(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電力管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230411BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230411BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230411BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
H02J15/00 H
H02J15/00 G
(21)【出願番号】P 2021197840
(22)【出願日】2021-12-06
(62)【分割の表示】P 2019071279の分割
【原出願日】2019-04-03
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】高井 紀浩
(72)【発明者】
【氏名】高見 彰
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正人
(72)【発明者】
【氏名】中島 精一
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169349(JP,A)
【文献】特開2014-045636(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090365(WO,A1)
【文献】特開2017-163795(JP,A)
【文献】特開2008-125295(JP,A)
【文献】特開2017-046388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 13/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置を含む発電設備が出力する実発電電力と、前記発電設備に接続され且つ前記発電設備からのエネルギを貯蔵又は供給する負荷設備が消費する負荷電力と、を調整する電力管理システムであって、
前記太陽光発電装置に隣接して設けられ、前記太陽光発電装置が受ける日射量を測定する日射量測定装置と、
前記負荷設備のための指令を含む制御指令を出力する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記制御指令の生成に用いる情報を出力する前処理部と、
前記前処理部が出力した情報に基づいて、前記制御指令を出力する指令生成部と、を有し、
前記前処理部は、前記日射量に基づいて、前記発電設備が出力可能と予想される電力を見込み発電電力として出力する予測部を含み、
前記指令生成部は、前記見込み発電電力に基づいて、前記負荷電力を増減させる指令を含む前記制御指令を前記負荷設備に出力する負荷指令部を含み、
前記負荷指令部は、前記負荷電力を前記見込み発電電力以上とし且つ前記負荷電力と需要家の固定負荷電力との和を前記見込み発電電力と最低購入電力との和に等しくする指令を含む前記制御指令を前記負荷設備に出力
し、
前記需要家は、前記発電設備が出力する電力を消費し、
前記最低購入電力は、前記発電設備からの電力が前記発電設備に接続されている電力系統へ逆潮流しない最低の負荷である、電力管理システム。
【請求項2】
前記負荷設備は、複数の負荷設備のそれぞれであり、
前記負荷指令部は、前記複数の負荷設備のうち一部の前記負荷設備が停止状態の場合、稼働中の前記負荷設備に前記制御指令を出力する、請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記発電設備及び前記負荷設備を電力系統に接続すると共に前記電力系統へ流出する逆潮流電力を測定する電力系統接続装置を備え、
前記負荷指令部は、前記逆潮流電力と逆潮流閾値とに基づいて、前記制御指令を出力する、請求項1又は2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記逆潮流閾値は、前記実発電電力を前記発電設備において稼働中の前記太陽光発電装置の台数で除した値に応じて設定される、請求項3に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記負荷設備は、前記実発電電力を利用して水素を製造する水素製造装置及び前記実発電電力を利用して熱を発生する熱発生装置の少なくとも一方を有し、
前記制御指令は、前記水素の製造量を調整する指令及び前記熱の発生量を調整する指令の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記発電設備及び前記負荷設備を電力系統に接続すると共に前記電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、
前記指令生成部は、前記購入電力に基づいて、前記制御指令を出力する台数指令部を含み、
前記台数指令部は、前記購入電力に基づいて、稼働状態である前記太陽光発電装置の台数を決定する指令を含む前記制御指令を前記発電設備に出力する、請求項1~5のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記前処理部は、
前記発電設備が有する全ての前記太陽光発電装置の台数を、稼働中の前記太陽光発電装置の台数で除した値である係数を出力する係数部と、
前記実発電電力に前記係数を乗じることにより、補正された前記実発電電力である補正発電電力を出力する補正部と、
所定期間における前記補正発電電力を評価する評価電力を出力する評価部と、
前記補正発電電力と前記評価電力との差分である評価差分を出力する評価差分部と、を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項8】
前記評価電力は、前記補正発電電力の前記所定期間における移動平均値である、請求項7に記載の電力管理システム。
【請求項9】
前記負荷設備は、蓄電装置を有し、
前記指令生成部は、前記評価差分に基づいて、前記制御指令を出力する評価指令部を含み、
前記評価指令部は、前記補正発電電力が前記評価電力よりも大きいことを前記評価差分が示す場合に、前記蓄電装置に充電させる指令、又は、前記補正発電電力が前記評価電力よりも小さいことを前記評価差分が示す場合に、前記蓄電装置から放電させる指令を含む前記制御指令を前記蓄電装置に出力する、請求項7に記載の電力管理システム。
【請求項10】
前記負荷設備は、蓄電装置を有し、
前記発電設備及び前記負荷設備を電力系統に接続すると共に前記電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、
前記指令生成部は、前記購入電力に基づいて、前記制御指令を出力する蓄電指令部を含み、
前記蓄電指令部は、前記購入電力が充電閾値よりも小さい場合に第1蓄電指令を前記蓄電装置に出力し、又は、前記購入電力が放電閾値よりも大きい場合に第2蓄電指令を前記蓄電装置に出力し、
前記第1蓄電指令は、前記蓄電装置を第1充電速度で充電動作させた後に、前記蓄電装置を前記第1充電速度よりも遅い第2充電速度で充電動作させる指令であり、
前記第2蓄電指令は、前記蓄電装置を第1放電速度で放電動作させた後に、前記蓄電装置を前記第1放電速度よりも遅い第2放電速度で放電動作させる指令である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項11】
前記発電設備及び前記負荷設備を電力系統に接続すると共に前記電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、
前記指令生成部は、前記購入電力に基づいて、前記制御指令を出力する容量指令部を含み、
前記容量指令部は、前記購入電力が容量閾値よりも小さい場合に、前記発電設備を第1出力速度で出力動作させた後に、前記発電設備を前記第1出力速度よりも遅い第2出力速度で出力動作させる指令を含む前記制御指令を前記発電設備に出力する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項12】
前記容量指令部は、前記購入電力が前記容量閾値よりも大きい場合に、前記太陽光発電装置が発生した全ての電力を前記実発電電力として出力させる指令を含む前記制御指令を前記発電設備に出力する、請求項11に記載の電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3は、電力管理システムを開示する。これらのシステムは、太陽光発電パネルを有する発電設備及び蓄電池を備えている。例えば、特許文献1のシステムの制御部は、電力系統からの買電電力に基づいて、蓄電池に供給する充電電力及び太陽光発電パネルの発電電力を制御する。その結果、電力系統への逆潮流を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/179178号
