(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230411BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B21/00 530Z
B25F5/00 G
B25B21/00 530C
(21)【出願番号】P 2019111288
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100206092
【氏名又は名称】金 佳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100208535
【氏名又は名称】松坂 光邦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 剛也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】益子 弘識
(72)【発明者】
【氏名】清水 康雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 貴大
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093854(JP,A)
【文献】特開2018-051638(JP,A)
【文献】特開2008-023694(JP,A)
【文献】特開2016-187853(JP,A)
【文献】特開2016-068190(JP,A)
【文献】特開2015-039750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B21/00-23/18
B25D1/00-17/32
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
B23B35/00-49/06
B23D45/00-65/04
B27B1/00-23/00
A01D34/00-34/01
A01D34/412-34/90
A01D42/00-42/08
A01D43/06-43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び第2方向に回転する回転軸を有するモータと、
オン状態とオフ状態との間で切替可能であり前記モータの始動及び停止を制御するための操作部と、
先端工具を着脱可能であり前記モータの駆動力を受けて駆動する出力軸と、
前記回転軸の回転方向を前記第1方向と前記第2方向との間で
設定を切替可能
な切替スイッチと、
前記モータを制御する制御部と、を有する電動工具であって、
前記制御部は、
前記オン状態であるときに前記モータを駆動し、前記オフ状態であるときに前記モータの駆動を停止する第1モード及び
前記操作部の状態に関わらず前記モータを駆動する第2モードを含む複数の動作モード間で切替可能であって、
前記制御部
は、
前記第1方向に回転するよう
設定されているときには、前記第1モード
又は前記第2モード
での駆動が可能に構成され、
前記第2方向に回転するよう
設定されているときには、前記第1モード
での駆動を可能とするが前記第2モードでの駆動を不可能とするよう構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記出力軸は、軸方向に移動可能に構成され、
前記モータの駆動力の伝達経路における前記モータと前記出力軸の間に設けられたクラッチ部であって、
前記第1方向に回転するよう設定されているときには、前記出力軸が前記軸方向前方に位置するときには前記モータの駆動力の前記出力軸への伝達を規制し、前記出力軸が前記軸方向後方に位置するときには前記モータの駆動力の前記出力軸に伝達し、
前記第2方向に回転するよう設定されているときには、前記出力軸の前記軸方向の位置に関わらず、前記モータの駆動力を前記出力軸に伝達する、
よう構成されたクラッチ部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で、前記第1モードから前記第2モードに切り替えるための所定の操作である、前記操作部をオフ状態からオン状態に切り替えるオン操作を所定時間内に所定回数行う操作
が行われたときに、前記第1モードから前記第2モードへ切替えることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記第2モード
で前記モータ
を駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除する
よう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記第2モード
で前記モータ
を駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われ且つ前記操作部をオン状態からオフ状態に切り替えるオフ操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除する
よう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項6】
外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、
前記制御部は、
前記第1モードに設定されている場合、前記オン状態が維持され
た状態で前記接続部
と前記外部電源
が電気的に
非接続な状態から接続
状態に切替えられると、前記第1モード
から前記第2モード
へ切り替える
よう構成されており、
前記第2モードに設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記第2モードから前記第1モードへ切り替えるよう構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項7】
外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、
前記制御部は、
前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われ場合に前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う許可状態と、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われた場合であっても前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行わない不許可状態と、の間で切り替えるよう構成され、
前記許可状態に設定されている場合、前記オン状態が維持され
た状態で前記接続部
と前記外部電源
とが電気的に
非接続な状態から接続
状態に切替えられると、
前記許可状態から前記不許可状態へ切り替える
よう構成され、
前記不許可状態に設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源とが電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記不許可状態から前記許可状態へ切り替えるよう構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
外部電源に電気的に接続される接続部と
、をさらに有し、
前記制御部は、
前記第1モードに設定されている場合、前記接続部
と前記外部電源
が電気的に
非接続な状態から接続
状態に切替えられると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第1モード
から前記第2モード
へ切り替え
るように構成され、
前記第2モードに設定されている場合、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第2モードから前記第1モードへ切り替えるよう構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項9】
外部電源に電気的に接続される接続部と
、をさらに有し、
前記切替スイッチは、前記モータの前記回転方向を前記第1方向とするための第1状態と前記第2方向とするための第2状態との間で切替可能に構成され、
前記制御部は、
前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われ場合に前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う許可状態と、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われた場合であっても前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行わない不許可状態と、の間で切り替えるよう構成され、
前記許可状態に設定されている場合、前記切替スイッチが前記第1状態で
、前記接続部
と前記外部電源
が電気的に
非接続の状態から接続
状態に切替えられたときに、
前記許可状態
から前記不許可状態へ切り替え、
前記不許可状態に設定されている場合、前記切替スイッチが前記第1状態で、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続の状態から接続状態に切替えられたときに、前記不許可状態
から前記許可状態へ切り替える
よう構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天井や壁に石膏ボード等の板材をねじ止めによって施工しているが、このねじ止めを行う電動工具としてねじ締機が広く用いられている。例えば、特許文献1には、モータとモータからの駆動力を受けて回転する出力軸とを備え、作業時に作業者が操作するスイッチを引いた状態で保持するためのオンロックボタンが外部から操作可能に設けられた連結ねじドライバが開示されている。特許文献1の連結ねじドライバでは、当該オンロックボタンを設けることにより例えば連続して多数のねじを締める場合に、作業者によるスイッチに対する操作を省略することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の連結ねじドライバにおいては、モータの駆動力を受けた出力軸が正転するか逆転するかにかかわらずスイッチのオン状態を保持することが可能に構成されている。このため、例えば、出力軸の逆転時に意図せずオン状態が保持された場合に、出力軸に装着された先端工具が回転し続けることにより、先端工具を被加工材に締結された状態の締結具(例えば、ねじ等)に係合させることが困難となり、操作性及び作業性が低下してしまっていた。
【0005】
また、特許文献1に記載の連結ねじドライバにおいては、スイッチのオン状態を維持するために、スイッチの他にオンロックボタンを操作する必要があり、操作性及び作業性が低下してしまっていた。特に、オンロックボタンを外部から操作可能なように工具本体から突出して設ける必要があるため、作業者がハンドルを握る際の障害となってしまい、操作性及び作業性が低下してしまっていた。
