(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】2-シアノアクリレート化合物、及び、接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 255/23 20060101AFI20230411BHJP
C09J 4/04 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C07C255/23 CSP
C09J4/04
(21)【出願番号】P 2021537331
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029905
(87)【国際公開番号】W WO2021025036
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2019146572
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】一色 絵利香
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-012647(JP,A)
【文献】特表2014-532488(JP,A)
【文献】国際公開第2018/067615(WO,A1)
【文献】特開昭63-060961(JP,A)
【文献】特開昭56-135455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C09J、C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物。
【化1】
式(1)中、R
1は炭素数1~20の二価の連結基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、
1,2-プロピレン基、又は、1,3-プロピレン基を表し、R
4は
置換基を有してもよい、炭素数1~20のアルキル基を表
し、前記置換基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、又はアシルオキシ基を表す。
【請求項2】
R
1が、炭素数1~20のアルキレン基である請求項1に記載の2-シアノアクリレート化合物。
【請求項3】
R
1が、炭素数1~8のアルキレン基である請求項1又は請求項2に記載の2-シアノアクリレート化合物。
【請求項4】
R
4が、炭素数1~6のアルキル基である請求項1~
請求項3のいずれか1項に記載の2-シアノアクリレート化合物。
【請求項5】
R
4が、炭素数1~4のアルキル基である請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の2-シアノアクリレート化合物。
【請求項6】
下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物。
【化2】
式(1)中、R
1
は炭素数1~20の二価の連結基を表し、R
2
及びR
3
はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
4
は置換基を有してもよい、炭素数1~20のアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、又はアシルオキシ基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な2-シアノアクリレート化合物、及び、接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、主成分である2-シアノアクリレート化合物が有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、いわゆる、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。
【0003】
従来の2-シアノアクリレート化合物若しくはその製造方法、又は、2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物に関する技術の例としては、特許文献1~5に記載のものが挙げられる。
特許文献1及び2には、従来の2-シアノアクリレートの製造方法が記載されている。
特許文献3には、下記構造式で示される新規な2-シアノアクリレートが記載されている。
CH2=C(CN)COOR1OR2
但し、式中R1は低級アルキレン基、R2はハロゲン化低級アルキル基である。
【0004】
特許文献4には、シアノアクリレートに水溶性ポリオキシアルキレングリコール系溶剤と水溶性界面活性剤を配合してなる硬化後の水溶解性を改良したシアノアクリレート接着剤組成物が記載されている。
特許文献5には、α-シアノアクリレートモノマー100重量部に対し、分子中に平均5~30個のエチレンオキサイド残基及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物0.1~10重量部、及び、炭素数5以下の一価アルコール0.05~5重量部が含有されていることを特徴とする速硬化性接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/135184号
【文献】特表2017-514796号公報
【文献】特開平8-283225号公報
【文献】特開2000-73015号公報
【文献】特開平8-188747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、新規な2-シアノアクリレート化合物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物。
【0008】
【0009】
式(1)中、R1は炭素数1~20の二価の連結基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R4は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0010】
<2> R1が、炭素数1~20のアルキレン基である<1>に記載の2-シアノアクリレート化合物。
<3> R1が、炭素数1~8のアルキレン基である<1>又は<2>に記載の2-シアノアクリレート化合物。
<4> R2及びR3がそれぞれ独立に、エチレン基、1,2-プロピレン基、又は、1,3-プロピレン基である<1>~<3>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
<5> R4が、炭素数1~6のアルキル基である<1>~<4>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
<6> R4が、炭素数1~4のアルキル基である<1>~<5>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新規な2-シアノアクリレート化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1で得られた2-シアノアクリレート化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図2】実施例1で得られた2-シアノアクリレート化合物の
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図3】実施例2で得られた2-シアノアクリレート化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図4】実施例2で得られた2-シアノアクリレート化合物の
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図5】実施例3で得られた2-シアノアクリレート化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図6】実施例3で得られた2-シアノアクリレート化合物の
