(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230411BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019165713
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】水野 正隆
(72)【発明者】
【氏名】倉田 好和
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の前側に配置された1対のフォークを備えたフォークリフトを、前記フォークが差し込まれる複数の開口部が設けられたパレットまで走行させる走行制御装置において、
前記
フォークリフトの自己位置を推定する位置推定部と、
前記
フォークリフトに設けられ、
前記フォークリフトの前方にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、前記
フォークリフトから前記
パレットまでの距離を検出する
レーザセンサと、
前記位置推定部により推定された前記
フォークリフトの自己位置に基づいて、前記
フォークリフトを前記
パレットに近づく方向に走行させるように制御する第1走行制御部と、
前記第1走行制御部による制御処理が実行された後、前記
フォークリフトの自己位置に基づいて、前記
フォークリフトが前記
レーザセンサにより前記
パレットまでの距離を検出可能な第1位置に達したかどうかを判断し、前記
フォークリフトが前記第1位置に達したときに、前記
フォークリフトの自己位置と前記
レーザセンサの検出距離とに基づいて、前記
フォークリフトを前記第1位置から前記
パレットに向けて走行させるように制御する第2走行制御部と、
前記第2走行制御部による制御処理が実行された後、前記
レーザセンサの検出距離または前記
フォークリフトの自己位置に基づいて、前記
フォークリフトが前記第1位置よりも前記
パレットに近い第2位置に達したかどうかを判断し、前記
フォークリフトが前記第2位置に達したときに、前記
フォークリフトの自己位置と前記
レーザセンサの検出距離とに基づいて、前記
フォークリフトを前記第2位置から前記
パレットに向けて走行させるように制御する第3走行制御部とを備え
、
前記第2走行制御部は、前記フォークリフトが前記第1位置に達したときに、前記フォークリフトの自己位置と前記レーザセンサの検出距離とに基づいて、前記基台の前端中心に対する前記パレットの手前側中心の相対位置を検知して、前記基台の前端中心から前記パレットの手前側中心までの第1走行経路を作成し、前記フォークリフトを前記第1位置から前記パレットに向けて前記第1走行経路に沿って走行させるように制御し、
前記第3走行制御部は、前記フォークリフトが前記第2位置に達したときに、前記フォークリフトの自己位置と前記レーザセンサの検出距離とに基づいて、前記基台の前端中心に対する前記パレットの手前側中心の相対位置を検知して、前記基台の前端中心から前記パレットの手前側中心までの第2走行経路を作成し、前記フォークリフトを前記第2位置から前記パレットに向けて前記第2走行経路に沿って走行させるように制御し、
前記第1走行経路及び前記第2走行経路は、前記フォークリフトが前記パレットに対して真っ直ぐ向くと共に、前記フォークが前記パレットの前記開口部と対向することで、前記フォークリフトが前記パレットの真正面に到達するように作成され、
前記第3走行制御部は、前記基台の前端中心に対する前記パレットの手前側中心の相対位置に基づいて、前記フォークリフトが前記パレットの真正面に到達したかどうかを判断し、前記フォークリフトが前記パレットの真正面に到達したと判断したときに、前記フォークリフトを停止させるように制御する走行制御装置。
【請求項2】
前記
フォークリフトから前記
フォークリフトの周囲に位置する物体までの距離を検出する物体距離検出部を更に備え、
前記位置推定部は、前記物体距離検出部の検出データと予め保存された地図データとを照らし合わせることにより、前記
フォークリフトの自己位置を推定する請求項
1記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の走行制御装置は、バーコードを撮像してバーコードの映像情報を取得するCCDカメラと、バーコードの映像情報に基づいて無人搬送車の停止位置を把握する映像情報処理部と、この映像情報処理部により算出された無人搬送車の停止位置とメモリに予め貯蔵された基準値との差を算出して位置補正値を求め、その位置補正値に応じて無人搬送車が予め決められた作業位置に移動するようにホイール駆動モータを制御する演算部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術のように、カメラ等を用いて移動体の自己位置を推定しながら移動体を目的地まで自動的に走行させる走行制御装置では、移動体の位置を目的地に対して高精度に合わせる必要がある。しかし、カメラ等を用いて移動体の自己位置を推定しながら移動体を走行させる場合には、例えば床面に埋設された磁気棒や磁気マークを磁気センサで検出しながら移動体を走行させる場合に比べて、移動体の位置精度が悪い。従って、目的地に対する移動体の位置合わせを高精度に行うことが困難である。
