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  • 特許-鉛蓄電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/12 20060101AFI20230411BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 4/14 20060101ALI20230411BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01M10/12 K
H01M50/463 B
H01M50/489
H01M50/466
H01M50/46
H01M4/14 Q
H01M4/62 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019550933
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037302
(87)【国際公開番号】W WO2019087683
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017211369
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢
(72)【発明者】
【氏名】京 真観
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063001(JP,A)
【文献】特開2010-170939(JP,A)
【文献】特開2016-154131(JP,A)
【文献】特開2017-033662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/06-22
H01M 50/40-497
H01M 4/14-23
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、
前記セパレータは、少なくとも負極板側に第1リブを備え、
前記負極板は、負極電極材料を含み、
前記負極電極材料は、黒鉛粒子を含み、
前記第1リブの平均高さは、0.06mm以上0.25mm以下であり、
前記第1リブの平均ピッチが、0.3mm以上10mm以下であり、
前記負極電極材料中の前記黒鉛粒子の含有量は、0.2質量%以上3質量%以下であり、
前記黒鉛粒子の平均粒子径は、5μm以上300μm以下であり、
前記セパレータが袋状であり、前記正極板を収容している、鉛蓄電池。
【請求項2】
前記セパレータは、前記正極板側に第2リブを備える、請求項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、負極板と、正極板と、負極板および正極板の間に介在するセパレータとを備える極板群と、電解液とを含む。負極板は、集電体と、負極電極材料とを含む。負極電極材料は、負極活物質、炭素材料などを含む。
【0003】
特許文献1では、負極活物質に鱗片状黒鉛を添加することが提案されている。
一方、セパレータとしては、リブを有するものが使用されることがある(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/142072号パンフレット
【文献】特開2015-216125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉛蓄電池は、部分充電状態(PSOC)と呼ばれる充電不足状態で使用されることがある。例えば、充電制御車やアイドリングストップ(IS)車では、鉛蓄電池がPSOCで使用されることになる。そのため、鉛蓄電池には、PSOC条件下でのサイクル試験において寿命性能(以下、PSOC寿命性能と言う)に優れることが求められる。
【0006】
従来から負極電極材料に黒鉛を添加すると、PSOC寿命性能や充電受入性がある程度向上することは知られているが、近年ではPSOC寿命性能のさらなる向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、
前記セパレータは、少なくとも負極板側に第1リブを備え、
前記負極板は、負極電極材料を含み、
前記負極電極材料は、黒鉛粒子を含む、鉛蓄電池に関する。
【発明の効果】
【0008】
黒鉛粒子を含む負極電極材料を用いる鉛蓄電池において、PSOC寿命性能を大きく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一側面に係る鉛蓄電池の外観と内部構造を示す、一部を切り欠いた分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液と、を備える。セパレータは、少なくとも負極板側にリブ(第1リブ)を備える。負極板は、負極電極材料を含み、負極電極材料は、黒鉛粒子を含む。
【0011】