【0006】
そこで本発明は、操作性及び作業性を向上させることが可能な電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、第1方向及び第2方向に回転する回転軸を有するモータと、先端工具を着脱可能であり前記モータの駆動力を受けて駆動する出力軸と、前記回転軸の回転方向を前記第1方向と前記第2方向との間で切替可能に制御する制御部と、を有する電動工具であって、前記制御部は、前記モータを制御することにより動作モードを第1モード及び第2モードを含む複数の動作モード間で切替可能であって、前記第1モードである場合において、前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御するときには、前記第1モードから前記第2モードへ切り替え可能に構成され、前記制御部が前記回転軸を前記第2方向に回転するように制御するときには、前記第1モードに維持することを特徴とする電動工具を提供している。
【0008】
上記構成の電動工具によれば、モータの回転軸が第1方向に回転する場合には第1モードから第2モードへ切り替えることができる一方で、モータの回転軸が第2方向に回転する場合には第1モードを維持する。これにより、例えば、モータの駆動力を受けて駆動する出力軸が逆転する場合において、モータが回転する状態を維持する動作モードへ移行させることがない構成を実現できるため、先端工具を締結具(例えば、ねじ等)に好適に係合させることが可能となり、操作性及び作業性を向上させることができる。また、一方で、モータの駆動力を受けて駆動する出力軸が正転する場合には、モータが駆動する状態を維持する動作モードへ移行させる構成を実現することができ、作業者による作業毎のモータを始動させる操作を省略することが可能となり、操作性及び作業性が向上する。
【0009】
上記構成の電動工具において、オン状態とオフ状態との間で切替可能であり前記モータの始動及び停止を制御するための操作部をさらに有し、前記制御部は、前記第1モードから前記第2モードに切り替えるための所定の操作が前記操作部に行われ、且つ、前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御するときに、前記第1モードから前記第2モードへ切り替えることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、一般に作業時に作業者が操作を行うモータを始動又は停止させるための操作部に対して所定の操作を行うことにより、電動工具の動作モードを第1モードから第2モードに切り替えることが可能である。このため、電動工具のモードを第1モードから第2モードに切り替える際に、作業者が手を持ちかえる必要がなく、操作性及び作業性が向上する。また、動作モードの切り替えのために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0011】
また、前記所定の操作は、前記操作部をオフ状態からオン状態に切り替えるオン操作を所定時間内に所定回数行う操作であることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、操作部をオフ状態からオン状態に切り替えるオン操作を所定時間内に所定回数行うという単純な操作によって、第2モードに移行させることができるため、操作性及び作業性を向上させることができる。
【0013】
また、前記動作モードが前記第2モードである状態で前記モータが駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、操作部に対する操作によって電動工具が第2モードで動作する状態を解除することができるため、作業者が手を持ちかえる必要がなく、操作性及び作業性が向上する。また、第2モードを解除するために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0015】
また、前記動作モードが前記第2モードである状態で前記モータが駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われ且つ前記操作部をオン状態からオフ状態に切り替えるオフ操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除することが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、操作部に対する操作によって電動工具が第2モードで動作する状態を解除することができるため、作業者が手を持ちかえる必要がなく、操作性及び作業性が向上する。また、操作部をオフ状態からオン状態へ移行させた後(オン操作)に再度オフ状態に移行させる(オフ操作)という一連の操作に応じて、電動工具が第2モードで動作する状態を解除することができるため、操作性及び作業性が向上する。さらに、第2モードを解除するために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0017】
また、外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、前記制御部は、前記オン状態が維持され且つ前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されると、前記第1モード及び前記第2モード間で切り替えることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0019】
また、外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、前記制御部は、前記オン状態が維持され且つ前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されると、前記所定の操作が前記操作部に行われ且つ前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御するときに前記第1モードから前記第2モードへ切り替えることが可能な許可状態と、前記所定の操作が前記操作部に行われ且つ前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御する場合であっても前記第1モードに維持する不許可状態との間で切り替えることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、作業者が電動工具の動作モードを第1モードから第2モードへ切り替えることを不要と考える場合には、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の状態を不許可状態へと移行させることにより、電動工具が意図せず第2モードで動作することがなく、操作性及び作業性が向上する。さらに、電動工具の状態を許可状態と不許可状態との間で切り替えるため他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0021】
また、外部電源に電気的に接続される接続部と、手動操作可能に構成され前記モータの前記回転方向を切替可能に構成された切替スイッチと、をさらに有し、
前記制御部は、前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第1モード及び前記第2モード間で切り替えることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作、切替スイッチに対する操作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0023】
また、外部電源に電気的に接続される接続部と、手動操作可能に構成され前記モータの前記回転方向を切替可能に構成された切替スイッチと、をさらに有し、前記切替スイッチは、手動操作されることにより前記モータの前記回転方向を前記第1方向とするための第1状態と前記第2方向とするための第2状態との間で切替可能に構成され、前記制御部は、前記切替スイッチが前記第1状態であり且つ前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されたときに、前記所定の操作が前記操作部に行われ且つ前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御するときに前記第1モードから前記第2モードへ切り替えることが可能な許可状態と、前記所定の操作が前記操作部に行われ且つ前記制御部が前記回転軸を前記第1方向に回転するように制御する場合であっても前記第1モードに維持する不許可状態との間で切り替えることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、作業者が電動工具の動作モードを第1モードから第2モードへ切り替えることを不要と考える場合には、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作、切替スイッチに対する操作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の状態を不許可状態へと移行させることにより、電動工具が意図せず第2モードで動作することがなく、操作性及び作業性が向上する。さらに、電動工具の状態を許可状態と不許可状態との間で切り替えるため他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0025】
本発明はさらに、回転軸を有するモータと、先端工具を着脱可能であり前記モータの駆動力を受けて駆動する出力軸と、手動操作可能に構成されオン状態とオフ状態との間で切替可能であり前記モータの始動及び停止を制御するための操作部と、外部電源に電気的に接続される接続部と、前記モータを制御する制御部と、を有する電動工具であって、前記制御部は、前記モータを制御することにより第1モード及び第2モードを含む複数の動作モード間で切替可能に構成され、前記オン状態が維持され且つ前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されると、前記第1モード及び前記第2モード間で切り替えることを特徴とする電動工具を提供している。
【0026】
上記構成の電動工具によれば、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0027】
本発明はさらに、第1方向及び第2方向に回転する回転軸を有するモータと、先端工具を着脱可能であり前記モータの駆動力を受けて駆動する出力軸と、外部電源に電気的に接続される接続部と、前記モータの回転方向を前記第1方向と前記第2方向との間で切替可能に制御する制御部と、手動操作可能に構成され前記モータの前記回転方向を切替可能に構成された切替スイッチと、を有する電動工具であって、前記制御部は、前記モータを制御することにより第1モード及び第2モードを含む複数の動作モード間で切替可能に構成され、前記接続部が前記外部電源と電気的に接続されると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第1モード及び前記第2モード間で切り替えることを特徴とする電動工具を提供している。
