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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】水中曝気装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/22 20230101AFI20230411BHJP
【FI】
C02F3/22 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021071063
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165640
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英人
(72)【発明者】
【氏名】中西 康介
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188259(JP,A)
【文献】特開2004-188261(JP,A)
【文献】特開平08-323385(JP,A)
【文献】実公昭61-004720(JP,Y2)
【文献】特公昭56-011080(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14- 3/26
B01F 21/00-25/90
F04D 1/00-13/16
17/00-19/02
21/00-25/16
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室の上方側に設けられ、空気が流入する通気路と、
前記ポンプ室の下方側に設けられ、液体が流入する吸込口と、
前記ポンプ室に配置され、回転により前記通気路から空気を流入させるとともに、前記吸込口から液体を流入させる羽根車と、
前記ポンプ室に流入した空気および液体を外部に排出する排出路と、
前記ポンプ室が内側に形成されるケーシングと、を備え、
前記羽根車は、前記通気路と前記ポンプ室との接続口を覆うように配置される主板部と、前記主板部の前記吸込口側の下面から下方に突出する羽根部とを含み、
前記主板部には、前記通気路と前記ポンプ室とを連通する切り欠き部と、前記下面に向けて前記主板部の上面から窪むとともに、前記主板部の内周側から外周側に延びる凹状の溝部とが設けられ
前記溝部の外周側端部は、前記主板部の外周側端面まで延びており、
前記羽根車は、前記切り欠き部を介して前記通気路から前記ポンプ室に空気を流入させるとともに、前記溝部に空気を流入させて前記ケーシングと前記主板部の前記外周側端面との隙間を介して前記溝部から前記ポンプ室に空気を流入させるように構成されている、水中曝気装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記羽根車の周方向に所定の間隔で複数設けられている、請求項1に記載の水中曝気装置。
【請求項3】
前記切り欠き部および前記溝部の各々は、複数設けられ、
複数の前記切り欠き部および複数の前記溝部は、前記羽根車の周方向において、交互に配置されている、請求項1または2に記載の水中曝気装置。
【請求項4】
前記溝部の前記外周側端部には、面取り部が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【請求項5】
前記溝部の深さは、前記主板部の厚みの1/3倍以上2/3倍以下の大きさである、請求項1~のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【請求項6】
前記羽根車を支持する回転軸をさらに備え、
前記羽根車は、前記回転軸と同軸上で、かつ、前記主板部の内周側に配置されるボス部をさらに含み、
前記溝部の内周側端部は、前記ボス部まで延びている、請求項1~のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【請求項7】
前記主板部の周方向において、前記溝部の幅は、前記溝部の深さよりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【請求項8】
前記接続口は、前記ケーシングの内周側の端面に円形状に形成され、
前記ケーシングは、前記主板部を覆うように前記主板部の上方に配置され、前記主板部の前記上面と対向する円環状の環状部を含み、
平面視において、前記溝部の外周側部分は、前記環状部と重なる位置に配置されるとともに、前記溝部の内周側部分は、前記接続口と重なる位置に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【請求項9】
