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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】絞り弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/10 20060101AFI20230411BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20230411BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20230411BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F02D9/10 H
F02D9/02 351G
F16K31/44 F
F16K31/04 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019149923
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021032088
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】595054589
【氏名又は名称】株式会社デンソーダイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 健一
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-120335(JP,A)
【文献】特開2008-303730(JP,A)
【文献】特開2001-227362(JP,A)
【文献】実開昭63-160484(JP,U)
【文献】特開平07-317576(JP,A)
【文献】特開2001-214761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0059903(US,A1)
【文献】特開2013-104389(JP,A)
【文献】特開2019-120253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/10
F02D 9/02
F16K 31/44
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路及びモータ空間を有するボデーと、
このボデーの前記通路に直交配置されるシャフトと、
前記ボデーの前記通路の両側に配置され、前記シャフトを回転自在に支持する一対の軸受と、
前記シャフトとともに回動して前記通路を開閉するバルブと、
前記ボデーの前記モータ空間に保持され電気信号に応じて回転するモータと、
前記ボデーに前記シャフトと同軸上に配置され、レバーを介して前記シャフトと連結し、前モータの回転を前記シャフトに伝達するバルブギヤと、
前記ボデー内でこのバルブギと前記バルブとの間に配置され、前記モータの回転が前記シャフトに伝達される際に抗力を付加するコイルスプリングと、
このコイルスプリングの一面側を覆う第1ガイドと、
前記コイルスプリングの他面側を覆う第2ガイドとを備え、
前記第1ガイド及び前記第2ガイド少なくともいずれか一方は、前記コイルスプリングの端面に対向配置される円形保持部と、この円形保持部より径方向外方に突出形成され前記コイルスプリングのスプリング端を保持するスプリング端保持部と、前記シャフトに回転自在に支持されるハブと、このハブと前記円形保持部とを連結する連結部とを有し、
前記第1ガイド及び前記第2ガイドの少なくともいずれか一方であって、前記円形保持部、前記スプリング端保持部、前記ハブ及び前記連結部を有するものは、以下のア及びイの少なくともいずれかの態様である
ア 前記第1ガイドが前記ハブの端面でのみで前記レバーと接触する態様
イ 前記第2ガイドが前記ハブの端面でのみで前記一対の軸受の内前記バルブギ側の軸受と接触する態様
ことを特徴とする絞り弁装置。
【請求項2】
前記第1ガイド及び前記第2ガイドの少なくともいずれか一方の前記連結部は、前記ハブ及び前記円形保持部に比べて軸方向の幅が小さく、
前記連結部、前記ハブ及び前記円形保持部によって、内部に空間を形成する
ことを特徴とする請求項1の絞り弁装置。
【請求項3】
前記連結部と前記ハブは、断面T字状に形成されている
ことを特徴とする請求項2の絞り弁装置。
【請求項4】
前記連結部と前記ハブは、断面L字状に形成されている
ことを特徴とする請求項2の絞り弁装置。
【請求項5】
