(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/02 20060101AFI20230411BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230411BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20230411BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02G11/02
H02G3/04
B60R16/027 Z
H01B13/012
(21)【出願番号】P 2019126701
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 真実
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】古畑 名穂子
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-119114(JP,U)
【文献】実開昭60-109212(JP,U)
【文献】特開2015-110352(JP,A)
【文献】特開2017-210125(JP,A)
【文献】特開2010-172116(JP,A)
【文献】特開2010-148281(JP,A)
【文献】特開平10-205590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/02
H02G 3/04
B60R 16/027
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に収容されるワイヤーハーネスと、を備えたワイヤーハーネス配索装置であって、
前記ケースの内部には軸部が設けられており、前記ワイヤーハーネスは前記軸部を中心にして巻回されており、
前記ワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線と、前記電線を保護する保護部材と、を有し、
前記保護部材は前記電線が挿通される挿通路を有し、
前記挿通路は、シート状をなすベースシートと、前記ベースシートに重なるシート状をなすカバーシートとの間に形成されており、
前記保護部材は、前記挿通路の両側縁で前記ベースシートと前記カバーシートとが接合された接合部を有
しており、
前記ベースシートおよび前記カバーシートは織布であり、
前記ベースシートおよび前記カバーシートは、縦糸の延びる方向および横糸の延びる方向が、前記ベースシートおよび前記カバーシートの長手方向と交差する方向に延びるように裁断された状態になっているワイヤーハーネス配索装置。
【請求項2】
1つの前記挿通路には1本の前記電線が挿通されている請求項1に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項3】
前記保護部材は、前記ベースシートと前記カバーシートとを前記接合部で縫い付けている縫糸を有する
請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項4】
ケースと、前記ケース内に収容されるワイヤーハーネスと、を備えたワイヤーハーネス配索装置であって、
前記ケースの内部には軸部が設けられており、前記ワイヤーハーネスは前記軸部を中心にして巻回されており、
前記ワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線と、前記電線を保護する保護部材と、を有し、
前記保護部材は前記電線が挿通される挿通路を有し、
前記挿通路は、シート状をなすベースシートと、前記ベースシートに重なるシート状をなすカバーシートとの間に形成されており、
前記保護部材は、前記挿通路の両側縁で前記ベースシートと前記カバーシートとが接合された接合部を有
しており、
前記挿通路は、前記ベースシートおよび前記カバーシートの一方をたわませて長手方向に延びる溝状にした状態で、前記接合部において前記ベースシートと前記カバーシートとが接合されることにより形成されるワイヤーハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネス配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーハーネス配索装置として特開2012-105446号公報に記載のものが知られている。このワイヤーハーネス配索装置は、例えば自動車のスライドシートに用いられている。ワイヤーハーネス配索装置は、ハーネスと、レールにスライド自在に取り付けられ開口部からレール内に引き込まれたハーネスを保持してスリットから導出するプロテクタと、開口部からレール外に引き出されたハーネスをU字状に折り返すガイド溝が設けられた折り返し部と、折り返されたハーネスの余長部分を収容する収容部とを備えている。ハーネスは、複数本の電線と、これら電線を収容したコルゲートチューブと、で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によれば、プロテクタがレールに沿って移動すると、プロテクタの開口部から引き出されたハーネスの余長部分は、収容部内において屈曲した状態で収容される。
