(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】蓄電装置、車両、自動二輪車
(51)【国際特許分類】
H02H 11/00 20060101AFI20230411BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230411BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230411BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230411BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20230411BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02H11/00 150
H02J7/00 S
H02J1/00 308C
H01M10/48 P
H01M50/572
B60R16/02 650R
(21)【出願番号】P 2019527722
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2018025215
(87)【国際公開番号】W WO2019009292
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017130162
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0236501(US,A1)
【文献】特開2011-192646(JP,A)
【文献】特開平09-200951(JP,A)
【文献】特開2004-227780(JP,A)
【文献】特開2010-166679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H11/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J1/00-1/16
H01M10/42-10/48
H01M50/572
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と接続された外部端子と、
前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、
前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、
管理装置と、を備え、
前記管理装置は、
前記電流遮断装置をOPENすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理と、
前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、
前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、
前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理と、を自動的に行う、蓄電装置。
【請求項2】
蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と接続された外部端子と、
前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、
前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、
管理装置と、を備え、
前記管理装置は、前記電流遮断装置をOPENすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理の実行後、前記電流遮断装置をCLOSEに復帰する復帰制御を自動的に開始し、
前記復帰制御は、
前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、
前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、
前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理と、を含む、蓄電装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、前記電流遮断装置がOPENしている間、前記復帰制御を所定周期で繰り返し実行する、蓄電装置。
【請求項4】
蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と接続された外部端子と、
前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、
前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、
管理装置と、を備え、
前記管理装置は、
電流値が遮断閾値以下である場合、前記電流遮断装置をCLOSEに維持し、
電流値が遮断閾値より大きい場合、前記電流遮断装置をOPENすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理と、
前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、
前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、
前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理と、を自動的に行う、蓄電装置。
【請求項5】
蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と接続された外部端子と、
前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、
前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、
管理装置と、を備え、
前記管理装置は、前記電流遮断装置をOPENすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理と、
前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、
前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、
前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理と、を行い、
前記管理装置は、前記蓄電装置が非車載で単体である場合に、電流値を遮断閾値と比較し、遮断閾値を超える電流を検出した場合、前記電流遮断処理を実行し、
非車載かつ単体の前記蓄電装置の前記電流遮断装置がOPEN中に、前記検出処理と前記判断処理を行い、前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理を行う、蓄電装置。
