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  • 特許-制御装置、および転舵装置 図1
  • 特許-制御装置、および転舵装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】制御装置、および転舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20230411BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019111943
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020203566
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】小島 崇
(72)【発明者】
【氏名】狩集 裕二
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208492(JP,A)
【文献】特開2008-254630(JP,A)
【文献】特開2002-370666(JP,A)
【文献】特開2018-62209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04, 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に対し左右に配置される左転舵輪、および右転舵輪のそれぞれの転舵角を独立して制御する制御装置であって、
前記車両の操向方向を示す操向指令値に基づき前記左転舵輪の転舵角を示す左転舵指令値、および前記右転舵輪の転舵角を示す右転舵指令値を決定する転舵角決定部と、
前記車両の目標経路を示す経路情報を取得する経路取得部と、
走行中の前記車両の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき前記車両の挙動が目標挙動となるように前記左転舵指令値、および前記右転舵指令値をそれぞれ補正する挙動最適化部と、
走行中の前記車両の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき前記車両が前記目標経路を走行するように前記操向指令値を補正する軌跡安定化部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記経路取得部は、
前記操向指令値に基づき経路情報を取得する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記経路取得部は、
経路生成部から経路情報を取得する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
走行中の前記車両の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき前記車両が所定状態にあると判断した場合に、前記挙動最適化部の制御優先度に対する前記軌跡安定化部の制御優先度を前記車両が所定状態にない場合から変化させる優先度調整部
を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記左転舵輪を転舵する左アクチュエータを有する左転舵機構と、
前記右転舵輪を転舵する右アクチュエータを有する右転舵機構と、
を備える転舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右に配置される転舵輪を独立して転舵する制御装置、および転舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールと転舵機構とが機械的に接続されておらず、転舵輪の転舵角をそれぞれ独立に制御する車両用の転舵装置がある。例えば、特許文献1には、運転者の操舵が限界を超えている場合に、転舵輪の駆動力と転舵角を制御し、安定した姿勢で運転者の意思通りに車両を旋回させる技術が記載されている。また、特許文献2には、4輪を独立して転舵可能な車両において、車速に応じて転舵状態を変更することにより車両の安定性を向上と、転舵機構への負担を軽減することができる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-208492号公報
【文献】特開2008-254630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、車両挙動の限界性能の向上、転舵輪におけるエネルギーロスの抑制などを目的としてカーブの走行中における左右の転舵輪の転舵角を個別に修正すると、タイヤ横力の総和が変化するため、車両の旋回状態に変動が生じ、所望の走行経路から車両がずれて走行してしまう場合があることを発明者は見出した。
【0005】