【0005】
上記の構成によると、ハーネスはコルゲートチューブに収容されているので、スライドシートの移動量が大きい場合にはハーネスの余長部分も長くなり、このためにコルゲートチューブも長くなる。すると、屈曲されたコルゲートチューブが収容されるスペースも大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化されたワイヤーハーネス配索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ケースと、前記ケース内に収容されるワイヤーハーネスと、を備えたワイヤーハーネス配索装置であって、前記ケースの内部には軸部が設けられており、前記ワイヤーハーネスは前記軸部を中心にして巻回されており、前記ワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線と、前記電線を保護する保護部材と、を有し、前記保護部材は前記電線が挿通される挿通路を有し、前記挿通路は、シート状をなすベースシートと、前記ベースシートに重なるシート状をなすカバーシートとの間に形成されており、前記保護部材は、前記挿通路の両側縁で前記ベースシートと前記カバーシートとが接合された接合部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイヤーハーネス配索装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかるワイヤーハーネス配索装置と、シートと、回転台と、ベース部とを組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、回転台にワイヤーハーネス配索装置が取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ワイヤーハーネスを示す平面図である。
【
図6】
図6は、ワイヤーハーネスを示す底面図である。
【
図7】
図7は、ワイヤーハーネスがシート側固定部の周りをほぼ1周した状態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、ワイヤーハーネスがシート側固定部の周りをほぼ2周した状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態2にかかるワイヤーハーネスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0011】
(1)本開示は、ケースと、前記ケース内に収容されるワイヤーハーネスと、を備えたワイヤーハーネス配索装置であって、前記ケースの内部には軸部が設けられており、前記ワイヤーハーネスは前記軸部を中心にして巻回されており、前記ワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線と、前記電線を保護する保護部材と、を有し、前記保護部材は前記電線が挿通される挿通路を有し、前記挿通路は、シート状をなすベースシートと、前記ベースシートに重なるシート状をなすカバーシートとの間に形成されており、前記保護部材は、前記挿通路の両側縁で前記ベースシートと前記カバーシートとが接合された接合部を有する。
【0012】
保護部材はベースシートとカバーシートとが重なって形成されているので、コルゲートチューブに比べて薄く形成できる。これにより軸部に巻き付けられたワイヤーハーネスの外径を小さくすることができるので、ケースの小型化が可能となり、ワイヤーハーネス配索装置を小型化できる。
【0013】
筒状をなす挿通路の内部に電線が挿通されるので、挿通路の内部で挿通路の延びる方向に沿って電線が容易に移動することができる。これにより、ワイヤーハーネスが軸部に巻き付けきやすくなるので、ケースの小型化が可能となり、ワイヤーハーネス配索装置をさらに小型化できる。
【0014】
(2)1つの前記挿通路には1本の前記電線が挿通されていることが好ましい。
【0015】
1つの挿通路に1本の電線が挿通されることにより、電線が挿通路内を移動しやすくなる。これによりワイヤーハーネスが屈曲しやすくなるので、軸部に巻き付けられたワイヤーハーネスの外径を小さくすることが可能となり、ワイヤーハーネス配索装置をさらに小型化できる。
【0016】
(3)前記ベースシートおよび前記カバーシートは織布または不織布であることが好ましい。
【0017】