【請求項6】
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記電圧印加回路は、前記電源と前記外部端子とを接続する回路であり、
電流制限素子と、
前記電流制限素子に対して直列に接続されたスイッチと、を含む、蓄電装置。
【請求項7】
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記電圧印加回路は、前記電源と前記外部端子とを接続する回路であり、
コンデンサと、
前記コンデンサに対して直列に接続されたスイッチと、を含む、蓄電装置。
【請求項8】
請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、前記外部端子の短絡時に、前記電流遮断処理を行う、蓄電装置。
【請求項9】
請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合、前記切換処理を実行するか否かを、前記蓄電素子の充電状態に関する情報に基づいて、決定する、蓄電装置。
【請求項10】
請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池である、蓄電装置。
【請求項11】
車軸を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータに電力を供給する請求項1~請求項
10のいずれか一項に記載の蓄電装置を備えた、車両。
【請求項12】
請求項1~請求項
10のいずれか一項に記載の蓄電装置を備えた、自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えたときに、蓄電装置に大電流が流れることを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のエンジン始動用バッテリは、車両への取り付け作業時などに作業者の不注意で端子間を短絡してしまい大電流が流れる可能性がある。近年は、従来から広く使用されている鉛バッテリよりも、内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池を始動用バッテリとして使用することが増えており、短絡時の電流値が大きくなることが考えられる。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、下記特許文献1に開示されるように、リレーやFETといった電流遮断装置を備えており、外部短絡が発生した時に、電流を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置は、外部端子の短絡時に、電流遮断装置をOPENすることで、電流を遮断することが出来る。外部端子の短絡により電流を遮断した蓄電装置は、その後、再使用する場合がある。蓄電装置を再使用するため、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えた時に、外部端子が短絡したままの状態だと、大電流が流れる場合がある。蓄電装置は、外部端子の短絡以外にも、上位システムの状況に応じて、電流を遮断する場合がある。例えば、電気自動車用の高圧バッテリは、非走行時は、電流遮断装置をOPENして電流を遮断する。走行中は、電流遮断を解除して、蓄電装置を駆動モータに接続して電流を供給する。電気自動車の走行開始時など、電流遮断を解除して蓄電装置を上位システムに接続する時や、蓄電装置の再使用時に、外部端子が短絡していると、大電流が流れる場合がある。そのため、外部端子が短絡していないことを検出してから、電流遮断装置をCLOSEすることが好ましい。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換える時に、蓄電装置に大電流が流れることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子と接続された外部端子と、前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、管理装置と、を備え、前記管理装置は、前記電流遮断装置をOPENすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理と、前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、を行い、前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
蓄電装置は、電圧印加回路を有しており、電流遮断装置がOPENしても、外部端子に電圧を印加出来る。電圧印加回路により外部端子に電圧を印加して、外部端子の電圧を検出することで、電流の遮断中に、外部端子間が短絡物により短絡しているか、判断できる。外部端子が短絡していないと判断された場合に限り、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えることで、電流遮断装置をCLOSEに切り換えた時に、蓄電装置に大電流が流れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】電流遮断装置の遮断制御の流れを示すフローチャート
【
図6】電流遮断装置の復帰制御の流れを示すフローチャート
【
図7】短絡物の有無について、A点の電圧をまとめた図表
【
図8】実施形態2におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図9】短絡物の有無について、C点の電圧をまとめた図表
【
図10】実施形態3におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図11】実施形態4における負荷接続時のバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図12】短絡物の有無について、A点の電圧をまとめた図表
【
図13】実施形態5におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図14】実施形態6における復帰制御のフローチャート
【
図16】実施形態7における電源システムのブロック図
【
図17】実施形態8において電気自動車のブロック図
【
図18】駆動用の高圧バッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図19】他の実施形態におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図20】他の実施形態におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【
