(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】養殖用水槽内異物収集具、及び養殖用水槽内異物収集方法
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A01K63/04 F
(21)【出願番号】P 2020108519
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000140074
【氏名又は名称】株式会社羽根
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】平山 正
(72)【発明者】
【氏名】羽根 隆夫
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3160253(JP,U)
【文献】実開昭60-182769(JP,U)
【文献】実開昭51-067295(JP,U)
【文献】実開昭47-007400(JP,U)
【文献】特開2002-262709(JP,A)
【文献】特開昭57-156010(JP,A)
【文献】特開平10-000456(JP,A)
【文献】特開2015-101871(JP,A)
【文献】特許第3053793(JP,B2)
【文献】特許第3944213(JP,B2)
【文献】特開2001-259316(JP,A)
【文献】特開2003-334575(JP,A)
【文献】特開平08-140525(JP,A)
【文献】特開2009-011192(JP,A)
【文献】特開平11-127726(JP,A)
【文献】登録実用新案第3108805(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 - 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上養殖用の水槽に溜まる、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を収集する、養殖用水槽内異物収集具であって、
前記水槽内に設置した使用状態で、前記異物及び水が水平方向から入る開口を有する袋状部を備え、
前記袋状部に、前記異物が抜けずに前記水が抜ける水抜き孔を設けてな
り、
前記使用状態で、前記水槽の底板材の上面に沿う形状、又は前記水槽内の砂床の砂の表面に沿う形状の底板を備える、
養殖用水槽内異物収集具。
【請求項2】
前記底板の周縁に、前記使用状態で下方へ突出する縁板を設けてなる、
請求項
1に記載の養殖用水槽内異物収集具。
【請求項3】
前記底板には前記水抜き孔を設けない、
請求項
1又は
2に記載の養殖用水槽内異物収集具。
【請求項4】
前記使用状態で前記袋状部から上方へ突出し、鉤状部材が掛合可能な掛合部材、又は把持可能な把持部材を設けてなり、
前記掛合部材に前記鉤状部材を掛合させて持ち上げた際、又は前記把持部材を把持して持ち上げた際には、前記開口が斜め上方を向く、
請求項1~
3の何れか1項に記載の養殖用水槽内異物収集具。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の養殖用水槽内異物収集具を、
陸上養殖用の水槽内の水流に対して前記開口を正対させるように前記水槽内に配置し、又は、
前記水流に対して前記開口を斜めに対向させて前記水流を前記水槽の平面視における中央部に向けて曲げるように前記水槽内に配置し、
前記養殖用水槽内異物収集具の前記袋状部内に前記異物を収集する、
養殖用水槽内異物収集方法。
【請求項6】
前記水槽の底板材の上面は、平面視における中央部から周縁部へ向かうにしたがって下降する傾斜面であり、前記養殖用水槽内異物収集具を、前記周縁部の近傍に配置してなる、
請求項
5に記載の養殖用水槽内異物収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上養殖用の水槽に溜まる、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を収集する、養殖用水槽内異物収集具、及び養殖用水槽内異物収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の水産物需要が増大する中、世界の海面漁業生産量は頭打ちであり、水産物需要の拡大は養殖業によって支える必要がある。養殖適地の制約等から海面養殖の拡大には限界があるため、立地を選ばず、海面養殖に比べてより高い生産性を実現し得る陸上養殖に対する期待が高まっている(例えば、非特許文献1の第2頁参照)
