IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許7259741感光性樹脂組成物、硬化膜、色変換基板、画像表示装置、および硬化膜の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、色変換基板、画像表示装置、および硬化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230411BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20230411BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230411BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230411BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20230411BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230411BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230411BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G03F7/004 507
G03F7/029
G03F7/004 501
H05B33/14 A
H05B33/12 E
H10K59/00
G03F7/20 501
C09K11/06 660
C07F5/02 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019516274
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010377
(87)【国際公開番号】W WO2019181698
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018055833
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018144811
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立松 結花
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 敬造
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021346(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031442(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190283(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018392(WO,A1)
【文献】特開2015-022072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/029
H10K 50/00
H05B 33/12
H10K 59/00
G03F 7/20
C09K 11/06
C07F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有
前記ピロメテン誘導体の吸収極大波長における、前記光重合開始剤の吸光係数が20mL/g・cm以下である、
ことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有し、
さらに、屈折率が1.40以上3.00以下である微粒子を含有し、
前記ピロメテン誘導体の含有量に対する前記微粒子の含有量の重量比が5/1以上100/1以下である、
ことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有し、
前記ピロメテン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である、
ことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)において、Xは、C-R 7 またはNである。R 1 ~R 9 は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
【請求項4】
前記光重合開始剤がホスフィンオキシド系化合物である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ピロメテン誘導体の吸収極大波長における、前記光重合開始剤の吸光係数が20mL/g・cm以下である、
ことを特徴とする請求項またはに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、屈折率が1.40以上3.00以下である微粒子を含有する、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記微粒子の数平均粒子径が10nm以上300nm以下である、
ことを特徴とする請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記微粒子の数平均粒子径が10nm以上300nm以下である、
ことを特徴とする請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ピロメテン誘導体の含有量に対する前記微粒子の含有量の重量比が5/1以上100/1以下である、
ことを特徴とする請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記一般式(1)において、XがC-R7であり、R7が下記一般式(2)で表される基である、
ことを特徴とする請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは、1~3の整数である。kが2以上である場合、rは、それぞれ同じでも異なってもよい。)
【請求項11】
前記ピロメテン誘導体が、励起光により、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記ピロメテン誘導体が、励起光により、ピーク波長が580nm以上750nm未満の領域に観測される発光を呈する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、360nm以下の波長領域に吸収極大波長を有する紫外線吸収剤を含有する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる、
ことを特徴とする硬化膜。
【請求項15】
膜厚が5μm以上50μm以下である、
ことを特徴とする請求項14に記載の硬化膜。
【請求項16】
感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜の製造方法であって、
請求項1~のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物を、超高圧水銀灯を使用して露光する露光工程を含み、
前記露光工程における前記感光性樹脂組成物の露光量は、i線換算で60mJ/cm2以上250mJ/cm2以下である、
ことを特徴とする硬化膜の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の硬化膜を備える、
ことを特徴とする色変換基板。
【請求項18】
請求項17に記載の色変換基板を備える、
ことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の光重合開始剤とピロメテン誘導体とを含有する感光性樹脂組成物、その硬化膜、それを用いた色変換基板および画像表示装置、並びに硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい薄型ディスプレイの1つとして有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイが注目を集めており、携帯電話やモバイル機器、テレビなどの表示用ディスプレイとして市場に出回り始めている。
【0003】
有機ELディスプレイをフルカラー化する方法としては、従来、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光材料を製膜するRGB塗り分け方式の開発が進められてきたが、ディスプレイの大型化・高精細化に伴い、製膜装置の巨大化によるコスト増や、高精細化に限界があることなどから、他の各種方式が検討されている。なかでも、青色バックライトの光を緑色発光や赤色発光に変換させる色変換(CCM)方式によるフルカラー化技術が盛んに検討されている。例えば、色変換層形成のための組成物であって、蛍光染料、高屈折材料、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、及び溶剤を含むことを特徴とする、自発光感光性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、量子ドットおよびバインダー樹脂を含む硬化性組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
一方、表示装置や照明装置の発光効率を向上させる技術として、ピロメテン化合物およびバインダー樹脂を含む、入射光を長波長の光に変換する色変換組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-71360号公報
【文献】特開2016-157114号公報
【文献】国際公開第2016/190283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示される従来技術では、発光特性をもたない顔料または染料を用いた色変換層よりも高輝度の色変換層を形成することができるものの、得られる輝度がなお不十分であった。また、特許文献3には、パターニングされた色変換膜を形成することについては何ら開示されておらず、従来の有機ELディスプレイの課題である輝度の向上についても検討されていなかった。
【0007】
また、色変換層を厚膜化して色変換層の光路長を大きくすることにより、輝度の向上が期待できるものの、特許文献1~3に記載の組成物では、厚膜化した色変換層において微細なパターンを形成することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、高輝度で微細なパターンを形成することができる感光性樹脂組成物、その硬化膜、それを用いた色変換基板および画像表示装置、並びに硬化膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る感光性樹脂組成物は、少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記光重合開始剤がホスフィンオキシド系化合物である、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記ピロメテン誘導体の吸収極大波長における、前記光重合開始剤の吸光係数が20mL/g・cm以下である、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、さらに、屈折率が1.40以上3.00以下である微粒子を含有する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記微粒子の数平均粒子径が10nm以上300nm以下である、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記ピロメテン誘導体の含有量に対する前記微粒子の含有量の重量比が5/1以上100/1以下である、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記ピロメテン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である、ことを特徴とする。
【0016】
【化1】
(一般式(1)において、Xは、C-RまたはNである。R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
【0017】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記一般式(1)において、XがC-Rであり、Rが下記一般式(2)で表される基である、ことを特徴とする。
【0018】
【化2】
(一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは、1~3の整数である。kが2以上である場合、rは、それぞれ同じでも異なってもよい。)
【0019】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記ピロメテン誘導体が、励起光により、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、前記ピロメテン誘導体が、励起光により、ピーク波長が580nm以上750nm未満の領域に観測される発光を呈する、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の発明において、さらに、360nm以下の波長領域に吸収極大波長を有する紫外線吸収剤を含有する、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る硬化膜は、上記の発明のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る硬化膜は、上記の発明において、膜厚が5μm以上50μm以下である、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る硬化膜の製造方法は、感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜の製造方法であって、上記の発明のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物を、超高圧水銀灯を使用して露光する露光工程を含み、前記露光工程における前記感光性樹脂組成物の露光量は、i線換算で60mJ/cm以上250mJ/cm以下である、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る色変換基板は、上記の発明のいずれか一つに記載の硬化膜を備える、ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る画像表示装置は、上記の発明に記載の色変換基板を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る感光性樹脂組成物によれば、高輝度で微細なパターンを形成することができるという効果を奏する。また、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いることにより、高輝度の硬化膜、色変換基板および画像表示装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る感光性樹脂組成物、硬化膜、色変換基板、画像表示装置、および硬化膜の製造方法の好適な実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0029】