織布または不織布は内部に多数の空孔を有するので、ベースシートおよびカバーシートを中実な部材で構成する場合に比べてワイヤーハーネスを軽量化できる。これにより、ワイヤーハーネス配索装置を軽量化できる。
【0018】
(4)前記保護部材は、前記ベースシートと前記カバーシートとを前記接合部で縫い付けている縫糸を有することが好ましい。
【0019】
ベースシートとカバーシートとを接合する際に、ミシンを用いることができるので、ワイヤーハーネス配索装置の製造効率を向上させることができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について
図1から
図8を参照して説明する。本実施形態は、
図1に示されるように、自動車等の車両(図示せず)に設けられたベース部90とシートSとの間に配索されるワイヤーハーネス20を有するワイヤーハーネス配索装置10を例示している。なお、以下の説明において、前後方向とは、各図における矢印方向を基準とし、F側を前側、R側を後側として説明する。
【0022】
[シートS]
シートSは、例えば、車両の運転席として用いられるものであって、
図1に示されるように、車両の床部に固定された金属製の一対のレールRに対して前後方向にスライド可能なベース部90に固定されている。
【0023】
[ベース部90]
ベース部90は、
図1に示されるように、略円形枠型状をなすベース本体92と、ベース本体92の両端部から左右方向に僅かに突出して下方に延びる一対の脚部94とを有している。一対の脚部94は、一対のレールRに対して前後方向にスライド可能に組み付けられており、ベース本体92の上面には、回転台80が固定されている。
【0024】
[回転第80]
回転台80は金属製であって、ベース本体92に固定されるベース側台座82と、ベース側台座82に回転可能に支持されたシート側台座84とを有している。ベース側台座82は扁平な環状に形成されており、ベース本体92に対してボルト締結等によって固定されている。
【0025】
シート側台座84は、ベース側台座82より一回り小さい扁平な環状に形成されており、シートSの底部にボルト締結等によって固定されるようになっている。また、シート側台座84は、ベアリングを介してベース側台座82の内側に組み付けられており、ベース側台座82の軸心を中心にベース側台座82に対して回転可能とされている。したがって、ベース部90に対してシートSが回転可能となっている。
【0026】
本実施形態では、ベース側台座82とシート側台座84とはベアリングによって互いに回転可能とされている。しかしながら、公知の方法、例えば、ベース側台座に環状のレール溝を設け、シート側台座にレール溝内を摺動可能なスライダを設けることでベース側台座とシート側台座とが互いに回転可能となってもよい。
【0027】
また、ベース側台座82とシート側台座84との間には、図示しないストッパが設けられており、このストッパによって、ベース側台座82とシート側台座84とは一回転以上回転できないようになっている。
【0028】
[ワイヤーハーネス配索装置10]
ワイヤーハーネス配索装置10は、
図2に示されるように、ワイヤーハーネス20と、ワイヤーハーネス20を収容するケース40と、を備えて構成される。ワイヤーハーネス20の一端は、ベース側固定部材30によってベース部90に固定されている。
【0029】
[ワイヤーハーネス20]
ワイヤーハーネス20は、一方の端部はベース部90に向かって配索されたベース側端部20Aとされ、車両のECU(Electronic Control Unit)等の図示しない機器に接続されている。本実施形態のベース部90に向かって配索されたワイヤーハーネス20は、詳細には図示しないが、例えば、ベース部90からマットやパネル等の下の床上や床下に配索されている。
【0030】
一方、ワイヤーハーネス20の他方の端部はシート側端部20Bとされ、例えば、シートSに取り付けられた電動スライドや電動リクライニング用のモータ、シートヒータなど、シート側の任意の図示しない電装品に接続されている。そして、このワイヤーハーネス20によって車両側の機器とシートSの電装品との間の給電や信号の送受信が行われるようになっている。
【0031】
また、ワイヤーハーネス20は、
図3に示されるように、複数(本実施形態は7本)の電線22と、これらの電線22が挿通される保護部材24とを備えて構成されている。各電線22は、導電性に優れた金属からなる芯線を合成樹脂製の絶縁被覆で被覆したものであり、各電線22のシート側の端部がシートS内に配されて各電装品に接続されている。
【0032】
[保護部材24]
図4に示されるように、保護部材24はシート状に形成されている。本実施形態では、保護部材24は細長く延びた長方形状をなしている。保護部材24は、ベースシート25と、ベースシート25に重なるカバーシート26とを備える。ベースシート25とカバーシート26はシート状に形成されている。
【0033】