前記溝部は、平面視において、弧状に湾曲している、請求項1~のいずれか1項に記載の水中曝気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中曝気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中曝気装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、大気中から空気を吸引するための空気吸引用インペラと、液体を吸い込むための揚水用インペラと、1つの回転軸を介して空気吸引用インペラおよび揚水用インペラを駆動させるモータとを備えた曝気装置が開示されている。この曝気装置は、内部において液体と空気とを混合して外部の液体中に排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭56-11080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、従来より水中曝気装置の分野では、より効率的に曝気を行うために、流入させる所定の液体量に対する羽根車による空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることが望まれている。しかしながら、上記特許文献1では、流入させる所定の液体量に対する羽根車による空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることが考慮されていない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることが可能な水中曝気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における水中曝気装置は、ポンプ室の上方側に設けられ、空気が流入する通気路と、ポンプ室の下方側に設けられ、液体が流入する吸込口と、ポンプ室に配置され、回転により通気路から空気を流入させるとともに、吸込口から液体を流入させる羽根車と、ポンプ室に流入した空気および液体を外部に排出する排出路と、ポンプ室が内側に形成されるケーシングと、を備え、羽根車は、通気路とポンプ室との接続口を覆うように配置される主板部と、主板部の吸込口側の下面から下方に突出する羽根部とを含み、主板部には、通気路とポンプ室とを連通する切り欠き部と、下面に向けて主板部の上面から窪むとともに、主板部の内周側から外周側に延びる凹状の溝部とが設けられ、溝部の外周側端部は、主板部の外周側端面まで延びており、羽根車は、切り欠き部を介して通気路からポンプ室に空気を流入させるとともに、溝部に空気を流入させてケーシングと主板部の外周側端面との隙間を介して溝部からポンプ室に空気を流入させるように構成されている
【0008】
この発明の一の局面による水中曝気装置では、上記のように、羽根車の主板部に、通気路とポンプ室とを連通する切り欠き部と、下面に向けて主板部の上面から窪むとともに、主板部の内周側から外周側に延びる凹状の溝部とを設ける。これによって、切り欠き部を介してポンプ室に空気を流入させることができることに加えて、羽根車の回転時に溝部によって負圧を発生させることができるので、この負圧により大気中から通気路に効果的に空気を流入させることができる。すなわち、溝部という羽根車の形状によって空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることができる。したがって、水中曝気装置に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)を向上(増大)させることができる。また、切り欠き部に加えて、ケーシングと主板部の外周側端面との隙間を介して空気をポンプ室に流入させることができるため、水中曝気装置に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0009】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、溝部は、羽根車の周方向に所定の間隔で複数設けられている。このように構成すれば、複数の溝部によって羽根車の複数箇所で負圧を発生させることができるので、複数箇所で発生した負圧により大気中から通気路により効果的に空気を流入させることができる。したがって、水中曝気装置に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0010】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、切り欠き部および溝部の各々は、複数設けられ、複数の切り欠き部および複数の溝部は、羽根車の周方向において、交互に配置されている。このように構成すれば、羽根車の周方向に切り欠き部および溝部が交互に配置されるので、羽根車の周方向において、バランスよくポンプ室に空気を流入させるとともに、バランスよく負圧を発生させることができる。したがって、羽根車の周方向において、羽根車に対して片寄った力が作用することを抑制することができるので、羽根車を効率的に回転させることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、溝部の外周側端部には、面取り部が設けられている。このように構成すれば、面取り部により、溝部と隙間との間で、空気流路を徐々に小さくなるように形成することができる。したがって、面取り部により、空気流路の大きさの急な変化を抑制することができるので、溝部から隙間に空気が流入する際における圧力損失を、低減することができる。