【文献】特開2008-154334号公報
【文献】特開2004-180467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、いわゆるマイクログリッドに関する技術が検討されている。マイクログリッドとは、電源と需要家とこれらを結ぶ電力網とを含む。マイクログリッドでは、需要家の需要を電源の供給により賄う。従って、マイクログリッドでは、電力系統からの電力の購入及び供給は必須ではない。
【0005】
一方、マイクログリッドは、その運用形態に応じて、電力系統に接続されることもある。マイクログリッドにおいて発電した電力を電力系統に供給(逆潮流)することもあるし、マイクログリッドにおいて不足する電力を電力系統から受けることもある。このような構成において、負荷電力に対して発電電力が大きすぎる場合には、予定されない逆潮流が生じることもある。電力系統への逆潮流は、電力系統における需要と供給とのバランスに影響を与える。従って、電力系統への逆潮流は、厳しく管理する必要がある。
【0006】
さらに、マイクログリッドが備える電源として、太陽光発電設備が挙げられる。太陽光発電装置は、天候といった周囲環境の影響を受けやすい。つまり、発電電力は、周囲環境の影響を受けて増減することがある。このような状況にあっても、マイクログリッドにおける発電電力と負荷電力とのバランスを維持することが求められている。
【0007】
本開示は、発電電力と負荷電力とのバランスを所望の態様に管理できる電力管理システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電力管理システムは、太陽光発電装置を含む発電設備が出力する実発電電力と、発電設備に接続される負荷設備が消費する負荷電力と、を調整する電力管理システムであって、太陽光発電装置に隣接して設けられ、太陽光発電装置が受ける日射量を測定する日射量測定装置と、負荷設備のための指令を含む制御指令を出力する制御装置と、を備え、制御装置は、制御指令の生成に用いる情報を出力する前処理部と、前処理部が出力した情報に基づいて、制御指令を出力する指令生成部と、を有し、前処理部は、日射量に基づいて、発電設備が出力可能と予想される電力を見込み発電電力として出力する予測部を含み、指令生成部は、見込み発電電力に基づいて、負荷電力を増減させる指令を含む制御指令を負荷設備に出力する負荷指令部を含む。
【0009】
この電力管理システムでは、制御装置の予測部は、日射量測定装置により測定された日射量に基づいて、発電設備が出力可能と予想される電力を見込み発電電力として出力する。制御装置の指令生成部は、見込み発電電力に基づいて、負荷設備に提供される制御指令を生成する。その結果、発電設備の発電電力と負荷設備の負荷電力とのバランスを所望の態様に管理することができる。
【0010】
上記の電力管理システムの制御装置の負荷指令部は、負荷電力を見込み発電電力以上とする指令を含む制御指令を負荷設備に出力してもよい。この構成によれば、電力系統への電力の流出(逆潮流)を確実に抑制できる。
【0011】
上記の電力管理システムの負荷指令部は、負荷電力を見込み発電電力より小さくする指令を含む制御指令を負荷設備に出力してもよい。この構成によれば、電力系統への電力の流出を所望の態様に制御できる。
【0012】
上記の電力管理システムは、発電設備及び負荷設備を電力系統に接続すると共に電力系統へ流出する逆潮流電力を測定する電力系統接続装置を備え、負荷指令部は、逆潮流電力と逆潮流閾値とに基づいて、制御指令を出力してもよい。この構成によれば、電力系統への電力の流出(逆潮流)の発生を抑制できる。
【0013】
上記の電力管理システムにおいて逆潮流閾値は、実発電電力を発電設備において稼働中の太陽光発電装置の台数で除した値に応じて設定されてもよい。この設定によれば、閾値は、太陽光発電装置の一台あたりの発電電力に応じて設定される。そうすると、太陽光発電装置を一台だけ停止することによって購入電力を上昇させ得る電力が決まる。その結果、マージンを削り、閾値を下げることができる。
【0014】
上記の電力管理システムの負荷設備は、実発電電力を利用して水素を製造する水素製造装置及び実発電電力を利用して熱を発生する熱発生装置の少なくとも一方を有し、制御指令は、水素の製造量を調整する指令及び熱の発生量を調整する指令の少なくとも一方を含んでもよい。これにより、水素の製造量及び熱の発生量の少なくとも一方を増減させることによって、実発電電力と負荷電力とのバランスを精度よく維持することができる。
【0015】
上記の電力管理システムにおいて、発電設備及び負荷設備を電力系統に接続すると共に電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、指令生成部は、購入電力に基づいて、制御指令を出力する台数指令部を含み、台数指令部は、購入電力に基づいて、稼働状態である太陽光発電装置の台数を決定する指令を含む制御指令を発電設備に出力してもよい。この構成によれば、電力系統への逆潮流を確実に抑制できる。
【0016】
上記の電力管理システムの前処理部は、発電設備が有する全ての太陽光発電装置の台数を、稼働中の太陽光発電装置の台数で除した値である係数を出力する係数部と、実発電電力に係数を乗じることにより、補正された実発電電力である補正発電電力を出力する補正部と、所定期間における補正発電電力を評価する評価電力を出力する評価部と、補正発電電力と評価電力との差分である評価差分を出力する評価差分部と、を有する。これにより、発電電力を出力している太陽光発電装置の台数を考慮して補正発電電力を算出することができる。その結果、発電電力と負荷電力とのバランスをさらに良好に維持することができる。
【0017】
上記において、評価電力は、補正発電電力の所定期間における移動平均値としてよい。
【0018】
上記において、負荷設備は、蓄電装置を有し、電力管理システムの指令生成部は、評価差分に基づいて、制御指令を出力する評価指令部を含み、評価指令部は、補正発電電力が評価電力よりも大きいことを評価差分が示す場合に、蓄電装置に充電させる指令、又は、補正発電電力が評価電力よりも小さいことを評価差分が示す場合に、蓄電装置から放電させる指令を含む制御指令を蓄電装置に出力してもよい。これにより、蓄電装置の充放電により、実発電電力の平滑化を実現することができる。従って、発電電力と負荷電力とのバランスを確実に維持することができる。
【0019】
上記において負荷設備は、蓄電装置を有し、電力管理システムは、発電設備及び負荷設備を電力系統に接続すると共に電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、指令生成部は、購入電力に基づいて、制御指令を出力する蓄電指令部を含み、蓄電指令部は、購入電力が充電閾値よりも小さい場合に第1蓄電指令を蓄電装置に出力し、又は、購入電力が放電閾値よりも大きい場合に第2蓄電指令を蓄電装置に出力し、第1蓄電指令は、蓄電装置を第1充電速度で充電動作させた後に、蓄電装置を第1充電速度よりも遅い第2充電速度で充電動作させる指令であり、第2蓄電指令は、蓄電装置を第1放電速度で放電動作させた後に、蓄電装置を第1放電速度よりも遅い第2放電速度で放電動作させる指令であってもよい。この構成によれば、購入電力を好適に制御することができる。
【0020】
上記の電力管理システムは、発電設備及び負荷設備を電力系統に接続すると共に電力系統から流入する購入電力を測定する電力系統接続装置を備え、指令生成部は、購入電力に基づいて、制御指令を出力する容量指令部を含み、容量指令部は、購入電力が容量閾値よりも小さい場合に、発電設備を第1出力速度で出力動作させた後に、発電設備を第1出力速度よりも遅い第2出力速度で出力動作させる指令を含む制御指令を発電設備に出力してもよい。この構成によっても、購入電力を好適に制御することができる。
【0021】
上記の電力管理システムの容量指令部は、購入電力が容量閾値よりも大きい場合に、太陽光発電装置が発生した全ての電力を実発電電力として出力させる指令を含む制御指令を発電設備に出力してもよい。これにより、発電設備の太陽光発電装置を頻繁に再稼働させることなく、発電設備の実発電電力を最大化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の電力管理システムによれば、発電電力と負荷電力とのバランスを所望の態様に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態の電力管理システムの概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電源管理システムを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、台数制御に関し購入電力と台数閾値との関係を示す図である。