ベースシート25およびカバーシート26は、中実なシートとされてもよく、不織布であってもよく、織布であってもよい。ベースシート25とカバーシート26の双方が中実なシートであってもよい。また、ベースシート25とカバーシート26の一方が中実なシートであり、他方が織布または不織布であってもよい。本実施形態では、ベースシート25およびカバーシート26の双方が不織布とされる。
【0034】
ベースシート25およびカバーシート26を構成する材料は特に限定されず、例えば、VC(polyvinyl chloride),PE(polyethylene),PP(polypropylene),PBT(polybutyleneterephtalate),PET(polyethyleneterephtalate)等、任意の合成樹脂から適宜に選択してもよい。
【0035】
ベースシート25が不織布である場合には、繊維シート、ウェブ(繊維だけで構成された薄い膜状のシート)、又はバット(毛布状の繊維)であってもよい。
【0036】
ベースシート25およびカバーシート26が織布である場合には、上記した合成樹脂からなる合成繊維を用いてもよく、また、木綿、麻、絹等の天然繊維を用いてもよく、合成繊維と天然繊維の双方を用いてもよい。
【0037】
ベースシート25およびカバーシート26が織布である場合には、ベースシート25およびカバーシート26は、縦糸の延びる方向および横糸の延びる方向が、ベースシート25およびカバーシート26の長手方向と交差する方向に延びるように裁断された、いわゆるバイアスカットされた状態になっていてもよい。これにより、ベースシート25およびカバーシート26が長手方向に伸縮しやすくなるので、保護部材24が屈曲した状態で、保護部材24に挿通された電線に力が加わることが抑制される。これにより、後述する挿通路27内に挿通された電線がさらに容易に動きやすくなる。この結果、ワイヤーハーネス20が屈曲しやすくなるので、後述するシート側固定部44(軸部の一例)に巻き付けられたワイヤーハーネス20の外径を小さくすることが可能となり、ワイヤーハーネス配索装置をさらに小型化できる。
【0038】
図4に示されるように、保護部材24は複数(本実施形態では7つ)の挿通路27を有する。挿通路27は、ベースシート25とカバーシート26と重なった状態で、ベースシート25およびカバーシート26の間に、ベースシート25とカバーシート26の長手方向に延びる筒状に形成されている。挿通路27の両側縁には、ベースシート25とカバーシート26とが接合された接合部28が形成されている(
図5参照)。
【0039】
隣り合う挿通路27の間隔は特に限定されず、等間隔であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数の挿通路27が狭い間隔で並んでいてもよいし、広く離れた間隔で並んでいてもよい。
【0040】
接合部28におけるベースシート25とカバーシート26との接合手段は特に限定されない。ベースシート25とカバーシート26とは、例えば縫糸によって縫合されてもよく、接着剤によって接着されていてもよい。ベースシート25とカバーシート26とが合成樹脂からなる場合には熱融着されていてもよい。また、ベースシート25とカバーシート26とは、リベット止め、ハトメ等により接合されてもよい。1つの保護部材24において、複数の手法によりベースシート25とカバーシート26とが接合されていてもよい。本実施形態においては、ベースシート25とカバ―シートとは縫糸29によって縫合されている(
図3、
図6参照)。
【0041】
縫糸29を構成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド等の合成繊維でもよく、また、木綿、麻、絹等の天然繊維でもよい。本実施形態では合成繊維からなる縫糸29が用いられている。
【0042】
挿通路27は、ベースシート25およびカバーシート26の一方または双方をたわませて長手方向に延びる溝状にした状態で、接合部28においてベースシート25とカバーシート26とが接合されることにより形成される。本実施形態では、カバーシート26が撓むことにより挿通路27が形成されている。
【0043】
1つの挿通路27には1本の電線が挿通されている。挿通路27の内形状は電線の外形状と同じか、やや大きく形成されている。電線22は、挿通路27内に、保護部材24の長手方向に沿って移動可能に挿通されている。
【0044】
上記したように、電線22は、挿通路27内で保護部材24の長手方向に沿って移動可能に挿通されているので、保護部材24がベースシート25のシート面と交差する方向について屈曲した場合でも、電線22が移動することにより、電線22に対して保護部材24から加わる力を低減させることができる。これにより、保護部材24は、ベースシート25のシート面と交差する方向に容易に屈曲するようになっている。
【0045】
[ベース側固定部材30]