<感光性樹脂組成物>
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、少なくとも、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有する。本実施形態に係る感光性樹脂組成物が上記の光重合開始剤、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有することにより、紫外線照射によりラジカルを発生して当該感光性樹脂組成物を硬化させ、当該感光性樹脂組成物の紫外線照射部と紫外線非照射部とのアルカリ溶解性の差により、当該感光性樹脂組成物にパターン加工性を付与することができる。ピロメテン誘導体は、入射光を、この入射光よりも長波長の光に変換する色変換機能を有する。本発明において、感光性樹脂組成物は、上述したように、かかるピロメテン誘導体とともに、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤を含有している。
【0030】
前述のとおり、輝度を向上させるためには、色変換層を厚膜化して色変換層の光路長を大きくすることが有効である。しかし、厚膜の色変換層は、露光によって底部を十分に硬化させることが困難であることから、従来の組成物は、輝度と微細パターン加工性とを両立させることが困難であった。本発明においては、i線に比べて長波長であることから、底部までより直線的に到達するh線に着目し、感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤として、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤が選択されている。これにより、感光性樹脂組成物の露光による底部の硬化性を飛躍的に向上させることができる。この結果、本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、厚膜であっても微細なパターンを形成することができる。
【0031】
本発明において、感光性樹脂組成物は、さらに、h線の吸光係数が100mL/g・cm未満の光重合開始剤、紫外線吸収剤、微粒子、有機溶剤、密着改良剤、界面活性剤、分散剤、重合禁止剤などを含有してもよい。特に、感光性樹脂組成物が含有する上記微粒子としては、屈折率が1.40以上3.00以下である微粒子であることが好ましい。かかる微粒子は、入射光やピロメテン誘導体からの発光を適度に散乱させ、光変換効率を向上させることから、輝度をより向上させることができる。
【0032】
(感光性樹脂組成物の構成成分)
以下、本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。
【0033】
本発明における「光重合開始剤」とは、光(紫外線又は電子線を含む)により、分解または反応し、或いは分解および反応し、ラジカルを発生させる化合物をいう。本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物において、光重合開始剤は、h線の吸光係数が100mL/g・cm以上のものである。h線の吸光係数が100mL/g・cm未満であると、h線の吸収が少なくなり、厚膜の露光による底部の硬化性が不十分となる。この結果、当該厚膜に微細なパターンを形成することが困難となる。したがって、光重合開始剤のh線の吸光係数は、100mL/g・cm以上である必要がある。光重合開始剤のh線の吸光係数は、より微細なパターンを形成するという観点から、200mL/g・cm以上であることが好ましい。一方、光重合開始剤のh線の吸光係数は、取り扱いし易さの観点から、1000mL/g・cm以下であることが好ましい。
【0034】
ここで、吸光係数とは、光重合開始剤の溶液について、光路長を1cmとし、濃度を1g/mL溶液に換算したときの吸光度の値を言う。光重合開始剤の吸光係数は、光重合開始剤をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈した希釈液を調製し、光路長1cmのセルを用いて、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec-1500)によりh線(405nm)における吸光度を測定し、その測定値を濃度1g/mL溶液に換算することにより、求めることができる。
【0035】
h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤としては、例えば、ホスフィンオキシド系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキシムエステル化合物、チオキサンテン系化合物等が挙げられる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、光重合開始剤として、これらを2種以上含有してもよい。
【0036】
ホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(“IRGACURE”(登録商標)819)、同1800、同1870、“DAROCUR”(登録商標)4265(BASF社製)などが挙げられる。以下、ホスフィンオキシド系化合物の一例である“IRGACURE”819は、IC819と適宜略記する。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、4,4’-(ビス)ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン(“IRGACURE”(登録商標)369、BASF社製)などが挙げられる。オキシムエステル化合物としては、例えば、“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831(ADEKA社製)などが挙げられる。チオキサンテン系化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オンなどが挙げられる。
【0037】
h線の吸光係数が100mL/g・cm以上である光重合開始剤の構造は、特に限定されない。当該光重合開始剤としては、底部硬化性および透明性の観点から、ホスフィンオキシド系化合物が好ましく、下記一般式(8)で表される化合物がより好ましく、“IRGACURE”819がより好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
上記一般式(8)中、R16~R18は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。これらの中でも、アリール基が好ましい。上記の基のうち、水素の少なくとも一部が置換されていてもよく、置換される場合の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基が好ましい。置換基を含めたR16~R18の炭素数は、それぞれ0~20であることが好ましい。
【0040】
本発明において、感光性樹脂組成物は、上述したように、ピロメテン誘導体を含有する。この感光性樹脂組成物中のピロメテン誘導体を効率良く発光させるためには、この感光性樹脂組成物中の光重合開始剤(h線の吸光係数が100mL/g・cm以上であるもの)は、後述するピロメテン誘導体の吸収極大波長における吸光係数が低いことが好ましい。具体的には、当該光重合開始剤の、ピロメテン誘導体の吸収極大波長における吸光係数は、20mL/g・cm以下であることが好ましい。ピロメテン誘導体の吸収極大波長における当該光重合開始剤の吸光係数が20mL/g・cm以下であると、ピロメテン誘導体が効率よく光を吸収することができるため、ピロメテン誘導体が有する発光特性を十分発揮し、輝度をより向上させることができる。
【0041】
ここで、ピロメテン誘導体の吸収極大波長とは、300nm以上800nm以下の波長領域における吸収スペクトルが最大となる波長をいう。このピロメテン誘導体の吸収極大波長は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec-1500)を用いて測定することができる。
【0042】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の含有量は、現像時の表面荒れを抑制するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分(有機溶剤を除くその他の成分)の100重量%中、1重量%以上であることが好ましい。また、当該光重合開始剤の含有量は、相溶性の観点から、当該固形分の100重量%中、10重量%以下であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物は、当該光重合開始剤とともに、連鎖移動剤を含んでもよい。
【0043】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれるピロメテン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化4】
【0045】
一般式(1)において、Xは、C-RまたはNである。R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
【0046】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。また、以下の説明において、例えば、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6~40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
【0047】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0048】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0049】
上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0050】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0051】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミド等の炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0052】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0053】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。
【0054】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基等の三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0055】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0056】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0057】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基等、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0058】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0059】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基等の芳香族炭化水素基を示す。中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0060】
~Rが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
【0061】
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0062】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基等の、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5-ナフチリジニル基、1,6-ナフチリジニル基、1,7-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基、2,6-ナフチリジニル基、2,7-ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0063】
~Rが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0064】