従来、負極電極材料には、負極電極材料の導電性を高める観点から、カーボンブラック、黒鉛粒子などの導電性の炭素粒子が添加されている。しかし、黒鉛粒子を用いても、充放電時に電極反応に必要なイオンの、負極電極材料への供給や負極電極材料からの排出が抑制され、黒鉛粒子を用いることによるPSOC寿命性能の向上効果が十分に得られない場合があることが分かった。これは、黒鉛粒子の粒子径が、カーボンブラックなどに比べて大きいため、イオンが負極電極材料に供給されたり負極電極材料から排出されたりする際の壁となるためと考えられる。さらに、PSOCのような充電不足状態で継続的に使用された場合、セパレータと負極板との間の距離が狭いと、セパレータと負極板との間が局部的に過放電状態になり、セパレータと負極板との間の電解液中のイオン量が局部的に少なくなる。従って、負極電極材料に黒鉛粒子を用いる場合に、セパレータと負極板との間の距離が狭いと、負極電極材料へのイオンの供給性および負極電極材料からのイオンの排出性が大きく低下し、PSOC寿命性能の向上効果が十分に得られないと考えられる。
【0012】
本発明の上記側面によれば、負極電極材料に黒鉛粒子を用いるとともに、負極板側に第1リブを備えるセパレータを用いる。このような組合せにより、イオンの、負極電極材料への高い供給性および負極電極材料からの高い排出性を確保することができるとともに、負極電極材料中の導電性ネットワークを長期に亘り確保することができる。よって、PSOC寿命性能を大幅に向上することができる。
【0013】
より詳細に説明すると、まず、上記側面によれば、セパレータの負極板側に第1リブを設けるため、負極板近傍において電解液を確保することができる。これにより、セパレータと負極板との間の電解液中のイオン量を確保でき、さらに、充放電時の電極反応に必要なイオン交換速度を向上できる。そのため、黒鉛粒子によりイオンの供給および排出が阻害され易い場合でも、負極電極材料へのイオンの供給および負極電極材料からのイオンの排出の効率を高めて、負極電極材料におけるイオンの高い供給性および排出性を確保することができる。次に、カーボンブラックなどに比べて、黒鉛粒子は充放電時に電解液中に流出し難いため、負極電極材料中の導電ネットワークを長期に亘り確保することができる。また、第1リブにより負極板近傍における電解液の拡散性を高めることができる。これらにより、硫酸鉛の蓄積が抑制される。このようなメカニズムにより、高いPSOC寿命性能を確保することができると考えられる。
【0014】
第1リブの平均高さは、0.05mm以上であることが好ましい。この場合、負極板近傍に電解液を確保し易くなるため、イオン交換速度の向上効果、および硫酸鉛の蓄積の抑制効果をさらに高めることができる。よって、PSOC寿命性能を高める上で有利である。
【0015】
セパレータは、第1リブの平均ピッチが、0.2mm以上12mm以下である領域を有することが好ましい。この場合、負極板近傍に電解液を確保し易くなるため、イオン交換速度の向上効果、および硫酸鉛の蓄積の抑制効果をさらに高めることができる。
【0016】
黒鉛粒子の平均粒子径は、50μm以上300μm以下であることが好ましい。平均粒子径が50μm以上である場合、黒鉛の優れた電子伝導性による硫酸鉛の蓄積抑制効果がより得られ易くなる。平均粒子径が300μm以下である場合、第1リブにより、より高いイオンの供給性および排出性を確保することができる。よって、PSOC寿命性能をさらに向上することができる。
【0017】
負極電極材料中の前記黒鉛粒子の含有量は、0.2質量%以上3質量%以下であることが好ましい。この場合、高いイオンの供給性およびイオンの排出性を確保し易くなるとともに、負極電極材料中に導電性ネットワークが広がり易いため、PSOC寿命性能の向上効果をさらに高めることができる。
【0018】
セパレータは、さらに正極板側にもリブ(第2リブ)を備えることが好ましい。この場合、正極板近傍でも電解液の拡散性が高まるとともに、セパレータの酸化劣化を抑制することができるため、PSOC寿命を向上する上でより有利である。
【0019】
第1リブの平均高さは、0.30mm以下であることが好ましい。第1リブの平均高さがこのような範囲である場合、第2リブについてある程度の高さを確保し易くなるため、正極板近傍にも電解液を確保し易くなるとともに、セパレータの酸化劣化の抑制効果をさらに高めることができる。
【0020】
セパレータは、袋状であってもよい。袋状のセパレータを用いる場合、電解液が滞留し易くなるが、セパレータにリブを設けることで、電解液の拡散性を高めることができる。袋状のセパレータで正極板を収容すると、充電時に正極板から排出される硫酸が袋状セパレータの外に放出され難くなることで、硫酸の沈降による成層化を抑制する効果が高まるため、PSOC寿命性能がさらに向上する。袋状のセパレータが、負極板を収容している場合には、袋内に第1リブが形成されることで、袋内における電解液の拡散性を高め易くなるため、イオン交換速度が向上するとともに、硫酸鉛の蓄積抑制効果を高めることができる。また、正極集電体とは異なり、充放電時の負極集電体の伸びは小さいため、負極板を袋状セパレータに収容する場合には、集電体の伸びに伴うセパレータ破れが抑制されることで短絡を抑制できる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極電極材料を含む。通常、負極板は、負極集電体と負極電極材料とで構成されている。なお、負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。負極集電体として負極格子を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
