(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ショートアーク型放電ランプおよび光照射装置
(51)【国際特許分類】
H01J 61/52 20060101AFI20230411BHJP
H01J 5/50 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01J61/52 B
H01J5/50 Z
(21)【出願番号】P 2019167935
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚久
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】信田 和彦
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-075069(JP,A)
【文献】特開平11-283898(JP,A)
【文献】特開2001-135134(JP,A)
【文献】特開2001-216938(JP,A)
【文献】特開2004-127665(JP,A)
【文献】米国特許第05672931(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0010447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/52
H01J 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部の一端に連続して封止部が形成されてなる発光管と、前記封止部が挿入されて固定された口金とを備え、前記封止部に箔シール構造が形成されたショートアーク型放電ランプであって、
前記口金の外端面部と前記封止部の外端面との間には、内部空間が形成され、
前記口金の外端面部は、前記内部空間に冷却風を流入出させる複数の通風口を有し、
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流入用通風口であり、
前記
流入用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、前記口金の外端面部に対向して配置され、前記
流入用通風口に対応する排出口の最大長さを画定する線分の長さより大きいことを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
【請求項2】
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流出用通風口であり、
前記流出用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、前記口金の外端面部に対向して配置され、前記流出用通風口に対応する排出口の最大長さを画定する線分の長さより大きいことを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項3】
発光部の一端に連続して封止部が形成されてなる発光管と、前記封止部が挿入されて固定された口金とを備え、前記封止部に箔シール構造が形成されたショートアーク型放電ランプであって、
前記口金の外端面部と前記封止部の外端面との間には、内部空間が形成され、
前記口金の外端面部は、前記内部空間に冷却風を流入出させる複数の通風口を有し、
前記複数の通風口は前記口金の外周面と同軸の仮想円に沿って配置されており、
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流入用通風口であり、
前記流入用通風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計が、前記口金の外端面部に対向して配置される送風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計より大きいことを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
【請求項4】
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流出用通風口であり、
前記流出用通風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計が、前記口金の外端面部に対向して配置される排出口と重なる前記仮想円の円弧の合計の長さの合計より大きいことを特徴とする請求項3に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプと、
前記ショートアーク型放電ランプの前記口金を保持するランプ保持部と、
前記口金の前記外端面部の前記通風口を介して前記内部空間に冷却風を流入出させる送風機構とを備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項6】