図21】他の実施形態におけるバッテリの電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と接続された外部端子と、前記蓄電素子と前記外部端子とを接続する通電路に位置する電流遮断装置と、前記蓄電素子又は他回路を電源として、前記外部端子に対して電圧を印加する電圧印加回路と、管理装置と、を備え、前記管理装置は、前記電流遮断装置をOPENにすることにより、前記蓄電素子の電流を遮断する電流遮断処理と、前記電流遮断処理による電流の遮断中に、前記電圧印加回路により電圧が印加された前記外部端子の電圧を検出する検出処理と、前記検出処理にて検出された前記外部端子の電圧に基づいて、前記外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断する判断処理と、を行い、前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合に限り、前記電流遮断装置をCLOSEに切り換える切換処理を行う。
【0010】
蓄電装置は、電圧印加回路を有しており、電流遮断装置がOPENしても、外部端子に電圧を印加することが出来る。電圧印加回路により外部端子に電圧を印加して、外部端子の電圧を検出することで、電流の遮断中に、外部端子間を短絡する短絡物の有無を判断できる。短絡物なしと判断した場合に限り、管理装置が電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えることから、電流遮断装置をCLOSEに切り換えた時に、蓄電装置に大電流が流れることを抑制できる。
【0011】
前記電圧印加回路は、前記電源と前記外部端子とを接続する回路であり、電流制限素子と、前記電流制限抵抗に対して直列に接続されたスイッチと、を含むとよい。この構成では、電流制限素子により電流を制限することが出来、電圧印加回路に大電流が流れることを抑制できる。スイッチをオフすると、電圧印加回路を非通電にできるため、蓄電装置の電力消費を低減することが出来る。
【0012】
前記電圧印加回路は、前記電源と前記外部端子とを接続する回路であり、コンデンサと、前記コンデンサに対して直列に接続されたスイッチとを含むとよい。この構成では、コンデンサをチャージする以外は、電流を制限することが出来、電圧印加回路に大電流が流れることを抑制できる。スイッチをオフすると、電圧印加回路を非通電にできるため、蓄電装置の電力消費を低減することが出来る。
【0013】
前記管理装置は、前記外部端子の短絡時に、前記電流遮断処理を行ってもよい。外部端子の短絡時に電流を遮断することで、蓄電装置のダメージを抑えることが出来る、安全性が高い。
【0014】
前記管理装置は、前記判断処理にて短絡物なしと判断した場合、前記切換処理を実行するか否かを、前記蓄電素子の充電状態に関する情報に基づいて、決定してもよい。充電状態が使用に適さない場合、蓄電装置の使用を規制できる。
【0015】
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池であるとよい。リチウムイオン二次電池は、鉛蓄電池に比べて内部抵抗が小さいことから、外部端子の短絡時に大きな電流が流れる。本技術をリチウムイオン二次電池に適用することで、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えた時に、リチウムイオン二次電池に大電流が流れることを抑制することが可能であり、安全性が高まる。
【0016】
本技術は、電流遮断装置の制御方法や制御プログラムに適用することができる。
【0017】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は自動車の側面図、
図2はバッテリの斜視図、
図3はバッテリの分解斜視図、
図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。自動車1は、駆動装置としてエンジンを有する自動四輪車である。
【0018】
自動車1は、
図1に示すように、バッテリ(「蓄電装置」に相当)20を備えている。バッテリ20は、
図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている。以下の説明において、
図2および
図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0019】
電池ケース21は、
図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0020】
位置決め部材24は、
図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0021】
中蓋25は、平面視略矩形状をなしている。中蓋25のX方向両端部には、一対の外部端子22P、22Nが設けられている。一対の外部端子22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側の外部端子、22Nが負極側の外部端子である。バッテリ20には、外部端子22P、22Nを介して、セルモータなどの負荷を接続することが出来る。
【0022】
中蓋25の上面には、収容部25Aが設けられている。制御基板28は、中蓋25の収容部25Aの内部に収容されており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と制御基板28とが接続される。上蓋26は、中蓋25の上部に装着され、制御基板28を収容した収容部25Aの上面を閉じる。
【0023】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、組電池30と、電流遮断装置37と、電流センサ41と、電圧検出部45と、電圧印加回路60と、組電池30を管理する管理装置50とを有する。
【0024】
組電池30は、直列接続された複数の二次電池(例えば、4つのリチウムイオン二次電池)31から構成されている。リチウムイオン二次電池31が「蓄電素子」の一例である。正極側の外部端子22Pは、正極側の通電路35Pにより、組電池30の正極に接続されている。負極側の外部端子22Nは、負極側の通電路35Nにより、組電池30の負極に接続されている。電流遮断装置37は正極側の通電路35Pに配置されている。電流センサ41は負極側の通電路35Nに配置されている。組電池30、電流センサ41、電流遮断装置37は、通電路35P、35Nを介して、直列に接続されている。
【0025】
リチウムイオン二次電池31の電池電圧は約3.5[V]、組電池30の総電圧Evは約14Vであり、バッテリ20の電圧階級は12Vである。バッテリ20は自動車1のエンジンを始動するセルモータの駆動用(エンジン始動用)である。
【0026】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、組電池30に流れる電流を検出する。電流センサ41は、信号線によって管理装置50に電気的に接続されており、電流センサ41の出力は、管理装置50に取り込まれる。
【0027】
