IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<図1>
  • 特許-走行制御装置 図1
  • 特許-走行制御装置 図2
  • 特許-走行制御装置 図3
  • 特許-走行制御装置 図4
  • 特許-走行制御装置 図5
  • 特許-走行制御装置 図6
  • 特許-走行制御装置 図7
  • 特許-走行制御装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230411BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G05D1/02 J
G05D1/02 K
B66F9/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019147953
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028796
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
(72)【発明者】
【氏名】服部 晋悟
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182502(JP,A)
【文献】特開2010-117804(JP,A)
【文献】特開2018-162122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的対象まで車両を走行させる走行制御装置において、
前記車両に対する前記目的対象の位置及び向きを検出する目的対象検出部と、
前記目的対象検出部により検出された前記車両に対する前記目的対象の位置及び向きに基づいて、前記目的対象までの前記車両の移動経路を生成する経路生成部と、
前記経路生成部により生成された前記移動経路に従って前記車両を前記目的対象に向けて移動させるように制御する移動制御部と、
前記車両が前記移動経路に従った移動を開始する前に前記目的対象検出部により検出された前記目的対象の位置及び向きと、前記車両が前記移動経路に従った移動を開始した後に前記目的対象検出部により再度検出された前記目的対象の位置及び向きとのずれを算出する目的対象ずれ算出部と、
前記目的対象ずれ算出部により算出された前記目的対象の位置のずれに応じて、前記経路生成部により生成された前記移動経路をオフセットさせるように補正すると共に、前記目的対象ずれ算出部により算出された前記目的対象の向きのずれに応じて、前記経路生成部により生成された前記移動経路を前記目的対象を中心として回転させるように補正する経路補正部とを備え、
前記移動制御部は、前記経路補正部により前記移動経路が補正されたときは、前記補正された移動経路に従って前記車両を前記目的対象に向けて移動させるように制御する走行制御装置。
【請求項2】
前記車両は、パレットを持ち上げるフォークを有するフォークリフトであり、
前記目的対象は、前記パレットである請求項1記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記目的対象検出部は、前記パレットにレーザ光を照射して前記パレットから反射されたレーザ光を受光することにより、前記パレットまでの距離を計測するレーザレンジファインダを有する請求項2記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記目的対象検出部は、前記パレットに設けられたARマーカを撮像するカメラを有する請求項2記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、レーザ光を照射すると共に、その照射したレーザ光の反射光から周辺物体までの距離を計測する測域センサを用いて、パレットの位置及び向きを特定し、パレットまでフォークリフトを移動させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-178567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように、フォークリフトをパレットまで移動させる場合には、例えばパレットの位置及び向きの検出データに基づいて、パレットまでの移動経路を生成し、その移動経路に従ってフォークリフトを走行させるように制御する。この場合、パレットから遠い地点では、パレットに近い地点よりもパレットの位置及び向きの検出精度が悪い。このため、フォークリフトがパレットに近づくにつれて、パレットの位置及び向きの検出データにずれが生じ、データを変更させる必要が生じる場合がある。パレットの位置及び向きの検出データの変更には、パレットまでの移動経路を再生成し直す必要がある。しかし、移動経路の生成には時間がかかるため、都度移動経路の再生成を行うと、計算処理の負荷の増大につながる。
【0005】
