(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】強化繊維束およびその製造方法、ならびにそれを用いたチョップド繊維束および繊維強化樹脂成形材料
(51)【国際特許分類】
D06M 15/59 20060101AFI20230411BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20230411BHJP
D06M 15/70 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
D06M15/59
C08J5/04 CES
C08J5/04 CFG
D06M15/70
(21)【出願番号】P 2019512692
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001221
(87)【国際公開番号】W WO2019146486
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011448
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018011451
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】布施 充貴
(72)【発明者】
【氏名】舘山 勝
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏
(72)【発明者】
【氏名】清家 聡
(72)【発明者】
【氏名】松井 明彦
(72)【発明者】
【氏名】浦 和麻
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138370(JP,A)
【文献】特開2016-194175(JP,A)
【文献】特開平01-292038(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081407(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221657(WO,A1)
【文献】特開2003-105676(JP,A)
【文献】特表2005-526163(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00-23/18
B29B 15/12
B29K 105/08
B29K 105/10
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物のいずれか、または、それらを混合したものを含む第1のサイジング剤が付着した強化繊維
を開繊、拡幅する拡幅工程(I)を含み、拡幅した前記強化繊維に水溶性ポリアミド
を含む第2のサイジング剤を塗布した後に架橋剤と反応させて強化繊維束を作製するサイジング剤付与工程(II)をさらに含むことを特徴とする強化繊維束の製造方法。
【請求項2】
前記架橋剤がメラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする、請求項
1に記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤と前記
第2のサイジング剤の重量比が0.02以上1以下であることを特徴とする請求項
1または2に記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項4】
前記サイジング剤付与工程(II)において、強化繊維束の全サイジング剤付着量が0.5重量%以上5重量%以下となるように前記
第2のサイジング剤を塗布することを特徴とする、請求項
1~3のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項5】
前記拡幅工程(I)において、強化繊維束の単位幅あたりの単糸数が1,600本/mm以下になるように拡幅することを特徴とする、請求項
1~4のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項6】
水溶性ポリアミドが付与された前記強化繊維を熱処理する工程を含むことを特徴とする、請求項
1~5のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理の温度が130~350℃であることを特徴とする、請求項
6に記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理の時間が0.33~15分であることを特徴とする、請求項
6または7に記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理後の水溶性ポリアミドがエステル結合、および/または、炭素-炭素の二重結合を有することを特徴とする、請求項
6~8のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項10】
前記水溶性ポリアミドが、主鎖中に三級アミノ基および/またはオキシエチレン基を有するジアミンとジカルボン酸とを重合して得られたものからなることを特徴とする、請求項
1~9のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項11】
前記強化繊維を分繊処理する工程を含むことを特徴とする、請求項
1~10のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項12】
前記強化繊維束を長手方向に沿って走行させながら、複数の突出部を具備する分繊手段を前記強化繊維束に突き入れて分繊処理部を生成する分繊工程(III)と、
少なくとも1つの前記分繊処理部における前記突出部と前記強化繊維束との接触部に単糸が交絡する絡合部を形成する絡合工程(IV)と、
前記分繊手段を前記強化繊維束から抜き取り、前記絡合部を含む絡合蓄積部を通過させた後、前記分繊手段を前記強化繊維束に再度突き入れる再突き入れ工程(V)と、
複数の束に分割された分繊処理区間と未分繊処理区間とを交互に形成する分繊処理工程(VI)とをさらに含むことを特徴とする、請求項
1~11のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
【請求項13】
前記分繊処理工程(VI)において、1つの未分繊処理区間を挟んで隣接する分繊処理区間の長さが異なる長さを含むことを特徴とする請求項
12に記載の強化繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性や成形の際の流動性、成形品の力学特性に優れる強化繊維束とそのチョップド繊維束、およびその製造方法、ならびにそれを用いた繊維強化樹脂成形材料その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不連続の強化繊維(例えば、炭素繊維)の束状集合体(以下、繊維束ということもある。)とマトリックス樹脂からなる成形材料を用いて、加熱、加圧成形により、所望形状の成形品を製造する技術は広く知られている。このような成形材料において、単糸数が多い繊維束からなる成形材料では成形の際の流動性には優れるが、成形品の力学特性は劣る傾向がある。これに対し、成形時の流動性と成形品の力学特性の両立を狙い、成形材料内の繊維束として、任意の単糸数に調整した繊維束が使用されている。繊維束の単糸数を調整する方法として、例えば特許文献1、2には、複数の繊維束を事前に巻き取った複数繊維束巻取体を用いて、分繊処理を行う方法が開示されている。しかし、これらの方法は、事前処理の繊維束の単糸数の制約を受けるため、調整範囲が限定され、所望の単糸数へ調整しづらいものであった。
【0003】
また、特許文献3~6には、円盤状の回転刃を用いて繊維束を所望の単糸数に縦スリットする方法が開示されている。これらの方法は、回転刃のピッチを変更することで単糸数の調整が可能ではあるものの、長手方向にわたって縦スリットされた繊維束は集束性がないため、縦スリット後の糸をボビンに巻き取ったり、巻き取ったボビンから繊維束を巻き出すことといった取扱いが困難になりやすい。また、縦スリット後の繊維束を搬送する際には、縦スリットによって発生した枝毛状の繊維束が、ガイドロールや送りロールなどに巻きつき、搬送が容易でなくなる恐れがある。また成形材料とした際に、単糸が多く含まれるため流動性に劣るという問題があった。
【0004】
特許文献7、8には、工程安定性やコンポジット物性向上を狙った、ポリアミド系のサイジング剤が塗布された強化繊維が提案されている。工程安定性やコンポジット物性は向上したものの、サイジング剤塗布工程において乾燥あるいは変性に時間がかかるため生産性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-255448号公報
【文献】特許第4192041号公報
【文献】特許第5722732号公報
【文献】特許第5996320号公報
【文献】特許第5512908号公報
【文献】国際公開WO2016/104154号
【文献】特開2013-194338号公報
【文献】特開昭60-221346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記要求に鑑み、生産性や成形の際の流動性、成形品の力学特性に優れる強化繊維束とそのチョップド繊維束、およびその製造方法、ならびにそれを用いた繊維強化樹脂成形材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)強化繊維表面に、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物のいずれか、または、それらを混合したものを含む第1のサイジング剤と、ポリアミド系樹脂を含む第2のサイジング剤とが付着していることを特徴とする強化繊維束。
(2)単位幅当りの繊維本数が600本/mm以上1,600本/mm未満であり、強化繊維束のドレープ値が120mm以上240mm以下であることを特徴とする、(1)に記載の強化繊維束。
(3)硬度が39g以上200g以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の強化繊維束。
(4)ポリアミド系樹脂の付着量が0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の強化繊維束。
(5)前記強化繊維束を5分間水に浸漬後、水から取り出した後における幅をW2とし、浸漬前における幅をW1とした場合の幅変化率W2/W1が0.5以上1.1以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の強化繊維束。
(6)前記強化繊維束を25℃、5分間水に浸漬し、絶乾した後の空気中でのドレープ値D2が、110mm以上240mm以下であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の強化繊維束。
(7)複数の束に分繊された分繊処理区間と、未分繊処理区間とが交互に形成されている(1)~(6)のいずれかに記載の強化繊維束。
(8)1つの未分繊処理区間を挟んで隣接する分繊処理区間の長さが異なる長さを含むことを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載の強化繊維束。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の強化繊維束を切断してなるチョップド繊維束であって、前記チョップド繊維束を25℃、5分間水に浸漬後、取り出した後における幅をW4とし、浸漬前における幅をW3とした場合の幅変化率W4/W3が0.6以上1.1以下であることを特徴とするチョップド繊維束。
(10)前記強化繊繊維束を長手方向に対して所定角度θ(0°<θ<90°)で切断してなる(9)に記載のチョップド繊維束。
(11)(9)または(10)に記載のチョップド繊維束とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂成形材料。
(12)前記マトリックス樹脂がポリアミドであることを特徴とする、(11)に記載の繊維強化樹脂成形材料。
(13)エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物のいずれか、または、それらを混合したものを含む第1のサイジング剤が付着した強化繊維に水溶性ポリアミドを付与することを特徴とする強化繊維束の製造方法。
(14)前記強化繊維束を開繊、拡幅する拡幅工程(I)を含むことを特徴とする、(13)に記載の強化繊維束の製造方法
(15)拡幅した前記強化繊維束にサイジング剤を塗布した後に架橋剤と反応させて強化繊維束を作製するサイジング剤付与工程(II)をさらに含むことを特徴とする(14)に記載の強化繊維束の製造方法。
(16)前記架橋剤がメラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする、(15)に記載の強化繊維束の製造方法。