【
図5】
図5の(a)部は、容量制御に関し購入電力と容量閾値との関係を示す図である。
図5の(b)部は、容量制御に関し容量指令が示す実発電電力を示す図である。
【
図6】
図6の(a)部は、蓄電制御に関し購入電力と充電閾値との関係を示す図である。
図6の(b)部は、蓄電制御に関し充電指令が示す充電電力を示す図である。
【
図7】
図7の(a)部は、蓄電制御に関し購入電力と放電閾値との関係を示す図である。
図7の(b)部は、蓄電制御に関し放電指令が示す放電電力を示す図である。
【
図8】
図8は、制御装置が実施する動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本開示の電力管理システムを実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
<マイクログリッド>
図1に示すように、電力管理システム1は、マイクログリッド100に用いられる。マイクログリッド100は、発電設備110と負荷設備120と需要家130とこれらを接続する送電網と、を含む。マイクログリッド100では、発電設備110が出力する電力を、負荷設備120及び需要家130が消費する。以下の説明において、このような電力の供給と需要との関係を、いわゆる「地産地消」と称する。電力管理システム1は、発電設備110の発電電力と負荷設備120の負荷電力とを制御する。
【0026】
マイクログリッド100は、理想的には、発電設備110が発生する発電電力と、負荷設備120及び需要家130の負荷電力と、が等しくなるように運用する。つまり、電力管理システム1は、発電電力と負荷電力との調整を行う。電力管理システム1は、基本的に、発電電力が負荷電力を上回ることがないように、発電電力と負荷電力とを調整する。
【0027】
マイクログリッド100は、必要に応じて、電力系統200に接続されてもよい。この場合には、不足する電力を電力系統200から受けることができる。一方、マイクログリッド100から電力系統200への電力の流出(いわゆる逆潮流)は、電力系統200における電力の需要と供給とのバランスに影響を与える。従って、逆潮流は、基本的に発生させない。
【0028】
なお、マイクログリッド100は、その運用形態を柔軟に変更してもよい。マイクログリッド100は、要求される電力の全てを発電設備110によって賄ってもよいし、要求される電力の一部を電力系統200から受けてもよい。また、マイクログリッド100は、発電した全ての電力を負荷設備120及び需要家130によって消費してもよいし、発電した電力の一部を電力系統200に逆潮流させてもよい。
【0029】
図2に示すように、電源である発電設備110は、複数の発電ユニット111(太陽光発電装置)と、接続線112と、出力線113と、を備える。発電設備110は、例えば、複数台の発電ユニット111を備える。発電ユニット111の出力端は、接続線112にそれぞれ接続されている。また、接続線112には、出力線113の入力端も接続されている。従って、発電ユニット111の発電電力は、接続線112を介して出力線113の入力端に伝送され、発電設備110の出力端から送電網に出力される。発電設備110は、出力している電力に関する情報(以下「実発電電力θ1」)と、電力を出力している発電パネル114の台数に関する情報(以下「稼働台数θ2」)と、を電力管理システム1に送信する。
【0030】
発電ユニット111は、発電パネル114と、パワーコンディショナ115と、電磁開閉器116と、配線用遮断器117と、を備える。
【0031】
発電パネル114は、太陽光を受けて発生させた電力をパワーコンディショナ115に出力する。
【0032】
パワーコンディショナ115は、発電パネル114の出力及び電磁開閉器116の入力に接続されている。パワーコンディショナ115は、発電パネル114から直流の電力を受ける。パワーコンディショナ115は、当該直流の電力を所望の交流の電力に変換する。そして、パワーコンディショナ115は、交流の電力を電磁開閉器116に出力する。
【0033】
電磁開閉器116は、パワーコンディショナ115の出力及び配線用遮断器117の入力に接続されている。電磁開閉器116は、電磁接触器(Electromagnetic Contactor: MC)を利用してパワーコンディショナ115から配線用遮断器117への電力の提供及び停止を制御する。この電力の提供及び停止の制御は、電力管理システム1の制御指令(台数指令φ2)に基づく。換言すると、電磁開閉器116は、発電パネル114が発生させた電力を、負荷側に提供するか否かの制御を行う。例えば、負荷側に電力を供給するとき、電磁開閉器116は、閉状態とされる。一方、負荷側に電力を供給しないとき、電磁開閉器116は、開状態とされる。例えば、発電設備110の出力電力を増加させる場合には、閉状態の電磁開閉器116の数を増やす。一方、発電設備110の出力電力を減少させる場合には、閉状態の電磁開閉器116の数を減らす。
【0034】
配線用遮断器117(Molded Case Circuit Breaker; MCCB)は、複数の電磁開閉器116のそれぞれに接続されている。いわゆるブレーカである配線用遮断器117は、負荷側である負荷設備120及び需要家130の送電網に過電流が発生した場合に、発電パネル114からの電力供給を遮断する。
【0035】
再び
図1を参照する。負荷設備120は、発電設備110に接続されている。負荷設備120は、発電設備110から受けた電力を利用して、所望の動作を行う。負荷設備120は、負荷電力を示す情報(以下「負荷電力θ3」)を電力管理システム1へ送信する。なお、需要家130の負荷電力に関する情報は、負荷電力θ4として電力管理システム1へ送信される。負荷設備120は、蓄電装置121と、水素製造装置122と、熱発生装置123と、を有している。
【0036】
蓄電装置121は、発電設備110に接続されている。蓄電装置121は、発電設備110により発電された電力を充放電する。蓄電装置121は、電力管理システム1の制御指令(蓄電指令φ4、評価指令φ5)を受信し、当該制御指令により充放電を行う。蓄電装置121は、例えば定置型の蓄電装置である。蓄電装置121は、例えばリチウムイオン電池(LiB)である。
【0037】
水素製造装置122は、発電設備110により発電された電力によって水素を製造する。水素製造装置122は、例えば水を電気分解することにより水素を製造する水電解装置と、製造された水素を貯蔵する貯蔵装置と、を有している。水素製造装置122は、電力管理システム1の制御指令(負荷指令φ1)を受信し、当該制御指令により水素の製造量を増減する。水素製造装置122により製造された水素は、例えば燃料電池車V又は燃料電池発電装置B等へ供給される。水素製造装置122により製造された水素は、例えば他のエネルギキャリアCに転換及び貯蔵されてもよい。
【0038】
熱発生装置123は、発電設備110により発電された電力によって熱を発生する。熱発生装置123は、例えば電気ボイラである。熱発生装置123は、例えば水を加熱することにより水蒸気を生成する。熱発生装置123は、電力管理システム1の制御指令(負荷指令φ1)を受信し、当該制御指令により熱の発生量を増減する。熱発生装置123により生成された水蒸気は、例えば熱として乾燥設備Wへ供給される。熱発生装置123により生成された水蒸気は、バイオ燃料製造装置等へ供給されてもよい。
【0039】
このように、負荷設備120は、蓄電装置121、水素製造装置122及び熱発生装置123によって、発電設備110により発電された電力のエネルギを変換し、変換されたエネルギを貯蔵又は供給する。
【0040】
<電力管理システム>
電力管理システム1は、日射量測定装置2と、電力系統接続装置3と、制御装置4と、を有する。
【0041】
日射量測定装置2は、発電パネル114に隣接して設けられている。日射量測定装置2は、発電パネル114に照射される日射量を測定する。日射量測定装置2は、例えば熱電素子又は光電素子を用いて日射量を電気指令に変換する全天日射計である。日射量測定装置2は、例えば日射量を連続的に測定する。日射量測定装置2は、日射量を示すデータ(以下「日射量θ5」)を制御装置4へ送信する。日射量測定装置2は、複数の発電パネル114に対して1台設けられてもよいし、発電パネル114ごとに設けられていてもよい。
【0042】