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図7】実施例4で得られた2-シアノアクリレート化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図8】実施例4で得られた2-シアノアクリレート化合物の
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図9】実施例5で得られた2-シアノアクリレート化合物の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図10】実施例5で得られた2-シアノアクリレート化合物の
13C-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0014】
(式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物)
本発明の2-シアノアクリレート化合物は、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物である。
【0015】
【0016】
式(1)中、R1は炭素数1~20の二価の連結基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R4は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0017】
前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、新規な化合物であり、また、モノマーとしてだけでなく、水等のアニオン重合開始種によりアニオン重合可能な反応性の高い化合物であり、接着剤組成物の接着成分として好適に用いることができる。
【0018】
式(1)におけるR1は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(1)におけるR1の炭素数(「炭素原子数」ともいう。)は、反応性、安定性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、2又は3であることが特に好ましい。
式(1)のR2及びR3におけるアルキレン基はそれぞれ、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(1)におけるR2及びR3はそれぞれ独立に、化合物の安定性、及び、反応性の観点から、エチレン基、1,2-プロピレン基、又は、1,3-プロピレン基であることが好ましい。
【0019】
式(1)におけるR4の炭素数は、反応性、安定性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
また、R4におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
更に、R4は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。中でも、アルキル基、又は、ハロゲン原子が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましく挙げられる。
更にまた、式(1)におけるR4は、反応性、安定性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0020】
中でも、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物としては、反応性、安定性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、下記式(2)又は式(3)で表される2-シアノアクリレート化合物が好ましく、下記式(3)で表される2-シアノアクリレート化合物がより好ましく、下記式(4)で表される2-シアノアクリレート化合物が特に好ましい。また、得られる硬化物の水易解体性の観点からは、下記式(2)で表される2-シアノアクリレート化合物が特に好ましい。
【0021】
【0022】
式(2)~式(4)中、R4は炭素数1~20のアルキル基を表し、L1はそれぞれ独立に、-CH2CH(CH3)-又は-CH(CH3)CH2-を表す。
【0023】
式(2)~式(4)におけるR4は、反応性、安定性、及び、得られる硬化物の極性を有する基材への密着性の観点から、炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0024】
式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の合成方法としては、特に制限はなく、公知の合成手段を組み合わせて、合成することができる。
例えば、シアノ酢酸エステル化合物と、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドとを、塩基触媒存在下で脱水縮合反応させることにより縮重合体を得、これを加熱し解重合することにより、α位にエチレン性不飽和結合を有する2-シアノアクリレート化合物に誘導する方法が挙げられる。また、シアノ酢酸エステル化合物は、例えば、シアノ酢酸に対応するアルコール化合物を酸触媒存在下で反応させエステル化することにより、容易に作製することができる。
別の方法としては、例えばエチル-2-シアノアクリレートなど、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物とは別の2-シアノアクリレート化合物とジエン化合物とを反応させて付加体とし、アルカリ加水分解することで付加体のカルボン酸へと誘導し、これと対応するアルコール化合物とを酸触媒存在下で反応させエステル化した後、適切な温度で熱分解することで、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。また、2-シアノアクリレート化合物とジエン化合物との付加体と対応するアルコール化合物とを、ルイス酸触媒存在下でエステル交換反応に付し、得られたエステル化合物を熱分解することによっても、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。
更に別の方法としては、塩化シアノアクリル酸と対応するアルコール化合物とを反応させることによっても、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を得ることができる。
【0025】
式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、接着剤組成物に好適に用いることができ、また、2又は3のアルキレンオキシ構造を有するため、従来の2-シアノアクリレート化合物よりも極性が高く、水易解体性接着剤組成物に特に好適に用いることができる。
なお、前記水易解体性接着剤組成物とは、硬化した後における水による剥離又は除去性に優れる接着剤組成物である。
水易解体性接着剤組成物として用いる場合、水易解体性の観点から、後述する水溶性化合物を含むことが好ましい。
【0026】
接着剤組成物に用いる場合、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の含有量は、水易解体性、極性を有する基材への密着性及び硬化性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、2質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上98質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上95質量%以下であることが特に好ましく、15質量%以上95質量%以下であることが最も好ましい。
【0027】
接着剤組成物、特に水易解体性接着剤組成物に用いる場合、水溶性化合物を更に含有することが好ましい。
また、本発明において、「水溶性化合物」とは、水と任意の混合比で混和し溶液となるか、又は、水に対する溶解度(25℃)が1g/100g以上の化合物を意味する。
【0028】