(17)前記架橋剤と前記サイジング剤の重量比が0.02以上1以下であることを特徴とする、(14)~(16)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(18)前記サイジング剤付与工程(II)において、強化繊維束の全サイジング剤付着量が0.5重量%以上5重量%以下となるように前記サイジング剤を塗布することを特徴とする、(14)~(17)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(19)前記拡幅工程(I)において、強化繊維束の単位幅あたりの単糸数が1,600本/mm以下になるように拡幅することを特徴とする、(14)~(18)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(20)水溶性ポリアミドが付与された前記強化繊維を熱処理する工程を含むことを特徴とする、(13)~(19)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(21)前記熱処理の温度が130~350℃であることを特徴とする、(20)に記載の強化繊維束の製造方法。
(22)前記熱処理の時間が0.33~15分であることを特徴とする、(20)または(21)に記載の強化繊維束の製造方法。
(23)前記熱処理後の水溶性ポリアミドがエステル結合、および/または、炭素-炭素の二重結合を有することを特徴とする、(20)~(22)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(24)前記水溶性ポリアミドが、主鎖中に三級アミノ基および/またはオキシエチレン基を有するジアミンとジカルボン酸とを重合して得られたものからなることを特徴とする、(13)~(23)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(25)前記強化繊維を分繊処理する工程を含むことを特徴とする、(13)~(24)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(26)前記強化繊維束を長手方向に沿って走行させながら、複数の突出部を具備する分繊手段を前記強化繊維束に突き入れて分繊処理部を生成する分繊工程(III)と、
少なくとも1つの前記分繊処理部における前記突出部と前記強化繊維束との接触部に単糸が交絡する絡合部を形成する絡合工程(IV)と、
前記分繊手段を前記強化繊維束から抜き取り、前記絡合部を含む絡合蓄積部を通過させた後、前記分繊手段を前記強化繊維束に再度突き入れる再突き入れ工程(V)と、
複数の束に分割された分繊処理区間と未分繊処理区間とを交互に形成する分繊処理工程(VI)とをさらに含むことを特徴とする、(13)~(25)のいずれかに記載の強化繊維束の製造方法。
(27)前記分繊処理工程(VI)において、1つの未分繊処理区間を挟んで隣接する分繊処理区間の長さが異なる長さを含むことを特徴とする(26)に記載の強化繊維束の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る強化繊維束の製造方法によれば、分繊・形態安定化された強化繊維束の生産性を高めることが可能になる。得られた強化繊維束を切断/散布し、不連続繊維中間基材とした際に、成形の際の流動性と成形品の力学特性をバランスよく発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る強化繊維束の製造方法における分繊処理を繊維束に施した分繊繊維束の一例を示す概略平面図である。
【
図2】走行する繊維束に分繊手段を突き入れる一例を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略側面図である。
【
図3】繊維束に移動する分繊手段を突き入れる移動サイクルの一例を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略側面図である。
【
図4】繊維束に移動する分繊手段を突き入れる移動サイクルの他の例を示す概要説明図である。
【
図5】回転分繊手段を突き入れる移動サイクルの一例を示す説明図である。
【
図6】分繊繊維束の製造方法におけるサイジング剤付与工程のタイミング例を示す工程図である。
【
図7】繊維束拡幅工程を含む分繊繊維束の製造方法におけるサイジング剤付与工程のタイミング例を示す工程図である。
【
図8】分繊繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程のタイミング例を示す工程図である。
【
図9】分繊繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程の別のタイミング例を示す工程図である。
【
図10】繊維束拡幅工程を含む分繊繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程のタイミング例を示す工程図である。
【
図11】繊維束拡幅工程を含む分繊繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程の別のタイミング例を示す工程図である。
【
図12】ドレープ値の測定方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用される強化繊維の種類としては制限がないが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維が好ましい。なかでも炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化熱可塑性樹脂の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、得られる繊維強化熱可塑性樹脂の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。
【0011】
強化繊維の単繊維径は0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度または弾性率がそれぞれ、この範囲であれば、成形品の力学特性を高めることができる。
【0012】
強化繊維束を拡幅する工程において、拡幅された強化繊維束の単位幅あたり単糸数は600本/mm以上が好ましく、700本/mm以上がより好ましく、800本/mm以上がさらに好ましい。600本/mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。強化繊維束の単位幅あたり単糸数は1,600本/mm以下が好ましく、1,400本/mm以下がより好ましく、1,200本/mm以下がさらに好ましい。1,600本/mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。繊維強化樹脂成形材料を構成する強化繊維束の単位幅あたり単糸数の導出方法は後述する。
【0013】
強化繊維を拡幅する工程において、拡幅された強化繊維束の厚みは0.01mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましく、0.05mm以上がさらに好ましい。0.01mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。また、強化繊維束の厚みは0.2mm以下が好ましく、0.18mm以下がより好ましく、0.16mm以下がさらに好ましい。0.2mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。
【0014】
本発明で使用されるサイジング剤は1次サイジング剤と2次サイジング剤からなる。1次サイジング剤がまず強化繊維束に付与され、その後、2次サイジング剤が強化繊維束に付与される。2次サイジング剤の種類としては、水溶性ポリアミドを主成分として含有することがよく、水溶性ポリアミドは主鎖中に三級アミノ基および/またはオキシエチレン基を有するジアミンとカルボン酸より重縮合して得られるポリアミド樹脂であり、前記ジアミンとして、ピペラジン環を有するN、N′-ビス(γ―アミノプロピル)ピペラジン、N-(β―アミノエチル)ピペラジン等主鎖中に三級アミノ基を含むモノマ、オキシエチレンアルキルアミン等の主鎖中にオキシエチレン基を含むアルキルジアミンが有用である。又、ジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸等がある。また、1次サイジング剤には、熱処理温度を低くしたり、熱処理時間を短縮したりするため、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物のいずれか、あるいは、それらを混合したものがよい。また、あらかじめ溶剤あるいは強化繊維表層に架橋剤を添加することがよい。架橋剤の種類としては特に限定されないが、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。サイジング剤に対する架橋剤の重量比の下限は0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.04以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤に対する架橋剤の重量比の上限は1以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。この範囲であれば熱処理温度を低くしたり、熱処理時間を短縮することが可能である。
【0015】
本発明の水溶性のポリアミドは共重合体であってもよい。共重合成分としては、例えばα-ピロリドン、α-ピペリドン、ε-カプロラクタム、α-メチル-ε-カプロラクタム、ε-メチル-ε-カプロラクタム、ε-ラウロラクタムなどのラクタムをあげることができ、二元共重合もしくは多元共重合も可能であるが、共重合比率は水溶性という物性を妨げない範囲において決定される。好ましくはラクタム環を持つ共重合成分比率を30重量%以内にしないとポリマーが水に完溶しなくなる。
【0016】
しかしながら、前記範囲外の共重合成分比率に難水溶性のポリマーであっても、有機及び無機酸を用いて溶液を酸性にした場合溶解性が増大し、水可溶性になり使用が可能になる。有機酸としては、酢酸、クロル酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、しゅう酸、フルオロ酢酸等があり、無機酸としては、一般的な鉱酸類である塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。
【0017】
この水溶性ポリアミドはサイジング剤が付与されていない強化繊維束に1次サイジング剤として用いてもよいし、サイジング剤が前もって付与されている強化繊維束に2次サイジング剤として用いてもよい。
【0018】
強化繊維束に付与された全サイジング剤の付着量は5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましい。サイジング剤の付着量が5重量%を超えると、繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維束形態が得られない可能性が生じる。サイジング剤の付着量は0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。
【0019】
サイジング剤の付着量が0.1重量%未満の場合、成形品を作製しようとすると、マトリックスと強化繊維との接着性が低下する傾向にあり、成形品の力学特性が低くなる可能性がある。また、フィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性が低下したり、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。サイジング剤の付着量の導出方法は後述する。
【0020】
サイジング剤は、強化繊維表面に均質に付着したものであることが好ましい。均質に付着させる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、これらサイジング剤を水またはアルコール、酸性水溶液0.1重量%以上、好ましくは1重量%~20重量%の濃度に溶解して、その高分子溶液にローラーを介して繊維束をサイジング剤処理液に浸漬する方法、サイジング剤処理液の付着したローラーに繊維束を接する方法、サイジング剤処理液を霧状にして繊維束に吹き付ける方法などがある。この際、繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング剤処理液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に繊維束を超音波で加振させることはより好ましい。
【0021】
強化繊維束に付着したサイジング剤中の水やアルコールなどの溶剤を除去するには、熱処理や風乾、遠心分離などのいずれの方法を用いてもよいが、中でもコストの観点から熱処理が好ましい。熱処理の加熱手段としては、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーターなどを使用することができる。この加熱処理条件も重要であり、取り扱い性、マトリックス材との接着性の良否に関わってくる。すなわち、サイジング剤を繊維束に付与した後の加熱処理温度と時間はサイジング剤の成分と付着量によって調整すべきである。前記水溶性ポリアミドの場合、熱劣化を防止する観点から、室温~180℃で乾燥し、水分を除去した後、熱処理するのが好ましい。熱処理温度の下限は130℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱処理温度の上限は350℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましい。この熱処理温度は、前記水溶性ポリアミドが空気中の酸素によって自己架橋したり、水溶性を失う温度である。この処理後のポリアミドはエステル結合、および/または、炭素-炭素の二重結合を有してもよい。熱処理により、水溶性ポリマーが不溶になり吸湿性も失うため、フィラメントを集束したストランドのべたつきがなくなり、後加工の作業性が向上するだけでなく、マトリックス材への密着性がよくなり取り扱いやすい繊維束を提供できる。熱処理時間としては0.3分以上が好ましい。また10分以下が好ましく、6分以下がより好ましく、2分以下がさらに好ましい。この範囲であれば、ライン速度を上げ生産性を高めることができる。なお、熱処理後、23±5℃の雰囲気下でエイジング処理を行うことで、繊維束の硬度をさらに高めることができる。