【0028】
上記構成の電動工具によれば、電動工具の接続部を外部電源に接続する動作、切替スイッチに対する操作及び操作部への操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせにより電動工具を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、電動工具の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
上記課題を解決するために、本発明はさらに、第1方向及び第2方向に回転する回転軸を有するモータと、オン状態とオフ状態との間で切替可能であり前記モータの始動及び停止を制御するための操作部と、先端工具を着脱可能であり前記モータの駆動力を受けて駆動する出力軸と、前記回転軸の回転方向を前記第1方向と前記第2方向との間で設定を切替可能な切替スイッチと、前記モータを制御する制御部と、を有する電動工具であって、前記制御部は、前記オン状態であるときに前記モータを駆動し、前記オフ状態であるときに前記モータの駆動を停止する第1モード及び前記操作部の状態に関わらず前記モータを駆動する第2モードを含む複数の動作モード間で切替可能であって、前記制御部は、前記第1方向に回転するよう設定されているときには、前記第1モード又は前記第2モードでの駆動が可能に構成され、前記第2方向に回転するよう設定されているときには、前記第1モードでの駆動を可能とするが前記第2モードでの駆動を不可能とするよう構成されていることを特徴とする電動工具を提供する。
上記構成において、前記出力軸は、軸方向に移動可能に構成され、前記モータの駆動力の伝達経路における前記モータと前記出力軸の間に設けられたクラッチ部であって、前記第1方向に回転するよう設定されているときには、前記出力軸が前記軸方向前方に位置するときには前記モータの駆動力の前記出力軸への伝達を規制し、前記出力軸が前記軸方向後方に位置するときには前記モータの駆動力の前記出力軸に伝達し、前記第2方向に回転するよう設定されているときには、前記出力軸の前記軸方向の位置に関わらず、前記モータの駆動力を前記出力軸に伝達する、よう構成されたクラッチ部と、を有することが好ましい。
上記構成において、前記制御部は、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で、前記第1モードから前記第2モードに切り替えるための所定の操作である、前記操作部をオフ状態からオン状態に切り替えるオン操作を所定時間内に所定回数行う操作が行われたときに、前記第1モードから前記第2モードへ切替えることが好ましい。
上記構成において、前記第2モードで前記モータを駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除するよう構成されていることが好ましい。
上記構成において、前記第2モードで前記モータを駆動しているときに前記操作部に前記オン操作が行われ且つ前記操作部をオン状態からオフ状態に切り替えるオフ操作が行われた場合、前記制御部は前記第2モードで動作する状態を解除するよう構成されていることが好ましい。
上記構成において、外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、前記制御部は、前記第1モードに設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記第1モードから前記第2モードへ切り替えるよう構成されており、前記第2モードに設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記第2モードから前記第1モードへ切り替えるよう構成されていることが好ましい。
上記構成において、外部電源に電気的に接続される接続部をさらに有し、前記制御部は、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われ場合に前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う許可状態と、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われた場合であっても前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行わない不許可状態と、の間で切り替えるよう構成され、前記許可状態に設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源とが電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記許可状態から前記不許可状態へ切り替えるよう構成され、前記不許可状態に設定されている場合、前記オン状態が維持された状態で前記接続部と前記外部電源とが電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記不許可状態から前記許可状態へ切り替えるよう構成されていることが好ましい。
上記構成において、外部電源に電気的に接続される接続部と、をさらに有し、前記制御部は、前記第1モードに設定されている場合、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第1モードから前記第2モードへ切り替え、前記第2モードに設定されている場合、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続な状態から接続状態に切替えられると、前記切替スイッチの状態に応じて、前記第2モードから前記第1モードへ切り替えるよう構成されていることが好ましい。
上記構成において、外部電源に電気的に接続される接続部と、をさらに有し、前記切替スイッチは、前記モータの前記回転方向を前記第1方向とするための第1状態と前記第2方向とするための第2状態との間で切替可能に構成され、前記制御部は、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われ場合に前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う許可状態と、前記第1方向へ回転するよう設定された状態で前記所定の操作が前記操作部に対して行われた場合であっても前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行わない不許可状態と、の間で切り替えるよう構成され、前記許可状態に設定されている場合、前記切替スイッチが前記第1状態で、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続の状態から接続状態に切替えられたときに、前記許可状態から前記不許可状態へ切り替え、前記不許可状態に設定されている場合、前記切替スイッチが前記第1状態で、前記接続部と前記外部電源が電気的に非接続の状態から接続状態に切替えられたときに、前記不許可状態から前記許可状態へ切り替えるよう構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電動工具によれば、操作性及び作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかるねじ締機の内部構造を示す断面側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかるねじ締機の電気的構成を示すブロック図を含む回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかるねじ締機の制御部によるモータに対する制御を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかるねじ締機の制御部によるモータに対する制御の第1変形例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施形態にかかるねじ締機の制御部によるモータに対する制御の第2変形例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態にかかるねじ締機のトリガスイッチ及び正逆スイッチの状態に応じたモード切替パターンを示す表である。
【
図7】本発明の第2の実施形態にかかるねじ締機の制御部によるモータに対する制御を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態にかかるねじ締機の制御部によるモータに対する制御の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態にかかる電動工具の一例であるねじ締機1について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。ねじ締機1は、例えば天井や壁に石膏ボード等の板材をねじ止めするための電動式の電動工具である。
【0032】
以下の説明においては、図中に示されている「前」を前方向、「後」を後方向、「上」を上方向、「下」を下方向と定義する。また、ねじ締機1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。さらに、回転可能な部材に関しては、ねじ締機1の後面視において時計回り方向の回転を「正転」と定義し、反時計回り方向の回転を「反転」と定義する。なお、本明細書において寸法、数値等について言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」、「同径」等についても同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」、「略同径」等を含むものとする。
【0033】
図1に示されているように、ねじ締機1は、ハウジング2と、モータ3と、制御部4と、クラッチ部5と、先端工具Pを着脱可能且つ前後方向に延びる軸線Bを中心に回転可能な出力軸部6とを、主に備えている。
【0034】
ハウジング2は、ねじ締機1の外郭をなしており、モータハウジング21と、ハンドルハウジング22と、ギヤハウジング23と、カバー24とを主に有している。
【0035】
モータハウジング21は、前後方向に延びる円筒形状をなし、モータ3及び制御部4を収容している。モータハウジング21の後部には、複数の吸気口が形成されている(不図示)。
【0036】
ハンドルハウジング22は、側面視略コ字状に形成され、把持部221と、第1接続部222と、第2接続部223とを有している。
【0037】
