(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】荷方向制御システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20230411BHJP
B66C 1/34 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B66C13/08 M
B66C1/34 D
(21)【出願番号】P 2019112413
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 瑞生
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-95977(JP,U)
【文献】特開平8-119573(JP,A)
【文献】特開2006-152922(JP,A)
【文献】特開2017-150378(JP,A)
【文献】特開平5-132283(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115292(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備え、
前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を運搬するクレーンの荷方向制御システムであって、
前記荷物の方向を指示する操作具と、
前記ブームから前記荷物の間に配置される垂直軸型風車装置と、を具備し、
前記垂直軸型風車装置は、自然風を受けると前記操作具の操作態様に応じた方向に回転するロータを有しており、前記ロータの回転動力によって前記荷物を回転させる、ことを特徴とした荷方向制御システム。
【請求項2】
前記ロータは、前記操作具の操作態様に応じた方向に回動するブレードを有しており、前記ブレードのピッチ角度に基づいて回転方向が切り換わる、ことを特徴とした請求項1に記載の荷方向制御システム。
【請求項3】
前記ロータの回転動力を前記荷物に伝達又は遮断するクラッチ機構を有している、ことを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の荷方向制御システム。
【請求項4】
前記垂直軸型風車装置のフックの回転を止めるブレーキ機構を有している、ことを特徴とした請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の荷方向制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷方向制御システムに関する。
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている。クレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、自走可能としている。旋回体は、ブームのほかにワイヤロープやフックを備え、荷物を吊り下げた状態でこれを搬送可能としている。
【0003】
ところで、荷物が建築物を構成する鋼材などである場合、荷物を適切な位置に適切な方向で設置しなければ取り付けることができない。そのため、荷物に括り付けたロープを引張って荷物を回転させ、方向を調節する作業を行うことがある(特許文献1参照)。しかし、ロープを引張って荷物を回転させる作業は、特に高所で行う場合に危険であるし、搬送効率の向上を考える上で障害になってしまうという問題があった。また、搬送途中で荷物が回転すると、荷物が周囲の建築物などに衝突してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フックに吊り下げられた荷物の方向を調節できる荷方向制御システムを提供する。具体的には、搬送効率の向上を実現でき、かつ荷物が周囲の建築物などに衝突するのを防ぐ荷方向制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、
ブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備え、
前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を運搬するクレーンの荷方向制御システムであって、
前記荷物の方向を指示する操作具と、
前記ブームから前記荷物の間に配置される垂直軸型風車装置と、を具備し、
前記垂直軸型風車装置は、自然風を受けると前記操作具の操作態様に応じた方向に回転するロータを有しており、前記ロータの回転動力によって前記荷物を回転させる、ものである。
【0007】
第二の発明は、第一の発明に係る荷方向制御システムにおいて、
前記ロータは、前記操作具の操作態様に応じた方向に回動するブレードを有しており、前記ブレードのピッチ角度に基づいて回転方向が切り換わる、ものである。
【0008】
第三の発明は、第一又は第二の発明に係る荷方向制御システムにおいて、
前記ロータの回転動力を前記荷物に伝達又は遮断するクラッチ機構を有している、ものである。
【0009】
第四の発明は、第一から第三のいずれかの発明に係る荷方向制御システムにおいて、
前記垂直軸型風車装置のフックの回転を止めるブレーキ機構を有している、ものである。
【発明の効果】
【0010】
