(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230411BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20230411BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230411BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230411BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/40 307A
H02G3/04
C09J201/00
C09J201/06
(21)【出願番号】P 2019138107
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-306244(JP,A)
【文献】特開2005-281535(JP,A)
【文献】特開2006-199851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/40
H02G 3/04
C09J 201/00
C09J 201/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆層とを有する線状伝送部材と、
表面に無機物層を有する被着体と、
前記被覆層と前記無機物層との間に介在して前記被覆層及び前記無機物層に接着している接着剤と、
を備え、
前記接着剤は、分子構造中に樹脂側官能基及び無機物側官能基を含む化合物を含有し、
前記樹脂側官能基が前記被覆層を構成する樹脂と化学結合し、
前記無機物側官能基が前記無機物層を構成する無機物と化学結合して
おり、
前記無機物は金属であり、
前記無機物側官能基はキレート基である、配線部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の配線部材であって、
前記樹脂は、ポリ塩化ビニルであり、
前記樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基である、配線部材。
【請求項3】
請求項
1に記載の配線部材であって、
前記樹脂は、ポリオレフィンであり、
前記樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基である、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記化合物は分子鎖に前記樹脂側官能基及び前記無機物側官能基がそれぞれ複数結合したポリマーである、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記被着体はシート状部材であり、
前記線状伝送部材が前記シート状部材における前記無機物層の主面上に配設されている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、線状伝送部材が車両搭載部品に接着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線状伝送部材と表面が金属などの無機物層である被着体とが良好に接着されることが望まれている。
【0005】
そこで、線状伝送部材と表面が金属などの無機物層である被着体とが良好に接着される技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆層とを有する線状伝送部材と、表面に無機物層を有する被着体と、前記被覆層と前記無機物層との間に介在して前記被覆層及び前記無機物層に接着している接着剤と、を備え、前記接着剤は、分子構造中に樹脂側官能基及び無機物側官能基を含む化合物を含有し、前記樹脂側官能基が前記被覆層を構成する樹脂と化学結合し、前記無機物側官能基が前記無機物層を構成する無機物と化学結合している、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材と表面が金属などの無機物層である被着体とが良好に接着される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態にかかる配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆層とを有する線状伝送部材と、表面に無機物層を有する被着体と、前記被覆層と前記無機物層との間に介在して前記被覆層及び前記無機物層に接着している接着剤と、を備え、前記接着剤は、分子構造中に樹脂側官能基及び無機物側官能基を含む化合物を含有し、前記樹脂側官能基が前記被覆層を構成する樹脂と化学結合し、前記無機物側官能基が前記無機物層を構成する無機物と化学結合している、配線部材である。樹脂側官能基が被覆層を構成する樹脂と化学結合し、無機物側官能基が無機物層を構成する無機物と化学結合していることによって、電線と被着体とが良好に接着される。
【0012】
(2)前記無機物側官能基は、アルコキシ基であり、前記化合物は、分子構造中に前記アルコキシ基と前記樹脂側官能基とをつなぐケイ素をさらに含んでもよい。これにより、接着剤が無機物層に良好に接着される。
【0013】
(3)前記無機物は金属であり、前記無機物側官能基はキレート基であってもよい。これにより、金属とキレート基とがキレート錯体を形成しつつ化学結合することによって、接着剤が金属製の無機物層に良好に接着される。
【0014】