前記ランプ保持部は、それぞれ前記通風口に連通するよう配置された、冷却風を送風する送風口および冷却風を排出する排出口を有することを特徴とする請求項5に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管の封止部に口金が装着されたショートアーク型放電ランプおよびこのショートアーク型放電ランプを備えた光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子、液晶表示素子等の製造工程に用いられる露光装置や、種々の映写機においては、光源としてショートアーク型放電ランプが用いられている。このショートアーク型放電ランプは、発光管内に陽極および陰極が互いに対向して配置されると共に、当該発光管内に、水銀、キセノンガス等の発光物質が封入されて構成されている。また、ショートアーク型放電ランプにおいて、発光管の封止部に高い耐圧性が要求される場合には、封止部の封止構造として、封止用の導電箔を用いる箔シール構造が採用されている。
【0003】
このようなショートアーク型放電ランプは、点灯時に発光管が極めて高温となり、これに伴い、発光管の封止部も高温になる。そして、封止部が高温となると、封止部内に埋設された導電箔の酸化が進行することにより、封止部が破損して使用不能になるおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するために、封止部に装着された口金の周面部に第1の開口を形成すると共に、口金の外端面部に第2の開口を形成し、口金における第1の開口が形成された部分に冷却風を吹き付けることにより、第1の開口から口金内に冷却風を流入させ、第2の開口から口金の外部に冷却風を流出させる技術(特許文献1参照)や、封止部に装着された口金の周面部に流入用空気孔および流出用空気孔を形成し、口金における流入用空気孔が形成された部分に冷却風を吹き付けることにより、当該流入用空気口から口金内に冷却風を流入させ、流出用空気孔から口金の外部に冷却風を流出させる技術(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-216938号公報
【文献】特開2002-75282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のショートアーク型放電ランプにおいては、外部リードには直接冷却風が当たるため、外部リードを高い効率で冷却することは可能であるが、封止部を高い効率で冷却することが困難である。
また、封止部を冷却するために、大きい流量の冷却風を吹き付けたときには、冷却風の一部が口金の外周面に当たった後に、発光管に向かって流れるため、発光管の温度が低下する結果、点灯に不具合が生じるおそれがある。
また、特許文献2に記載のショートアーク型放電ランプにおいては、流出用空気孔が口金の外周面部に形成されていることにより、流出用空気孔に排気口を接続することが困難である。そのため、封止部と口金とを接合する接着剤などによる汚染物が冷却風と共に流出用空気孔から流出する結果、ショートアーク型放電ランプが搭載される装置の内部が汚染されるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、発光管の温度を低下させることなしに封止部を高い効率で冷却することができるショートアーク型放電ランプおよびこのショートアーク型放電ランプを備えた光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のショートアーク型放電ランプは、発光部の一端に連続して封止部が形成されてなる発光管と、前記封止部が挿入されて固定された口金とを備え、前記封止部に箔シール構造が形成されたショートアーク型放電ランプであって、
前記口金の外端面部と前記封止部の外端面との間には、内部空間が形成され、
前記口金の外端面部は、前記内部空間に冷却風を流入出させる複数の通風口を有し、
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流入用通風口であり、
前記流入用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、前記口金の外端面部に対向して配置され、前記流入用通風口に対応する排出口の最大長さを画定する線分の長さより大きいことを特徴とする。
【0009】
上記のショートアーク型放電ランプにおいては、前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流出用通風口であり、
前記流出用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、前記口金の外端面部に対向して配置され、前記流出用通風口に対応する排出口の最大長さを画定する線分の長さより大きいことが好ましい。
【0010】
また、本発明のショートアーク型放電ランプは、発光部の一端に連続して封止部が形成されてなる発光管と、前記封止部が挿入されて固定された口金とを備え、前記封止部に箔シール構造が形成されたショートアーク型放電ランプであって、