【0023】
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0024】
負極電極材料は、黒鉛粒子(第1炭素質材料)を含む。さらに、負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでいる。負極電極材料は、防縮剤、黒鉛粒子以外の炭素質材料(第2炭素質材料)、硫酸バリウムなどを含んでもよく、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。なお、充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
【0025】
黒鉛粒子としては、黒鉛型の結晶構造を含む炭素質材料であればよく、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれであってもよい。黒鉛粒子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、鱗片状、薄片状などが挙げられる。鱗片状や薄片状などの扁平形状の黒鉛粒子は、負極電極材料におけるイオンの供給や排出を阻害し易いが、第1リブにより、イオン交換速度を高めることができる。そのため、このような黒鉛粒子を用いる場合でも、優れたPSOC寿命性能を確保することができる。
【0026】
黒鉛粒子の平均粒子径は、例えば、5μm以上であり、50μm以上が好ましい。黒鉛粒子の平均粒子径は、例えば、1mm以下であり、500μm以下(例えば、400μm以下)が好ましく、300μm以下がさらに好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。このようなサイズの黒鉛粒子は、負極電極材料におけるイオンの供給や排出を阻害し易いが、第1リブにより、イオン交換速度を高めることができる。よって、このようなサイズの黒鉛粒子を用いる場合でも優れたPSOC寿命性能を確保することができる。特に、平均粒子径が50μm以上300μm以下の黒鉛粒子を負極電極材料が含む場合、硫酸鉛の蓄積抑制効果を高めることができるとともに、高いイオン交換速度をさらに確保し易くなる。よって、PSOC寿命性能をさらに高めることができる。
【0027】
負極電極材料中の黒鉛粒子の含有量は、例えば、0.1質量%以上5質量%以下であり、0.2質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。黒鉛粒子の含有量がこのような範囲である場合、負極電極材料へのイオンの供給および負極電極材料からのイオンの排出が阻害されることを抑制できるとともに、負極電極材料中に導電性ネットワークが広がり易い。よって、高いPSOC寿命性能を確保する上でより有利である。
【0028】
他の炭素質材料(第2炭素質材料)としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラックなどが例示される。負極電極材料は、第2炭素質材料を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0029】
負極電極材料に含まれる黒鉛粒子の含有量、ならびに黒鉛粒子の平均粒子径は、次のようにして求めることができる。
【0030】
既化成で満充電後の鉛蓄電池を解体し、負極板を水洗及び乾燥して硫酸分を除去した後、真空乾燥(大気圧より低い圧力下で乾燥)する。次に、負極板から電極材料を採取し、粉砕する。粉砕試料5gに60質量%濃度の硝酸水溶液を30mL加え、70℃で加熱し、鉛を硝酸鉛として溶解させる。この混合物に、さらに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを10g、28質量%濃度のアンモニア水を30mL、及び水100mLを加えて、加熱を続け、可溶分を溶解させる。次いで濾過により回収した試料を、目開き1000μmのふるいにかけて補強材などのサイズが大きな成分を除去して、ふるいを通過した成分を炭素質材料として回収する。
【0031】
回収された炭素質材料を含む液体を、目開き32μmのふるいにかけ、次いで5μmのふるいにかけることで、カーボンブラック等の第2炭素質材料を主とする粒子径の小さな炭素粒子を除去する。目開き32μmおよび5μmのふるい上に残ったものを、回収し、110℃の温度で2時間乾燥させる。そして、乾燥後の炭素粒子のラマンスペクトルの1300cm-1以上1400cm-1以下の範囲に現れるピーク(Dバンド)の強度Iと1550cm-1以上1620cm-1以下の範囲に現れるピーク(Gバンド)の強度Iとの強度比I/Iが、0以上0.9以下を示す場合、得られた炭素粒子を本発明の上記側面における黒鉛粒子(第1炭素質材料)とする。
