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  • 特許-腐食性ガス排出装置及び滅菌装置 図1
  • 特許-腐食性ガス排出装置及び滅菌装置 図2
  • 特許-腐食性ガス排出装置及び滅菌装置 図3
  • 特許-腐食性ガス排出装置及び滅菌装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】腐食性ガス排出装置及び滅菌装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20230411BHJP
   B01D 53/88 20060101ALI20230411BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B01D53/86 260
B01D53/86 ZAB
B01D53/88
A61L2/20 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020521766
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015741
(87)【国際公開番号】W WO2019230209
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018101883
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 八寿雄
(72)【発明者】
【氏名】波場 久幸
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-037851(JP,A)
【文献】特開平07-265665(JP,A)
【文献】特開2002-272824(JP,A)
【文献】特開平10-257879(JP,A)
【文献】特開2014-122119(JP,A)
【文献】特開2008-212806(JP,A)
【文献】特開平07-311519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73;53/86-53/90;
53/94-53/94;53/96
A61L 2/00-2/28;11/00-12/14
A61L 9/00-9/22
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性ガス排出装置であって、
腐食性ガスを排出する真空ポンプと、
前記真空ポンプが設けられる排出配管と、
前記排出配管において前記真空ポンプの前段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第1分解触媒と、
前記排出配管において前記真空ポンプの後段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第2分解触媒と
を備え、
前記第1分解触媒と前記第2分解触媒とで異なる分解触媒を用い、
前記第2分解触媒は、前記第1分解触媒よりも高い触媒性能を有する腐食性ガス排出装置。
【請求項2】
腐食性ガス排出装置であって、
腐食性ガスを排出する真空ポンプと、
前記真空ポンプが設けられる排出配管と、
前記排出配管において前記真空ポンプの前段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第1分解触媒と、
前記排出配管において前記真空ポンプの後段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第2分解触媒と
を備え、
前記第1分解触媒及び前記第2分解触媒はそれぞれ、複数の触媒ブロック、又は、ペレット状の分解触媒により形成され、
前記第2分解触媒は、前記第1分解触媒よりも体積が大きく、
前記体積が大きいことは、前記触媒ブロックの数が多いこと、又は、前記ペレット状の分解触媒の量が多いことである腐食性ガス排出装置。
【請求項3】
前記排出配管は、前記第2分解触媒が設けられると共に他の部位よりも流路径の大きな第2チャンバ部を備える請求項1又は請求項2に記載の腐食性ガス排出装置。
【請求項4】
腐食性ガスが供給される滅菌庫と、
前記滅菌庫に接続される、請求項1又は請求項2に記載の腐食性ガス排出装置と
を備える滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腐食性ガス排出装置及び滅菌装置に関する。
本願は、2018年5月28日に日本に出願された特願2018-101883号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、オゾンを含む排水からオゾンを除去する脱オゾン装置が開示されている。このような脱オゾン装置は、流路中に設けられる真空ポンプと、真空ポンプの前段に設けられる分解触媒とを備えており、分解触媒によりオゾンが除去された排出ガスを真空ポンプにより吸引する。
【0003】
また、特許文献2には、オゾンと過酸化水素とに物品を露出させることにより物品を滅菌する滅菌装置が開示されている。このような滅菌装置は、物品が収容されるチャンバと、チャンバ内を真空とするための真空ポンプと、真空ポンプの後段に設けられるオゾン触媒(分解触媒)とを備えている。
【0004】
オゾン等の腐食性の強いガス(腐食性ガス)を排出する場合には、上述のように分解触媒を設けることで、腐食性ガスを分解する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2004-41963号公報