【0013】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、溝部の深さは、主板部の厚みの1/3倍以上2/3倍以下の大きさである。このように構成すれば、溝部の深さが主板部の厚みの2/3倍よりも大きくなることに起因して、主板部の強度が低下することを抑制することができる。また、溝部の深さが主板部の厚みの1/3倍未満となることに起因して、溝部により発生する負圧が小さくなりすぎることを抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、羽根車を支持する回転軸をさらに備え、羽根車は、回転軸と同軸上で、かつ、主板部の内周側に配置されるボス部をさらに含み、溝部の内周側端部は、ボス部まで延びている。このように構成すれば、ボス部まで溝部の内周側端部を形成することができるので、羽根車の回転時に溝部によって大きな負圧を発生させることができる。このため、大気中から通気路により効果的に空気を流入させることができる。したがって、水中曝気装置に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0015】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、主板部の周方向において、溝部の幅は、溝部の深さよりも大きい。このように構成すれば、空気が流入する側の開口を形成する溝部の幅を、比較的大きくすることができるので、効率的に溝部内に空気を流入させることができる。
【0016】
上記ポンプ室が内側に形成されるケーシングを備える構成において、好ましくは、接続口は、ケーシングの内周側の端面に円形状に形成され、ケーシングは、主板部を覆うように主板部の上方に配置され、主板部の上面と対向する円環状の環状部を含み、平面視において、溝部の外周側部分は、環状部と重なる位置に配置されるとともに、溝部の内周側部分は、接続口と重なる位置に配置されている。このように構成すれば、溝部全体の上方から溝部内に空気を流入させるのではなく、環状部から外れた羽根車の内周側の主板部の直上から、溝部内に空気を流入させることができる。したがって、溝部内に内周側から外周側に向かう空気の流れを発生させることができるので、羽根車(溝部)の外周側の端部を介して、溝部からポンプ室に効率的に空気を流入させることができる。
【0017】
上記一の局面による水中曝気装置において、好ましくは、溝部は、平面視において、弧状に湾曲している。このように構成すれば、溝部を弧状に湾曲させることによって、溝部を直線状に形成する場合と比較して、溝部をより長く形成することができるので、より大きな範囲で負圧を発生させることができる。したがって、水中曝気装置に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態による水中曝気装置の全体構成を示した断面図である。
図2】実施形態による水中曝気装置の羽根車を上方側から示した斜視図である。
図3】実施形態による水中曝気装置の羽根車を下方側から示した斜視図である。
図4】実施形態による水中曝気装置の羽根車の平面図である。
図5図1のA部の部分拡大図である。
図6】実施例および比較例における水深と空気量との関係のグラフを示した図である。
図7】実施例および比較例における水深と空気量の関係の表を示した図である。
図8】第1変形例による羽根車の平面図である。
図9】第2変形例による羽根車の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態]
(水中曝気装置の構成)
図1図5を参照して、水中曝気装置100の実施形態について説明する。なお、各図では、上方をZ1方向により示し、下方をZ2方向により示す。また、羽根車5の周方向をR方向により示す。
【0022】
図1に示すように、水中曝気装置100は、曝気槽などの貯水領域の底面に設置され、貯水領域の曝気を行う装置である。水中曝気装置100は、貯水領域の比較的深部に設定され、深槽曝気を行うことが可能である。
【0023】
水中曝気装置100は、ポンプ室(気液混合室)20において羽根車5を回転させることにより、ポンプ室20内に負圧を発生させるように構成されている。その結果、水中曝気装置100は、曝気槽の液面上の大気中から空気を流入させるとともに、曝気槽内の液体を流入させるように構成されている。そして、水中曝気装置100は、ポンプ室20において羽根車5を回転させることより、空気および液体を混合させた後、空気および液体(気液混合体)を曝気槽内の液体中に排出するように構成されている。なお、水中曝気装置100から排出される気液混合体は、水中曝気装置100に流入する液体よりも溶存酸素量が大きくなる。
【0024】
水中曝気装置100は、通気室(筐体)1と、ガイドケーシング2と、サクションカバー3とを備えている。ガイドケーシング2は、内側に羽根車5が配置されるポンプ室20が形成されている。なお、ガイドケーシング2は、特許請求の範囲の「ケーシング」の一例である。
【0025】
また、水中曝気装置100は、回転軸(出力軸)40を含むモータ4と、羽根車5とを備えている。
【0026】
(水中曝気装置の「通気室」の構成)
通気室(筐体)1には、ポンプ室20の上方側に、空気が流入する通気路(空気室)10が設けられている。また、通気室1には、通気路10の上流側の端部に、空気を水中曝気装置100の内部に流入させる空気流入口11が設けられている。空気流入口11には、上方側から通気導管Pが接続されている。通気導管Pは、下流側の一端が空気流入口11に接続され、上流側の他端が空気を流入させることが可能なように曝気槽の液面上の大気中に配置されている。なお、通気導管Pの上流側の他端には、通気導管P内に空気を送り込むブロワ装置(送風機)が設置されてもよい。