前記水溶性化合物の溶解性パラメータ(SP値)は、水易解体性の観点から、8.0(cal/cm3)0.5以上23.4(cal/cm3)0.5以下であることが好ましく、8.3(cal/cm3)0.5以上15.0(cal/cm3)0.5以下であることがより好ましく、9.0(cal/cm3)0.5以上14.0(cal/cm3)0.5以下であることが更に好ましく、8.0(cal/cm3)0.5以上12.0(cal/cm3)0.5以下であることが特に好ましい。
【0029】
なお、本発明における溶解性パラメータ(SP値)は、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出する値である。具体的には、式(3)に示す計算方法による。なお、2.0455(cal/cm3)0.5=1MPa0.5である。
【0030】
【0031】
δ:SP値((cal/cm3)1/2)
ΔEvap:各原子団のモル蒸発熱(cal/mol)
V:各原子団のモル体積(cm3/mol)
【0032】
また、2種以上を併用している場合は、以下の式により算出するものとする。
(混合物のSP値)2=(成分1の体積分率)×(成分1のSP値)2+(成分2の体積分率)×(成分2のSP値)2+・・・
【0033】
本発明に用いられる水溶性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。低分子化合物は、分子量1,000未満であることが好ましく、高分子化合物は、重量平均分子量1,000以上であることが好ましく、重量平均分子量1,000以上1,000,000以下であることがより好ましい。
なお、本発明における高分子化合物の数平均分子量(Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定するものとする。
【0034】
水溶性化合物としては、特に制限はないが、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エステル結合、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることが好ましく、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることがより好ましい。
また、水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等が好ましく挙げられる。
【0035】
中でも、水溶性化合物としては、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、γ-ブチロラクトン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
また、汎用性の観点からは、水溶性化合物としては、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホン、及び、プロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0036】
本発明の接着剤組成物に用いられる水溶性化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性化合物の含有量は、水易解体性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上35質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
接着剤組成物に用いる場合、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物及び前記水溶性化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、従来、2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物に配合して用いられている安定剤、硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0038】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF4、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
硬化促進剤は、2-シアノアクリレート系接着剤組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、及びオニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、及び、ジプロピレングリコールジベンゾエートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
接着剤組成物に配合してもよい粒子は、接着剤組成物を使用した際の接着剤層の厚さを調整するためのものである。
前記粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることが更に好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2-シアノアクリレート化合物の含有量を100質量部とした場合に、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることが更に好ましい。前記0.1質量部~10質量部の範囲であると、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
本発明における粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
【0043】
前記接着剤組成物は、特に制限はなく、種々の用途に用いることができる。
中でも、水易解体性接着剤組成物として用いる場合、前記水易解体性接着剤組成物は、接着した箇所の接着剤組成物又は不要な箇所に付着し硬化した接着剤組成物を、水により簡便に剥離又は除去することができるため、例えば、仮固定用水易解体性接着剤組成物、又は、教材用水易解体性接着剤組成物として好適に用いることができる。前記水易解体性接着剤組成物が硬化した硬化物は、熱水又は加圧熱水により短時間で容易に剥離又は除去可能であることは勿論、例えば、常温(15℃~25℃)からぬるま湯程度の温度(30℃~45℃)範囲の水に浸漬等することにより、剥離又は除去することが可能である。そのため、例えば、前記水易解体性接着剤組成物が手指などの不要な箇所に付着し硬化しても、水により容易に剥離することができる。また、常温からぬるま湯程度の温度範囲の水により、剥離又は除去することが可能であるため、工業的用途の仮固定に用いた場合には、剥離に必要な熱量を低減することができ、コストの削減に繋がる。
なお、本開示における前記「解体」とは、硬化物の全体が水等の溶媒へ溶解又は分散する必要はなく、硬化物の少なくとも一部が溶媒へ溶解若しくは分散、又は、膨潤し、接着している部材同士が剥離できればよい。
ここで、工業的用途の仮固定としては、例えば、半導体ウェハ等の各種電子材料、レンズ等の光学材料と、研磨用定盤等の各種治具との仮固定等が挙げられる。
また、前記接着剤組成物により接着する被接着材としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、また、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。また、前記接着剤組成物は、固体状の任意の形状のものを接着することができる。
【0044】
また、式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物、及び、前記接着剤組成物の保管方法としては、特に制限はなく、公知のシアノアクリレートの保管方法を用いて保管すればよい。例えば、無水不活性ガス化での保管、遮光密閉容器中での保管等が好適に挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
また、熱可塑性エラストマーにおけるブロックのSP値については、前述した方法により算出した。
【0046】
