(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】産業車両の充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230411BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230411BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230411BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20230411BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20230411BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20230411BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H02H7/18
B60L50/60
B60L53/16
B60L53/20
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2019149829
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】秋元 美弘
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-153595(JP,A)
【文献】特開2003-079153(JP,A)
【文献】特開平05-336612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0208066(US,A1)
【文献】国際公開第2013/085007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02H 7/00
H02H 7/10-7/20
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両に備えられ、外部交流電源と接続された電源側プラグと接続可能な車両側プラグと、
前記車両側プラグと接続され、交流電圧を降圧する変圧器と、
前記変圧器にて降圧された交流を直流に変換する電流変換装置と、
産業車両に備えられ、前記電流変換装置により変換された直流電流を蓄えるバッテリと、
前記産業車両に搭載され、前記電流変換装置を制御する制御装置と
、
前記制御装置と接続され、前記電源側プラグと接続される電源電圧用の電圧検出用配線と、
前記制御装置と接続され、前記車両側プラグと接続される車両電圧用の電圧検出用配線と、を備え、
前記制御装置は、
前記電源側プラグに印加される電源側電圧
を前記電源電圧用の電圧検出用配線を介して検出すると
ともに、前記車両側プラグに印加される車両側電圧を
前記車両電圧用の電圧検出用配線を介して検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部による電圧の測定結果を用いて前記電源側プラグと前記車両側プラグとの接触抵抗を算出する算出部と、
前記接触抵抗が予め設定した抵抗閾値を超えたときに異常と判定する判定部と、を有
し、
前記算出部は、前記電流変換装置により計測される前記変圧器による降圧後の電圧および電流に基づき降圧後電力を求めるステップと、
前記変圧器の変換効率と前記降圧後電力に基づいて降圧前電力を算出するステップと、
前記降圧前電力と前記車両側電圧に基づいて降圧前の交流電流を算出するステップと、
前記電源側電圧、前記車両側電圧および前記降圧前の交流電流に基づいて、前記電源側プラグと前記車両側プラグとの接触抵抗を算出するステップと、を有することを特徴とする産業車両の充電システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記降圧前の交流電流が予め設定した電流閾値を超えたとき前記変圧器の発熱異常と判定することを特徴とする請求項1記載の産業車両の充電システム。
【請求項3】
前記産業車両は、前記判定部が異常と判定するとき警告を報知する警告報知部を有することを特徴とする請求項2記載の産業車両の充電システム。
【請求項4】
