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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ガス供給方法およびガスサンプラ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/16 20060101AFI20230411BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20230411BHJP
   G01N 30/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01N30/16 K
G01N30/26 M
G01N30/20 J
G01N30/20 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019173302
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050977
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝本 繁明
(72)【発明者】
【氏名】盧 文剣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彩夏
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0075242(US,A1)
【文献】特開平10-274644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分析装置のカラムにガスサンプラを用いて試料ガスを供給するガス供給方法であって、
前記ガスサンプラは、前記試料ガスが充填されたサンプルタンクに導入流路を介して接続可能な接続部と、前記サンプルタンクから前記接続部に導入される前記試料ガスを保持するサンプル保持部と、前記接続部と前記サンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、バッファ流路を介して前記サンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備え、
前記導入流路および前記バッファ流路は、それぞれ容積の異なるものに交換可能に構成され、
前記バッファ流路の容積は、前記接続部に接続される前記導入流路の容積よりも大きく、
前記ガス供給方法は、
前記切替バルブを閉状態にしつつ前記吸引ポンプを作動して前記バッファ流路の内部を負圧にする負圧処理を実行するステップと、
前記負圧処理の実行後に、前記吸引ポンプを停止しつつ前記切替バルブを開状態にすることによって、前記サンプルタンクから前記接続部を介して前記サンプル保持部に前記試料ガスを導入する導入処理を実行するステップとを含む、ガス供給方法。
【請求項2】
前記バッファ流路は、容積の異なる複数のバッファタンクのうちのいずれかに選択的に接続可能に構成され、
前記ガス供給方法は、
前記バッファ流路の容積が前記導入流路の容積よりも所定量大きくなるように、前記接続部に接続される前記導入流路の容積に応じて、前記バッファ流路に接続されるバッファタンクを前記複数のバッファタンクの中から選択する選択処理を、前記負圧処理の実行前に実行するステップをさらに含む、請求項1に記載のガス供給方法。
【請求項3】
前記ガス供給方法は、前記導入処理の実行後に、前記サンプル保持部内の前記試料ガスを前記カラムに供給する供給処理を実行するステップをさらに含む、請求項2に記載のガス供給方法。
【請求項4】
ガス分析装置のカラムに試料ガスを供給するためのガスサンプラであって、
前記試料ガスが充填されたサンプルタンクに導入流路を介して接続可能な接続部と、
前記サンプルタンクから前記接続部に導入される前記試料ガスを保持するサンプル保持部と、
前記接続部と前記サンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、
バッファ流路を介して前記サンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備え、
前記導入流路および前記バッファ流路は、それぞれ容積の異なるものに交換可能に構成され、
前記バッファ流路の容積は、前記接続部に接続される前記導入流路の容積よりも大きい、ガスサンプラ。
【請求項5】
前記バッファ流路は、容積の異なる複数のバッファタンクのうちのいずれかに選択的に接続可能に構成される、請求項4に記載のガスサンプラ。
【請求項6】
前記ガスサンプラは、前記吸引ポンプおよび前記切替バルブを制御するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記切替バルブを閉状態にしつつ前記吸引ポンプを作動して前記バッファ流路の内部を負圧にする負圧処理を実行し、