電力系統接続装置3は、電力系統200とのインターフェースである。電力系統接続装置3は、発電設備110と負荷設備120との間の送電線に設けられている。電力系統接続装置3は、電力系統200から電力の提供を受け入れると共に、電力系統200へ電力を流す。電力系統接続装置3は、接続部3aと、逆潮流測定部3bと、購入電力測定部3cと、を有する。
【0043】
接続部3aは、発電設備110と負荷設備120との間の送電線に設けられている。接続部3aは、発電設備110からの電力を受ける入力端と、電力系統200からの電力を受ける入力端と、負荷設備120へ電力を出力する出力端と、電力系統200へ電力を出力する出力端と、を含む。
【0044】
逆潮流測定部3bは、電力系統200へ電力を出力する出力端に接続されている。逆潮流測定部3bは、発電設備110から電力系統200への逆潮流の電力を測定する。逆潮流測定部3bは、逆潮流の電力を連続的に測定する。逆潮流測定部3bは、逆潮流の電力のデータ(以下「逆潮流電力θ6」)を制御装置4に送信する。逆潮流測定部3bは、例えば電力計である。
【0045】
購入電力測定部3cは、電力系統200からの電力を受ける入力端に接続されている。購入電力測定部3cは、電力系統200からの購入電力を測定する。購入電力測定部3cは、購入電力を連続的に測定する。購入電力測定部3cは、購入電力のデータ(以下「購入電力θ7」)を制御装置4へ送信する。購入電力測定部3cは、例えば電力計である。
【0046】
制御装置4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(ReadOnlyMemory)、及びRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとにより構成されたコンピュータである。制御装置4は、発電設備110及び負荷設備120を制御する制御指令を生成する。
【0047】
図3に示すように、制御装置4は、機能構成要素として、前処理部10と、指令生成部20と、記憶部30と、を有する。前処理部10は、マイクログリッド100を構成する装置や設備から、必要な生データを取得する。次に、前処理部10は、生データに対して所望の演算処理を行い、処理データを生成する。そして、前処理部10は、処理データを指令生成部20に出力する。指令生成部20は、処理データを利用して、マイクログリッド100を構成する装置や設備のための制御指令を生成する。そして、指令生成部20は、制御指令を各装置及び設備に出力する。
【0048】
前処理部10は、予測部11と、係数部12と、補正部13と、評価部14と、評価差分部15と、を有する。
【0049】
予測部11は、日射量測定装置2から日射量θ5を受ける。予測部11は、日射量θ5に基づいて、発電設備110が出力可能と予想される電力を見込み発電電力θ8として出力する。そして、予測部11は、見込み発電電力θ8を、指令生成部20に出力する。予測部11は、日射量θ5及び大気温度に基づいて見込み発電電力θ8を得る。予測部11は、太陽光の入射角に関する日射強度係数、又は、大気温度に関する温度補正係数を用いて、見込み発電電力θ8を補正してもよい。日射強度係数及び温度補正係数は、必要に応じて設定することができる。
【0050】
ところで、逆潮流の発生を制御する分散型の発電設備110においては、実際の発電電力だけ監視していても、余剰電力がどの程度であるかを判断することはできない。なぜならば、逆潮流を防止する閾値(逆潮流閾値)を用いて、発電設備110の実発電電力θ1を制御しているためである。そこで、日射量θ5、発電パネル114の緒元値及び大気温度を用いて、日射量θ5を測定したときの発電電力の最大能力を発電能力指標(見込み発電電力θ8)として算出する。見込み発電電力θ8をインデックスとし、負荷設備120への制御指令φとすることにより、発電設備110に対する「地産地消制御」を実現することができる。例えば、一般のソーラパネルの出力は、モジュール温度、入射角、日射強度によって規定されている。従って、日射量θ5を測定したときの大気温度、日射強度(日射量θ5)がわかれば、簡易的に発電能力を算出することができる。なお、発電能力の算出においては、太陽の入射角補正、パネル温度に基づく補正を行ってもよい。また、経験的に実機の発電量と比較することで補正係数を決定してもよい。発電設備110は、発電ユニット111の数などに様々なバリエーションがあり得る。このような多様なバリエーションを有する発電設備110であっても、基本的には上記の手法によって発電能力を算出することができる。また、太陽光の入射角度によって、実際の発電量と算出した発電量とにはずれが生じる場合もある。その場合には、補正係数などを用いて適宜補正してよい。
【0051】
なお、見込み発電電力θ8とは、日射量θ5を測定したとき(以下、「基準時」という)に発電設備110が出力可能と予想したものであってもよい。また、見込み発電電力θ8とは、日射量θ5を測定したときから所定時間の経過後に発電設備110が出力可能と予想したものであってもよい。ここでいう「所定時間」とは、基準時から経過した時間のことを意味する。
【0052】
ところで、発電パネル114は、天候の影響を受けやすい。例えば、太陽光が雲に遮られると、発電パネル114の出力は著しく低下する。制御装置4は、この天候変化に起因する出力の変動を緩和するための制御指令を生成する。後述する逆潮流防止のための台数制御では、逆潮流を発生させない最低購入電力の変動に対して、稼働台数を増減させる台数指令φ2を出力する。晴天の場合、発電電力は比較的安定している。しかし、現実には、非常に速くかつ大きな繰り返しの発電量変動が発生する。例えば、発電量の変動における最大量は発電定格の50%以上70%以下の範囲を数秒で変動することもありえる。その結果、発電ユニット111が全台停止となるケースが多々発生することもありえる。
【0053】
そこで、発電設備110の発電量の移動平均値と実発電電力θ1の差を蓄電装置121の充放電で補てんする。その結果、発電量の平滑化を行うことができる。なお、この制御の目的は、発電変動を平滑化することが目的ではなく、購入電力θ7が契約レンジを逸脱しない制御を容易に実行することである。ただし、発電設備110が台数制御を行う場合には、実発電電力θ1の単純な移動平均値を基準とすることは適当でない。なぜならば、後に詳述するように、実発電電力θ1の変化は天候だけでなく台数制御の影響も受け得るためである。そこで、電力管理システム1では、台数制御稼働における、発電量の平滑化に好適に適用可能な移動平均値の算出手法を提供する。この算出は、係数部12と、補正部13と、評価部14と、評価差分部15と、指令生成部20と、により行われる。
【0054】
本開示における発電量の移動平均とは、単純な発電量の瞬時値の移動平均ではなく、稼働中の発電ユニット111の台数に応じた移動平均である。発電電力を平滑化する機能は、一時的な日照度の変化による発電量の変化に相当する分を、蓄電装置121からの充放電により、補てんする。その結果、購入電力θ7の変動が抑制されるので、稼働台数の変化が抑制される。ところが、台数制御によって稼働台数を減少させると、発電量も減少する。これを放電で補てんすると、購入電力θ7が台数減に見合った分を上昇できなくなることがある。その結果、台数制御の意図した動きと反することになる。そこで平滑化する機能の基準となる発電量移動平均値は、常に稼働台数の影響を演算する。その結果、本来の台数制御を好適に実行することができる。なお、この手法は、台数制御だけでなく、連続出力制御により、逆潮流防止を行う場合も同様に考慮してもよい。
【0055】
係数部12は、発電設備110から発電パネル114のうち電力を出力している(稼働している)発電パネル114の稼働台数θ2を受ける。また、係数部12は、制御装置4の記憶部30から、発電設備110が有する全ての発電パネル114の全台数θ9を受ける。次に、係数部12は、全台数θ9を稼働台数θ2で除算することにより、補正係数θ11を得る(θ11=θ9/θ2)。そして、係数部12は、補正係数θ11を補正部13に出力する。
【0056】
補正部13は、係数部12から補正係数θ11を受ける。また、補正部13は、発電設備110から実発電電力θ1を受ける。補正部13は、実発電電力θ1に補正係数θ11を乗算することにより、補正発電電力θ12を得る(θ12=θ1×θ11)。そして、補正部13は、補正発電電力θ12を記憶部30に出力する。
【0057】
評価部14は、記憶部30から所定期間に含まれる複数の補正発電電力θ12を受ける。評価部14は、複数の補正発電電力θ12を用いて、評価電力としての移動平均電力θ13を算出する。つまり、評価部14は、補正発電電力θ12の移動平均を算出する。そして、評価部14は、移動平均電力θ13を評価差分部15に出力する。なお、評価部14は、移動平均とは別の手法に基づく値を評価値として出力してもよい。例えば、評価部14は、補正発電電力θ12にフィルタ(例えば、一次遅れフィルタ)を適用した値を評価値として出力してもよい。また、評価部14は、補正発電電力θ12の単純平均を評価値として出力してもよい。