【0027】
(水中曝気装置の「ガイドケーシング」の構成)
ガイドケーシング2は、通気室(筐体)1に対して下方側から直接取り付けられている。ガイドケーシング2には、平面視で、中央のポンプ室(気液混合室)20から放射状に延びる複数の排出路21が設けられている。排出路21は、ポンプ室20に流入して、ポンプ室20において混合された空気および液体(気液混合体)を曝気槽内の液体中に排出するための経路である。
【0028】
また、ガイドケーシング2は、ガイドケーシング2の上部(通気室1側)に環状部22を含んでいる。環状部22は、羽根車5の主板部50を覆うように主板部50の上方に配置され、主板部50の上面50bに上方から対向している。環状部22は、主板部50の上面50bと上下方向を幅方向とする僅かな隙間を隔てて配置されている(図5参照)。一例ではあるが、この隙間の大きさは、0.5mmである。
【0029】
また、ガイドケーシング2(環状部22)には、通気路(空気室)10と、ポンプ室20とを接続する接続口22aが設けられている。接続口22aは、ガイドケーシング2の内周側端面に円形状に形成された穴である。なお、円形状の接続口22aは、平面視で、羽根車5の円弧状の外縁よりも内側に配置されている。したがって、接続口22aは、羽根車5の直上に配置されている。接続口22aの中心位置は、回転軸40の回転中心軸線αと略一致している。
【0030】
(水中曝気装置の「サクションカバー」の構成)
サクションカバー3は、ガイドケーシング2に対して下方側から直接取り付けられている。サクションカバー3は、回転軸40に対する羽根車5の取り付け作業および取り外し作業の際に、ガイドケーシング2から取り外される。サクションカバー3の上方には、ポンプ室20が配置されている。サクションカバー3には、ポンプ室20の下方側に、液体が流入する吸込口30が設けられている。吸込口30は、サクションカバー3の内周側端面に円形状に形成された穴である。吸込口30は、羽根車5の直下に配置されている。吸込口30の中心位置は、回転軸40の回転中心軸線αと略一致している。
【0031】
(水中曝気装置の「回転軸を含むモータ」の構成)
回転軸40は、羽根車5を回転可能に支持している。詳細には、回転軸40の下端には、固定部材Fにより羽根車5が取り付けられている。固定部材Fとは、たとえば、ボルトなどである。なお、固定部材Fは、羽根車5のボス部52の内側に配置されている。回転軸40の回転方向(RO方向)は、平面視で時計回り方向(RO方向)である。モータ4は、固定子と、回転軸40を回転可能に支持する回転子とを有している。モータ4は、羽根車5が取り付けられた回転軸40を介して、羽根車5を回転駆動させるように構成されている。
【0032】
モータ4と、ポンプ室20(通気路10)との間には、回転軸40に沿ってメカニカルシール6aが設置されたオイル室6が設けられている。メカニカルシール6aは、ポンプ室20(通気路10)の液体がモータ4側に流入するのを防止(抑制)する機能を有している。
【0033】
(水中曝気装置の「羽根車」の構成)
図2図4に示す羽根車5は、水中曝気装置100の内部に液体および空気を流入させる機能を有している。また、羽根車5は、水中曝気装置100の内部で、液体および空気を混合する機能を有している。すなわち、羽根車5は、気液混合体を生成する機能を有している。また、羽根車5は、混合した液体および空気(気液混合体)を水中曝気装置100の外部の液体中に排出する機能を有している。
【0034】
羽根車5は、通気路10とポンプ室20との接続口22aを覆うように配置される主板部(シュラウド)50と、主板部50の吸込口30側の下面50aから下方に突出する複数(5つ)の羽根部(ベーン)51と、ボス部52とを含んでいる。
【0035】
主板部50は、水平方向に延びるとともに、概して上下方向を厚み方向とする円板状に形成されている。複数の羽根部51は、羽根車5の周方向(R方向)において、等角度間隔で配置されている。羽根部51は、下方から見て、U字状の湾曲面と、U字状の湾曲面の下端に配置された平坦面とにより形成されている。
【0036】
ボス部52は、主板部50の上面50bから上方に突出している。ボス部52は、回転軸40と同軸上で、かつ、主板部50の内周側に配置されている。ボス部52は、下方側が開口した中空の円柱状に形成されている。ボス部52の内側には、上記の通り、回転軸40に羽根車5を取り付ける固定部材Fが配置されている。
【0037】
ここで、主板部50には、複数(5つ)の切り欠き部53と、複数(5つ)の溝部54とが設けられている。
【0038】
複数の切り欠き部53は、羽根車5の周方向において、等角度間隔で配置されている。また、複数の溝部54は、羽根車5の周方向において、等角度間隔で配置されている。複数の切り欠き部53および複数の溝部54は、羽根車5の周方向において、交互に配置されている。
【0039】
(主板部の「切り欠き部」の構成)