本発明は、発明者の知見に基づきなされたものであり、カーブ走行中において左右の転舵輪の転舵角を個別に修正して車両の挙動を調整し、かつ目標径路に合致して車両を走行させることができる制御装置、および転舵装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つである制御装置は、車両の進行方向に対し左右に配置される左転舵輪、および右転舵輪のそれぞれの転舵角を独立して制御する制御装置であって、前記車両の操向方向を示す操向指令値に基づき前記左転舵輪の転舵角を示す左転舵指令値、および前記右転舵輪の転舵角を示す右転舵指令値を決定する転舵角決定部と、前記車両の目標経路を示す経路情報を取得する経路取得部と、走行中の前記車両の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき前記車両の挙動が目標挙動となるように前記左転舵指令値、および前記右転舵指令値をそれぞれ補正する挙動最適化部と、走行中の前記車両の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき前記車両が前記目標経路を走行するように前記操向指令値を補正する軌跡安定化部と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の1つである転舵装置は、上記制御装置と、前記左転舵輪を転舵する左アクチュエータを有する左転舵機構と、前記右転舵輪を転舵する右アクチュエータを有する右転舵機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の挙動の最適化を図るために左右の転舵輪を独立して制御し、かつ目標径路に合致するように車両を操向することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る転舵装置の全体的な構成を示す図である。
図2図2は、制御装置の機能的な構成を車両の各構成とともに示すブロック図である。
図3図2は、他の例に係る制御装置の機能的な構成を車両の各構成とともに示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置、および転舵装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0011】
まず、本発明の実施の形態に係る車両101用の転舵装置100の全体的な構成を説明する。図1は、実施の形態に係る転舵装置の全体的な構成を示すブロック図である。転舵装置100は、乗用車などの車両101に搭載される左転舵輪110、および右転舵輪120がリンクなどの機械要素により連結されず、左転舵輪110、および右転舵輪120を独立して転舵することができる装置である。本実施の形態の場合、転舵装置100は、操舵部材103の操舵により出力される信号に基づき左右の転舵輪を転舵することができるリンクレス・ステア・バイ・ワイヤシステムを構成している。転舵装置100は、運転者が操向のために操作する操舵部材としての操舵部材103と、走行方向において車両101の前方側に配置された左転舵輪110、および右転舵輪120と、左転舵輪110を個別に転舵する左転舵機構111と、右転舵輪120を個別に転舵するための右転舵機構121とを備える。
【0012】
左転舵機構111、および右転舵機構121はそれぞれ、操舵部材103の回転操作に応じて制御される左アクチュエータ112、および右アクチュエータ122を備える。本実施の形態の場合、左アクチュエータ112、および右アクチュエータ122は、電動モータである。
【0013】
左転舵機構111、および右転舵機構121はそれぞれ、左転舵輪110、および右転舵輪120を転舵させるための機構部である左転舵構造113、および右転舵構造123を有している。左転舵構造113、および右転舵構造123は、車体に対しサスペンションによって支持されている。左転舵構造113は、左アクチュエータ112から受ける回転駆動力により左転舵輪110を転舵させる。右転舵構造123は、右アクチュエータ122から受ける回転駆動力により右転舵輪120を転舵させる。
【0014】
さらに、転舵装置100は、操舵部材103の操舵角を検出する操舵角センサ131を備える。ここでは、操舵角センサ131は、操舵部材103の回転シャフトの回転角、および角速度を検出して操向指令値として出力する。また、転舵装置100は、左転舵輪110の転舵角を検出する左センサ114と、右転舵輪120の転舵角を検出する右センサ124とを備える。
【0015】
また、車両101には、車両101の速度Vを検出する車速センサ132、および慣性計測装置133が設けられている。慣性計測装置133は、例えばジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサ等を備えている。慣性計測装置133は、車両101の3軸方向の加速度、および角速度等を検出する。角速度の3軸方向の例は、ヨーイング、ピッチング、およびローリング方向である。慣性計測装置133は、例えばヨーイング方向の角速度(「ヨーレート」とも呼ぶ)を検出する。さらに、慣性計測装置133は、ピッチング、およびローリング方向の角速度を検出してもよい。
【0016】