(4)前記樹脂は、ポリ塩化ビニルであり、前記樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。これにより、接着剤がポリ塩化ビニル製の被覆層に良好に接着される。
【0015】
(5)前記樹脂は、ポリオレフィンであり、前記樹脂側官能基は、アミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。これにより、接着剤がポリオレフィン製の被覆層に良好に接着される。
【0016】
(6)前記化合物は分子鎖に前記樹脂側官能基及び前記無機物側官能基がそれぞれ複数結合したポリマーであってもよい。これにより、一の化合物における官能基の数が多くなることによって、接着性の向上が図られる。
【0017】
(7)前記被着体はシート状部材であり、前記線状伝送部材が前記シート状部材における前記無機物層の主面上に配設されていてもよい。これにより、シート状部材における無機物層に線状伝送部材が良好に接着される。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材10について説明する。
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す断面図である。
図2は
図1の領域A1における模式図である。
図2は接着剤40に含まれる化合物が被覆層24及び無機物層32と化学結合している様子を示す模式図である。
【0020】
配線部材10は、線状伝送部材20と被着体30と接着剤40とを備える。配線部材10は、例えば車両に搭載される。配線部材10は、車両における電気部品などをつなぐ配線として用いられる。
【0021】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。線状伝送部材20は、伝送線本体22と被覆層24とを有する。伝送線本体22は、電気又は光を伝送する。被覆層24は、伝送線本体22を覆う。被覆層24のうち最外層は樹脂層である。例えば、線状伝送部材20は、電線であってもよい。電線は、伝送線本体22としての芯線と、被覆層24としての絶縁層とを含む。芯線は、金属等の導電部材によって形成された線状導体である。絶縁層は、芯線の周囲を覆う絶縁部分である。例えば、線状伝送部材20は、電線の他、シールド線、ツイスト線、エナメル線、光ファイバ等であってもよい。
【0022】
被着体30は、表面に無機物層32を有する。ここでは、かかる無機物層32が金属層であるものとして説明される。無機物層32は、例えば、ガラス層などであってもよい。被着体30には線状伝送部材20が固定される。
【0023】
ここでは被着体30はシート状部材30であるものとして説明される。被着体30は、例えばパネルなどであってもよい。シート状部材30における一方主面が金属層32とされる。なお、シート状部材30は、金属層32のみを含む単層構造を有していてもよい。またシート状部材30は、金属層32に別の層が積層された複層構造を有していてもよい。金属層32に積層される層は、金属層32とは別種の金属を材料とした金属層であってもよいし、樹脂層であってもよい。
【0024】
複数の線状伝送部材20がシート状部材30における金属層32の主面上に配設されている。これにより、配線部材10は扁平配線部材10とされる。例えば複数の線状伝送部材20は、シート状部材30上において車両における経路に沿った状態に配線されているとよい。例えば、複数の線状伝送部材20は、シート状部材30上において曲がって配設されていてもよい。また例えば、複数の線状伝送部材20は、接続先となる各電気部品の位置に応じて分岐していてもよい。この場合、シート状部材30上に分岐部分が固定されていてもよい。またシート状部材30上において複数の線状伝送部材20が複数層積層されていてもよい。またシート状部材30上において複数の線状伝送部材20が交差していてもよい。
【0025】
各線状伝送部材20の端部はコネクタ等を介して電気部品等に接続される。線状伝送部材20の端部はシート状部材30から外方に延出していてもよい。またシート状部材30上にコネクタ等が設けられていてもよい。
【0026】
接着剤40は、被覆層24と無機物層32との間に介在する。
図1に示す例では、接着剤40は、無機物層32の表面全体に設けられているが、このことは必須の構成ではない。接着剤40は、被覆層24と無機物層32との間に設けられていれば、無機物層32の表面の一部に設けられていてもよい。例えば、接着剤40は、被覆層24及び無機物層32に接着している。かかる接着剤40の主成分は、特に限定されるものではない。接着剤40の主成分は、エポキシ樹脂、シリコーン、変性シリコーン、アクリル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂などであってもよい。接着剤40は、以下の化合物C1(式(1)の化合物)を含有している。
【0027】
【0028】
ただし、式(1)中におけるUは樹脂側官能基である。式(1)中におけるVは任意の分子鎖である。式(1)中におけるWは無機物側官能基である。つまり、化合物C1は、分子構造中に、樹脂側官能基U及び無機物側官能基Wを両方含む化合物である。
【0029】
樹脂側官能基Uが被覆層24を構成する樹脂と化学結合している。無機物側官能基Wが無機物層32を構成する無機物(ここでは金属層32を構成する金属)と化学結合している。樹脂側官能基Uと被覆層24を構成する樹脂との化学結合、及び無機物側官能基Wと無機物層32を構成する無機物との化学結合の種類は特に限定されるものではない。また樹脂側官能基Uと被覆層24を構成する樹脂との化学結合、及び無機物側官能基Wと無機物層32を構成する無機物との化学結合の種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、各化学結合の種類は、共有結合、イオン結合、及びファンデルワールス力からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化学結合であってもよい。