ベース側固定部材30は、合成樹脂製であって、
図1に示されるように、ワイヤーハーネス20のベース側端部20Aを保持した状態でベース部90に対して固定されるものであって、保護部材24のベース部90側の端部を保持する外装体保持部31と、保護部材24から引き出される複数の電線22をガイドするガイド筒部32と、ガイド筒部32から引き出される複数の電線22が挿通される保護部材24を保持する保護部材保持部33と、ガイド筒部32をベース部90に固定する固定片34とを備えて構成されている。
【0046】
外装体保持部31は、ワイヤーハーネス20の保護部材24の端部を外側から保持固定している
【0047】
ガイド筒部32は、
図7に示されるように、外装体保持部31に連なる円筒状に形成されており、ガイド筒部32の内部には、保護部材24から引き出された複数の電線22が挿通可能とされている。ガイド筒部32は、外装体保持部31の端部から外装体保持部31の延び方向と同一方向に真っ直ぐ延びる第1筒状部32Aと、第1筒状部32Aの先端部から下方に向けて延びる第2筒状部32Bと、第2筒状部32Bの下端部からさらに外装体保持部31の延び方向と同一方向に真っ直ぐ延びる第3筒状部32Cと、第3筒状部32Cの先端部から屈曲して延びる第4筒状部32Dとを有した形態とされており、第4筒状部32Dの上部に固定片34が連設され、第4筒状部32Dの先端に保護部材保持部33が連設されている。
【0048】
固定片34は、板状をなしており、固定片34の上面には、ベース部90のベース本体92に対して板厚方向に嵌合可能な円筒部34Aが設けられている。円筒部34Aをベース本体92に嵌合させると共に、固定片34とベース本体92とをボルト締結等によって固定することでベース本体92にベース側固定部材30が固定されている。すなわち、ワイヤーハーネス20のベース側端部20Aはベース側固定部材30を介してベース部90に固定された状態となっている。
【0049】
[ケース40]
ケース40は、合成樹脂製であって、
図7に示されるように、平面視円形状に形成されている。ケース40は、外径寸法が回転台80のシート側台座84の内径寸法よりもやや小さく設定されており、回転台80のシート側台座84の径方向内側に配置可能とされている。
【0050】
また、ケース40は、
図7に示されるように、ワイヤーハーネス20を内部に収容する収容部40Aを有しており、この収容部40Aの高さ寸法が回転台80の高さ寸法よりも僅かに大きく設定されている。つまり、ケース40においてワイヤーハーネス20を収容する収容部40Aは、回転台80の径方向内側の位置にぼぼ収容された状態となっている。
【0051】
ケース40の外周面には、外方に向かって突出する複数(本実施形態では6つ)の取付片77が等間隔に設けられている。各取付片77の突出端部には、凹状のねじ凹部78が設けられており、このねじ凹部78にねじを挿通して回転台80のシート側台座84に締め込むことでケース40がシート側台座84に固定されるようになっている。
【0052】
したがって、ケース40が回転台80に固定されると、シート側台座84の内周面にケース40が沿って配された状態となり、
図7に示されるように、360度の範囲を、ケース40が回転台80の回転軸を中心にシートSの回転に伴って回転するようになっている。
【0053】
また、ケース40は、
図2に示されるように、ロアケース41と、ロアケース41に上方から組み付けられるアッパケース70とを備えており、ロアケース41にアッパケース70を上方から組み付けることで、ロアケース41とアッパケース70とによって収容部40Aが構成されるようになっている。
【0054】
ロアケース41は、外形形状が平面視円形状をなす平板状の底板部42と、底板部42上に設けられたシート側固定部44(軸部の一例)とを有している。
【0055】
底板部42上には、ベース側固定部材30の外装体保持部31から引き出されたワイヤーハーネス20が載置可能とされている。また、ベース側固定部材30がベース部90に固定された状態で、ケース40が回転台80に固定されると、ワイヤーハーネス20のベース側端部20Aを保持するベース側固定部材30の外装体保持部31およびガイド筒部32の第1筒状部32Aが、底板部42から上方に僅かに浮いた状態で配置されるようになっている。
【0056】
そして、ベース側固定部材30のガイド筒部32における第2筒状部32Bは、底板部42の外周縁よりも外側の位置において底板部42よりも下方まで延びた状態となり、ケース40がシートSに合わせて回転すると、第2筒状部32Bが底板部42の外周を360度の範囲で相対的に回転移動するようになっている。
【0057】
シート側固定部44は、底板部42から上方に突出する突出部46と、突出部46の上面からさらに上方に立設する立設壁50とを有している。突出部46は、上方から見ると底板部42の中央において丸みを帯びた形態に形成されており、突出部46の中央には突出部46を上下方向に貫通する貫通孔46Aが設けられている。