前記第1ガイドの前記ハブは、前記レバーに向かって肉厚が減少するテーパ形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の絞り弁装置。
【請求項6】
前記第2ガイドの前記ハブは、前記軸受に向かって肉厚が減少するテーパ形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の絞り弁装置。
【請求項7】
前記連結部は円盤状をしており、その外面に径方向リブを備える
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の絞り弁装置。
【請求項8】
前記第1ガイドのハブと前記第2ガイドのハブとの間には所定の隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の絞り弁装置。
【請求項9】
前記第1ガイドと前記第2ガイドとは、同一形状である
ことを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載の絞り弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、絞り弁装置に関し、該絞り弁装置は、エンジンの吸気をコントロールする電子スロットル装置や、排気ガス循環システムに用いられるEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御するための負圧制御バルブ等の用途がある。
本開示は、特にバルブを付勢するコイルスプリングによって、バルブが通路を全閉とする位置ではなく、若干開いた位置(以下、この位置をバルブ中間開度という。)で保持する絞り弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子スロットル装置では、エンジンの運転状態をコントロールするエンジンコントロールユニット、または電子スロットルに何らかの故障が生じた場合にも、自動車を退避走行可能とするように、電子スロットル装置のモータが駆動力を生じない時に、スロットルバルブが吸気通路を全閉とする位置ではなく、バルブ中間開度で停止するよう構成されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子スロットル装置では、コイルスプリングを用いて、コイルスプリングの両端にそれぞれ樹脂製ガイドを配置し、バルブ中間開度からバルブ全閉開度の間は一方の樹脂製ガイドがストッパとして機能しつつ他方の樹脂製ガイドがコイルスプリングとともに回動し、バルブ中間開度からバルブ全開開度の間は他方の樹脂製ガイドがストッパとして機能しつつ一方の樹脂製ガイドがコイルスプリングとともに回動するようにしている。
【0004】
ただ、特許文献1に記載の電子スロットル装置では、スロットルバルブが回動する際、いずれかの樹脂製ガイドが、ボデーやバルブギアと摺動する構造であった。そのため、この摺動による抵抗が、図13にaで示すように、大きなヒステリシスとなり、バルブ中間開度を挟んでスロットルバルブを開方向、若しくは閉方向に精度よく回動制御するのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-120335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件開示の課題は、上記点に鑑みて、樹脂製ガイドが回動する際のボデーやバルブギヤとの摺動抵抗を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本件の第1の開示は、シャフトに伝達される際に抗力を付加するコイルスプリングの一面側を第1ガイドが覆い他面側を第2ガイドが覆い、第1ガイド及び第2ガイドの少なくともいずれか一方は、コイルスプリングの端面に対向配置される円形保持部と、この円形保持部より径方向外方に突出形成されコイルスプリングのスプリング端を保持するスプリング端保持部と、シャフトに回転自在に支持されるハブと、このハブと円形保持部とを連結する連結部とを有し、第1ガイド及び第2ガイドの少なくともいずれか一方であって、前記円形保持部、前記スプリング端保持部、前記ハブ及び前記連結部を有するものは、以下のア及びイの少なくともいずれかの態様であるようにしている。
ア 第1ガイドがハブの端面でのみでバルブギヤのレバーと接触する態様
イ 第2ガイドがハブの端面でのみで一対の軸受の内バルブギ側の軸受と接触する態様
これにより、コイルスプリングのガイドが回動する際の接触面積を小さくすることが可能である。
【0008】