電圧検出部45は、電池ケース21の内部に設けられており、各二次電池31の電圧V及び組電池30の総電圧Evを検出する。組電池20の総電圧Evは4つの二次電池31の合計電圧(トータル電圧)である。電圧検出部45は、信号線によって管理装置50に電気的に接続されており、電圧検出部45の出力は、管理装置50に取り込まれる。
【0028】
電流遮断装置37は、リレーなどの有接点スイッチ(機械式)又は、FETやトランジスタなどの半導体スイッチにより構成することが出来る。電流遮断装置37は、組電池30の正極側の通電路35Pに配置されており、組電池30の正極側の通電路35Pを開閉する。
【0029】
電圧印加回路60は、組電池30を電源として、正極側の外部端子22Pに対して、電圧を印加する回路である。電圧印加回路60は、電流制限抵抗61と、スイッチ63と、を備える。電流制限抵抗61とスイッチ63は直列に接続されている。電圧印加回路60は、正極側の外部端子22Pと電流遮断装置37との間に位置するA点と、電流遮断装置37と組電池30の正極との間に位置するB点との間を接続している。電圧印加回路60は、電流遮断装置37に対して並列に接続されている。電流制限抵抗61が「電流制限素子」の一例である。
【0030】
スイッチ63をオンすると、電圧印加回路60は通電状態となり、電流遮断装置37のOPEN中でも、組電池30を電源として、正極側端子部22Pに、電圧を印加することが出来る。
【0031】
電流制限抵抗61の抵抗値は、一例として、100kΩである。抵抗値は、少なくとも1kΩ以上であることが好ましい。これにより、2つの外部端子22P、22Nの短絡中に、スイッチ63をオンした時に、組電池30から電圧印加回路60に流れる電流を10mA程度に抑えることが出来る。
【0032】
スイッチ63は、FETやトランジスタなどの半導体スイッチにより、構成することが出来る。スイッチ63は、管理装置50により、
図6に示す電流遮断装置37の復帰制御にてA点の電圧を検出する場合を除いて、常にオフに制御される。
【0033】
管理装置50は、演算機能を有するCPU51、各種情報を記憶したメモリ53、通信部55など備えており、制御基板28上に設けられている。通信部55は、自動車1に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)との通信用である。車両への搭載後、通信部55は、信号線により、車両ECUと接続され、管理装置50は、エンジンの動作状態など自動車1に関する情報を、車両ECUから受信できる。
【0034】
管理装置50は、電流センサ41の出力に基づいて、組電池30の電流を監視する。電圧検出部45の出力に基づいて、各二次電池31の電池電圧や組電池30の総電圧Evを監視する。管理装置50は、信号線67を介してA点に接続されており、A点の電圧(正極側端子部22Pの電圧)を検出することが出来る。また、管理装置50は、以下に説明する電流遮断装置37の遮断制御と復帰制御を行う。
【0035】
2.電流遮断装置37の遮断制御と復帰制御
図5は電流遮断装置37の遮断制御のフローチャートである。
図6は電流遮断装置37の復帰制御のフローチャートである。
【0036】
電流遮断装置37の遮断制御と復帰制御を説明する。
電流遮断装置37の遮断制御は、
図5に示すように、S10~S30から構成されている。電流遮断装置37は、通常、CLOSEしている。管理装置50は、S10にて、電流センサ41からバッテリ20の電流値Iを検出する。
【0037】
次に管理装置50は、S20にて電流値Iを遮断閾値と比較する。遮断閾値は、外部端子の短絡時と非短絡時にそれぞれバッテリ20に流れる電流の中間値に設定されている。
【0038】
電流値Iが遮断閾値以下の場合(S20:NO)、管理装置50は、電流遮断装置37をCLOSEに維持する。
【0039】
電流値Iが遮断閾値より大きい場合(S20:YES)、管理装置50は、電流遮断装置37にOPEN指令を送る。これにより、電流遮断装置37はOPENする。S20が「電流遮断処理」に相当する。
【0040】
管理装置50は、バッテリ20が非車載で単体の状態である場合、遮断制御を、所定周期で繰り返し実行する。そのため、単体のバッテリ20を自動車1に車載する作業を行う時に、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が工具などの短絡物80により短絡した場合、電流遮断装置37がOPENし、電流が遮断される。電流の遮断により、バッテリ20のダメージを抑えることが出来、安全性が確保される。
【0041】
バッテリ20が非車載か車載のどちらの状態であるかは、通信部55を通じて、車両ECUと通信済みかどうかにより、判断可能である。負荷が未接続であるか否かは、バッテリ20の電流値から判断可能である。
【0042】
次に電流遮断装置37の復帰制御について説明する。電流遮断装置37の復帰制御は、電流遮断装置37がOPENしている期間に、実行される。
【0043】
電流遮断装置37の復帰制御は、
図6に示すように、S100~S150から構成されており、管理装置50は、S100にて、電圧印加回路60のスイッチ63をオンする。これにより、正極側の外部端子22Pには、組電池30を電源として、電圧印加回路60により、電圧が印加された状態となる。
【0044】
次に管理装置50は、S110にてA点の電圧を検出し、S120にてスイッチ63をオフする。スイッチ63は、A点の電圧を検出する場合を除き、常にオフに制御される。S110が「検出処理」に相当する。
【0045】
その後、S130にて、管理装置50は、A点の電圧に基づいて、短絡物80の有無を判断する。具体的には、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡物80により短絡している場合、A点の電圧は0Vとなる。一方、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡してない場合、A点の電圧は組電池30の総電圧Ev(本例では14V)となる。
【0046】
管理装置50は、A点の電圧を閾値(一例として、Ev/2=7V)と比較し、A点の電圧が閾値より大きい場合、短絡物無しと判断する(S130:YES)。
【0047】
短絡物無しと判断した場合、管理装置50は、S140にて、電流遮断装置37に指令を送り、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換える。S130が「判断処理」に相当し、S140が「切換処理」に相当する。
【0048】
一方、A点の電圧が閾値以下の場合、管理装置50は、短絡物有りと判断する(S130:NO)。短絡物有りと判断した場合、電流遮断装置37はOPEN状態に維持される(S150)。電流遮断装置37をOPEN状態に維持することで、バッテリ20に大電流が流れることを抑制できる。
【0049】
S100~S150からなる電流遮断装置37の復帰制御は、電流遮断装置37がOPENしている期間、所定周期で繰り返し実行される。
【0050】