【文献】日本国特表2013-505797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ポンプの前段に分解触媒を設けると、ポンプの圧力損失が大きくなり、ポンプによる減圧速度に影響を与える。また、特許文献2のように、ポンプの後段に分解触媒を設けると、ポンプは、腐食性ガスと常に接触することになるため、高い耐腐食性が必要となる。
【0007】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ポンプにおける腐食を防止しつつ、ポンプの圧力損失を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の腐食性ガス排出装置は、腐食性ガスを排出するポンプと、前記ポンプが設けられる排出配管と、前記排出配管において前記ポンプの前段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第1分解触媒と、前記排出配管において前記ポンプの後段に設けられると共に前記腐食性ガスと反応する第2分解触媒とを備える。
【0009】
上記一態様の腐食性ガス排出装置において、前記排出配管は、前記第1分解触媒が設けられると共に他の部位よりも流路径の大きな第1チャンバ部を備えていてもよい。
【0010】
上記一態様の腐食性ガス排出装置において、前記第2分解触媒は、前記第1分解触媒よりも高い触媒性能を有していてもよい。
【0011】
上記一態様の腐食性ガス排出装置において、前記第2分解触媒は、前記第1分解触媒よりも体積が大きくてもよい。
【0012】
上記一態様の腐食性ガス排出装置において、前記排出配管は、前記第2分解触媒が設けられると共に他の部位よりも流路径の大きな第2チャンバ部をさらに備えていてもよい。
【0013】
本開示の一態様の滅菌装置は、腐食性ガスが供給される滅菌庫と、前記滅菌庫に接続される、上記腐食性ガス排出装置とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、真空ポンプの前段に設けられる分解触媒の量を減らしつつ、労働環境基準等により定められた腐食性ガスの基準値以下となるように分解触媒を設置できる。したがって、真空ポンプの圧力損失を減少させつつ、労働環境基準等により定められた基準値以下まで腐食性ガス濃度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る滅菌装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る滅菌装置が備える排出配管内の構成を示す模式図である。
図3】本開示の一実施形態における滅菌庫内の圧力変化を示すグラフである。
図4】本開示の一実施形態における触媒ブロックの数と、減圧速度との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示に係る滅菌装置の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の滅菌装置1は、滅菌対象物を滅菌する。図1に示すように、滅菌装置1は、滅菌庫2と、オゾン発生装置3(滅菌ガス発生装置)と、フィルタ4と、排出配管5と、真空ポンプ6と、第1分解触媒7と、第2分解触媒8とを備えている。また、排出配管5と、真空ポンプ6と、第1分解触媒7と、第2分解触媒8とは、本開示における腐食性ガス排出装置に相当する。
【0018】
滅菌庫2は、滅菌対象物を収容可能なチャンバであり、内部を密閉可能な扉を備えている。滅菌庫2には、オゾン発生装置3と、排出配管5とが接続されている。また、滅菌庫2の鉛直方向上部には、給気用の開口が設けられており、この開口にフィルタ4が設けられている。
【0019】
オゾン発生装置3は、滅菌庫2に対してオゾンガス(O、腐食性ガス)を供給する。オゾン発生装置3は、平行電極と、平行電極間に設けられる誘電体とを備える。オゾン発生装置3は、例えば、無声放電により、酸素ガスまたは乾燥空気から酸素原子を分離し、さらに酸素原子と酸素分子とを結合させることによりオゾンを発生させる。また、オゾン発生装置3と滅菌庫2との間には、バルブが設けられており、不図示の制御装置によりバルブの開閉が制御されている。
【0020】
フィルタ4は、滅菌庫2の上部開口の出口に設けられており、外気中の微粒子等を除去する。また、フィルタ4と滅菌庫2との間には、バルブが設けられており、不図示の制御装置によりバルブの開閉が制御されている。
【0021】
排出配管5は、滅菌庫2の排出口に接続される。排出配管5は、図2に示すように、第1分解触媒7及び第2分解触媒8を内部に収容している。排出配管5の流路中に真空ポンプ6が接続されている。また、排出配管5は、第1分解触媒7を収容する第1チャンバ部5aと、第2分解触媒8を収容する第2チャンバ部5bとを備えている。第1チャンバ部5a及び第2チャンバ部5bは、排出配管5における他の流路径(排出配管5における第1チャンバ部5a及び第2チャンバ部5b以外の部分の流路径)よりも拡径された部位である。排出配管5は、滅菌庫2に供給されたオゾンを含む排出ガスを外部へと案内する。また、排出配管5には、バルブが設けられており、不図示の制御装置によりバルブの開閉が制御されている。
【0022】
真空ポンプ6は、図1及び図2に示すように、排出配管5の流路中に設けられる。真空ポンプ6は、滅菌庫2内の気体を吸引して排出することにより、滅菌庫2内を50Pa程度まで減圧する。真空ポンプ6は、例えば不図示のオイルミストトラップを備える油回転ポンプである。