【0032】
負極電極材料中の黒鉛粒子の含有量は、上記の手順で分離した黒鉛粒子の質量を測り、この質量の5gの粉砕試料中に占める比率(質量%)を算出することにより求める。
【0033】
黒鉛粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布から求める。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置としては、(株)島津製作所製、「SALD-2000J」を用いる。黒鉛粒子の平均粒子径は、乾燥後の黒鉛粒子を水中に分散させた状態で測定する。
【0034】
黒鉛粒子の平均粒子径の算出手順について、具体的に説明すると、まず、撹拌槽に250mLのイオン交換水を入れ、乾燥後の黒鉛粒子20mgを投入し、ポンプ速度を最大にして、超音波振動を加えることで黒鉛粒子の凝集を抑制した状態とする。そして、この状態で、撹拌開始から7分後の粒子径分布を測定する。粒子径分布は、体積頻度を基準として表す。なお、攪拌開始から7分後には、粒子径分布は安定していると言える。
【0035】
SALD-2000Jを用いた測定では、粒子径分布の測定間隔は、測定粒子径範囲を対数スケールで分割した間隔である。この場合、平均粒子径は、次式で示される対数スケール上のそれぞれの平均値μを用いて、10μ(すなわち、10のμ乗)で表される。測定した粒子径の単位と、10μで表される平均一次粒子径は、単位が同じになる。例えば、測定した粒子径がμm単位であれば、10μで表される平均一次粒子径もμm単位となる。
【0036】
【数1】
【0037】
(式中、n:測定粒子径範囲の分割数、j:自然数、χ:測定対象の粒子径(χ:最大粒子径、χn+1:最小粒子径)、q:粒子径区間[χ,χj+1]における相対粒子径(差分%)をそれぞれ示す。)
【0038】
測定粒子径範囲の下限は、0.05μm以下とし、上限は、700μm以上とする。測定粒子径範囲の分割数nは、40以上とする。粒子径分布の測定は、対数スケール上において等分割した測定間隔で行なう。
【0039】
なお、本明細書中、鉛蓄電池の満充電状態とは、液式の電池の場合、25℃の水槽中で、0.2CAの電流で2.5V/セルに達するまで定電流充電を行った後、さらに0.2CAで2時間、定電流充電を行った状態である。また、制御弁式の電池の場合、満充電状態とは、25℃の気槽中で、0.2CAで、2.23V/セルの定電流定電圧充電を行い、定電圧充電時の充電電流が1mCA以下になった時点で充電を終了した状態である。
なお、本明細書中、1CAとは電池の公称容量(Ah)と同じ数値の電流値(A)である。例えば、公称容量が30Ahの電池であれば、1CAは30Aであり、1mCAは30mAである。
【0040】
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
【0041】
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
【0042】
(セパレータ)
セパレータは、微多孔膜で構成されたベース部と、ベース部の少なくとも一方の主面から突出するリブとを備えている。セパレータは、ベース部の一方の主面から突出するリブと、ベース部の他方の主面から突出するリブとを備えていてもよい。セパレータは、一方の主面から突出するリブを少なくとも備えており、このリブが負極板側に位置するように配置される。この負極板側に位置するリブを第1リブと呼ぶ。セパレータがベース部の他方の主面から突出するリブを備える場合には、このリブは、正極板側(つまり、正極板に対向するよう)に配置される。この正極板側に位置するリブを第2リブと呼ぶ。第1リブにより負極板近傍に電解液を確保して、イオン交換速度を高めることができるとともに、負極板近傍における電解液の拡散性を高めることで硫酸鉛の蓄積を抑制することができるため、PSOC寿命性能をさらに向上することができる。
【0043】
セパレータは、ポリマー材料(ただし、繊維とは異なる)で形成される。少なくともベース部は、多孔性のシートであり、多孔性のフィルムと呼ぶこともできる。セパレータは、ポリマー材料で形成されたマトリックス中に分散した充填剤(例えば、シリカなどの粒子状充填剤、および/または繊維状充填剤)を含んでもよい。セパレータは、耐酸性を有するポリマー材料で構成することが好ましい。このようなポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0044】
なお、以下に説明するベース部の平均厚み、リブの平均高さ、およびリブの平均ピッチは、上記と同様に、既化成で満充電後の鉛蓄電池から取り出して洗浄、真空乾燥(大気圧より低い圧力下で乾燥)したセパレータについて求めるものとする。
【0045】