前記負圧処理の実行後に、前記吸引ポンプを停止しつつ前記切替バルブを開状態にすることによって、前記サンプルタンクから前記接続部を介して前記サンプル保持部に前記試料ガスを導入する導入処理を実行する、請求項5に記載のガスサンプラ。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記バッファ流路の容積が前記導入流路の容積よりも所定量大きくなるように、前記接続部に接続される前記導入流路の容積に応じて、前記バッファ流路に接続されるバッファタンクを前記複数のバッファタンクの中から選択する選択処理を、前記負圧処理の実行前に実行する、請求項6に記載のガスサンプラ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記導入処理の実行後に、前記サンプル保持部内の前記試料ガスを前記カラムに供給する供給処理を実行する、請求項6または7に記載のガスサンプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス分析装置のカラムにガスサンプラを用いて試料ガスを供給する方法、およびガス分析装置のカラムに試料ガスを供給するためのガスサンプラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスクロマトグラフなどのガス分析装置には、分析対象である試料ガス(サンプルガス)中の各種成分を分離するカラムが設けられる。ガス分析装置のカラムには、ガスサンプラを用いて試料ガスが供給される。通常、ガスサンプラには、一定容積のサンプルループ、およびサンプルループの接続先を切り替えるための切替バルブなどが設けられる。切替バルブの制御によってサンプルループの接続先が適宜切り替えられることによって、ガスサンプラは、試料ガス源から供給される試料ガスをサンプルループに一旦充填し、その後にサンプルループ内に充填された一定量の試料ガスをガス分析装置のカラムに供給する。
【0003】
たとえば、特開2015-190875号公報(特許文献1)には、ガスサンプラの切替バルブとして六方弁を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-190875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料ガス源からの試料ガスをサンプルループに充填する方法として、ポンプを用いてサンプルループ内を負圧(大気圧よりも低い圧力)にしておき、その負圧を利用して試料ガスをサンプルループ内に吸引する方法が想定される。
【0006】
しかしながら、この方法では、試料ガス源とガスサンプラとの間の導入流路の容積に対してサンプルループの容積が小さいと、サンプルループ内を負圧にしただけでは、試料ガスがサンプルループ内に十分に吸引されず、その結果、サンプルループからカラムに供給される試料ガス量が不足してしまうことが懸念される。特に、マイクロガスクロマトグラム用のガスサンプラにおいては、サンプルループの容積が非常に小さい値(たとえば数百マイクロリットル程度)に設定されるため、サンプルループの容積が導入配管の容積よりも小さくなり易く、上記のような問題が顕著に生じ得る。
【0007】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、ガスサンプラを用いて適量の試料ガスを精度よくガス分析装置のカラムに供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様に係るガス供給方法は、ガス分析装置のカラムにガスサンプラを用いて試料ガスを供給するガス供給方法である。ガスサンプラは、試料ガスが充填されたサンプルタンクに接続可能な接続部と、サンプルタンクから接続部に導入される試料ガスを保持するサンプル保持部と、接続部とサンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、バッファ流路を介してサンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備える。バッファ流路の容積は、サンプルタンクと接続部との間を接続する導入流路の容積よりも所定量大きい。ガス供給方法は、切替バルブを閉状態にしつつ吸引ポンプを作動してバッファ流路の内部を負圧にする負圧処理を実行するステップと、負圧処理の実行後に、吸引ポンプを停止しつつ切替バルブを開状態にすることによって、サンプルタンクから接続部を介してサンプル保持部に導入する導入処理を実行するステップとを含む。
【0009】
本開示の態様に係るガスサンプラは、ガス分析装置のカラムに試料ガスを供給するためのガスサンプラであって、試料ガスが充填されたサンプルタンクに接続可能な接続部と、サンプルタンクから接続部に導入される試料ガスを保持するサンプル保持部と、接続部とサンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、バッファ流路を介してサンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備える。バッファ流路の容積は、サンプルタンクと接続部との間を接続する導入流路の容積よりも所定量大きい。
【発明の効果】
【0010】
上記のガス供給方法およびガスサンプラにおいては、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも所定量大きい。そのため、サンプル保持部に試料ガスを導入する方法として、吸引ポンプを用いてバッファ流路内を負圧にしておき,その負圧を利用して試料ガスをサンプル保持部内に吸引する方法が採用される場合において、十分な負圧をバッファ流路内に発生させて、その負圧を利用して試料ガスをサンプル保持部内に吸引することができる。そのため、サンプル保持部内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。その結果、ガスサンプラを用いて適量の試料ガスを精度よくガス分析装置のカラムに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガスクロマトグラフの構成の一例を模式的に示す図である。
図2】負圧バッファ処理中におけるガスサンプラの状態を示す図(その1)である。