【0030】
無機物側官能基Wは、アルコキシ基であってもよい。アルコキシ基の種類は、特に限定されるものではない。例えば、アルコキシ基として、メトキシ基、又はエトキシ基などであってもよい。また一の原子に結合するアルコキシ基の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つであってもよい。つまり、アルコキシ基は、モノアルコキシ基であってもよいし、ジアルコキシ基(ジメトキシ基、ジエトキシ基など)であってもよいし、トリアルコキシ基(トリメトキシ基、トリエトキシ基など)であってもよい。
【0031】
化合物C1は、分子構造中にアルコキシ基と樹脂側官能基Uとをつなぐケイ素をさらに含んでもよい。化合物C1は、ケイ素にアルコキシ基が結合しているものであってもよい。ケイ素にアルコキシ基が結合した化合物C1は、以下の化合物C2(式(2)の化合物)のような化合物である。化合物C2は、シランカップリング剤などとも呼ばれる。
【0032】
【0033】
ただし、式(2)中におけるRはメチル基、エチル基などのアルキル基などである。式(2)中におけるR1は、任意の分子鎖である。例えばR1は、炭素数が1から3のアルキル鎖などであってもよい。
【0034】
化合物C2におけるアルコキシ基は、例えば以下のように金属などの無機物と化学結合する。すなわち化合物C2におけるアルコキシ基は、加水分解されてヒドロキシル基とされる。このときアルキル基Rは、アルコール(メタノール又はエタノールなど)となって排出される。このヒドロキシル基が無機物表面のヒドロキシル基と化学反応(脱水縮合)する。1つの化合物C2においてケイ素に結合する3つのアルコキシ基のうち1つのアルコキシ基が無機物と化学反応し、他のアルコキシ基は、他の化合物C2におけるアルコキシ基と化学反応(脱水縮合)することもある。つまり、複数の化合物C2が縮合重合することもある。例えば、2つの化合物C2が縮合重合し、かつ1つの化合物C2が無機物と縮合反応した反応物は、以下の化合物C3(式(3)の化合物)となる。もちろん、3つ以上の化合物C2が縮合重合することもあり得る。なお
図2は、3つ以上の化合物C2が縮合重合して、被覆層24と無機物層32とに接着している様子を示す模式図である。
図2におけるU‘は、U-R
1部分が被覆層24と結合した部分である。
【0035】
【0036】
ただし式(3)中におけるMは金属などの無機物である。
【0037】
被覆層24を構成する樹脂は、ポリ塩化ビニルであってもよい。この場合、樹脂側官能基Uは、アミノ基、チオール基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。例えば、アミノ基、チオール基とポリ塩化ビニルとの間にハロゲン置換反応が生じる。
【0038】
樹脂側官能基Uがアミノ基である化合物C2と、ポリ塩化ビニルとの反応物は以下の化合物C4(式(4)の化合物)となる。
【0039】
【0040】
樹脂側官能基Uがチオール基である化合物C2とポリ塩化ビニルとの反応物は以下の化合物C5(式(5)の化合物)となる。
【0041】
【0042】
また被覆層24を構成する樹脂がポリオレフィンであってもよい。この場合、樹脂側官能基Uがアミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基とポリオレフィンとの間に、二重結合への付加反応が生じる。
【0043】
樹脂側官能基Uがビニル基である化合物C2と、ポリオレフィンとの反応物は以下の化合物C6(式(6)の化合物)となる。
【0044】
【0045】
樹脂側官能基Uがメタクリル基である化合物C2と、ポリオレフィンとの反応物は以下の化合物C7(式(7)の化合物)となる。
【0046】
【0047】
以上のように構成された配線部材10によると、化合物C1における樹脂側官能基Uが被覆層24を構成する樹脂と化学結合し、無機物側官能基Wが無機物層32を構成する無機物と化学結合していることによって、線状伝送部材20と被着体30とを良好に接着させることができる。
【0048】
また無機物側官能基Wはアルコキシ基であり、化合物C1は分子構造中にアルコキシ基と樹脂側官能基Uとをつなぐケイ素をさらに含むため、接着剤40が無機物層32に良好に接着される。
【0049】
また被覆層24を構成する樹脂がポリ塩化ビニルであり、樹脂側官能基Uがアミノ基、チオール基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であると、接着剤40がポリ塩化ビニル製の被覆層24に良好に接着される。
【0050】
また被覆層24を構成する樹脂がポリオレフィンであり、樹脂側官能基Uがアミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であると、接着剤40がポリオレフィン製の被覆層24に良好に接着される。
【0051】
また被着体30はシート状部材30であり、線状伝送部材20がシート状部材30における無機物層32の主面上に配設されているため、シート状部材30における無機物層32に線状伝送部材20が良好に接着される。また線状伝送部材20が電線であり、無機物層32が金属層32であると、金属層32を介して電線の熱が放熱されやすくなる。これにより、配線部材10における放熱性が高められる。