【0023】
第1分解触媒7及び第2分解触媒8はそれぞれ、図2に示すように、二酸化マンガンを含むハニカム構造型の複数の触媒ブロックを配列することにより形成される。第1分解触媒7は、真空ポンプ6の前段に設けられ、2個の触媒ブロックを排出ガスの流れ方向に配列している。また、第2分解触媒8は、真空ポンプ6の後段に設けられ、4個の触媒ブロックを排出ガスの流れ方向に配列している。第1分解触媒7及び第2分解触媒8は、滅菌庫2より排出される排出ガスに含まれるオゾンを分解し、酸素として排出する。また、第1分解触媒7及び第2分解触媒8の触媒ブロックの数は、日本の労働安全衛生規則等、各国に定められた屋内におけるオゾン排出濃度基準(本実施形態においては、オゾン濃度0.1ppm以下)と、触媒ブロックの分解性能とに基づいて決定される。また、第1分解触媒7は、真空ポンプ6のオゾン濃度基準に依存して決定される。真空ポンプ6のオゾン濃度基準は、オゾン排出濃度基準よりも十分に大きく、本実施形態においては、5ppm以下とされている。したがって、第1分解触媒7は、第2分解触媒8よりも触媒ブロックの数が少なく、すなわち、分解触媒の体積が小さくなるように設定される。
【0024】
続いて、本実施形態における滅菌装置1の動作を、図3を参照して説明する。
まず、滅菌装置1の制御装置は、滅菌庫2内に滅菌対象物が収容されると、排出配管5のバルブを開放し、滅菌庫2内の空気を排出する。
【0025】
そして、下記の手法で滅菌工程を行う。滅菌装置1の制御装置は、オゾン発生装置3のバルブを開放し、減圧状態の滅菌庫2に、オゾンガスを供給する。滅菌庫2内は、オゾンガスが充満した状態で一定時間保持される。滅菌装置1の制御装置は、一定時間の経過後に、滅菌庫2内にさらにオゾンガスを供給した後、排出配管5のバルブを開放し、滅菌庫2内のガスを排出し減圧状態とする。
【0026】
滅菌装置1の制御装置は、上記の滅菌工程を複数回行った後、フィルタ4を介して外気を滅菌庫2内に流入させる。滅菌装置1の制御装置は、滅菌庫2において、外気の流入、排出を複数回繰り返すエアレーション工程を行い、外気を流入させて滅菌庫2内を大気圧まで復圧させる。これにより、滅菌庫2内におけるオゾンガスが排出され、滅菌庫2の扉が開放可能となる。
【0027】
上述のような滅菌装置1における滅菌工程では、複数回にわたってオゾンガスの供給及び排出が行われる。この際、真空ポンプ6の前段に設けられる第1分解触媒7は、真空ポンプ6の吸入を妨げる圧損となりうる。
【0028】
図4のグラフは、第1分解触媒7における触媒ブロックの数量と、滅菌庫2における目標圧力への到達時間との相関を示している。なお、破線が、目標圧力が50Paの場合を示し、一点鎖線が、目標圧力が40Paの場合を示している。
【0029】
図4のグラフに示すように、第1分解触媒7の触媒ブロックの数量が多いほど、目標圧力への到達速度が遅くなる。すなわち、第1分解触媒7における触媒ブロックの数量を減らすことにより、真空ポンプ6の圧力損失が減少し、減圧速度を上昇させることができる。これにより、滅菌装置1における減圧工程や、エアレーション工程の時間を短縮することが可能であり、滅菌装置1における処理時間全体の短縮が可能である。
【0030】
また、本実施形態においては、排出配管5が第1チャンバ部5a及び第2チャンバ部5bを備えることにより、第1分解触媒7及び第2分解触媒8における触媒ブロックの、排出ガスの流れに面する表面積を増加させることができる。これにより、第1分解触媒7及び第2分解触媒8における圧力損失をより減少させることができ、真空ポンプ6の減圧速度を上昇させることができる。
【0031】
また、本実施形態においては、第1分解触媒7よりも第2分解触媒8の体積が大きく設定されている。これにより、真空ポンプ6の前段における圧力損失を最小限とすることができる。
【0032】
以上、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0033】
上記実施形態においては、第1分解触媒7及び第2分解触媒8は、複数の触媒ブロックを配列することにより形成されるが、本開示はこれに限定されない。第1分解触媒7及び第2分解触媒8として、例えばペレット状の分解触媒を排出配管5内に収容してもよい。この場合、触媒ブロックよりも量の調整が容易である。
【0034】
また、第1分解触媒7と第2分解触媒8とで異なる分解触媒を用いてもよい。この場合、例えば第2分解触媒8の触媒性能を第1分解触媒7の触媒性能よりも高めることにより、真空ポンプ6の後段において、オゾン排出基準以下までオゾン濃度を減少させることが容易となる。
【0035】
また、上記実施形態においては、滅菌装置1は、オゾンガスにより滅菌対象物を滅菌したが、本開示はこれに限定されない。滅菌装置1は、例えば過酸化水素等の腐食性ガスを用いて滅菌対象物を滅菌してもよい。また、滅菌装置1に、複数種類の腐食性ガスが供給されてもよい。
【0036】
また、腐食性ガスの種類や、真空ポンプ6の耐腐食性能によっては、第1分解触媒7の体積または触媒性能が第2分解触媒8よりも高くともよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示は、腐食性ガス排出装置及び滅菌装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 滅菌装置
2 滅菌庫
3 オゾン発生装置
4 フィルタ
5 排出配管
5a 第1チャンバ部
5b 第2チャンバ部
6 真空ポンプ
7 第1分解触媒
8 第2分解触媒
図1
図2
図3
図4