前記口金の外端面部と前記封止部の外端面との間には、内部空間が形成され、
前記口金の外端面部は、前記内部空間に冷却風を流入出させる複数の通風口を有し、
前記複数の通風口は前記口金の外周面と同軸の仮想円に沿って配置されており、
前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流入用通風口であり、
前記流入用通風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計が、前記口金の外端面部に対向して配置される送風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計より大きいことを特徴とする。
【0011】
上記のショートアーク型放電ランプにおいては、前記複数の通風口のうち少なくとも一つ以上が流出用通風口であり、
前記流出用通風口と重なる前記仮想円の円弧の長さの合計が、前記口金の外端面部に対向して配置される排出口と重なる前記仮想円の円弧の合計の長さの合計より大きいことが好ましい。
【0012】
本発明の光照射装置は、上記のショートアーク型放電ランプと、
前記ショートアーク型放電ランプの前記口金を保持するランプ保持部と、
前記口金の前記外端面部の前記通風口を介して前記内部空間に冷却風を流入出させる送風機構とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の光照射装置においては、前記ランプ保持部は、それぞれ前記通風口に連通するよう配置された、冷却風を送風する送風口および冷却風を排出する排出口を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、口金の外端面部に、口金の内部空間に冷却風を流入出させる通風口が形成されているため、冷却風を発光管の封止部の外端面に直接当てることができ、その結果、封止部が冷却される効率が向上する。
また、口金における平坦な外端面部に通風口が形成されていることにより、当該通風口に冷却風の送風口および排出口を接続することが可能である。そのため、冷却風によって発光管が冷却されることがない。
従って、発光管の温度を低下させることなしに封止部を高い効率で冷却することができ、これにより、封止部の温度上昇に起因する発光管の破損が抑制される結果、ショートアーク型放電ランプにおいて長い使用寿命が得られる。
また、通風口に冷却風の送風口および排出口が接続されることにより、接合層などによる汚染物によって、ショートアーク型放電ランプが搭載される装置の内部が汚染されることを防止することができる。
【0015】
また、流入用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、口金の外端面部に対向して配置される、流入用通風口に対応する送風口の最大長さを画定する線分の長さより大きいことにより、ショートアーク型放電ランプを光照射装置に装着する際に、ショートアーク型放電ランプがその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、送風口が流入用通風口内に位置するため、流入用通風口と送風口との所要の接続が容易に達成される。
また、流入用通風口と重なる仮想円の円弧の長さの合計が、口金の外端面部に対向して配置される送風口と重なる仮想円の円弧の長さの合計より大きいことにより、ショートアーク型放電ランプを光照射装置に装着する際に、ショートアーク型放電ランプがその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、送風口が流入用通風口内に位置するため、流入用通風口と送風口との所要の接続が容易に達成される。
【0016】
また、流出用通風口の最大長さを画定する線分の長さが、口金の外端面部に対向して配置される、流出用通風口に対応する排出口の最大長さを画定する線分の長さより大きい構成によれば、ショートアーク型放電ランプを光照射装置に装着する際に、ショートアーク型放電ランプがその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、排出口が流出用通風口内に位置するため、流出用通風口と排出口との所要の接続が容易に達成される。
また、流出用通風口と重なる仮想円の円弧の長さの合計が、口金の外端面部に対向して配置される排出口と重なる仮想円の円弧の長さの合計より大きい構成によれば、ショートアーク型放電ランプを光照射装置に装着する際に、ショートアーク型放電ランプがその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、排出口が流出用通風口内に位置するため、流出用通風口と排出口との所要の接続が容易に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のショートアーク型放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図である。
【
図2】
図1に示すショートアーク型放電ランプにおける口金の外端面部を示す説明図である。