【0005】
本発明の目的は、移動体を目的地まで走行させる際に、目的地に対する移動体の位置合わせを高精度に行うことができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動体を目的地まで走行させる走行制御装置において、移動体の自己位置を推定する位置推定部と、移動体に設けられ、移動体から目的地までの距離を検出する目的地距離検出部と、位置推定部により推定された移動体の自己位置に基づいて、移動体を目的地に近づく方向に走行させるように制御する第1走行制御部と、第1走行制御部による制御処理が実行された後、移動体の自己位置に基づいて、移動体が目的地距離検出部により目的地までの距離を検出可能な第1位置に達したかどうかを判断し、移動体が第1位置に達したときに、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体を第1位置から目的地に向けて走行させるように制御する第2走行制御部と、第2走行制御部による制御処理が実行された後、目的地距離検出部の検出距離または移動体の自己位置に基づいて、移動体が第1位置よりも目的地に近い第2位置に達したかどうかを判断し、移動体が第2位置に達したときに、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体を第2位置から目的地に向けて走行させるように制御する第3走行制御部とを備える。
【0007】
このような走行制御装置においては、まず移動体の自己位置に基づいて、移動体が目的地に近づく方向に走行するように制御される。そして、移動体が目的地距離検出部により目的地までの距離を検出可能な第1位置に達すると、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体が第1位置から目的地に向けて走行するように制御される。そして、移動体が第1位置よりも目的地に近い第2位置に達すると、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体が第2位置から目的地に向けて走行するように制御される。このように第1位置よりも目的地に近い第2位置において、目的地距離検出部により移動体から目的地までの距離が再度検出される。このため、移動体から目的地までの距離の検出精度が高くなる。これにより、移動体を目的地まで走行させる際に、目的地に対する移動体の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0008】
第2走行制御部は、移動体が第1位置に達したときに、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体から目的地までの第1走行経路を作成し、移動体を第1位置から目的地に向けて第1走行経路に沿って走行させるように制御し、第3走行制御部は、移動体が第2位置に達したときに、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体から目的地までの第2走行経路を作成し、移動体を第2位置から目的地に向けて第2走行経路に沿って走行させるように制御してもよい。このような構成では、移動体から目的地までの第1走行経路及び第2走行経路を作成することにより、移動体を目的地に向けて容易に誘導走行させることができる。また、移動体が目的地の真正面で目的地に対して真っ直ぐ向くような第2走行経路を作成すると、移動体の位置及び姿勢を目的地に対して高精度に合わせることができる。
【0009】
第2走行制御部は、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体に対する目的地の相対位置を検知して第1走行経路を作成し、第3走行制御部は、移動体の自己位置と目的地距離検出部の検出距離とに基づいて、移動体に対する目的地の相対位置を検知して第2走行経路を作成してもよい。このような構成では、移動体に対する目的地の相対位置を検知することにより、絶対座標系の位置誤差成分が無くなるため、目的地に対して正確な第1走行経路及び第2走行経路が作成される。従って、目的地に対する移動体の位置合わせをより高精度に行うことができる。
【0010】
走行制御装置は、移動体から移動体の周囲に位置する物体までの距離を検出する物体距離検出部を更に備え、位置推定部は、物体距離検出部の検出データと予め保存された地図データとを照らし合わせることにより、移動体の自己位置を推定してもよい。このような構成では、例えばSLAMという自己位置推定技術を用いて、移動体の自己位置を簡単に推定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体を目的地まで走行させる際に、目的地に対する移動体の位置合わせを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。
【
図2】倉庫内や工場内でフォークリフトが作業を行う様子を示す概念図である。
【
図3】
図1に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】フォークリフトがパレット検出可能位置からパレット近傍位置まで走行する様子を示す概念図である。
【