【0058】
評価差分部15は、評価部14から移動平均電力θ13を受ける。また、評価差分部15は、記憶部30又は補正部13から最新の補正発電電力θ12を受ける。評価差分部15は、最新の補正発電電力θ12と移動平均電力θ13との平均差分θ14(評価差分)を得る。そして、評価差分部15は、処理データとしての平均差分θ14を指令生成部20に出力する。なお、平均差分θ14は、最新の補正発電電力θ12から移動平均電力θ13を減算した値であってもよい。
【0059】
指令生成部20は、前処理部10及び電力系統接続装置3から受けたデータに基づいて、制御指令φを生成する。指令生成部20は、制御指令φを、発電設備110、負荷設備120に出力する。指令生成部20は、負荷指令部21と、台数指令部22と、容量指令部23と、蓄電指令部24と、評価指令部25と、を有する。
【0060】
<負荷指令部>
負荷指令部21は、負荷設備120のための負荷指令φ1を生成する。負荷指令部21は、前処理部10から見込み発電電力θ8を受ける。負荷指令部21は、見込み発電電力θ8に基づいて、制御指令φとしての負荷指令φ1を生成する。そして、負荷指令部21は、負荷指令φ1を負荷設備120に出力する。
【0061】
このような負荷制御によれば、発電設備110の余剰電力を最小にすることができる。具体的には、日射量θ5から発電設備110が発電可能な見込み発電電力θ8を予測する。そして、見込み発電電力θ8に見合うように、負荷設備120を稼働させることにより、マイクログリッド100内の負荷電力を適切に変化させることが可能になる。つまり、発電利用率を上げることができる。換言すると、「日射量θ5」に見合った「地消」を実現できる。「地消」が増えると、購入電力θ7も上昇する。その結果、購入電力θ7の上昇に見合った発電ユニット111の稼働台数が増加するので「地産地消」が達成される。
【0062】
負荷指令部21は、見込み発電電力θ8を用いて、負荷指令φ1を算出する。負荷指令φ1は、負荷設備120に消費すべき値として要求される要求負荷電力θ3dである。購入電力θ7が逆潮流しない最低の負荷を、最低購入電力θ7minとして設定する。そして、下記式(1)を用いて、負荷指令φ1としての要求負荷電力θ3dを算出する。式(1)において、見込み発電電力θ8、最低購入電力θ7minは、既知の値である。従って、下記式(1)を満たすように、要求負荷電力θ3dを決めることができる。なお、式(1)は、需要家130の負荷電力θ4を固定負荷電力θ4cとして含んでもよい。需要家130は、制御指令φを受け付けないので、固定負荷電力θ4cは想定される固定値である。
見込み発電電力θ8+最低購入電力θ7min=要求負荷電力θ3d+固定負荷電力θ4c…(1)
【0063】
ここで、最低購入電力θ7minの設定値に応じて、逆潮流を許さない運用と、逆潮流を許す運用と、を選択してよい。逆潮流を許さない場合には、最低購入電力θ7minを正の数値に設定する。このとき、固定負荷電力θ4cを無視し、見込み発電電力θ8及び要求負荷電力θ3dの大小関係に注目すると、下記式となる。つまり、逆潮流を許さない場合とは、要求負荷電力θ3dを見込み発電電力θ8以上とすると言い換えてもよい。
見込み発電電力θ8≦要求負荷電力θ3d…(2)
【0064】
一方、逆潮流を許す場合には、最低購入電力θ7minを負の数値に設定する。このとき、固定負荷電力θ4cを無視し、見込み発電電力θ8及び要求負荷電力θ3dの大小関係に注目すると、下記式となる。つまり、逆潮流を許す場合とは、要求負荷電力θ3dを見込み発電電力θ8より小さくすると言い換えてもよい。
見込み発電電力θ8>要求負荷電力θ3d…(3)
【0065】
負荷指令φ1は、要求負荷電力θ3dそのものであってもよい。また、負荷指令φ1は、1ステップ前の要求負荷電力θ3dとの差分であってもよい。例えば、当該差分の符号が正であった場合には、負荷電力を増加させる指令となる。負荷増加指令は、負荷設備120の負荷電力θ3を増加させる。負荷増加指令は、蓄電装置121を充電させる指令(充電指令)、水素製造装置122による水素の製造量を増加させる指令(水素増加指令)、及び熱発生装置123による熱の発生量を増加させる指令(熱増加指令)の少なくとも一つを含む。逆に、当該差分の符号が負であった場合には、負荷電力を減少させる指令となる。負荷減少指令は、負荷設備120の負荷電力θ3を減少させる。負荷減少指令は、蓄電装置121を放電させる指令(放電指令)、水素製造装置122による水素の製造量を減少させる指令(水素減少指令)、及び熱発生装置123による熱の発生量を減少させる指令(熱減少指令)の少なくとも一つを含む。
【0066】
なお、負荷制御において、負荷配分の基本的な考え方は以下のとおりである。まず、再エネルギ転換設備である負荷設備120は、熱発生装置123と水素製造装置122とを規定する。負荷設備120は、負荷指令φ1としての正負デマンド・レスポンス指令により稼働される。正負デマンド・レスポンス(負荷指令φ1)を受け付けない負荷は、固定負荷とする。見込み発電電力θ8に対し、固定負荷を想定固定値とし、負荷設備120に対する負荷指令φ1は、マイクログリッド100への電力系統200からの購入電力θ7が逆潮流しない最低負荷になるように負荷設備120への負荷指令φ1を決定する。また、すべての負荷設備120が常に稼働状態にあるとは限らない。例えば、一部の負荷設備120が停止状態の場合は、稼働中の負荷設備120への負荷指令φ1に加算する。以上のように設定することで、見込み発電電力θ8が高い場合には、負荷設備120を高稼働状態とすることが可能となる。その結果、一時的に購入電力θ7が上昇する。しかし、台数制御により稼働台数が増加する。従って、発電電力の「地産地消」が実現される。
【0067】
さらに、負荷指令部21は、逆潮流電力θ6と逆潮流閾値とを用いて負荷指令φ1を負荷設備120に出力してもよい。ここで、逆潮流閾値は、実発電電力θ1を発電設備110において稼働中の発電パネル114の台数θ2で除した値(θ1/θ2)に応じて設定されてもよい。この設定によれば、閾値は、発電パネル114の一台あたりの発電電力に応じて設定される。そうすると、発電パネル114を一台だけ停止することによって購入電力を上昇させ得る電力が決まる。その結果、マージンを削り、閾値を下げることができる。
【0068】
また、逆潮流閾値は、発電設備110において稼働中の発電ユニット111の台数に応じて設定されてもよい。この場合には、既設系統から常にゼロキロワット以上の電力を購入している状態において、逆潮流閾値の下限値をゼロキロワット以上としてもよい。さらに、発電設備110の実発電電力θ1がゼロキロワットであるとして、グリッド内の最低平均負荷相当電力を上限としたものであってもよい。
【0069】
<台数指令部>
台数指令部22は、発電設備110の台数制御を行う。台数制御における発電設備110の実発電電力θ1は、電力を出力する発電ユニット111の数によって制御する。つまり、台数制御では、電力を出力する発電ユニット111の数を制御することにより、電力のバランスを保つ。
【0070】
例えば、発電設備110の出力を100%にする場合には、全ての発電ユニット111から電力を出力させる。例えば、発電設備110の出力を50%にする場合には、半分の発電ユニット111から電力を出力させる。つまり、個々の発電ユニット111に注目すると、発電ユニット111から電力を全て出力する、又は電力を全く出力しない、のいずれかである。このような制御には、発電ユニット111が有する電磁開閉器116を利用する。従って、台数指令部22が出力する台数指令φ2とは、稼働させる(電力を出力する)発電ユニット111の数に関する情報を含む。なお、台数指令φ2は、稼働させない(電力を出力しない)発電ユニット111の数に関する情報としてもよい。
【0071】
台数指令部22は、発電設備110のための台数指令φ2を出力する。台数指令部22は、購入電力測定部3cから購入電力θ7を受ける。台数指令部22は、購入電力θ7に基づいて、台数指令φ2を出力する。そして、台数指令部22は、台数指令φ2を発電設備110の電磁開閉器116に出力する。台数指令φ2は、発電設備110の電磁開閉器116に提供される。例えば、台数指令φ2は、所定数の電磁開閉器116を開状態とし、残りの電磁開閉器116を閉じる状態とする。
【0072】