【
図3】
図1に示すショートアーク型放電ランプにおける口金の外端面部に送風口および排出口を重ね合わせた状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の光照射装置の一例における構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の光照射装置におけるランプ保持部の一例における構成を示す説明図である。
【
図6】口金の内部空間における冷却風の流れを示す説明図である。
【
図7】
図1に示すショートアーク型放電ランプを光照射装置に装着した際に、当該ショートアーク型放電ランプがその管軸を中心軸として回転する方向に位置ずれした状態を示す説明図である。
【
図8】本発明のショートアーク型放電ランプに用いられる口金の他の例における構成を示す説明図である。
【
図9】本発明のショートアーク型放電ランプに用いられる口金の変形例を示す説明図である。
【
図10】本発明のショートアーク型放電ランプに用いられる口金の他の変形例を示す説明図である。
【
図11】本発明の光照射装置に用いられるランプ保持部の他の例における構成を示す説明図である。
【
図12】本発明の光照射装置に用いられるランプ保持部の更に他の例における構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のショートアーク型放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図である。このショートアーク型放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう。)10は、略球状の発光部12の両端に狭窄部13を介して連続して外方に伸びる封止部14が形成されてなる発光管11を有する。発光管11における発光部12の内部には発光空間S1が形成され、この発光空間S1には、陽極20および陰極21が互いに対向して配置されている。また、発光空間S1には、水銀などの発光物質やアルゴンガスなどの始動補助用バッファガスが封入されている。
【0019】
発光管11を構成する材料としては、例えば石英ガラスなどの光透過性材料を用いることができる。
また、陽極20を構成する材料としては、タングステンを用いることができ、陰極21を構成する材料としては、トリエーテッドタングステンを用いることができる。
また、発光空間S1に封入される発光物質例えば水銀の封入量は、2~6mg/cm3 であり、バッファガス例えばアルゴンガスの封入圧は、静圧で0.09~0.5MPaである。
【0020】
発光管11内には、それぞれ封止部14から発光空間S1に向かって管軸に沿って伸びる2つのロッド状の内部リード22が配置されている。内部リード22の各々の先端には、陽極20または陰極21が固定されている。また、内部リード22の各々の基端部は、封止部14内に管軸に沿って配置された例えばガラスよりなる略円柱状の封止用絶縁体15の一端部に固定支持されている。図示の例では、封止用絶縁体15の一端部分がテーパ状に形成されている。また、封止用絶縁体15の他端部には、封止部14から管軸に沿って外方に突出して伸びる2つのロッド状の外部リード23が固定支持されている。
内部リード22および外部リード23を構成する材料としては、タングステンを用いることができる。
【0021】
封止用絶縁体15の外周面には、複数(例えば6つ)の帯状の導電箔24が、封止用絶縁体15の周方向に互いに等間隔で離間して並んだ状態で、発光管11の管軸方向に沿って伸びるよう配置されている。これらの導電箔24の各々の一端部は、封止用絶縁体15の一端面に積重された円板状の導電ディスク25と円板状の補助ディスク26との間に介在している。そして、導電箔24の各々の一端部は、溶接により導電ディスク25と一体に接合されている。導電ディスク25および補助ディスク26の各々には、内部リード22が貫通している。そして、これにより、導電箔24が導電ディスク25を介して内部リード22に電気的に接続されている。また、導電箔24の各々の他端部は、外方に開口する有底筒状の金属部材27の外周面に溶接により接合されている。金属部材27には、外部リード23が電気的に接続された状態で貫通しており、これにより、導電箔24が金属部材27を介して外部リード23に電気的に接続されている。
そして、発光管11における封止部14の内面と封止用絶縁体15とが導電箔24を介して溶着されることによって、導電箔24が封止部14内に気密に埋設された箔シール構造が形成されている。
【0022】
導電箔24を構成する材料としては、例えばタングステン、タンタル、ルテニウム、レニウム等の高融点金属またはそれらの合金を用いることができるが、溶接のしやすさ、溶接熱の伝導性がよいことなどの理由から、モリブデンを主成分とする金属を用いることが好ましい。また、導電箔24の厚みは例えば0.02~0.06mm、導電箔24の幅は例えば6~12mmである。