前記判定部は、予め設定された時間内における前記接触抵抗の平均値が前記抵抗閾値を超えたとき異常と判定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の産業車両の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフト等の産業車両の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両の充電システムの従来技術として、例えば、特許文献1に開示された充電システムが知られている。特許文献1の充電システムは、外部電源から電力が供給される電源幹線と、車両の電源プラグが接続され電源幹線から電力が供給されるコンセントを備えた充電ユニットと、を備えている。充電ユニットには、コンセントの挿抜回数を検出する測定部および温度を検出する温度センサが設けられているほか制御部が設けられている。そして、制御部は、測定部および温度センサにより検出された情報に基づいてコンセントの寿命を推測する。特許文献1の充電システムによれば、コンセントやケーブルコネクタの寿命を適正に判定して、安全性を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の充電システムは、コンセントやケーブルコネクタの寿命を適正に判定するために、コンセントの挿抜回数を検出する測定部および温度を検出する温度センサを必要とするという問題がある。この種の測定部や温度センサを備えると充電システムの製造コストが増大するほか、測定部や温度センサを設けるスペースが必要である。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、センサ類を設けることなく、充電時におけるプラグの異常を検知することができる産業車両の充電システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、産業車両に備えられ、外部交流電源と接続された電源側プラグと接続可能な車両側プラグと、前記車両側プラグと接続され、交流電圧を降圧する変圧器と、前記変圧器にて降圧された交流を直流に変換する電流変換装置と、産業車両に備えられ、前記電流変換装置により変換された直流電流を蓄えるバッテリと、前記産業車両に搭載され、前記電流変換装置を制御する制御装置と、前記制御装置と接続され、前記電源側プラグと接続される電源電圧用の電圧検出用配線と、前記制御装置と接続され、前記車両側プラグと接続される車両電圧用の電圧検出用配線と、を備え、前記制御装置は、前記電源側プラグに印加される電源側電圧を前記電源電圧用の電圧検出用配線を介して検出するとともに、と、前記車両側プラグに印加される車両側電圧を前記車両電圧用の電圧検出用配線を介して検出する電圧検出部と、前記電圧検出部による電圧の測定結果を用いて前記電源側プラグと前記車両側プラグとの接触抵抗を算出する算出部と、前記接触抵抗が予め設定した抵抗閾値を超えたときに異常と判定する判定部と、を有し、前記算出部は、前記電流変換装置により計測される前記変圧器による降圧後の電圧および電流に基づき降圧後電力を求めるステップと、前記変圧器の変換効率と前記降圧後電力に基づいて降圧前電力を算出するステップと、前記降圧前電力と前記車両側電圧に基づいて降圧前の交流電流を算出するステップと、前記電源側電圧、前記車両側電圧および前記降圧前の交流電流に基づいて、前記電源側プラグと前記車両側プラグとの接触抵抗を算出するステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、本発明では、制御装置の電圧検出部は、電源側プラグに印加される電源側電圧と、車両側プラグに印加される車両側電圧を検出する。算出部は、電圧検出部による電圧の測定結果を用いて電源側プラグと前記車両側プラグとの接触抵抗を算出する。制御装置の判定部は、接触抵抗が予め設定した抵抗閾値を超えたときに異常と判定する。したがって、センサ類を設けることなく、電源側プラグと車両側プラグとの接触抵抗を算出することができ、算出された接触抵抗が閾値を超える場合には、異常と判定することができる。なお、異常については、電源側プラグ又は車両側プラグの劣化や電源側プラグと車両側プラグとの接触状態の不良が主な原因である。
【0008】
また、算出部は、電流変換装置により計測される変圧器による降圧後の電圧および電流に基づき降圧後電力を求めた後、変圧器の変換効率と降圧後電力に基づいて降圧前電力を算出し、降圧前電力と車両側電圧に基づいて降圧前の交流電流を算出し、電源側電圧と、車両側電圧および降圧前の交流電流に基づいて、電源側プラグと車両側プラグとの接触抵抗を算出することができる。
【0009】
また、上記の産業車両の充電システムにおいて、前記判定部は、前記降圧前の交流電流が予め設定した電流閾値を超えたとき前記変圧器の発熱異常と判定する構成としてもよい。
この場合、制御装置の算出部が算出する降圧前の交流電流が電流閾値を超えたとき、判定部は変圧器の発熱異常と判定する。よって、降圧前の交流電流を監視することにより変圧器を発熱異常から保護することができる。
【0010】
また、上記の産業車両の充電システムにおいて、前記産業車両は、前記判定部が異常と判定するとき警告を報知する警告報知部を有する構成としてもよい。
この場合、判定部が異常と判定すると、警告報知部は警告を報知するので、産業車両の周囲では異常を直ちに認識し易くなる。