【0022】
この水溶性ポリアミド樹脂を用いたサイジング剤は各種マトリックス材との親和性に優れておりコンポジット物性を著しく向上せしめるが、特にポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、及びポリエーテルアミドイミド系樹脂において優れた密着性の改善効果がある。
【0023】
前記水溶性ポリアミドを2次サイジング剤として用いる場合は、1次サイジング剤が付与された強化繊維束に前記方法と同様のつけ方でもよいし、強化繊維束の製造工程において付与してもよい。特定の強化繊維束の製造において、該強化繊維束の製造工程中のいずれかのタイミングで行われるサイジング剤の付与について例示すると、例えば、サイジング剤を溶媒(分散させる場合の分散媒含む)中に溶解(分散も含む)したサイジング剤処理液を調製し、該サイジング剤処理液を繊維束に塗布した後に、溶媒を乾燥・気化させ、除去することにより、サイジング剤を繊維束に付与することが一般的に行われる。
【0024】
本発明におけるサイジング剤の熱分解開始温度は200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。熱分解開始温度の導出方法は後述する。
【0025】
本発明で使用されるサイジング剤塗布後の強化繊維束のドレープ値D1は120mm以上がよく、145mm以上が好ましく、170mm以上がより好ましい。ドレープ値D1が120mmより小さくなるとフィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性の低下、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。また、サイジング剤塗布後の強化繊維束のドレープ値D1は240mm以下であることがよく、230mm以下が好ましく、220mm以下がより好ましい。ドレープ値D1が240mmを超えると、繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維束形態が得られない可能性がある。強化繊維束のドレープ値の導出方法は後述する。
【0026】
次にドレープ値D1を測定した強化繊維束を25℃の水に、5分間浸漬処理後、取り出し、絶乾した後、前記方法と同様の方法で測定したドレープ値をドレープ値D2とする。ドレープ値D2(束硬さ)の下限は110mm以上が好ましく、145mm以上がより好ましく、170mm以上がさらに好ましい。またドレープ値D1(束硬さ)の上限は240mm以下が好ましく、230mm以下がより好ましく、220mm以下がさらに好ましい。ドレープ値D2が110mmより小さくなるとフィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性の低下、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。一方、ドレープ値D2が240mmを超えると、繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維形態が得られない可能性が生じる。
【0027】
本発明で使用されるサイジング剤塗布後の強化繊維束の束硬度は39g以上が好ましく、70g以上がより好ましく、120g以上がさらに好ましい。硬度が39g未満の場合、フィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性の低下、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成する強化繊維束の束硬度は200g以下であることが好ましく、190g以下がより好ましく、180g以下がさらに好ましい。強化繊維束の硬度が200gを超えると、強化繊維束のワインダーでの巻き取り性が低下し、本発明の効果を発揮しない。強化繊維束の束硬度の導出方法は後述する。
【0028】
本発明で使用されるサイジング剤塗布後の強化繊維束を水へ浸漬する前の幅をW1、強化繊維束を25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、1分間水を切った後における幅をW2とすると、強化繊維束の幅変化率W2/W1は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。強化繊維束の幅変化率W2/W1が0.5より小さいと強化繊維束に付着されているサイジング剤の水可溶の物性が残っていることにより、分繊処理をした後、分繊された繊維束が再凝集することがあり、再凝集すると、最適な単糸数に調整された繊維束の形態を保持することが困難になる。最適な単糸数に調整された繊維束の形態に保持できないと、分繊繊維束を切断/散布し、不連続繊維束の中間基材とする際に、最適な形態の中間基材にすることが困難となり、成形の際の流動性と成形品の力学特性をバランスよく発現させることが困難となる。また幅変化率W2/W1は1.1以下であることが好ましい。幅変化率W2/W1が1.1を超えると繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維束形態が得られない可能性が生じる。強化繊維束の幅変化率W2/W1の導出方法は後述する。
【0029】
次に、本発明における分繊繊維束について説明する。分繊繊維束とは、複数の単糸からなる繊維束の長手方向に沿って、複数の束に分繊された分繊処理区間と、未分繊処理区間とが交互に形成された強化繊維束であり、前記強化繊維束にサイジング剤が塗布されているものである。未分繊処理区間は分繊繊維束の幅方向で連続であってもよいし、不連続であってもよい。また、1つの未分繊処理区間を挟んで隣接する分繊処理区間の長さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
本発明における分繊繊維束の製造方法について説明する。
図1は、本発明における繊維束に分繊処理を施した分繊繊維束の一例を示しており、
図2は、その分繊処理の一例を示している。本発明における分繊繊維束の製造方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、走行する繊維束に分繊手段を突き入れた一例を示す(A)概略平面図、(B)概略側面図である。図中の繊維束走行方向a(矢印)が繊維束100の長手方向であり、図示されない繊維束供給装置から連続的に繊維束100が供給されていることを表す。
【0031】
分繊手段200は、繊維束100に突き入れ易い突出形状を有する突出部210を具備しており、走行する繊維束100に突き入れ、繊維束100の長手方向に略平行な分繊処理部150を生成する。ここで、分繊手段200は、繊維束100の側面に沿う方向に突き入れることが好ましい。繊維束の側面とは、繊維束の断面が、横長の楕円もしくは横長の長方形のような扁平形状であるとした場合の断面端部における垂直方向の面(例えば、
図2に示す繊維束100の側表面に相当する)である。また、具備する突出部210は、1つの分繊手段200につき1つでもよく、また複数であってもよい。1つの分繊手段200で突出部210が複数ある場合、突出部210の磨耗頻度が減ることから、交換頻度を減らすことも可能となる。さらに、分繊する繊維束数に応じて、複数の分繊手段200を同時に用いることも可能である。複数の分繊手段200を、並列、互い違い、位相をずらす等して、複数の突出部210を任意に配置することができる。
【0032】
複数の単糸からなる繊維束100を、分繊手段200により本数のより少ない分繊束に分けていく場合、複数の単糸は、実質的に繊維束100内で、引き揃った状態ではなく、単糸レベルでは交絡している部分が多いため、分繊処理中に接触部211付近に単糸が交絡する絡合部160を形成する場合がある。
【0033】
ここで、絡合部160を形成するとは、例えば、分繊処理区間内に予め存在していた単糸同士の交絡を分繊手段200により接触部211に形成(移動)させる場合や、分繊手段200によって新たに単糸が交絡した集合体を形成(製造)させる場合等が挙げられる。
【0034】
本発明における分繊繊維束においては強化繊維表面にサイジング剤を塗布しているため、強化繊維同士が拘束されており、上記分繊処理時における擦過等による単糸の発生を大幅に削減することができ、上記記載の絡合部160の発生を大幅に削減することができる。
【0035】
任意の範囲に分繊処理部150を生成した後、分繊手段200を繊維束100から抜き取る。この抜き取りによって分繊処理が施された分繊処理区間110が生成し、それと同時に上記のように生成された絡合部160が分繊処理区間110の端部部位に蓄積され、絡合部160が蓄積した絡合蓄積部120が生成する。また、分繊処理中に繊維束から発生した毛羽は毛羽溜まり140として分繊処理時に絡合蓄積部120付近に生成する。
【0036】
その後再度分繊手段200を繊維束100に突き入れることで、未分繊処理区間130が生成し、繊維束100の長手方向に沿って、分繊処理区間110と未分繊処理区間130とが交互に配置されてなる分繊繊維束180が形成される。本発明における分繊繊維束180では、未分繊処理区間130の含有率が3%以上50%以下であることが好ましい。ここで、未分繊処理区間130の含有率とは、繊維束100の全長に対し未分繊処理区間130の合計生成長の割合として定義する。未分繊処理区間130の含有率が3%未満だと、分繊繊維束180を切断/散布し、不連続繊維束の中間基材として成形に用いる際の流動性が乏しくなり、50%を超えるとそれを用いて成形した成形品の力学特性が低下する。
【0037】
また、個々の区間の長さとしては、上記分繊処理区間110の長さが、30mm以上1500mm以下であることが好ましく、上記未分繊処理区間130の長さが、1mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0038】
繊維束100の走行速度は変動の少ない安定した速度が好ましく、一定の速度がより好ましい。
【0039】
分繊手段200は、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限がなく、金属製の針や薄いプレート等の鋭利な形状のような形状を備えたものが好ましい。分繊手段200は、分繊処理を行う繊維束100の幅方向に対して、複数の分繊手段200を設けることが好ましく、分繊手段200の数は、分繊処理を行う繊維束100の構成単糸本数F(本)によって任意に選択できる。分繊手段200の数は、繊維束100の幅方向に対して、(F/10,000-1)個以上(F/50-1)個未満とすることが好ましい。(F/10,000-1)個未満であると、後工程で強化繊維複合材料にした際に力学特性の向上が発現しにくく、(F/50-1)個以上であると分繊処理時に糸切れや毛羽立ちの恐れがある。
【0040】
本発明では、繊維束が走行する場合に限らず、
図3に示すように、静止状態の繊維束100に対して、分繊手段200を突き入れ(矢印(1))、その後、分繊手段200を繊維束100に沿って走行(矢印(2))させながら分繊処理部150を生成し、その後、分繊手段200を抜き取る(矢印(3))方法でもよい。その後は、
図4(A)に示すように、静止していた繊維束100を矢印(3)、(4)で示すタイミングにて所定距離だけ移動させた後に、分繊手段200を元の位置(矢印(4))に戻してもよいし、
図4(B)に示すように、繊維束100は移動させず、分繊手段200が絡合蓄積部120を経過するまで移動(矢印(4))させてもよい。
【0041】
繊維束100を所定距離だけ移動させつつ分繊処理を行う場合には、
図3(B)または
図4(A)に示すように、分繊手段200を突き入れている分繊処理時間(矢印(2)で示す動作の時間)と、分繊手段200を抜き取り、再度繊維束に突き入れるまでの時間(矢印(3)、(4)、(1)で示す動作の時間)が、制御されることが好ましい。この場合、分繊手段200の移動方向は図の(1)~(4)の繰り返しとなる。
【0042】
また、繊維束100は移動させず、分繊手段200が絡合蓄積部120を通過するまで分繊手段200を移動させつつ分繊処理を行う場合には、
図4(B)に示すように、分繊手段を突き入れている分繊処理時間(矢印(2)または矢印(6)で示す動作の時間)と、分繊手段200を抜き取り、再度繊維束に突き入れるまでの時間(矢印(3)、(4)、(5)または矢印(3)、(4)、(1)で示す動作の時間)が、制御されることが好ましい。この場合にも、分繊手段200の移動方向は図の(1)~(4)の繰り返しとなる。
【0043】
このように、分繊手段200によって、分繊処理区間と未分繊処理区間とが交互に形成され、未分繊処理区間が繊維束の全長に対して所定範囲内の比率になるように分繊繊維束が製造される。
【0044】
なお、繊維束100を構成する単糸の交絡状態によっては、任意長さの未分繊処理区間を確保する(例えば