第2の開示は、第1ガイド及び第2ガイドの少なくともいずれか一方の連結部は、ハブ及び円形保持部に比べて軸方向の幅が小さく、連結部、ハブ及び円形保持部によって、内部に空間を形成するようにしている。これにより、内部空間にバルブギア若しくはボデーの少なくともいずれか一方の一部を収納することができ、絞り弁装置の小型化が図れる。
【0009】
第3の開示は、連結部とハブが断面T字状に形成されて、上記の内部空間を形成している。
【0010】
第4の開示は、連結部とハブが断面L字状に形成されて、上記の内部空間を形成している。
【0011】
第5の開示は、第1ガイドのハブがレバーに向かって肉厚が減少するテーパ形状に形成されている。これにより、第1ガイドのレバーとの接触面積を小さくできる。
【0012】
第6の開示は、第2ガイドのハブが軸受に向かって肉厚が減少するテーパ形状に形成されている。これにより、第2ガイドの軸受との接触面積を小さくできる。
【0013】
第7の開示は、連結部が円盤状をしており、その外面に径方向リブを備えている。これにより、連結部の強度を高めることができる。
【0014】
第8の開示は、第1ガイドのハブと第2ガイドのハブとの間に所定の隙間を形成している。これにより、第1ガイドと第2ガイドとの間の摺動抵抗をなくすことができる。
【0015】
第9の開示は、第1ガイドと第2ガイドを同一形状としている。これにより、組付け時間の短縮、組付け設備コストの低減、及び部品コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電子スロットルの縦断面図である。
図2図2は、ボデーの正面図である。
図3図3は、コイルスプリング、第1・第2ガイドを示す斜視図である。
図4図4は、第1ガイドの正面図である。
図5図5は、図4図示第1ガイドの側面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図4図示第1ガイドの背面図である。
図8図8は、第1ガイドにコイルスプリングを配置した状態の正面図である。
図9図9は、図8図示第1ガイドの側面図である。
図10図10は、図6のX部拡大図である。
図11図11は、組付け前の第1・第2ガイドの断面図である。
図12図12は、組付け後の第1・第2ガイドの断面図である。
図13図13は、ヒステリシスを示す図である。
図14図14は、ガイドの変形例の断面図である。
図15図15は、ガイドの変更例の断面図である。
図16図16は、図2のバルブギア210部分を示した正面図である。
図17図17は、図16のXVII-XVII線に沿う断面図である。
図18図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図19図19は、図17のXIX-XIX線に沿う断面図である。
【実施例
【0017】
以下本件の絞り弁装置を電子スロットル装置に用いた実施例を、図に基づいて説明する。なお、本件絞り弁装置は上述の通り、EGRバルブ、ディーゼルエンジン吸気通路圧力制御弁、燃料電池用負圧制御バルブ等、絞り弁装置として幅広く利用可能である。従って、スロットルシャフトやスロットルバルブ等の名称は本発明を電子スロットル装置に用いた場合の例で、シャフトやバルブの用途はスロットルに限定されるものではない。
【0018】
図1は電子スロットルの縦断面図で、この図1に基づいて電子スロットル装置1の概要を説明する。電子スロットル装置1はエンジンルームに配置され、エンジンに吸入される吸気の流量を制御する。ドライバーのアクセルペダル操作や、エンジンの回転状態等に応じて、図示しないエンジンコントロールユニットが最適な吸気量を演算して、演算結果に応じた回転量をモータ100に出力する。
【0019】
モータ100は、ボデー300のモータ空間330に配置され、モータ100の回転は、モータシャフト101に圧入固定されたピニオン102から、減速機構200に伝達される。減速機構200は、図2に示すように、中間ギア201の大径歯車202がモータピニオン102と歯合する。中間ギア201は中間シャフト203を中心として回転自在に保持されている。中間シャフト203はボデー300の嵌合穴301に圧入固定されている。
【0020】
中間ギヤ201の小径歯車204が、バルブギア210の外周に円弧状に形成された歯部211と歯合しており、モータピニオン102の回転は中間ギア201を介してバルブギア210に伝達される。従って、減速機構200は、モータピニオン102、中間ギヤ201の大径歯車202と小径歯車204、及びバルブギア210の歯部211により構成される。減速割合は、凡そモータシャフト101が28回転する毎にバルブギア210の1歯部211が時計回り若しくは反時計回りに進むこととなる。