【0011】
また、上記の産業車両の充電システムにおいて、前記判定部は、予め設定された時間内における前記接触抵抗の平均値が前記抵抗閾値を超えたとき異常と判定する構成としてもよい。
この場合、判定部は予め設定された時間内における接触抵抗の平均値が抵抗閾値を超えたとき異常と判定する。このため、接触抵抗が瞬間的に閾値を超えても、判定部は異常と判定することはない。よって、外部交流電源の電圧変動等による接触抵抗の瞬間的な閾値超えによる異常の判定を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センサ類を設けることなく、充電時におけるプラグの異常を検知することができる産業車両の充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るフォークリフトを示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るフォークリフトの充電システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るフォークリフトの充電システムの要部を示す構成図である。
【
図4】接触抵抗と平均接触抵抗との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る産業車両の充電システムについて図面を参照して説明する。本実施形態では産業車両としてのバッテリ式フォークリフトの充電システムを例示して説明する。
【0015】
図1に示すように、バッテリ式フォークリフト(以下、単に「フォークリフト」と表記する。)10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられている。
【0016】
車体11における運転席13の下方には直流電流を蓄えるバッテリ17が収容されている。バッテリ17は鉛蓄電池である。バッテリ17の電力により駆動する走行モータ18が車体11に備えられている。走行モータ18と駆動輪14との間には、走行モータ18の走行駆動力は駆動輪14へ伝達する動力伝達機構(図示せず)が設けられている。
【0017】
車体11における運転席13には、オペレータが着座可能な運転シート19が設けられている。運転シート19は、車体11に開閉可能に設けられたシートスタンド20上に配置されている。車体11には、フォークリフト10の各部の電気的制御を行うコントローラ21が搭載されている。コントローラ21は、制御装置に相当し、カウンタウエイト16の前方に位置し、シートスタンド20により覆われている。
【0018】
運転席13の前方にはインストルメントパネル22が備えられている。インストルメントパネル22の左の側部には、バッテリ充電のための電源側プラグ24と接続可能な車両側プラグ23が備えられている。電源側プラグ24は外部交流電源26と接続される電力線25と接続されている。
【0019】
図2に示す本実施形態のフォークリフト10の充電システム30では、外部交流電源26は三相交流の電源である。フォークリフト10に備えられる車両側プラグ23は電力線28を介して変圧器としての降圧トランス27と接続されている。降圧トランス27は、図示されない一次巻線および二次巻線を備えており、充電時に車両側プラグ23に印加された交流電圧を所定の電圧まで降圧する。降圧トランス27の一次巻線側は車両側プラグ23と接続され、降圧トランス27の二次巻線側は電力線32を介してモータドライバ31と接続されている。モータドライバ31は電力線33を介してバッテリ17と接続されているほか、走行モータ18と接続されている。なお、
図2では走行モータ18は省略されている。
【0020】
本実施形態のモータドライバ31は、複数のスイッチング素子を備えたインバータであり、電流変換装置に相当する。モータドライバ31は、バッテリ17の直流電流を交流電流に変換して走行モータ18に供給するほか、降圧トランス27にて降圧された交流電流を直流電流に変換してバッテリ17へ充電する。また、モータドライバ31は、走行モータ18の回生に生じた交流電流を直流電流に変換してバッテリ17へ充電する。
【0021】
ところで、
図3に示すように、車両側プラグ23には、U相の端子部34U、V相の端子部34V、W相の端子部34Wおよびグランド端子部34Gが備えられている。各相の端子部34U、34V、34Wは、対応する電力線28U、28V、28Wと接続されている。グランド端子部34Gは配線(図示せず)と接続されている。
【0022】
電源側プラグ24には、U相の端子部35U、V相の端子部35V、W相の端子部35Wおよびグランド端子部35Gが備えられている。各相の端子部35U、35V、35Wは、対応する電力線25U、25V、25Wと接続されている。グランド端子部35Gは配線(図示せず)と接続されている。
【0023】