図2において、分繊処理区間110を処理後、所定長さの未分繊処理区間130を確保した上で次の分繊処理部150を処理する)ことなく、分繊処理区間の終端部近傍から、引き続き分繊処理を再開することもできる。例えば、
図4(A)に示すように、繊維束100を間欠的に移動させながら分繊処理を行う場合は、分繊手段200が分繊処理を行った(矢印(2))後、繊維束100の移動長さを、直前で分繊処理した長さより短くすることで、再度分繊手段200を突き入れる位置(矢印(1))が、直前に分繊処理した分繊処理区間に重ねることができる。一方、
図4(B)に示すように分繊手段200自身を移動させながら分繊処理を行う場合は、一旦、分繊手段200を抜き取った後(矢印(3))、所定長さを移動させる(矢印(4))ことなく、再び分繊手段200を繊維束に突き入れる(矢印(5))ことができる。
【0045】
このような分繊処理は、繊維束100を構成する複数の単糸同士が交絡している場合、繊維束内で単糸が実質的に引き揃った状態にはないため、繊維束100の幅方向に対して、既に分繊処理された位置や、分繊手段200を抜き取った箇所と同じ位置に再度分繊手段200を突き入れても、単糸レベルで突き入れる位置がずれやすく、直前に形成された分繊処理区間とは、分繊された状態(空隙)が連続することなく、別々の分繊処理区間として存在させることができる。
【0046】
分繊処理1回あたり分繊する分繊処理区間の長さ(分繊距離170)は、分繊処理を行う繊維束の単糸交絡状態にもよるが、30mm以上1,500mm未満が好ましい。30mm未満であると分繊処理の効果が不十分であり、1,500mm以上になると強化繊維束によっては糸切れや毛羽立ちの恐れがある。
【0047】
さらに、分繊手段200が複数設けられる場合には、交互に形成される分繊処理区間と未分繊処理区間とを、繊維束の幅方向に対して、略平行に複数設けることもできる。この際、前述したように、複数の分繊手段200を、並列、互い違い、位相をずらす等して、複数の突出部210を任意に配置することができる。
【0048】
また更に、複数の突出部210を、独立して制御することもできる。詳細は後述するが、分繊処理に要する時間や、突出部210が検知する押圧力により、個々の突出部210が独立して分繊処理することも好ましい。
【0049】
いずれの場合であっても、繊維束走行方向の上流側に配置した、繊維束を巻き出す巻き出し装置(図示せず)などから繊維束を巻き出す。繊維束の巻き出し方向は、ボビンの回転軸と垂直に交わる方向に引き出す横出し方式や、ボビン(紙管)の回転軸と同一方向に引き出す縦出し方式が考えられるが、解除撚りが少ないことを勘案すると横出し方式が好ましい。
【0050】
また、巻き出し時のボビンの設置姿勢については、任意の方向に設置することができる。中でも、クリールにボビンを突き刺した状態において、クリール回転軸固定面でない側のボビンの端面が水平方向以外の方向を向いた状態で設置する場合は、繊維束に一定の張力がかかった状態で保持されることが好ましい。繊維束に一定の張力が無い場合は、繊維束がパッケージ(ボビンに繊維束が巻き取られた巻体)からズレ落ちパッケージから離れる、もしくは、パッケージから離れた繊維束がクリール回転軸に巻きつくことで、巻き出しが困難になることが考えられる。
【0051】
また、巻き出しパッケージの回転軸固定方法としては、クリールを使う方法の他に、平行に並べた2本のローラーの上に、ローラーと平行にパッケージを載せ、並べたローラーの上でパッケージを転がすようにして、繊維束を巻き出す、サーフェス巻き出し方式も適用可能である。
【0052】
また、クリールを使った巻き出しの場合、クリールにベルトをかけ、その一方を固定し、もう一方に錘を吊るす、バネで引っ張るなどして、クリールにブレーキをかけることで、巻き出し繊維束に張力を付与する方法が考えられる。この場合、巻き径に応じて、ブレーキ力を可変することが、張力を安定させる手段として有効である。
【0053】
また、分繊後の単糸本数の調整には、繊維束を拡幅する方法と、繊維束の幅方向に並べて配置した複数の分繊手段のピッチによって調整が可能である。分繊手段のピッチを小さくし、繊維束幅方向により多くの分繊手段を設けることで、より単糸本数の少ない、いわゆる細束に分繊処理が可能となる。また、分繊手段のピッチを狭めずとも、分繊処理を行う前に繊維束を拡幅し、拡幅した繊維束をより多くの分繊手段で分繊することでも、単糸本数の調整が可能である。
【0054】
ここで拡幅とは、繊維束100の幅を拡げる処理を意味する。拡幅処理方法としては特に制限がなく、振動ロールを通過させる振動拡幅法、圧縮した空気を吹き付けるエア拡幅法などが好ましい。
【0055】
本発明では分繊手段200の突き入れと抜き取りを繰り返して分繊処理部150を形成する。その際、再度突き入れるタイミングは、分繊手段200を抜き取った後の経過時間で設定することが好ましい。また、再度抜き取るタイミングも、分繊手段200を突き入れた後の経過時間で設定することが好ましい。突き入れ、および/または抜き取りのタイミングを時間で設定することで、所定距離間隔の分繊処理区間110および、未分繊処理区間130を生成することが可能となり、分繊処理区間110と未分繊処理区間130の比率も任意に決定することが可能となる。また、所定時間間隔は、常時同じでもよいが、分繊処理を進めた距離に応じて長くしていく、もしくは短くしていくことや、その時々の繊維束の状態に応じて、例えば繊維束が元々もっている毛羽や単糸の交絡が少ない場合には、所定時間間隔を短くするなど、状況に応じて変化させてもよい。
【0056】
繊維束100に分繊手段200を突き入れると、分繊処理の経過にしたがって、生成する絡合部160が突出部210を押し続けるため、分繊手段200は絡合部160から押圧力を受ける。
【0057】
前述の通り、複数の単糸は実質的に繊維束100内で引き揃った状態ではなく、単糸レベルで交絡している部分が多く、さらに繊維束100の長手方向においては、交絡が多い箇所と少ない箇所が存在する場合がある。単糸交絡の多い箇所は分繊処理時の押圧力の上昇が早くなり、逆に、単糸交絡の少ない箇所は押圧力の上昇が遅くなる。したがって、本発明の分繊手段200には、繊維束100からの押圧力を検知する押圧力検知手段を備えることが好ましい。
【0058】
また、分繊手段200の前後で繊維束100の張力が変化することがあるため、分繊手段200の近辺には繊維束100の張力を検知する張力検知手段を少なくとも1つ備えてもよく、複数備えて張力差を演算してもよい。これら押圧力、張力、張力差の検知手段は、個別に備えることもでき、いずれかを組み合わせて設けることもできる。ここで、張力を検知する張力検知手段は、分繊手段200から繊維束100の長手方向に沿って前後の少なくとも一方10~1,000mm離れた範囲に配置することが好ましい。
【0059】
これら押圧力、張力、張力差は、検出した値に応じて分繊手段200の抜き出しを制御することが好ましい。検出した値の上昇に伴って、任意に設定した上限値を超えた場合に分繊手段200を抜き出すよう制御することが更に好ましい。上限値は、押圧力、張力の場合は0.01~5N/mmの範囲、張力差は0.01~0.8N/mmの範囲で上限値を設定することが好ましい。なお、上限値は、繊維束の状態に応じて、±10%の幅で変動させてもよい。ここで、押圧力、張力、張力差の単位(N/mm)は、繊維束100の幅あたりに作用する力を示す。
【0060】
押圧力、張力、張力差の上限値の範囲を下回ると、分繊手段200を突き入れてすぐに、分繊手段200を抜き取る押圧力や張力、張力差に到達するため、十分な分繊距離が取れず、分繊処理区間110が短くなりすぎ、本発明で得ようとする分繊処理が施された繊維束が得られなくなる。一方、上限値の範囲を上回ると、分繊手段200を突き入れた後、分繊手段200を抜き取る押圧力や張力、張力差に到達する前に繊維束100に単糸の切断が増えるため、分繊処理が施された繊維束が枝毛状に飛び出すことや、発生する毛羽が増えるなどの不具合が発生しやすくなる。飛び出した枝毛は、搬送中のロールに巻きついたり、毛羽は駆動ロールに堆積し繊維束に滑りを発生させたりする等、搬送不良を発生させやすくする。
【0061】
分繊手段200の抜き取りタイミングを時間で制御する場合とは異なり、押圧力、張力、張力差を検知する場合には、分繊処理時に繊維束100を切断するほどの力がかかる前に分繊手段200を抜き取るため、繊維束100に無理な力がかからなくなり、連続した分繊処理が可能になる。
【0062】
更に、繊維束100が部分的に切断されたような枝切れや毛羽立ちの発生を抑えつつ、分繊処理区間110が長く、かつ、絡合蓄積部120の形状が長手方向に安定的な繊維束100を得るためには、押圧力は、0.04~2.0N/mm、張力は0.02~0.2N/mm範囲、張力差は0.05~0.5N/mmの範囲とすることが好ましい。
【0063】
繊維束100に突き入れた分繊手段200から繊維束100の長手方向に沿った前後の少なくとも一方10~1,000mm離れた範囲において、繊維束100の撚りの有無を検知する撮像手段を具備することも好ましい。この撮像により、撚りの位置をあらかじめ特定し、撚りに分繊手段200を突き入れないように制御することで、突き入れミスを防止することができる。また、突き入れた分繊手段200に撚りが接近した際に、分繊手段200を抜き出すこと、つまり撚りを分繊処理しないことで、繊維束100の狭幅化を防ぐことが出来る。ここで、突き入れミスとは、撚りに分繊手段200を突き入れてしまい、繊維束100を分繊手段200の突き入れ方向に押し動かすのみで、分繊処理されないことをいう。
【0064】
分繊手段200が繊維束100の幅方向に複数存在し、かつ、等間隔に配置される構成では、繊維束100の幅が変化すると、分繊された単糸本数も変化するため、安定した単糸本数の分繊処理が行えなくなることがある。また、撚りを無理やり分繊処理すると、繊維束100を単糸レベルで切断し毛羽を多く発生させるため、絡合部160が集積されてなる絡合蓄積部120の形状が大きくなる。大きな絡合蓄積部120を残しておくと、巻体から解舒される繊維束100に引っかかりやすくなる。
【0065】
繊維束100の撚りを検知した場合、前述の撚りに分繊手段200を突き入れないように制御する以外にも、繊維束100の走行速度を変化させてもよい。具体的には、撚りを検知した後、分繊手段200が繊維束100から抜き出ているタイミングで、撚りが分繊手段200を経過するまでの間、繊維束100の走行速度を早くすることで、効率よく撚りを回避することができる。
【0066】
また、撮像手段で得られた画像を演算する画像演算処理手段を更に備え、画像演算処理手段の演算結果に基づき、分繊手段200の押圧力を制御する押圧力制御手段を更に備えてもよい。例えば、画像演算処理手段が撚りを検知した場合、分繊手段が撚りを経過する際の撚りの通過性をよくすることが出来る。具体的には、撮像手段により撚りを検知し、突出部210が検知した撚りに接触する直前から通過するまで、押圧力が低減するように分繊手段200を制御することが好ましい。撚りを検知した際、押圧力の上限値の0.01~0.8倍の範囲に低減させることが好ましい。この範囲を下回る場合、実質的に押圧力を検知できなくなり、押圧力の制御が困難になったり、制御機器自体の検出精度を高める必要が生じる。また、この範囲を上回る場合には、撚りを分繊処理する頻度が多くなり、繊維束が細くなる。
【0067】
突出部210を備えた分繊手段200を単純に繊維束100に突き入れる以外にも、分繊手段として回転可能な回転分繊手段220を用いることも好ましい態様である。
図5は、回転分繊手段を突き入れる移動サイクルの一例を示す説明図である。回転分繊手段220は繊維束100の長手方向に直交する回転軸240を備えた回転機構を有しており、回転軸240の表面には突出部210が設けられている。図中の繊維束走行方向b(矢印)に沿って繊維束100が走行するのに合わせ、回転分繊手段220に設けられた突出部210が繊維束100に突き入れられ、分繊処理が始まる。ここで、図示は省略するが、回転分繊手段220は、押圧力検知機構と回転停止位置保持機構を有していることが好ましい。双方機構によって、所定の押圧力が回転分繊手段220に作用するまでは、
図5(A)の位置で回転停止位置を保持し分繊を続ける。突出部210に絡合部160が生じる等、所定の押圧力を超えると、
図5(B)のように、回転分繊手段220が回転を始める。その後、
図5(C)のように、突出部210(黒丸印)が繊維束100から抜け、次の突出部210(白丸印)が繊維束100に突き入る動作を行う。
図5(A)~
図5(C)の動作が短ければ短いほど、未分繊処理区間は短くなるため、繊維束の分繊処理区間の割合を多くしたい場合には
図5(A)~
図5(C)の動作を短くすることが好ましい。
【0068】
回転分繊手段220に突出部210を多く配置することで、分繊処理割合の多い繊維束100を得られたり、回転分繊手段220の寿命を長くしたりすることができる。分繊処理割合の多い繊維束とは、繊維束内における分繊処理された長さを長くした繊維束もしくは、分繊処理された区間と未分繊処理の区間との発生頻度を高めた繊維束のことである。また、1つの回転分繊手段に設けられた突出部210の数が多いほど、繊維束100と接触して突出部210が磨耗する頻度を減らすことにより、寿命を長くすることができる。突出部210を設ける数としては、円盤状の外縁に等間隔に3~12個配置することが好ましく、より好ましくは4~8個である。
【0069】
