20、充電ユニット22、バッテリ20、高圧JB24、DC-DCコンバータ30に送られ、それらの各機器を冷却する。その後、冷媒は、PTCヒータ32によって加熱され、その後、熱交換器33に送られる。熱交換器33において、車室内を暖めるための空気が加熱されると共に、冷媒が冷却される。この後、冷媒は、モータ28を通って当該モータ28を冷却する。この後、冷媒は、タンク62に戻る。
【0045】
つまり、本実施形態においては、PTCヒータ32を含むPTCヒータシステムと、高電圧電気機器を冷却する温度制御システムと、バッテリ20の温度制御システムとを構成する冷媒回路が1つの回路として構成されている。冷媒回路が1つの回路として構成されているとは、例えば、冷媒が熱交換対象となる各機器を通過可能となるように構成されていることをいう。この場合において、タンクは1つであってもよいし、複数であってもよい。ポンプも1つであってもよいし、複数であってもよい。また、冷媒回路が途中で分れ、他の部分で合流する構成であってもよい。
【0046】
上記冷媒用管70のうち冷媒用管70a、70b、70c、70dのそれぞれに対して、電線W1、W2、W3、W4が沿っている。ここで、冷媒用管70aは、バッテリ20と充電ユニット22とを接続している。冷媒用管70bは、バッテリ20と高圧JB24とを接続している。冷媒用管70cは高圧JB24とPCU26とを接続している。冷媒用管70dは高圧JB24とDC-DCコンバータ30とを接続している。
【0047】
冷媒用管70a、70b、70c、70dのそれぞれに対して、電線W1、W2、W3、W4を沿わせるための構成については、後で説明する。
【0048】
本実施形態に係る電線付温度管理システム50は、上記冷媒用管70と、電線W1、W2、W3、W4とを備える。
【0049】
ここでは、上記冷媒用管70のうち冷媒用管70a、70b、70c、70dのそれぞれに対して、電線W1、W2、W3、W4が沿っている。
【0050】
電線W1、W2、W3、W4は、各機器間を接続しており、冷媒用管70a、70b、70c、70dも各機器間を接続している。このため、冷媒用管70a、70b、70c、70dと、冷媒用管70a、70b、70c、70dのそれぞれに沿う電線W1、W2、W3、W4とを同時に車両に組込むことが容易となる。例えば、バッテリ20と充電ユニット22とを接続する冷媒用管70aに電線W1が沿う形態であれば、バッテリ20と充電ユニット22との間に冷媒用管70aと電線W1とを同時に容易に組込むことができる。
【0051】
このように構成された電線付温度管理システム50によると、電線Wの少なくとも一部、ここでは、電線W1、W2、W3、W4が冷媒用管70a、70b、70c、70dに沿う。このため、車両10において、冷媒用管70a、70b、70c、70dの配設スペースと、電線W1、W2、W3、W4の配設スペースとを別々に確保する必要が無い。冷媒用管70a、70b、70c、70dと電線W1、W2、W3、W4とを共通する配設スペースに配設することができる。これにより、冷媒用管70a、70b、70c、70dと電線W1、W2、W3、W4とをコンパクトな構成で車両に搭載することができる。
【0052】
また、電線W1、W2、W3、W4のそれぞれが、冷媒用管70a、70b、70c、70dを通過する冷媒によって温度管理される機器に接続される。つまり、電線W1、W2、W3、W4のそれぞれの接続先機器は、冷媒用管70a、70b、70c、70dを通過する冷媒によって温度管理される機器と同じである。このため、電線W1、W2、W3、W4が冷媒用管70a、70b、70c、70dに沿う形態をよりコンパクトにできる。
【0053】
また、高電圧電気機器に冷媒用管70a、70b、70c、70dが接続され、当該冷媒用管70a、70b、70c、70dを通過する冷媒によって高電圧電気機器が温度管理される。高電圧用電線W1、W2、W3、W4は、高電圧が印加されるため、発熱し易い。冷媒用管70a、70b、70c、70dを用いて、当該高電圧電気機器に接続される高電圧用電線W1、W2、W3、W4を効果的に冷却できる。
【0054】
また、冷媒回路60がPTCヒータ32と高電圧電気機器とバッテリ20のうちの複数を経由するため、冷媒回路60の構成部品点数を削減することが可能となる。かかる冷媒回路60を構成する冷媒用管70a、70b、70c、70dに沿って電線W1、W2、W3、W4を配設することで、電線W1、W2、W3、W4と冷媒用管70a、70b、70c、70dとを、コンパクトな構成で車両10に搭載できる。
【0055】