【0058】
突出部46は、底板部42上に立設する突出側壁47と、突出側壁47の上端部から底板部42の中央に向かって水平方向に延びる突出上壁48とを有しており、貫通孔46Aは突出上壁48に丸孔状に設けられている。
【0059】
突出上壁48は、貫通孔46Aの開口縁に沿うように開口縁の一部に略環状に形成されており、突出上壁48の右側端部は径方向外側に向かって張り出す張出部49とされている。
【0060】
突出側壁47は、突出上壁48の外周縁と底板部42とを上下方向に繋いだ形態とされており、底板部42の中央部において底板部42の軸心に沿うような曲面とされている。したがって、貫通孔46Aの開口縁において突出上壁48が設けられていない部分は、突出側壁47が形成されていない状態となっている。
【0061】
立設壁50は、突出部46と同様に、貫通孔46Aの開口縁に沿うように開口縁の一部に略環状に形成されており、立設壁50が形成された部分は、貫通孔46Aにおいて突出部46と同様の部分とされている。
【0062】
立設壁50は、上下方向の高さ寸法が高い高立設壁51と、高立設壁51よりも高さ寸法が低い低立設壁52とを有しており、低立設壁52は、高立設壁51の両側に配されている。
【0063】
各低立設壁52には、上下に延びるスリットが設けられることで径方向内側に向かって弾性変形可能な弾性片53が設けられており、各弾性片53には外方に突出する係止突起54が設けられている。
【0064】
立設壁50において高立設壁51と対向する部分は、突出側壁47と同様に、立設壁50が形成されていない状態となっている。
【0065】
つまり、立設壁50が形成されていない部分と、突出部46において突出側壁47が形成されていない部分とは、シート側固定部44において上下方向に並んだ位置とされており、立設壁50および突出側壁47がない部分は、突出側壁47および立設壁50によって囲まれた内側部分と突出側壁47および立設壁50の外側部分とを連通するためのハーネス挿通口55とされている。
【0066】
突出側壁47および立設壁50によって囲まれた底板部42の中央部分には、底板部42上に載置されたワイヤーハーネス20がハーネス挿通口55を通して引き込まれており、ハーネス挿通口55を通じて引き込まれたワイヤーハーネス20は、高立設壁51に沿うように上方に屈曲されてシートS側である上方に向かって案内されている。
【0067】
高立設壁51には、壁厚方向に貫通する一対のバンド挿通孔(図示せず)が設けられており、一対のバンド挿通孔に結束バンドBを挿通して高立設壁51と共にワイヤーハーネス20の保護部材24を結束することでワイヤーハーネス20のシート側端部20Bが底板部42の中央部分に固定されている。言い換えると、シート側固定部44において、ワイヤーハーネス20のシート側端部20Bがケース40の回転中心の近傍に固定されている。
【0068】
そして、シート側固定部44に固定されたワイヤーハーネス20は、
図7に示されるように、ハーネス挿通口55から底板部42上に引き出された後、シート側固定部44を少なくとも一周以上囲むように配されて、ベース側端部20Aがベース側固定部材30に保持された状態となる。なお、
図7では、ワイヤーハーネス20の配置状態を分かりやすくするに、後述するアッパケース70の天板71を図示省略している。
【0069】
ワイヤーハーネス20はシート側固定部44を中心にして巻回されている。ワイヤーハーネス20はシート側固定部44に密着して巻き付いていてもよく、また、シート側固定部44の周囲に間隔を空けて緩やかに巻回されていてもよい。
【0070】
ワイヤーハーネス20は、ベースシート25またはカバーシート26のシート面が底板部42に対して交差する姿勢でケース40内に配されている。ワイヤーハーネス20は、シート側固定部44を中心にして曲がっている複数の電線22の反力により、底板部42に対して自立できるようになっている。
【0071】
ケース40が、
図7に示される向きとなった状態では、ワイヤーハーネス20は、シート側固定部44から右斜め前方に引き出された後、後方に向かって折り返され、その後、シート側固定部44を緩やかに1周に亘って囲むように配置される。
【0072】
そして、ケース40を左回りR1に向けて回転させると、
図8に示されるように、ワイヤーハーネス20がシート側固定部44に巻き取られる。すると、ワイヤーハーネス20は、シート側固定部44から右方に引き出された後、後方に向かって曲げられ、その後、シート側固定部44の突出部46における突出側壁47に接触した状態でシート側固定部44を約2周に亘って囲むように配置される。
【0073】
一方、
図8に示されるように、時計回りである右回りR2に向けて回転させると、