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0065】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。また、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これら置換基は、さらに置換されてもよい。
【0066】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基等が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基は、さらに置換されてもよい。炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0067】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等のアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0068】
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基等のエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。また、ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。ボリル基の置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。中でも、アリール基、アリールエーテル基が好ましい。また、スルホ基とは、置換もしくは無置換のスルホ基である。スルホ基の置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、直鎖アルキル基、アリール基が好ましい。また、ホスフィンオキシド基とは、-P(=O)R1011で表される基である。R10、R11は、R~Rと同様の群から選ばれる。
【0069】
隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。このような縮合環および脂肪族環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、これらの縮合環および脂肪族環は、さらに別の環と縮合してもよい。
【0070】
一般式(1)で表される化合物は、高い発光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルの半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度との双方を達成することができる。さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性および分散性等の様々な特性や物性を調整することができる。例えば、R、R、RおよびRが全て水素である場合に比べ、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
【0071】
、R、RおよびRのうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、このアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1~6のアルキル基が好ましい。さらに、このアルキル基としては、熱的安定性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましい。また、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert-ブチル基がより好ましい。また、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
【0072】
、R、RおよびRのうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、このアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基である。このアリール基として特に好ましくは、フェニル基である。
【0073】
、R、RおよびRのうち少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、このヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基、チエニル基が好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基、キノリニル基である。このヘテロアリール基として特に好ましくは、ピリジル基である。
【0074】
、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルカリ可溶性樹脂や溶媒への溶解性が良好になるため、好ましい。この場合、アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
【0075】
、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため、好ましい。この場合、R、R、RおよびRの全ては、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
【0076】
複数の性質を向上させる置換基もあるが、全てにおいて十分な性能を示す置換基は限られている。特に、高発光効率と高色純度との両立が難しい。そのため、一般式(1)で表される化合物に対して複数種類の置換基を導入することで、発光特性や色純度等にバランスの取れた化合物を得ることが可能である。
【0077】
特に、R、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、例えば、R≠R、R≠R、R≠RまたはR≠R等のように、複数種類の置換基を導入することが好ましい。ここで「≠」は、異なる構造の基であることを示す。例えば、R≠Rは、RとRとが異なる構造の基であることを示す。上記のように複数種類の置換基を導入することにより、色純度に影響を与えるアリール基と発光効率に影響を与えるアリール基とを同時に導入することができるため、細やかな調節が可能となる。
【0078】
中でも、R≠RまたはR≠Rであることが、発光効率と色純度とをバランスよく向上させるという観点から、好ましい。この場合、一般式(1)で表される化合物に対して、色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に発光効率に影響を与えるアリール基を導入することができるため、これら両方の性質を最大限に向上させることができる。また、R≠RまたはR≠Rである場合、耐熱性と色純度との双方を向上させるという観点から、R=RおよびR=Rであることがより好ましい。
【0079】
主に色純度に影響を与えるアリール基としては、電子供与性基で置換されたアリール基が好ましい。電子供与性基とは、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団に、電子を供与する原子団である。電子供与性基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、負の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。
【0080】
電子供与性基の具体例としては、例えば、アルキル基(メチル基のσp:-0.17)やアルコキシ基(メトキシ基のσp:-0.27)、アミノ基(-NHのσp:-0.66)等が挙げられる。特に、炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert-ブチル基、メトキシ基が特に好ましく、これらを上記の電子供与性基とした場合、一般式(1)で表される化合物において、分子同士の凝集による消光を防ぐことができる。置換基の置換位置は、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには結合のねじれを抑える必要があるため、ピロメテン骨格との結合位置に対してメタ位またはパラ位に結合させることが好ましい。一方、主に発光効率に影響を与えるアリール基としては、tert-ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基等のかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
【0081】
、R、RおよびRが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、R、R、RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。このとき、R、R、RおよびRは、それぞれ以下のAr-1~Ar-6から選ばれることがより好ましい。この場合、R、R、RおよびRの好ましい組み合わせとしては、表1-1~表1-11に示すような組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
【化5】
【0083】
【表1-1】
【0084】
【表1-2】
【0085】
【表1-3】
【0086】
【表1-4】
【0087】
【表1-5】
【0088】
【表1-6】
【0089】
【表1-7】
【0090】
【表1-8】
【0091】
【表1-9】
【0092】
【表1-10】
【0093】
【表1-11】
【0094】
また、一般式(1)において、RおよびRは、水素、アルキル基、アリール基のいずれかであることが好ましい。中でも、RおよびRとしては、一般式(1)で表される化合物の熱的安定性の観点から、水素またはアルキル基が好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、水素がより好ましい。
【0095】
また、一般式(1)において、RおよびRは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基であることが好ましい。特に、励起光に対して安定でより高い発光量子収率が得られることから、RおよびRは、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。さらに、合成の容易さから、RおよびRは、フッ素であることがさらに好ましい。
【0096】
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基である。含フッ素アリール基として、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基である。含フッ素ヘテロアリール基として、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基等が挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基である。含フッ素アルキル基として、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0097】
また、一般式(1)において、Xは、C-Rであることが、光安定性の観点から好ましい。XがC-Rである場合、一般式(1)で表される化合物の耐久性は、置換基Rの影響を受けやすい傾向にある。具体的には、Rが水素である場合、この部位の反応性が高いため、この部位と空気中の水分や酸素とが反応しやすい傾向にある。また、Rが例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合、感光性樹脂組成物内部において化合物同士が経時的に凝集しやすい傾向にある。したがって、Rは、剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましい。具体的には、Rは、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
【0098】
より高い発光量子収率を与え、より熱分解しづらいという観点、および光安定性の観点から、XがC-Rであり、Rが置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
【0099】
さらに、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには、Rとピロメテン骨格との炭素-炭素結合のねじれを適度に抑えることが好ましい。このような観点から、Rとしては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基がより好ましい。Rとして特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0100】
また、Rは、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。Rが、ある程度のかさ高さを有することにより、分子の凝集を防ぐことができる。その結果、一般式(1)で表される化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
【0101】
このようなかさ高い置換基であるRのさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表される構造の基が挙げられる。すなわち、一般式(1)において、XがC-Rである場合、Rは、下記一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0102】
【化6】
【0103】
一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは、1~3の整数である。kが2以上である場合、rは、それぞれ同じでも異なっても良い。
【0104】
より高い発光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは、1もしくは2であることが好ましく、中でも、分子の凝集をより防ぐという観点から、2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、複数のrのうち少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert-ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0105】