ベース部の平均厚みは、例えば、100μm以上300μm以下であり、150μm以上250μm以下であることが好ましい。ベース部の平均厚みがこのような範囲である場合、高い充放電特性を確保しながら、第1リブおよび必要に応じて第2リブの高さを確保し易くなる。
ベース部の平均厚みは、セパレータの断面写真において、任意に選択した5箇所についてベース部の厚みを計測し、平均化することにより求められる。
【0046】
第1リブは、セパレータの、負極板と対向する側の面に形成されている。第1リブの平均高さは、0.05mm以上であることが好ましく、0.06mm以上であることがさらに好ましく、0.10mm以上としてもよい。第1リブの平均高さがこのような範囲である場合、負極板近傍に電解液を確保し易くなり、イオン交換速度の向上効果および硫酸鉛の蓄積の抑制効果をさらに高めることができる。充放電特性を確保するとともに、第2リブの高さを確保し易い観点からは、第1リブの平均高さは、例えば、0.40mm以下であり、0.30mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。セパレータにおいては、少なくとも負極板と対向する領域(好ましくは負極電極材料が存在する領域)にこのような平均高さで第1リブが形成されていることが好ましい。例えば、セパレータの負極板と対向する領域の面積の70%以上にこのような平均高さの第1リブが形成されていることが好ましい。
【0047】
なお、第1リブの高さとは、第1リブの所定の位置におけるベース部の一方の主面から第1リブの頂部までの距離を言う。ベース部の主面が平面でない場合には、セパレータを、第1リブ側を上にして平置きしたときに、ベース部の一方の主面の最も高い位置から、第1リブの所定の位置における第1リブの頂部までの距離を第1リブの高さとする。第1リブの平均高さは、ベース部の一方の主面において、第1リブの任意に選択される10箇所において計測した第1リブの高さを平均化することにより求められる。
【0048】
ベース部の一方の主面において第1リブのパターンは特に制限されず、第1リブは、ランダムに形成されていてもよく、ストライプ状、曲線状、格子状などに形成されていてもよい。電解液をより拡散し易くする観点からは、ベース部の一方の主面において、複数の第1リブがストライプ状に並ぶように形成することが好ましい。ストライプ状の第1リブの向きは特に制限されず、例えば、複数の第1リブは、負極板の高さ方向や幅方向に沿って形成してもよい。
【0049】
なお、負極板および正極板の一端部には、通常、極板群から電流を取り出すための耳部が形成されている。この耳部を上にした状態における負極板や正極板の鉛直方向を、負極板や正極板の高さ方向と言うものとする。負極板や正極板の幅方向とは、高さ方向と直交し、負極板や正極板の主面を横切る方向である。
【0050】
ストライプ状や格子状の第1リブの平均ピッチは、0.2mm以上12mm以下であることが好ましく、0.3mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。セパレータが、このような範囲の平均ピッチで第1リブが形成されている領域を含む場合、負極板近傍に電解液を確保し易くなるため、イオン交換速度の向上効果および硫酸鉛の蓄積抑制効果をさらに高めることができる。よって、PSOC寿命性能を高める上でより有利である。セパレータにおいては、負極板と対向する領域(好ましくは負極電極材料が存在する領域)にこのような平均ピッチで第1リブが形成されていることが好ましい。例えば、セパレータの負極板と対向する領域の面積の70%以上にこのような平均ピッチの第1リブが形成されていることが好ましい。セパレータの端部など、負極板と対向しない領域や負極電極材料が存在しない領域には、第1リブを形成しても形成しなくてもよく、複数の第1リブを密に(例えば、0.5mm以上5mm以下の平均ピッチで)形成してもよい。
【0051】
なお、第1リブのピッチとは、隣接する第1リブの頂部間距離(より具体的には、第1リブを横切る方向における隣接する第1リブの中心間距離)である。
第1リブの平均ピッチは、任意に選択される10箇所において計測した第1リブのピッチを平均化することにより求められる。なお、セパレータの負極板と対向しない領域または負極板の負極電極材料が存在しない領域と対向する領域に第1リブが密に形成されている場合には、この領域を除いて平均ピッチを算出すればよい。このような部分的に密に形成された第1リブの平均ピッチは、この領域について上記と同様に算出できる。
【0052】
イオン速度の向上には、特に、第1リブの平均高さおよび平均ピッチ、ならびに負極電極材料中の黒鉛粒子の含有量が大きく影響する。より高いイオン速度の向上効果を確保する観点からは、第1リブの平均高さを0.06mm以上0.25mm以下、第1リブの平均ピッチを0.3mm以上10mm以下、負極電極材料中の黒鉛粒子の含有量を0.2質量%以上3質量%以下とすることが好ましい。
【0053】