(実施例1:2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの合成)
シアノ酢酸(247g、2.90mol)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール(別称トリエチレングリコールモノメチルエーテル)(530g、3.23mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(27.4g、0.144mol)、トルエン(500mL)を還流下、脱水しながらエステル化し、次いで炭酸ナトリウム水溶液で中和し蒸留して、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート426g(収率64%)を得た。得られた化合物の沸点は、133℃~135℃/10Paであり、1H-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD3Cl):δ=4.38-4.35(m,2H),3.76-3.73(m,2H),3.69-3.64(m,6H),3.57-3.54(m,2H),3.52(s,2H),3.38(s,3H)
【0047】
2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート(400g、1.73mol)、パラホルムアルデヒド(50.4g、1.68mol)、ピペリジン(0.43g、0.0050mol)、トルエン(250mL)を還流下、生成水を共沸脱水しながら縮合させた。縮合液を水洗し、有機層に五酸化二リン(1.2g、0.0084mol)、スミライザーMDP-S(フェノール系酸化防止剤、住友化学(株)製)を加えて、解重合を行い、沸点が110℃~125℃/10Paの留分を得た。これを再蒸留し、沸点が120℃~122℃/7.5Paである2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレート42g(収率10%)を得た。
得られた2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H及び
13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD
3Cl):δ=7.08(s,1H),6.65(s,1H),4.44-4.42(m,2H),3.81-3.78(m,2H),3.71-3.64(m,6H),3.56-3.54(m,2H),3.38(s,3H)
13C-NMR(CD
3Cl):δ=160.5,143.4,116.6,114.3,71.9,70.8,70.6,70.6,68.5,65.9,59.0
また、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H-NMRスペクトルを
図1に、
13C-NMRスペクトルを
図2に示す。
【0048】
(実施例2:2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレート(異性体混合物)の合成)
シアノ酢酸(188g、2.21mol)、2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロパノール(異性体混合物)(別称トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)(500g、2.42mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(21.0g、0.11mol)、トルエン(500mL)を還流下、脱水しながらエステル化し、次いで炭酸ナトリウム水溶液で中和し蒸留して、2-[2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアセテート434g(収率72%)を得た。得られた化合物の沸点は127℃~130℃/10Paであり、1H-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD3Cl):δ=5.21-5.09(m,1H),3.67-3.29(m,13H),1.28-1.27(m,3H),1.15-1.12(m,6H)
【0049】
2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアセテート(400g、1.46mol)、パラホルムアルデヒド(42.6g、1.42mol)、ピペリジン(0.36g、0.0042mol)、トルエン(250mL)を還流下、生成水を共沸脱水しながら縮合させた。縮合液を水洗し、有機層に五酸化二リン(1.2g、0.00838mol)、スミライザーMDP-S(住友化学(株)製)を加えて、解重合を行ない、沸点が110℃~125℃/10Paの留分を得た。これを再蒸留し、沸点が123℃~125℃/10Paの2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレート40g(収率10%)を得た。
得られた2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレートの
1H及び
13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD
3Cl):δ=7.05(s,1H),6.62(s,1H),5.23-5.14(m,1H),3.67-3.29(m,11H),1.33-1.31(m,3H),1.15-1.11(m,6H)
13C-NMR(CD
3Cl):δ=160.0,143.0,117.1,114.5,76.7-76.6,75.9-75.6,75.1-74.9,73.5-73.1,71.6-71.2,59.1,56.7,17.3-16.9,16.5-16.4
また、2-[2-(2-メトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレートの
1H-NMRスペクトルを
図3に、
13C-NMRスペクトルを
図4に示す。
【0050】
(実施例3:2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの合成)
シアノ酢酸(276g、3.24mol)、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール(別称トリエチレングリコールモノエチルエーテル)(633g、3.55mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(29.5g、0.155mol)、トルエン(500mL)を還流下、脱水しながらエステル化し、次いで炭酸ナトリウム水溶液で中和し蒸留して、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート580g(収率73%)を得た。得られた化合物の沸点は、128℃~133℃/10Paであり、1H-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD3Cl):δ=4.38-4.35(m,2H),3.76-3.73(m,2H),3.68-3.64(m,6H),3.61-3.58(m,2H),3.56-3.50(m,4H),1.21(t,3H)
【0051】
2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート(400g、1.63mol)、パラホルムアルデヒド(47.5g、1.58mol)、ピペリジン(0.41g、0.0048mol)、トルエン(250mL)を還流下、生成水を共沸脱水しながら縮合させた。縮合液を水洗し、有機層に五酸化二リン(1.2g、0.0084mol)、スミライザーMDP-S(フェノール系酸化防止剤、住友化学(株)製)を加えて、解重合を行い、沸点が110℃~135℃/10Paの留分を得た。これを再蒸留し、沸点が120℃~122℃/7.5Paである2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレート32g(収率8%)を得た。