【0003】
しかしながら、陸上養殖は、その施設コストが15年償却でも生産コストの約1/3を占めており、イニシャルコスト及びランニングコストが高額であることが最大のネックとなっている(非特許文献1の第3頁参照)。そのため、陸上養殖は、期待されているにもかかわらず、導入が十分に進んでいない状況にある。
【0004】
一方、陸上養殖において、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物が水槽内に蓄積して生息環境が悪化すると、ストレスにより前記魚介類の抗病力が低下して病気が発生しやすくなる。それにより斃死する前記魚介類の数が増えて歩留まりが低下する。
【0005】
そのため、陸上養殖システムは、前記異物を収集して除去する装置を備えている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1の実施形態2の陸上養殖システム(
図2-6)は、濾過槽2、滅菌処理部3、及び飼育槽4等を備える。飼育槽4の水槽部24内の水は、エアー配管25の空気噴出用の穴25aからのエアーの噴出により
図6の矢印γのように回転する。この回転による渦巻き状の水流により、水槽部24内の前記異物を含む汚れた水を、水槽部24の中央に設置されたサイホン27の周辺に集める。
【0007】
前記異物を含む汚れた水は、前記サイホン27の排水動作により排水され、配管32(
図2)により濾過槽2に送られる。濾過槽2で汚れの原因となる前記異物を除去し、滅菌処理部3における紫外線照射により細菌やウイルスを除去した後の水を、配管31(
図2)により飼育槽4へ供給する。
【0008】
特許文献2の陸上養殖システム(
図1-5)は、魚介類が飼育される飼育水槽1に、長手方向に沿って仕切壁16を設ける。仕切壁16で仕切られた水路17a,17b内に、吐出される水によって飼育水槽1内に水流を生じさせる複数のノズル2を設けている。各ノズル2を水流の向きの方向に沿って所定間隔で配置し、各ノズル2から吐出される水流で飼育水槽1内を移動する異物を渦流によって異物収集箇所3に集め、前記異物を異物除去装置4により飼育水槽1内から除去する。
【0009】
前記異物収集箇所3に設置された異物除去装置4(
図1-2、
図5)は、エアリフトパイプ39の上端に吐出パイプ40を側方へ突出して設け、ブロア41に接続されたエアホース42をエアリフトパイプ39の下端部に接続してなるエアリフトポンプ38によって形成される。
【0010】
ブロア41を作動させてエアリフトパイプ39内にエアが供給されると、エアリフトパイプ39内をエアが上昇する。それにより、エアリフトパイプ39内の水はエアによって押し上げられ、エアリフトパイプ39の上端の吐出パイプ40の先端から吐出される。水中の異物もエアリフトパイプ39内に吸引され、この吸引された異物は水と共に吐出パイプ40の先端から吐出される。水と共に吐出された異物を排水筒25の異物受けネット43に受けて回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3053793号公報
【文献】特許第3944213号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】「陸上養殖について」、[online]、水産庁、平成25年6月、[令和2年6月2日検索]、インターネット<URL:https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/yousyoku/arikata/pdf/4-3-1docu.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の前記陸上養殖システムにおける、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を除去する装置は、前記の通り、以下の(1)及び(2)により前記異物を除去するものである。
【0014】