第2リブは、セパレータの、正極板と対向する側の面に形成されている。第2リブの平均高さは、例えば、0.3mm以上であり、0.4mm以上であることが好ましい。第2リブの平均高さがこのような範囲である場合、セパレータの酸化劣化を抑制し易くなるとともに、正極板近傍に電解液を確保し易くなる。高容量を確保する観点から、第2リブの平均高さは、例えば、1.0mm以下であり、0.7mm以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。セパレータが第2リブを有する場合、少なくとも正極板と対向する領域(好ましくは正極電極材料が存在する領域)にこのような平均高さで第2リブが形成されていることが好ましい。例えば、セパレータの正極板と対向する領域の面積の70%以上にこのような平均高さの第2リブが形成されていることが好ましい。
【0054】
なお、第2リブの平均高さは、第1リブの場合に準じて求められる。第2リブの高さは、第1リブの場合に準じて、第2リブの所定の位置におけるベース部の他方の主面から第2リブの頂部までの距離を言う。
【0055】
第2リブのパターンや向きは、特に制限されず、例えば、第1リブについて記載したものから選択すればよい。ストライプ状や格子状の第2リブの平均ピッチは、例えば、1mm以上15mm以下であり、5mm以上10mm以下であることが好ましい。セパレータが、このような範囲の平均ピッチで第2リブが形成されている領域を含む場合、セパレータの酸化劣化を抑制する効果がさらに高まる。セパレータにおいて、正極板と対向する領域(好ましくは正極電極材料が存在する領域)にこのような平均ピッチで第2リブが形成されていることが好ましい。例えば、セパレータの正極板と対向する領域の面積の70%以上にこのような平均ピッチの第2リブが形成されていることが好ましい。セパレータの端部など、正極板と対向しない領域や正極板の正極電極材料が存在しない領域と対向する領域には、第2リブを形成しても形成しなくてもよく、複数の第2リブを密に(例えば、0.5mm以上5mm以下の平均ピッチで)形成してもよい。
【0056】
なお、第2リブのピッチとは、隣接する第2リブの頂部間距離(より具体的には、第2リブを横切る方向における隣接する第2リブの中心間距離)である。第2リブの平均ピッチは、第1リブの平均ピッチに準じて算出できる。
【0057】
シート状のセパレータを、負極板と正極板との間に挟んでもよく、袋状のセパレータに負極板または正極板を収容することで、負極板と正極板との間にセパレータを介在させてもよい。袋状のセパレータを用いる場合には電解液が拡散しにくくなるが、第1リブや第2リブを設けることで拡散性が向上する。袋状のセパレータで正極板を収容すると、成層化が抑制されやすいため、PSOC寿命性能がさらに向上する。袋状のセパレータが、負極板を収容している場合には、第1リブにより、負極板近傍のイオン交換速度の向上効果、および硫酸鉛の蓄積の抑制効果を高め易くなるとともに、集電体の伸びに伴うセパレータ破れが抑制されるため、これによる短絡を抑制できる。
【0058】
セパレータは、例えば、造孔剤(ポリマー粉末などの固形造孔剤、および/またはオイルなどの液状造孔剤など)とポリマー材料などとを含む樹脂組成物を、シート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して、ポリマー材料のマトリックス中に細孔を形成することにより得られる。リブは、例えば、押出成形する際に形成してもよく、シート状に成形した後または造孔剤を除去した後に、リブに対応する溝を有するローラで押圧することにより形成してもよい。充填剤を用いる場合には、樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0059】
(正極板)
鉛蓄電池の正極板には、ペースト式とクラッド式がある。
ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。ペースト式正極板では、正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極集電体は、負極集電体と同様に形成すればよく、鉛または鉛合金の鋳造や、鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。
【0060】
クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを具備する。クラッド式正極板では、正極電極材料は、正極板から、チューブ、芯金、および連座を除いたものである。
【0061】
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。芯金には、Pb-Ca系合金やPb-Sb系合金を用いることが好ましい。
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
【0062】
未化成のペースト式正極板は、負極板の場合に準じて、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。その後、未化成の正極板を化成する。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、硫酸を練合することで調製される。