このように、分繊処理割合と突出部の寿命とを優先させつつ、繊維束幅が安定した繊維束100を得ようとする場合、回転分繊手段220には、撚りを検知する撮像手段を有していることが好ましい。具体的には、撮像手段が撚りを検知するまでの通常時は、回転分繊手段220は回転および停止を間欠的に繰り返すことで分繊処理を行い、撚りを検知した場合には、回転分繊手段220の回転速度を通常時より上げる、および/または停止時間を短くすることで、繊維束幅を安定させることができる。前記停止時間をゼロに、つまり、停止せず連続して回転し続けることもできる。
【0070】
また、回転分繊手段220の間欠的な回転と停止を繰り返す方法以外にも、常に回転分繊手段220を回転し続けてもよい。その際、繊維束100の走行速度と回転分繊手段220の回転速度とを、相対的にいずれか一方を早くする、もしくは遅くすることが好ましい。速度が同じ場合には、突出部210を繊維束100に突き刺す/抜き出す、の動作が行われるため、分繊処理区間は形成できるものの、繊維束100に対する分繊作用が弱いため、分繊処理が十分に行われない場合がある。またいずれか一方の速度が相対的に早過ぎる、もしくは遅すぎる場合には、繊維束100と突出部210とが接触する回数が多くなり、擦過によって糸切れする恐れがあり、連続生産性に劣ることがある。
【0071】
本発明では、分繊手段200、回転分繊手段220の突き入れと抜き取りを、分繊手段200、回転分繊手段220の往復移動によって行う往復移動機構を更に有してもよい。また、分繊手段200、回転分繊手段220を繊維束100の繰り出し方向に沿って往復移動させるための往復移動機構を更に有することも好ましい態様である。往復移動機構には、圧空や電動のシリンダやスライダなどの直動アクチュエータを用いることができる。
【0072】
繊維束に強化繊維を用いる場合の分繊処理区間の数は、ある幅方向の領域において少なくとも(F/10,000-1)箇所以上(F/50-1)箇所未満の分繊処理区間数を有することが好ましい。ここで、Fは分繊処理を行う繊維束を構成する総単糸本数(本)である。分繊処理区間の数は、ある幅方向の領域において少なくとも(F/10,000-1)箇所以上分繊処理区間を有することで、分繊繊維束を所定の長さにカットし不連続繊維強化複合材料にした際に、不連続繊維強化複合材料中の強化繊維束端部が細かく分割されるため、力学特性に優れた不連続繊維強化複合材料を得ることができる。また、分繊繊維束をカットせず連続繊維として用いる際は、後工程で樹脂等を含浸し強化繊維複合材料とする際に、分繊処理区間が多く含まれる領域から、強化繊維束内に樹脂が含浸する起点となり、成形時間が短縮できるとともに、強化繊維複合材料中のボイド等を低減させることができる。分繊処理区間数を(F/50-1)箇所未満とすることで、得られる分繊繊維束が糸切れを起こしにくく、繊維強化複合材料とした際の力学特性の低下を抑制できる。
【0073】
分繊処理区間を、繊維束100の長手方向に周期性や規則性を持たせて設けると、後工程で分繊繊維束を所定の長さにカットした不連続繊維とする場合、所定の分繊繊維束本数へ制御しやすくすることができる。
【0074】
次に本発明におけるサイジング剤付与のタイミングについて説明する。
図6は、本発明に係る強化繊維束の製造方法において、強化繊維束の製造工程中におけるサイジング剤付与工程のタイミング例を示している。
図6には、繊維束100が分繊処理工程300を経て分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程400が、分繊処理工程300よりも前に行われるパターンAと、分繊処理工程300よりも後に行われるパターンBとが示されている。パターンA、パターンBのいずれのタイミングも可能である。
【0075】
図7は、本発明に係る繊維束拡幅工程301を含む強化繊維束の製造方法において、強化繊維束の製造工程中におけるサイジング剤付与工程400のタイミング例を示している。
図7には、繊維束100が繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300とをこの順に経て分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程400が、繊維束拡幅工程301よりも前に行われるパターンCと、繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300との間で行われるパターンDと、分繊処理工程300よりも後に行われるパターンEとが示されている。パターンC、パターンD、パターンEのいずれのタイミングも可能であるが、最適な分繊処理を達成できる観点から、パターンDのタイミングが最も好ましい。
【0076】
図8は、本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成する強化繊維束の製造方法において、強化繊維束の製造工程中における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程のタイミング例を示している。サイジング剤付与工程400は、サイジング剤塗布工程401と乾燥工程402を含むが、
図8には、これらサイジング剤塗布工程401と乾燥工程402を含むサイジング剤付与工程400が、繊維束100が分繊処理工程300を経て分繊繊維束180に形成される工程中において、分繊処理工程300よりも前に行われるパターンFと、分繊処理工程300よりも後に行われるパターンGとが示されている。パターンF、パターンGのいずれのタイミングも可能である。パターンFは、
図6におけるパターンAと、パターンGは、
図6におけるパターンBと実質的に同一である。
【0077】
図9は、本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成する強化繊維束の製造方法において、強化繊維束の製造工程中における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程の別のタイミング例を示している。
図9に示すタイミング例におけるパターンHでは、サイジング剤付与工程400におけるサイジング剤塗布工程401と乾燥工程402とが分離されてそれぞれ別のタイミングで行われる。サイジング剤塗布工程401は、分繊処理工程300よりも前に行われ、乾燥工程402は、分繊処理工程300よりも後に行われる。
【0078】
図10は、本発明に係る繊維束拡幅工程を含む強化繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程のタイミング例を示しており、繊維束100が繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300とをこの順に経て分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程のサイジング剤塗布工程401が、繊維束拡幅工程301よりも前に行われ、乾燥工程402については、繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300との間で行われるパターンIと、分繊処理工程300よりも後に行われるパターンJが示されている。
【0079】
図11は、本発明に係る繊維束拡幅工程を含む強化繊維束の製造方法における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程を含むサイジング剤付与工程の別のタイミング例を示しており、繊維束100が繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300とをこの順に経て分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程のサイジング剤塗布工程401が、繊維束拡幅工程301と分繊処理工程300との間で行われ、乾燥工程402が、分繊処理工程300よりも後に行われるパターンKが示されている。
【0080】
このように、本発明に係る強化繊維束の製造方法においては、各種のタイミングでサイジング剤を付与することが可能である。
【0081】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成するチョップド強化繊維束の平均束幅は0.03mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.07mm以上がさらに好ましい。0.03mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成する強化繊維束の平均束幅は3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。3mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。
【0082】
本発明で使用されるチョップド強化繊維束内の平均繊維数の上限は4,000本以下が好ましく、3,000本以下がより好ましく、2,000本以下がさらに好ましい。この範囲であれば成形品の力学特性を高めることができる。また束内平均繊維数下限は50本以上が好ましく、100本以上がより好ましく、200本以上がさらに好ましい。この範囲であれば成形材料の流動性を高めることができる。平均繊維数の導出方法は後述する。
【0083】
本発明に係る、サイジング剤塗布後のチョップド強化繊維束を水へ浸漬する前の幅をW3、強化繊維束を25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、1分間水を切った後における幅をW4とすると、強化繊維束の幅変化率W4/W3は0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。強化繊維束の幅変化率W4/W3が0.6より小さいと強化繊維束に付着されているサイジング剤の水可溶の物性が残っていることにより、繊維束が再凝集することがあり、再凝集すると、最適な単糸数に調整された繊維束の形態を保持することが困難になる。最適な単糸数に調整された繊維束の形態に保持できないと、最適な形態の中間基材にすることができず、成形の際の流動性と成形品の力学特性をバランスよく発現させることが困難となる。また幅変化率W4/W3は1.1以下であることが好ましい。幅変化率W4/W3が1.1を超えると繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維束形態が得られない可能性が生じる。強化繊維束の幅変化率W4/W3の導出方法は後述する。
【0084】
本発明において、チョップド繊維束の束状集合体に含浸するマトリックス熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどが挙げられる。特に、上記熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を使用することが好ましく、さらにポリアミドに無機系の酸化防止剤を配合させることが好ましい。本発明に用いる熱可塑性ポリアミド樹脂としては、例えば、環状ラクタムの開環重合またはω-アミノカルボン酸の重縮合で得られるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12やジアミンとジカルボン酸の重縮合で得られるナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロンMFD6、2種以上のジアミンとジカルボン酸の重縮合で得られるナイロン66・6・6I、ナイロン66・6・12などの共重合ナイロンなどが好適に使用することができる。特にナイロン6、66、610は機械的特性とコストの観点から好ましい。
【0085】
また、本発明に用いるハロゲン化銅あるいはその誘導体としては、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩などが挙げられる。なかでもヨウ化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩を好適に使用できる。ハロゲン化銅あるいはその誘導体の添加量としては、熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対し0.001~5重量部の範囲にあることが好ましい。添加量が0.001部未満では予熱時の樹脂分解や発煙、臭気を抑えることができず、5重量部以上では改善効果の向上が見られなくなる。更に0.002~1重量部が熱安定化効果とコストのバランスから好ましい。
【0086】
本発明において、チョップド繊維束の束状集合体にマトリックス樹脂を含浸する方法は特に限定するものではなく、上記熱可塑性樹脂を含浸する方法を例示すると、熱可塑性樹脂繊維を含有する束状集合体を作製し、束状集合体に含まれる熱可塑性樹脂繊維をそのままマトリックス樹脂として使用してもかまわないし、熱可塑性樹脂繊維を含まない束状集合体を原料として用い、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸してもかまわない。
【0087】
また、熱可塑性樹脂繊維を含有する束状集合体を原料として用いる場合であっても、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸することもできる。このような場合、熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂は同一の樹脂であってもかまわないし、異なる樹脂であってもかまわない。熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂が異なる場合は、両者は相溶性を有するか、あるいは、親和性が高い方が好ましい。