切り欠き部53は、通気路10とポンプ室20とを連通している。切り欠き部53は、平面視で(下方から見て)、主板部50をU字状に切り欠いている。切り欠き部53は、羽根部51の半径方向に直線状に延びている。切り欠き部53の一部は、羽根部51の内側に配置されている。切り欠き部53は、羽根部51の外周側の端面において、ポンプ室20に接続されている。切り欠き部53の内周側端部53aは、ボス部52まで延びている。切り欠き部53の内周側端部53aは、平面視で半円状に形成されている。
【0040】
(主板部の「溝部」の構成)
溝部54は、主板部50の下面50aに向けて主板部50の上面50bから窪む凹状に形成されている。溝部54は、主板部50の内周側から外周側に延びている。
【0041】
溝部54の内周側端部54aは、ボス部52まで延びている。溝部54の内周側端部54aは、平面視で半円状に形成されている。溝部54の外周側端部54bは、主板部50の外周側端面50cまで延びている。溝部54の外周側端部54bには、面取り部54cが設けられている。面取り部54cは、いわゆるC面取りである。なお、面取り部を、R面取りなどの他の面取り形状としてもよい。
【0042】
溝部54は、平面視で、弧状に湾曲している。詳細には、溝部54は、平面視で、溝部54の内周側端部54aおよび外周側端部54bよりも、内周側端部54aおよび外周側端部54bの間の部分がより回転軸40の回転方向(RO方向)側に位置するように湾曲している。
【0043】
一例ではあるが、羽根車5の周方向(R方向)において、図4に示す溝部54の幅L1は、略一定である。また、羽根車5の周方向において、溝部54の幅L1は、溝部54の深さL2(図5参照)よりも大きい(L1>L2)。より具体的な一例として、羽根車5の周方向において、溝部54の幅L1は、切り欠き部53の幅L10と略等しい(L1≒L10)。
【0044】
また、一例ではあるが、図5に示す溝部54の深さL2は、主板部50の厚みL3の1/3倍以上2/3倍以下の大きさである(L3×1/3≦L2≦L3×2/3)。
【0045】
平面視において、溝部54の外周側部分は、ガイドケーシング2の環状部22と重なる位置に配置されるとともに、溝部54の内周側部分は、接続口22aと重なる位置に配置されている。すなわち、水中曝気装置100は、羽根車5の内周側の羽根車5の直上位置から空気をポンプ室20に流入させるように構成されている。
【0046】
羽根車5が回転した際に、通気路10からポンプ室20に空気が流入する経路には2つある。詳細には、羽根車5は、切り欠き部53を介して通気路10からポンプ室20に空気を流入させるとともに、通気路10から溝部54に空気を流入させて、ガイドケーシング2と主板部50の外周側端面50cとの隙間C(図5参照)を介して溝部54からポンプ室20に空気を流入させるように構成されている。
【0047】
隙間Cを介する空気の流入の詳細として、羽根車5が回転することにより、溝部54の内側には負圧が発生して、通気路10から溝部54の内側に空気が流入する。そして、溝部54の内側に流入した空気は、隙間Cを介してポンプ室20に流入する。一例ではあるが、この隙間Cの大きさは、0.5mmである。
【0048】
水中曝気装置100は、切り欠き部53および隙間Cを介して、通気路10からポンプ室20に空気を流入させることが可能であるため、切り欠き部のみからポンプ室に空気が流入するように溝部を設けずに羽根車を形成した場合よりも、水中曝気装置100の流入させる液体量に対する空気量を大きくすることができる。したがって、水中曝気装置100は、効果的に空気を取り込むことが可能である。このため、水中曝気装置100は、曝気槽内の液体中に排出する空気および液体(気液混合体)の溶存酸素量を効果的に大きくすることが可能である。
【0049】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、上記のように、羽根車5の主板部50に、通気路10とポンプ室20とを連通する切り欠き部53と、下面50aに向けて主板部50の上面50bから窪むとともに、主板部50の内周側から外周側に延びる凹状の溝部54とを設ける。これによって、切り欠き部53を介してポンプ室20に空気を流入させることができることに加えて、羽根車5の回転時に溝部54によって負圧を発生させることができるので、この負圧により大気中から通気路10に効果的に空気を流入させることができる。すなわち、溝部54という羽根車5の形状によって空気の吸込量(吸い込み圧)を向上させることができる。したがって、水中曝気装置100に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)を向上(増大)させることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、溝部54は、羽根車5の周方向に所定の間隔で複数設けられている。これによって、複数の溝部54によって羽根車5の複数箇所で負圧を発生させることができるので、複数箇所で発生した負圧により大気中から通気路10により効果的に空気を流入させることができる。したがって、水中曝気装置100に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、切り欠き部53および溝部54の各々は、複数設けられ、複数の切り欠き部53および複数の溝部54は、羽根車5の周方向において、交互に配置されている。