そのため、バッテリ20を自動車1に車載する作業を行う時に、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が工具などの短絡物80により短絡して電流遮断装置37がOPENした後、作業者が短絡物80を取り除くと、電流遮断装置37は自動的にCLOSEに復帰する。そのため、作業者が、電流遮断装置37をCLOSEに戻すための特別な作業を行わなくても、バッテリ20の再使用を可能にすることが出来る。
【0051】
4.効果説明
バッテリ20は、他の電源と比べて、単位体積当たりのエネルギー密度が大きい。エネルギー密度が高い場合、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nが短絡すると、大電流が流れるため、電流遮断装置37が必須である。バッテリ20を車載する作業を行う時に、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が工具などの短絡物80により短絡すると、管理装置50が、電流遮断装置37をOPENする。そのため、バッテリ20のダメージを抑制し、安全性を確保することが出来る。特に、リチウムイオン二次電池31は、鉛蓄電池に比べて内部抵抗が小さいことから、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの短絡時に大きな電流が流れる。本技術をリチウムイオン二次電池31に適用することで、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nが短絡した時に流れる電流を遮断することが可能であり、安全性が高まる。
【0052】
バッテリ20は、電圧印加回路60を有している。バッテリ20は、電流遮断装置37がOPEN中でも、正極側の外部端子22Pに電圧を印加出来る。正極側の外部端子22Pに電圧を印加して、正極側の外部端子22Pの電圧を検出することで、電流の遮断中に、2つの外部端子22P、22Nを短絡する短絡物の有無を判断できる。短絡物なしと判断した場合に限り、管理装置50が、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換えることで、電流遮断装置37をCLOSEに切り換えた時に、バッテリ20に大電流が流れることを抑制できる。
【0053】
電圧印加回路60は、電流制限抵抗61とスイッチ63を有している。電流制限抵抗61を設けることで、外部端子22P、22Nが短絡している状態で、スイッチ63をオンした時に、電圧印加回路60に大電流が流れることを抑制できる。具体的には、電流制限抵抗61の抵抗値を100kΩにしており、電圧印加回路60に流れる電流を1mA以下に抑えることが出来る。管理装置50は、A点の電圧を検出する場合(S110)を除いて、常にスイッチ63をオフに制御する。そのため、A点の電圧を検出する期間を除いて、電圧印加回路60は非通電になることから、バッテリ20の電力消費を低減することが出来る。
【0054】
<実施形態2>
実施形態2のバッテリ120は、
図8に示すように、実施形態1のバッテリ20に対して、電流センサ41を正極側の通電路35Pに配置している点と、電流遮断装置37を負極側の通電路35Nに配置している点が相違している。電圧印加回路60は、電流遮断装置37に対して並列に接続されており、負極側の外部端子22Nと組電池30の負極との間を接続している。負極側の外部端子22Nと電流遮断装置37との間に位置するC点と、電流遮断装置37と組電池30の負極との間に位置するD点との間を接続している。
図8に示すバッテリ120では、電圧印加装置60のスイッチ63をオンすることで、組電池30を電源として、負極側の外部端子22Nに対して、電圧を印加することが出来る。
【0055】
管理装置50は、実施形態1と同様に、電流遮断装置37をOPENしている期間に、電流遮断装置37の復帰制御を行う。管理装置50は、電流遮断装置37の復帰制御にて、電圧印加装置60のスイッチ63をオンすることで、組電池30を電源として、負極側の外部端子22Nに対して、電圧を印加する。C点の電圧(負極側の外部端子22Nの電圧)を検出し、検出したC点の電圧(負極側の外部端子22Nの電圧)に基づいて、短絡物80の有無を判断する。具体的には、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡物80により短絡している場合(短絡物有り)、C点の電圧は組電池30の総電圧Ev(本例では14V)となる。一方、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡してない場合(短絡物無し)、C点の電圧は0Vとなる。
【0056】
管理装置50は、C点の電圧を閾値(一例として、Ev/2=7V)と比較し、C点の電圧が閾値より大きい場合、短絡物有りと判断する。C点の電圧が閾値以下の場合、短絡物無しと判断する。
【0057】
管理装置50は、短絡物無しと判断する場合、実施形態1と同様、電流遮断装置37に指令を送り、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換える。そのため、短絡物80が取り除かれると、その後、バッテリ120の再使用が可能となる。
【0058】
<実施形態3>
実施形態3のバッテリ220は、
図10に示すように、実施形態1のバッテリ20に対して、電圧印加回路160が異なっている。電圧印加回路160は、電流遮断装置37に対して並列に接続されており、コンデンサ161と、スイッチ163、放電抵抗165を有している。
【0059】
コンデンサ161とスイッチ163は直列に接続されており、コンデンサはA点、スイッチ163はB点に接続されている。放電抵抗165は、一端をコンデンサ161とスイッチ163の中間接続点Eに接続し、他端をグランドに接続している。放電抵抗165は、外部端子部が短絡物により短絡している時に、スイッチ163をオンすることで、コンデンサ161にチャージされた電荷を、スイッチ163をオフした時に放電する機能を果たす。
【0060】
図10に示すバッテリ220では、電圧印加装置160のスイッチ163をオンすることで、組電池30を電源として、正極側の外部端子22Pに対して、電圧を印加することが出来る。
【0061】
管理装置50は、実施形態1と同様に、電流遮断装置37をCLOSEしている期間に、電流遮断装置の復帰制御を行う。管理装置50は、復帰制御にて、電圧印加装置160のスイッチ163をオンすることで、組電池30を電源として、正極側の外部端子22Pに対して、電圧を印加する。そして、A点の電圧(正極側の外部端子22Pの電圧)を検出し、検出したA点の電圧(正極側の外部端子22Pの電圧)に基づいて、短絡物80の有無を判断する。具体的には、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡物80により短絡している場合(短絡物有り)、A点の電圧は0Vとなる。一方、正極側の外部端子22Pと負極側の外部端子22Nの間が短絡してない場合(短絡物無し)、A点の電圧は、組電池30の総電圧Ev(本例では14V)となる。
【0062】