図7に示されるように、シート側固定部44に巻き取ったワイヤーハーネス20がシート側固定部44から解けた状態となって、シート側固定部44の周りをほぼ1周した状態に配置される。
【0074】
次に、アッパケース70について説明する。アッパケース70は、
図2に示されるように、円形平板状をなす天板71と、天板71に設けられた円形側壁72と、天板71の上面に設けられたロック壁部75とを備えて構成されている。
【0075】
天板71は、ロアケース41の底板部42の外径寸法よりもやや大きい外径寸法とされており、天板71の中央には、板厚方向である上下方向に貫通する挿通孔74が設けられている。
【0076】
挿通孔74は、アッパケース70をロアケース41に対して上方から組み付けた際に、ロアケース41のシート側固定部44における立設壁50が下方から挿通されるようになっている。
【0077】
挿通孔74の開口縁の一部には、ロック壁部75が設けられている。ロック壁部75は円弧状をなし、アッパケース70をロアケース41に組み付けると、立設壁50の外周にロック壁部75が沿って配されるようになっている。また、挿通孔74の開口縁においてロック壁部75が形成されていない部分は、挿通孔74が扇状に拡幅されている。ロック壁部75の内周面における立設壁50の弾性片53と対応する位置には、被係止部76が設けられており、アッパケース70をロアケース41に組み付けると、弾性片53の係止突起54と被係止部76とが上下方向に係止することで、アッパケース70がロアケース41に組み付けられた状態に保持されるようになっている。
【0078】
天板71の外周縁には、円形側壁72が連なって形成されている。円形側壁72は、天板71の外周縁から下方に延びた形態とされており、円形側壁72の外面に複数の取付片77が等間隔に設けられている。
【0079】
円形側壁72の上下方向の高さ寸法は、
図2に示されるように、ロアケース41の突出部46の高さ寸法よりも僅かに大きく設定されている。円形側壁72は、ロアケース41とアッパケース70とが組み付けられると、天板71と共にロアケース41の底板部42に配されたワイヤーハーネス20を覆った状態となり、天板71と円形側壁72と底板部42とによってワイヤーハーネス20を収容する収容部40Aを構成する。
【0080】
また、円形側壁72の下端部には、円形側壁72の下端部から径方向内側に僅かに突出したハーネス受部79が設けられている。
【0081】
ハーネス受部79は、ロアケース41とアッパケース70とが組み付けられると、ロアケース41の底板部42の外周縁と全周に亘って対向した状態となり、ロアケース41の底板部42の外周縁との間に隙間Cを構成する。ハーネス受部79と底板部42の外周縁と間の隙間寸法は、ベース側固定部材30のガイド筒部32における第2筒状部32Bの外径寸法よりもやや大きく設定されており、ベース側固定部材30がベース部90に固定されると共に、ケース40が回転台80に固定されると、第2筒状部32Bが、ハーネス受部79と底板部42の外周縁と間の隙間Cに配されるようになっている。
【0082】
また、ハーネス受部79は、
図2に示されるように、円形側壁72の内周面にワイヤーハーネス20が配された際に、ワイヤーハーネス20を下方から支持するようになっている。つまり、例えば、ワイヤーハーネス20の反力などによってワイヤーハーネス20が円形側壁72の内周面に沿って配される際に、ハーネス受部79によってワイヤーハーネス20が下方から支持されるから、ワイヤーハーネス20の保護部材24が隙間Cからケース40が外側に引き出されることを防ぐことができるようになっている。
【0083】
[本実施形態の作用効果]
続いて本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、ケース40と、ケース40内に収容されるワイヤーハーネス20と、を備えたワイヤーハーネス配索装置10であって、ケース40の内部にはシート側固定部44が設けられており、ワイヤーハーネス20はシート側固定部44を中心として巻回されており、ワイヤーハーネス20は、少なくとも1本の電線22と、電線22を保護する保護部材24と、を有し、保護部材24は電線22が挿通される挿通路27を有し、挿通路27は、シート状をなすベースシート25と、ベースシート25に重なるシート状をなすカバーシート26との間に形成されており、保護部材24は、挿通路27の両側縁でベースシート25とカバーシート26とが接合された接合部28を有する。
【0084】
保護部材24はベースシート25とカバーシート26とが重なって形成されているので、コルゲートチューブに比べて薄く形成できる。これによりシート側固定部44を中心に巻回されたワイヤーハーネス20の外径を小さくすることができるので、ケースの小型化が可能となり、ワイヤーハーネス配索装置を小型化できる。
【0085】