導電ディスク25および補助ディスク26を構成する材料としては、タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデンなどの高融点金属を用いることができる。また、封止用絶縁体15の一端面に接する導電ディスク25の厚みは、例えば0.5~6mmであり、補助ディスク26の厚みは、例えば0.05~1mmである。
金属部材27を構成する材料としては、モリブデンなどを用いることができる。
【0023】
図示の例では、発光管11における狭窄部13内には、内部リード22が挿通された例えばガラス製の筒状の内部リード支持部材16が配置されている。また、金属部材27の筒孔内には、外部リード23が挿通された例えばガラス製の筒状の外部リード支持部材17が配置されている。
【0024】
発光管11における封止部14には、有底筒状の口金30が、その筒孔内に当該封止部14が挿入された状態で設けられている。封止部14の外周面と口金30の内周面との間には、接着剤よりなる接合層40が形成されており、この接合層40によって、口金30が封止部14に固定されている。
【0025】
口金30を構成する材料としては、真鍮、アルミニウムなどを用いることができる。
接合層40を構成する接着剤としては、セラミック系接着剤に代表される無機系接着剤を用いることができる。また、接合層40の厚みは、0.5~5mmであることが好ましい。
【0026】
口金30内における当該口金30の外端面部31と封止部14の外端面14aとの間には、内部空間S2が形成されている。口金30の外端面部31における中心部分には、内部空間S2に開口する底有円筒状の端子部32が、口金30の外端面部31から外方に突出するよう形成されている。この端子部32の筒孔内に外部リード23の先端部が挿入されてロウ付けなどにより固定されることにより、口金30の端子部32に外部リード23が電気的に接続されている。
【0027】
図2にも示すように、口金30の外端面部31には、内部空間S2に冷却風を流入出させる複数(図示の例では2つ)の円形の通風口33が形成されている。これらの通風口33は、口金33の外周面と同軸の仮想円Cに沿って配置されている。図示の例では、一方の通風口33が流入用通風口33aとされ、他方の通風口33が流出用通風口33bとされている。
【0028】
通風口33は、口金30の外端面に対する面積の比率(以下、「開口率」という。)が5%以上80%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上40%以下である。通風口33の開口率が過小である場合には、口金30の内部空間Sに対して冷却風が十分に流入出されず、そのため、封止部14を十分に冷却することが困難となることがある。一方、通風口33の開口率が過大である場合には、口金30の外端面部31の強度が低く、当該外端面部31が破損しやすくなるおそれがある。
【0029】
複数の通風口33のうち流入用通風口33aにおいては、
図3に示すように、流入用通風口33aと重なる仮想円Cの円弧C1の長さの合計(図示の例では、流入用通風口33aが一つであるため、当該流入用通風口33aに係る円弧の長さ)が、口金30の外端面部31に対向して配置される送風口52と重なる仮想円Cの円弧C2の長さの合計(図示の例では、送風口52が一つであるため、当該送風口52に係る円弧の長さ)より大きいものとされる。
流入用通風口33aに係る円弧C1の長さの合計と送風口52に係る円弧C2の長さの合計との比は、1.05:1~1.3:1であることが好ましく、より好ましくは1.1:1~1.2:1である。
【0030】
また、複数の通風口33のうち流出用通風口33bにおいては、流出用通風口33bと重なる仮想円Cの円弧C3の長さの合計(図示の例では、流出用通風口33bが一つであるため、当該流出用通風口33bに係る円弧の長さ)が、口金30の外端面部31に対向して配置される排出口53と重なる仮想円Cの円弧C4の長さの合計(図示の例では、排出口53が一つであるため、当該排出口53に係る円弧の長さ)より小さいことが好ましい。
流出用通風口33bに係る円弧C3の長さの合計と排出口53に係る円弧C4の長さの合計との比は、1.05:1~1.3:1であることが好ましく、より好ましくは1.1:1~1.2:1である。
【0031】
本発明の光照射装置は、上記の放電ランプ10と、放電ランプ10の口金30を保持するランプ保持部と、口金30の外端面部31の通風口33を介して内部空間S2に冷却風を流入出させる送風機構と備えてなる。
【0032】
図4は、本発明の光照射装置の一例における構成を示す説明図である。この光照射装置は、
図1に示す放電ランプ10と、この放電ランプ10を保持するランプ保持部50と、放電ランプ10における発光部12を取り囲むよう配置された凹面反射鏡55とを有し、これらは、ランプハウス60内に収納されている。
図5に示すように、ランプ保持部50は、例えば金属よりなる矩形の板状体によって構成されている。ランプ保持部50には、それぞれ厚み方向に貫通する円形の端子接続用開口51、送風口52および排出口53が、放電ランプ10の口金30における端子部32および2つの通風口33に対応して形成されている。