これによって、羽根車5の周方向に切り欠き部53および溝部54が交互に配置されるので、羽根車5の周方向において、バランスよくポンプ室20に空気を流入させるとともに、バランスよく負圧を発生させることができる。したがって、羽根車5の周方向において、羽根車5に対して片寄った力が作用することを抑制することができるので、羽根車5を効率的に回転させることができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、ポンプ室20が内側に形成されるガイドケーシング2をさらに備え、溝部54の外周側端部54bは、主板部50の外周側端面50cまで延びており、羽根車5は、切り欠き部53を介して通気路10からポンプ室20に空気を流入させるとともに、溝部54に空気を流入させてガイドケーシング2と主板部50の外周側端面50cとの隙間Cを介して溝部54からポンプ室20に空気を流入させるように構成されている。これによって、切り欠き部53に加えて、ガイドケーシング2と主板部50の外周側端面50cとの隙間Cを介して空気をポンプ室20に流入させることができる。このため、水中曝気装置100に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、溝部54の外周側端部54bには、面取り部54cが設けられている。これによって、面取り部54cにより、溝部54と隙間Cとの間で、空気流路を徐々に小さくなるように形成することができる。したがって、面取り部54cにより、空気流路の大きさの急な変化を抑制することができるので、溝部54から隙間Cに空気が流入する際における圧力損失を、低減することができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、溝部54の深さL2は、主板部50の厚みL3の1/3倍以上2/3倍以下の大きさである。これによって、溝部54の深さL2が主板部50の厚みL3の2/3倍よりも大きくなることに起因して、主板部50の強度が低下することを抑制することができる。また、溝部54の深さL2が主板部50の厚みL3の1/3倍未満となることに起因して、溝部54により発生する負圧が小さくなりすぎることを抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、羽根車5を支持する回転軸40をさらに備え、羽根車5は、回転軸40と同軸上で、かつ、主板部50の内周側に配置されるボス部52をさらに含み、溝部54の内周側端部54aは、ボス部52まで延びている。これによって、ボス部52まで溝部54の内周側端部54aを形成することができるので、羽根車5の回転時に溝部54によって大きな負圧を発生させることができる。このため、大気中から通気路10により効果的に空気を流入させることができる。したがって、水中曝気装置100に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、主板部50の周方向において、溝部54の幅L1は、溝部54の深さL2よりも大きい。これによって、空気が流入する側の開口を形成する溝部54の幅を、比較的大きくすることができるので、効率的に溝部54内に空気を流入させることができる。
【0058】
本実施形態では、上記のように、接続口22aは、ガイドケーシング2の内周側の端面に円形状に形成され、ガイドケーシング2は、主板部50を覆うように主板部50の上方に配置され、主板部50の上面50bと対向する円環状の環状部22を含み、平面視において、溝部54の外周側部分は、環状部22と重なる位置に配置されるとともに、溝部54の内周側部分は、接続口22aと重なる位置に配置されている。これによって、溝部54全体の上方から溝部54内に空気を流入させるのではなく、環状部22から外れた羽根車5の内周側の主板部50の直上から、溝部54内に空気を流入させることができる。したがって、溝部54内に内周側から外周側に向かう空気の流れを発生させることができるので、羽根車5(溝部54)の外周側の端部を介して、溝部54からポンプ室20に効率的に空気を流入させることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、溝部54は、平面視において、弧状に湾曲している。これによって、溝部54を弧状に湾曲させることによって、溝部を直線状に形成する場合と比較して、溝部54をより長く形成することができるので、より大きな範囲で負圧を発生させることができる。したがって、水中曝気装置100に流入させる所定の液体量に対する空気の吸込量(吸い込み圧)をより向上させることができる。
【0060】
[実施例]
次に、図6および図7を参照して、実施例について説明する。
【0061】
実施例では、上記実施形態で説明した水中曝気装置の設置水深を、1.5[m]~4.0[m]の範囲で変化させていき、大気中に配置される通気導管の入り口部分から流入する空気量[Sm/h](空気の吸込量)を測定した。なお、実施例の水中曝気装置の運転条件として、モータへの出力値を0.75[kW]、モータの駆動周波数を60[Hz]に設定した。上記説明した通り、実施例の水中曝気装置の羽根車には、溝部および切り欠き部の両方が設けられている。
【0062】