【0088】
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を製造するに際し、束状集合体への、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂の含浸を、含浸プレス機を用いて実施することができる。プレス機としてはマトリックス樹脂の含浸に必要な温度、圧力を実現できるものであれば特に制限はなく、上下する平面状のプラテンを有する通常のプレス機や、1対のエンドレススチールベルトが走行する機構を有するいわゆるダブルベルトプレス機を用いることができる。かかる含浸工程においてはマトリックス樹脂を、フィルム、不織布又は織物等のシート状とした後、不連続繊維マットと積層し、その状態で上記プレス機等を用いてマトリックス樹脂を溶融・含浸することができるし、粒子状のマトリックス樹脂を束状集合体上に散布し積層体としてもよいし、もしくはチョップド繊維束を散布する際に同時に散布し、束状集合体内部に混ぜてもよい。
【0089】
繊維強化樹脂成形材料に占める強化繊維の体積含有量としては、全体体積の20体積%以上が好ましく、25体積%以上がより好ましく、30体積%以上がさらに好ましい。強化繊維の体積含有量が20体積%未満になると、繊維強化樹脂成形材料の力学特性も低下する傾向にある。一方、また、繊維強化樹脂成形材料に占める強化繊維の体積含有量は70体積%以下が好ましく、65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましい。強化繊維の体積含有量が70体積%を超えると、繊維強化樹脂成形材料の力学特性は向上しやすいものの、成形性が低下する傾向にある。
【実施例】
【0090】
次に、本発明の実施例、比較例について説明する。なお、本発明は本実施例や比較例によって何ら制限されるものではない。
【0091】
(1)使用原料
・強化繊維束(1):炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35”、単糸数50,000本、“13”(エポキシ)サイジング剤、サイジング剤付着量1.5重量%)を用いた。
・強化繊維束(2):炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35”、単糸数50,000本、サイジング剤なし)を用いた。
・強化繊維束(3):ガラス繊維束(日東紡績製240TEX、単糸数1,600本)を用いた。
・強化繊維束(4):炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35”、単糸数50,000本、サイジング剤なし)を用いた。
・樹脂シート(1): ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001)からなるポリアミドマスターバッチを用いて、目付150g/m2のシートを作製した。
・樹脂シート(2): 未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)社製、“プライムポリプロ”(登録商標)J106MG)90質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、“アドマー”(登録商標)QE800)10質量%とからなるポリプロピレンマスターバッチを用いて、シートを作製した。
・サイジング剤(1): 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“T-70”)を用いた。
・サイジング剤(2): 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“A-90”)を用いた。
・サイジング剤(3): 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“P-70”)を用いた。
・サイジング剤(4): 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“P-95”)を用いた。
【0092】
(2)サイジング剤または水溶性ポリアミドの付着量の測定方法
サイジング剤または水溶性ポリアミドが付着している炭素繊維束を5gほど採取し、耐熱製の容器に投入した。次にこの容器を80℃、真空条件下で24時間乾燥し、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した炭素繊維の重量をm1(g)とし、続いて容器ごと、窒素雰囲気中、450℃で灰化処理を行った。吸湿しないように注意しながら室温まで冷却し、秤量した炭素繊維の重量をm2(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤または水溶性ポリアミドの付着量を次式により求めた。測定は10本の繊維束について行い、その平均値を算出した。
付着量(重量%)=100×{(m1-m2)/m1}
【0093】
(3)ドレープ値の測定
30cmに切断した強化繊維束をまっすぐ伸ばして平らな台に載せ、湾曲したり撚れたりしないことを確認する。湾曲あるいは撚れが発生した場合、100℃以下の加熱、あるいは、0.1MPa以下の加圧によって除くことが好ましい。
図12に示すように、23±5℃の雰囲気下、直方体の台の端に、30cmに切断した強化繊維束を固定し、この時、強化繊維束は台の端から25cm突き出るように固定した。すなわち、強化繊維束の端から5cmの部分が、台の端に来るようにした。この状態で5分間静置した後、台に固定していない方の強化繊維束の先端と、台の側面との最短距離を測定し、ドレープ値D1とした。測定した前記強化繊維束を25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、水を切った。次に強化繊維束を80℃、真空条件下で24時間乾燥し、絶乾した後、前記方法と同様の方法で浸漬処理後ドレープ値D2とした。測定本数はn=5とし、平均値を採用した。
【0094】
(4)硬度の測定
強化繊維束の硬度は、JIS L-1096 E法(ハンドルオメータ法)に準じ、HANDLE-O-Meter(大栄科学精機製作所製「CAN-1MCB」)を用いて測定した。硬度測定に用いる試験片の長さは10cm、幅はフィラメント数1,700本~550本で1mmとなるように強化繊維束を開繊調整した。また、スリット幅は20mmに設定した。このスリット溝が設けられた試験台に試験片となる強化繊維束を1本乗せ、ブレードにて溝の所定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)を測定した。強化繊維束の硬度は3回の測定の平均値から得た。
【0095】
(5)サイジング剤が塗布された強化繊維束の幅変化率測定
強化繊維束の分繊処理を施す前の幅30mmから85mmに拡幅され、サイジング剤が塗布された強化繊維束を長さ230mmにカットし、その一端の端から30mmの位置をクリップで挟み、逆端から100mmの間で幅を5点測定し、その平均値を浸漬前におけるW1とした。その後、25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、クリップで挟んだ側が上に来るように吊るした状態で1分間水を切った後、クリップで挟んだ逆端から100mmの間における幅を5点測定し、その平均値を浸漬後におけるW2とした。以上の処理を経て、樹脂含有強化繊維束の幅変化率を次式により求めた。
幅変化率=W2/W1
【0096】
(6)チョップド繊維束の幅変化率測定
強化繊維束をカットし得られた、チョップド繊維束の幅を顕微鏡を用いて測定し、浸漬前におけるW3とした。その後、25℃の水に、5分間浸漬した後、ピンセットを用いて取り出し、形態がずれないように慎重にキムワイプ上に配置し、1分間水を切った後、幅を測定し、浸漬後におけるW4とした。以上の処理を経て、チョップド繊維束の幅変化率を次式により求めた。
幅変化率=W4/W3
【0097】
(7)Wf(繊維強化樹脂成形材料中の強化繊維の重量含有率)
繊維強化樹脂成形材料から約2gのサンプルを切り出し、その質量を測定した。その後、サンプルを500℃に加熱した電気炉の中で1時間加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却してから、残った強化繊維の質量を測定した。強化繊維の質量に対する、マトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばす前のサンプルの質量に対する比率を測定し、強化繊維の重量含有率Wf(重量%)を算出した。
【0098】
(8)力学特性の評価方法
繊維強化樹脂成形材料を後記する方法により成形し、500×400mmの平板成形品を得た。平板長手方向を0°とし、得られた平板より0°と90°方向から、それぞれ100×25×2mmの試験片を16片(合計32片)を切り出し、JIS K7074(1988年)に準拠し、曲げ強度を求めた。曲げ強度が350MPa以上をA、350MPa未満をBと判定した。
【0099】
(9)流動性試験(スタンピング成形)
寸法150mm×150mm×2mmの繊維強化樹脂成形材料を2枚重ねた状態で、基材中心温度(二枚重ねた間の温度)が260℃となるように予熱後、150℃に昇温したプレス盤に配し、10MPaで30秒間加圧した。この圧縮後の面積A2(mm2)と、プレス前の繊維強化樹脂成形材料の面積A1(mm2)を測定し、A2/A1×100を流動率(%)とした。流動率が250%以上をA、250%未満をBと判定した。
・樹脂シート2の場合
寸法150mm×150mm×2mmの繊維強化樹脂成形材料を2枚重ねた状態で、基材中心温度(二枚重ねた間の温度)が220℃となるように予熱後、120℃に昇温したプレス盤に配し、10MPaで30秒間加圧した。この圧縮後の面積A2(mm2)と、プレス前の基材の面積A1(mm2)を測定し、A2/A1×100を流動率(%)とした。流動率が200%未満をC、200%以上300%未満をB、300%以上をAと判定した。
【0100】
(10)工程通過性
強化繊維束を分繊する工程、および、分繊した強化繊維束を連続でカットし散布する工程通過性について下記の通り判定した。
A:強化繊維束を分繊できる。分繊した強化繊維束をボビンから巻き出し、問題なくカット、散布できる。
B:強化繊維束を分繊できる。しかし、分繊した強化繊維束がボビンやカッター部で10回に1~7回、巻き付く。
C:強化繊維束を分繊できない。あるいは、分繊繊維できるが、分繊した強化繊維束がボビンやカッター部で10回に8回以上巻き付く。
【0101】
(実施例1)
強化繊維束(1)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、50mm幅の幅規制ロールを通すことで50mmへ拡幅した強化繊維束を得た。
【0102】
次に2次サイジング剤(サイジング剤(1))を精製水で希釈した樹脂処理液に、拡幅した強化繊維束を連続で浸漬させて、次いで250℃のホットローラと250℃の乾燥炉(大気雰囲気下)を通させ、1.5分間の熱処理を施した。強化繊維束のサイジング剤付着量は0.1重量%であった。なお、これは1次サイジング剤を含まない総付着量である。
【0103】
得られた強化繊維束に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を強化繊維束に対して、間欠的に抜き挿しした。この時、一定速度10m/分で走行する強化繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す工程を繰り返し行なった。表1に示す通り、得られたれ繊維束幅W3は1mm程度となった。
【0104】
続いて、得られた強化繊維束を、ロータリーカッターへ連続で投入して繊維長25mm、切断角度20°に切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は250g/m2であった。
【0105】
次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように、不連続繊維不織布5枚と樹脂シート(1)10枚(樹脂シートを不織布最表層に1枚、不織布の層間に2枚配置。)を積層した後に、全体をステンレス板で挟み、240℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mm、強化繊維重量含有率46重量%の繊維強化樹脂成形材料を得た。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0106】
(実施例2)
サイジング剤(1)の付着量を2重量%とした以外は実施例1と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0107】
(実施例3)
強化繊維束(1)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、30mm幅の幅規制ロールを通すことで30mmへ拡幅した拡幅繊維束を得た。
【0108】
拡幅幅を30mmとする以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0109】
(実施例4)
強化繊維束(1)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、90mm幅の幅規制ロールを通すことで85mmへ拡幅した拡幅繊維束を得た。
【0110】