筒状をなす挿通路27の内部に電線22が挿通されるので、挿通路27の内部で挿通路27の延びる方向に沿って電線22が容易に移動することができる。これにより、ワイヤーハーネス20がシート側固定部44に巻き付けきやすくなるので、ケース40の小型化が可能となり、ワイヤーハーネス配索装置10をさらに小型化できる。
【0086】
本実施形態によれば、1つの挿通路27には1本の電線22が挿通されている。
【0087】
1つの挿通路27に1本の電線22が挿通されることにより、電線22が挿通路27内を移動しやすくなる。これによりワイヤーハーネス20が屈曲しやすくなるので、シート側固定部44に巻き付けられたワイヤーハーネス20の外径を小さくすることが可能となり、ワイヤーハーネス配索装置10をさらに小型化できる。
【0088】
本実施形態によれば、ベースシート25およびカバーシート26は不織布である。
【0089】
不織布は内部に多数の空孔を有するので、ベースシート25およびカバーシート26を中実な部材で構成する場合に比べてワイヤーハーネス20を軽量化できる。これにより、ワイヤーハーネス配索装置10を軽量化できる。
【0090】
本実施形態によれば、保護部材24は、ベースシート25とカバーシート26とを接合部28で縫い付けている縫糸29を有する。
【0091】
ベースシート25とカバーシート26とを接合する際に、ミシンを用いることができるので、ワイヤーハーネス配索装置10の製造効率を向上させることができる。
【0092】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2が
図9を参照しつつ説明される。本実施形態にかかるワイヤーハーネス100においては、保護部材101には複数の挿通路102が設けられている。1つの挿通路102には、2本の電線103が挿通されている。2本の電線103は、互いに撚り合わされたツイストペア電線であってもよいし、それぞれ独立した2本の電線103であってもよい。電線103は、導電性の金属からなる芯線104と、芯線104の外周を覆う絶縁被覆105と、を有する。絶縁被覆105は絶縁性の合成樹脂からなる。
【0093】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0094】
2本の電線103がツイストペア電線である場合には、2本の電線103を近接して配置できるのでノイズ性能を向上させることができる。
【0095】
2本の電線103がそれぞれ独立した電線103である場合には、ワイヤーハーネス100における電線103の配線密度を高くすることができる。
【0096】
<他の実施形態>
(1)実施形態1においては、ワイヤーハーネス配索装置10を回転シートに適用したが、これに限られず、ワイヤーハーネス配索装置10をスライドシートに適用してもよく、任意の装置のワイヤーハーネス配索装置に適用してもよい。
【0097】
(2)実施形態1においては1つの保護部材に7つの挿通路27が設けられていたが、これに限られず、1つの保護部材24に、1つから6つ、または、7つ以上の挿通路27が形成されていてもよい。
【0098】
(3)1つの挿通路に3本以上の電線22が挿通されてもよい。
【0099】
(4)実施形態1では、ワイヤーハーネス20が右巻きに巻き取られる構成とした。しかしながら、これに限らず、ワイヤーハーネス20が左巻きに巻き取られる構成にしてもよい。
【0100】
(5)本実施形態においては、保護部材は、ベースシートと、このベースシートとは別体のカバーシートとが重なって構成される構成としたが、これに限られず、1枚のシートを折り返して重ね、重ねられた一方をベースシートとし他方をカバーシートとしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10: ワイヤーハーネス配索装置
20,100: ワイヤーハーネス
20A: ベース側端部
20B: シート側端部
22,103: 電線
24,101: 保護部材
25: ベースシート
26: カバーシート
27,102: 挿通路
28: 接合部
29: 縫糸
30: ベース側固定部材
31: 外装体保持部
32: ガイド筒部
32A: 第1筒状部
32B: 第2筒状部
32C: 第3筒状部
32D: 第4筒状部
33: 保護部材保持部
34: 固定片
34A: 円筒部
40: ケース
40A: 収容部
41: ロアケース
42: 底板部
44: シート側固定部
46: 突出部
46A: 貫通孔
47: 突出側壁
48: 突出上壁
49: 張出部
50: 立設壁
51: 高立設壁
52: 低立設壁
53: 弾性片
54: 係止突起
55: ハーネス挿通口
70: アッパケース
71: 天板
72: 円形側壁
74: 挿通孔
75: ロック壁部
76: 被係止部
77: 取付片
78: ねじ凹部
79: ハーネス受部
80: 回転台
82: ベース側台座
84: シート側台座
90: ベース部
92: ベース本体
94: 脚部
104: 芯線
105: 絶縁被覆