<冷媒用管に電線を沿わせるための構成について>
冷媒用管70a、70b、70c、70dに電線W1、W2、W3、W4を沿わせて保持するための構成例について説明する。
【0056】
図2は冷媒用管170に電線Wを沿わせるための1つ目の構成例を示す概略断面図である。冷媒用管170は、冷媒用管70a、70b、70c、70dに適用可能な管の一例である。以下では、電線W1、W2、W3、W4については、区別することなく電線Wと表記する場合がある。
【0057】
冷媒用管170は、管本体部172と、電線保持部174とが一体形成された構成とされている。冷媒用管170は、例えば、樹脂が押出成形されることによって形成される。
【0058】
管本体部172は、内部に冷媒を通すことが可能な管状に形成されている。
【0059】
電線Wは、芯線と、芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを備える。芯線は、単線であってもよいし、撚り線であってもよい。絶縁被覆は、例えば、芯線の周囲に押出被覆されることによって形成される。ここでは、電線Wの横断面形状(軸方向に対して直交する断面の形状)は、円形状である。電線Wの横断面形状は、正方形、長方形状等であってもよい。また、ここでは、2本の電線Wが冷媒用管170に沿って保持される例を示している。電線Wは、1本であってもよいし、3本であってもよい。以下では、1本又は複数本の電線Wの外周に接する最小円を外接円ということがある。
【0060】
電線保持部174は、管本体部172の外周囲の一部から外方に向けて突出するように形成されている。電線保持部174は、外周の一部にスリット175が形成された管状に形成されている。電線保持部174の内径は、電線Wを内部に収めることができる程度の大きさに設定されている。例えば、電線保持部174の内径は、電線Wの外接円の直径と同じ程度に設定される。スリット175の幅は、電線保持部174の弾性変形を利用して電線Wを電線保持部174内に収めることができ、かつ、電線Wを電線保持部174内に収めた状態で電線Wが電線保持部174から脱落することを抑制できる程度の大きさに設定されている。例えば、スリット175の幅は、電線Wの外接円の直径よりも小さく設定され、半径よりも大きく設定される。なお、ここでは、スリット175は、管本体部172とは反対側に開口している。スリット175が開口する位置は他の位置であってもよい。
【0061】
電線保持部174が弾性的に変形されてスリット175が開かれることで、電線Wが電線保持部174内に収められる。電線Wが電線保持部174内に収められた状態では、電線保持部174が元の形状に弾性的に復元する。すると、スリット175が閉じて、電線Wが電線保持部174によって保持される。これにより、電線Wが冷媒用管170に沿って保持された状態に保たれる。
【0062】
図3図2に係る冷媒用管170の変形例を示す概略図である。この変形例に係る冷媒用管170Bは、管本体部172と、複数(ここでは2つ)の電線保持部174Bとを備える。
【0063】
管本体部172と複数の電線保持部174Bとは樹脂等によって一体成形されている。ここでは、2つの電線保持部174Bが、管本体部172の両側に設けられている。複数の電線保持部は、管本体部の外周側に隣合って設けられてもよい。
【0064】
電線保持部174Bは、上記電線保持部174と同様構成である。電線保持部174Bは、保持対象となる電線Wを保持可能な大きさに形成されている。また、スリット175の幅は、電線保持部174Bの弾性変形を利用して電線Wを電線保持部174Bに収めることが可能で、かつ、電線Wの脱落を抑制できる程度の大きさに設定されている。
【0065】
図2又は図3に示される例によると、電線Wを冷媒用管170、170Bに沿って容易に取付けることができる。
【0066】
また、冷媒用管170、170Bと電線Wとが一体化された形態で供給されるため、車両10への組付性が向上する。また、冷媒用管170、170Bと電線Wとが別々の形態で提供され、それらを車両10に組付ける際に一体化されることも可能である。このため、組付作業を柔軟に行える。
【0067】
また、電線Wが冷媒用管170、170Bの近くに取付けられるため、電線Wの冷却効果が高い。
【0068】
特に、図3に示す例では、複数(ここでは2つ)の電線Wが、複数(ここでは2つ)の電線保持部174Bによって1つずつ保持される。このため、各電線Wが管本体部172の近くに保持されることになり、各電線Wが効果的に冷却される。
【0069】