また、一般式(1)で表される化合物の発光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、メトキシ基であることがより好ましい。分散性の観点からは、このrとして、tert-ブチル基、メトキシ基が特に好ましい。rがtert-ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについて、より有効である。
【0106】
また、一般式(1)で表される化合物の更なる一態様として、R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。特に、以下に示す第1~第3の態様が好ましい。第1の好ましい態様としては、R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であること、が挙げられる。第2の好ましい態様としては、Rが電子求引基であること、が挙げられる。第3の好ましい態様としては、R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であり、かつ、Rが電子求引基であること、が挙げられる。このように、一般式(1)で表される化合物のピロメテン骨格に電子求引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、一般式(1)で表される化合物の酸素に対する安定性がより向上し、その結果、一般式(1)で表される化合物の耐久性をより向上させることができる。
【0107】
電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子求引基にフェニル基は含まれない。
【0108】
電子求引基の例として、例えば、-F(σp:+0.06)、-Cl(σp:+0.23)、-Br(σp:+0.23)、-I(σp:+0.18)、-CO12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、-CONH(σp:+0.38)、-COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、-CF(σp:+0.50)、-SO12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、-NO(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0109】
好ましい電子求引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
【0110】
より好ましい電子求引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子求引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
【0111】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例の1つとして、R、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0112】
また、一般式(1)で表される化合物の更なる好ましい一例として、R、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rがtert-ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0113】
また、一般式(1)で表される化合物の更なる好ましい一例として、R、R、RおよびRの全てが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、かつ、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rがtert-ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0114】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、以下に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0115】
【化7】
【0116】
【化8】
【0117】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8-509471号公報や特開2000-208262号公報に記載の方法で合成することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応させることにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0118】
また、ピロメテン-フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp.7813-7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp.1333-1335(1997)等に記載されている方法を参考にして、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。例えば、下記一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とをオキシ塩化リン存在下、1,2-ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(7)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2-ジクロロエタン中で反応させ、これにより、一般式(1)で表される化合物を得る方法が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ここで、R’~R’は、上記の説明におけるR~Rと同様である。Jは、ハロゲンを表す。
【0119】
【化9】
【0120】
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-炭素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウム等の金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-窒素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0121】
本発明におけるピロメテン誘導体は、緑色の感光性樹脂組成物に用いられる場合には、励起光により、発光極大波長(ピーク波長)が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈することが好ましい。以下、発光極大波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を「緑色の発光」という。ここで、発光極大波長は、例えば、F-2500形分光蛍光光度計(日立製作所社製)を用いて測定することができる。
【0122】
本発明におけるピロメテン誘導体は、緑色の感光性樹脂組成物に用いられる場合には、430nm以上500nm未満の波長範囲の励起光により、緑色の発光を呈することが好ましい。一般に、励起光は、そのエネルギーが大きいほど、材料の分解を引き起こしやすい。しかし、430nm以上500nm未満の波長範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーのものである。このため、ピロメテン誘導体が吸収する光として当該波長範囲の励起光を用いることにより、感光性樹脂組成物中のピロメテン誘導体の分解を抑制することができる。この結果、当該ピロメテン誘導体から色純度の良好な緑色の発光を得ることができる。
【0123】
本発明におけるピロメテン誘導体は、赤色の感光性樹脂組成物に用いられる場合には、励起光により、発光極大波長(ピーク波長)が580nm以上750nm未満の領域に観測される発光を呈することが好ましい。以下、発光極大波長が580nm以上750nm未満の領域に観測される発光を「赤色の発光」という。
【0124】
本発明におけるピロメテン誘導体は、赤色の感光性樹脂組成物に用いられる場合には、430nm以上580nm以未満の波長範囲の励起光により、赤色の発光を呈することが好ましい。一般に、励起光は、そのエネルギーが大きいほど、材料の分解を引き起こしやすい。しかし、430nm以上580nm未満の波長範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーのものである。このため、ピロメテン誘導体が吸収する光として当該波長範囲の励起光を用いることにより、感光性樹脂組成物中のピロメテン誘導体の分解を抑制することができる。この結果、当該ピロメテン誘導体から色純度の良好な赤色の発光を得ることができる。
【0125】
感光性樹脂組成物におけるピロメテン誘導体の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する硬化膜の膜厚や透過率に応じて適宜設定することができる。例えば、このピロメテン誘導体の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の100重量%中、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。ピロメテン誘導体の含有量を当該固形分中の0.1重量%以上とすることにより、色純度と輝度とをより向上させることができる。感光性樹脂組成物におけるピロメテン誘導体の含有量は、当該固形分中、0.3重量%以上であることがより好ましい。一方、感光性樹脂組成物におけるピロメテン誘導体の含有量を当該固形分中の10重量%以下とすることにより、ピロメテン誘導体のアルカリ可溶性樹脂への溶解性を向上させ、色変換効果をより向上させることができる。感光性樹脂組成物におけるピロメテン誘導体の含有量は、当該固形分中、1.5重量%以下であることがより好ましい。
【0126】
本発明における「アルカリ可溶性樹脂」とは、酸性基を有する樹脂をいう。酸性基としては、カルボキシル基、水酸基などが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。本発明において、感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂として、これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、安定性の観点から、アクリル樹脂がより好ましい。
【0127】
アクリル樹脂は、脂環式炭化水素基を有することがより好ましい。アクリル樹脂は、脂環式炭化水素基を有することにより、アルカリ現像液や有機溶剤等に対する耐薬品性を向上させることができる。例えば、アクリル樹脂は、カルボキシル基を側鎖に有する下記一般式(3)で表される構造単位と、脂環式炭化水素基を側鎖に有する下記一般式(4)で表される構造単位とを有することがより好ましい。アクリル樹脂は、下記一般式(3)で表される構造単位を有することにより、アルカリ現像液に対する溶解性をより向上させることができる。また、アクリル樹脂は、下記一般式(4)で表される構造単位を有することにより、アルカリ現像液や有機溶剤等に対する耐薬品性および輝度をより向上させることができる。
【0128】
【化10】
【0129】
上記一般式(3)中、R13は、水素原子またはメチル基を示す。上記一般式(4)中、R14は、水素原子またはメチル基を示し、R15は、炭素数1~6の有機基を示す。nは、1~3の整数である。nが2以上である場合、複数のR15は、それぞれ同じでも異なってもよい。R15で示される有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、隣接置換基との間に形成される縮合環、脂肪族環が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液に対する溶解性の観点から、カルボキシル基、エステル基が好ましい。
【0130】
上記の一般式(3)で表される構造単位と一般式(4)で表される構造単位とを有するアクリル樹脂は、例えば、一般式(3)で表される構造単位を構成する共重合成分と、一般式(4)で表される構造単位を構成する共重合成分とを共重合することにより、得ることができる。これらの共重合成分に対しては、さらに他の共重合成分を共重合してもよい。
【0131】
上記の一般式(3)で表される構造単位を構成する共重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。当該共重合成分としては、これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、メタクリル酸が好ましい。
【0132】
上記の一般式(4)で表される構造単位を構成する共重合成分としては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。当該共重合成分としては、これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0133】
上述した他の共重合成分としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。何故ならば、感光性樹脂組成物の感度を向上させることができるからである。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル;スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;1,3-ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン;末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどが挙げられる。当該「他の共重合成分」としては、これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0134】
アクリル樹脂中における、一般式(3)で表される構造単位の含有量は、アルカリ溶解性をより向上させるという観点から、アクリル樹脂の100重量%中、5重量%以上であることが好ましい。また、アクリル樹脂中における、一般式(3)で表される構造単位の含有量は、より微細なパターンを形成するという観点から、アクリル樹脂の100重量%中、60重量%以下であることが好ましい。