図3】サンプル充填処理中におけるガスサンプラの状態を示す図である。
図4】サンプル供給処理中におけるガスサンプラの状態を示す図である。
図5】制御装置が行なう処理の手順を示すフローチャート(その1)である。
図6】制御装置が行なう処理の手順を示すフローチャート(その2)である。
図7】負圧バッファ処理中におけるガスサンプラの状態を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[装置構成]
図1は、本実施の形態によるガスサンプラ30を含むガスクロマトグラフ(ガス分析装置)1の構成の一例を模式的に示す図である。
【0014】
ガスクロマトグラフ1は、電子式の自動圧力コントローラ(Automatic Pressure Controller、以下「APC」ともいう)10,80と、サンプルタンク20と、ガスサンプラ30と、カラム40と、検出装置50と、表示装置70と、入力装置60と、制御装置100とを備える。
【0015】
APC10は、キャリアガスと呼ばれる移動相を予め定められた圧力に調整して配管P4に出力する。APC10から配管P4に出力されたキャリアガスは、ガスサンプラ30の内部を通ってカラム40に供給される。なお、キャリアガスとしては、たとえばヘリウムガスが用いられる。
【0016】
サンプルタンク20は、分析対象である試料ガス(サンプルガス)を貯留する装置である。サンプルタンク20は、導入配管21を介してガスサンプラ30の接続部C1に接続される。ユーザは、ガスサンプラ30の接続部C1に接続されるサンプルタンク20および導入配管21を交換することによって、ガスクロマトグラフ1で分析される試料ガスを変更することができる。
【0017】
ガスサンプラ30は、試料ガスを一定量ずつカラム40に供給するための装置である。ガスサンプラ30は、接続部C1と、一定容積のサンプルループPLと、配管P1~P10と、切替バルブV1~V5と、ポンプ31と、バッファタンク32とを備える。サンプルループPLは、サンプル保持部の一例である。
【0018】
接続部C1は、サンプルタンク20に接続された導入配管21に接続可能に構成される。配管P1は、接続部C1と切替バルブV1とを連通する。配管P2は、切替バルブV1と切替バルブV3とを連通する。配管P3は、切替バルブV3と配管P4とを連通する。配管P5は、ポンプ31と切替バルブV2とを連通する。配管P6は、切替バルブV2と切替バルブV4とを連通する。配管P7は、切替バルブV4と配管P10とを連通する。配管P8は、配管P4と切替バルブV5とを連通する。配管P9は、切替バルブV5と配管P10とを連通する。配管P10は、配管P9とカラム40とを連通する。なお、配管P4は、ガスサンプラ30の内部において配管P3と配管P8とに分岐される。配管P7と配管P9とは、ガスサンプラ30の内部において配管P10に合流される。
【0019】
サンプルループPLは、配管P2と配管P6との間に接続される。サンプルループPLは、サンプルタンク20から導入される試料ガスを、カラム40に供給するために一時的に保持する機能を有する。
【0020】
配管P5には、バッファタンク32が接続される。バッファタンク32は、容積の異なる複数のバッファタンク32a,32b,32c…のうちから選択されて配管P5に接続されたものである。すなわち、配管P5は、接続されるバッファタンク32を、容積の異なる複数のバッファタンク32a,32b,32c…のうちのいずれかに交換可能に構成される。具体的には、配管P5には、複数のバッファタンク32a,32b,32c…のいずれかを選択的に接続可能なコネクタJ1,J2が設けられる。ユーザは、このコネクタJ1,J2に接続されるバッファタンク32を交換することによって、バッファタンク32と配管P5とを含めた、ポンプ31とサンプルループPLとの間の流路の容積を変更することができる。以下では、バッファタンク32と配管P5とを含めた流路を「バッファ流路Pb」とも称する。
【0021】
ポンプ31は、バッファ流路Pb内のエアを吸引してバッファ流路Pb内を負圧にするための吸引ポンプである。なお、ここでいう負圧とは、大気圧を基準として、大気圧よりも低い圧力を意味する。
【0022】
切替バルブV1~V5は、いずれも、駆動用エアによって開閉するニューマチック式のバルブである。そのため、ガスサンプラ30には、切替バルブV1~V5の駆動エアを制御するための制御バルブVa~Vc、制御配管81,82a~82c、排気管83a~83cが備えられる。
【0023】
切替バルブV1~V5は、いずれも、駆動用エアが供給されていない初期状態において開状態となり、駆動用エアが供給されることによって閉状態となる、いわゆるノーマルオープンタイプのバルブである。切替バルブV1は、制御配管82aを介して制御バルブVaに連通され、制御バルブVaからの駆動用エアの有無に応じて開閉される。同様に、切替バルブV2,V5は、制御配管82bを介して制御バルブVbに連通され、制御バルブVbからの駆動用エアの有無に応じて開閉される。切替バルブV3,V4は、制御配管82cを介して制御バルブVcに連通され、制御バルブVcからの駆動用エアの有無に応じて開閉される。
【0024】
APC80は、切替バルブV1~V5を制御するための駆動用エアを予め定められた圧力に調整して制御配管81に出力する。制御バルブVa~Vcは、制御装置100からの指令信号によって制御される三方電磁弁である。
【0025】
制御バルブVaが制御配管81と制御配管82aとを連通する状態に制御されると、切替バルブV1に駆動用エアが供給されるため、切替バルブV1が閉状態となる。これにより、配管P1と配管P2とが遮断される。一方、制御バルブVaが制御配管82aと排気管83aとを連通する状態に制御されると、切替バルブV1に供給されていた駆動用エアが排気管83aに排出されるため、切替バルブV1が開状態となる。これにより、配管P1と配管P2とが連通される。