また、車速センサ132、慣性計測装置133などは、状態量処理部130に接続されている。状態量処理部130は、各種センサからの情報をそれぞれ状態量として制御装置140に出力する。また、状態量処理部130は、各種センサからの情報を演算することにより、車両101の挙動を示す状態量を生成し制御装置140に出力する場合もある。
【0017】
また、転舵装置100は、制御装置140、および記憶装置105を備える。記憶装置105は、制御装置140と別に配置され、制御装置140と電気的に接続されていてもよく、制御装置140に含まれていてもよい。左転舵機構111は、左ECU115(ECU:Electronic Control Unit)を備え、右転舵機構121は、右ECU125を備える。制御装置140は、左ECU115、右ECU125、操舵角センサ131、車速センサ132、および慣性計測装置133と電気的に接続されている。左ECU115は、制御装置140、左センサ114、左アクチュエータ112、および右ECU125と電気的に接続されている。右ECU125は、制御装置140、右センサ124、右アクチュエータ122、および左ECU115と電気的に接続されている。制御装置140、左ECU115、右ECU125、左アクチュエータ112、右アクチュエータ122、状態量処理部130、および各センサ間の通信は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介した通信であってもよい。
【0018】
制御装置140は、操舵角センサ131、車速センサ132、慣性計測装置133、左ECU115、右ECU125から取得する情報に基づき、フィードバック制御を行い、適切な左転舵指令値、および右転舵指令値を左ECU115、および右ECU125にそれぞれ出力する。
【0019】
記憶装置105は、種々の情報を格納することができ、また格納した情報を取り出して出力することができる。記憶装置105は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスクドライブ、又はSSD等の記憶装置によって実現される。
【0020】
制御装置140、左ECU115、および右ECU125は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、およびメモリを備えるマイクロコンピュータにより構成されてもよい。メモリは、RAM等の揮発性メモリ、およびROM等の不揮発性メモリであってもよく、記憶装置105であってもよい。制御装置140、状態量処理部130、左ECU115、および右ECU125の一部又は全部の機能は、CPUがRAMを作業用のメモリとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって達成されてもよい。
【0021】
次いで、制御装置140の詳細を説明する。図2は、制御装置140の機能的な構成を示すブロック図である。制御装置140は、車両101の進行方向に対し左右に配置される左転舵輪110、および右転舵輪120のそれぞれの転舵角を独立して制御する装置であって、転舵角決定部141と、経路取得部142と、挙動最適化部143と、軌跡安定化部144と、を備えている。本実施の形態の場合、制御装置140は、優先度調整部145を備えている。車両101の車速制御は、アクセルペダルなどに取り付けられたペダルの踏み込み量を検出する踏込センサ134からの情報に基づき駆動制御部135がエンジン、モータ等を制御することにより実行される。
【0022】
転舵角決定部141は、車両101の操向方向を示す操向指令値に基づき左転舵輪110の転舵角を示す左転舵指令値、および右転舵輪120の転舵角を示す右転舵指令値を決定する。本実施の形態の場合、転舵角決定部141は、操舵部材103の回転シャフトの回転角を操向指令値として操舵角センサ131から取得し、所定の比率であるいわゆるオーバーオール・ステアリングギヤ比、およびアッカーマン・ジャントー理論による内輪転舵角と外輪転舵角に基づいて演算を行い左転舵指令値、および右転舵指令値を出力する。
【0023】
左ECU115は、取得した左転舵指令値に応じて左アクチュエータ112を駆動し左転舵輪110を転舵する。右ECU125は、取得した右転舵指令値に応じて右アクチュエータ122を駆動し右転舵輪120を転舵する。
【0024】
経路取得部142は、車両101の目標経路を示す経路情報を取得する。本実施の形態の場合、車両101は、操舵部材103の運転者による操舵のみに基づき操向するものであるため、経路取得部142は、操舵角センサ131からの情報を経路情報として取得する。なお、経路取得部142は、操舵角センサ131からの情報、例えば操舵部材103の回転角、角速度などに基づき演算を行って経路情報を生成してもよく、この場合も経路情報の取得に含まれる。さらに、車速を加えて経路情報を取得してもかまわない。
【0025】