(1)養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を渦巻き状の水流により、前記異物を含む汚れた水を水槽部24の中央に設置されたサイホン27の周辺に集める。
【0015】
(2)サイホン27の周辺に集めた前記異物を含む汚れた水を濾過槽2へ送り、濾過槽2で汚れの原因となる前記異物を除去する。
【0016】
特許文献1における前記異物を除去する装置の構成では、上記(1)において、前記水流を砂床の砂が流れない流速にする必要があることとも相俟って、前記異物をサイホン27の周辺に効率的に収集できない場合がある。
【0017】
その上、上記(2)において、濾過槽2で前記異物を除去するので、使用する濾過槽2が大掛かりなものになる。その上さらに、注水部21やサイホン27を備える飼育槽4も大掛かりなものになる。よって、イニシャルコスト及びランニングコストが増大する。
【0018】
特許文献2の前記陸上養殖システムにおける前記異物を除去する装置は、前記の通り、以下の(3)及び(4)により前記異物を除去するものである。
【0019】
(3)飼育水槽1に設けた仕切壁16及び複数のノズル2による水流で移動する前記異物を渦流によって異物収集箇所3に集める。
【0020】
(4)異物収集箇所3に集めた前記異物を含む水を、異物除去装置4であるエアリフトポンプ38により、エアリフトパイプ39内を押し上げて吐出パイプ40から吐出し、水と共に吐出された異物を異物受けネット43に受けて回収する。
【0021】
特許文献2における前記異物を除去する装置の構成では、上記(3)において、前記水流を砂床の砂が流れない流速にする必要があることとも相俟って、前記異物を異物除去装置4であるエアリフトポンプ38の吸込み口付近に効率的に収集できない場合がある。
【0022】
その上、上記(4)において、エアリフトポンプ38、エアリフトパイプ39、吐出パイプ40等が必要になるので、イニシャルコスト及びランニングコストが増大する。
【0023】
本発明は、イニシャルコスト及びランニングコストの増大を抑制しながら、養殖用水槽内から前記異物を効率的に除去できる養殖用水槽内異物収集具、及び養殖用水槽内異物収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願の発明者らは、陸上養殖が期待されているにもかかわらず導入が十分に進んでいない状況にあることに鑑み、イニシャルコスト及びランニングコストが嵩む大掛かりな陸上養殖システムではなく、導入しやすい小規模な陸上養殖システムにより効率的に養殖を行うための検討を行ってきた。このような検討を具体的に行って実用化を進める中で、本願の発明者らは、陸上養殖用の水槽に溜まる、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を収集する、動力を用いない簡単な構造の異物収集具を水槽内の適宜位置に設置して前記異物収集具を取り出すことにより前記異物を水槽の外部へ除去するという着想を得、実験及び試作等による具体化を進めることにより本発明を完成するに至った。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0025】
〔1〕
陸上養殖用の水槽に溜まる、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を収集する、養殖用水槽内異物収集具であって、
前記水槽内に設置した使用状態で、前記異物及び水が水平方向から入る開口を有する袋状部を備え、
前記袋状部に、前記異物が抜けずに前記水が抜ける水抜き孔を設けてなり、
前記使用状態で、前記水槽の底板材の上面に沿う形状、又は前記水槽内の砂床の砂の表面に沿う形状の底板を備える、
養殖用水槽内異物収集具。
【0027】
〔2〕
前記底板の周縁に、前記使用状態で下方へ突出する縁板を設けてなる、
〔1〕に記載の養殖用水槽内異物収集具。
【0028】
〔3〕
前記底板には前記水抜き孔を設けない、
〔1〕又は〔2〕に記載の養殖用水槽内異物収集具。
【0029】
〔4〕
前記使用状態で前記袋状部から上方へ突出し、鉤状部材が掛合可能な掛合部材、又は把持可能な把持部材を設けてなり、
前記掛合部材に前記鉤状部材を掛合させて持ち上げた際、又は前記把持部材を把持して持ち上げた際には、前記開口が斜め上方を向く、