【0026】
制御バルブVbが制御配管81と制御配管82bとを連通する状態に制御されると、切替バルブV2,V5に駆動用エアが供給されるため、切替バルブV2,V5が閉状態となる。これにより、配管P5と配管P6とが遮断されるとともに、配管P8と配管P9とが遮断される。一方、制御バルブVbが制御配管82bと排気管83bとを連通する状態に制御されると、切替バルブV2,V5に供給されていた駆動用エアが排気管83bに排出されるため、切替バルブV2,V5が開状態となる。これにより、配管P5と配管P6とが連通されるとともに、配管P8と配管P9とが連通される。
【0027】
制御バルブVcが制御配管81と制御配管82cとを連通する状態に制御されると、切替バルブV3,V4に駆動用エアが供給されるため、切替バルブV3,V4が閉状態となる。これにより、配管P2と配管P3とが遮断されるとともに、配管P6と配管P7とが遮断される。一方、制御バルブVcが制御配管82cと排気管83cとを連通する状態に制御されると、切替バルブV3,V4に供給されていた駆動用エアが排気管83cに排出され、切替バルブV3,V4が開状態となる。これにより、配管P2と配管P3とが連通されるとともに、配管P6と配管P7とが連通される。
【0028】
切替バルブV1~V5の制御によってサンプルループPLの接続先が適宜切り替えられることによって、ガスサンプラ30は、サンプルタンク20から供給される試料ガスをサンプルループPLに一旦充填し、その後にサンプルループPL内に充填された試料ガスをカラム40に供給する。ガスサンプラ30によるカラム40への試料ガスの供給方法については後に詳述する。
【0029】
カラム40は、ガスサンプラ30から供給された試料ガス中の各種成分を分離する。具体的には、カラム40に供給された試料ガスは、APC10から出力されるキャリアガスの流れに乗ってカラム40中を通過する間に、当該試料ガス中に含まれる各種成分が時間方向に分離される。カラム40において分離された成分は、カラム40から検出装置50へと導入される。
【0030】
検出装置50は、カラム40から導入された各成分を検出する。検出装置50として、たとえば、吸光光度検出器(PDA(Photo Diode Array)検出器)、蛍光検出器、示差屈折率検出器、伝導度検出器、あるいは質量分析計などが用いられる。検出装置50による検出結果を示すデータは、制御装置100内のメモリに記憶され、ユーザからの要求により表示装置70に表示される。
【0031】
入力装置60は、たとえばキーボードあるいはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザからの指令を受け付ける。表示装置70は、たとえば液晶(LCD:Liquid Crystal Display)パネルで構成され、ユーザに情報を表示する。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合には、入力装置60と表示装置70とが一体的に形成される。
【0032】
制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェースなどを含む。制御装置100は、ポンプ31、APC10,80、切替バルブV1~V5(制御バルブVa~Vc)などを含めたガスクロマトグラフ1全体を統括的に制御する。制御装置100は、ユーザインターフェースである入力装置60および表示装置70と、有線あるいは無線で接続されている。
【0033】
制御装置100は、ガスサンプラ30からカラム40へ試料ガスを供給する際には、サンプルタンク20から供給される試料ガスをサンプルループPLに一旦充填し、その後にサンプルループPL内に充填された試料ガスをカラム40に供給するように、ポンプ31および切替バルブV1~V5を制御する。
【0034】
本実施の形態においては、サンプルループPLに試料ガスを充填する方法として、ポンプ31を用いてバッファ流路PbおよびサンプルループPL内を負圧にしておき,その負圧を利用して試料ガスをサンプルループPL内に吸引する方法が採用される。
【0035】
この方法では、サンプルタンク20とガスサンプラ30の接続部C1との間の導入配管21の容積に対してバッファ流路PbおよびサンプルループPLの合計容積が小さいと、バッファ流路PbおよびサンプルループPL内を負圧にしただけでは、試料ガスがサンプルループPL内に十分に吸引されず、その結果、サンプルループPLからカラム40に供給される試料ガス量が不足してしまうことが懸念される。
【0036】
特に、ガスサンプラ30がマイクロガスクロマトグラム用である場合には、サンプルループPLの容積が非常に小さい値(たとえば数百マイクロリットル程度)に設定されるため、バッファ流路PbおよびサンプルループPLの合計容積が導入配管21の容積よも小さくなり易く、上記のような問題が顕著に生じ得る。さらに、サンプルタンク20および導入配管21は交換可能であるため、導入配管21の容積は変動し得る。そのため、導入配管21の容積に応じて、バッファ流路Pbの容積を調整することが望ましい。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、ポンプ31とサンプルループPLとの間の配管P5が、容積の異なる複数のバッファタンク32a,32b,32c…のうちのいずれかが選択的に接続可能に構成される。ユーザは、サンプルループPLに試料ガスを充填する前に、配管P5に接続されるバッファタンク32を導入配管21の容積に応じて交換することによって、予め、バッファ流路Pbの容積を導入配管21の容積よりも所定量(たとえばサンプルループPLの容積)だけ大きくしておくことができる。これにより、サンプルループPL内に吸引される試料ガス量が不足することが抑制される。