第一の発明に係る荷方向制御システムは、荷物の方向を指示する操作具と、ブームから荷物の間に配置される垂直軸型風車装置と、を具備している。そして、垂直軸型風車装置は、自然風を受けると操作具の操作態様に応じた方向に回転するロータを有しており、ロータの回転動力によって荷物を回転させる。かかる荷方向制御システムによれば、フックに吊り下げられた荷物の方向を調節できる。具体的には、ロープを引張って荷物を回転させる作業が不要となるので、搬送効率の向上を実現できる。また、搬送途中においても荷物の方向を調節できるので、荷物が周囲の建築物などに衝突するのを防ぐことが可能となる。
【0011】
第二の発明に係る荷方向制御システムにおいて、ロータは、操作具の操作態様に応じた方向に回動するブレードを有しており、ブレードのピッチ角度に基づいて回転方向が切り換わる。かかる荷方向制御システムによれば、いずれかの方向に荷物を回転させて荷物の方向を調節できる。
【0012】
第三の発明に係る荷方向制御システムにおいては、ロータの回転動力を荷物に伝達又は遮断するクラッチ機構を有している。かかる荷方向制御システムによれば、ロータの回転動力を伝達又は遮断することにより荷物の方向を調節できる。
【0013】
第四の発明に係る荷方向制御システムにおいては、垂直軸型風車装置のフックの回転を止めるブレーキ機構を有している。かかる荷方向制御システムによれば、フックの回転を止めることにより荷物の方向を調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願に開示する技術的思想は、以下に説明する実施形態のほか、他の実施形態にも適用できる。
【0016】
まず、
図1及び
図2を用いて、クレーン1について説明する。
【0017】
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0018】
走行体2は、左右一対の前輪21と後輪22を備えている。また、走行体2は、荷物Lの運搬作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ23を備えている。なお、走行体2は、アクチュエータによって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
【0019】
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム31を備えている。そのため、ブーム31は、アクチュエータによって旋回自在となっている(矢印A参照)。また、ブーム31は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印B参照)。更に、ブーム31は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印C参照)。
【0020】
加えて、ブーム31には、ワイヤロープ32が架け渡されている。ブーム31の先端部分から垂下するワイヤロープ32には、フック33が取り付けられている。また、ブーム31の基端側近傍には、ウインチ34が配置されている。ウインチ34は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤロープ32の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック33は、昇降自在となっている(矢印D参照)。なお、旋回体3は、ブーム31の側方にキャビン35を備えている。キャビン35の内部には、旋回レバー51や伸縮レバー52、起伏レバー53、巻回レバー54などが設けられている。
【0021】
次に、
図3及び
図4を用いて、第一実施形態に係る垂直軸型風車装置4について説明する。
【0022】
垂直軸型風車装置4は、フック33に吊り下げられる(
図7参照)。垂直軸型風車装置4は、主にロータ41とリンク機構42とクラッチ機構43とブレーキ機構44で構成されている。また、垂直軸型風車装置4は、その下端部分にフック45を備えている。
【0023】
ロータ41は、上部フレーム41aと下部フレーム41bを備えている。上部フレーム41aと下部フレーム41bは、その中心を貫くセンタシャフト41cによって回転自在に支持されている。また、ロータ41は、四枚のブレード41dを備えている。それぞれのブレード41dは、径方向に膨らんだ翼断面となっており、上部フレーム41aと下部フレーム41bによって回動自在に支持されている。ブレード41dは、フラップなどを備えて揚力を調節するものであってもよい。
【0024】
リンク機構42は、フランジ42aを備えている。フランジ42aは、その中心からややズレた位置を貫くセンタシャフト41cによって回転自在に支持されている。また、リンク機構42は、四本のロッド42bを備えている。それぞれのロッド42bは、その基端部分がフランジ42aに対して回動自在に連結されており、その先端部分がブレード41dに対して回動自在に連結されている。そのため、フランジ42aの位相に応じてそれぞれのブレード41dのピッチ角度が自在に変わるのである。
【0025】
このような構造により、例えばセンタシャフト41cに対してフランジ42aをある位相とした場合は、フランジ42aの偏心側でブレード41dが俯角(回転方向に対して前縁部が下向きとなる角度)となり、フランジ42aの反偏心側でブレード41dが仰角(回転方向に対して前縁部が上向きとなる角度)となる。従って、フランジ42aを自然風Wの下流側へ偏心する位相とした場合は、上方から見てロータ41が左側へ回転することとなる(