管理装置50は、A点の電圧を閾値(一例として、Ev/2=7V)と比較し、A点の電圧が閾値より大きい場合、短絡物無しと判断する。また、A点の電圧が閾値以下の場合、短絡物有りと判断する。
【0063】
管理装置50は、短絡物無しと判断する場合、実施形態1と同様、電流遮断装置37に指令を送り、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換える。そのため、短絡物80が取り除かれると、その後、バッテリ220の再使用が可能になる。
【0064】
<実施形態4>
実施形態1では、バッテリ20が非車載で、かつ負荷が未接続である場合を例にとって、電流遮断装置37の遮断制御を実行した。電流遮断装置37の遮断制御は、
図11に示すように、バッテリ20が車載され、かつ負荷90が接続された状態で行ってもよい。電流遮断装置37の復帰制御は、電流遮断装置37のOPEN中であれば、バッテリ20が車載され、負荷が接続されている状態で行ってもよい。バッテリ20が車載され、かつ負荷90が接続された状態では、電流遮断装置37のOPEN中に、電圧印加回路60のスイッチ61をオンすると、
図12に示すように、短絡物80が有る場合、A点の電圧は、0Vとなる。一方、短絡物80がない場合、A点の電圧は、組電池30の総電圧Evに分圧比Kを乗じた電圧となる。そのため、例えば、閾値を(Ev×K)/2として、A点の電圧が閾値より大きい場合、短絡物無し、と判断でき、A点の電圧が閾値以下の場合、短絡物有り、と判断できる。分圧比Kは、バッテリ20に接続された負荷90と電圧印加回路60の抵抗61の抵抗比である。
【0065】
<実施形態5>
実施形態1では、A点と管理装置50との間を信号線67により接続し、A点の電圧を管理装置50に直接入力した構成を例示した。
図13に示すバッテリ320のように、信号線67にダイオード68を設けて、A点の電圧をダイオード68で降圧した電圧を管理装置50に入力するようにしてもよい。入力電圧を下げることで、管理装置50の保護に有効となる。
【0066】
<実施形態6>
実施形態1では、2つの外部端子22P、22Nが短絡した時に、電流遮断装置37をOPENして、電流を遮断した。管理装置50は、電流センサ41や電流検出部45の出力に基づいて、バッテリ20の状態を監視し、バッテリ20に異常が検出された場合、電流遮断装置37をOPENして電流を遮断する。バッテリ20の異常には、過放電や過充電などが含まれる。
図14は、実施形態6の復帰制御のフローチャートである。実施形態6の復帰制御は、実施形態1の復帰制御(
図6のS100~S150)に対して、S133とS135の2つのステップが追加されている。S100~S130では、実施形態1と同様に、管理装置50は、電圧印加回路60を用いて、正極側の外部端子22Pに電圧を印加して、A点の電圧を検出する。管理装置50は、A点の電圧を閾値と比較することにより、2つの外部端子22P、22Nが短絡物80により、短絡しているか判断する。2つの外部端子22P、22Nが短絡物80により短絡していないと判断した場合(S130:YES)、管理装置50は、二次電池31のOCVからSOCを算出する(S133)。
【0067】
SOC(state of charge:充電状態)は、二次電池31の満充電容量に対する残存容量の比率であり、下記の(1)式にて表される。
【0068】
SOC=Cr/Co×100・・・・・・・・・・(1)
Coは二次電池の満充電容量、Crは二次電池の残存容量である。
【0069】
図15は、二次電池31のSOCを横軸とし、OCVを縦軸とした、SOC-OCV相関グラフである。OCV(Open Circuit Voltage)は、無電流又は無電流とみなせる状態における、二次電池31の電圧Vである。無電流とみなせる状態は、電流値が閾値以下の状態である。
図15に示すように、OCVとSOCは相関性がある。OCV-SOCの相関グラフは、OCVの変化量が異なる複数の領域を有している。SOCが30~95%の範囲は、SOCの変化量に対するOCVの変化量が、所定の基準値よりも小さい平坦な低変化領域F1である。SOCが95%以上とSOCが30%以下の範囲は、SOCの変化量に対するOCVの変化量が基準値よりも高い高変化領域F2である。
【0070】
管理装置50は、電圧検出部45により計測したOCVを、
図15の相関グラフに参照することで、二次電池31のSOCを算出する。
【0071】
二次電池31のSOCを算出すると、管理装置50は、算出したSOCを、所定値と比較する(S135)。所定値は、バッテリ20が過放電か否かを判断する値であり、一例として20%である。
【0072】
管理装置50は、二次電池31のSOCが所定値以上の場合(S135:YES)、バッテリ20は過放電ではないと判断し、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換える(S140)。一方、管理装置50は、二次電池31のSOCが所定値未満の場合(S135:NO)、バッテリ20は過放電と判断し、電流遮断装置37をOPENに維持する(S150)。
【0073】
管理装置50は、バッテリ20が過放電と判断される場合、電流遮断装置37をOPENに維持する。従って、過放電状態のバッテリ20が再使用されることを抑制できる。
【0074】
<実施形態7>
図16は、電源システム700のブロック図である。電源システム700は、メインバッテリ710と、サブバッテリ720を備える。メインバッテリ710は、正極側の外部端子712Pと、負極側の外部端子712Nを備える。メインバッテリ710には、正極側の外部端子712Pと負極側の外部端子712Nを介して、負荷800が接続されている。
【0075】
サブバッテリ720は、正極側の外部端子722Pと、負極側の外部端子722Nを備える。正極側の外部端子722Pと負極側の外部端子722Nは、メインバッテリ710の正極側の外部端子712Pと負極側の外部端子712Nにそれぞれ接続されており、サブバッテリ720は、メインバッテリ710に対して、並列に接続されている。メインバッテリ710にサブバッテリ720を並列に接続することで、メインバッテリ710から負荷800に対して電力が供給できない場合でも、サブバッテリ720から電力の供給が可能であり、冗長性が高い。
【0076】
サブバッテリ720は、実施形態1のバッテリ20と同様に、組電池30と、電流遮断装置37と、電流センサ41と、電圧検出部45と、電圧印加回路60と、組電池30を管理する管理装置50と、を有する。
【0077】
管理装置50は、2つの外部端子722P、722Nが短絡すると、電流遮断装置37をOPENし電流を遮断する。管理装置50は、電流遮断装置37のOPEN中に、
図6に示す復帰制御を実行し、短絡物が除去されれば、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換える。そのため、短絡物の除去後は、サブバッテリ720は再使用可能となり、使用不可期間が短くなるので、電源システム700の冗長性を高めることが出来る。
【0078】
<実施形態8>