図2に示すように、コントローラ21は、電圧検出用配線37、38により車両側プラグ23と電気的に接続されている。コントローラ21は、電源側プラグ24に印加される電源側電圧V1aと車両側プラグ23に印加される車両側電圧V1bを検出する電圧検出部36を備えている。
図3に示すように、電源側電圧V1aについては、U相の端子部35UにおけるU相の電圧V1a(U)、V相の端子部35VにおけるV相の電圧V1a(V)、W相の端子部35WにおけるW相の電圧V1a(W)が設定される。車両側電圧V1bについては、U相の端子部34UにおけるU相の電圧V1b(U)、V相の端子部34VにおけるV相の電圧V1b(V)、W相の端子部34WにおけるW相の電圧V1b(W)が設定される。電源側電圧V1aおよび車両側電圧V1bは一次側の電圧である一次電圧に相当する。
【0024】
電圧検出用配線37は、電源側プラグ24の各相の電圧V1a(U)、V1a(V)、V1a(W)を検出するため、端子部35U、35V、35Wおよびグランド端子部35Gに接続されているほか、電圧検出部36と接続されている。また、電圧検出用配線38は、車両側プラグ23の各相の電圧V1b(U)、V1b(V)、V1b(W)を検出するため、端子部34U、34V、34Wと接続されているほか、電圧検出部36と接続されている。
【0025】
モータドライバ31は、充電時において降圧トランス27による降圧後の電圧V2および降圧後の電流I2を常に計測する。降圧後の電圧V2については、U相の電圧V2(U)、V相の電圧V2(V)、W相の電圧V2(W)が設定される。また、降圧後の電流I2については、U相の電流I2(U)、V相の電流I2(V)、W相の電流I2(W)が設定される。モータドライバ31に計測された降圧後の電圧V2および降圧後の電流I2はコントローラ21に伝達される。降圧後の電圧V2は二次側の電圧である二次電圧に相当し、降圧後の電流I2は二次側の電流である二次電流に相当する。
【0026】
コントローラ21は、算出部39および判定部40を備えている。算出部39は、降圧後電力W2と、降圧前電力W1と、降圧前の交流電流I1と、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1と、を算出する。降圧後電力W2については、U相の降圧後電力W2(U)、V相の降圧後電力W2(V)、W相の降圧後電力W2(W)が設定される。また、降圧前電力W1については、U相の降圧前電力W1(U)、V相の降圧前電力W1(V)、W相の降圧前電力W1(W)が設定される。降圧前の交流電流I1については、U相の降圧前の交流電流I1(U)、V相の降圧前の交流電流I1(V)、W相の降圧前の交流電流I1(W)が設定される。接触抵抗R1については、U相の接触抵抗R1(U)、V相の接触抵抗R1(V)、W相の接触抵抗R1(W)が設定される。
【0027】
降圧後電力W2は、次の式(1)により算出される。
W2=I2×V2 ・・・・式(1)
降圧前電力W1は、次の式(2)により算出される。
W1=W2/η ・・・・式(2)
η:変換効率
変換効率ηは、降圧トランス27の仕様によって予め定められている。
降圧前の交流電流I1は、次の式(3)により算出される。
I1=W1/V1 ・・・・式(3)
式(3)により算出される降圧前の交流電流I1は推定値である。
電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1は、次の式(4)により算出される。
R1=(V1a-V1b)/I1 ・・・・式(4)
なお、式(1)~(4)はU相、V相およびW相にそれぞれ適用することができる。
【0028】
したがって、算出部39は、モータドライバ31により計測される降圧トランス27による降圧後の電圧V2および電流I2に基づき降圧後電力W2を求めるステップと、降圧トランス27の変換効率ηと降圧後電力W2に基づいて降圧前電力W1を算出するステップと、降圧前電力W1と車両側電圧V1bに基づいて降圧前の交流電流I1を算出するステップと、電源側電圧VIaと、車両側電圧V1bおよび降圧前の交流電流I1に基づいて、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1を算出するステップと、を有する。
【0029】
判定部40は、算出された電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1が、予め設定した抵抗閾値R1tを超えているか否かを判定する。接触抵抗R1が抵抗閾値R1tを超えているとき、判定部40は異常と判定し、接触抵抗R1が抵抗閾値R1t以下であるとき正常と判定する。より具体的には、