図4の(A)参照)。反対に、フランジ42aを自然風Wの上流側へ偏心する位相とした場合は、上方から見てロータ41が右側へ回転することとなる(
図4の(B)参照)。なお、フランジ42aの位相は、アクチュエータによって自在に調節できるように構成されている。
【0026】
また、クラッチ機構43は、二つの摩擦盤43a・43bを備えている。摩擦盤43aは、センタシャフト41c側に連結されており、摩擦盤43bは、フック45のヘッドブロック45c側に連結されている。また、クラッチ機構43は、二つの摩擦盤43a・43bが連結又は分離自在に構成されている。従って、二つの摩擦盤43a・43bが連結するとロータ41の回転動力を伝達することとなる。反対に、二つの摩擦盤43a・43bが分離するとロータ41の回転動力を遮断することとなる。なお、摩擦盤43a・43bの連結又は分離は、アクチュエータによって自在に調節できるように構成されている。
【0027】
更に、ブレーキ機構44は、二つの摩擦盤44aと回転盤44bを備えている。摩擦盤44bは、互いに近接又は離間可能に支持されており、回転盤44bは、フック45のヘッドブロック45cと一体となっている。また、ブレーキ機構44は、二つの摩擦盤44aが回転盤44bを把持又は解放自在に構成されている。従って、二つの摩擦盤44aが回転盤44bを把持するとフック45の回転を止めることとなる。反対に、二つの摩擦盤44aが回転盤44bを解放するとフック45の回転を自由にすることとなる。なお、摩擦盤44aによる回転盤44bの把持又は解放は、アクチュエータによって自在に調節できるように構成されている。
【0028】
次に、
図5又は
図6を用いて、第一実施形態に係る荷方向制御システム5の構成について説明する。
【0029】
荷方向制御システム5は、クレーン1に搭載されたコントローラ(以降「第一コントローラ6」とする)を含んでいる。
【0030】
第一コントローラ6は、情報記憶部6aを有している。情報記憶部6aは、クレーン1の制御に要する様々なプログラムが記憶されている。
【0031】
また、第一コントローラ6は、電波送信部6bを有している。電波送信部6bは、後述する第二コントローラ7へ様々な情報を送信する。例えば後述する回転ダイヤル55の操作態様に基づいて変換された電波信号などである。
【0032】
更に、第一コントローラ6は、演算処理部6cを有している。演算処理部6cは、各種レバー51~54の操作態様に基づいて電気信号に変換し、アクチュエータを稼動させる各種バルブ61~64へ送信する。こうして、第一コントローラ6は、各種レバー51~54の操作態様に応じたブーム31の稼動(旋回動作・伸縮動作・起伏動作)及びウインチ34の稼動(巻入動作・巻出動作)を実現する。
【0033】
詳しく説明すると、クレーン1のブーム31は、アクチュエータによって旋回自在となっている(
図1における矢印A参照)。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用モーター36と定義する(
図1参照)。旋回用モーター36は、方向制御弁である旋回用バルブ61によって適宜に稼動される。なお、旋回用バルブ61は、第一コントローラ6の指示に基づいて稼動される。ブーム31の旋回角度や旋回速度は、図示されていないセンサによって検出される。
【0034】
また、クレーン1のブーム31は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(
図1における矢印B参照)。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用シリンダ37と定義する(
図1参照)。伸縮用シリンダ37は、方向制御弁である伸縮用バルブ62によって適宜に稼動される。なお、伸縮用バルブ62は、第一コントローラ6の指示に基づいて稼動される。ブーム31の伸縮長さや伸縮速度は、図示されていないセンサによって検出される。
【0035】
更に、クレーン1のブーム31は、アクチュエータによって起伏自在となっている(
図1における矢印C参照)。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用シリンダ38と定義する(
図1参照)。起伏用シリンダ38は、方向制御弁である起伏用バルブ63によって適宜に稼動される。なお、起伏用バルブ63は、第一コントローラ6の指示に基づいて稼動される。ブーム31の起伏角度や起伏速度は、図示されていないセンサによって検出される。
【0036】
更に、クレーン1のフック33は、アクチュエータによって昇降自在となっている(
図1における矢印D参照)。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用モーター39と定義する(
図1参照)。巻回用モーター39は、方向制御弁である巻回用バルブ64によって適宜に稼動される。なお、巻回用バルブ64は、第一コントローラ6の指示に基づいて稼動される。フック33の吊下長さや昇降速度は、図示されていないセンサによって検出される。
【0037】
加えて、荷方向制御システム5は、垂直軸型風車装置4に搭載されたコントローラ(以降「第二コントローラ7」とする)を含んでいる。
【0038】