挙動最適化部143は、走行中の車両101の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき車両101の挙動が目標挙動となるように左転舵指令値、および右転舵指令値をそれぞれ補正する。挙動最適化部143の目標挙動は特に限定されるものではないが、例えば、車両101が低速で走行している場合と高速で走行している場合に応じて微小に左右の転舵角を補正し、運転者の安心感、搭乗者の快適性の向上を目標にしてもよい。また、転舵輪によるエネルギーロスをできる限り抑制して車両101全体の燃費を向上させることを目標にしてもよく、転舵輪の転舵角によりタイヤ横力を制御し車両101の滑り角や旋回などの限界性能を向上させるなどを目標にしてもかまわない。
【0026】
挙動最適化部143が演算に用いる状態量とは、状態量処理部130から得られる情報であり、例えば車両101の車速センサ132、慣性計測装置133、左センサ114、右センサ124などから得られるヨーレート、車速、走行方向の加速度、左右方向の加速度、左転舵輪110の実転舵角、右転舵輪120の実転舵角などである。また、挙動最適化部143は、状態量処理部130が既知の理論による演算などにより各種センサから得られた情報に基づき生成した状態量を取得してもかまわない。例えば状態量処理部130は、車体滑り角、タイヤ滑り角、タイヤ垂直荷重などの状態量を推定し、挙動最適化部143は推定された状態量に基づき左右の転舵指令値を補正してもかまわない。
【0027】
軌跡安定化部144は、走行中の車両101の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき経路取得部142が取得した目標経路を車両101が走行するように操向指令値を補正する。挙動最適化部143により左右の転舵指令値が補正されると、左右の転舵輪の転舵角が個別に変化する。この変化に基づき発生するタイヤ横力の総和が変化し、カーブにおける車両101の走行軌跡(旋回軌跡)に変動が生じるため、軌跡安定化部144は、操向指令値を補正する。例えば軌跡安定化部144は、目標経路と状態量処理部130から得られる状態量とから、目標となるヨーレートを導出し目標ヨーレートを維持するように操向指令値を補正する。また、軌跡安定化部144は、目標経路と状態量から、目標となる旋回時の曲率(旋回半径の逆数)を導出し目標曲率を維持するように操向指令値を補正する。
【0028】
優先度調整部145は、走行中の車両101の挙動を示す複数の状態量の少なくとも1つに基づき車両101が所定状態にあると判断した場合に、挙動最適化部143の制御優先度に対する軌跡安定化部144の制御優先度を車両101が所定状態にない場合から変化させる。これにより、状態量処理部130から得られる状態量に基づき左転舵指令値、および右転舵指令値に対し個別にフィードバック補正を行う挙動最適化部143と、同じ状態量処理部130から得られる状態量に基づき左転舵指令値、および右転舵指令値を生成するための操向指令値に対しフィードバック補正を行う軌跡安定化部144との各制御の優先度を調整し、振動等のない滑らかな制御を実現することができる。
【0029】
優先度調整部145による優先度の調整は、例えば挙動最適化部143、および軌跡安定化部144の各時定数を変更することにより行う。具体的に例えば、優先度調整部145は、挙動最適化部143、および軌跡安定化部144の制御周期、および制御ゲインの少なくとも一方を調整することにより時定数に違いを持たせることができる。
【0030】
本実施の形態の場合、所定状態とは、車両101の限界状態時を想定している。優先度調整部145は、ヨーレートや車速などに基づき車両101が限界状態にあると判断した場合、挙動最適化部143の制御周期を通常走行時よりも短くして制御優先度を高め、軌跡安定化部144の制御周期を通常走行時よりも長くして制御優先度を低める。具体的に例えば、通常走行時における挙動最適化部143の制御周期に対する軌跡安定化部144の制御周期の比を限界状態時には逆転させるように、挙動最適化部143および軌跡安定化部144の制御周期の長さを変更する。あるいは、通常走行時における挙動最適化部143の制御周期に対する軌跡安定化部144の制御周期の比が限界状態時においても逆転しない範囲内で、挙動最適化部143の制御周期を通常走行時よりも短くし、軌跡安定化部144の制御周期を通常走行時よりも長くしてもよい。なお、制御周期ではなく制御ゲイン(例えばPID制御における各ゲインの少なくとも1つ)を調整してもよい。
【0031】
本実施の形態によれば、例えばタイヤ横力などの車両101の挙動を表す状態量に基づき、左右の転舵角を指示する左右の転舵指令値を個別に補正し、また、左右の転舵指令値を決定するための操向指令値も前記状態量に基づき補正するという2つのフィードバック制御を独立して実行している。従って、例えば車両101の挙動をエネルギーロスの少ない状態で維持しつつ、操舵部材103の操舵に対応して走行経路に沿って操向するいわゆるオンザレール感覚で車両101を操舵することが可能となる。
【0032】