図4に示すように、判定部40は、予め設定された時間内(t1~t2)における接触抵抗R1の平均値である平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1tを超えたときに異常と判定し、平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1t以下であるとき正常と判定する。なお、抵抗閾値R1tについては、各相に対応する抵抗閾値R1t(U)、R1t(V)、R1t(W)が設定され、また、平均接触抵抗R1mについては、各相に対応する平均接触抵抗R1m(U)、R1m(V)、R1m(W)が設定される。
【0030】
本実施形態では、判定部40は、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1が、予め設定した抵抗閾値R1tを超えているか否かを判定するだけでなく、降圧前の交流電流I1が予め設定した電流閾値I1tを超えているか否かを判定する。降圧前の交流電流I1が予め設定した電流閾値I1tを超えたとき、判定部40は降圧トランス27の発熱異常と判定する。コントローラ21の算出部39が算出する降圧前の交流電流I1が電流閾値I1tを超えないとき、判定部40は降圧トランス27の発熱異常ではないと判定する。
【0031】
コントローラ21は警告報知部41と接続されており、判定部40が異常であると判定したとき、警告報知部41は異常を示す警告を発して周囲に報知する。警告報知部41としては、例えば、インストルメントパネル22に設けた液晶画面や警告音を発生する警告音発生器である。
【0032】
次に、本実施形態に係るフォークリフト10の充電システム30の作用について説明する。ここでは、説明の便宜上、U相、V相、W相の各相について個別の説明はしない。フォークリフト10のバッテリ17に外部交流電源26から充電するとき、電源側プラグ24を車両側プラグ23に接続して充電を開始する。このとき、コントローラ21が備える電圧検出部36は、電圧検出用配線37、38を通じて電源側電圧V1a、車両側電圧V1bを常に検出する。また、電圧検出部36による電源側電圧V1a、車両側電圧V1bの検出とともに、モータドライバ31は降圧後の電流I2および降圧後の電圧V2を常に計測し、コントローラ21へ伝達する。
【0033】
コントローラ21の算出部39は、モータドライバ31により計測される降圧後の電圧V2および電流I2に基づき降圧後電力W2を求めた後、降圧トランス27の変換効率ηと降圧後電力W2に基づいて降圧前電力W1を算出する。さらに、算出部39は、降圧前電力W1と車両側電圧V1bに基づいて降圧前の交流電流I1を算出し、電源側電圧V1aと、車両側電圧V1bおよび降圧前の交流電流I1に基づいて、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1を算出する。
【0034】
コントローラ21の判定部40は、予め設定された時間内(t1~t2)における接触抵抗R1の平均値である平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1tを超えたときに異常と判定し、平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1t以下であるとき正常と判定する。電源側プラグ24が車両側プラグ23に適切に接続され、平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1tを超えない場合には、判定部40は正常であると判定するので、充電が継続される。
【0035】
平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1tを超える場合には、判定部40は異常であると判定し、コントローラ21は警告報知部41が警告を発するように警告報知部41を制御する。警告報知部41が警告を発することによりフォークリフト10の周囲に異常が報知される。異常に気付いたオペレータ等は充電を終了すればよい。因みに、接触抵抗R1の増大による異常については、電源側プラグ24又は車両側プラグ23の劣化や、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触状態の不良が主な原因である。
【0036】
また、コントローラ21の判定部40は、降圧前の交流電流I1が予め設定した電流閾値I1tを超えているか否かを判定する。降圧前の交流電流I1が予め設定した電流閾値I1tを超えたとき、判定部40は降圧トランス27の発熱異常と判定する。コントローラ21の算出部39が算出する降圧前の交流電流I1が電流閾値I1tを超えないとき、判定部40は降圧トランス27の発熱異常ではないと判定する。
【0037】
本実施形態のフォークリフト10の充電システム30は、以下の作用効果を奏する。