【0038】
なお、本実施の形態における「接続部C1」、「サンプルループPL」、「切替バルブV1」、「ポンプ31」、「バッファ流路Pb」、および「導入配管21」は、本開示における「接続部」、「サンプル保持部」、「切替バルブ」、「吸引ポンプ」、「バッファ流路」、および「導入流路」にそれぞれ対応し得る。
【0039】
[試料ガスの供給動作]
本実施の形態においては、複数のバッファタンク32a,32b,32c…のなかから選択されたバッファタンク32が配管P5に接続されることによって、バッファ流路Pbの容積が導入配管21の容積よりも所定量大きくなっている。この状態で、制御装置100は、以下の説明する負圧バッファ処理、サンプル充填処理、サンプル供給処理をこの順に実行することによって、試料ガスをサンプルループPLに一旦充填し、サンプルループPL内に充填された試料ガスをカラム40に供給する。
【0040】
まず、負圧バッファ処理について説明する。負圧バッファ処理は、ポンプ31を用いてバッファ流路PbおよびサンプルループPL内を負圧にしておく処理である。
【0041】
図2は、負圧バッファ処理中におけるガスサンプラ30の状態を示す図である。負圧バッファ処理中においては、制御装置100は、切替バルブV1,V3,V4を閉状態にし、切替バルブV2を開状態にする。これにより、サンプルループPLとポンプ31とが連通され、サンプルループPLとサンプルタンク20、APC10およびカラム40とが遮断される。この状態で、制御装置100は、ポンプ31を作動する。これにより、白抜き矢印に示すように、バッファ流路PbおよびサンプルループPL内のエアがポンプ31によって吸引され、バッファ流路PbおよびサンプルループPL内が負圧となる。
【0042】
なお、カラム40にはキャリアガスを常に充填させておくことが望ましいため、負圧バッファ処理中においては、切替バルブV5は開状態とされる。これにより、黒塗り矢印に示すように、APC10からのキャリアガスが配管P4,P8,P9,P10を順に通ってカラム40に供給される。
【0043】
次に、サンプル充填処理について説明する。サンプル充填処理は、負圧バッファ処理によって発生させたバッファ流路Pb内の負圧を利用して、試料ガスをサンプルループPLに充填するための処理である。
【0044】
図3は、サンプル充填処理中におけるガスサンプラ30の状態を示す図である。サンプル充填処理中においては、制御装置100は、ポンプ31を停止しつつ、切替バルブV3,V4を閉状態にし、切替バルブV1,V2を開状態にする。すなわち、上述の図2に示す負圧バッファ処理中の状態に対して、作動していたポンプ31を停止し、かつ切替バルブV1を閉状態から開状態に切り替える。これにより、サンプルタンク20がサンプルループPLおよびバッファ流路Pbに連通されるため、斜線矢印に示すように、バッファ流路Pbの負圧によって、サンプルタンク20からサンプルループPL内に試料ガスが充填される。
【0045】
この際、本実施の形態においては、バッファ流路Pbの容積が、導入配管21の容積よりも所定量大きくなるように、バッファタンク32が選択されている。そのため、サンプルループPL内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態によるサンプル充填処理中においては、ポンプ31が停止される。そのため、ポンプ31を作動した状態で試料ガスを吸引する場合に比べて、無駄に試料ガスが消費されることが抑制できる。すなわち、仮にポンプ31を作動し続けると試料ガスがポンプ31にも吸引されて試料ガスが無駄に消費されることになるが、本実施の形態によるサンプル充填処理中においてはポンプ31が停止されて試料ガスがポンプ31に吸引されることはないため、試料ガスが無駄に消費されることが抑制される。
【0047】
また、ポンプ31を停止することで試料ガスがポンプ31に吸引されなくなるため、サンプル充填処理によってサンプルループPLに充填される試料ガス量を、サンプルループPLの容積とバッファ流路Pbの容積との合計で決定することができる。さらに、ポンプ31を停止することでポンプ31の脈動が生じないため、サンプルループPL内に圧力勾配が生じることも抑制されるため、より適切な分析が可能となる。
【0048】
なお、サンプル充填処理中においても、負圧バッファ処理と同様に、切替バルブV5は開状態とされ、黒塗り矢印に示すようにAPC10からのキャリアガスがカラム40に供給される。
【0049】
次に、サンプル供給処理について説明する。サンプル供給処理は、サンプル充填処理によってサンプルループPL内に充填された試料ガスを、キャリアガスを利用してカラム40に供給するための処理である。
【0050】
図4は、サンプル供給処理中におけるガスサンプラ30の状態を示す図である。サンプル供給処理中においては、制御装置100は、ポンプ31を停止しつつ、切替バルブV1,V2,V5を閉状態にし、切替バルブV3,V4を開状態にする。これにより、APC10からのキャリアガスが配管P4,P3,P2を通ってサンプルループPLに供給され、サンプルループPLに充填された試料ガスがキャリアガスによって押し出されて配管P6、P7,P10を通ってカラム40に供給される。
【0051】