図4に示すように、台数指令部22は、購入電力θ7といくつかの台数閾値T7a、T7b、T7cとを比較する。購入電力θ7が台数閾値T7aより大きいとき(マーカM1a)、台数指令部22は、稼働台数を増やすための指令を出力する。購入電力θ7が台数閾値T7a以下であり且つ台数閾値T7bより大きいとき(マーカM1b)、台数指令部22は、稼働台数を維持するための指令を出力する。購入電力θ7が台数閾値T7b以下であり且つ台数閾値T7cより大きいとき(マーカM1c)、台数指令部22は、稼働台数を減らすための台数指令φ2を出力する。さらに、購入電力θ7が台数閾値T7c以下であるとき(マーカM1d)、台数指令部22は、稼働台数をゼロとする指令を出力する。
【0073】
要するに、上記の台数制御は、分散型の発電設備における逆潮流防止制御である。分散型の発電設備110は、小型のパワーコンディショナ115を複数台含む。発電設備110は、パワーコンディショナ115の出力を交流終電盤に集める。そして、発電設備110は、変圧器を経由させてマイクログリッド100内へ交流電力として供給する。購入電力θ7が台数閾値T7bより小さいとき、稼働中のパワーコンディショナ115を所定数停止させる。また、購入電力θ7が十分に高いとき(台数閾値T7a以上)、停止中のパワーコンディショナ115を所定数稼働させる。このような台数制御により、自動停止されたパワーコンディショナ115は、一定の時間が経過したのちに、待機状態とされる。待機状態とは、台数指令φ2に応じて、停止から稼働に移行可能な状態である。なお、パワーコンディショナ115の数は、数十台(例えば40台程度)としてよい。複数台のパワーコンディショナ115の全てに対して、起動停止回数が均等になるように、台数指令φ2を生成する。なお、購入電力θ7が極低(台数閾値T7c以下)となった場合は、一時的にパワーコンディショナ115の全てを停止させる台数指令φ2を出力する。その結果、逆潮流を防止できる。
【0074】
<容量指令部>
上述したように、台数制御では、発電設備110から出力する電力は、電力を出力する発電ユニット111の数(稼働台数)に応じていた。つまり、台数制御では、マイクログリッド100内の発電電力と負荷電力とのバランスを取るために、発電ユニット111の稼働台数を制御している。この場合、発電の利用効率の観点からすると、台数制御だけでは十分でない場合も生じ得る。一方、電力管理システム1では、発電の利用効率の観点については、上述した負荷制御を行うことにより、いわゆる「地産」に見合った「地消」を実現しているので、利用効率の向上を担保している。そして、容量制御では、発電設備110から出力する電力は、個々の発電ユニット111における出力割合に応じる。つまり、容量制御では、個々の発電ユニット111における出力割合を制御することにより、電力のバランスを保つ。
【0075】
例えば、発電設備110の出力を100%にする場合には、全ての発電ユニット111の出力を100%にする。例えば、発電設備110の出力を50%にする場合には、全ての発電ユニット111の出力を50%にする。このような制御には、パワーコンディショナ115の負荷抑制機能を利用する。従って、容量指令部23が出力する容量指令φ3とは、パワーコンディショナ115の負荷抑制機能に関する情報を含む。
【0076】
容量指令部23は、発電設備110のための制御指令φとして容量指令φ3を生成する。容量指令部23は、購入電力測定部3cから購入電力θ7を受ける。容量指令部23は、購入電力θ7に基づいて、容量指令φ3を生成する。そして、容量指令部23は、容量指令φ3をパワーコンディショナ115に出力する。容量指令部23は、購入電力θ7と購入電力θ7の最低設定値である容量閾値T7dとを用いて、容量指令φ3を出力する。
【0077】
容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値T7dより大きい場合に、全ての発電ユニット111の出力を100%とする指令を出力する。発電ユニット111の出力が100%である状態とは、パワーコンディショナ115をその定格最大値に設定することと同じ意味である。
【0078】
容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値T7dより小さい場合に、全ての発電ユニット111の出力を所定の値に抑制する指令を出力する。発電ユニット111の出力は、購入電力θ7を最低設定値(容量閾値T7d)に近づけるという要件を満たすように設定される。
【0079】
ここで、発電ユニット111の出力を抑制するとき、容量指令部23は、発電設備110の出力履歴が以下の態様となる容量指令φ3を出力する。
図5に示すように、容量指令φ3は、購入電力θ7(グラフG5a)が容量閾値T7dよりも小さい場合に、発電設備110を第1出力速度で出力動作させた後に、発電設備110を第1出力速度よりも遅い第2出力速度で出力動作させる。換言すると、容量指令部23は、まず、購入電力θ7が容量閾値T7dよりも小さい場合に、実発電電力θ1(グラフG5b)を第1出力期間PT1で第1出力電力PP1から第2出力電力PP2まで変化させる。次に、容量指令部23は、実発電電力θ1を第2出力期間PT2で第2出力電力PP2から第1出力電力PP1まで変化させる。ここで、第1出力期間PT1は、第2出力期間PT2よりも短い。
【0080】
具体的には、
図5の(a)部に示すように、容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値T7dより小さくなると(時間PR1)、発電設備110の出力をステップ状に減少させる指令(線分PL7a)を発電設備110に出力する。より詳細には、容量指令部23は、第1出力電力PP1から第2出力電力PP2まで極めて短時間(第1出力期間PT1)で変化させる指令を発電設備110に出力する。この変化に応じて、購入電力θ7は上昇を始める。容量指令部23は第2出力電力PP2を維持する指令(線分PL7b)を発電設備110に出力する。この第2出力電力PP2を維持する期間は、所定の設定期間としてもよいし、購入電力θ7が容量閾値T7dより大きくなるまでとしてもよい。例えば、容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値T7dよりも大きくなったとき(時間PR2)、発電設備110の実発電電力θ1を徐々に増加させる指令(線分PL7c)を発電設備110に出力する。この時間に対する出力の増加割合(第2出力速度)は、第1出力電力PP1から第2出力電力PP2まで減少させるときの時間に対する出力の減少割合(第1出力速度)よりも小さい。換言すると、容量指令部23は、第1出力期間PT1よりも長い第2出力期間PT2を要して第2出力電力PP2から第1出力電力PP1まで復帰させる指令を発電設備110に提供する。
【0081】
なお、第1出力電力PP1まで復帰させている期間において、再び購入電力θ7が容量閾値T7dより小さくなることもあり得る。この場合には、再び購入電力θ7が容量閾値T7dより小さくなった時点(時間PR3)で、実発電電力θ1を瞬間的に第3出力電力PP3まで減少させる指令(線分PL7d)を発電設備110に出力する。このとき、電力の減少量は、現時点の電力に対して第1出力電力PP1と第2出力電力PP2との差分を加えたものとしてよい。この期間以降は、グラフL7Aと、グラフL7Bとを足し合わせた指令(線分PL7e)を発電設備110に出力する。グラフL7A、グラフL7Bはそれぞれ容量閾値が下限を超過したときの補正放電指令を示す。
【0082】
<蓄電指令部>
蓄電指令部24は、蓄電装置121のための蓄電指令φ4を生成する。蓄電指令部24は、購入電力測定部3cから購入電力θ7を受ける。蓄電指令部24は、購入電力θ7に基づいて、蓄電指令φ4を生成する。そして、蓄電指令部24は、蓄電指令φ4を蓄電装置121に出力する。蓄電指令部24は、購入電力θ7と充電閾値T7eと放電閾値T7fとを用いて、蓄電指令φ4を出力する。
【0083】
購入電力θ7が小さい場合とは、実発電電力θ1が大きい場合である。上記の台数制御及び容量制御では、実発電電力θ1が大きい場合には、発電設備110の出力を抑制していた。蓄電指令部24は、発電設備110の出力を抑制することなく、余剰電力を蓄電装置121に充電させることにより、電力のバランスを保つ。
【0084】
図6に示すように、蓄電指令部24は、購入電力θ7(グラフG6a)が充電閾値T7eより小さい場合に、蓄電装置121に対して余剰電力を充電させる指令を出力する。蓄電装置121の充電電力は、購入電力θ7を充電閾値T7eに近づけるという要件を満たすように設定される。
【0085】
ここで、蓄電装置121の充電電力を制御するとき、蓄電指令部24は、蓄電装置121の充電電力の履歴が以下の態様となる第1蓄電指令φ4(グラフG6b)を出力する。第1蓄電指令φ4は、蓄電装置121を第1充電速度で充電動作させた後に、蓄電装置121を第1充電速度よりも遅い第2充電速度で充電動作させる。換言すると、蓄電指令部24は、充電電力を第1充電期間CT1で第1充電電力CP1から第2充電電力CP2まで変化させる。次に、蓄電指令部24は、充電電力を第2充電期間CT2で第2充電電力CP2から第1充電電力CP1まで変化させる。ここで、第1充電期間CT1は、第2充電期間CT2よりも短い。