本発明の目的は、計算処理の負荷を低減することができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、目的対象まで車両を走行させる走行制御装置において、車両に対する目的対象の位置及び向きを検出する目的対象検出部と、目的対象検出部により検出された車両に対する目的対象の位置及び向きに基づいて、目的対象までの車両の移動経路を生成する経路生成部と、経路生成部により生成された移動経路に従って車両を目的対象に向けて移動させるように制御する移動制御部と、車両が移動経路に従った移動を開始する前に目的対象検出部により検出された目的対象の位置及び向きと、車両が移動経路に従った移動を開始した後に目的対象検出部により検出された目的対象の位置及び向きとのずれを算出する目的対象ずれ算出部と、目的対象ずれ算出部により算出された目的対象の位置のずれに応じて、経路生成部により生成された移動経路をオフセットさせるように補正すると共に、目的対象ずれ算出部により算出された目的対象の向きのずれに応じて、経路生成部により生成された移動経路を目的対象を中心として回転させるように補正する経路補正部とを備え、移動制御部は、経路補正部により移動経路が補正されたときは、補正された移動経路に従って車両を目的対象に向けて移動させるように制御する。
【0007】
このような走行制御装置においては、車両に対する目的対象の位置及び向きが検出され、目的対象の位置及び向きに基づいて目的対象までの車両の移動経路が生成され、移動経路に従って車両が目的対象に向けて移動するように制御される。その後、車両に対する目的対象の位置及び向きが再度検出され、その目的対象の位置及び向きと先に得られた目的対象の位置及び向きとのずれが算出される。そして、目的対象の位置のずれに応じて移動経路がオフセットするように補正されると共に、目的対象の向きのずれに応じて移動経路が目的対象を中心として回転するように補正され、その補正された移動経路に従って車両が目的対象に向けて移動するように制御される。このように移動経路をオフセット及び回転させることにより、車両が目的対象に近づくにつれて目的対象の位置及び向きの検出データが変わっても、移動経路の再生成を行わなくて済む。これにより、計算処理の負荷が低減する。
【0008】
車両は、パレットを持ち上げるフォークを有するフォークリフトであり、目的対象は、パレットであってもよい。フォークリフトはフォークによりパレットを持ち上げるため、パレットの位置及び向きの精度が要求される。従って、本発明の一態様の走行制御装置をフォークリフトに適用するのが効果的である。
【0009】
目的対象検出部は、パレットにレーザ光を照射してパレットから反射されたレーザ光を受光することにより、パレットまでの距離を計測するレーザレンジファインダを有してもよい。このような構成では、レーザレンジファインダによりパレットの正面の各部までの距離を計測し、パレットの正面の形状を特定することで、フォークリフトに対するパレットの位置及び向きを容易に検出することができる。
【0010】
目的対象検出部は、パレットに設けられたARマーカを撮像するカメラを有してもよい。このような構成では、パレットに設けられたARマーカをカメラで撮像し、カメラの撮像画像を画像解析することで、フォークリフトに対するパレットの位置及び向きを容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、計算処理の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。
図2】パレットの正面図である。
図3図1に示された制御ユニットにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図4】フォークリフトの移動経路を生成する様子とフォークリフトの移動経路を補正する様子とを示す概念図である。
図5】フォークリフトの移動経路の補正処理を具体的に示す概念図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。
図7】ARマーカが設けられたパレットの正面図である。
図8図6に示された制御ユニットにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。図1において、本実施形態の走行制御装置1は、目的対象であるパレット2までフォークリフト3を無人で自動的に走行させる装置である(図5参照)。フォークリフト3は、パレット2を持ち上げる1対のフォーク4を有する産業車両である。
【0015】
パレット2は、例えば図2に示されるように、平パレットである。パレット2の正面2aには、フォーク4が差し込まれる2つの開口部5が設けられている。パレット2上には、荷物Wが載置される。従って、フォークリフト3は、パレット2上の荷物Wを運搬可能である。
【0016】
走行制御装置1は、フォークリフト3に搭載されている。走行制御装置1は、レーザレンジファインダ6と、このレーザレンジファインダ6と接続された制御ユニット7とを有している。
【0017】
レーザレンジファインダ6は、パレット2にレーザ光を照射してパレット2から反射されたレーザ光(反射光)を受光することにより、パレット2までの距離を計測する。レーザレンジファインダ6は、例えばフォークリフト3の左右両側に取り付けられている(図5参照)。
【0018】
制御ユニット7は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。制御ユニット7には、走行モータ8及び操舵モータ9が接続されている。走行モータ8は、フォークリフト3の走行輪(図示せず)を回転させるモータである。操舵モータ9は、フォークリフト3の操舵輪(図示せず)を転舵させるモータである。