【0135】
一方、アクリル樹脂中における、一般式(4)で表される構造単位の含有量は、輝度をより向上させるという観点から、アクリル樹脂の100重量%中、5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。また、アクリル樹脂中における、一般式(4)で表される構造単位の含有量は、より微細なパターンを形成するという観点から、アクリル樹脂の100重量%中、60重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましい。
【0136】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上180℃以下であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂のTgを30℃以上とすることにより、光源からの入射光による熱や機器の駆動熱によるアルカリ可溶性樹脂の分子運動を抑制し、ピロメテン誘導体の分散状態を安定化することができる。これにより、感光性樹脂組成物の耐久性を向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂のTgは、50℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。一方、アルカリ可溶性樹脂のTgを180℃以下とすることにより、後述する硬化膜の可撓性を向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂のTgは、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0137】
このようなアルカリ可溶性樹脂の一例であるアクリル樹脂の合成方法としては、例えば、特開2006-124664号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0138】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、10,000~800,000であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を10,000以上とすることにより、当該アルカリ可溶性樹脂の強度を向上させることができる。この結果、当該アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の、より微細なパターンを形成することができる。一方、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を800,000以下とすることにより、感光性樹脂組成物の粘度を適度に抑制することができる。ここで、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定することができる。
【0139】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、残渣を抑えてより微細なパターンを形成するという観点から、50mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ溶解性をより向上させるという観点から、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ可溶性樹脂をオルトクレゾールに溶解した溶液を、0.1mol/Lの水酸化カリウム・エタノール水溶液を用いて、25℃で滴定することにより求めることができる。
【0140】
本発明において、感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、アルカリ可溶性樹脂と後述する光重合性化合物との合計100重量部に対して、20重量部以上80重量部以下であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の含有量を20重量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の、より高輝度で、より微細なパターンを形成することができる。アルカリ可溶性樹脂の含有量は、30重量部以上であることがより好ましい。一方、アルカリ可溶性樹脂の含有量を80重量部以下とすることにより、感光性樹脂組成物の感度およびアルカリ溶解性を向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂の含有量は、60重量部以下であることがより好ましい。
【0141】
本発明における「光重合性化合物」とは、エチレン性不飽和基を有する化合物をいう。光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートなどのオリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ジシクロペンタンジエニルジアクリレート、これらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物などが挙げられる。本発明において、感光性樹脂組成物は、光重合性化合物として、これらを2種以上含有してもよい。
【0142】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに微粒子を含有してもよい。当該感光性樹脂組成物は、微粒子を含有することにより、光源からの入射光やピロメテン誘導体からの発光を適度に散乱させて光変換効率を向上させ、輝度をより向上させることができる。以下、本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物が含有する微粒子は、適宜、微粒子と略記する。
【0143】
本発明において、感光性樹脂組成物が含有する微粒子は、白色微粒子であることが好ましい。ここで、白色とは、JIS Z 8717(1989)に準拠して測定したマンセル表示系の明度が8.0~10.0である色を指す。白色微粒子としては、例えば、タルク、マイカ、カオリンクレー等の鉱物;チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム等の金属炭酸塩、メタケイ酸ナトリウム;ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。感光性樹脂組成物は、微粒子として、これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、電気的信頼性の観点から、酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、メタケイ酸ナトリウムの微粒子が好ましく、屈折率および輝度をより向上させるという観点から、酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムがより好ましい。なお、市販の酸化チタン微粒子としては、例えば、JR-301、JR-600A(テイカ社製)などが挙げられる。二酸化ジルコニア微粒子としては、例えば、“UEP”(登録商標)100(第一稀元素化学工業社製)などが挙げられる。酸化アルミニウムとしては、例えば、“AEROXIDE”(登録商標)Alu C(日本アエロジル(株))などが挙げられる。
【0144】
本発明において、感光性樹脂組成物が含有する微粒子の屈折率は、1.40以上3.00以下であることが好ましい。微粒子の屈折率を1.40以上とすることにより、感光性樹脂組成物の輝度をより向上させることができる。微粒子の屈折率は、1.60以上であることがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物中の他の成分と微粒子との屈折率差が大きくなることから、光変換効率が向上し、感光性樹脂組成物の輝度をより向上させることができる。一方、微粒子の屈折率を3.00以下とすることにより、光変換効率をより向上させ、感光性樹脂組成物のより微細なパターンを形成することができる。微粒子の屈折率は、1.80以下であることがより好ましく、これにより、感光性樹脂組成物の微細パターン加工性をより向上させることができる。ここで、本発明における微粒子の屈折率とは、無作為に選択した30個の微粒子について、ナトリウムのD線(589nm)を光源として、温度25℃の条件下、アッベ屈折計(DR-M2、アタゴ社製)を用いて、液浸法(ベッケ線法)により測定した屈折率の数平均値を指す。
【0145】
本発明における微粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体状、針状、多角形状、星型状などが挙げられる。また、微粒子の形状は、表面に凹凸や細孔を有するものであってもよいし、中空形状であってもよい。
【0146】
本発明における微粒子の粒径は、5nm以上300nm以下であることが好ましい。微粒子の粒径を5nm以上とすることにより、感光性樹脂組成物中における微粒子の分散安定性を向上させ、感光性樹脂組成物の輝度をより向上させることができる。微粒子の粒径は、10nm以上であることがより好ましい。一方、微粒子の粒径を300nm以下とすることにより、感光性樹脂組成物中の微粒子による光の散乱強度を適度に抑え、感光性樹脂組成物のより微細なパターンを形成することができる。微粒子の粒径は、100nm以下であることがより好ましい。ここで、本発明における微粒子の粒径とは、一次粒子径の数平均値(すなわち数平均粒子径)を指し、一次粒子径とは、一次粒子の最大径と最小径との平均値を指す。
【0147】
微粒子の粒径は、以下の方法により求めることができる。例えば、電子顕微鏡(S-4800、日立ハイテクノロジー社製)を用いて10,000倍の倍率で拡大観察した視野において、全体像が観察される粒子の中から無作為に選択した100個の粒子について、それぞれの一次粒子径を測定する。粒子の断面形状が円でない場合には、その粒子の最大径と最小径とをそれぞれ測定し、その平均値を一次粒子径とする。1回の測定で100個の粒子の一次粒子径を測定する必要はなく、複数の視野から合計100個の粒子を選択してもよい。測定した100個の粒子の一次粒子径の数平均値を算出することにより、微粒子の粒径を求めることができる。
【0148】
微粒子の製造方法としては、例えば、原料となる鉱物等を粉砕して微細化する粉砕法;気相、液相または固層における化学的方法;物理的方法などが挙げられる。粉砕法としては、例えば、ジェット法、ハンマー法、ミル法などが挙げられる。気相における化学的方法としては、例えば、化学蒸着法(CVD法)、電気炉法、化学炎法、プラズマ法などが挙げられる。液相における化学的方法としては、例えば、沈殿法、アルコキシド法、水熱法などが挙げられる。固相における化学的方法としては、例えば、晶析法などが挙げられる。物理的方法としては、例えば、噴霧法、溶液燃焼法、凍結乾燥法などが挙げられる。これらの中でも、微粒子の粒径を所望の範囲に容易に調整することができるため、沈殿法が好ましい。
【0149】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる微粒子の含有量は、当該感光性樹脂組成物に含まれるピロメテン誘導体の含有量に対する重量比によって規定される。例えば、感光性樹脂組成物に含まれる微粒子の重量をMaとし、当該感光性樹脂組成物に含まれるピロメテン誘導体の重量をMbとしたとき、微粒子の含有量は、ピロメテン誘導体の含有量に対する微粒子の含有量の重量比(Ma/Mb)が所定の範囲内となるように調整される。本発明において、感光性樹脂組成物中におけるピロメテン誘導体の含有量に対する微粒子の含有量の重量比(Ma/Mb)は、5/1以上100/1以下であることが好ましい。重量比(Ma/Mb)を5/1以上とすることにより、微粒子による光の散乱強度を向上させ、感光性樹脂組成物の輝度をより向上させることができる。重量比(Ma/Mb)は、20/1以上であることがより好ましい。一方、重量比(Ma/Mb)を100/1以下とすることにより、微粒子による光の散乱強度を適度に抑制し、感光性樹脂組成物のより微細なパターンを形成することができる。重量比(Ma/Mb)は、80/1以下であることがより好ましい。
【0150】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに紫外線吸収剤を含有してもよい。感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することにより、j線の波長領域の光を吸収する。このため、感光性樹脂組成物の底部の線幅太りを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。
【0151】
本発明において、感光性樹脂組成物が含有する紫外線吸収剤は、360nm以下の波長領域に吸収極大波長を有することが好ましい。吸収極大波長は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec-1500)を用いて測定することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤として、これらを2種以上含有してもよい。
【0152】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチルフェノール)、2,4ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、オクタベンゾン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、BASF社製“Tinuvin”(登録商標)400、同405などが挙げられる。
【0153】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の100重量%中、0.05重量%以上10重量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量を当該固形分の100重量%中、0.05重量%以上とすることにより、感光性樹脂組成物の線幅太りをより抑制し、微細パターン加工性をより向上させることができる。紫外線吸収剤の含有量は、当該固形分の100重量%中、0.1重量%以上であることがより好ましい。一方、紫外線吸収剤の含有量を当該固形分の100重量%中、10重量%以下とすることにより、感光性樹脂組成物の感度を向上させることができる。紫外線吸収剤の含有量は、当該固形分の100重量%中、5.0重量%以下であることがより好ましい。