【0086】
具体的には、蓄電指令部24は、購入電力θ7が充電閾値T7eより小さくなると(時間CR1)、蓄電装置121の充電電力をステップ状に減少させる指令(線分CL7a)を蓄電装置121に出力する。より詳細には、蓄電指令部24は、第1充電電力CP1から第2充電電力CP2まで極めて短時間(第1充電期間CT1)で変化させる指令を蓄電装置121に出力する。この変化に応じて、購入電力θ7は上昇を始める。蓄電指令部24は、第2充電電力CP2を維持する指令(線分CL7b)を蓄電装置121に出力する。蓄電指令部24は、購入電力θ7が充電閾値T7eよりも大きくなったとき(時間CR2)、蓄電装置121の充電電力を徐々に増加させる指令(線分CL7c)を蓄電装置121に出力する。この時間に対する充電電力の増加割合(第2充電速度)は、第1充電電力CP1から第2充電電力CP2まで減少させるときの時間に対する出力の減少割合(第1充電速度)よりも小さい。換言すると、蓄電指令部24は、第1充電期間CT1よりも長い第2充電期間CT2を要して第2充電電力CP2から第1充電電力CP1まで復帰させる指令を蓄電装置121に提供する。
【0087】
なお、第1充電電力CP1まで復帰させている期間において、再び購入電力θ7が充電閾値T7eより小さくなることもあり得る。この場合には、再び購入電力θ7が充電閾値T7eより小さくなった時点(時間CR3)で、充電電力を瞬間的に第3充電電力CP3まで減少させる指令(線分CL7d)を発電設備110に出力する。このとき、電力の減少量は、現時点の電力に対して第1充電電力CP1と第2充電電力CP2との差分を加えたものとしてよい。この期間以降は、グラフCL7Aと、グラフCL7Bとを足し合わせた指令(線分CL7e)を蓄電装置121に出力する。
【0088】
図7に示すように、蓄電指令部24は、購入電力θ7(グラフG7a)が放電閾値T7fより大きい場合に、蓄電装置121に対して蓄電装置121に蓄えられた電力を放電させる指令(グラフG7b)を出力する。蓄電装置121の放電電力は、購入電力θ7を放電閾値T7fに近づけるという要件を満たすように設定される。
【0089】
ここで、蓄電装置121の放電電力を制御するとき、蓄電指令部24は、蓄電装置121の放電電力の履歴が以下の態様となる第2蓄電指令φ4を出力する。第2蓄電指令φ4は、蓄電装置121を第1放電速度で放電動作させた後に、蓄電装置121を第1放電速度よりも遅い第2放電速度で放電動作させる。換言すると、蓄電指令部24は、放電電力を第1放電期間DT1で第1放電電力DP1から第2放電電力DP2まで変化させる。次に、蓄電指令部24は、放電電力を第2放電期間DT2で第2放電電力DP2から第1放電電力DP1まで変化させる。ここで、第1放電期間DT1は、第2放電期間DT2よりも短い。
【0090】
具体的には、蓄電指令部24は、購入電力θ7が放電閾値T7fより大きくなると(時間DR1)、蓄電装置121の放電電力をステップ状に増加させる。より詳細には、蓄電指令部24は、第1放電電力DP1から第2放電電力DP2まで極めて短時間(第1出力期間PT1)で変化させる指令(線分DL7a)を蓄電装置121に出力する。この変化に応じて、購入電力θ7は下降を始める。蓄電指令部24は、第2放電電力DP2を維持する指令(線分DL7b)を蓄電装置121に出力する。蓄電指令部24は、購入電力θ7が放電閾値T7fよりも小さくなったとき(時間DR2)、蓄電装置121の放電電力を徐々に減少させる指令(線分DL7c)を蓄電装置121に出力する。この時間に対する放電電力の減少割合(第2放電速度)は、第1放電電力DP1から第2放電電力DP2まで増加させるときの時間に対する出力の増加割合(第1放電速度)よりも小さい。換言すると、蓄電指令部24は、第1放電期間DT1よりも長い第2放電期間DT2を要して第2放電電力DP2から第1放電電力DP1まで復帰させる指令を蓄電装置121に提供する。
【0091】
なお、第1放電電力DP1まで復帰させている期間において、再び購入電力θ7が放電閾値T7fより大きくなることもあり得る。この場合には、再び購入電力θ7が放電閾値T7fより大きくなった時点(時間DR3)で、放電電力を瞬間的に第3放電電力DP3まで増加させる指令(線分DL7d)を発電設備110に出力する。このとき、電力の増加量は、現時点の電力に対して第1充電電力CP1と第2充電電力CP2との差分を加えたものとしてよい。この期間以降は、グラフDL7Aと、グラフDL7Bとを足し合わせた指令を蓄電装置121に出力する。
【0092】
<評価指令部>
評価指令部25は、蓄電装置121のための制御指令φを生成する。評価指令部25は、前処理部10から平均差分θ14を受ける。評価指令部25は、平均差分θ14に基づいて、評価指令φ5を生成する。そして、評価指令部25は、評価指令φ5を蓄電装置121に出力する。
【0093】
評価指令部25は、平均差分θ14がゼロ以上である場合には、蓄電装置121の充電により平均差分θ14を補填させる指令を蓄電装置121に出力する。評価指令部25は、平均差分θ14がゼロよりも小さい場合には、蓄電装置121の放電により平均差分θ14を補填させる指令を蓄電装置121に出力する。その結果、発電設備110における発電電力の出力が補正移動平均に近づくこととなり、例えば逆潮流の電力が一時的に所定値よりも大きくなることが確実に抑制される。なお、補正差分がゼロである場合には、蓄電装置121の充電量はゼロである。つまり、補正差分がゼロである場合には、蓄電装置121を充放電させない。
【0094】
<制御装置の処理>
次に、制御装置4において実行される処理の流れについて説明する。
図8に示すように、制御装置4の処理は、第1処理としての工程S10と、第2処理としての工程S20と、第3処理としての工程S30と、を含む。第1処理は、負荷指令φ1を出力する。第2処理は、台数指令φ2、容量指令φ3及び蓄電指令φ4の少なくとも一つを出力する。第3処理は、評価指令φ5を出力する。
【0095】
制御装置4の処理は、マイクログリッド100の運用の態様に応じて、適宜選択及び組み合わせてよい。つまり、制御装置4は、第1処理のみ行ってもよい。また、制御装置4は、第1処理及び第2処理を行ってもよいし、第1処理及び第3処理を行ってもよい。さらに、制御装置4は、第1処理、第2処理及び第3処理の全てを行ってもよい。
【0096】
<作用効果>
ところで、従来の太陽光発電装置を含む発電設備は、発電設備の出力の全量を電力系統へ逆潮流させる、または、発電設備を含むマイクログリッド内で発電設備の出力の全量を消費していた。また、近年は、太陽光発電装置を含む発電設備の数が増加している。その結果、新規な発電設備と電力系統との系統連系及び逆潮流が難しくなりつつある。さらに、電力系統の安定化の観点から、発電設備に対して強制的に出力抑制(全遮断)を要求されることも生じる。このような場合には、従来の発電設備を全量発電(100%の稼働)とするか、全停止(0%の稼働)の何れかとするしかなかった。
【0097】
このような課題に対し、本開示の電力管理システム1は、太陽光発電設備を含むマイクログリッド100において、逆潮流が許されない、または、逆潮流電力量を抑制される場合に、発電電力を有効利用する制御を行う。
【0098】
具体的には、本開示の電力管理システム1は、発電ユニット111を含む発電設備110が出力する実発電電力θ1と、発電設備110に接続される負荷設備120が消費する負荷電力θ3と、を調整する。電力管理システム1は、発電ユニット111に隣接して設けられ、発電ユニット111が受ける日射量θ5を測定する日射量測定装置2と、負荷設備120のための指令を含む制御指令φを出力する制御装置4と、を備える。制御装置4は、制御指令φの生成に用いる情報を出力する前処理部10と、前処理部10が出力した情報に基づいて、制御指令φを出力する指令生成部20と、を有する。前処理部10は、日射量θ5に基づいて、発電設備110が出力可能と予想される電力を見込み発電電力θ8として出力する予測部11を含む。指令生成部20は、見込み発電電力θ8に基づいて、負荷電力θ3を増減させる負荷指令φ1を負荷設備120に出力する負荷指令部21を含む。
【0099】