【0021】
バルブギア210のコップ状中心部212の内周には、半円弧状の磁石220及び221が配置され、磁石220、221により磁気回路が形成される。バルブギア210のコップ状中心部212の奥部(図1の下方)には円盤状のレバー401が配置されている。そして、磁石220、221とレバー401はバルブギア210にインサート成形されている。
【0022】
レバー401はスロットルシャフト402の端面にカシメ固定される。従って、バルブギア210は、レバー401を介してスロットルシャフト402に連結し、バルブギア210の回転がスロットルシャフト402に伝達される。スロットルシャフト402には、円盤状のスロットルバルブ400がスクリュー403により固定されており、スロットルバルブ400は、その回動に応じてボデー300に形成された吸気通路320の開口面積を増減させる。
【0023】
ボデー300の開口端303(図1に於いて上側)は、カバー500によって覆われている。カバー500は、ポリブチルテレフタレートなどの樹脂で成形されており、所定部位にリブを形成して強度を得ている。カバー500のうち、スロットルシャフト402の軸線407に対応する位置には、ホールICからなる一対の回転角センサ510が配置されている。回転角センサ510はカバー500に固定されているが、その外周にバルブギア210にインサート成形された一対の円弧状磁石220、221が配置され、磁石220、221はスロットルシャフト402の回動に応じて軸線407周りを回動するので、磁気回路はスロットルバルブ400の回転角に応じた位置に変化する。回転角センサ510は、この磁気回路の位置変化に起因する磁力の変化を検知して、スロットルバルブ400の開度を検出する。そして、検出した位置情報を、図示しないエンジンコントロールユニットにフィードバックする。
【0024】
スロットルシャフト402はスロットルバルブ400を挟んで両側に配置された軸受405、406によって、ボデー300に回転自在に支持されている。軸受405は滑り軸受であり、軸受406はボールベアリングである。ボデー300のスロットルシャフト402用開口部302は、軸受405を挿入するための開口で、プラグ310によって覆われている。
【0025】
ボデー300にはバルブギア210を収容する空間321が形成されており、この空間321にはスロットルシャフト402を付勢するコイルスプリング450が配置されている。コイルスプリング450は図3に示すように、円筒状をしており、両端451、452が径方向外側に折れ曲がって突出している。
【0026】
図4は第1ガイド460の正面図で、図5は第1ガイド460の側面図であるが、図に示すように、第1ガイド460にはコイルスプリング450の円筒状に対応する円形保持部462が形成され、この保持部462にコイルスプリング450の一方側の端面453が収納される。第1ガイド460は、中心部にハブ463を形成し、ハブ463の中心穴464内にスロットルシャフト402が遊嵌入される。換言すれば、第1ガイド460はスロットルシャフト402の周りに回転自在に配置される。
【0027】
第1ガイド460のハブ463と保持部462との間は円盤状の連結部465によって連結される。連結部465の両面には強度を高めるためのリブ466、467が形成されている。一面側のリブ466は図4に示すように、ハブ463から保持部462まで径方向全長に形成され、周方向には45度ずつ離れて8本形成されている。他面側のリブ467は、図6及び図7に示すように、連結部465の保持部462側のみに形成され、周方向には同じく45度ずつ離れて8本形成されている。なお、図6図4のVI-VI線に沿う断面図であるが、図1との関係では上下反転して記載している。
【0028】
第1ガイド460の円形保持部462からは、スプリング端保持部468が径方向に突出形成されている。スプリング端保持部468は、スプリング端451が当接する係止面4681と、スプリング端451が通過する穴部4682、及びスプリング端451を覆う保護部4683とからなる。穴部4682によりコイルスプリング450の組付け性が向上し、保護部4683によりコイルスプリング450の脱落防止が図れる。
【0029】
図8及び図9は、第1ガイド450の円形保持部462及びスプリング端保持部468にコイルスプリング450が配置された状態を示す。この状態は、スプリング端451が第1ガイド460に係止されているが、同時にスプリング端452も第2ガイド461に係止されており、その状態でコイルスプリング450にはプリロードが加わっている。このプリロードにより、スプリング端451は係止面4681に押し付けられている。