拡幅幅を85mmとする以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0111】
(実施例5)
2次サイジング剤の熱処理温度、時間を350℃、16分とすること以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0112】
(実施例6)
2次サイジング剤のサイジング剤(1)をサイジング剤(2)とした以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0113】
(実施例7)
2次サイジング剤のサイジング剤(1)をサイジング剤(3)とした以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0114】
(実施例8)
2次サイジング剤のサイジング剤(1)をサイジング剤(4)とした以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0115】
(比較例1)
2次サイジング剤を付与しない以外は実施例1と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0116】
(実施例9)
2次サイジング剤の熱処理温度、時間を100℃、0.3分とすること以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0117】
(比較例2)
強化繊維束(1)を強化繊維束(2)にすること以外は実施例2と同様にして評価を行った。強化繊維束の特性、プロセス通過性や力学特性、流動性の結果を表1に示す。
【0118】
(実施例10)
強化繊維束(1)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで39mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0119】
サイジング剤(1)を水に溶解させた母液を調整し、4.1重量%の付着量になるよう、浸漬法により架橋剤であるエポキシサイジング剤を含む強化繊維束(1)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(1)の単位幅あたりの繊維数1,290本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値135mm、束硬度78gであった。
【0120】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(1)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、束内平均繊維数が1,120本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(1)を得た。
【0121】
続いて、得られた強化繊維束(1)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例11[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで32mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0123】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(1)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、3.2重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,540本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値138mm、束硬度81gであった。
【0124】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が990本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0125】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(2)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、240℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、210℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例12[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで34mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0127】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(2)の比0.04となるように水に溶解させた母液を調整し、4.0重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,480本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値142mm、束硬度89gであった。
【0128】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,030本、平均束幅が0.7mmの強化繊維束(4)を得た。
【0129】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(実施例13[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで41mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0131】
架橋剤であるフェノールと追サイジング剤(2)の比0.38となるように水に溶解させた母液を調整し、3.1重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,220本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値233mm、束硬度195gであった。
【0132】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,880本、平均束幅が0.4mmの強化繊維束(4)を得た。
【0133】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0134】
(実施例14[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで37mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0135】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(2)の比0.04となるように水に溶解させた母液を調整し、2.8重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,350本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値133mm、束硬度78gであった。
【0136】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が5,230本、平均束幅が3.4mmの強化繊維束(4)を得た。
【0137】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
(実施例15[参考実施例])
強化繊維束(3)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで3mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0139】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(2)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、3.3重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(3)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(3)の単位幅あたりの繊維数550本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値127mm、束硬度76gであった。
【0140】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(3)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(3)を分繊し、束内平均繊維数が410本、平均束幅が0.7mmの強化繊維束(3)を得た。
【0141】
続いて、得られた強化繊維束(3)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(2)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、240℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、210℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0142】
(実施例16[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで34mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0143】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(3)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、5.5重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,480本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値180mm、束硬度123gであった。
【0144】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が930本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0145】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
(実施例17[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで28mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0147】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(3)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、3.3重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,780本/mm、束厚み0.1mm、ドレープ値204mm、束硬度163gであった。
【0148】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,540本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0149】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0150】
(実施例18[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで13mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0151】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(4)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、4.7重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数3,940本/mm、束厚み0.21mm、ドレープ値243mm、束硬度220gであった。
【0152】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,120本、平均束幅が0.3mmの強化繊維束(4)を得た。
【0153】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(2)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、240℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、210℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0154】