図4は冷媒用管70に電線Wを沿わせるための2つ目の構成例を示す概略断面図である。以下では、冷媒用管70a、70b、70c、70dについて、区別することなく冷媒用管70と表記する場合がある。
【0070】
本例では、電線Wは、取付部材280によって冷媒用管70に沿って保持されている。
【0071】
取付部材280は、管取付部282と、電線取付部284とを備える。取付部材280は、樹脂等によって形成される。
【0072】
管取付部282は、周方向の一部に開口283が形成された環状部分、即ち、C字状の部材である。管取付部282は、冷媒用管70を収めることが可能な内径に設定される。開口283は、冷媒用管70の直径よりは小さく設定されている。そして、管取付部282が弾性変形されることで、開口283が開く。開いた開口283を通って冷媒用管70が管取付部282内に収められる。この状態で、管取付部282が弾性的に元の形状に戻ることで、管取付部282が冷媒用管70に取付けられる。
【0073】
電線取付部284は、周方向の一部に開口285が形成された環状部分、即ち、C字状の部材である。電線取付部284は、電線Wを収めることが可能な内径に設定される。開口285は、電線Wの外接円の直径よりは小さく設定されている。そして、電線取付部284が弾性変形されることで、開口285が開く。開いた開口285を通って電線Wが電線取付部284内に収められる。この状態で、電線取付部284が弾性的に元の形状に戻ることで、電線Wに電線取付部284が取付けられる。
【0074】
取付部材280は、電線W及び冷媒用管70の延在方向において部分的に取付けられる短い部材である。取付部材280は、電線W及び冷媒用管70に対してある程度の長さに亘って取付けられる長尺部材であってもよい。
【0075】
なお、管取付部282の開口283及び電線取付部284の開口285の方向は任意である。
【0076】
また、本例では、取付部材280は、車両に固定される車両固定部286を含む。ここでは、車両固定部286は、基部286aと、柱状部286bと、引っ掛かり部286cとを含む。基部286aは円板状又は皿状に形成されている。基部286aは、電線取付部284の外周の一部に隣接する位置で当該電線取付部284と一体成形されている。基部は管取付部の外周の一部に隣接する位置で当該管取付部と一体形成されていてもよい。
【0077】
柱状部286bは、基部286aの中央から外方に向けて突出する細長い柱状の部分である。
【0078】
引っ掛かり部286cは、柱状部286bの先端部に一対設けられている。引っ掛かり部286cの外向き面は、柱状部286bの先端部から基端部に向けて外向き傾斜するように形成している。
【0079】
そして、車両10に設けられた固定用孔10hに車両固定部286を挿入し、引っ掛かり部286cが固定用孔10hを超えると、引っ掛かり部286cが車両10のうち固定用孔10hの周囲部分に引っ掛かる。これにより、車両10のうち固定用孔10hの周囲部分が、引っ掛かり部286cと基部286aとの間に挟み込まれる。これにより、車両固定部286が車両10に固定される。
【0080】
車両固定部286の構成は上記例に限られない。車両固定部は、車両に対してネジ止固定される部分又は溶接等によって固定される部分であってもよい。車両固定部286は省略されてもよい。
【0081】
本例によると、取付部材280を用いて、電線Wが冷媒用管70に容易に取付けられる。
【0082】
また、冷媒用管70と電線Wとが一体化された形態で供給されるため、車両10への組付性が向上する。また、冷媒用管70と電線Wとが別々の形態で提供され、それらを車両10に組付ける際に取付部材280を用いて一体化されることも可能である。このため、組付作業を柔軟に行える。
【0083】
また、車両固定部286を車両10に固定することで、電線W及び冷媒用管70を車両に固定することが可能となる。
【0084】
図5は冷媒用管70に電線Wを沿わせるための3つ目の構成例を示す概略断面図である。
【0085】
本例では、冷媒用管70に沿って電線Wが配設されている。電線W及び冷媒用管70の周りに束ね部材380が巻付けられている。束ね部材380としては、粘着テープ、結束バンド等が用いられる。
【0086】
ここで、車両への電線固定部品として、上記車両固定部286の同様構成部分に細長い板状部分を一体成形した部品がある。この部品の板状部分を、上記電線W及び冷媒用管70と一緒に束ねて、上記束ね部材380を巻付けてもよい。
【0087】
本例によると、束ね部材380を用いて、電線Wを冷媒用管70に容易に取付けることができる。