把持部221は、作業時に作業者が把持する部分である。把持部221は、ハンドルハウジング22の後部をなし、上下方向に延びている。把持部221の前部上部には作業者によって操作されるトリガスイッチ22Aが設けられ、把持部221の内部には制御部4に電気的に接続される始動信号出力部22Bが設けられている。始動信号出力部22Bは、トリガスイッチ22Aが引操作すなわち始動操作された場合(例えば、作業者の指によって把持部221内に押し込まれた場合)、モータ3を始動させるための工具始動信号を制御部4に出力し、トリガスイッチ22Aに対する引操作が解除すなわち停止操作された場合(例えば、作業者がトリガスイッチ22Aから指を離して引操作を解除した場合)、制御部4への工具駆動信号の出力を停止するように構成されている。なお、以下の説明においては、トリガスイッチ22Aに対して引操作がされている状態を「オン状態」と呼び、トリガスイッチ22Aに対して外力が働いていない状態(引操作がされていない状態)を「オフ状態」と呼ぶ。オン状態は本発明における「オン状態」の一例であり、オフ状態は本発明における「オフ状態」の一例である。
【0038】
第2接続部223は、把持部221の下部とモータハウジング21の後部下部とを接続し、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。第2接続部223には、作業者によって操作される切替スイッチ22Cが設けられ、第2接続部223の内部には制御部4に電気的に接続される正逆信号出力部22Dが設けられている。切替スイッチ22Cは、作業時におけるモータ3の回転方向(正転及び反転)を切り替えるためのレバースイッチであり、第2接続部223の右側面に外部から手動操作可能に設けられている。正逆信号出力部22Dは、
図1の紙面時計回り方向に切替スイッチ22Cが倒された場合、モータ3を正転させる正転信号を制御部4に出力し、
図1の紙面反時計回り方向に切替スイッチ22Cが倒された場合、モータ3を反転させる反転信号を出力するように構成されている。言い換えると、切替スイッチ22Cは、手動操作されることによりモータ3の回転方向を正転方向とするための第1状態と、反転方向とするための第2状態との間で切替可能に構成されている。切替スイッチ22Cは、本発明における「切替スイッチ」の一例である。第1状態は、本発明における「第2状態」の一例であり、第2状態は、本発明における「第1状態」の一例である。
【0039】
また、第2接続部223の後部下部からは、外部電源Q(
図2参照)に接続される電源コード2Aが延出している。電源コード2Aは、外部電源に接続可能な図示せぬ接続プラグを備えており、外部電源Qと接続可能に構成されている。本実施の形態においては、トリガスイッチ22Aに対して引操作が行われることで、電源コード2Aを介して、外部電源Qからモータ3へ電力が供給されるように構成されている。なお、外部電源Qは、交流電圧を出力する電源であればよく、商用交流電源に限定されない。例えば、外部電源Qは、交流電圧を発生させる発電機等であってもよい。
【0040】
ギヤハウジング23は、前後方向に延び、その後端から前方に向かうにつれて先細りする略漏斗状に形成されている。ギヤハウジング23の後部は、モータハウジング21の前端部に複数のねじ2Bを介して接続されている(ねじ2Bが複数設けられている点については、図示を省略している)。ギヤハウジング23は、モータ3の前部(ピニオン32)、クラッチ部5、出力軸部6の後部を収容している。また、ギヤハウジング23の後部には、複数の排気口(不図示)が形成されている。
【0041】
また、ギヤハウジング23の内部には、スプリングクラッチ25が固定されている。スプリングクラッチ25は、前後方向に延びる略円筒形状をなし、出力軸部6が挿通されている。スプリングクラッチ25は、出力軸部6の前後方向の位置に応じて出力軸部6の正転の規制及び許容を切替可能に構成されている。
【0042】
カバー24は、樹脂製であり、その後端から前方に向かうにつれて先細りする略漏斗状に形成されている。カバー24は、ギヤハウジング23の前部の外周面を覆うようにギヤハウジング23に嵌め込まれている。
【0043】
モータ3は、回転方向(正転及び反転)を切替可能に構成されたブラシレスモータである。モータ3は、回転軸31と、ピニオン32と、ロータ33と、ステータ34と、センサ基板35と、ファン36とを有している。なお、モータ3は、ブラシ付モータであっても良い。モータ3は、本発明における「モータ」の一例である。正転方向は本発明における「第2方向」の一例であり、反転方向は本発明における「第1方向」の一例である。
【0044】
回転軸31は、前後方向に延びている。回転軸31の後端部はベアリング31Bを介してモータハウジング21に支持され、回転軸31の前部はベアリング31Aを介してギヤハウジング23に支持されている。言い換えると、回転軸31は、ハウジング2に軸線Aを中心に回転可能に支承され、モータ3の駆動によって回転することで回転力を発生させる。ここで、軸線Aは、前後方向に延びるとともに回転軸31の軸心を通る線である。回転軸31は、本発明における「回転軸」の一例である。
【0045】
ピニオン32は、回転軸31の前端部に回転軸31と一体回転可能に設けられている。また、ピニオン32の後方には、ファン36が回転軸31と同軸回転可能に設けられている。本実施の形態においては、ファン36が回転することにより、モータハウジング21に形成された図示せぬ吸気口からハウジング2内に外気が取り込まれ、モータ3の各構成要素を冷却しつつギヤハウジング23に形成された図示せぬ排気口から排気するように構成されている。
【0046】
ロータ33は、複数の永久磁石33A(
図2参照)を有する回転子であり、回転軸31と一体回転可能に回転軸31に設けられている。また、ロータ33の後端には、センサマグネット(不図示)がロータと一体に回転するように設けられている。ステータ34は、ステータ巻線34A(
図2参照)を有する固定子であり、モータハウジング21に固定されている。ステータ巻線34Aは、スター型接続されており、U相、V相、W相から構成されている。ステータ34の外周部の上部及び下部のそれぞれは、モータハウジング21に対して図示せぬボルトによって固定されている。
【0047】
センサ基板35は、前面視において略円環状をなす基板であり、ロータ33及びステータ34の後方に設けられている。センサ基板35のロータ33と対向する側面(前面)には、3個の磁気センサ35A~35C(
図2参照)が設けられている。磁気センサ35A~35Cは、例えばホール素子である。磁気センサ35A~35Cは、センサ基板35の前面において、回転軸31の周方向に略60度間隔で並んで配置されている。磁気センサ35A~35Cは、配線35Dを介して制御部4と接続されており、ロータ33の図示せぬセンサマグネットの回転位置を検出するための信号を制御部4に出力する。
【0048】
図1に示されるように、制御部4は、モータ3の後部に設けられており、基板ケース40を有している。基板ケース40は、前方が開放された略直方体状をなし、その最も短い辺が前後方向と平行となるように、モータハウジング21内に配置されている。基板ケース40には、回路基板(不図示)が収容されている。回路基板は、その両面が前後方向と直交するように基板ケース40内に配置され、モータ3を制御するマイコン10等が実装されている。
【0049】
また、制御部4は、モータ3の回転軸31の回転方向を正転方向と反転方向との間で切替可能に制御するとともに、ねじ締機1の動作モードを複数のモード間で切替可能に構成されている。本実施の形態において、ねじ締機1は、動作モードとして、「通常モード」と「オンロックモード」とを有している。通常モードは、制御部4に電力が供給されている場合において、トリガスイッチ22Aがオン状態であるときには制御部4がモータ3に電力を供給するとともにモータ3の駆動制御をする一方、トリガスイッチ22Aがオフ状態であるときには制御部4がモータ3に対する電力の供給を行わず(電力の供給を遮断し)モータ3の駆動を停止する動作モードである。これに対し、オンロックモードは、制御部4に電力が供給されている場合において、トリガスイッチ22Aの状態にかかわらず制御部4がモータ3に電力を供給するとともにモータ3の駆動制御を行う動作モードである。なお、ねじ締機1の動作モードは、上記の「通常モード」及び「オンロックモード」に限定されない。例えば、「通常モード」及び「オンロックモード」よりもモータ3の回転軸31の回転数の高い「高回転数モード」や回転数の低い「低回転数モード」等との間でモード切替可能に構成されていても良い。また、例えば、ねじ締機1の動作モードは、作業時に被加工材を照らすためのライトを駆動させる「ライトオンモード」及びライトの駆動を停止する「ライトオフモード」を含んでいても良い。なお、制御部4の電気的構成については、後述する。
【0050】
図1に示されるように、クラッチ部5は、クラッチドラム51と、多板摩擦クラッチ52と、を有している。クラッチドラム51は、前後方向に延び前部に開口が形成された略円筒形状をなし、ベアリング5A及び軸受メタル5Bを介して軸線Bを中心に回転可能に支承されている。ここで、軸線Bは、前後方向に延び出力軸部6の軸心を通る線である。クラッチドラム51の前部の内周面には係合部51Aが設けられ、略中央部の外周面にはギヤ部51Bが設けられ、略中央部の内周面にはワンウェイクラッチ51Cが設けられ、後部にはバネ51Dが収容されている。
【0051】
係合部51Aは、クラッチドラム51の前部の内周面において、前後方向に延びている。図には詳細に表れていないが、係合部51Aには、クラッチドラム51の内周面からクラッチドラム51の径方向外方に窪むとともに前後方向に延びる溝がクラッチドラム51の周方向全域において所定の間隔で形成されている。
【0052】
ギヤ部51Bは、複数のギヤ歯を有し、モータ3のピニオン32と噛合している。これにより、クラッチドラム51にはモータ3からの回転力が伝達され回転駆動する。ワンウェイクラッチ51Cは、クラッチドラム51の内周面に固定(圧入)された外輪部と、外輪部に対して正転は規制され反転は許容された内輪部とを有している。
【0053】
バネ51Dは、クラッチドラム51の後部の内部において、前後方向に伸縮可能に配置されている。バネ51Dの後端はクラッチドラム51の後端部を形成する壁と当接しており、前端は出力軸部6の後端と当接し出力軸部6を前方へと付勢している。
【0054】
多板摩擦クラッチ52は、クラッチドラム51に収容され、略円盤状に形成されたアウタープレートと略円盤状に形成されたインナープレートとが前後方向において交互に積層されることにより構成されている。図には詳細に表れていないが、複数のアウタープレートのそれぞれは前面視略環状をなし、その外周部にはクラッチドラム51の係合部51Aと係合可能な被係合部がアウタープレートの周方向において所定の間隔で設けられている。また、複数のインナープレートのそれぞれは前面視略環状をなし、その内周部にはインナープレートの径方向内方に突出する被係合部が設けられている。インナープレートの被係合部は、インナープレートの周方向において所定の間隔で設けられている。また、アウタープレートとインナープレートとが前後方向において積層されることにより、多板摩擦クラッチ52の径方向における略中央部には、前後方向に延びる貫通孔52aが形成されている。