〔1〕~〔3〕の何れかに記載の養殖用水槽内異物収集具。
【0030】
〔5〕
〔1〕~〔4〕の何れかに記載の養殖用水槽内異物収集具を、
陸上養殖用の水槽内の水流に対して前記開口を正対させるように前記水槽内に配置し、又は、
前記水流に対して前記開口を斜めに対向させて前記水流を前記水槽の平面視における中央部に向けて曲げるように前記水槽内に配置し、
前記養殖用水槽内異物収集具の前記袋状部内に前記異物を収集する、
養殖用水槽内異物収集方法。
【0031】
〔6〕
前記水槽の底板材の上面は、平面視における中央部から周縁部へ向かうにしたがって下降する傾斜面であり、前記養殖用水槽内異物収集具を、前記周縁部の近傍に配置してなる、
〔5〕に記載の養殖用水槽内異物収集方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明の養殖用水槽内異物収集具、及び養殖用水槽内異物収集方法によれば、主に以下のような作用効果を奏する。
【0033】
(1)養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物は、水流により移動する。異物収集具を水槽内に設置した使用状態で、異物収集具の袋状部には、水流で移動する前記異物と水が水平方向から入り、前記袋状部の水抜き孔から水は抜けるが前記異物は抜けない。それにより、前記袋状部内に前記異物が蓄積されるので、前記異物を効率的に収集できる。
(2)水抜き孔を設けた袋状部を備える異物収集具は、水流で移動する前記異物を前記袋状部内に蓄積し、動力を用いない簡単な構造であるので、設置する個数を増やしてもイニシャルコスト及びランニングコストが嵩まない。
(3)袋状部の開口が上方を向くように異物収集具を持ち上げると、袋状部の水抜き孔から水が抜けて異物が残るため、袋状部内の異物を廃棄することにより、養殖用水槽内から異物を容易に除去できる。
(4)前記使用状態で、養殖用水槽の底面に沿う形状、又は養殖用水槽内の砂床の砂の表面に沿う形状の底板を備えることにより、異物収集具の設置状態が安定する。
(5)前記底板の周縁に、前記使用状態で下方へ突出する縁板を設けることにより、養殖用水槽内に砂床を備える場合において、砂を囲い込んだ状態となるので、異物収集具の設置状態がより安定する。
(6)前記使用状態で袋状部から上方へ突出し、鉤状部材が掛合可能な掛合部材を設けることにより、杆体等の先に取り付けた鉤状部材に掛合部材を掛合させた状態で、異物収集具の設置及び回収を容易に行うことができる。
(7)水流に対して、異物収集具の袋状部の開口を斜めに対向させて水流を水槽の平面視における中央部に向けて曲げるように異物収集具を配置した場合、異物収集具で前記異物を収集しながら、異物収集具で収集しきれない前記異物が、水槽の平面視における中央部に向けて曲げた水流により集めやすくなる。このように効率的に集めた前記異物を収集する異物収集具をさらに配置することにより、一層効率的に前記異物を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施の形態に係る異物収集具を配置した平面視長方形状の養殖用水槽の例を示す概略平面図である。
【
図2】前記異物収集具を配置した平面視円形状の養殖用水槽の例を示す概略平面図である。
【
図3】前記異物収集具を配置した平面視角丸長方形状の養殖用水槽の例を示す概略平面図である。
【
図4】前記異物収集具を示す、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図5】養殖用水槽内に前記異物収集具を配置した使用状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図6】水流に対する前記異物収集具の配置方法を示す平面図であり、水流に対して、(a)は前記異物収集具の開口を正対させた例、(b)は前記異物収集具の開口を斜めに対向させた例を示している。
【
図7】前記異物収集具の変形例を示す、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図8】前記異物収集具の別の変形例を示す、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図9】前記異物収集具の更に別の変形例を示す、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図10】