【0088】
また、冷媒用管70と電線Wとが一体化された形態で供給されるため、車両10への組付性が向上する。また、冷媒用管70と電線Wとが別々の形態で提供され、それらを車両10に組付ける際に束ね部材380を用いて一体化されることも可能である。このため、組付作業を柔軟に行える。
【0089】
また、電線Wが冷媒用管70に接触した状態で束ねられるため、電線Wの冷却効果を高めることも可能となる。
【0090】
[変形例]
本実施形態では、冷媒回路60は、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20を経由する熱交換するシステムである例を説明した。冷媒回路は、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20を別々に経由する別々の熱交換するシステムであってもよい。冷媒回路60は、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20とのうちの複数を経由する熱交換システムであってもよい。
【0091】
例えば、図6に示す電線付温度管理システム450は、2つの冷媒回路460、480を備える。冷媒回路460は、PTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とを経由する熱交換システムである。冷媒回路480は、バッテリ20を経由する熱交換するシステムである。冷媒回路460のうちPCU28と高圧JB24とを接続する冷媒用管70cに沿って、PCU28と高圧JB24とを接続する電線W3が配設される。また、冷媒回路460のうち高圧JB24とDC-DCコンバータ30とを接続する冷媒用管70dに沿って、高圧JB24とDC-DCコンバータ30とを接続するW4が配設される。
【0092】
本例によっても、冷媒回路60がバッテリ20を経由することによる作用効果を除き、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
また、例えば、図7に示す電線付温度管理システム550は、3つの冷媒回路560、580、590を備える。冷媒回路560は、高電圧電気機器22、24、26、28、30を経由する熱交換システムである。冷媒回路580は、バッテリ20を経由する熱交換するシステムである。冷媒回路590は、PTCヒータ32を経由する熱交換システムである。冷媒回路560のうちPCU28と高圧JB24とを接続する冷媒用管70cに沿って、PCU28と高圧JB24とを接続する電線W3が配設される。また、冷媒回路560のうち高圧JB24とDC-DCコンバータ30とを接続する冷媒用管70dに沿って、高圧JB24とDC-DCコンバータ30とを接続するW4が配設される。
【0094】
本例によっても、冷媒回路60がPTCヒータ32と高電圧電気機器22、24、26、28、30とバッテリ20を経由することによる作用効果を除き、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0095】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。例えば、冷媒用管に電線を沿って配設する構成として、上記図2図3図4及び図5で示される各構成が併用されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 車両
10h 固定用孔
20 バッテリ
22 充電ユニット(高電圧電気機器)
24 高圧JB(高電圧電気機器)
26 PCU(高電圧電気機器)
28 モータ(高電圧電気機器)
30 DC-DCコンバータ(高電圧電気機器)
32 PTCヒータ
33 熱交換器
50 電線付温度管理システム
60 冷媒回路
62 タンク
64 ポンプ
66 ラジエータ
70、70a、70b、70c、70d、170、170B 冷媒用管
172 管本体部
174、174B 電線保持部
175 スリット
280 取付部材
282 管取付部
283 開口
284 電線取付部
285 開口
286 車両固定部
286a 基部
286b 柱状部
286c 引っ掛かり部
380 束ね部材
450 電線付温度管理システム
460 冷媒回路
480 冷媒回路
550 電線付温度管理システム
560 冷媒回路
580 冷媒回路
590 冷媒回路
W 電線
W1、W2、W3、W4、W5 電線(高電圧用電線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7