【0154】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに有機溶剤を含有してもよい。この有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキシルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチルブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサなどが挙げられる。感光性樹脂組成物は、有機溶剤として、これらを2種以上含有してもよい。
【0155】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量は、塗布性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の100重量%中、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。一方、当該有機溶剤の含有量は、レジストを厚膜に塗布するという観点から、感光性樹脂組成物の100重量%中、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。
【0156】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに密着改良剤を含有することにより、後述する硬化膜の基板への密着性を向上させることができる。この密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。感光性樹脂組成物は、密着改良剤として、これらを2種以上含んでもよい。
【0157】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに界面活性剤を含むことにより、塗布性および塗膜表面の均一性を向上させることができる。この界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤;フッ素系界面活性剤;シリコン系界面活性剤などが挙げられる。感光性樹脂組成物は、界面活性剤として、これらを2種以上含有してもよい。
【0158】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる界面活性剤の含有量は、塗膜の面内均一性の観点から、感光性樹脂組成物の100重量%中、0.001重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0159】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに分散剤を含有してもよい。この分散剤としては、例えば、顔料の中間体や顔料誘導体等の低分子分散剤、高分子分散剤などが挙げられる。感光性樹脂組成物は、分散剤として、これらを2種以上含有してもよい。顔料誘導体としては、例えば、顔料の適度な湿潤や安定化に資する、顔料骨格のアルキルアミン変性体、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体などが挙げられる。中でも、微細顔料の安定化に顕著な効果を有する、顔料骨格のスルホン酸誘導体が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリマーやこれらの共重合体などが挙げられる。これら高分子分散剤の中でも、固形分換算のアミン価が5~200mgKOH/gであり且つ酸価が1~100mgKOH/gであるものが好ましい。特に、塩基性基を有する高分子分散剤がより好ましい。何故ならば、感光性樹脂組成物の保存安定性を向上させることができるからである。塩基性基を有する、市販品の高分子分散剤としては、例えば、“ソルスパース”(登録商標)24000(アビシア社製)、“EFKA”(登録商標)4300、4330(エフカ社製)、4340(エフカ社製)、“アジスパー”(登録商標)PB821、PB822(味の素ファインテクノ社製)、“BYK”(登録商標)161~163、2000、2001、6919、21116(ビックケミー社製)などが挙げられる。
【0160】
本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上述した光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合化合物およびアルカリ可溶性樹脂の他に、さらに重合禁止剤を含むことにより、安定性を向上させることができる。重合禁止剤は、一般的に、熱、光、ラジカル開始剤などによって発生したラジカルによる重合を禁止または停止する作用を示し、熱硬化性樹脂のゲル化防止やポリマー製造時の重合停止などに使用される。本発明における重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、tert-ブチルカテコールなどが挙げられる。感光性樹脂組成物は、重合禁止剤として、これらを2種以上含んでもよい。
【0161】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、前述の光重合開始剤、ピロメテン誘導体、光重合性化合物およびアルカリ可溶性樹脂を混合し、必要に応じて、前述したその他成分を混合し、これにより、得ることができる。
【0162】
<硬化膜>
本発明の実施形態に係る硬化膜は、前述の感光性樹脂組成物の硬化物からなる膜である。以下、硬化膜といえば、特に説明がない限り、本発明の実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物からなる膜を意味する。
【0163】
硬化膜の膜厚は、ピロメテン誘導体の色変換機能を十分発揮し、輝度をより向上させるという観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。一方、画像表示装置の画素欠けを抑制するという観点から、硬化膜の膜厚は、50μm以下であることが好ましい。
【0164】
このような硬化膜の膜厚は、触針式膜厚測定装置を用いて段差の高さを測定することにより、算出できる。より具体的には、硬化膜の一部に針等で傷を入れて基板などの下層を剥き出しにし、硬化膜の上方から垂直に触針式膜厚計を用いて観察することにより、膜厚を求めることができる。
【0165】
また、硬化膜の線幅は、30μm以上であることが好ましい。ここで、硬化膜の線幅とは、基板に所望のパターンに加工された硬化膜の幅の中で一番狭い部分の底部の幅を指す。画像表示装置の画素欠けは、ストライプパターンが太い方が生じにくいことから、硬化膜の線幅を30μm以上とすることにより、画像表示装置の画素欠けを抑制することができる。また、硬化膜を画像表示装置などに組み込んだ場合の精細度の観点から、硬化膜の線幅は、400μm以下であることが好ましい。このような硬化膜の線幅は、光学顕微鏡を用いて硬化膜のパターンを50倍の倍率で拡大観察して測定することができる。
【0166】
硬化膜に含まれる成分は、硬化膜のサンプルをマニュピュレーターで採取し、レーザーラマン(例えば、HOLIBA Jobin Yvon社製Ramanor T-64000)分析や、FT-IR(例えば、SPECTR-TECH社製FT-IR MICROSCOPE)分析を行い、標本と比較することにより同定することができる。また、必要に応じて、遠心分離、濾過、GPC分取等採取法、NMRなどを組み合わせることにより、高精度に同定することができる。また、硬化膜が金属を含む場合は、ICP発光分光分析、LDI-MS分析により金属を検出することができる。
【0167】
<色変換基板>
本発明の実施形態に係る色変換基板は、上述した感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜を備えるものであり、入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換機能を有する。このような色変換基板は、基板と前述の硬化膜との組み合わせによって形成されることが好ましい。色変換基板に用いられる基板は、透明基板であることが好ましい。本発明における透明とは、波長400nm、550nm、633nm、800nmにおける光線透過率がいずれも90%以上であることを指す。透明基板としては、例えば、ガラス板、樹脂板、樹脂フィルムなどが挙げられる。ガラス板の材質としては、無アルカリガラスが好ましい。樹脂板、樹脂フィルムの材質としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、透明ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が好ましい。ガラス板および樹脂板の厚みは、1mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚みは、100μm以下であることが好ましい。
【0168】
<硬化膜および色変換基板の製造方法>
次に、本発明の実施形態に係る硬化膜および色変換基板の製造方法について説明する。以下、これらの製造方法の一例として、基板上に硬化膜を形成する場合の製造方法を説明する。
【0169】
本発明の実施形態に係る硬化膜および色変換基板の製造方法では、まず、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程が行われる。この塗布工程における感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法などを用いて基板に感光性樹脂組成物を塗布する方法、基板を感光性樹脂組成物中に浸漬する方法、感光性樹脂組成物を基板に噴霧する方法などが挙げられる。
【0170】
この塗布工程においては、基板上に塗布した感光性樹脂組成物を乾燥することにより、感光性樹脂組成物の塗膜を形成することが好ましい。乾燥方法としては、例えば、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。
【0171】
次に、基板上の感光性樹脂組成物を、所定の光源を使用して露光する露光工程が行われる。この露光工程においては、基板上に形成した感光性樹脂組成物の塗膜に、マスクを介して、紫外線等の光を照射することにより、この感光性樹脂組成物の塗膜を選択的に露光することが好ましい。この露光工程で使用する光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ケミカル灯などが挙げられる。これらの中でも、露光波長の観点から、超高圧水銀灯もしくは高圧水銀灯が好ましく、超高圧水銀灯がより好ましい。露光機としては、プロキシミティ、ミラープロジェクション、レンズスキャン等の方式を採用した露光機が挙げられる。これらの中でも、精度の観点から、レンズスキャン方式の露光機が好ましい。
【0172】
また、この露光工程における感光性樹脂組成物の露光量は、i線換算で60mJ/cm以上250mJ/cm以下であることが好ましい。露光量が60mJ/cm以上であると、感光性樹脂組成物のより微細なパターンを形成することができる。一方、露光量が250mJ/cm以下であると、露光による感光性樹脂組成物中のピロメテン誘導体の分解を抑制し、感光性樹脂組成物の輝度をより向上させることができる。
【0173】
その後、露光工程においては、必要に応じて現像液により感光性樹脂組成物の現像を行い、感光性樹脂組成物に所望の微細パターンを形成することが好ましい。現像液としては、アルカリ性現像液が好ましい。アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の2級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ類等のアルカリ性物質や、その水溶液などが挙げられる。アルカリ性現像液は、これらを2種以上用いたものでもよい。
【0174】
次に、露光後の感光性樹脂組成物を硬化して硬化膜を形成する硬化工程が行われる。この硬化工程においては、上述した露光工程によって得られたパターン状の感光性樹脂組成物を加熱処理することによって硬化し、これにより、この感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜を形成することが好ましい。この硬化工程において、加熱処理は、空気中、窒素雰囲気中、真空中などで行うことができる。加熱温度は、硬化膜の基板への密着性の観点から、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。一方、加熱温度は、ピロメテン誘導体の耐熱性の観点から、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。
【0175】
上記のようにして、感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜が製造される。すなわち、本発明の実施形態に係る硬化膜の製造方法は、上述した露光工程を含むものである。また、感光性樹脂組成物の硬化膜を基板上に形成することにより、この硬化膜を備えた色変換基板が製造される。このように製造された色変換基板は、例えば、電子材料、自動車用ランプや各種照明装置、各種ディスプレイ等に好適に用いることができる。本発明の実施形態に係る色変換基板は、高輝度で高精細であることから、有機ELディスプレイ、マイクロLED表示装置、液晶ディスプレイ、電子ペーパーなどの画像表示装置に好適に用いることができる。
【0176】
<画像表示装置>
本発明の実施形態に係る画像表示装置は、上述した色変換基板を備えるものである。具体的には、本発明において、画像表示装置は、上述した感光性樹脂組成物の硬化膜を有する色変換基板と、カラーフィルタ基板と、発光素子とを具備することが好ましい。この場合、色変換基板は、カラーフィルタ基板と発光素子との間に配置されることが好ましい。例えば、画像表示装置が有機ELディスプレイである場合、有機ELディスプレイは、部分駆動型の青色有機電界発光素子光源と、色変換基板と、カラーフィルタ基板とを備えることが好ましい。この有機ELディスプレイは、カラーフィルタ基板と部分駆動型の青色有機電界発光素子光源との間に、有機保護層や無機酸化膜を有してもよい。また、この有機ELディスプレイは、パッシブ駆動方式であってもアクティブ駆動方式であってもよい。一方、画像表示装置がマイクロLEDディスプレイである場合、マイクロLEDディスプレイは、部分駆動型の青色LED光源と、色変換基板と、カラーフィルタ基板とを備えることが好ましい。