【0030】
図10図6のX部の拡大図であるが、図10に示すように、ハブ463は外方(図10では下方)に向かって幅が減少するテーパ形状となっており、最外方部4631の幅が最も狭くなっている。更に、最外方部4631には角部が曲面に形成されているので、実質的な幅はより一層小さくなっている。
【0031】
以上は、第1ガイド460に関して説明したが、第2ガイド461は第1ガイド460と同一形状をしており、第1ガイド460に関する説明は第2ガイド461にも適用できる。図6図1との関係でも、図6に基づいて第1ガイド460の説明を行ったが、図1の第2ガイド461と同形状となっている。
【0032】
このように、第1ガイド460と第2ガイド461とを同一形状とすることで、組付け時に第1ガイド460と第2ガイド461との層別を行う必要がなくなり、組み付け時間の短縮が図れる。加えて、同一形状とすることで、組み付け設備のコストも低減でき、かつ、部品コストも低減できる。
【0033】
ただ、第2ガイド461は第1ガイド460に対して反転して配置されている。そのため、図3に示すように、第1ガイド460の円形保持部462がコイルスプリング450の一方の端面453を収納して保持するのに対し、第2ガイド461の円形保持部462はコイルスプリング450の他方の端面454を収納保持することとなる。
【0034】
第1ガイド460、コイルスプリング450及び第2ガイド461は、図1に示すように、バルブギア210の背面(図1の下方)でスロットルシャフト402の周囲に配置される。配置された状態で、第1ガイド460のハブ463の最外方部4631は金属製のレバー401に当接し、第2ガイド461のハブ463の最外方部4631はボールベアリング406のインナーレース4061と当接している。なお、4062はボールベアリングのアウターレース、4063はボールである。
【0035】
後述するように、ボデー300には第1ガイド460のスプリング端保持部468及び第2ガイド461のスプリング端保持部468と当接して、コイルスプリング450のバネ力を受けるバネ受けが形成されている。そして、それぞれのスプリング端保持部468がそれぞれのバネ受けに当接した状態では、コイルスプリング450の付勢力によって、スロットルバルブ400は吸気通路320をバルブ中間開度に保持する。このバルブ中間開度は閉位置ではあるが、故障時の退避走行が可能なように、スロットルバルブ400は吸気通路320を全閉にすることはなく、所定量の吸気は流入できるように多少開いた位置となっている。
【0036】
次に、コイルスプリング450の組付けを説明する。コイルスプリング450にプリロードの掛かっていない状態では、図11に示すように、第1ガイド460と第2ガイド461との間は、コイルスプリング450により大きく離れている。尤も、この図11の状態でも、第1ガイド460の円形保持部462がコイルスプリング450の一方の端面453を収納しつつ、スプリング端保持部468がスプリング端451を保持し、また、第2ガイド461の円形保持部462がコイルスプリング450の他方の端面454を収納しつつ、スプリング端保持部468がスプリング端452を保持している。
【0037】
この状態から、コイルスプリング450にプリロードを加えて、第1ガイド460のスプリング端保持部468をバルブギア210のバネ受けに当接させ、一方、第2ガイド461のスプリング端保持部468をボデー300のバネ受けに当接させる。この状態では、図12に示すように、第1ガイド460と第2ガイド461との間隔は狭くなるが、本例では、コイルスプリング450の与圧によって、間隔が狭くなった状態であっても、第1ガイド460のハブ463と第2ガイド461とのハブ463との間には、所定の間隙αが維持できている。
【0038】
従って、組付け状態での第1ガイド460及び第2ガイド461の当接部は、第1ガイド460のハブ463の最外方部4631が金属製レバー401に当接するのと、第2ガイド461のハブ463の最外方部4631がボールベアリング406のインナーレース4061に当接するのみとなっている。そのため、以下に説明するように、回動に伴う摺動抵抗は極めて小さくなっている。
【0039】
エンジンの回転数を上昇させるためにスロットルバルブ400が吸気通路320を開く場合、コイルスプリング450の一方の端部451はその位置を保持し、他方の端部452がスロットルシャフト402の回動に応じて移動する。この移動に応じ、コイルスプリング450はスロットルシャフト402やバルブギア210、ひいてはモータ100にリターン側の付勢力を付加する。