【0019】
制御ユニット7は、レーザレンジファインダ6の計測値に基づいて所定の処理を行い、フォークリフト3がパレット2まで走行するように走行モータ8及び操舵モータ9を制御する。
【0020】
制御ユニット7は、目的対象検知部10と、経路生成部11と、移動制御部12と、目的対象ずれ算出部13と、経路補正部14とを有している。
【0021】
目的対象検知部10は、レーザレンジファインダ6の計測値に基づいて、フォークリフト3に対するパレット2(目的対象)の位置及び向きを検知する。パレット2の位置は、2次元座標(XY座標)で表される。パレット2の向きは、角度θで表される。レーザレンジファインダ6及び目的対象検知部10は、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する目的対象検出部を構成する。
【0022】
経路生成部11は、目的対象検知部10により検知されたフォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きに基づいて、パレット2までのフォークリフト3の移動経路を生成する。
【0023】
移動制御部12は、経路生成部11により生成された移動経路に従ってフォークリフト3がパレット2に向かって移動するように走行モータ8及び操舵モータ9を制御する。移動制御部12は、経路補正部14により移動経路が補正されたときは、補正された移動経路に従ってフォークリフト3がパレット2に向かって移動するように走行モータ8及び操舵モータ9を制御する。
【0024】
目的対象ずれ算出部13は、目的対象検知部10により最初に検出されたパレット2の位置及び向きと、目的対象検知部10により2回目に検出されたパレット2の位置及び向きとのずれを算出する。最初に検出されたパレット2の位置及び向きは、フォークリフト3が移動経路に従った移動を開始する前に検出されたパレット2の位置及び向きである。2回目に検出されたパレット2の位置及び向きは、フォークリフト3が移動経路に従った移動を開始した後に検出されたパレット2の位置及び向きである。
【0025】
経路補正部14は、目的対象ずれ算出部13により算出されたパレット2の位置及び向きのずれに応じて、経路生成部11により生成された移動経路を補正する。経路補正部14は、パレット2の位置のずれに応じて移動経路をオフセットさせるように補正すると共に、パレット2の向きのずれに応じて移動経路をパレット2を中心として回転させるように補正する。
【0026】
図3は、図1に示された制御ユニット7により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、例えばパレット2までの自動走行が指示されると、実行される。
【0027】
図3において、制御ユニット7は、まずレーザレンジファインダ6の計測値を取得する(手順S101)。続いて、制御ユニット7は、レーザレンジファインダ6の計測値に基づいて、図4(a)に示されるように、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する(手順S102)。このとき、制御ユニット7は、レーザレンジファインダ6の計測値に基づいてパレット2の正面2aの各部までの距離を検知し、パレット2の正面2aの形状を特定することにより、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する。
【0028】
続いて、制御ユニット7は、図4(a)に示されるように、フォークリフト3の現在位置からパレット2までの移動経路rを生成する(手順S103)。このとき、制御ユニット7は、例えば道路等の経路設計に利用されるクロソイド曲線となるような移動経路rを生成する。
【0029】
そして、制御ユニット7は、フォークリフト3が移動経路rに従って移動するように、走行モータ8及び操舵モータ9を制御する(手順S104)。これにより、フォークリフト3は、移動経路rに従ってパレット2に向かって移動するようになる。
【0030】
続いて、制御ユニット7は、フォークリフト3が移動経路rに従った移動を開始してから所定時間が経過したかどうかを判断する(手順S105)。ここで、所定時間は、フォークリフト3が移動経路rに従って移動してパレット2に近づいた際に、パレット2の位置及び向きにずれが生じる可能性のある時間(走行距離)であり、例えばレーザレンジファインダ6の精度等を考慮して実験等で決められる。
【0031】
制御ユニット7は、所定時間が経過したと判断したときは、レーザレンジファインダ6の計測値を再び取得する(手順S106)。
【0032】
続いて、制御ユニット7は、レーザレンジファインダ6の計測値に基づいて、図4(b)に示されるように、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを再び検出する(手順S107)。続いて、制御ユニット7は、今回検出されたパレット2の位置及び向きと先に手順S102で検出されたパレット2の位置及び向きとのずれを算出する(手順S108)。
【0033】
続いて、制御ユニット7は、図4(b)の実線Pで示されるように、今回検出されたパレット2の向きと先に検出されたパレット2の向きとのずれ角度分だけ、手順S103で得られた移動経路rをパレット2の中心を支点として回転させる(手順S109)。