また、急に路面の状態が変化するなど車両101が限界状態になった場合などに、挙動最適化部143と軌跡安定化部144との制御優先度を調整することにより、限界状態を超えることなく滑らかに車両101を制御することが可能となる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0034】
例えば、車両101は、操舵部材103による車両101の操向をアシストするアシストモード、操舵部材103によらない自動運転を行う自動運転モードなどを備えていてもかまわない。この場合、車両101は、図3に示すように、自動運転などを可能とする走行用センサ162と、走行用センサ162からの情報に基づき車両101の走行を制御、またはアシストする走行制御装置106を備えている。
【0035】
走行用センサ162は、車両101の自動走行に必要な情報を取得するセンサである。走行用センサ162は、特に限定されるものではなく、複数種類のセンサを含んでもかまわない。例えば、走行用センサ162としては、路面に設けられた白線などの目印の位置など走行経路を生成するための情報を取得するカメラ、地図情報における車両101の位置を取得するセンサ、前方の障害物を検知するレーダーなどを例示することができる。
【0036】
走行制御装置106は、走行用センサ162からの情報などに基づき車両101の走行を制御する。走行制御装置106は、車両101の目標車速を決定し目標車速に応じた車速指令値を駆動制御部135に出力する。また、走行制御装置106は、経路生成部161を備えている。経路生成部161は、地図情報や走行用センサ162からの情報に基づき車両101が走行するべき経路を生成し、経路情報として出力する。また、走行制御装置106は、車両101の現在位置、経路生成部161によって生成された経路情報などに基づき操向指令値を出力する。
【0037】
アシストモードや自動運転モードなどの場合、制御装置140の転舵角決定部141は、走行制御装置106が出力した操向指令値に基づき左転舵指令値、および右転舵指令値を生成する。挙動最適化部143は、アシストモードや自動運転モードなどに関わりなく、状態量に基づいて左転舵指令値、および右転舵指令値を補正する。経路取得部142は、経路生成部161から取得した経路情報に、走行制御装置106から出力される車速指令値を加えて経路情報を出力する。軌跡安定化部144は、取得した経路情報に基づき操向指令値を補正する。
【0038】
また、図3には、軌跡安定化部144と挙動最適化部143の優先度を相対的に調整する優先度調整部145は存在していない。このような場合、軌跡安定化部144、および挙動最適化部143の少なくとも一方が状態量に基づき優先度を調整してもかまわない。
【0039】
また、本発明の技術は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読取可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、および記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0040】
例えば、上記実施の形態に含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0041】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0042】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUなどのプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0043】
また、上記構成要素の一部又は全部は、脱着可能なIC(Integrated Circuit)カード又は単体のモジュールから構成されてもよい。ICカード又はモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。ICカード又はモジュールは、上記のLSI又はシステムLSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカード又はモジュールは、その機能を達成する。これらICカード、およびモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る技術は、各転舵輪を転舵させる機構が独立している転舵装置に有用である。
【符号の説明】
【0045】
100…転舵装置、101…車両、103…操舵部材、105…記憶装置、106…走行制御装置、110…左転舵輪、111…左転舵機構、112…左アクチュエータ、113…左転舵構造、114…左センサ、120…右転舵輪、121…右転舵機構、122…右アクチュエータ、123…右転舵構造、124…右センサ、130…状態量処理部、131…操舵角センサ、132…車速センサ、133…慣性計測装置、134…踏込センサ、135…駆動制御部、140…制御装置、141…転舵角決定部、142…経路取得部、143…挙動最適化部、144…軌跡安定化部、145…優先度調整部、161…経路生成部、162…走行用センサ
図1
図2
図3