【0040】
従って、このバルブ中間開度から全開開度への回動時、第1ガイド460は回動を行わず、第2ガイド461のみが回動する。ここで、回動を行わないと言うことは、回動しない第1ガイド460と回動するスロットルシャフト402との間で相対的な位置変化が生じることを意味する。ただ、第1ガイド460の位置変化に伴うスロットルシャフト402軸方向の摺動は、ハブ463の最外方部4631と金属製レバー401との間のみであり、その摺動部の当接面積は極めて少なくなっている。これは、スロットルバルブ400の開度が全開開度からバルブ中間開度に戻る際の回動も同様である。
【0041】
一方で、アイドリング状態とすべく、スロットルバルブ402が吸気通路320を閉じる場合には、スロットルシャフト402はバルブ中間開度から全閉位置に回動する。その場合には、全開方向とは逆に、コイルスプリング450の他方の端部452はその位置を保持し、一方の端部451がスロットルシャフト402の回動に応じて移動する。そして、コイルスプリング450は、この移動に応じてスロットルシャフト402やバルブギア210、ひいてはモータ100にオープン側の付勢力を付加する。
【0042】
上記全開側と同様、スロットルシャフト402との間の相対的な位置変化は、位置を保持しているガイドで、この場合は、第2ガイド461に生じる。そして、この相対的な回動時での第2ガイド461の位置変化に伴うスロットルシャフト402軸方向の摺動は、第2ガイド461のハブ463の最外方部4631とボールベアリング406のインナーレース4061との間での摺動となる。この場合も、摺動する面積は極めて小さい。この相対的な位置変化は全閉開度からバルブ中間開度開度に戻る際も同様である。
【0043】
この移動を図16乃至図19を用いて説明する。図16は、図2のバルブギア210部分を示したもので、バルブ中間開度の位置である。図17は、図16のXVII-XVII線に沿う断面図、図18及び図19は、それぞれ図17のXVIII-XVIII線及びXIX-XIX線に沿う断面図である。また、図18及び図19の(a)はバルブ中間開度、(b)は全閉位置、(c)は全開位置を示す。
【0044】
図18に示すように、第1ガイド460は、バルブ中間開度(図18(a))から全閉(図18(b))の間は、スプリング端451を保持するスプリング端保持部468はボデー300の係止ピン305に当接したままで、単にバルブギア210がスプリング端保持部468から離れるのみである。逆に、バルブ中間開度(図18(a))から全開(図18(c))の間は、スプリング端保持部468はバルブギア210により時計回り方向に移動する。
【0045】
第2ガイド4601の移動は図19に示すが、バルブ中間開度(図19(a))から全閉(図19(b))の間は、スプリング端452を保持するスプリング端保持部468は、バルブギア210の回動に合わせてボデー300の移動溝306内を反時計回りに移動する。一方、バルブ中間開度(図19(a))から全開(図19(c))の間は、スプリング端保持部468はボデー300の移動溝306の一端である係止端307に係止したままで移動はない。
【0046】
このように、本例によれば、バルブ中間開度を中心として、それより全開開度側へコイルスプリング450の付勢力に抗して回動する際、及び全開開度からバルブ中間開度にコイルスプリング450の付勢力を受けつつ回動する際には、第1ガイド460のハブ463の最外方部4631と金属製レバー401との間の小さな接触面積での摺動となり、逆に、バルブ中間開度から全閉開度側にコイルスプリング450の負勢力に抗して回動する際、及び全閉開度からバルブ中間開度にコイルスプリング450の付勢力を受けつつ回動する際には、第2ガイド461のハブ463の最外方部4631とインナーレース4061との間の小さな接触面積での摺動となる。
【0047】
特に、両ガイド460、461ともハブ463での摺動としているので、最小半径での摺接となり、摺動抵抗に起因する摺動トルクも最小となる。加えて、レバー401及びインナーレース4061は緻密な金属であるので摩擦係数も小さく、樹脂製ガイド460、461との間の摺動抵抗は一層小さくなる。そのため、図13に示すように、ヒステリシスが大幅に低減する。なお、図13でaで示すのが、樹脂製ガイドがボデー300やバルブギア210と全面的に接しながら摺動する従来構造のヒステリシスで、bで示すのが、本例のヒステリシスである。
【0048】
なお、本例では軸受406をボールベアリングとしたが、軸受406を軸受405と同様の滑り軸受としてもよい。その場合でも、摩擦係数は小さく第2ガイド461との摺動抵抗が小さいことは同様である。また、滑り軸受けに潤滑オイルを含侵した焼結金属を用いてもよい。