(1)コントローラ21の電圧検出部36は、電源側プラグ24に印加される電源側電圧V1aと、車両側プラグ23に印加される車両側電圧V1bを検出する。コントローラ21の算出部39は、電圧検出部36による電圧の測定結果を用いて電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗を算出する。コントローラ21の判定部40は、接触抵抗R1が予め設定した抵抗閾値R1tを超えたときに異常と判定する。したがって、センサ類を設けることなく、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1を算出することができ、算出された接触抵抗R1が抵抗閾値R1tを超える場合には、異常と判定することができる。なお、電源側プラグ24又は車両側プラグ23の劣化や電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触状態の不良が異常の主な原因である。
【0038】
(2)コントローラ21の算出部39は、モータドライバ31により計測される降圧後の電圧V2および電流I2に基づき降圧後電力W2を求めた後、降圧トランス27の変換効率ηと降圧後電力W2に基づいて降圧前電力W1を算出する。さらに、算出部39は、降圧前電力W1と車両側電圧V1bに基づいて降圧前の交流電流I1を算出し、電源側電圧VIaと、車両側電圧V1bおよび降圧前の交流電流I1に基づいて、電源側プラグ24と車両側プラグ23との接触抵抗R1を算出することができる。
【0039】
(3)判定部40は、降圧前の交流電流I1が予め設定した電流閾値I1tを超えたとき降圧トランス27の発熱異常と判定する。このため、コントローラ21の算出部39が算出する降圧前の交流電流I1が電流閾値I1tを超えたとき、判定部40は降圧トランス27の発熱異常と判定する。よって、降圧前の交流電流I1を監視することにより降圧トランス27を発熱異常から保護することができる。
【0040】
(4)フォークリフト10は、判定部40が異常と判定するとき警告を報知する警告報知部41を有する。このため、判定部40が異常と判定すると、警告報知部41は警告を報知するので、フォークリフト10の周囲では異常を直ちに認識し易くなる。
【0041】
(5)判定部40は予め設定された時間内(t1~t2)における接触抵抗R1の平均値である平均接触抵抗R1mが抵抗閾値R1tを超えたとき異常と判定する。このため、接触抵抗R1が瞬間的に抵抗閾値R1tを超えても、判定部40は異常と判定することはない。よって、外部交流電源26の電圧変動等による接触抵抗R1の瞬間的な閾値超えによる異常の判定を回避することができる。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0043】
○ 上記の実施形態では、制御装置の判定部は予め設定された時間内における接触抵抗の平均値である平均接触抵抗が抵抗閾値を超えたとき異常と判定するとしたが、この限りではない。例えば、平均接触抵抗ではなく単に接触抵抗が抵抗閾値を超えるか否かにより異常を判定してもよい。
○ 上記の実施形態では、降圧トランスの発熱異常から保護するために、判定部が降圧前の交流電流が予め設定した電流閾値を超えたとき発熱異常であると判定するとしたが、この限りではない。降圧トランスの発熱異常からの保護が別手段で可能である場合などでは、判定部は降圧前の交流電流が予め設定した電流閾値を超えたとき降圧トランスの発熱異常と判定する必要はない。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてのフォークリフトの充電システムについて例示したが、この限りではない。産業車両はフォークリフト以外であってバッテリを搭載し車両側プラグを備える産業車両であればよく、例えば、バッテリ式の牽引車であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 フォークリフト
17 バッテリ
18 走行モータ
21 コントローラ
23 車両側プラグ
24 電源側プラグ
25、25U、25V、25W 電力線
26 外部交流電源
27 降圧トランス(変圧器としての)
28、28U、28V、28W 電力線
30 充電システム
31 モータドライバ(電流変換装置)
32、33 電力線
36 電圧検出部
37、38 電圧検出用配線
39 算出部
40 判定部
41 警告報知部
V1a、V1a(U)、V1a(V)、V1a(W) 電源側電圧
V1b、V1b(U)、V1b(V)、V1b(W) 車両側電圧
I1、I1(U)、I1(V)、I1(W) 降圧前の電流
I1t 電流閾値
V2、V2(U)、V2(V)、V2(W) 降圧後の電圧
I2、I2(U)、I2(V)、I2(W) W相の降圧後の電流
W1、W1(U)、W1(V)、W1(W) W相の降圧前電力
W2、W2(U)、W2(V)、W2(W) W相の降圧後電力
R1、R1(U)、R1(V)、R1(W) W相の接触抵抗
R1t 抵抗閾値
R1m 平均接触抵抗
t1、t2 時間