図6】フォークリフトがパレット近傍位置からパレットの真正面まで走行する様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の走行制御装置1は、
図2に示されるように、移動体であるフォークリフト2をパレット3まで自動的に走行させる装置である。なお、
図2は、倉庫内や工場内でフォークリフト2が作業を行う様子を示す概念図である。
【0015】
フォークリフト2は、ここではリーチ式フォークリフトである。フォークリフト2は、基台2aと、この基台2aの前側に配置され、基台2aの前後方向及び上下方向に移動可能な1対のフォーク2bとを備えている。なお、フォークリフト2は、カウンタ式フォークリフトであってもよい。
【0016】
パレット3は、フォークリフト2が走行する目的地である。パレット3は、荷物を載せるための荷役台である。パレット3には、フォークリフト2のフォーク2bが差し込まれる複数の開口部3aが設けられている。フォークリフト2は、パレット3の開口部3aにフォーク2bを差し込んだ状態で、フォーク2bによりパレット3を持ち上げる。
【0017】
走行制御装置1は、フォークリフト2に搭載されている。走行制御装置1は、後部レーザセンサ4と、前部レーザセンサ5と、駆動部6と、コントローラ7とを備えている。
【0018】
後部レーザセンサ4は、
図2に示されるように、基台2aの後部に取り付けられている。後部レーザセンサ4は、フォークリフト2の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、フォークリフト2からフォークリフト2の周囲に位置する物体8までの距離を検出する物体距離検出部を構成している。後部レーザセンサ4は、フォークリフト2の後方を含む領域にレーザを照射する。後部レーザセンサ4としては、例えばレーザレンジファインダが用いられる。なお、フォークリフト2の周囲に位置する物体8としては、壁8a、柱8b及びその他の特徴物8c等がある。
【0019】
前部レーザセンサ5は、基台2aの前部に取り付けられている。前部レーザセンサ5は、フォークリフト2の前方にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、フォークリフト2の前方に位置するパレット3までの距離を検出する目的地距離検出部を構成している。前部レーザセンサ5は、フォークリフト2の前方を含む領域にレーザを照射する(
図5及び
図6参照)。前部レーザセンサ5としては、例えばレーザレンジファインダが用いられる。
【0020】
駆動部6は、特に図示はしないが、フォークリフト2の走行輪を回転させる走行モータと、フォークリフト2の操舵輪を転舵させる操舵モータとを有している。
【0021】
コントローラ7は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ7は、位置推定部10と、第1走行制御部11と、第2走行制御部12と、第3走行制御部13とを有している。
【0022】
位置推定部10は、後部レーザセンサ4の検出データに基づいて、フォークリフト2の自己位置を推定する。位置推定部10は、例えばSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、フォークリフト2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。SLAMは、レーザセンサ等を利用して、自己位置推定と環境地図の作成とを同時に行う。
【0023】
具体的には、位置推定部10は、後部レーザセンサ4により検出されたフォークリフト2から物体8までの距離データとメモリ(図示せず)に予め保存されたフォークリフト2の周囲環境の地図データとを照らし合わせることにより、フォークリフト2の自己位置を推定する。このとき、位置推定部10は、地図上の絶対座標系においてフォークリフト2の自己位置の推定演算を行う。なお、フォークリフト2の自己位置は、2次元座標(XY座標)及び向きで表される。地図データには、物体8が登録されている。
【0024】
第1走行制御部11は、フォークリフト2の走行開始が指示されると、位置推定部10により推定されたフォークリフト2の自己位置に基づいて、フォークリフト2をパレット3に近づく方向に走行させるように駆動部6を制御する。
【0025】
第2走行制御部12は、第1走行制御部11による制御処理が実行された後、位置推定部10により推定されたフォークリフト2の自己位置に基づいて、フォークリフト2が前部レーザセンサ5によりパレット3を検出可能なパレット検出可能位置(第1位置)に達したかどうかを判断する。そして、第2走行制御部12は、フォークリフト2がパレット検出可能位置に達したときに、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5により検出されたフォークリフト2からパレット3までの距離(前部レーザセンサ5の検出距離)とに基づいて、フォークリフト2をパレット検出可能位置からパレット3に向けて走行させるように駆動部6を制御する。
【0026】