クラッド式正極板は、芯金が挿入されたチューブに鉛粉または、スラリー状の鉛粉を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。
【0063】
(電解液)
電解液としては、硫酸を含む水溶液が使用される。電解液は、必要に応じてゲル化させてもよい。
電解液は、必要に応じて、鉛蓄電池に利用される添加剤を含むことができる。添加剤には、例えば、金属塩(硫酸ナトリウムなどのナトリウム塩、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩など)も含まれる。
化成後で満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.10g/cm以上1.35g/cm以下である。
【0064】
図1に、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池の一例の外観を示す。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽12を具備する。電槽12内は、隔壁13により、複数のセル室14に仕切られている。各セル室14には、極板群11が1つずつ収納されている。電槽12の開口部は、負極端子16および正極端子17を具備する蓋15で閉じられる。蓋15には、セル室毎に液口栓18が設けられている。補水の際には、液口栓18を外して補水液が補給される。液口栓18は、セル室14内で発生したガスを電池外に排出する機能を有してもよい。
【0065】
極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2を収容する袋状のセパレータ4を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。電槽12の一方の端部に位置するセル室14では、複数の負極板2を並列接続する負極棚部6が貫通接続体8に接続され、複数の正極板3を並列接続する正極棚部5が正極柱7に接続されている。正極柱7は蓋15の外部の正極端子17に接続されている。電槽12の他方の端部に位置するセル室14では、負極棚部6に負極柱9が接続され、正極棚部5に貫通接続体8が接続される。負極柱9は蓋15の外部の負極端子16と接続されている。各々の貫通接続体8は、隔壁13に設けられた貫通孔を通過して、隣接するセル室14の極板群11同士を直列に接続している。
【0066】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
《鉛蓄電池A1-1~A1-34》
(1)負極板の作製
鉛粉、水、希硫酸、黒鉛粒子、カーボンブラック、および有機防縮剤を混合して、負極ペーストを得た。負極ペーストを、負極集電体としてのPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、未化成の負極板を得た。有機防縮剤には、リグニンスルホン酸ナトリウムを用いた。黒鉛粒子は、負極電極材料100質量%に含まれる含有量が、表1に示す値となるように添加量を調整して、負極ペーストに配合した。カーボンブラックおよび有機防縮剤は、それぞれ、負極電極材料100質量%に含まれる含有量が、それぞれ、0.3質量%および0.2質量%となるように、添加量を調整して、負極ペーストに配合した。黒鉛粒子の平均粒子径は、それぞれ表1に示す値とした。なお、表中の黒鉛粒子の含有量および平均粒子径は、いずれも、作製後の鉛蓄電池から、既述の手順で求められる値である。黒鉛粒子の含有量は、負極ペーストを調製する際の黒鉛粒子の添加量とほぼ同じである。黒鉛粒子の平均粒子径は、負極ペーストを調製する前の黒鉛粒子について求めた値とほぼ同じである。
【0068】
(2)正極板の作製
鉛粉と、水と、硫酸とを混練させて、正極ペーストを作製した。正極ペーストを、正極集電体としてのPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、未化成の正極板を得た。
【0069】
(3)鉛蓄電池の作製
未化成の各負極板を、ポリエチレン製の微多孔膜で形成された袋状セパレータに収容し、セル当たり未化成の負極板7枚と未化成の正極板7枚とで極板群を形成した。セパレータは、袋の外側に第1リブを、袋の内側に第2リブを有する。セパレータは、ストライプ状の複数の第1リブおよび複数の第2リブを備えており、複数の第1リブおよび複数の第2リブは、それぞれ、負極板および正極板の高さ方向に沿って形成されていた。第1リブの平均高さは、表1に示す値とし、セパレータのベース部の平均厚みは、0.2mmとした。第1リブおよび第2リブの平均高さとベース部の平均厚みの合計に相当するセパレータの総厚みは0.7mmとし、第2リブの平均高さは第1リブの平均高さおよびベース部の平均厚みに応じて変化させた。負極板に対向する領域において第1リブのピッチは、表1に示す値とし、正極板に対向する領域において第2リブの平均ピッチは、1mmとした。なお、セパレータのリブの平均高さ、ベース部の平均厚み、リブの平均ピッチは、鉛蓄電池作製前のセパレータについて求めた値であるが、作製後の鉛蓄電池から取り出したセパレータについて既述の手順で測定した値とほぼ同じである。