図17は電気自動車のブロック図である。電気自動車1000は、車輪1003を両側に固定した車軸1005と、駆動モータ1100と、インバータ1200と、駆動用の高圧バッテリ1300と、商用電源より充電できる車載普通充電器1400と、急速充電器(図略)に接続されるコネクタ1450を備えている。
【0079】
駆動用の高圧バッテリ1300は、急速充電器や車載普通充電器1400により充電することが出来る。駆動用の高圧バッテリ1300は、インバータ1200を介して、駆動モータ1100に接続されている。インバータ1200は、駆動用の高圧バッテリ1300の電力を直流から交流に変換して駆動モータ1200に供給する。電気自動車1000は、駆動モータ120の駆動により走行する。インバータ1200には、コンデンサ1250が並列に接続されている(
図18参照)。コンデンサ1250は急加速時など瞬時的な出力が必要なときに、放電して、高圧バッテリ1300の出力を補う。
【0080】
電気自動車1000は、低圧バッテリ1500と、DC/DCコンバータ1600を備えている。低圧バッテリ1500は、車載の補機類の電源である。
【0081】
図18は、駆動用の高圧バッテリ1300のブロック図である。駆動用の高圧バッテリ1300は、正極側の外部端子1322Pと、負極側の外部端子1322Nと、組電池1330と、電流センサ1341と、ヒューズ1343と、第1リレーRL1と、第2リレーRL2と、第3リレーRL3と、抵抗1344を備える。
【0082】
正極側の外部端子1322Pは、正極側の通電路1335Pにより、組電池1330の正極に接続されている。また、負極側の外部端子1322Nは、負極側の通電路1335Nにより、組電池1330の負極に接続されている。第1リレーRL1と電流センサ1341は、正極側の通電路1335Pに設けられている。第2リレーRL2とヒューズ1343は負極の通電路1335Nに設けられている。第3リレーRL3は、第1リレーRL1と並列に接続されている。抵抗1344は、第3リレーRL3と直列に接続されている。第3リレーRL3は、コンデンサ1250を充電する時の充電経路であり、抵抗1344は、コンデンサ1250の充電電流を制限するために設けられている。
【0083】
駆動用の高圧バッテリ1300は、電圧検出部1345と、電圧印加回路1360と、組電池1330を管理する管理装置1350と、を有する。電圧検出部1345は、組電池1330の各二次電池31の電圧Vと組電池1330の総電圧Evを検出する。
【0084】
電圧印加回路1360は、電圧印加回路60と同様に、組電池1330を電源として、正極側の外部端子1322Pに対して、電圧を印加する回路である。電圧印加回路1360は、電流制限抵抗1361と、スイッチ1363と、を備える。電圧印加回路1360は、正極側の外部端子1322Pと第1リレーRL1との間に位置するA点と、電流センサ1341と組電池30の正極との間に位置するB点との間を接続している。
【0085】
管理装置1350は、演算機能を有するCPU1351、各種情報を記憶したメモリ1353、通信部1355など備えている。通信部1355は、電気自動車1000に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)1700との通信用として設けられている。管理装置1350は、信号線1367を介してA点に接続されており、A点の電圧(正極側の外部端子1322Pの電圧)を検出することが出来る。信号線1367には、ダイオード1368を配置してもよい。ダイオード1368により、A点の電圧を降圧して管理装置1350に入力することが出来る。
【0086】
管理装置1350は、車両ECU1700からの通信で、電気自動車100の状態に関する情報を得ることが出来る。電気自動車1000の状態に関する情報は、駐車中、走行開始、走行中、走行停止などである。
【0087】
管理装置1350は、第1リレーRL1、第2リレーRL2、第3リレーRL3に制御信号を送ることで、電気自動車1000の状態に応じて、各リレーRL1、RL2、RL3をOPEN又はCLOSEに制御する。
【0088】
管理装置1350は、電気自動車1000が駐車中の場合、第1リレーRL1、第2リレーRL2、第3リレーRL3を全てOPENする。これにより、充電中を除いて、駐車中、駆動用の高圧バッテリ1300は、インバータ1200やコンデンサ1250に対して非接続状態となり、電流は遮断される。管理装置1350は、車両ECU1700から走行開始の情報を受けると、
図6に示す復帰制御を行う。復帰制御において、管理装置1350は、電圧印加回路1360のスイッチ1363をオンし、正極側の外部端子1322Pに電圧を印加する。管理装置1350は、電圧の印加後、A点の電圧を検出する(S110)。管理装置1350は、検出したA点の電圧を閾値と比較して、正極側の外部端子1322Pと負極側の外部端子1322Nを短絡する短絡物の有無を判断する(S130)。
【0089】
短絡物がないと判断した場合(S130:YES)、管理装置1350は、第3リレーRL3と第2リレーRL2に制御信号を送り、第3リレーRL3と第2リレーRL2をOPENからCLOSEに切り換える(S140)。
【0090】
第3リレーRL3、第2リレーRL2の切り換えにより、駆動用の高圧バッテリ1300がインバータ1200及びコンデンサ1250に対して接続される。リレーの切り換え後、駆動用の高圧バッテリ130から、第3リレーRL3、抵抗1344を通って、電流が流れ、コンデンサ1250を充電する。
【0091】
コンデンサ1250の充電が完了すると、管理装置1350は、第3リレーRL3と第1リレーRL1に制御信号を送り、第3リレーRL3をCLOSEからOPENに切り換え、第1リレーRL1をOPENからCLOSEに切り換える。
【0092】
リレーの切り換えにより、コンデンサ1250の充電後は、駆動用の高圧バッテリ130から、第1リレーRL1の経路で、インバータ1200に電流を流すことが出来、駆動モータ1100を駆動することが出来る。
【0093】
一方、短絡物があると判断した場合(S130:NO)、管理装置1350は、第1リレーRL1、第2リレーRL2、第3リレーRL3を全てOPENに維持する(S150)。第1リレーRL1、第2リレーRL2、第3リレーRL3をOPENに維持することで、バッテリ20に大電流が流れることを抑制できる。
【0094】
管理装置1350は、短絡物なしと判断した場合に限り、第3リレーRL3と第2リレーRL2をOPENからCLOSEに切り換えることから、第3リレーRL3と第2リレーRL2をCLOSEに切り換えた時に、駆動用の高圧バッテリ1300に大電流が流れることを抑制できる。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0096】