第3走行制御部13は、第2走行制御部12による制御処理が実行された後、前部レーザセンサ5により検出されたフォークリフト2からパレット3までの距離(前部レーザセンサ5の検出距離)に基づいて、フォークリフト2がパレット検出可能位置よりもパレット3に近いパレット近傍位置(第2位置)に達したかどうかを判断する。そして、第3走行制御部13は、フォークリフト2がパレット近傍位置に達したときに、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2をパレット近傍位置からパレット3に向けて走行させるように駆動部6を制御する。
【0027】
図3及び
図4は、コントローラ7により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、フォークリフト2の走行の開始が指示されると、実行される。なお、フォークリフト2及びパレット3の現在位置は、予め分かっている。
【0028】
図3及び
図4において、コントローラ7は、フォークリフト2の走行の開始が指示されると、フォークリフト2をパレット3に近づく方向に走行させるように駆動部6を制御する(
図3の手順S101)。
【0029】
続いて、コントローラ7は、後部レーザセンサ4の検出データを取得する(
図3の手順S102)。そして、コントローラ7は、後部レーザセンサ4の検出データと予め保存された地図データとをマッチングさせて、フォークリフト2の自己位置を推定する(
図3の手順S103)。
【0030】
続いて、コントローラ7は、フォークリフト2の推定位置に基づいて、フォークリフト2がパレット検出可能位置に達したかどうかを判断する(
図3の手順S104)。パレット検出可能位置は、地図上の指定範囲として予め決められている。パレット検出可能位置は、前部レーザセンサ5によりパレット3を検出可能なぎりぎりの境界の位置ではなく、前部レーザセンサ5によりパレット3を検出することができる予め定められた位置である。パレット検出可能位置は、例えばパレット3からの距離が第1規定値以下の範囲内である。コントローラ7は、フォークリフト2がパレット検出可能位置に達していないと判断したときは、上記の手順S101~S103を再度実行する。
【0031】
コントローラ7は、フォークリフト2がパレット検出可能位置に達したと判断したときは、前部レーザセンサ5の検出データを取得する(
図3の手順S105)。そして、コントローラ7は、前部レーザセンサ5の検出データに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知する(
図3の手順S106)。このとき、コントローラ7は、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置として、フォークリフト2の基台2aの前端中心に対するパレット3の手前端中心の相対位置を検知する。パレット3の手前端は、パレット3のフォークリフト2側の端である。
【0032】
続いて、コントローラ7は、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置に基づいて、フォークリフト2からパレット3までの走行経路P(第1走行経路)を作成する(
図3の手順S107)。走行経路Pは、
図5(a)に示されるように、フォークリフト2の基台2aの前端中心からパレット3の手前端中心までの経路である。
【0033】
そして、コントローラ7は、
図5(b)に示されるように、フォークリフト2を走行経路Pに沿って誘導走行させるように駆動部6を制御する(
図3の手順S108)。続いて、コントローラ7は、前部レーザセンサ5の検出データを取得する(
図3の手順S109)。そして、コントローラ7は、上記の手順S106と同様に、前部レーザセンサ5の検出データに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知する(
図3の手順S110)。
【0034】
続いて、コントローラ7は、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置に基づいて、フォークリフト2がパレット近傍位置に達したかどうかを判断する(
図3の手順S111)。パレット近傍位置は、地図上の指定範囲として予め決められている。パレット近傍位置は、例えばパレット3からの距離が第1規定値よりも短い第2規定値以下の範囲内である。コントローラ7は、フォークリフト2がパレット近傍位置に達していないと判断したときは、上記の手順S108~S110を再度実行する。
【0035】
コントローラ7は、フォークリフト2がパレット近傍位置に達したと判断したときは、前部レーザセンサ5の検出データを取得する(
図4の手順S112)。そして、コントローラ7は、前部レーザセンサ5の検出データに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知する(
図4の手順S113)。フォークリフト2に対するパレット3の相対位置は、上記の手順S106と同様である。
【0036】
続いて、コントローラ7は、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置に基づいて、フォークリフト2からパレット3までの走行経路Q(第2走行経路)を作成する(
図4の手順S114)。走行経路Qは、