第二コントローラ7は、情報記憶部7aを有している。情報記憶部7aは、垂直軸型風車装置4の制御に要する様々なプログラムが記憶されている。
【0039】
また、第二コントローラ7は、電波受信部7bを有している。電波受信部7bは、前述した第一コントローラ6から様々な情報を受信する。例えば後述する回転ダイヤル55の操作態様に基づいて変換された電波信号などである。
【0040】
更に、第二コントローラ7は、演算処理部7cを有している。演算処理部7cは、回転ダイヤル55の操作態様に基づいて電気信号に変換し、アクチュエータを稼動させる各種ドライバ71・72・73へ送信する。こうして、第二コントローラ7は、回転ダイヤル55の操作態様に応じたロータ41の稼動(上方から見て左側への回転・上方から見て右側への回転)及びクラッチ機構43の稼動(ロータ41の回転動力の伝達・ロータ41の回転動力の遮断)及びブレーキ機構44の稼動(フック45の回転の停止)を実現する。
【0041】
詳しく説明すると、垂直軸型風車装置4のリンク機構42は、そのフランジ42aの位相がアクチュエータによって調節自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータをステッピングモーター46と定義する(
図3参照)。ステッピングモーター46は、電気の流れを制御するモータドライバ71によって適宜に稼動される。なお、モータドライバ71は、第二コントローラ7の指示に基づいて稼動される。
【0042】
また、垂直軸型風車装置4のクラッチ機構43は、その摩擦盤43a・43bの連結又は分離がアクチュエータによって調節自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータをリニアソレノイド47と定義する(
図3参照)。リニアソレノイド47は、電気の流れを制御するクラッチドライバ72によって適宜に稼動される。なお、クラッチドライバ72は、第二コントローラ7の指示に基づいて稼動される。
【0043】
更に、垂直軸型風車装置4のブレーキ機構44は、その摩擦盤44aによる回転盤44bの把持又は解放がアクチュエータによって調節自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータをリニアソレノイド48と定義する(
図3参照)。リニアソレノイド48は、電気の流れを制御するブレーキドライバ73によって適宜に稼動される。なお、ブレーキドライバ73は、第二コントローラ7の指示に基づいて稼動される。
【0044】
更に加えて、荷方向制御システム5は、クレーン1の操作具として回転ダイヤル55を含んでいる。また、荷方向制御システム5は、クレーン1に設けられたカメラ56とディスプレイ66を含んでいる。
【0045】
回転ダイヤル55は、フック45に吊り下げられた荷物Lの方向を指示するものである。回転ダイヤル55は、キャビン35の内部における運転座席の近傍に配置されている(
図2参照)。なお、回転ダイヤル55は、第一コントローラ6に接続されている。そのため、第一コントローラ6は、回転ダイヤル55の操作態様に基づいて荷物Lをどのくらい回転させるべきか認識することができる。また、第二コントローラ7も、第一コントローラ6からの情報を受けて同じく認識することができる。
【0046】
カメラ56は、フック45に吊り下げられた荷物Lを撮影するものである。カメラ56は、フック45に吊り下げられた荷物Lを真上から撮影すべく、ブーム31の先端部分に取り付けられている(
図1参照)。なお、カメラ56は、第一コントローラ6に接続されている。そのため、第一コントローラ6は、荷物Lの方向(方位に対する角度)を把握することができる。
【0047】
ディスプレイ66は、カメラ56が撮影した画像を映し出すものである。ディスプレイ66は、オペレータが各種レバー51~54や回転ダイヤル55を操作しながら視認できるよう、キャビン35の内部における運転座席の前側に配置されている(
図2参照)。なお、ディスプレイ66は、第一コントローラ6に接続されている。そのため、第一コントローラ6は、ディスプレイ66を通じ、オペレータへ情報を提供することができる。
【0048】
次に、
図4から
図6を用いて、第一実施形態に係る荷方向制御システム5の機能について説明する。
【0049】
上方から見て左側に荷物Lを回転させて荷物Lの方向を調節したい場合、オペレータは、回転ダイヤル55を摘まんで左側に回す。このとき、オペレータは、所望の回転角度だけ回す必要がある。例えば荷物Lを20度だけ回転させたいときは20度だけ回す必要がある。
【0050】
すると、第二コントローラ7は、モータドライバ71へ電気信号を送信し、モータドライバ71がステッピングモーター46を適宜に稼動させる。これにより、フランジ42aの位相が調節されるので、ロータ41が上方から見て左側に回転するようになる(
図4の(A)参照)。また、第二コントローラ7は、クラッチドライバ72へ電気信号を送信し、クラッチドライバ72がリニアソレノイド47を適宜に稼動させる。これにより、クラッチ機構43の摩擦盤43a・43bが連結するので、ロータ41の回転動力がフック45に伝達するようになる。こうして、フック45に吊り下げられた荷物Lが左側に回転するのである(
図6における矢印R参照)。
【0051】