得られた2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H及び
13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD
3Cl):δ=7.07(s,1H),6.64(s,1H),4.44-4.42(m,2H),3.81-3.78(m,2H),3.71-3.64(m,6H),3.58-3.55(m,2H),3.55-3.50(m,2H),1.21(t,3H)
13C-NMR(CD
3Cl):δ=160.5,143.3,116.7,114.3,70.8,70.8,70.7,69.8,68.6,66.6,65.9,15.2
また、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H-NMRスペクトルを
図5に、
13C-NMRスペクトルを
図6に示す。
【0052】
(実施例4:2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの合成)
シアノ酢酸(193g、2.27mol)、2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エタノール(別称トリエチレングリコールモノブチルエーテル)(499g、2.42mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(21.6g、0.114mol)、トルエン(500mL)を還流下、脱水しながらエステル化し、次いで炭酸ナトリウム水溶液で中和し蒸留して、2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート460g(収率74%)を得た。得られた化合物の沸点は、134℃~138℃/7.5Paであり、1H-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD3Cl):δ=4.38-4.35(m,2H),3.76-3.73(m,2H),3.67-3.63(m,6H),3.60-3.57(m,2H),3.51(s,2H),3.46(t,2H),1.60-1.53(m,2H),1.41-1.32(m,2H),0.92(t,3H)
【0053】
2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアセテート(400g、1.46mol)、パラホルムアルデヒド(42.5g、1.42mol)、ピペリジン(0.37g、0.0043mol)、トルエン(250mL)を還流下、生成水を共沸脱水しながら縮合させた。縮合液を水洗し、有機層に五酸化二リン(1.2g、0.0084mol)、スミライザーMDP-S(フェノール系酸化防止剤、住友化学(株)製)を加えて、解重合を行い、沸点が120℃~140℃/10Paの留分を得た。これを再蒸留し、沸点が127℃~136℃/10Paである2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレート25g(収率6%)を得た。
得られた2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H及び
13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD
3Cl):δ=7.07(s,1H),6.64(s,1H),4.44-4.42(m,2H),3.81-3.78(m,2H),3.70-3.63(m,6H),3.60-3.57(m,2H),3.46(t,2H),1.60-1.53(m,2H),1.41-1.31(m,2H),0.91(t,3H)
13C-NMR(CD
3Cl):δ=160.5,143.3,116.7,114.3,71.2,70.8,70.7,70.7,70.1,68.6,65.9,31.7,19.3,13.9
また、2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレートの
1H-NMRスペクトルを
図7に、
13C-NMRスペクトルを
図8に示す。
【0054】
(実施例5:2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレートの合成)
シアノ酢酸(193g、2.27mol)、2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロパノール(別称トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)(622g、2.50mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(27.4g、0.144mol)、トルエン(500mL)を還流下、脱水しながらエステル化し、次いで炭酸ナトリウム水溶液で中和し蒸留して、2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアセテート511g(収率71%)を得た。得られた化合物の沸点は、130℃~132℃/10Paであり、1H-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD3Cl):δ=5.19-5.09(m,1H),3.65-3.30(m,12H),1.59-1.52(m,2H),1.41-1.32(m,2H),1.28-1.26(m,3H),1.15-1.11(m,6H),0.92(t,3H)
【0055】
2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアセテート(400g、1.27mol)、パラホルムアルデヒド(37.0g、1.23mol)、ピペリジン(0.32g、0.0038mol)、トルエン(250mL)を還流下、生成水を共沸脱水しながら縮合させた。縮合液を水洗し、有機層に五酸化二リン(1.2g、0.0084mol)、スミライザーMDP-S(フェノール系酸化防止剤、住友化学(株)製)を加えて、解重合を行い、沸点が110℃~130℃/10Paの留分を得た。これを再蒸留し、沸点が118℃~120℃/15Paである2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレート33g(収率8%)を得た。
得られた2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレートの
1H及び
13C-NMRスペクトルは、以下の通りである。
1H-NMR(CD
3Cl):δ=7.04(s,1H),6.60(s,1H),5.22-5.14(m,1H),3.69-3.29(m,10H),1.58-1.51(m,2H),1.41-1.30(m,5H),1.14-1.11(m,6H),0.91(t,3H)
13C-NMR(CD
3Cl):δ=160.0,142.9,117.2,114.5,75.9-74.7,73.6-73.1,71.6-71.2,69.0,32.2,31.8,19.3,17.3-17.2,16
また、2-[2-(2-ブトキシプロポキシ)プロポキシ]プロピル-2-シアノアクリレートの
1H-NMRスペクトルを
図9に、
13C-NMRスペクトルを
図10に示す。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の2-シアノアクリレート化合物は、接着剤組成物の硬化成分として好適に用いることができる。例えば、いわゆる、瞬間接着剤として一般家庭用、教材用、建築材料用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。
また、本発明の2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、同種の被接着材間だけでなく、特に異種の被接着材間(例えば、金属と樹脂との間)の接着に好適に使用することができる。
【0057】
2019年8月8日に出願された日本国特許出願第2019-146572号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。