換言すると、本開示の電力管理システム1は、発電ユニット111に再生エネルギ転換貯蔵設備(再エネ転換設備)を接続することによって、太陽光利用率を増大にするものである。電力管理システム1は、発電ユニット111を有するマイクログリッド100内に、発電ユニット111からの再生エネルギである電力を別の形態のエネルギに転換する設備である蓄電装置121、水素製造装置122、熱発生装置123を設ける。そして、電力管理システム1の制御装置4は、日射量θ5から正負デマンドレスポンス(制御指令φ)を再エネ転換設備である蓄電装置121、水素製造装置122、熱発生装置123に対して出力する。さらに、電力管理システム1は、逆潮流を生じさせないように発電ユニット111の出力制御を実行する。これらの構成及び動作によって、電力管理システム1は、発電と消費のバランスを維持できる。さらに、電力管理システム1は、蓄電装置121を有効活用し、夜間電力の確保を実現できる。そのうえ、電力管理システム1は、発電ユニット111の出力を制御している期間における出力電力の平滑化も実現できる。
【0100】
この電力管理システム1では、制御装置4の予測部11は、日射量測定装置2により測定された日射量θ5に基づいて、発電設備110が出力可能と予想される電力である見込み発電電力θ8を出力する。指令生成部20は、見込み発電電力θ8に基づいて、負荷設備120に提供される負荷指令φ1を生成する。その結果、発電設備110の発電電力と負荷設備120の負荷電力θ3とのバランスを精度よく維持することができる。
【0101】
制御装置4の負荷指令部21は、負荷電力θ3を見込み発電電力θ8以上とする指令を含む負荷指令φ1を負荷設備120に出力する。この構成によれば、電力系統200への電力の流出(逆潮流)を確実に抑制できる。さらに、上記の電力管理システム1の負荷指令部21は、負荷電力θ3を見込み発電電力θ8より小さくする指令を含む制御指令φを負荷設備120に出力する。この構成によれば、電力系統200への電力の流出を所望の態様に制御できる。
【0102】
つまり、電力管理システム1は、逆潮流を防止する仕組みと、部分的に逆潮流を許す仕組みとを含む。その結果、マイクログリッド100における発電設備110の発電電力の利用率を極限まで高めることができる。そして、電力系統200からの購入電力θ7を抑制することができる。電力管理システム1は、運用の態様に応じて、逆潮流を許す運用と、逆潮流を許さない運用とを、設定値を変更することにより容易に選択できる。その結果、電力系統200への逆潮流電力をある値よりも低い値に制御することも容易に行える。従って、発電設備110との系統連系における契約の自由度を高めることができる。
【0103】
上記の電力管理システム1において逆潮流閾値は、実発電電力θ1を発電設備110において稼働中の発電パネル114の台数θ2で除した値(θ1/θ2)に応じて設定される。
【0104】
上記の電力管理システム1の負荷設備120は、実発電電力θ1を利用して水素を製造する水素製造装置122と、実発電電力θ1を利用して熱を発生する熱発生装置123と、を有する。負荷指令φ1は、水素の製造量を調整する指令及び熱の発生量を調整する指令の少なくとも一方を含む。これにより、水素の製造量及び熱の発生量の少なくとも一方を増減させることによって、実発電電力θ1と負荷電力θ3とのバランスを精度よく維持することができる。
【0105】
上記の電力管理システム1において、発電設備110及び負荷設備120を電力系統200に接続すると共に電力系統200から流入する購入電力θ7を測定する電力系統接続装置3を備える。指令生成部20は、購入電力θ7に基づいて、台数指令φ2を出力する台数指令部22を含む。台数指令部22は、購入電力θ7に基づいて、稼働状態である発電ユニット111の台数を決定する台数指令φ2を発電設備110に出力する。この構成によれば、電力系統200への逆潮流を確実に抑制できる。要するに、電力管理システム1は、購入電力θ7と閾値とを比較することにより、実発電電力θ1を負荷設備120において十分に受けることができない場合には、実発電電力θ1を抑制する制御(台数制御、容量制御)を行う。その結果、常に発電と消費とのバランスを維持できる。
【0106】
電力管理システム1の前処理部10は、分散型の発電設備110において台数制御における発電設備110の平滑化のための移動平均算出の手法を提供する。つまり、前処理部10は、分散型の発電設備110において、蓄電装置121を用いて発電設備110の実発電電力θ1の平滑化を実施する場合に、台数制御を実施する場合の移動平均の考え方を明確に提供するものである。具体的には、上記の電力管理システム1の前処理部10は、発電設備110が有する全ての発電ユニット111の台数を、稼働中の発電ユニット111の台数で除した補正係数θ11を出力する係数部12と、実発電電力θ1に補正係数θ11を乗じることにより、補正発電電力θ12を出力する補正部13と、補正発電電力θ12の所定期間における移動平均値である移動平均電力θ13を出力する評価部14と、補正発電電力θ12と移動平均電力θ13との差分である平均差分を出力する評価差分部15と、を有する。これにより、電力を出力している発電ユニット111の台数を考慮して補正発電電力θ12を算出することができる。その結果、実発電電力θ1と負荷電力θ3とのバランスをさらに良好に維持することができる。
【0107】
電力管理システム1の指令生成部20は、平均差分に基づいて、評価指令φ5を出力する評価指令部25を含む。評価指令部25は、補正発電電力θ12が移動平均電力θ13よりも大きいことを平均差分θ14が示す場合に、蓄電装置121に充電させる充電指令、又は、補正発電電力θ12が移動平均電力θ13よりも小さいことを平均差分θ14が示す場合に、蓄電装置121から放電させる放電指令を蓄電装置121に出力する。これにより、蓄電装置121による充放電により、実発電電力θ1の平滑化を実現することができる。従って、実発電電力θ1と負荷電力θ3とのバランスを確実に維持することができる。
【0108】
電力管理システム1は、発電設備110の台数制御時において、購入電力θ7に上下限制限に対応する充放電補正指令を利用して、蓄電装置121の充放電による台数変化を抑制する。具体的には、電力管理システム1は、発電設備110及び負荷設備120を電力系統200に接続すると共に電力系統200から流入する購入電力θ7を測定する電力系統接続装置3を備える。指令生成部20は、購入電力θ7に基づいて、蓄電指令φ4を出力する蓄電指令部24を含む。蓄電指令部24は、購入電力θ7が充電閾値よりも小さい場合に第1蓄電指令を蓄電装置121に出力する。又は、購入電力θ7が放電閾値よりも大きい場合に第2蓄電指令を蓄電装置121に出力する。第1蓄電指令は、蓄電装置121を第1充電速度で充電動作させた後に、蓄電装置121を第1充電速度よりも遅い第2充電速度で充電動作させる指令である。第2蓄電指令は、蓄電装置121を第1放電速度で放電動作させた後に、蓄電装置121を第1放電速度よりも遅い第2放電速度で放電動作させる指令である。この構成によれば、購入電力θ7を好適に制御することができる。
【0109】
電力管理システム1は、発電設備110及び負荷設備120を電力系統200に接続すると共に電力系統200から流入する購入電力θ7を測定する電力系統接続装置3を備える。指令生成部20は、購入電力θ7に基づいて、容量指令φ3を出力する容量指令部23を含み、容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値よりも小さい場合に、発電設備110を第1出力速度で出力動作させた後に、発電設備110を第1出力速度よりも遅い第2出力速度で出力動作させる指令である。この構成によっても、購入電力θ7を好適に制御することができる。
【0110】
電力管理システム1は、実発電電力θ1に上限制限を設ける制御を行う。つまり、電力管理システム1は、逆潮流を防止する制御(パワーコンディショナ115の出力上限連続制御)を行う。具体的には、電力管理システム1の容量指令部23は、購入電力θ7が容量閾値よりも大きい場合に、発電ユニット111が発生した全ての電力を実発電電力θ1として出力させる指令を含む容量指令φ3を発電設備110に出力する。これにより、発電設備110の発電ユニット111を頻繁に再稼働させることなく、発電設備110の実発電電力θ1を最大化することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 電力管理システム
2 日射量測定装置
3 電力系統接続装置
4 制御装置
10 前処理部
11 予測部
12 係数部
13 補正部
14 評価部
15 評価差分部
20 指令生成部
21 負荷指令部
22 台数指令部
23 容量指令部
24 蓄電指令部
25 評価指令部
110 発電設備
111 発電ユニット(太陽光発電装置)
120 負荷設備
121 蓄電装置
122 水素製造装置
123 熱発生装置
200 電力系統
T7e 充電閾値
T7f 放電閾値
θ1 実発電電力
θ3,θ4 負荷電力
θ5 日射量
θ7 購入電力
θ8 見込み発電電力
θ12 補正発電電力
θ13 移動平均電力
θ14 平均差分
φ 制御指令