【0034】
そして、制御ユニット7は、図4(b)の実線Qで示されるように、今回検出されたパレット2の位置と先に検出されたパレット2の位置とのずれ量分だけ、手順S103で得られた移動経路rをオフセットさせる(手順S110)。
【0035】
続いて、制御ユニット7は、手順S109,S110で補正された移動経路に従ってフォークリフト3がパレット2に向かって移動するように、走行モータ8及び操舵モータ9を制御する(手順S111)。これにより、フォークリフト3は、補正された移動経路に従ってパレット2まで移動するようになる。
【0036】
続いて、制御ユニット7は、例えばレーザレンジファインダ6の計測値またはカメラ(図示せず)の撮像画像に基づいて、フォークリフト3がパレット2の正面に到着したかどうかを判断する(手順S112)。フォークリフト3がパレット2の正面に到着したと判断したときは、本処理を終了する。フォークリフト3がパレット2の正面に到着していないと判断したときは、上記の手順S105~S112を再度実行する。
【0037】
ここで、目的対象検知部10は、手順S101,S102,S106,S107を実行する。経路生成部11は、手順S103を実行する。移動制御部12は、手順S104,S111,S112を実行する。目的対象ずれ算出部13は、手順S108を実行する。経路補正部14は、手順S109,S110を実行する。
【0038】
なお、本処理では、移動経路rを回転させてからオフセットさせているが、特にそれには限られず、移動経路rをオフセットさせてから回転させてもよいし、或いは移動経路rのオフセット及び回転を同時に行ってもよい。
【0039】
図5は、フォークリフト3の移動経路rの補正処理を具体的に示す概念図である。図5(a)は、最初のパレット検出時におけるフォークリフト3の位置(実線参照)とパレット2の位置及び向きとを示している。図5(b)は、2回目のパレット検出時における現在のフォークリフト3の位置(実線参照)とパレット2の位置及び向きとを示している。2回目のパレット検出時には、最初のパレット検出時よりもフォークリフト3がパレット2に接近している。なお、図5中の2点鎖線は、フォークリフト3の目標停止位置及び向きであり、パレット2の位置及び向きに対応している。
【0040】
最初のパレット検出時におけるマップ座標系でのフォークリフト3の目標停止位置及び向きを(X0,Y0,θ0)とし、ロボット座標系での現在のフォークリフト3の目標停止位置及び向きを(xr,yr,θr)とし、マップ座標系での現在のフォークリフト3の位置及び向きを(Xc,Yc,θc)とすると、マップ座標系での現在のフォークリフト3の目標停止位置及び向き(Xn,Yn,θn)は、以下の通りとなる。なお、マップ座標系は、地図上での座標系である。ロボット座標系は、フォークリフト3の所定位置を原点とした座標系である。
Xn=xr×cos(θc)-yr×sin(θc)+Xc
Yn=xr×sin(θc)+yr×cos(θc)+Yc
θn=θr+θc
【0041】
マップ座標系において、現在のフォークリフト3の目標停止位置及び向きと最初のパレット検出時のフォークリフト3の目標停止位置及び向きとのずれ(Xd,Yd,θd)は、以下の通りとなる。
Xd=Xn-X0
Yd=Yn-Y0
θd=θn-θ0
【0042】
このため、最初のパレット検出時に生成された移動経路について、パレット2の中心Gを支点としてθdだけ回転すると共に(Xd,Yd)だけオフセットすることになる。これにより、フォークリフト3は、フォーク4をパレット2の開口部5に差し込んでパレット2を持ち上げることが可能となる。
【0043】
なお、フォークリフト3においては、フォーク4によりパレット2をすくう際には、フォークリフト3がパレット2に正対している必要があるため、パレット2の向きを正確に修正することが重要となる。
【0044】
以上のように本実施形態にあっては、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きが検出され、パレット2の位置及び向きに基づいてパレット2までのフォークリフト3の移動経路rが生成され、移動経路rに従ってフォークリフト3がパレット2に向けて移動するように制御される。その後、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きが再度検出され、そのパレット2の位置及び向きと先に得られたパレット2の位置及び向きとのずれが算出される。そして、パレット2の位置のずれに応じて移動経路rがオフセットするように補正されると共に、パレット2の向きのずれに応じて移動経路rがパレット2を中心として回転するように補正され、その補正された移動経路に従ってフォークリフト3がパレット2に向けて移動するように制御される。このように移動経路rをオフセット及び回転させることにより、フォークリフト3がパレット2に近づくにつれてパレット2の位置及び向きの検出データが変わっても、移動経路の再生成を行わなくて済む。即ち、パレット2の位置及び向きの検出データにずれが生じ、データを変更させる必要が生じる場合でも、計算処理の負荷が低減する。その結果、制御ユニット7として安価なマイコンを使用することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、レーザレンジファインダ6によりパレット2の正面2aの各部までの距離を計測し、パレット2の正面2aの形状を特定することで、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを容易に検出することができる。