図5は、制御装置100がガスサンプラ30からカラム40へ試料ガスを供給する際に行なう処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、ユーザが入力装置60に対して試料ガスの供給を要求する操作を行なった場合に開始される。なお、このフローチャートが開示されれる時点においては、導入配管21が接続部C1に接続され、かつ、バッファ流路Pbの容積が導入配管21の容積よりも所定量大きい状態である。
【0052】
制御装置100は、まず、上述の負圧バッファ処理を行なう(ステップS10)。具体的には、上述の図2に示したように、制御装置100は、切替バルブV1,V3,V4を閉状態にし、切替バルブV2を開状態にしつつ、ポンプ31を作動する。これにより、バッファ流路PbおよびサンプルループPL内が負圧となる。
【0053】
負圧バッファ処理の実行後に、制御装置100は、上述のサンプル充填処理を実行する(ステップS12)。具体的には、上述の図3に示したように、ポンプ31を停止しつつ、切替バルブV3,V4を閉状態にし、切替バルブV1,V2を開状態にする。これにより、バッファ流路Pbの負圧によって、サンプルタンク20からサンプルループPL内に試料ガスが充填される。
【0054】
サンプル充填処理の実行後に、制御装置100は、上述のサンプル供給処理を行なう(ステップS14)。具体的には、上述の図4に示したように、制御装置100は、ポンプ31を停止しつつ、切替バルブV1,V2,V5を閉状態にし、切替バルブV3,V4を開状態にする。これにより、サンプルループPLに充填された試料ガスがカラム40に供給される。
【0055】
なお、本実施の形態における「負圧バッファ処理」、「サンプル充填処理」、「サンプル供給処理」、および「制御装置100」は、本開示における「負圧処理」、「導入処理」、「供給処理」、および「制御装置」にそれぞれ対応し得る。
【0056】
以上のように、本実施の形態によるガスサンプラ30においては、ポンプ31とサンプルループPLとの間の配管P5が、容積の異なる複数のバッファタンク32a,32b,32c…のうちのいずれかが選択的に接続可能に構成される。これにより、ユーザは、負圧バッファ処理を開始する前に、配管P5に接続されるバッファタンク32を導入配管21の容積に応じて交換することによって、配管P5およびバッファタンク32を含めたバッファ流路Pbの容積を導入配管21の容積よりも所定量だけ大きくしておくことができる。そのため、負圧バッファ処理において、導入配管21の容積に応じた十分な負圧を、バッファ流路Pbに発生させることができる。そのため、その後のサンプル充填処理において、サンプルループPL内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態によるガスサンプラ30においては、サンプル充填処理において、ポンプ31を停止した状態で、負圧バッファ処理で発生させておいたバッファ流路Pbの負圧(より正確にはバッファ流路PbおよびサンプルループPLの負圧)を利用してサンプルループPLに試料ガスを充填する。そのため、サンプルループPLに充填される試料ガス量は、バッファ流路Pbの容積とサンプルループPLの容積との合計で決まることになる。したがって、導入配管21の容積に見合った容量のバッファタンク32を配管P5に接続することによって、無駄に試料ガスが消費されることが抑制でき、一回の分析に必要なサンプル量を最小限にすることができる。
【0058】
[変形例]
(変形例1)
上述の実施の形態においては、バッファ流路Pbの容積が導入配管21の容積よりも所定量大きい状態で、負圧バッファ処理を開始する例(図5参照)を説明した。
【0059】
しかしながら、試料ガスを変更するために接続部C1に接続される導入配管21が変更された場合には、改めて、変更後の導入配管21の容積に見合った容量のバッファタンク32を選定し、選定されたバッファタンク32を配管P5に接続することが望ましい。
【0060】
そのため、負圧バッファ処理を開始する前に、導入配管21の容積に見合った容量のバッファタンク32を選定するための処理(以下「バッファタンク選定処理」ともいう)を実行するように変形してもよい。
【0061】
図6は、本変形例1による制御装置100がガスサンプラ30からカラム40へ試料ガスを供給する際に行なう処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、導入配管21が接続部C1に接続された状態で、ユーザが入力装置60に対して試料ガスの供給を要求する操作を行なった場合に、開始される。
【0062】
図6に示すフローチャートは、上述の図5に示すフローチャートに対し、ステップS10の前に、ステップS20を追加したものである。その他のステップ(上述の図5に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0063】
ステップS20にて、制御装置100は、上述のバッファタンク選定処理を実行する(ステップS20)。たとえば、制御装置100は、バッファタンク選定処理として以下の処理を行なう。まず、制御装置100は、バッファタンク選定処理の要否をユーザに問合せる問合せメッセージを表示装置70に表示させる。
【0064】
問合せメッセージに応答して、ユーザがバッファタンク選定処理が必要である旨の操作を入力装置60に入力した場合には、制御装置100は、接続部C1に接続される導入配管21の容量を入力するようにユーザに要求するメッセージを表示装置70に表示させる。このメッセージに応答して、ユーザが導入配管21の容量を示す情報を入力装置60に入力すると、制御装置100は、メモリに予め登録された複数のバッファタンク32a,32b,32c…のうちから、ユーザによって入力された導入配管21の容量に見合った容量のバッファタンク32を選定し、選定されたバッファタンク32を示す情報を表示装置70に表示させて、ユーザにバッファタンク32を交換するよう要求する。この要求に応答して、ユーザがバッファタンク32を交換し、その交換が完了したことを示す操作を入力装置60に入力すると、制御装置100は、処理をステップS10以降に進める。