【0055】
多板摩擦クラッチ52は、前後方向に押圧されることにより、モータ3の回転力を受けて回転するクラッチドラム51の回転力を出力軸部6に伝達可能に構成されている。具体的には、多板摩擦クラッチ52は、モータ3の駆動力(回転力)の伝達経路におけるクラッチドラム51と出力軸部6との間に設けられ、出力軸部6が後方に移動することに伴って押圧されるとともに、当該押圧力に応じてモータ3の駆動力を出力軸部6に伝達する。
【0056】
出力軸部6は、先端工具Pを着脱可能且つモータ3の駆動力を受けて駆動可能に構成されている。
図1に示されるように、出力軸部6は、その後部をギヤハウジング23に収容されるとともに、その前部がギヤハウジング23の前部から前方に延出している。出力軸部6は、スプラインシャフト61と、ビット装着部62とを有している。先端工具Pは、本発明における「先端工具」の一例である。出力軸部6は、本発明における「出力軸」の一例である。
【0057】
ビット装着部62は、前後方向に延びる略円筒形状をなし、スプリングクラッチ25によって軸線Bを回転中心として回転可能且つ前後方向に移動可能に支持されている。ビット装着部62には、前後方向に延びる貫通孔62aが形成されている。
【0058】
スプラインシャフト61は、前後方向に延びる略円柱形状をなしており、多板摩擦クラッチ52の貫通孔52aに挿通されている。スプラインシャフト61の前端部はビット装着部62の貫通孔62aに圧入されており、スプラインシャフト61の後端部はクラッチドラム51に設けられたワンウェイクラッチ51Cにより回転可能且つ前後方向に移動可能に支持されている。
【0059】
また、スプラインシャフト61の前後方向における略中央部には、前後方向に延びる係合部61Aが設けられている。係合部61Aには、スプラインシャフト61の外周面からスプラインシャフト61の径方向外方へ突出し前後方向に延びる突出部がスプラインシャフト61の周方向全域において所定の間隔で形成されている。係合部61Aは、複数のインナープレートに設けられた図示せぬ係合部と係合しており、複数のインナープレートが回転した場合、複数のインナープレート、スプラインシャフト61及びビット装着部62とは一体に回転する。
【0060】
次に、
図2を参照しながら、ねじ締機1及び外部電源Qの電気的構成について説明する。ねじ締機1は、
図2に示されているように電力供給回路9及びマイコン10を有している。電力供給回路9及びマイコン10は基板ケース40に収容された回路基板に搭載されている。
【0061】
電力供給回路9は、外部電源Qの電力をモータ3に供給可能に構成されており、ノイズフィルタ回路42と、整流回路43と、プラスライン44と、マイナスライン46と、平滑回路47と、シャント抵抗45と、インバータ回路48と、定電圧電源回路49と、を有している。
【0062】
ノイズフィルタ回路42は、ノイズ低減のための回路であり、第1端子42B、第2端子42C、チョークコイル42D、及びコンデンサ42Eを有している。第1端子42B及び第2端子42Cは、電源コード2Aが外部電源Qに接続された状態で外部電源Qの電圧が印加される端子である。つまり、第1端子42B及び第2端子42Cは、外部電源Qに電気的に接続される。第1端子42B及び第2端子42Cは、本発明における「接続部」の一例である。
【0063】
チョークコイル42D及びコンデンサ42Eは、外部電源Qから電力供給回路9に伝搬するノイズを低減するためのフィルタ素子である。チョークコイル42Dは、整流回路43と外部電源Qとの間に直列に接続されており、コンデンサ42Eは、外部電源Qと並列に接続されている。
【0064】
整流回路43は、4つのダイオード43A(4つの整流素子)を有するダイオードブリッジ回路であり、外部電源Qからノイズフィルタ回路42を介して出力される交流電圧を整流して平滑回路47に出力する。言い換えれば、整流回路43は、外部電源Qの交流電圧を直流電圧に変換して平滑回路47に出力する。
【0065】
プラスライン44は、整流回路43とインバータ回路48とを接続している。また、マイナスライン46は、図示せぬGNDに接続されており、且つ整流回路43とインバータ回路48とを接続している。
【0066】
平滑回路47は、整流回路43とインバータ回路48との間に接続され、整流回路43から出力される直流電圧を平滑し、インバータ回路48へ出力する。平滑回路47は、第1コンデンサ47A、第2コンデンサ47B、及び抵抗47Cを有している。
【0067】
第1コンデンサ47Aは、有極性の電解コンデンサであり、プラスライン44とマイナスライン46との間に接続されている。
【0068】
第2コンデンサ47Bは、無極性のフィルムコンデンサであり、プラスライン44とマイナスライン46との間に接続されている。
【0069】
抵抗47Cは、放電用の抵抗であり、プラスライン44とマイナスライン46との間に接続され第2コンデンサ47Bと並列に接続されている。
【0070】
シャント抵抗45は、マイナスライン46上において、平滑回路47とインバータ回路48との間に設けられている。シャント抵抗45は、モータ3に流れる電流を検出するために用いられる抵抗であり、シャント抵抗45の両端は、マイコン10に接続されている。
【0071】
インバータ回路48は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子Q1~Q6を有している。本実施の形態において、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、これに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子であってもよい。
【0072】
スイッチング素子Q1~Q6の各ゲートは、マイコン10に接続されており、マイコン10から入力される制御信号に基づいてスイッチング動作を行う。また、スイッチング素子Q1~Q6の各ドレイン又は各ソースは、ステータコイルU、V、Wに接続されている。
【0073】
図5に示されているように、定電圧電源回路49は、プラスライン44とマイナスライン46との間に接続されている。定電圧電源回路49は、ダイオード49A、コンデンサ49B、IPD回路49C、コンデンサ49D、及びレギュレータ49Eを有しており、整流回路43から出力される直流電圧を変換して安定化された基準電圧を生成し、マイコン10等へ供給する。
【0074】
マイコン10は、図示せぬ演算部、ROM、RAM等を有しており、インバータ回路48を制御してモータ3を駆動するように構成されている。マイコン10は、3つのホール素子35A、35B、35Cのそれぞれから出力された信号に基づいてロータ33のセンサマグネット(不図示)の回転位置を検出することでロータ33の回転位置を検出し、当該検出結果に基づいてスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれのオン・オフを切換えるための制御信号を形成する。マイコン10は、当該制御信号をスイッチング素子Q1~Q6に出力し、ステータコイルU、V、Wのうちの通電されるコイルを順次切替え、ロータ33を所定の回転方向に回転駆動させる。また、マイコン10は、始動信号出力部22Bからの工具始動信号の受信時からの時間を計測するためのタイマカウンタ機能を備えている。
【0075】
マイコン10の図示せぬROMには、モータ3の駆動を制御するための各種制御プログラム、各種データ、各種閾値等が記憶されている。また、図示せぬRAMは、データを一時的に記憶するための記憶領域を有している。本実施の形態においては、RAMは、作業者の操作によりトリガスイッチ22Aがオン状態になってからオフ状態になるまでの時間を一時的に記憶するように構成されている。
【0076】
始動信号出力部22Bは、マイコン10と電気的に接続され、トリガスイッチ22Aに対する引操作を検出して工具始動信号をマイコン10に出力する。正逆信号出力部22Dは、マイコン10と電気的に接続され、切替スイッチ22Cに対する操作を検出して正転信号及び反転信号をマイコン10に出力する。
【0077】
次に、
図1を参照しながら、ねじ締機1を用いた図示せぬ被加工材(板材等)へのねじの締付作業及び締付作業時におけるねじ締機1の動作について説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、先端工具Pをねじに押し付ける方向(すなわち、ねじ締機1をねじに向けて押し込む方向)と前方向とが一致しているものとする。
【0078】
ねじの締付作業を行う場合、まず作業者は、出力軸部6のビット装着部62の貫通孔62aに先端工具Pを装着し、切替スイッチ22Cを紙面反時計回り方向に倒し、トリガスイッチ22Aに対して引操作を行う。すると、電源コード2Aを介して図示せぬ外部電源からモータ3へ電力が供給され、モータ3が駆動を開始する。モータ3が駆動を開始すると、回転軸31及びピニオン32が軸線Aを回転中心として反転する。ピニオン32の反転に伴い、ピニオン32と噛合しているギヤ部51Bを介してクラッチドラム51が軸線Bを中心として正転する。クラッチドラム51の正転に伴い、クラッチドラム51の係合部51Aと係合(噛合)している複数のアウタープレートが軸線Bを回転軸心として正転する。
【0079】
この状態において、作業者は、先端工具Pの先端をねじのねじ頭に形成された溝(例えば、十字溝)に係合させる。その後、作業者は、ねじ締機1本体をねじに向けて押し込んで、先端工具Pをねじに押し付ける。このときに、バネ51Dの付勢力に抗して出力軸部6(スプラインシャフト61及びビット装着部62)が後方へ移動する。出力軸部6が後方へ移動すると、ビット装着部62の後端と多板摩擦クラッチ52の最前端に位置するインナープレートとが当接する。このときに、多板摩擦クラッチ52の隣り合うアウタープレートとインナープレートとは接触する。
【0080】
この状態において、ねじ締機1本体がさらにねじに押し込まれることに伴い、出力軸部6がさらに後方へ移動すると、前後方向に隣り合うアウタープレートとインナープレートとの間の接触面における面圧が上昇する。このときに、アウタープレートの正転に伴いアウタープレート及びインナープレート間に発生する摩擦力により、アウタープレートまで伝達されたモータ3の回転力がインナープレートに伝達され、インナープレートと一体に回転する出力軸部6が回転する。そして、モータ3からの回転力が出力軸部6のビット装着部62を介して先端工具Pに伝達され、ねじを図示せぬ被加工材に対して締め付けることが可能である。
【0081】
また、ねじ締め作業を終わり、作業者が先端工具Pをねじのねじ頭から離すと、バネ51Dの付勢力によって、出力軸部6は前方へと移動する。これにより、多板摩擦クラッチ52に対する前後方向の押圧が解消し、前後方向において隣り合うアウタープレート及びインナープレートの接触面における面圧が減少するため、隣り合うアウタープレートとインナープレートとの間に発生する摩擦が小さくなる。
【0082】