【0070】
極板群をポリプロピレン製の電槽に挿入し、電解液を注液して、電槽内で化成を施して、公称電圧12Vおよび公称容量が30Ah(5時間率)の液式の鉛蓄電池A1-1~A1-34を組み立てた。電解液としては、20℃における比重が1.28の硫酸水溶液を用いた。
【0071】
《鉛蓄電池B1-1》
黒鉛粒子を用いずに負極板を作製した。第1リブを有さない袋状のセパレータを用いた。これら以外は、鉛蓄電池A1-1と同様にして鉛蓄電池B1-1を作製した。
【0072】
《鉛蓄電池B1-2およびB1-3》
第1リブを有さない袋状のセパレータを用いた。黒鉛粒子の含有量、平均粒子径および平均アスペクト比は、それぞれ表1に示す値とした。これら以外は、鉛蓄電池A1-1と同様にして鉛蓄電池B1-2およびB1-3を作製した。
【0073】
《鉛蓄電池B1-4およびB1-5》
黒鉛粒子を用いずに負極板を作製した。セパレータの第1リブの平均高さ、および正極板に対向する領域における第1リブのピッチは、それぞれ、表1に示す値とした。これら以外は、鉛蓄電池A1-1と同様にして鉛蓄電池B1-4およびB1-5を作製した。
【0074】
《鉛蓄電池B2-1~B2-5》
袋状セパレータで未化成の各正極板を収容した。鉛蓄電池B2-1~B2-3では、袋状セパレータは、内側に第2リブを有する。鉛蓄電池B2-4~B2-5では、袋状セパレータは、袋の内側に第2リブを、袋の外側に第1リブを有する。これら以外は、鉛蓄電池B1-1~B1-5と同様にして、それぞれ、鉛蓄電池B2-1~B2-5を作製した。なお、
【0075】
《鉛蓄電池A2-1~A2-12》
袋状セパレータで未化成の各正極板を収容した。袋状セパレータは、袋の内側に第2リブを、袋の外側に第1リブを有する。これら以外は、鉛蓄電池A1-1~A1-4、A1-13~A1-16、およびA1-25~A1-28と同様にして、それぞれ、鉛蓄電池A2-1~A2-12を作製した。
【0076】
[評価:PSOC寿命性能]
SBA S 0101:2014に準拠して、アイドリングストップ条件で、鉛蓄電池の充放電を行った。具体的には、25℃において、下記の(a)~(c)を1サイクルとして、放電末電圧が7.2V以下になるまで繰り返し、このときのサイクル数を求めた。鉛蓄電池B1-1におけるサイクル数を100としたときの比率でPSOC寿命性能を評価した。なお、充放電時には、3600サイクル毎に40時間~48時間休止した。
(a)放電1:32Aの電流値で59秒放電する。
(b)放電2:300Aの電流値で1秒間放電する。
(c)充電:制限電流100Aおよび14.0Vの電圧で60秒間充電する。
評価結果を表1および表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1および表2に示されるように、第1リブを有さないセパレータを用いた場合、黒鉛粒子を負極電極材料に添加しても、PSOC寿命性能は、5%しか向上しない(鉛蓄電池B1-1と、B1-2およびB1-3との比較、B2-1と、B2-2およびB2-3との比較)。また、第1リブを有するセパレータを用いても、黒鉛粒子を含まない場合には、PSOC寿命性能は、5%しか向上しない(鉛蓄電池B1-1と、B1-4およびB1-5との比較、B2-1と、B2-4およびB2-5との比較)。
【0080】
それに対し、黒鉛粒子を含む負極電極材料と、第1リブを有するセパレータとを組み合わせた場合、いずれか一方を用いた場合と比較して、PSOC寿命性能が格段に向上している。具体的に説明すると、セパレータで負極板を包装した場合には15%~55%(鉛蓄電池B1-2~B1-4と、鉛蓄電池A1-1~A1-34との比較)、セパレータで正極板を包装した場合には35%~55%(鉛蓄電池B2-2~B2-4と、鉛蓄電池A2-1~A2-12との比較)もPSOC寿命性能が向上している。
【0081】
セパレータで負極板を包装した場合に比べて、正極板を包装した場合の方がより高いPSOC寿命性能が得られる。
また、黒鉛粒子の平均粒子径が50μm以上300μm以下の場合には、より高いPSOC寿命性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、制御弁式および液式の鉛蓄電池に適用可能であり、PSOC条件下で充放電される用途、例えば、ディープサイクルバッテリーやサイクルユースバッテリーとして好適に利用でき、特に、充電制御用鉛蓄電池やIS用鉛蓄電池として有用である。また、非常用やバックアップ用の電源の他、自動車もしくはバイクなどの始動用の電源として利用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5:正極棚部
6:負極棚部
7:正極柱
8:貫通接続体
9:負極柱
11:極板群
12:電槽
13:隔壁
14:セル室
15:蓋
16:負極端子
17:正極端子
18:液口栓
図1