【0065】
一方、問合せメッセージに応答して、ユーザが入力装置60に対してバッファタンク選定処理が不要である旨の操作を行なった場合には、制御装置100は、バッファタンク32の選定等を行なうことなく、処理をステップS10以降に進める。
【0066】
以上のように、本変形例1による制御装置100は、負圧バッファ処理を開始する前に、上述のバッファタンク選定処理を実行する。このバッファタンク選定処理において、ユーザは、配管P5に接続されるバッファタンク32を、導入配管21の容積に見合った容量のバッファタンク32に交換することができる。そのため、たとえばユーザが試料ガスを変更するために接続部C1に接続される導入配管21を変更した場合であっても、適量の試料ガスをサンプルループPLに充填することができる。
【0067】
(変形例2)
上述の実施の形態においては、負圧バッファ処理中において切替バルブV2を開状態にしてバッファ流路PbおよびサンプルループPL内を負圧とする例(図2参照)を説明した。
【0068】
しかしながら、バッファ流路Pbの容積が、導入配管21からサンプルループPLまでの合計容積よりも十分に大きい場合には、負圧バッファ処理中において切替バルブV2を閉状態にしてバッファ流路Pb内のみを負圧とするように変形してもよい。
【0069】
図7は、本変形例2による負圧バッファ処理中におけるガスサンプラ30の状態を示す図である。本変形例2では、負圧バッファ処理中において、制御装置100は、切替バルブV1~V4を閉状態にし、切替バルブV5のみを開状態にする。これにより、サンプルループPLは、サンプルタンク20、APC10、カラム40、およびポンプ31のいずれとも遮断される。この状態で、制御装置100は、ポンプ31を作動する。これにより、白抜き矢印に示すように、バッファ流路Pb内のエアがポンプ31によって吸引され、バッファ流路Pb内が負圧となる。
【0070】
このように、負圧バッファ処理中においてバッファ流路Pb内のみを負圧とするようにしてもよい。このようにしても、バッファ流路Pbの容積が、導入配管21からサンプルループPLまでの合計容積よりも十分に大きい場合には、サンプル充填処理において、バッファ流路Pb内の負圧を利用して、サンプルループPL内に十分な量の試料ガスを吸引することができる。
【0071】
(変形例3)
上述の実施の形態においては切替バルブV1~V5がニューマチック式のバルブである例について説明したが、切替バルブV1~V5は必ずしもニューマチック式のバルブに限定されず、たとえば電磁式のバルブであってもよい。
【0072】
[態様]
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0073】
(第1項) 一態様に係るガス供給方法は、ガス分析装置のカラムにガスサンプラを用いて試料ガスを供給するガス供給方法である。ガスサンプラは、試料ガスが充填されたサンプルタンクに接続可能な接続部と、サンプルタンクから接続部に導入される試料ガスを保持するサンプル保持部と、接続部とサンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、バッファ流路を介してサンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備える。バッファ流路の容積は、サンプルタンクと接続部との間を接続する導入流路の容積よりも大きい。ガス供給方法は、切替バルブを閉状態にしつつ吸引ポンプを作動してバッファ流路の内部を負圧にする負圧処理を実行するステップと、負圧処理の実行後に、吸引ポンプを停止しつつ切替バルブを開状態にすることによって、サンプルタンクから接続部を介してサンプル保持部に試料ガスを導入する導入処理を実行するステップとを含む。
【0074】
第1項に記載のガス供給方法によれば、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも大きいため、負圧処理において十分な負圧をバッファ流路内に発生させておくことができる。そのため、負圧処理後の導入処理において、サンプル保持部内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。また、導入処理においては、吸引ポンプを停止するので、試料ガスが過剰に吸引されることも抑制される。そのため、導入処理において、適量の試料ガスをサンプル保持部に導入することができる。その結果、ガスサンプラを用いて適量の試料ガスを精度よくガス分析装置のカラムに供給することができる。
【0075】
(第2項) 第1項に記載のガス供給方法において、バッファ流路は、容積の異なる複数のバッファタンクのうちのいずれかに選択的に接続可能に構成されてもよい。ガス供給方法は、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも所定量大きくなるように、接続部に接続される導入流路の容積に応じて、バッファ流路に接続されるバッファタンクを複数のバッファタンクの中から選択する選択処理を、負圧処理の実行前に実行するステップをさらに含んでもよい。
【0076】