図6(a)に示されるように、上記の走行経路Pと同様に、フォークリフト2の基台2aの前端中心からパレット3の手前端中心までの経路である。
【0037】
このとき、走行経路Qは、フォークリフト2がパレット3の真正面に到達するように作成される。フォークリフト2がパレット3の真正面に到達するときは、フォークリフト2がパレット3に対して真っ直ぐ向くと共に、フォークリフト2のフォーク2bがパレット3の開口部3aと対向する。なお、走行経路Qは、上記の走行経路Pよりも短い。
【0038】
そして、コントローラ7は、
図6(b)に示されるように、フォークリフト2を走行経路Qに沿って誘導走行させるように駆動部6を制御する(
図4の手順S115)。続いて、コントローラ7は、前部レーザセンサ5の検出データを取得する(
図4の手順S116)。そして、コントローラ7は、上記の手順S113と同様に、前部レーザセンサ5の検出データに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知する(
図4の手順S117)。
【0039】
続いて、コントローラ7は、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置に基づいて、フォークリフト2がパレット3の真正面に達したかどうかを判断する(
図4の手順S118)。コントローラ7は、フォークリフト2がパレット3の真正面に達していないと判断したときは、上記の手順S115~S117を再度実行する。コントローラ7は、フォークリフト2がパレット3の真正面に達したと判断したときは、フォークリフト2を停止させるように駆動部6を制御する(
図4の手順S119)。
【0040】
以上において、位置推定部10は、手順S102,S103を実行する。第1走行制御部は、手順S101を実行する。第2走行制御部12は、手順S104~S108を実行する。第3走行制御部13は、手順S109~S119を実行する。
【0041】
ところで、フォークリフト2の自己位置を推定しながらフォークリフト2をパレット3まで走行させる際には、フォーク2bにより荷役を行うために、パレット3に対するフォークリフト2の位置及び姿勢を高精度に合わせる必要がある。しかし、前部レーザセンサ5からパレット3までの距離が長くなるに従い、前部レーザセンサ5の検出誤差が大きくなる。
【0042】
本実施形態では、まずフォークリフト2の自己位置に基づいて、フォークリフト2がパレット3に近づく方向に走行するように制御される。そして、フォークリフト2が前部レーザセンサ5によりパレット3までの距離を検出可能なパレット検出可能位置に達すると、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2がパレット検出可能位置からパレット3に向けて走行するように制御される。そして、フォークリフト2がパレット検出可能位置よりもパレット3に近いパレット近傍位置に達すると、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2がパレット近傍位置からパレット3に向けて走行するように制御される。このようにパレット検出可能位置よりもパレット3に近いパレット近傍位置において、前部レーザセンサ5によりフォークリフト2からパレット3までの距離が再度検出される。このため、フォークリフト2からパレット3までの距離の検出精度が高くなる。これにより、フォークリフト2をパレット3まで走行させる際に、パレット3に対するフォークリフト2の位置合わせを高精度に行うことができる。その結果、磁気誘導式の走行制御システムのように、床面に磁気棒や磁気マーク等を埋設しなくて済む。従って、設備コストの削減を図りつつ、パレット3に対するフォークリフト2の位置合わせを高精度に行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2からパレット3までの走行経路Pが作成され、フォークリフト2がパレット検出可能位置からパレット3に向けて走行経路Pに沿って走行するように制御される。そして、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2からパレット3までの走行経路Qが作成され、フォークリフト2がパレット近傍位置からパレット3に向けて走行経路Qに沿って走行するように制御される。このようにフォークリフト2からパレット3までの走行経路P,Qを作成することにより、フォークリフト2をパレット3に向けて容易に誘導走行させることができる。また、フォークリフト2がパレット3の真正面でパレット3に対して真っ直ぐ向くような走行経路Qを作成すると、フォークリフト2の位置及び姿勢をパレット3に対して高精度に合わせることができる。
【0044】