【実施例
【0177】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。また、下記の実施例1~24および比較例1~7における測定方法および評価方法は、以下に示す通りである。
【0178】
H-NMRの測定>
ピロメテン誘導体のH-NMR測定は、超伝導FT-NMR装置 EX-270(日本電子社製)を用い、重クロロホルム溶液にて行った。
【0179】
<重量平均分子量の測定>
後述の合成例3、4におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した。
【0180】
<酸価の測定>
合成例3、4におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ可溶性樹脂をオルトクレゾールに溶解した溶液を、0.1mol/Lの水酸化カリウム・エタノール水溶液を用いて、25℃で滴定することにより求めた。
【0181】
<屈折率の測定>
屈折率の測定では、実施例1~9、11~24および比較例1~2、5~7に用いた微粒子について、ナトリウムのD線(589nm)を光源として、温度25℃の条件下、アッベ屈折計(DR-M2、アタゴ社製)を用いて、液浸法(ベッケ線法)により屈折率を測定した。
【0182】
<数平均粒子径の測定>
微粒子の数平均粒子径の測定では、電子顕微鏡(S-4800、日立ハイテクノロジー社製)を用いて、各実施例および比較例に用いた微粒子を、10,000倍の倍率で拡大観察した。全体像が観察される微粒子の中から無作為に選択した100個の微粒子について、それぞれの一次粒子径を測定した。測定した100個の微粒子の一次粒子径の数平均値を算出し、得られた値を微粒子の数平均粒子径とした。
【0183】
<吸収極大波長の測定>
吸収極大波長の測定では、各実施例および比較例に用いた発光材料をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈した希釈液を調製し、光路長が1cmのセルを用いて、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec-1500)により300nm~800nmの吸収スペクトルを測定し、吸光度が最大となる波長を吸収極大波長として読み取った。
【0184】
<吸光係数の測定>
吸光係数の測定では、各実施例および比較例に用いた光重合開始剤をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈した希釈液を調製し、光路長が1cmのセルを用いて、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec-1500)により300nm~800nmの吸収スペクトルを測定し、h線(405nm)および発光材料の吸収極大波長における吸光度を濃度1g/mL溶液に換算することにより、吸光係数を求めた。
【0185】
<発光極大波長の測定>
発光極大波長の測定では、各実施例および比較例により作製した色変換基板の硬化膜の表面に、F-2500形分光蛍光光度計(日立製作所社製)を用いて、波長460nmの光を照射し、励起させた際の蛍光スペクトルを測定し、蛍光発光強度が最大となる波長を発光極大波長として読み取った。
【0186】
<輝度の測定>
輝度の測定では、市販の青色LED(発光極大波長450nm)を搭載した面状発光装置に、各実施例および比較例により作製した色変換基板および500nm以上の波長を透過する黄色カラーフィルタ基板を載置した。面状発光装置に10mAの電流を流して青色LEDを点灯させ、分光放射輝度計(SR-LEDW、トプコンテクノハウス社製)を用いて、輝度(単位:cd/m)を測定した。実施例1~16および比較例1、3、4については、比較例2における輝度を1.00としたときの相対値を輝度とし、実施例17~24および比較例5、6については、比較例7における輝度を1.00としたときの相対値を輝度とした。
【0187】
<膜厚の測定>
膜厚の測定では、硬化膜の一部に針で傷を入れて感光性樹脂組成物を塗布したガラスを剥き出しにし、触針式膜厚計(サーフコム1400d、東京精密社製)を用いて、硬化膜とガラスとの段差の高さを測定し、得られた測定値を膜厚とした。
【0188】
<線幅の測定>
線幅の測定では、各実施例および比較例により作製した色変換基板の硬化膜のパターンを、光学顕微鏡(MX61L、オリンパス社製)を用いて50倍の倍率で拡大観察し、線幅が50μmであるパターンの底部の線幅を計測し、得られた計測値を線幅とした。
【0189】
<微細パターン加工性の評価>
微細パターン加工性の評価では、各実施例および比較例により作製した色変換基板の硬化膜のパターンを、光学顕微鏡(MX61L、オリンパス社製)を用いて50倍の倍率で拡大観察し、以下の基準に基づき、この硬化膜のパターン加工性を評価した。
◎:線幅20μmのパターンに欠けおよび線幅太りが認められない。
○:線幅20μmのパターンに欠けが認められないが、線幅太りが認められる。
△:線幅20μmのパターンには欠けが認められるが、線幅30μmのパターンに欠けが認められない。
×:線幅30μmのパターンに欠けが認められる。
【0190】
<実施例および比較例における化合物>
下記の実施例および比較例において、化合物G1、G2および化合物R1、R2は、以下に示す化合物である。
【0191】
【化11】
【0192】
<実施例および比較例における原料>
下記の実施例および比較例に用いた原料は、以下に示す通りである。
【0193】
(合成例1)
合成例1では、本発明におけるピロメテン誘導体の一例である化合物G1の合成方法について説明する。化合物G1の合成方法では、3,5-ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4-t-ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、および炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。これに、脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。得られた反応溶液を室温まで冷却し、冷却後の反応溶液から有機層を分液し、その後、この有機層を飽和食塩水で洗浄した。この洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5-ビス(4-t-ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
【0194】
次に、上記の3,5-ビス(4-t-ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4-ジメチルピロール(0.7g)とを反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。続いて、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて4時間撹拌し、その後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、この結果、化合物G1を0.4g得た(収率18%)。得られた化合物G1のH-NMR分析結果は、以下に示す通りである。
H-NMR(CDCl(d=ppm)):7.95(s,1H)、7.63-7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)
【0195】
(合成例2)
合成例2では、本発明におけるピロメテン誘導体の一例である化合物R1の合成方法について説明する。化合物R1の合成方法では、4-(4-t-ブチルフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ピロール(300mg)と、2-メトキシベンゾイルクロリド(201mg)とトルエン(10mL)との混合溶液を、窒素気流下、120℃で6時間加熱した。続いて、この混合溶液を、室温に冷却後、エバポレートした。続いて、エタノール(20mL)で洗浄し、真空乾燥した後、2-(2-メトキシベンゾイル)-3-(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)ピロール(260mg)を得た。
【0196】
次に、得られた2-(2-メトキシベンゾイル)-3-(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)ピロール(260mg)と、4-(4-t-ブチルフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ピロール(180mg)と、メタンスルホン酸無水物(206mg)と、脱気したトルエン(10mL)との混合溶液を、窒素気流下、125℃で7時間加熱した。続いて、この混合溶液を室温に冷却後、水(20mL)を注入し、ジクロロメタン(30mL)で有機層を抽出した。この有機層を水(20mL)で2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥後の残留物としてピロメテン体を得た。
【0197】
次に、得られたピロメテン体とトルエン(10mL)との混合溶液に、窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン(305mg)と、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(670mg)とを加え、室温で3時間撹拌した。その後、水(20mL)を注入し、ジクロロメタン(30mL)で有機層を抽出した。この有機層を水(20mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、赤紫色粉末(0.27g)を得た(収率70%)。得られた赤紫色粉末のH-NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた赤紫色粉末が、上記構造式で表される化合物R1であることが確認された。
H-NMR(CDCl(d=ppm)):1.19(s,18H)、3.42(s,3H)、3.85(s,6H)、5.72(d,1H)、6.20(t,1H)、6.42-6.97(m,16H)、7.89(d,4H)
【0198】
(合成例3)
合成例3では、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の一例である樹脂Aの合成方法について説明する。樹脂Aの合成方法では、撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよびガス導入管を備えた1Lのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(202g)が導入された。その後、ガス導入管を通って窒素ガスがフラスコ内に導入されて、フラスコ内雰囲気が窒素ガスに置換された。その後、フラスコ内の溶液が100℃に昇温された後、ジシクロペンタニルメタクリレート(59.4g(0.27モル))と、ベンジルメタクリレート(68.7g(0.39モル))と、メタクリル酸(37.8g(0.5モル))と、アゾビスイソブチロニトリル(4.0g)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(101g)とからなる混合物が、滴下ロートを用いて2時間かけてフラスコに滴下され、滴下完了後さらに100℃で5時間撹拌が続けられた。この際、上記のジシクロペンタニルメタクリレートとして、日立化成社製のFA-513Mが用いられた。
【0199】
上記の撹拌が終了後、ガス導入管を通って空気がフラスコ内に導入されて、フラスコ内雰囲気が空気にされた後、グリシジルメタクリレート(31.2g(0.25モル))と、トリスジメチルアミノメチルフェノール(1.0g)と、ハイドロキノン(0.16g)とがフラスコ内に投入され、反応が110℃で6時間続けられることにより、重量平均分子量12,000、酸価108mgKOH/g、樹脂固形分40.0重量%のアルカリ可溶性樹脂(樹脂A)の溶液を得た。なお、上記のグリシジルメタクリレートは、本反応に用いたメタクリル酸に対してモル分率で50モル%のものである。
【0200】
(合成例4)
合成例4では、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の一例である樹脂Bの合成方法について説明する。樹脂Bの合成方法では、原料モノマーおよび組成比を変更したこと以外は合成例3と同様の方法により、スチレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(重量比33/33/34)を合成後、グリシジルメタクリレート(33重量部)を付加させることにより、重量平均分子量23,000、酸価75mgKOH/g、樹脂固形分45.0重量%のアルカリ可溶性樹脂(樹脂B)の溶液を得た。
【0201】
<実施例1>
(微粒子分散液の作製)
実施例1の微粒子分散液の作製方法について説明する。実施例1では、微粒子として硫酸バリウム(BF-20、堺化学工業社製、粒径:30nm、屈折率:1.64)(96g)と、アルカリ可溶性樹脂として合成例3により得られた樹脂Aの溶液(60g)と、γ-ブチロラクトン(114g)と、N-メチル-2ピロリドン(598g)と、3メチル-3メトキシブチルアセテート(132g)とをタンクに仕込み、ホモミキサーで1時間撹拌した後、0.05mmφジルコニアビーズを70%充填した遠心分離セパレーターを具備したウルトラアペックスミルを用いて、回転速度8m/sで2時間分散を行った。これにより、固形分濃度が12重量%であり、微粒子の樹脂に対する重量比(微粒子/樹脂)が80/20である微粒子分散液を得た。
【0202】
(感光性樹脂組成物の作製)