【0052】
[変形例]
化合物C1は分子鎖に樹脂側官能基U及び無機物側官能基Wがそれぞれ複数結合したポリマーであってもよい。かかる分子鎖はアルキル鎖、シロキサン鎖などであってもよい。
【0053】
分子鎖がアルキル鎖である化合物C1は、以下の化合物C8(式(8)の化合物)のような化合物である。
【0054】
【0055】
ただし、式(8)中におけるxは、1から3のうちいずれかの整数である。
【0056】
分子鎖がシロキサン鎖である化合物C1は、以下の化合物C9(式(9)の化合物)のような化合物である。
【0057】
【0058】
化合物C1が分子鎖に樹脂側官能基U及び無機物側官能基Wがそれぞれ複数結合したポリマーであると、一の化合物C1における官能基の数が多くなることによって、被覆層24及び無機物層32への接着性の向上が図られる。また化合物C1が分子鎖に樹脂側官能基U及び無機物側官能基Wがそれぞれ複数結合したポリマーであると、揮発性が低くなりやすい。
【0059】
また化合物C2は、予めアルコキシ基が加水分解されてヒドロキシル基とされたシラノールの状態のシランカップリング剤であってもよい。この場合、使用時にアルコールが生じることを抑制できる。これにより、揮発性有機化合物の低減を図ることができる。
【0060】
実施形態において、無機物側官能基Wがアルコキシ基であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。無機物側官能基Wはキレート基であってもよい。この場合、無機物は、金属であるとよい。キレート基と金属とは、キレート錯体を形成しつつ化学結合する。これにより、接着剤40が金属製の無機物層32に良好に接着される。
【0061】
かかるキレート基は、特に限定されるものではない。例えば、キレート基は、ポリリン酸、アミノカルボン酸、1,3-ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、スルホン酸、ヒドロキシエチリデンスルホン酸の群から選ばれる1種又は2種以上のキレート基であってもよい。
【0062】
無機物側官能基Wがキレート基である化合物において、樹脂側官能基Uは、特に限定されるものではない。例えば、樹脂側官能基Uは、アミノ基、チオール基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及びエポキシ基からなる群より選択された1種または2種以上の官能基であってもよい。
【0063】
樹脂側官能基Uがアミノ基又はチオール基であり、無機物側官能基Wがキレート基である化合物は例えば、以下のように製造される。
【0064】
まずキレート基を有する化合物C10(式(10)の化合物)、及び樹脂側官能基Uを有する化合物C11(式(11)の化合物)が用意される。
【0065】
【0066】
【0067】
ただし、式(11)中におけるAは、保護基である。
【0068】
次に、化合物C10と化合物C11とが反応されて化合物C12(式(12)の化合物)が得られる。
【0069】
【0070】
そして、化合物C12が脱保護反応されることによって、樹脂側官能基Uがアミノ基又はチオール基であり、無機物側官能基Wがキレート基である化合物を得ることができる。
【0071】
なお、樹脂側官能基Uがビニル基、アクリル基又はメタクリル基である場合、化合物C11において保護基Aを有しなくてもよい。つまり保護基Aを有しない化合物が化合物C10と反応されることによって、化合物C12を介さずに樹脂側官能基Uがビニル基、アクリル基又はメタクリル基であり、無機物側官能基Wがキレート基である化合物が得られる。
【0072】
また樹脂側官能基Uがエポキシ基であり、無機物側官能基Wがキレート基である化合物は例えば、以下のように製造される。
【0073】
まずキレート基を有する化合物C13(式(13)の化合物)、及び樹脂側官能基Uを有する化合物C14(式(14)の化合物)が用意される。
【0074】
【0075】
【0076】
次に、化合物C13と化合物C14とが反応されて化合物C15(式(15)の化合物)が得られる。
【0077】
【0078】
そして、化合物C15が脱保護反応されることによって、樹脂側官能基Uがエポキシ基であり、無機物側官能基Wがキレート基である化合物が得られる。
【0079】
無機物側官能基Wがキレート基である化合物についても、化合物C8又はC9のように、分子鎖に複数の樹脂側官能基U、及び複数の無機物側官能基Wが結合していてもよい。
【0080】
このほか、接着剤40は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーは、主成分となる樹脂よりも熱伝導性が高い部材である。フィラーは、無機フィラーを含んでいてもよいし、金属フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーの材料としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ムライト、グラファイト、カーボンナノチューブなどであってもよい。金属フィラーの材料としては、銅、アルミニウム、銀、鉄などであってもよい。
【0081】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 配線部材
20 線状伝送部材
22 伝送線本体
24 被覆層
30 被着体(シート状部材)
32 無機物層(金属層)
40 接着剤