図4の前記異物収集具に掛合部材を取り付けた例における使用状態を示す斜視図である。
【
図11】
図10の前記異物収集具の掛合部材に鉤状部材を掛合させて持ち上げた状態を示す側面図である。
【
図12】養殖用水槽の底板材の上面を傾斜面とした例を示す要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
<養殖用水層>
本発明の実施の形態に係る異物収集具1を配置する養殖用水槽Aは、例えば、
図1の概略平面図のような平面視長方形状、
図2の概略平面図のような平面視円形状、
図3の概略平面図のような平面視角丸長方形状等の適宜形状を有する。
【0037】
水槽A内で養殖する魚介類は、例えば、クルマエビやヒラメ等の砂に潜る習性を有する魚介類である。したがって、水槽A内には砂床S(
図5の要部拡大縦断面図も参照)があり、その上に水Wがある。水槽A内で養殖する魚介類に砂に潜る習性が無い場合は、砂床Sを無くしてもよい。
【0038】
水槽A内の水Wには、水流発生装置Gにより水流Fを生じさせる。水流発生装置Gは、例えば水又は空気等を水槽A内に供給することにより水流Fを発生させるものである。水流Fを発生させるのは、異物収集具1により、養殖する魚介類の排泄物及び抜け殻、並びに残餌等の異物を効率的に収集するためであるとともに、養殖する魚介類の生育を促進するためである。
【0039】
<異物収集具>
図4(a)及び(b)の斜視図、並びに
図5の要部拡大縦断面図に示すように、異物収集具1は、水槽A内に設置した使用状態Jで、前記異物及び水Wが水平方向から入る開口Oを有する袋状部Bを備える。袋状部Bは、水Wが通過する複数の水抜き孔Dを有する。水抜き孔Dは、養殖する魚介類に対応させて前記異物が通過しない大きさに設定する。異物収集具1は、水槽Aに溜まって水流Fで移動する前記異物を袋状部B内に収集する。
【0040】
異物収集具1は、対向する側板2,3、側板2,3を繋ぐアーチ状の天板4、側板2,3を繋ぎ、天板4に対向する底板5を備えるとともに、側板2,3、天板4、及び底板5の間の、開口Oの反対側の端部を塞ぐ背板6を備える。側板2,3、天板4、底板5の一部、及び背板6が、前記袋状部Bを構成する。
【0041】
異物収集具1は、金属製又は合成樹脂製である。あるいは、異物収集具1は、一部分が金属製で、残りの部分が合成樹脂製である。
図4(a)及び(b)の異物収集具1において、側板2,3、天板4、及び背板6に水抜き孔Dを設けている。このような水抜き孔Dを有する板部材は、パンチングメタルや金網により低コストで形成できる。
【0042】
異物収集具1は、使用状態Jで、砂床Sの砂の表面Mに沿う形状の底板5を備える。底板5を備えることにより、砂床S上に異物収集具1を設置した状態が安定する。底板5に水抜き孔Dを設けていないので、底板5を砂床Sの砂の表面Mに沿わせた状態で、底板5が砂の表面Mから落ち込むことがなく、砂床S上に異物収集具1を設置した状態がより安定する。更に、底板5の周縁には、使用状態Jで下方へ突出する縁板7を設けている。縁板7を設けることにより、
図5の要部拡大縦断面図に示すように砂を囲い込んだ状態となるので、砂床S上に異物収集具1を設置した状態がより一層安定する。
【0043】
使用状態Jで、異物収集具1の袋状部Bには、水流Fで移動する前記異物と水Wが水平方向から入り、袋状部Bの水抜き孔Dから水Wは抜けるが前記異物は抜けない。それにより、袋状部B内に前記異物が蓄積されるので、前記異物を効率的に収集できる。
【0044】
水抜き孔Dを設けた袋状部Bを備える異物収集具1は、水流Fで移動する前記異物を袋状部B内に蓄積し、動力を用いない簡単な構造であるので、設置する個数を増やしてもイニシャルコスト及びランニングコストが嵩まない。
【0045】
<水流に対する異物収集具の配置>
図6(a)の平面図に示すように、水流Fに対して、異物収集具1の開口Oを正対させてもよい。その場合は、開口Oを形成する垂直面Nが水流Fに直交する。
【0046】
あるいは、
図6(b)の平面図に示すように、水流Fに対して、異物収集具1の開口Oを斜めに対向させて水流Fを
図1~
図3の水槽Aの平面視における中央部(例えば、