実施例1の感光性樹脂組成物の作製方法について説明する。実施例1では、光重合開始剤としてBASF社製の“IRGACURE”(登録商標)819を5.0重量部、合成例1により得られたピロメテン誘導体(化合物G1)を0.5重量部、光重合性化合物として日本化薬社製の“カヤラッド”(登録商標)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を36.8重量部、アルカリ可溶性樹脂として合成例3により得られた樹脂Aの溶液を81.67重量部、紫外線吸収剤としてBASF社製の“Tinuvin”(登録商標)400を1.0重量部、微粒子として前述の方法で得られた微粒子分散液を208.8重量部、有機溶剤としてPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を50.7重量部添加し、撹拌混合した。その後、これらの混合物を0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、実施例1の感光性樹脂組成物を調製した。なお、上記の「“IRGACURE”819」は、「IC819」と適宜略記される。
【0203】
(色変換基板の作製)
実施例1の色変換基板の作製方法について説明する。実施例1では、厚さ0.5mmの無アルカリガラス(旭硝子社製、AN100)をガラス基板として用い、このガラス基板上に、硬化後の膜厚が20μmになるように実施例1の感光性樹脂組成物を塗布し、真空乾燥した。マスクアライナ(キヤノン社製、PLA-501F)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、露光量100mJ/cm(i線)で、フォトマスクを介さずに、実施例1の感光性樹脂組成物(塗膜)を全面露光した。続いて、170℃で30分間加熱硬化を行い、ガラス基板上に、実施例1の感光性樹脂組成物の硬化膜を形成した。
【0204】
また、上記のガラス基板と同様のガラス基板(厚さ0.5mmの無アルカリガラス)の上に、硬化後の膜厚が20μmになるように実施例1の感光性樹脂組成物を塗布し、真空乾燥した。マスクアライナ(キヤノン社製、PLA-501F)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、10μm~50μmのラインパターンに露光されるように設計したフォトマスクを介して、露光量100mJ/cm(i線)で露光し、0.3重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行った。その後、170℃で30分間加熱硬化を行い、ガラス基板上に、実施例1の感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを形成した。以上のようにして、実施例1の色変換基板が得られた。
【0205】
実施例1の感光性樹脂組成物および色変換基板について、前述の方法による各評価を行った。実施例1の評価結果は、後述の表2に示す。
【0206】
<実施例2>
実施例2では、光重合開始剤としてADEKA社製の“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例2の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例2の評価結果は、表2に示す。
【0207】
<実施例3>
実施例3では、微粒子として酸化チタン(JR-600A、テイカ社製、粒径:250nm、屈折率:2.40)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例3の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例3の評価結果は、表2に示す。
【0208】
<実施例4>
実施例4では、紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例3と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例4の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例4の評価結果は、表2に示す。
【0209】
<実施例5>
実施例5では、微粒子として酸化アルミニウム(“AEROXIDE”(登録商標)Alu C、日本アエロジル社製、粒径:13nm、屈折率:1.76)を用いたことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例5の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例5の評価結果は、表2に示す。
【0210】
<実施例6>
実施例6では、微粒子として硫酸バリウム(BF-40、堺化学工業社製、粒径:10nm、屈折率:1.64)を用いたことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例6の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例6の評価結果は、表2に示す。
【0211】
<実施例7>
実施例7では、微粒子として硫酸バリウム(B-30、堺化学工業社製、粒径:300nm、屈折率:1.64)を用いたことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例7の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例7の評価結果は、表2に示す。
【0212】
<実施例8、9>
実施例8、9では、微粒子の添加量(感光性樹脂組成物中の微粒子の含有量)を表2、3に示すとおりに変更したことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例8、9の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例8の評価結果は、表2に示す。実施例9の評価結果は、後述の表3に示す。
【0213】
<実施例10>
実施例10では、微粒子および紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例10の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例10の評価結果は、表3に示す。
【0214】
<実施例11>
実施例11では、紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例11の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例11の評価結果は、表3に示す。
【0215】
<実施例12、13>
実施例12、13では、露光量を表3に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例12、13の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例12、13の評価結果は、表3に示す。
【0216】
<実施例14、15>
実施例14、15では、硬化後の膜厚が表3に示すとおりになるように、ガラス基板上に実施例1の感光性樹脂組成物を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例14、15の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例14、15の評価結果は、表3に示す。
【0217】
<実施例16>
実施例16では、アルカリ可溶性樹脂として合成例4で合成した樹脂Bを用いたことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例11と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例16の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例16の評価結果は、表3に示す。
【0218】
<実施例17>
実施例17では、ピロメテン誘導体として化合物R1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例17の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例17の評価結果は、後述の表4に示す。
【0219】
<実施例18>
実施例18では、開始剤としてNCI-831を用いたことおよび紫外線吸収剤を添加しないこと以外は実施例17と同様にして、感光性樹脂組成物を作製した。また、硬化後の膜厚が2.5μmになるように、この作製した感光性樹脂組成物をガラス基板上に塗布したこと以外は、実施例17と同様にして、色変換基板を作製した。その後、実施例18の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例18の評価結果は、表4に示す。
【0220】
<実施例19>
実施例19では、微粒子として酸化アルミニウム(“AEROXIDE”(登録商標)Alu C、日本アエロジル社製、粒径:13nm、屈折率:1.76)を用いたこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例19の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例19の評価結果は、表4に示す。
【0221】
<実施例20>
実施例20では、微粒子として硫酸バリウム(BF-40、堺化学工業社製、粒径:10nm、屈折率:1.64)を用いたこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例20の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例20の評価結果は、表4に示す。
【0222】
<実施例21>
実施例21では、微粒子として硫酸バリウム(B-30、堺化学工業社製、粒径:300nm、屈折率:1.64)を用いたこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例21の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例21の評価結果は、表4に示す。
【0223】
<実施例22、23>
実施例22、23では、硬化後の膜厚が表4に示すとおりになるように、ガラス基板上に実施例18の感光性樹脂組成物を塗布したこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例22、23の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例22、23の評価結果は、表4に示す。
【0224】
<実施例24>
実施例24では、アルカリ可溶性樹脂として合成例4で合成した樹脂Bを用いたこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、実施例24の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。実施例24の評価結果は、表4に示す。
【0225】
<比較例1>
比較例1では、光重合開始剤としてBASF社製の“IRGACURE”(登録商標)OXE02を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例1の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例1の評価結果は、後述の表5に示す。なお、表5中の「発光材料」には、一例としてピロメテン誘導体が含まれる。
【0226】
<比較例2>
比較例2では、硬化後の膜厚が3μmになるように、ガラス基板上に比較例1の感光性樹脂組成物を塗布したこと以外は、比較例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例2の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例2の評価結果は、表5に示す。
【0227】
<比較例3>
比較例3では、発光材料として化合物G2を用いたこと以外は実施例10と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例3の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例3の評価結果は、表5に示す。
【0228】
<比較例4>
比較例4では、発光材料G3として量子ドット(CdSeS/ZnS:ドット径6nm、シグマアルドリッチ社製)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例4の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例4の評価結果は、表5に示す。
【0229】
<比較例5>
比較例5では、発光材料として化合物R1を用いたこと以外は比較例1と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例5の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例5の評価結果は、後述の表6に示す。
【0230】
<比較例6>
比較例6では、硬化後の膜厚が3μmになるように、ガラス基板上に比較例1の感光性樹脂組成物を塗布したこと以外は、比較例5と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例6の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例6の評価結果は、表6に示す。
【0231】
<比較例7>
比較例7では、発光材料として化合物R2を用いたこと以外は実施例18と同様にして、感光性樹脂組成物および色変換基板を作製した。その後、比較例7の感光性樹脂組成物および色変換基板について、実施例1と同様に各評価を行った。比較例7の評価結果は、表6に示す。
【0232】
【表2】
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【0235】
【表5】
【0236】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0237】
以上のように、本発明に係る感光性樹脂組成物、硬化膜、色変換基板、画像表示装置、および硬化膜の製造方法は、高輝度で微細なパターンを形成することができる感光性樹脂組成物、その硬化膜、それを用いた色変換基板および画像表示装置に適している。