また、本実施形態では、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置が検知されて走行経路Pが作成される。そして、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置が検知されて走行経路Qが作成される。このようにフォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知することにより、絶対座標系の位置誤差成分が無くなるため、パレット3に対して正確な走行経路P,Qが作成される。従って、パレット3に対するフォークリフト2の位置合わせをより高精度に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、フォークリフト2からフォークリフト2の周囲に位置する物体8までの距離を検出する後部レーザセンサ4の検出データと予め保存された地図データとを照らし合わせることにより、フォークリフト2の自己位置が推定される。従って、例えばSLAMという自己位置推定技術を用いて、フォークリフト2の自己位置を簡単に推定することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、前部レーザセンサ5により検出されたフォークリフト2からパレット3までの距離(前部レーザセンサ5の検出距離)に基づいて、フォークリフト2がパレット近傍位置に達したかどうかが判断されているが、フォークリフト2がパレット近傍位置に達したかどうかの判断については、特にその形態には限られず、位置推定部10により推定されたフォークリフト2の自己位置に基づいて行ってもよい。また、フォークリフト2がパレット3の真正面に達したかどうかの判断についても、フォークリフト2の自己位置に基づいて行ってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、フォークリフト2の自己位置と前部レーザセンサ5の検出距離とに基づいて、フォークリフト2に対するパレット3の相対位置を検知し、パレット3の相対位置に応じてフォークリフト2を誘導走行させているが、特にその形態には限られず、例えばフォークリフト2に対するパレット3の相対位置からパレット3の絶対位置を算出し、その絶対位置に応じてフォークリフト2を誘導走行させてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、フォークリフト2がパレット検出可能位置に達すると、フォークリフト2をパレット検出可能位置からパレット3に向けて走行させるように制御し、その後フォークリフト2がパレット近傍位置に達すると、フォークリフト2をパレット近傍位置からパレット3に向けて走行させるように制御する、という2段階でフォークリフト2の走行制御を行っているが、特にその形態には限られない。例えば、上記のパレット検出可能位置及びパレット近傍位置での走行制御に加え、フォークリフト2がパレット近傍位置よりも更にパレット3に近い位置に達すると、フォークリフト2をその位置からパレット3に向けて走行させるように制御する、という3段階以上でフォークリフト2の走行制御を行ってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、後部レーザセンサ4によってフォークリフト2の周囲に位置する物体8までの距離が検出されているが、特にその形態には限られず、例えば前部レーザセンサ5によってフォークリフト2の周囲に位置する物体8までの距離を検出してもよい。この場合には、前部レーザセンサ5は、フォークリフト2からパレット3までの距離を検出する機能と、フォークリフト2から物体8までの距離を検出する機能とを兼ね備えることになる。従って、使用されるセンサが最小限で済み、部品点数の削減につながる。
【0050】
また、上記実施形態では、前部レーザセンサ5によってフォークリフト2からパレット3までの距離が検出されているが、フォークリフト2からパレット3までの距離を検出する目的地距離検出部としては、特にレーザセンサには限られず、カメラ等を使用してもよい。また、フォークリフト2から物体8までの距離を検出する物体距離検出部としても、同様にカメラ等を使用してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、走行制御装置1全体がフォークリフト2に搭載されているが、特にその形態には限られず、目的地距離検出部及び物体距離検出部がフォークリフト2に搭載されていればよく、位置推定部10、第1走行制御部11、第2走行制御部12及び第3走行制御部13については、フォークリフト2以外の固定設備等に設置されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態は、フォークリフト2をパレット3まで走行させる走行制御装置1であるが、フォークリフト2が走行する目的地としては、特にパレット3には限られず、例えばフォークリフト2の待機場所等であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態は、フォークリフト2を目的地まで走行させる走行制御装置1であるが、本発明は、特にフォークリフト2には限られず、例えば他の産業車両または無人搬送車等のように目的地に位置精度良く合わせる必要がある移動体であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…走行制御装置、2…フォークリフト(移動体)、3…パレット(目的地)、4…後部レーザセンサ(物体距離検出部)、5…前部レーザセンサ(目的地距離検出部)、8…物体、10…位置推定部、11…第1走行制御部、12…第2走行制御部、13…第3走行制御部、P…走行経路(第1走行経路)、Q…走行経路(第2走行経路)。