【0046】
図6は、本発明の第2実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。図6において、本実施形態の走行制御装置1は、レーザレンジファインダ6に代えて、カメラ20を備えている。
【0047】
カメラ20は、図7に示されるように、パレット2に設けられたARマーカ21(AugmentedRealityマーク:拡張現実マーク)を撮像する。ARマーカ21は、パレット2の正面2aにおける2つの開口部5の間に貼り付けられている。ARマーカ21は、例えば正方形状のマークである。
【0048】
制御ユニット7の目的対象検知部10は、カメラ20により撮像されたARマーカ21の画像データに基づいて、フォークリフト3に対するパレット2(目的対象)の位置及び向きを検知する。カメラ20及び目的対象検知部10は、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する目的対象検出部を構成する。
【0049】
図8は、図6に示された制御ユニット7により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。図8において、制御ユニット7は、まずカメラ20の撮像画像を取得する(手順S121)。
【0050】
続いて、制御ユニット7は、カメラ20の撮像画像に基づいて、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する(手順S122)。このとき、制御ユニット7は、カメラ20の撮像画像に対して画像解析を行って、ARマーカ21の寸法及び角度等を特定することにより、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを検出する。
【0051】
そして、制御ユニット7は、図3に示されるフローチャートと同様に、手順S103~S105を順次実行する。制御ユニット7は、手順S105で所定時間が経過したと判断したときは、カメラ20の撮像画像を再び取得する(手順S123)。
【0052】
続いて、制御ユニット7は、カメラ20の撮像画像に基づいて、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを再び検出する(手順S124)。そして、制御ユニット7は、図3に示されるフローチャートと同様に、手順S108~S112を順次実行する。
【0053】
ここで、目的対象検知部10は、手順S121~S124を実行する。経路生成部11、移動制御部12、目的対象ずれ算出部13及び経路補正部14は、上記の第1実施形態と同様である。
【0054】
このような本実施形態においても、移動経路をオフセット及び回転させることにより、計算処理の負荷が低減する。
【0055】
また、本実施形態では、パレット2に設けられたARマーカ21をカメラ20で撮像し、カメラ20の撮像画像を画像解析することで、フォークリフト3に対するパレット2の位置及び向きを容易に検出することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、フォークリフト3が移動経路rに従った移動を開始してから所定時間が経過したかどうかを判断する際の所定時間が実験等により決定されているが、パレット2の位置及び向きの検出データのずれによる変更の必要性と変更の頻度の情報とにより所定時間を変更可能としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、パレット2は平パレットであるが、使用されるパレット2としては、特にそれには限られず、例えば3つの垂直側板を有するボックスパレット等であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、操舵モータ9により直接操舵させているが、特にその形態には限られない。本発明は、例えばフォークリフト3のハンドル軸をモータで回転させることにより操舵させる方式にも適用可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、フォークリフト3がフォーク4によりパレット2を持ち上げるために、フォークリフト3をパレット2まで走行させているが、特にその形態には限られない。本発明は、例えばトーイング車等の車両を車庫や駐車場まで走行させる場合にも適用可能である。この場合には、車庫や駐車場が目的対象となる。
【符号の説明】
【0060】
1…走行制御装置、2…パレット(目的対象)、3…フォークリフト(車両)、4…フォーク、6…レーザレンジファインダ(目的対象検出部)、10…目的対象検知部(目的対象検出部)、11…経路生成部、12…移動制御部、13…目的対象ずれ算出部、14…経路補正部、20…カメラ(目的対象検出部)、21…ARマーカ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8