(1)実施形態1~8では、蓄電素子の一例に、リチウムイオン二次電池を例示した。蓄電素子は、他の二次電池でもよく、又、電気二重層コンデンサ等でもよい。バッテリ20、120、220、320、720、1300の用途は、車両に限定されるものではなく、UPS(無停電電源装置)や、太陽光発電システムのバッテリなどの他の用途でもよい。また、フロート充電やトリクル充電されるバッテリは、常に満充電に近い状態に維持されるため、2つの外部端子が短絡した状態で、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えると、大電流が流れるという課題がある。フロート充電やトリクル充電されるバッテリについて、本技術を適用することで、2つの外部端子が短絡した状態で、電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換えると、大電流が流れ易いという課題を解決することが出来る。フロート充電されるバッテリは、例えば、車両の補機類用のバッテリである。トリクル充電されるバッテリは、例えば、UPS用のバッテリである。
【0097】
(2)実施形態1、2、4、5では、電流制限素子の一例として、抵抗値が固定の抵抗を例示した。これ以外にも、例えば、正の温度係数を持ち、温度が高い程、抵抗値が大きくなる可変抵抗を用いるようにしてもよい。上記の可変抵抗を用いた場合、外部端子間が短絡していると、スイッチをオフした時に、可変抵抗に電流が流れる。すると、可変抵抗が発熱して抵抗値が大きくなることから、電圧印加回路60に流れる電流を制限することが出来る。
【0098】
(3)実施形態1では、正極側の外部端子22P側のA点と、組電池30の正極側のB点との間を電圧印加回路60で接続し、組電池30を電源として、正極側の外部端子22Pに、電圧を印加する構成を例示した。電圧印加回路60の電源は、必ずしも組電池30である必要はなく、
図19に示すバッテリ420のように、組電池30を構成する一部の二次電池31Aでもよい。また、
図20に示すバッテリ520のように、組電池30とは別に設けられた電源回路70であってもよい。バッテリ520では、電源回路70を電源として、電圧印加回路60を介して正極側の外部端子22Pに電圧を印加する構成である。また、
図21に示すバッテリ620のように、管理装置150を電源として、管理装置150の出力ポート157から、電圧印加回路である電流制限抵抗61を介して、正極側の外部端子22Pに電圧を印加するようにしてもよい。出力ポート157は、所定レベルの電圧を出力するポートである。管理装置150は、A点の電圧を検出する場合を除いて、内部スイッチにより、出力ポート157を非出力にするとよい。尚、
図20に示す電源回路70や、
図21に示す管理装置150が本発明の「他回路」に相当する。
【0099】
(4)実施形態6において、管理装置50は、復帰制御において、バッテリ20の外部端子22P、22Nが短絡していないと判断した場合、SOCを所定値と比較して、電流遮断装置37をOPENからCLOSEに切り換えるか、否かを決定した(
図14:S135)。切換処理を実行するか否かの決定は、SOCだけでなくSOCに相関性がある情報に基づいて、行うことが出来る。例えば、二次電池31の電圧Vやバッテリ20の充放電時間Tは、SOCと相関性がある。従って、二次電池31の電圧Vやバッテリ20の充放電時間Tを所定値と比較して、切換処理を実行するか、どうかを決定してもよい。
【0100】
(5)実施形態1では、自動車1に本技術を適用した例を示した。本技術は、自動二輪車(車両の一例)に適用してもよい。
図22は、バッテリ2100を搭載した自動二輪車2000の側面図である。
図23はバッテリ2100の電気的構成を示すブロック図である。バッテリ2100は、正極側の外部端子2122Pと、負極側の外部端子2122Nを備える。バッテリ2100には、外部端子2122P、2122Nを介して、負荷2600が接続されている。負荷2600は、自動二輪車2000のエンジン2500を駆動するためのセルモータや補機類などである。バッテリ2100は、組電池2130と、電流遮断装置2137と、電流センサ2141と、を備える。組電池2130の正極は、正極側の通電路2135Pにより、正極の外部端子2122Pに接続されている。組電池2130の負極は、負極側の通電路2135Nにより、負極の外部端子2122Nに接続されている。電流センサ2141と電流遮断装置2137は、負極の通電路2135Nに配置されている。バッテリ2100は、更に、電圧検出部2145と、電圧検出部2147と、電圧印加回路2160と、組電池2130を管理する管理装置2150と、表示部2170を備えている。電圧検出部2145は、各二次電池31の電圧Vと組電池20の総電圧Evを検出する。電圧検出部2147は、2つの外部端子2122P、2122Nの電圧差を検出する。電圧印加回路2160は、電流制限抵抗2161と、スイッチ2163とを備える。電圧印加回路2160は、負極側の外部端子2122Nと電流遮断装置2137との間に位置するC点と、電流センサ2141と組電池2130の負極との間に位置するD点との間を接続している。
【0101】
管理装置2150は、CPU2151と、メモリ2153を備える。管理装置2150は、2つの外部端子2122P、2122Nの短絡を検出すると、電流遮断装置2137をOPENして電流を遮断する。電流の遮断により、バッテリ2100のダメージを抑えることが出来る。また、管理装置2150は、電流遮断装置2137のOPEN中に、電圧印加回路2160を用いて、負極側の外部端子2122Pに電圧を印加する。管理装置2150は、負極側の外部端子2122Nの電圧(C点の電圧)を検出して、検出した電圧を閾値と比較することで、2つの外部端子2122P、2122Nを短絡する短絡物の有無を判断する。管理装置1350は、短絡物なしと判断した場合、電流遮断装置2137をOPENからCLOSEに切り換える。これにより、バッテリ2100は再使用可能となる。
【0102】
自動二輪車2000は、自動四輪車に比べて、バッテリ2100の配置スペースが小さく、機器から外れたケーブルや配線が、2つの外部端子2122P、2122Nを短絡する懸念がある。自動二輪車2000が走行中に転倒した際、自動車と比較して配線などを覆うものが少ないため、配線などが損傷することによって、短絡が起こりやすいことが考えられる。自動二輪車2000に本技術を適用することで、2つの外部端子2122P、2122Nが短絡しても、バッテリ2100のダメージを抑えることが出来る。また、短絡物が除去されれば、管理装置1350が電流遮断装置2137をCLOSEからOPENに切り換えるので、ユーザが特別な作業や操作をしなくても、バッテリ2100が再使用可能となる。
【0103】
(6)実施形態8では、電気自動車1000に本技術を適用した例を示したが、駆動モータとエンジンを有するハイブリッド車両に、適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
20...バッテリ(「蓄電装置」の一例)
22P、22N...正極側の外部端子、負極側の外部端子
30...組電池
31...二次電池(「蓄電素子」の一例)
35P、35N...通電路
37...電流遮断装置
41...電流センサ
50...管理装置
60...電圧印加回路
61...電流制限抵抗(「電流制限素子」の一例)
63...スイッチ