一方、ネジを緩める際には、切替スイッチ22Cを紙面時計回り方向に倒し、トリガスイッチ22Aに対して引操作を行う。このときに、作業者が先端工具Pをねじに十分に押し付けることができる場合には、先端工具Pのねじへの押し付けによって、出力軸部6が後方へと移動する。そして、出力軸部6のビット装着部62の後端部が多板摩擦クラッチ52を後方へ押圧することに伴い、前後方向に隣り合うアウタープレート及びインナープレート間の面圧が上昇する。アウタープレートの反転に伴い、隣り合うアウタープレート及びインナープレート間に摩擦が発生する。この摩擦によって、インナープレートは反転し、インナープレートの図示せぬ被係合部とスプラインシャフト61の係合部61Aとの係合によって出力軸部6も反転する。よって、モータ3からの回転力が出力軸部6のビット装着部62を介して先端工具Pに伝達され、ねじを緩めることが可能となる。
【0083】
ねじを緩める場合において、ねじのねじ頭が図示せぬ被加工材から突出しておらず(例えば、ねじが被加工材に埋没している場合等)、作業者が先端工具Pをねじに十分に押し付けることができない場合には、ビット装着部62を十分に後方へ移動させることが出来ず、アウタープレートとインナープレートとの間に十分な摩擦が生じない。この場合においては、アウタープレート及びインナープレートを介してクラッチドラム51から出力軸部6へとモータ3の回転力を伝達することはできないが、クラッチドラム51が反転するため、ワンウェイクラッチ51Cを介してクラッチドラム51からスプラインシャフト61へと回転力が伝達され、ねじを緩めることが出来る。
【0084】
次に、
図3を参照しながら、作業時における制御部4によるねじ締機1の動作モード切替制御の具体的な処理について説明する。
図3は、制御部4によるモータ3に対する制御を示すフローチャートである。なお、特に断らない限り、ねじ締機1の動作モードは通常モードであるものとする。
【0085】
作業者が外部商用電源Qに電源コード2Aの図示せぬプラグを差し込むことにより、第1端子42B及び第2端子42C(
図2参照)を介してねじ締機1と外部商用電源Qとが電気的に接続される。これにより、マイコン10(制御部4)に電力が供給され、これを契機に
図3のフローチャートに示される処理が開始される。
【0086】
ステップS101においてマイコン10は、切替スイッチ22Cの状態を判断する。具体的には、切替スイッチ22Cが
図1の紙面反時計回り方向に倒され、第2状態となっているか否かを判断する。当該判断は、正逆信号出力部22Dから反転信号が出力されているか否かで判断する。
【0087】
ステップS101において、切替スイッチ22Cが第2状態でないと判断した場合(ステップ101:No)、つまり切替スイッチ22Cが第1状態であると判断した場合、マイコン10はステップS102において、トリガスイッチ22Aに対して引操作が行われているか否かを判断する。具体的には、トリガスイッチ22Aが現時点においてオン状態にあるか否かを判断する。言い換えると、マイコン10は、トリガスイッチ22Aをオフ状態からオン状態に切り替えるオン操作が行われたか否かを判断する。当該判断は、始動信号出力部22Bから工具始動信号が出力されているか否かで判断する。
【0088】
ステップS102において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS102:No)、つまり、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合、マイコン10はステップS102の判断処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS102において、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS102において、トリガスイッチ22Aがオン状態であると判断した場合(ステップS102:Yes)、マイコン10は、ステップS103でモータ3の駆動制御を開始する。
【0089】
ステップS104において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aに対する引操作が解除されたか否かを判断する。具体的には、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。言い換えると、マイコン10は、トリガスイッチ22Aをオン状態からオフ状態に切り替えるオフ操作が行われたか否かを判断する。マイコン10は、始動信号出力部22Bからの始動信号の出力が停止した場合に、トリガスイッチ22Aがオフ状態にあると判断する。
【0090】
ステップS104において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS104:No)、マイコン10はステップS104の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS104において、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS104において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS104:Yes)、マイコン10はステップS105でモータ3の駆動を停止する。以降、切替スイッチ22Cが第2状態に切り替えられない限り、マイコン10は、ステップS101からステップS105の処理を繰り返し行う。
【0091】
一方で、ステップS101において、切替スイッチ22Cが第2状態であると判断した場合(ステップS101:Yes)、マイコン10はステップS106において、トリガスイッチ22Aが現時点においてオン状態にあるか否かを判断する。
【0092】
ステップS106において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS106:No)、マイコン10はステップS106の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS106において、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS106において、トリガスイッチ22Aがオン状態であると判断した場合(ステップS106:Yes)、マイコン10はステップS107でモータ3の駆動制御を開始する。
【0093】
ステップS108において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS108において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS108:No)、マイコン10はステップS108の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS108において、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS108において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS108:Yes)、マイコン10は、モータ3の駆動を停止する(ステップS109)。
【0094】
その後、ステップS110において、マイコン10は、ステップS106においてトリガスイッチ22Aがオン状態となった時点からステップS108においてトリガスイッチ22Aがオフ状態なった時点までの期間が、400msを超えているか否かを判断する。具体的には、本実施形態において、マイコン10はそのタイマカウンタ機能によりステップS106において始動信号出力部22Bからの工具始動信号を受信した時点からの経過時間を計測している。以下の説明においては、ステップS110の判断時における当該経過時間をTAと呼ぶ。そして、TAとROMに予め記憶された閾値とを比較することにより、TAが400msを超えているか否かを判断する。なお、本実施の形態においては、閾値として400msを用いているがこれよりも長い期間ないし短い期間を閾値として用いても良い。
【0095】
ステップS110においてTAが閾値400msを超えていると判断した場合(ステップS110:No)、切替スイッチ22Cが第1状態に切り替えられない限り、マイコン10は、ステップS101、ステップS106~ステップS110の処理を繰り返し行う。
【0096】
ステップS110においてTAが閾値400msを超えていないと判断した場合(ステップS110:Yes)、マイコン10は、ステップS111において、トリガスイッチ22Aがオン状態にあるか否かを判断する。
【0097】
ステップS111において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS111:No)、マイコン10は、ステップS110及びステップS111の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、TAが閾値400msを超えるまで、継続してトリガスイッチ22Aの状態を監視する。
【0098】
ステップS111において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS111:Yes)、マイコン10は、ステップS112において、ステップS106においてトリガスイッチ22Aがオン状態となった時点からステップS111においてトリガスイッチ22Aが再度オン状態となった時点までの期間が、閾値400msを超えているか否かを判断する。具体的には、ステップS112の判断時における経過時間TBとROMに予め記憶された閾値とを比較することにより、TBが400msを超えているか否かを判断する。ステップS106及びステップS112においてトリガスイッチをオン状態にする操作は、本発明における「所定の操作」の一例である。
【0099】
ステップS112においてTBが閾値400msを超えていると判断した場合(ステップS112:No)、切替スイッチ22Cが第1状態に切り替えられない限り、マイコン10は、ステップS101、ステップS106~ステップS112の処理を繰り返し行う。
【0100】
ステップS112においてTBが閾値400msを超えていないと判断した場合(ステップS112:Yes)、マイコン10は、ステップS113において、ねじ締機1の動作モードを「オンロックモード」に移行させる。この状態において、作業者がトリガスイッチ22Aから手を離しトリガスイッチ22Aがオフ状態に移行したとしても、制御部4は、モータ3の駆動制御を継続する。
【0101】
ステップS114において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aがオフ状態であるか否かを判断する。ステップS114において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS114:No)、マイコン10は、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS114において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS114:Yes)、マイコン10はステップS115において、トリガスイッチ22Aがオン状態であるか否かを判断する。