ランプ保持部50の送風口52は、ランプハウス60の外部に設けられた送風機構65に、配管61によって接続されている。一方、ランプ保持部50の排出口53は、ランプハウス60の外部に設けられたフィルター63に、配管62によって接続されている。
【0033】
ランプ保持部50において、端子接続用開口51は、口金30における端子部32の外径より僅かに大きい内径を有する。放電ランプ10がランプ保持部50に装着される際には、口金30の通風口33の各々がランプ保持部50の送風口52および排出口53に対向するよう位置合わせした状態で、端子接続用開口51に口金30における端子部32が挿入され、これにより、送風口52および排出口53が、口金30の通風口33に連通した状態とされる。ランプ保持部50の側面には、口金30における端子部32を固定する、ネジよりなる固定部材54が設けられている。
【0034】
また、送風口52および排出口53は、放電ランプ10がランプ保持部50に保持された際に、口金30の外端面によってカバーされる範囲内に形成されている。
図5に示す例では、距離Lが口金30の外端面の外径より小さくなるよう、送風口52および排出口53が形成されている。これにより、ランプ保持部50の送風口52または口金30の通風口33から冷却風が外部に漏出することを防止することができる。
【0035】
上記の光照射装置においては、放電ランプ10の点灯時に送風機構65が作動されることにより、冷却風が送風口52から口金30の流入用通風口33aを介して内部空間S2に流入する。内部空間S2に流入する冷却風の流量は、例えば1.0~2.5L/minである。
【0036】
そして、
図6に示すように、流入用通風口33aから内部空間S2に流入した冷却風は、流入用通風口33aに対向する発光管11の封止部14の外端面14aに直接当たる。その結果、封止部14が冷却される効率が向上する。さらに、封止部14の外端面14aに当たった冷却風は、流出用通風口33bから流出する。その後、冷却風は、排出口53を介して排出される。
また、口金30の通風口33に冷却風の送風口52および排出口53が接続されているため、冷却風によって発光管11が冷却されることがない。
従って、発光管11の温度を低下させることなしに封止部14を高い効率で冷却することができ、これにより、封止部14の温度上昇に起因する封止部14の破損が抑制される結果、放電ランプ10において長い使用寿命が得られる。
また、口金30の通風口33に冷却風の送風口52および排出口53が接続されているため、接合層40などによる汚染物によって、光照射装置の内部が汚染することを防止することができる。
【0037】
また、流入用通風口33aと重なる仮想円Cの円弧C1の長さの合計が、口金30の外端面部31に対向して配置される送風口52と重なる仮想円Cの円弧C2の長さの合計より大きいことにより、放電ランプ10を光照射装置に装着する際に、放電ランプ10がその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、
図7に示すように、送風口52が流入用通風口33a内に位置するため、流入用通風口33aと送風口52との所要の接続を容易に達成することができる。
【0038】
また、流出用通風口33bと重なる仮想円Cの円弧C3の長さの合計が、口金30の外端面部31に対向して配置される排出口53と重なる仮想円Cの円弧C4の長さの合計より大きいことにより、放電ランプ10を光照射装置に装着する際に、放電ランプ10がその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、排出口53が流出用通風口33b内に位置するため、流出用通風口33bと排出口53との所要の接続を容易に達成することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されず、以下のような種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
(1)
図8に示すように、口金30は、例えばDカット形状の切り欠きによって形成された位置決め部34を有していてもよい。このような位置決め部34を設けることにより、放電ランプ10をランプ保持部50に装着する際に、通風口33と送風口52および排出口53との位置合わせを容易にかつ確実に行うことができる。また、位置決め部34は、Dカット形状の切り欠きによって形成されたものに限定されず、種々の形態を採用することができる。
【0041】
(2)口金30の通風口33の形状は、円形に限定されず、例えば
図9(a)に示すように、矩形状の通風口33が形成されていてもよく、
図9(b)に示すように、弓なり形状の通風口33が形成されていてもよい。
【0042】
(3)口金30には、3つ以上の通風口、例えば
図10(a)に示すように、4つの通風口33が、外端面部31における端子部32が形成された中心部分を取り囲むよう形成されていてもよく、