(実施例19[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで11mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0155】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(4)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、3.1重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数4,380本/mm、束厚み0.24mm、ドレープ値145mm、束硬度84gであった。
【0156】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が930本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0157】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0158】
(実施例20[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで36mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0159】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(4)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、3.4重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、350℃のホットローラで11分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,380本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値136mm、束硬度80gであった。
【0160】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が2,330本、平均束幅が0.7mmの強化繊維束(4)を得た。
【0161】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0162】
(実施例21[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで33mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0163】
架橋剤であるユリアと追サイジング剤(4)の比0.22となるように水に溶解させた母液を調整し、2.9重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.2分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,520本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値54mm、束硬度28gであった。
【0164】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が2,110本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0165】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0166】
(実施例22[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで33mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0167】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(2)の比0.01となるように水に溶解させた母液を調整し、3.6重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.2分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,510本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値46mm、束硬度21gであった。
【0168】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,140本、平均束幅が0.7mmの強化繊維束(4)を得た。
【0169】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0170】
(実施例23[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで15mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0171】
架橋剤であるメラミンと追サイジング剤(2)の比0.04となるように水に溶解させた母液を調整し、3.8重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.2分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,440本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値35mm、束硬度24gであった。
【0172】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,280本、平均束幅が0.7mmの強化繊維束(4)を得た。
【0173】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0174】
(実施例24[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで34mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0175】
架橋剤であるフェノールと追サイジング剤(2)の比0.04となるように水に溶解させた母液を調整し、3.7重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.2分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,450本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値131mm、束硬度73gであった。
【0176】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,180本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0177】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0178】
(実施例25[参考実施例])
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで34mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0179】
架橋剤であるフェノールと追サイジング剤(2)の比0.04となるように水に溶解させた母液を調整し、3.6重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.2分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,480本/mm、束厚み0.08mm、ドレープ値142mm、束硬度89gであった。
【0180】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が1,320本、平均束幅が0.02mmの強化繊維束(4)を得た。
【0181】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を繊維長15mmに切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。得られた不連続繊維不織布の目付は0.25kg/m2であった。次に、不連続繊維不織布と樹脂シート(1)の重量比が45:55となるように積層した後に、全体をステンレス板で挟み、270℃で90秒間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180秒間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmの繊維強化樹脂成形材料を得た。この時、繊維強化樹脂成形材料の強化繊維重量含有率が46重量%になるように、樹脂シート作製の段階で樹脂の塗布量を調整した。得られた繊維強化樹脂成形材料の力学特性、流動性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
【0182】
(比較例4)
強化繊維束(4)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで39mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0183】
追サイジング剤(4)を水に溶解させた母液を調整し、2.7重量%の付着量になるよう、浸漬法により強化繊維束(4)に付与し、250℃のホットローラで0.5分間、乾燥を行った。表1に示す通り、強化繊維束(4)の単位幅あたりの繊維数1,270本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値112mm、束硬度38gであった。
【0184】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(4)に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(4)を分繊し、束内平均繊維数が970本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(4)を得た。
【0185】
続いて、得られた強化繊維束(4)を、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を切断しようとしたが、ボビンやカッター部への巻き付きが生じ成形材料を作製できなかった。
【0186】
(比較例5)
強化繊維束(1)を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻き出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで41mm幅へ拡幅した繊維束を得た。
【0187】
表1に示す通り、強化繊維束(1)の単位幅あたりの繊維数1,230本/mm、束厚み0.07mm、ドレープ値54mm、束硬度27gであった。
【0188】
得られたサイジング剤付与済み拡幅強化繊維束(1)に対して、厚み0.07mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して1mm等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠的に抜き挿しし、分繊繊維束を得た。この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行い、拡幅された強化繊維束(1)を分繊し、束内平均繊維数が930本、平均束幅が0.6mmの強化繊維束(1)を得た。
【0189】
続いて、得られた強化繊維束(1)をロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を切断しようとしたが、ボビンやカッター部への巻き付きが生じ成形材料を作製できなかった。
【0190】
【0191】
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明は、生産性や成形の際の流動性、成形品の力学特性に優れる強化繊維束とそのチョップド繊維束、およびその製造方法、ならびにそれを用いた繊維強化樹脂成形材料を提供できる。本発明の製造方法で得られる強化繊維束は不連続強化繊維コンポジットの材料であり、主に自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、航空機内装材、輸送用箱体など等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0193】
100 繊維束
110 分繊処理区間
120 絡合蓄積部
130 未分繊処理区間
140 毛羽溜まり
150 分繊処理部
160 絡合部
170 分繊距離
180 分繊繊維束
200 分繊手段
210 突出部
211 接触部
220 回転分繊手段
240 回転軸
300 分繊処理工程
301 繊維束拡幅工程
400 サイジング剤付与工程
401 サイジング剤塗布工程
402 乾燥工程
501 切断面
(1)~(4) 分繊手段移動方向
A~J パターン
a、b 繊維束走行方向