また、比較例として、上記実施例とは異なる形状の羽根車を有する水中曝気装置の設置水深を、1.5[m]~4.0[m]の範囲で変化させていき、大気中に配置される通気導管の入り口部分から流入する空気量を測定した。比較例の水中曝気装置の運転条件は、上記実施例と同様である。また、比較例の水中曝気装置は、羽根車を除いて、実施例の水中曝気装置と同様の構成を備えている。
【0063】
比較例の水中曝気装置の羽根車には、溝部が設けられていない。比較例の水中曝気装置の羽根車は、溝部が設けられていない点を除いて、実施例の水中曝気装置の羽根車と同様の形状を有している。
【0064】
〈測定結果〉
図6および図7に示すように、いずれの設置水深でも、実施例の方が比較例よりも空気量が大きくなった。詳細には、設置水深1.5[m]では、実施例の空気量が10.9[Sm/h]となり、比較例の空気量が8.8[Sm/h]となった。設置水深2.0[m]では、実施例の空気量が10.6[Sm/h]がとなり、比較例の空気量が8.6[Sm/h]となった。設置水深2.5[m]では、実施例の空気量が8.9[Sm/h]がとなり、比較例の空気量が8.2[Sm/h]となった。設置水深3.0[m]では、実施例の空気量が7.6[Sm/h]がとなり、比較例の空気量が6.6[Sm/h]となった。設置水深3.5[m]では、実施例の空気量が6.5[Sm/h]がとなり、比較例の空気量が4.8[Sm/h]となった。設置水深4.0[m]では、実施例の空気量が5.4[Sm/h]がとなり、比較例の空気量が3.8[Sm/h]となった。
【0065】
上記の実施例および比較例の測定結果により、羽根車に対して切り欠き部に加えて溝部を設けることによって、流入する空気量が大きくなることが確認できた。また、設置水深が大きくなる程、実施例および比較例のいずれにおいても空気量が小さくなるが、実施例の方が比較例よりもより深い設置水深で、よりたくさんの空気を流入させることが可能であることが確認できた。また、設置水深2.5[m]以上において、設置水深が大きくなる程、比較例の空気量に対する実施例の空気量の増加割合[%]が、大きくなっていく傾向があることがわかった。
【0066】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0067】
たとえば、上記実施形態では、平面視で、溝部の内周側端部および外周側端部よりも、内周側端部および外周側端部の間の部分がより回転軸の回転方向(RO方向)側に位置するように、溝部を湾曲させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図8に示す羽根車205のように、平面視で、溝部254の内周側端部54aおよび外周側端部54bよりも、内周側端部54aおよび外周側端部54bの間の部分がより回転軸40の回転方向(RO方向)側とは逆側に位置するように、溝部254を湾曲させてもよい。すなわち、実施形態とは逆側に、溝部254を湾曲させてもよい。
【0068】
また、図9に示す羽根車305のように、溝部354を、羽根車305の半径方向に、直線状に延びるように形成してもよい。なお、図示しないが、溝部を、羽根車の半径方向に対して傾斜する方向に、直線状に延びるように形成してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、溝部および切り欠き部の各々を、5つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝部および切り欠き部の各々を、5つとは異なる数だけ設けてもよい。
【0070】
また、溝部の幅は、上記実施形態において説明した構成に限られず、溝部の幅を上記実施形態とは異なる幅に変更してもよい。
【0071】
また、溝部の深さは、上記実施形態において説明した構成に限られず、溝部の深さを上記実施形態とは異なる深さに変更してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、複数の切り欠き部および複数の溝部を、交互に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の切り欠き部および複数の溝部を、交互に配置しなくてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、羽根部の内側に切り欠き部を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、羽根部と切り欠き部とを別々に形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
2 ガイドケーシング(ケーシング)
5、205、305 羽根車
10 通気路
20 ポンプ室
21 排出路
22 環状部
22a 接続口
30 吸込口
40 回転軸
50 主板部
50a (主板部の)下面
50b (主板部の)上面
50c (主板部の)外周側端面
51 羽根部
52 ボス部
53 切り欠き部
54、254、354 溝部
54a (溝部の)内周側端部
54b (溝部の)外周側端部
54c 面取り部
100 水中曝気装置
C 隙間
L1 溝部の幅
L2 溝部の深さ
L3 主板部の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9