図10(b)に示すように、多数の通風口33が、外端面部31における端子部32が形成された中心部分を取り囲むよう形成されていてもよい。
【0043】
(4)光照射装置においては、ランプ保持部50の送風口52および排出口53の形状は、円形に限定されず、例えば
図11(a)に示すように、矩形状の送風口52および排出口53が形成されていてもよく、
図11(b)に示すように、トラック状の送風口52および排出口53が形成されていてもよい。
【0044】
(5)光照射装置においては、
図12(a)~(c)に示すように、ランプ保持部50の送風口52および排出口53のいずれか一方または両方が、口金30の送風口33の内径より僅かに小さい外径を有する筒状部55によって形成されていてもよい。このような構成によれば、放電ランプ10をランプ保持部50に装着する際に、筒状部55が通風口33と送風口52および排出口53との位置決め部となるため、通風口33と送風口52および排出口53との位置合わせを容易にかつ確実に行うことができる。
【0045】
(6)複数の通風口33は、口金30の外周面と同軸の仮想円に沿って配置されていなくてもよい。このような場合においては、通風口33のうち流入用通風口33aの最大長さを画定する線分の長さが、当該流入用通風口33aに対応する送風口52の最大長さを画定する線分の長さより大きいものとされる。また、通風口33のうち流出用通風口33bの最大長さを画定する線分の長さが、当該流出用通風口33bに対応する排出口53の最大長さを画定する線分の長さより大きいことが好ましい。ここで、最大長さを画定する線分の長さとは、例えば通風口33が円形であれば直径を意味し、通風口33が矩形であれば対角線の長さを意味する。このような構成によれば、放電ランプ10を光照射装置に装着する際に、放電ランプ10がその管軸を中心軸として回転する方向に僅かに位置ずれした場合でも、送風口52または排出口53が通風口33内に位置するため、通風口33と送風口52または排出口53との所要の接続が容易に達成される。
【実施例】
【0046】
〈実施例1〉
図1および
図2に示す構成に従い、下記の仕様の放電ランプを作製した。
[発光管(11)]
材質=石英ガラス,全長=90mm,
発光部(12):最大外径=62mm,最大内径=55mm,
封止部(13):外径=30mm
[陽極(20)]
材質=タングステン,外径=25mm
[陰極(21)]
材質=トリエーテッドタングステン,外径=12mm
[導電箔(24)]
材質=モリブデン
[口金(30)]
材質=真鍮,全長=70mm,内径=31.5mm,外径=33.5mm
通風口の数=2,通風口の径=7mm
[接合層(40)]
材質=セラミック系接着剤,厚み=0.75mm
【0047】
上記の放電ランプにおける口金の一方の通風口に、内径が2.5mmの吹き出し口を有する冷却風供給ノズルを挿入した。この放電ランプを2.7kWのランプ入力(電流=25A,電圧=107V)で点灯させると共に、冷却風供給ノズルから口金内に冷却風を供給した。そして、導電箔における封止部の外端から約20mmの離れた位置の温度を測定し、当該導電箔の温度を350℃に維持するために必要な冷却風の流量を測定したところ、1.0L/minであった。
【0048】
〈比較例1〉
口金に通風口が形成されておらず、接合層が封止部の外端面と口金の底面との間に充填されるよう形成されていること以外は、実施例1と同様の仕様の放電ランプを作製した。 この放電ランプにおける口金の外周面から60mm離間した位置に、内径が25mmの吹き出し口を有する冷却風供給ノズルを配置した。この放電ランプを2.7kWのランプ入力(電流=25A,電圧=107V)で点灯させると共に、冷却風供給ノズルから口金の外周面に向かって冷却風を供給した。そして、導電箔における封止部の外端から約20mmの離れた位置の温度を測定し、当該導電箔の温度を350℃に維持するために必要な冷却風の流量を測定したところ、120L/minであった。
【0049】
以上の結果から、実施例に係る放電ランプによれば、封止部を高い効率で冷却することができることが確認された。また、他方の通風口から排出される冷却風を光照射装置におけるランプ保持部の排出口に接続することにより、発光管の温度を低下させることなしに封止部を冷却することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10 ショートアーク型放電ランプ
11 発光管
12 発光部
13 狭窄部
14 封止部
15 封止用絶縁体
16 内部リード支持部材
17 外部リード支持部材
20 陽極
21 陰極
22 内部リード
23 外部リード
24 導電箔
25 導電ディスク
26 補助ディスク
27 金属部材
30 口金
31 外端面部
32 端子部
33 通風口
33a 流入用通風口
33b 流出用通風口
34 位置決め部
40 接合層
50 ランプ保持部
51 端子接続用開口
52 送風口
53 排出口
54 固定部材
55 凹面反射鏡
60 ランプハウス
61,62 配管
63 フィルター
65 送風機構
C 仮想円
C1,C2,C3,C4 円弧
S1 発光空間
S2 内部空間