【0049】
また、本例ではバルブ中間開度から全開開度の回動ではコイルスプリング450の第2ガイド461側のスプリング端452が変動し、バルブ中間開度から全閉開度の回動で第1ガイド460側のスプリング端451が変動する構成としたが、コイルスプリング450の動作を逆にしてもよい。モータ100の回転方向が逆になるが、動作は本例と同様である。図13からも分かるように、スロットルシャフト402の回動量はバルブ中間開度から全開開度の方がバルブ中間開度から全閉開度よりも大きい。そして、摩擦係数は軸受406の方がレバー401より小さいので、バルブ中間開度から全開開度の回動の際にコイルスプリング450の第2ガイド461側のスプリング端452が変動した方が、ヒステリシス低減効果が一層図られることとなる。
【0050】
上述の例は、望ましい実施例であるが、ハブ463の形状は種々に変更可能である。図14のようにT字形状としてもよく、図14のようにL字形状としてもよい。T字形状であれ、L字形状であれ、ハブ463と連結部465との間に空間469が形成されるので、この空間469を有効に利用して、ボデー300の突出部やバルブギア210の突出部を空間469に収納することができれば、電子スロットル装置1のスロットルシャフト402軸方向長さを小さくすることができる。
【0051】
また、上述の例では第1ガイド460と第2ガイド461との間に微小間隙αを形成したが、組付け等の理由により、両ガイド460、461のハブ463が当接する際には、多少の当接は許容せざるを得ない。
【0052】
また、上述の例では第1ガイド460と第2ガイド461とを同一形状として、組付け時間の短縮、組付け設備コストの低減、及び部品コストの低減を図ったが、バルブギア210やボデー300の形状との関係で、第1ガイド460と第2ガイド461との形状を異ならせる必要がある場合には、形状変更は許容せざるを得ない。その場合、第1ガイド460若しくは第2ガイド461の一方がハブ463以外の部位でボデー300やバルブギア210に接触するのは最小限で許容せざるを得ない。また、上述の例では、連結部を円盤状としていたが、他の形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本件開示の絞り弁装置は、エンジンの吸気量を制御する電子スロットル装置や、排気ガス循環量を制御するEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気を制御する吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御する負圧制御バルブ等に関するもので、特に、コイルスプリングのガイドが摺動する際の接触抵抗を低減させることで、ヒステリシスを低減し絞り弁装置の正確な制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・電子スロットル装置
100・・・モータ
101・・・モータシャフト
102・・・モータピニオン
200・・・減速機構
201・・・中間ギヤ
201・・・大径歯車
203・・・中間シャフト
204・・・小径歯車
210・・・バルブギア
211・・・歯部
212・・・コップ状中心部
220・・・磁石
221・・・磁石
300・・・ボデー
301・・・嵌合穴
302・・・開口部
305・・・係止ピン
306・・・移動溝
307・・・係止端
310・・・プラグ
320・・・吸気通路
321・・・バルブギア収容空間
330・・・モータ空間
400・・・スロットルバルブ
401・・・レバー
402・・・スロットルシャフト
403・・・スクリュ-
405・・・軸受
406・・・軸受
407・・・軸線
450・・・コイルスプリング
451・・・スプリング端
452・・・スプリング端
453・・・スプリング端面
454・・・スプリング端面
460・・・第1ガイド
461・・・第2ガイド
462・・・円形保持部
463・・・ハブ
4631・・・最外方部
464・・・中心穴
465・・・連結部
466・・・リブ
467・・・リブ
468・・・スプリング端保持部
4681・・・係止面
4682・・・穴部
4683・・・保護部
500・・・カバー
510・・・回転角センサ
図1
図2
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図17
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