【0102】
ステップS115において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS115:No)、マイコン10は、トリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS115において、トリガスイッチ22Aがオン状態であると判断した場合(ステップS115:Yes)、マイコン10は、オンロックモードを解除する。具体的には、マイコン10は、ねじ締機1の動作モードをオンロックモードから通常モードへ移行させるとともに、モータ3の駆動を停止する。以降、切替スイッチ22Cが第1状態へ切り替えられない限り、マイコン10は、ステップS101、ステップS106~ステップS116の処理を繰り返し行う。
【0103】
このように、本実施の形態においては、ねじ締機1の動作モードが通常モードである場合において、マイコン10がモータ3の回転軸31を反転方向に回転するように制御するときは(つまり、出力軸部6が正転するときは)、マイコン10はねじ締機1の動作モードを通常モードからオンロックモードへ切り替え可能に構成されている。このため、作業者による作業毎のモータ3を始動させる操作を省略することが可能となり、操作性及び作業性が向上する。マイコン10は、本発明における「制御部」の一例である。
【0104】
また、マイコン10がモータ3の回転軸31を正転方向に回転するように制御するときは(つまり、出力軸部6が反転するときは)、マイコン10はねじ締機1の動作モードを通常モードに維持するように構成されている。このような構成によれば、本実施の形態のように、ワンウェイクラッチ51Cを用いることにより出力軸部6の逆転時(モータ3の正転時)に先端工具Pの締結具に対する押し付け力を介さずにモータ3の駆動力を出力軸部6に伝達する構成において、意図せずにオンロックモードに移行してしまうことがない。これにより、先端工具Pを締結具(例えば、ねじ等)に好適に係合させることが可能となり、操作性及び作業性を向上させることができる。
【0105】
また、本実施の形態において、作業者は、正逆信号出力部22Dが反転信号を出力する場合において、トリガスイッチ22Aをオフ状態からオン状態へ切り替えるオン操作を400ms間に2回行うことで、ねじ締機1の動作モードを通常モードからオンロックモードへと切り替えることが可能である。このように単純な操作によって、オンロックモードに移行させることができるため、操作性及び作業性を向上させることができる。また、ねじ締機1のモードを通常モードからオンロックモードに切り替える際に、作業者が手を持ちかえる必要がなく、操作性及び作業性が向上する。さらに、動作モードの切り替えのために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。なお、本実施の形態においては400ms間に2回トリガスイッチ22Aに対してオン操作を行うことで、モードが切り替わるように構成されているが必ずしもこのような構成に限られない。例えば、オン操作の回数は3回以上であっても良い。
【0106】
また、ねじ締機1がオンロックモードで動作している状態でトリガスイッチ22Aにオン操作がされた場合、マイコン10は、ねじ締機1がオンロックモードで動作する状態を解除することが可能である。このため、作業者が手を持ちかえる必要がなく、操作性及び作業性が向上する。また、単純な操作でオンロックモードを解除することができるため、操作性及び作業性が向上する。さらに、オンロックモードを解除するために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0107】
なお、本実施の形態においては、作業者がオン操作を行った時点でオンロックモードが解除されるように構成されていたが、必ずしもこのような構成に限られない。例えば、トリガスイッチ22Aに対してオン操作が行われ且つオフ操作が行われた時点で、オンロックモードを解除するように構成されていても良い。このような構成によれば、トリガスイッチ22Aをオフ状態からオン状態へ移行させた後(オン操作)に再度オフ状態に移行させる(オフ操作)という一連の操作に応じて、ねじ締機1がオンロックモードで動作する状態を解除することができるため、操作性及び作業性が向上する。
【0108】
次に、上述の実施形態の第1変形例について説明する。上記実施形態が所定時間内に複数回トリガスイッチ22Aが操作されたのに応じてモード切替をするのに対して、本変形例においては、トリガスイッチ22Aに対して所定時間以上オン状態を維持する操作がされたか否かでモード切替を行う。なお、ステップS101~ステップS107までの処理は、上記実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0109】
ステップS208において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS208において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS208:No)、マイコン10は、ステップS208の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS208においてトリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS208において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS208:Yes)、マイコン10はステップS209において、ステップS106においてトリガスイッチ22Aがオン状態となった時点からステップS208においてトリガスイッチ22Aがオフ状態となった時点までの期間が、500msを超えているか否かを判断する。具体的には、ステップS209の判断時における経過時間TとROMに予め記憶された閾値を比較することにより、Tが500msを超えているか否かを判断する。なお、本変形例においては、閾値として500msを用いているがこれよりも長い時間ないし短い時間を閾値として用いても良い。
【0110】
ステップS209においてTが閾値500msを超えていないと判断した場合(ステップS209:No)、マイコン10はモータ3の駆動を停止する(ステップS105)。一方、ステップS209において、Tが500msを超えていると判断した場合(ステップS209:Yes)、マイコン10は、ステップS210においてねじ締機1のモードをオンロックモードに移行させる。このような構成によっても、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、ステップS211及びステップS212は、オンロックモードを解除するステップであるところ、上述の実施形態におけるステップS115及びステップS116と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
次に、上述の実施形態の第2変形例について説明する。上記実施形態が所定時間内に複数回トリガスイッチ22Aが操作されたのに応じてモード切替をするのに対して、本変形例においては、トリガスイッチ22Aに対して所定時間以上オン状態を維持する操作がされたか否かでモード切替を行う。なお、ステップS101~ステップS107までの処理は、上記実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0112】
ステップS308において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS308において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS308:No)、マイコン10は、ステップS308の処理を繰り返し行う。つまり、マイコン10は、ステップS308においてトリガスイッチ22Aの状態を継続して監視する。一方、ステップS308において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS308:Yes)、マイコン10はステップS309において、ステップS106においてトリガスイッチ22Aがオン状態となった時点からステップS308においてトリガスイッチ22Aがオフ状態となった時点までの経過時間Tが500msを超えているか否かを判断する。なお、本変形例においては、閾値として500msを用いているがこれよりも長い時間ないし短い時間を用いても良い。
【0113】
ステップS309において、Tが閾値500msを超えていないと判断した場合(ステップS309:No)、マイコン10はモータ3の駆動を停止する(ステップS105)。一方、ステップS309において、Tが500msを超えていると判断した場合(ステップS309:Yes)、マイコン10はステップS310において、ステップS106においてトリガスイッチ22Aがオン状態となった時点からステップS308においてトリガスイッチ22Aがオフ状態となった時点までの経過時間Tが3sを超えているか否かを判断する。なお、本変形例において、閾値として500msより長い時間であれば、3sよりも長い時間ないし短い時間を用いても良い。
【0114】
ステップS310において、Tが3sを超えていると判断した場合(ステップS310:No)、マイコン10はモータ3の駆動を停止する。一方、ステップS310においてTが3sを超えていないと判断した場合(ステップS310:Yes)、マイコン10は、ステップS311においてねじ締機1のモードをオンロックモードに移行させる。このような構成によっても、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、500ms及び3sの2重の閾値を設けることにより、好適に作業者の意図に応じてオンロックモードに移行させることが可能となる。なお、ステップS312及びステップS313は、オンロックモードを解除するステップであるところ、上述の実施形態におけるステップS115及びステップS116と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
次に、
図6乃至
図8を参照しながら、本発明の第2の実施形態にかかるねじ締機の制御について説明する。第2実施形態にかかるねじ締機は、第1の実施形態にかかるねじ締機1と同一の構成を備えており、制御部4による制御のみがねじ締機1と異なる。また、本実施の形態において、マイコン10のROM又はRAMは、その記憶領域に、前回電源切断時のねじ締機の動作モードを記憶するように構成されている。
【0116】
また、第2の実施形態にかかるねじ締機の動作モードは、
図6に示されているように、第1端子42B及び第2端子42C(