第2項に記載のガス供給方法によれば、負圧処理の実行前に、選択処理が実行される。この選定処理において、ユーザは、バッファ流路に接続されるバッファタンクを、導入流路の容積に見合った容量のバッファタンクに交換することができる。そのため、たとえばユーザが試料ガスを変更するために接続部に接続される導入流路を変更した場合であっても、適量の試料ガスをサンプル保持部に導入することができる。
【0077】
(第3項) 第2項に記載のガス供給方法において、ガス供給方法は、導入処理の実行後に、サンプル保持部内の試料ガスをカラムに供給する供給処理を実行するステップをさらに含んてもよい。
【0078】
第3項に記載のガス供給方法によれば、導入処理においてサンプル保持部に導入された適量の試料ガスを、供給処理においてガス分析装置のカラムに供給することができる。
【0079】
(第4項) 一態様に係るガスサンプラは、ガス分析装置のカラムに試料ガスを供給するためのガスサンプラであって、試料ガスが充填されたサンプルタンクに接続可能な接続部と、サンプルタンクから接続部に導入される試料ガスを保持するサンプル保持部と、接続部とサンプル保持部との接続状態を切り替える切替バルブと、バッファ流路を介してサンプル保持部に接続される吸引ポンプとを備える。バッファ流路の容積は、サンプルタンクと接続部との間を接続する導入流路の容積よりも大きい。
【0080】
第4項に記載のガスサンプラによれば、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも大きい。そのため、サンプル保持部に試料ガスを充填する方法として、吸引ポンプを用いてバッファ流路内を負圧にしておき,その負圧を利用して試料ガスをサンプル保持部内に吸引する方法が用いられる場合において、十分な負圧をバッファ流路内に発生させるて、その負圧を利用して試料ガスをサンプル保持部内に吸引することができる。そのため、サンプル保持部内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。その結果、ガスサンプラを用いて適量の試料ガスを精度よくガス分析装置のカラムに供給することができる。
【0081】
(第5項) 第4項に記載のガスサンプラにおいて、バッファ流路は、容積の異なる複数のバッファタンクのうちのいずれかに選択的に接続可能に構成されてもよい。
【0082】
第5項に記載のガスサンプラによれば、ユーザは、バッファ流路に接続されるバッファタンクを、導入流路の容積に見合った容量のバッファタンクに交換することができる。そのため、たとえばユーザが試料ガスを変更するために接続部に接続される導入流路を変更した場合であっても、適量の試料ガスをサンプル保持部に導入することができる。
【0083】
(第6項) 第5項に記載のガスサンプラにおいて、ガスサンプラは、吸引ポンプおよび切替バルブを制御するための制御装置をさらに備えてもよい。制御装置は、切替バルブを閉状態にしつつ吸引ポンプを作動してバッファ流路の内部を負圧にする負圧処理を実行し、負圧処理の実行後に、吸引ポンプを停止しつつ切替バルブを開状態にすることによってサンプルタンクから接続部に導入される試料ガスをバッファ流路の負圧を利用してサンプル保持部に充填する充填処理を実行するようにしてもよい。
【0084】
第6項に記載のガスサンプラによれば、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも所定量大きいため、負圧処理において十分な負圧をバッファ流路内に発生させておくことができる。そのため、負圧処理後の充填処理において、サンプル保持部内に吸引される試料ガス量が不足することを抑制することができる。また、充填処理においては、吸引ポンプを停止するので、試料ガスが過剰に吸引されることも抑制される。
【0085】
(第7項) 第6項に記載のガスサンプラにおいて、制御装置は、バッファ流路の容積が導入流路の容積よりも所定量大きくなるように、接続部に接続される導入流路の容積に応じて、バッファ流路に接続されるバッファタンクを複数のバッファタンクの中から選択する選択処理を、負圧処理の実行前に実行するようにしてもよい。
【0086】
第7項に記載のガスサンプラによれば、負圧処理の実行前に、選択処理が実行される。この選定処理において、ユーザは、バッファ流路Pbに接続されるバッファタンクを、導入流路の容積に見合った容量のバッファタンクに交換することができる。そのため、たとえばユーザが試料ガスを変更するために接続部に接続される導入流路を変更した場合であっても、適量の試料ガスをサンプル保持部に導入することができる。
【0087】
(第8項) 第6項または第7項に記載のガスサンプラにおいて、制御装置は、導入処理の実行後に、サンプル保持部内の試料ガスをカラムに供給する供給処理を実行するようにしてもよい。
【0088】
第8項に記載のガスサンプラによれば、充填処理においてサンプル保持部に導入された適量の試料ガスを、供給処理においてガス分析装置のカラムに供給することができる。
【0089】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 ガスクロマトグラフ、20 サンプルタンク、21 導入配管、30 ガスサンプラ、31 ポンプ、32,32a,32b,32c バッファタンク、40 カラム、50 検出装置、60 入力装置、70 表示装置、81,82a,82b,82c 制御配管、83a,83b,83c 排気管、100 制御装置、C1 接続部、J1,J2 コネクタ、P1~P10 配管、PL サンプルループ、Pb バッファ流路、V1~V5 切替バルブ、Va~Vc 制御バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7