その後、荷物Lの回転を止める際には、第二コントローラ7がクラッチドライバ72及びブレーキドライバ73へ電気信号を送信する。つまり、第二コントローラ7は、クラッチドライバ72へ電気信号を送信し、クラッチ機構43の摩擦盤43a・43bを分離させる。同時に、第二コントローラ7は、ブレーキドライバ73へ電気信号を送信し、ブレーキ機構44の摩擦盤44aで回転盤44bの把持を行う。こうすることで、荷物Lを所望の方向で止めることができるのである。
【0052】
他方、上方から見て右側に荷物Lを回転させて荷物Lの方向を調節したい場合、オペレータは、回転ダイヤル55を摘まんで右側に回す。このとき、オペレータは、所望の回転角度だけ回す必要がある。例えば荷物Lを20度だけ回転させたいときは20度だけ回す必要がある。
【0053】
すると、第二コントローラ7は、モータドライバ71へ電気信号を送信し、モータドライバ71がステッピングモーター46を適宜に稼動させる。これにより、フランジ42aの位相が調節されるので、ロータ41が上方から見て右側に回転するようになる(
図4の(B)参照)。また、第二コントローラ7は、クラッチドライバ72へ電気信号を送信し、クラッチドライバ72がリニアソレノイド47を適宜に稼動させる。これにより、クラッチ機構43の摩擦盤43a・43bが連結するので、ロータ41の回転動力がフック45に伝達するようになる。こうして、フック45に吊り下げられた荷物Lが右側に回転するのである(
図6における矢印Rの反対向きとなる)。
【0054】
その後、荷物Lの回転を止める際には、第二コントローラ7がクラッチドライバ72及びブレーキドライバ73へ電気信号を送信する。つまり、第二コントローラ7は、クラッチドライバ72へ電気信号を送信し、クラッチ機構43の摩擦盤43a・43bを分離させる。同時に、第二コントローラ7は、ブレーキドライバ73へ電気信号を送信し、ブレーキ機構44の摩擦盤44aで回転盤44bの把持を行う。こうすることで、荷物Lを所望の方向で止めることができるのである。
【0055】
ところで、このような荷方向制御システム5の機能について端的に説明すれば、オペレータが荷物Lの方向を調節できるということである。そうすると、荷物Lの方向を積極的に調節することで、例えば建築物と建築物の狭い隙間を縫うように荷物Lを搬送することも可能となる。少なくとも搬送途中においても荷物Lの方向を調節できるので、荷物Lが周囲の建築物などに衝突するのを防ぐことが可能となる。
【0056】
以上のように、荷方向制御システム5は、荷物Lの方向を指示する操作具(回転ダイヤル55)と、ブーム31から荷物Lの間に配置される垂直軸型風車装置4と、を具備している。そして、垂直軸型風車装置4は、自然風を受けると操作具(55)の操作態様に応じた方向に回転するロータ41を有しており、ロータ41の回転動力によって荷物Lを回転させる。かかる荷方向制御システム5によれば、フック33(実際はフック45)に吊り下げられた荷物Lの方向を調節できる。具体的には、ロープを引張って荷物Lを回転させる作業が不要となるので、搬送効率の向上を実現できる。また、搬送途中においても荷物Lの方向を調節できるので、荷物Lが周囲の建築物などに衝突するのを防ぐことが可能となる。
【0057】
加えて、本荷方向制御システム5において、ロータ41は、操作具(55)の操作態様に応じた方向に回動するブレード41dを有しており、ブレード41dのピッチ角度に基づいて回転方向が切り換わる。かかる荷方向制御システム5によれば、いずれかの方向に荷物Lを回転させて荷物Lの方向を調節できる。
【0058】
加えて、本荷方向制御システム5においては、ロータ41の回転動力を荷物Lに伝達又は遮断するクラッチ機構43を有している。かかる荷方向制御システム5によれば、ロータ41の回転動力を伝達又は遮断することにより荷物Lの方向を調節できる。
【0059】
加えて、本荷方向制御システム5においては、垂直軸型風車装置4のフック45の回転を止めるブレーキ機構44を有している。かかる荷方向制御システム5によれば、フック45の回転を止めることにより荷物Lの方向を調節できる。
【0060】
次に、
図8を用いて、遠隔操縦装置100について説明する。但し、遠隔操縦装置100は、遠隔操縦装置の一例であり、これに限定するものではない。
【0061】
遠隔操縦装置100には、旋回スティック151や伸縮スティック152、起伏スティック153、巻回スティック154が設けられている。また、遠隔操縦装置100には、回転ダイヤル155が設けられている。更に、遠隔操縦装置100には、ディスプレイ166が設けられている。
【0062】
クレーン1は、オペレータが各種スティック151~154を操作すると、上述した各種レバー51~54を操作したときと同様に稼動する。また、垂直軸型風車装置4は、オペレータが回転ダイヤル155を操作すると、上述した回転ダイヤル55を操作したときと同様に稼動する。このとき、ディスプレイ166には、カメラ56による画像が映し出される。従って、かかる遠隔操縦装置100を用いても、本願に開示する技術的思想を実現できる。
【符号の説明】
【0063】
1 クレーン
2 走行体
3 旋回体
31 ブーム
32 ワイヤロープ
33 フック
4 垂直軸型風車装置
41 ロータ
42 リンク機構
43 クラッチ機構
44 ブレーキ機構
45 フック
5 荷方向制御システム
55 操作具(回転ダイヤル)
6 コントローラ(第一コントローラ)
7 コントローラ(第二コントローラ)
L 荷物
W 自然風