図2参照)が商用交流電源と電気的に接続され、制御部4に電力が供給されたときの、各種スイッチ(トリガスイッチ22A、切替スイッチ22C)の状態及びその組み合わせに応じて、切り替わるように構成されている。具体的には、パターン1(図中のNo.1)は、トリガスイッチ22Aがオン状態に維持された状態で、制御部4に電力が供給されると、所定のモード間で切替可能に構成されている。以下、
図7を参照しながら、本実施の形態のモード切替パターンとして、パターン1が採用されているものとして説明する。
【0117】
作業者が外部電源Qに電源コード2Aの図示せぬプラグを差し込むことにより、第1端子42B及び第2端子42C(
図2参照)を介してねじ締機1と外部電源Qとが電気的に接続される。これにより、マイコン10(制御部4)に電力が供給され、これを契機に
図7のフローチャートに示される処理が開始される。
【0118】
電力が供給されると、マイコン10は、直ちにステップS401において、トリガスイッチ22Aがオン状態にあるか否かを判断する。言い換えると、マイコン10は、トリガスイッチ22Aのオン状態が維持され且つ第1端子42B及び第2端子42Cが外部電源Qと接続されたか否かを判別する。ステップS401において、トリガスイッチ22Aがオン状態でないと判断した場合(ステップS401:No)、マイコン10は、ステップS402において前回電源切断時のモードを保持した状態で、ステップS403においてトリガスイッチ22Aがオン状態にあるかを継続して監視する。
【0119】
ステップS403において、トリガスイッチ22Aがオン状態であると判断した場合(ステップS403:Yes)、マイコン10は、ステップS404において、RAM又はROMに記憶された前回電源切断時のモードでモータ3を駆動させる。
【0120】
ステップS405において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS405において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS405:No)、マイコン10は、モータ3の駆動を継続する。一方、ステップS405において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS405:Yes)、マイコン10は、モータ3の駆動を停止する。このときに、マイコン10は、前回電源切断時のモードを記憶した状態を保持する(ステップS406)。
【0121】
一方、ステップS401において、トリガスイッチ22Aがオン状態にあると判断した場合(ステップS401:Yes)、マイコン10は、ステップS407において、ステップS401におけるトリガスイッチ22Aのオン操作ではモータ3を駆動させずに待機する。これと同時にマイコン10は、ステップS408において、ねじ締機の動作モードを切り替える。また、マイコン10のROM又はRAMは、その記憶領域に、変更後のねじ締機の動作モードを記憶する。
【0122】
ステップS409において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS409において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS409:No)、マイコン10は、ステップS409の処理を繰り返し行う。一方、ステップS409において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS410:Yes)、マイコン10は、ステップS410において、トリガスイッチ22Aが現時点においてオン状態にあるか否かを判断する。
【0123】
ステップS410において、トリガスイッチ22Aがオン状態であると判断した場合(ステップS410:Yes)、マイコン10は、モード変更後の動作モードでモータを駆動する(ステップS411)。
【0124】
ステップS412において、マイコン10は、トリガスイッチ22Aが現時点においてオフ状態にあるか否かを判断する。ステップS412において、トリガスイッチ22Aがオフ状態でないと判断した場合(ステップS412:No)、マイコン10は、モータ3の駆動を継続する。一方、ステップS412において、トリガスイッチ22Aがオフ状態であると判断した場合(ステップS412:Yes)、マイコン10は、モータ3の駆動を停止する。このときに、マイコン10は、変更後のモードを記憶した状態を保持する(ステップS413)。
【0125】
このように、本実施形態においては、マイコン10は、トリガスイッチ22Aのオン状態が維持され且つ第1端子42B及び第2端子42Cが外部電源Qと接続された場合に、ねじ締機の動作モードを切り替える。つまり、ねじ締機の接続部を外部電源Qに接続する動作及びトリガスイッチ22Aへの操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせによりねじ締機を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、ねじ締機の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0126】
また、上記第2実施形態において、制御部4はトリガスイッチ22Aに対するオン操作が維持され且つ第1端子42B及び第2端子42Cが外部電源Qに接続された場合において(上記ステップS401参照)、所定の操作がトリガスイッチ22Aに対して行われ且つ制御部4がモータ3の回転軸31を反転方向に回転するように制御するときにねじ締機の動作モードをオンロックモードへ切り替えることが可能な許可状態と、所定の操作が操作部に行われ且つ制御部4が回転軸31を反転方向に回転するように制御する場合においてもねじ締機の動作モードを通常モードに維持する不許可状態との間で切替可能に構成されていても良い。このような構成によれば、作業者がねじ締機の動作モードを通常モードからオンロックモードへ切り替えることを不要と考える場合には、ねじ締機の第1端子42B及び第2端子42Cを外部電源Qに接続する動作及びトリガスイッチ22Aへの操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせによりねじ締機を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。
【0127】
なお、本実施の形態において、ねじ締機は外部電源Qと電気的に接続されることにより動作するように構成されていたが、電池パックと電気的に接続されることにより動作するように構成されていても良い。電池パックを用いた場合においても、作業者がトリガスイッチ22Aを引きつつ電池パックをねじ締機に装着した場合(ねじ締機の接続部と電池パックの接続部とが電気的に接続された場合)に、ねじ締機の動作モード変更を行うことにより、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0128】
次に上述の第2実施形態の変形例について説明する。本変形は、
図6のパターン3に対応し、トリガスイッチ22Aがオン状態に維持され且つ切替スイッチ22Cが第2状態であるときに、制御部4に電力が供給されると、所定のモード間で切替可能に構成されている。
【0129】
まず、ステップS501~ステップS507までの処理は、上述の実施形態におけるステップS401~ステップS407と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
ステップS508において、マイコン10は、切替スイッチ22Cの状態が第2状態であるか否かを判断する。ステップS508において、切替スイッチ22Cが第2状態でないと判断した場合(ステップS508:No)、マイコン10は、ステップS502~ステップS506の処理を行う。一方、ステップS508において、切替スイッチ22Cが第2状態であると判断した場合(ステップS508:Yes)、マイコン10は、ステップS509において、ねじ締機の動作モードを切り替える。また、マイコン10のROM又はRAMは、その記憶領域に、変更後のねじ締機の動作モードを記憶する。なお、ステップS510~ステップS514までの処理は、上述の実施形態におけるステップS409~ステップS413と同様であるため、説明を省略する。
【0131】
このように本変形例においては、ねじ締機の第1端子42B及び第2端子42Cを外部電源Qに接続する動作、切替スイッチ22Cに対する操作及びトリガスイッチ22Aへの操作という作業者が作業時に通常行う作業及び操作の組み合わせによりねじ締機を特定の動作モードで動作させることができるため、操作性及び作業性が向上する。また、ねじ締機の動作モードを切り替えるために他の部材及び機構を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。さらに、トリガスイッチ22Aへの引操作及び切替スイッチ22Cの状態という2つの条件でモード切替を行うため、条件を1つだけ設ける場合に比べて、作業者の意図しないモード切替が抑制され、操作性及び作業性が向上する。
【0132】
モード切替パターンは上述の切替パターンに限られない。例えば、
図6のパターン2に示されるように、トリガスイッチ22Aがオン状態に維持され且つ切替スイッチ22Cが第1状態であるときに、制御部4に電力が供給されると、所定のモード間に切替可能に構成されていても良い。また例えば、パターン4に示されるように、トリガスイッチ22Aがオン状態に維持され且つ切替スイッチ22Cが第1状態であるときに、制御部4に電力が供給されると、ねじ締機が所定のモードAで動作する状態が強制的に実現されるように構成されていても良い。つまり、パターン4においては、前回電源切断時の動作モードがモードAでなかった場合にはモードAで動作可能な状態に強制的に切替られるとともに、前回電源切断時の動作モードがモードAであった場合には当該モードAで動作可能な状態を維持する。さらに、例えば、パターン5に示されるように、トリガスイッチ22Aがオン状態に維持され且つ切替スイッチ22Cが第2状態であるときに、制御部に電力が供給されるとねじ締機が所定のモードBで動作する状態が強制的に実現されるように構成されていても良い。
【0133】
本実施の形態においては、電動工具としてねじ締機1を例に説明をしたが、本発明はねじ締機以外のモータで駆動される電動工具、例えば、ハンマーやハンマードリル等の穴あけ作業機、ジグソーやセーバソー等の切断工具、くぎ打ち機等の電動工具にも適用可能である。例えば、本発明をくぎ打ち機に適用する場合には、単発打モードと連発打モードとの切替における操作性及び作業性を向上させることが可能となる。また、電動工具の動作モードは、上記において示される動作モードに限定されず、本発明はライトの点灯に関するモードの切替における操作性及び作業性を向上させることができる。具体的には、ライトの点灯態様(所定時間継続して点滅するモード、出力軸の回転に同期して点滅するモード等)が切り替えられるように構成されていても良い。
【符号の説明】
【0134】
1…ねじ締機 2…ハウジング 3…モータ 4…制御部 5…クラッチ部 6…出力軸部