図2の中央部C参照)に向けて曲げるようにしてもよい。その場合、開口Oを形成する垂直面Nと水流Fとの角度(鋭角Q)を例えば45°~75°として異物収集具1を水槽A内に配置するのが好ましい実施態様である。
【0047】
このように異物収集具1を配置することにより、異物収集具1で前記異物を収集しながら、異物収集具1で収集しきれない前記異物が、水槽Aの平面視における中央部に向けて曲げた水流により集めやすくなる。それにより、例えば
図1~
図3に配置した異物収集具1に加えて、それらの異物収集具1よりも前記中央部に近い適宜位置に異物収集具1を配置することにより、一層効率的に前記異物を収集することができる。
【0048】
<異物収集具の変形例>
図4(a)及び(b)の斜視図の異物収集具1に対して、
図7(a)及び(b)の斜視図の異物収集具1のように、縁板7を無くしてもよい。このような異物収集具1の構造は、水槽A内に砂床Sを設けない場合に好適であり、底板5は、水槽Aの底板材の上面E(例えば、
図5参照)に沿う。
【0049】
図4(a)及び(b)、並びに
図7(a)及び(b)の斜視図のようなアーチ状の天板4を有する異物収集具1に対して、
図8(a)及び(b)の斜視図のような山形状の天板4を有する異物収集具1としてよい。
【0050】
図4(a)及び(b)、
図7(a)及び(b)、並びに
図8(a)及び(b)の斜視図のような形状の袋状部Bを有する異物収集具1に対して、
図9(a)及び(b)の斜視図のような袋状部Bを有する異物収集具1としてもよい。
図9(a)及び(b)の斜視図の異物収集具1は、平行な天板4及び底板5が略U字状の外形を有する板であり、背板6がアーチ状である。なお、
図8、
図9などの底板5に縁板7を設けても良いことは当然である。
【0051】
<掛合部材及び把持部材>
図10の斜視図に示すように、異物収集具1に、使用状態Jで袋状部Bから上方へ突出する、例えばアイボルトである掛合部材8を設けるのがより好ましい実施態様である。掛合部材8には、
図11の側面図に示すように鉤状部材Hが掛合可能である。
【0052】
図11のように掛合部材8に鉤状部材Hを掛合させて異物収集具1を上方Lへ持ち上げた状態Kでは、袋状部Bの開口Oは斜め上方を向く。それにより、袋状部B内に収集した前記異物がこぼれない。水槽Aから異物収集具1を持ち上げて取り出すと、袋状部Bの水抜き孔Dから水Wが抜けて前記異物が残るため、袋状部B内の前記異物を廃棄することにより、水槽A内から前記異物を容易に除去できる。
【0053】
使用状態Jで袋状部Bから上方へ突出する掛合部材8に替えて、把持可能な把持部材を設けてもよい。その場合は、前記把持部材を把持して持ち上げた状態で、開口Oが斜め上方を向く。
【0054】
異物収集具1に掛合部材8を設けることにより、杆体等の先に取り付けた鉤状部材Hに掛合部材8を掛合させた状態で、異物収集具1の設置及び回収を容易に行うことができる。それにより、前記異物が溜まりやすい箇所が、水槽Aの平面視における中央部、又は前記中央部に近い位置であっても、異物収集具1の設置及び回収を非常に容易に行うことができる。
【0055】
<水槽の底板材の上面の傾斜>
図12の要部拡大縦断面図は、例えば
図2の概略平面図の平面視円形状の養殖用水槽Aを示しており、水槽Aの底板材の上面Eを傾斜面Iにしている。傾斜面Iは、平面視における中央部Cから周縁部Pへ向かうにしたがって下降する。
【0056】
このような傾斜面Iを設けることにより、周縁部Pの近傍に前記異物が集まりやすくなる。それにより、例えば
図2のように異物収集具1を周縁部Pの近傍に配置することで、前記異物を効率的に収集できる。周縁部Pの近傍に異物収集具1を配置する場合、異物収集具1の設置及び回収が容易になる。
【0057】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 異物収集具
2,3 側板
4 天板
5 底板
6 背板
7 縁板
8 掛合部材
A 水槽
B 袋状部
C 中央部
D 水抜き孔
E 水槽の底板材の上面
F 水流
G 水流発生装置
H 鉤状部材
I 傾斜面
J 使用状態
K 持ち上げた状態
L 上方
M 砂の表面
N 開口を形成する垂直面
O 開口
P 周縁部
Q 開口を形成する垂直面と水流との角度(鋭角)
S 砂床
W 水